(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】結合負荷の制御されたスイッチングのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/40 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
G05F1/40
(21)【出願番号】P 2022523961
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2020079893
(87)【国際公開番号】W WO2021078943
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】201941043475
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カンタ,ソウミャ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ウトカルシュ
(72)【発明者】
【氏名】パリーク,ウルミル
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/125210(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/081129(WO,A1)
【文献】特開2015-005358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0273779(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/30-9/56
H01H 33/00-33/59
G05F 1/12-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力システムにおけるスイッチング装置の動作を制御するための方法であって、前記電力システムは、三相構成の負荷と接続された電源を備え、前記負荷の少なくとも2つの相の間に結合が存在し、前記方法は、
ソース側で前記三相の各相の電圧の測定値を取得するステップ(402)と、
スイッチング基準、スイッチングシーケンス、および各相で測定された電圧に従って前記スイッチング装置の各極のギャップ電圧の閉角度を推定するステップ(404)であって、
前記スイッチング基準は、前記電源と前記負荷との間の前記接続が閉じられるべきギャップ電圧の位相角度を規定し、
前記スイッチングシーケンスは、前記三相における前記電源と前記負荷との間の前記接続を閉じるためのシーケンスを規定し、
前記スイッチングシーケンスでは、進み位相の前記接続が最初に閉じられ、続いて第1の後続相の前記接続が閉じられ、さらに続いて第2の後続相の前記接続が閉じられ、
前記進み位相の前記極の前記閉角度は、前記ソース側の前記進み位相で測定された前記電圧の位相角に基づいて決定され、
前記第1の後続相の前記極の前記閉角度は、前記ソース側の前記第1の後続相で測定された前記電圧の位相角と、前記進み位相で測定された前記電圧と前記ソース側の前記第1の後続相で測定された電圧との間の位相差と、前記第1の後続相のギャップ電圧の大きさまたは前記第1の後続相のギャップ電圧に関連する倍増率の少なくとも1つとに基づいて決定され、
前記第2の後続相の前記極の前記閉角度は、前記ソース側の前記第2の後続相で測定された前記電圧の位相角に基づいて決定される、ステップと、
前記スイッチング装置の各極について推定された前記閉角度に基づいて、前記スイッチング装置の動作のための信号を生成するステップ(406)と、を備える方法。
【請求項2】
前記第1の後続相に対する前記ギャップ電圧の前記閉角度は、
前記ソース側における前記第1の後続相の前記電圧の閉角度と、
前記ギャップ電圧と、前記第1の後続相の前記極の位相対接地電圧との間の位相差と、に基づいて推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の後続相の前記極の前記ギャップ電圧と前記位相対接地電圧との間の前記位相差は、
前記第1の後続相の極の前記スイッチング装置の
前記ソース側の位相対接地電圧の位相シフトと、
前記進み位相の極の前記スイッチング装置の
前記ソース側の位相対接地電圧の位相シフトと、
前記第1の後続相の前記極の前記スイッチング装置の接点間の前記ギャップ電圧の二乗平均平方根(RMS)値と、
前記ソース側での前記第1の後続相の前記電圧の二乗平均平方根(RMS)の値と、に基づいて推定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記閉角度を推定するステップは、
前記ソース側における前記電圧の閉角度を前記ギャップ電圧の前記閉角度に変換するステップ(602)であって、前記ギャップ電圧は位相対位相であり、前記ソース側における前記電圧は位相対接地である、ステップと、
前記ギャップ電圧の前記閉角度を最適化し(604)、前記ギャップ電圧の前記閉角度を前記ソース側の前記閉角度にマッピングし直すステップと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スイッチング基準、前記スイッチングシーケンス、および前記ギャップ電圧の前記大きさまたは
前記倍増率のうちの少なくとも1つは、前記負荷の構成に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記負荷は、中性点接地リアクトルを有する三相リアクトルであり、前記三相リアクトルの2つ以上のリアクトル間の前記接続に基づいて、前記負荷の前記2つ以上の相の間に結合が存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記信号は、前記スイッチング装置の各極が前記スイッチング基準および前記スイッチングシーケンスに従って動作するように生成され、
推定された前記閉角度に基づいてスイッチング過渡現象を最小にする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
電力システム(100)内のスイッチング装置(106)の動作を制御するための装置(304)であって、前記電力システムは、三相構成の負荷(104)に接続された電源(102)を備え、前記負荷の少なくとも2つの相の間に結合が存在し、前記装置は、
1つまたは複数の測定機器から電圧の測定値を取得するための測定ユニット(1002)であって、前記測定値は、ソース側で前記三相の各相について測定される、測定ユニットと、
スイッチング基準、スイッチングシーケンスおよび各相で測定された前記電圧に基づいて、前記スイッチング装置の各極のギャップ電圧の
閉角度を推定するための推定器(1004)であって、
前記スイッチング基準は、前記電源と前記負荷との間の前記接続が閉じられるべきギャップ電圧の位相角を規定し、
前記スイッチングシーケンスは、前記三相における前記電源と前記負荷との間の前記接続を閉じるためのシーケンスを規定し、
前記スイッチングシーケンスでは、進み位相の前記接続が最初に閉じられ、続いて第1の後続相の前記接続が閉じられ、さらに続いて第2の後続相の前記接続が閉じられ、
前記進み位相の前記極の前記閉角度は、前記ソース側の前記進み位相で測定された前記電圧の位相角に基づいて決定され、
前記第1の後続相の前記極の前記閉角度は、前記ソース側の前記第1の後続相で測定された前記電圧の位相角と、前記進み位相で測定された前記電圧と前記ソース側の前記第1の後続相で測定された電圧との間の位相差と、前記第1の後続相のギャップ電圧の大きさまたは前記第1の後続相のギャップ電圧に関連する倍増率の少なくとも1つとに基づいて決定され、
前記第2の後続相の前記極の前記閉角度は、前記ソース側の前記第2の後続相で測定された前記電圧の位相角に基づいて決定される、推定器と、
前記スイッチング基準と、前記スイッチングシーケンスと、前記スイッチング装置の
3つの前記極に対して推定された前記閉角度とに基づいて、前記スイッチング装置を動作させるための信号を生成する制御ユニット(1006)と、を備える、装置(304)。
【請求項9】
前記推定器は、前記第1の後続相に対する前記ギャップ電圧の前記閉角度を、
前記ソース側における前記第1の後続相の前記電圧の閉角度と、
前記ギャップ電圧と、前記第1の後続相の前記極の位相対接地電圧との間の位相差と、に基づいて推定する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の後続相の前記極の前記ギャップ電圧と前記位相対接地電圧との間の前記位相差は、
前記第1の後続相の極の前記スイッチング装置の
前記ソース側の位相対接地電圧の位相シフトと、
前記進み位相の極の
前記スイッチング装置の
前記ソース側の位相対接地電圧の位相シフトと、
前記第1の後続相の前記極の前記スイッチング装置の接点間の前記ギャップ電圧の二乗平均平方根(RMS)値と、
前記ソース側での前記第1の後続相の前記電圧の二乗平均平方根(RMS)値と、に基づいて推定される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記推定器は、
前記ソース側における前記電圧の閉角度を前記ギャップ電圧の前記閉角度に変換するステップであって、前記ギャップ電圧は位相対位相であり、前記ソース側における前記電圧は位相対接地である、ステップと、
前記ギャップ電圧の前記閉角度を最適化し、前記ギャップ電圧の前記閉角度を前記ソース側の前記閉角度にマッピングし直すステップと、によって前記閉角度を推定する、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記装置はリレーであり、前記スイッチング装置は回路遮断器である、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記負荷は中性点接地リアクトルを有する三相リアクトルであり、前記三相リアクトルの2つ以上のリアクトル間の前記接続に基づいて、前記負荷の前記2つ以上の相の間に結合が存在する、請求項8に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、電力システムにおける制御されたスイッチング用途に関する。より具体的には、本発明は、そのような電力システムにおける制御されたスイッチング用途のためのスイッチング装置の動作を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
制御スイッチング技術は、電圧または電流サージを制限し、電力変圧器、コンデンサバンクなどの機器を保護するために電力システムにおいて周知である。制御されたスイッチング機能を実行するために、回路遮断器、断路器などのスイッチング装置が使用される。
【0003】
典型的には、電圧および電流の測定は、限定はしないが、制御された開閉などのスイッチング装置の動作を最適化するために利用される。制御された閉動作は、制御されたスイッチング装置にとって最も重要な要件の1つである。閉動作は、電圧および電流の測定に基づいて最適化される必要がある。これはまた、装置の誘電強度低下率(RDDS)、機械的閉鎖時間、電気的散乱、機械的散乱などの様々な装置特性を使用することを必要とする。これらの特性、具体的には電気的および機械的散乱は、とりわけ形成電圧に影響を及ぼす。電気的および機械的散乱の影響などのそのような特性の影響の完全な詳細は、CIGRE WG 13.07(1998年)に見出すことができる。
【0004】
電気的および機械的散乱などの装置特性のために、形成電圧は2つの電圧レベル間で変化し得る。したがって、閉鎖を行うことができる角度には限界がある。電流形成角度の限界は、一般に、遭遇するギャップ電圧、RDDS、遮断器の電気的散乱および機械的散乱に基づいて決定される。これらの角度を超えて回路を通電しようとすると、予定前または予定後の通電につながる可能性があり、望ましくない過渡現象の発生につながる可能性がある。
【0005】
制御されたスイッチングのための従来技術は、異なる端子における電圧および電流の測定を利用することによってスイッチング過渡現象を制限しようとする。具体的には、ソース側および負荷側で測定された電圧からギャップ電圧が決定される。ソース側および負荷側からの測定が利用される場合、測定エラーに起因して決定に影響が生じる可能性がある。
【0006】
測定および同期エラーは、機器の制限(例えば、ハードウェア)、電界効果(例えば磁場)などのためにシステムで容易に発生する可能性がある。また、異なる電力システムでは、ソース側と負荷側の両方、特に負荷側での電圧測定を利用できない場合がある。例えば、電気機器の制限のために負荷電圧を測定することができない特定のソース負荷構成が存在し得る。負荷としてスターデルタ変圧器、または負荷として三相リアクトルの場合を考える。そのような場合、負荷側で測定を行うために、変圧器またはリアクトル側に追加のセンサ(例えば、VT)を設ける必要がある。これは、3つまたは6つの追加のセンサを必要とする場合がある。通常、そのような追加のセンサは利用できず、コスト/スペースの制約のために、負荷側に追加のセンサを設けることは実現不可能であり得る。
【0007】
さらに、例えば2つ以上の巻線、リアクトルなどの間の接続に起因して、2つ以上の相間に結合が存在する負荷では、測定が利用可能である場合でも、そのような結合の効果を得る必要がある。負荷側に接続された三相リアクトルを例にとる。ここで、リアクトル間の結合に起因して、異なる位相におけるギャップ電圧に影響がある。この結合の影響は、測定がソース側でのみ利用可能である場合に最適な動作要件を決定する際の複雑さを増大させる。
【0008】
負荷側の2つ以上の相の間に結合があり、電圧測定がソース側でのみ利用可能であるような電力システム構成のための最適化された制御されたスイッチングを有するために、閉鎖中のスイッチング過渡現象の可能性を最小限に抑えながら、制御されたスイッチングに使用することができる改善された方法および装置が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明の一態様は、電力システムにおけるスイッチング装置の動作を制御するための方法に関する。電力システムは、三相構成の負荷に接続された電源を備える。負荷側では、負荷(結合負荷)の少なくとも2つの相の間に結合がある。一実施形態では、負荷は、中性点接地リアクトルを有する三相リアクトルであり、三相リアクトルの2つ以上のリアクトル間の接続に基づいて、負荷の2つ以上の相の間に結合が存在する。
【0010】
本方法は、ソース側(またはソース端)で三相の各相の電圧の測定値を取得するステップを備える。ソース側とは、スイッチング装置の充電側または電源側(または端部)での測定値を指す。
【0011】
本方法は、スイッチング基準、スイッチングシーケンス、およびソース側の各相で測定された電圧に従って、スイッチング装置の各極に対するギャップ電圧の閉角度を推定するステップをさらに備える。スイッチング基準およびスイッチングシーケンスは、負荷の構成に基づくことができる。
【0012】
スイッチング基準は、電源と負荷との間の極または接続が(1つまたは複数の位相において)閉じられるべきギャップ電圧の位相角を規定する。ここで、ギャップ電圧とは、スイッチング装置の接点(極)の端子間電圧を指す。
【0013】
スイッチングシーケンスは、三相の電源と負荷との間の接続(極)を閉じるためのシーケンスを規定する。スイッチングシーケンスでは、進み位相の接続が最初に閉じられ、続いて第1の後続相の接続が閉じられ、さらに続いて第2の後続相の接続が閉じられる。
【0014】
進み位相の極に対するギャップ電圧の閉角度は、ソース側の進み位相で測定された電圧の位相角に基づいて推定される。一実施形態では、進み位相の極に対するギャップ電圧の閉角度は、進み位相のソース側電圧の閉角度から推定される。
【0015】
第1の後続相の極の閉角度は、ソース側の第1の後続相で測定された電圧の位相角と、ソース側の進み位相および第1の後続相で測定された電圧間の位相差と、第1の後続相のギャップ電圧の大きさまたは第1の後続相のギャップ電圧に関連する倍増率の少なくとも1つとに基づいて推定される。ギャップ電圧または増倍率の大きさは、負荷の構成に基づいてもよい。
【0016】
一実施形態では、第1の後続相の極に対するギャップ電圧の閉角度は、第1の後続相のソース側電圧の閉角度、およびギャップ電圧と第1の後続相の極の位相対接地電圧との間の位相差に基づいて推定される。この位相差は、
・第1の後続相の極のスイッチング装置のソース側位相対接地電圧の位相シフト
・進み位相極のスイッチング装置のソース側位相対接地電圧の位相シフト
・第1の後続相の極のスイッチング装置の接点(端子)間のギャップ電圧の二乗平均平方根(RMS)(または他の適切な大きさ)の値
・ソース側での第1の後続相の電圧の二乗平均平方根(RMS)(または他の適切な大きさ)値に基づいて推定することができる。
【0017】
第2の後続相の極の閉角度は、ソース側の第2の後続相で測定された電圧の位相角に基づいて決定される。一実施形態では、第2の後続相の極に対するギャップ電圧の閉角度は、第2の後続相のソース側電圧の閉角度から推定される。
【0018】
一実施形態では、閉角度を推定するステップは、ソース側の電圧の閉角度をギャップ電圧の閉角度に変換するステップを備える。ここで、ギャップ電圧は位相対位相であり、ソース側の電圧は位相対接地である。さらに、本ステップは、ギャップ電圧の閉角度を最適化するステップと、ギャップ電圧の閉角度をソース側の閉角度にマッピングし直すステップとを備える。
【0019】
本方法は、スイッチング装置の各極について推定された閉角度に基づいて、スイッチング装置の動作のための信号を生成するステップをさらに備える。信号は、スイッチング装置の各極がスイッチング基準およびスイッチングシーケンスに従って動作するように生成され、極の推定閉角度に基づいてスイッチング過渡現象を最小にすることができる。信号は、ギャップ電圧の閉角度のソース側の電圧の閉角度へのマッピングに従って生成されてもよい。
【0020】
本方法は、ソース側で三相の測定値を有する電力システムの装置を用いて実施することができる。スイッチング基準の情報、およびスイッチングシーケンスも装置で利用可能である。ソース側測定値は、ソース側に設けられた1つまたは複数の測定機器を用いて取得することができる。一実施形態によれば、装置は、回路遮断器(スイッチング装置)と動作可能に結合されたリレーである。また、測定機器は電位変圧器とすることができ、リレーは電位変圧器から電圧測定値を受け取る。
【0021】
一態様によれば、装置は、方法の1つまたは複数のステップまたはその一部を実行する測定ユニット、推定器、および制御ユニットを備える。装置は、スイッチング装置の動作を制御するために使用することができ、負荷は結合負荷である。
【0022】
図面の簡単な説明
本発明の主題は、添付の図面に示される例示的な実施形態を参照して、以下の本文でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の様々な実施形態による、電力システムの単一の線図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、電力システムの三相ソース負荷構成である。
【
図3】本発明の一実施形態による、電力システムにおける制御されたスイッチングのための測定機器および装置を示す。
【
図4】本発明の一実施形態による、スイッチング装置の動作を制御するための方法のフローチャートである。
【
図5】本発明の様々な実施形態による、電力システムの三相ソース負荷構成である。
【
図6】本発明の一実施形態による、スイッチング装置の動作を制御するための方法のステップのフローチャートである。
【
図7】本発明の様々な実施形態による、ギャップ電圧とソース電圧との間の関係を示す。
【
図8】本発明の異なる実施形態による、RDDS>1pu/radおよびRDDS<1pu/radの正規化を示す。
【
図9】本発明の異なる実施形態による、RDDS>1pu/radおよびRDDS<1pu/radの正規化を示す。
【
図10】本発明の一実施形態による、スイッチング装置の動作を制御するための装置のブロック図である。
【
図11】本発明の一実施形態による、固定接地負荷を有する電力システムを示す。
【
図12】本発明の一実施形態による、
図11の電力システムの様々な電圧のプロットを示す。
【
図13】本発明の一実施形態による、中性リアクトルを有するスター接地負荷を有する電力システムの様々な電圧のプロットを示す。
【
図14】本発明の一実施形態による、非接地またはデルタ負荷を有する電力システムを示す。
【
図15】本発明の一実施形態による、
図14の電力システムの様々な電圧のプロットを示す。
【
図16】本発明の一実施形態による、スター接地結合リアクトルを有する電力システムの様々な電圧のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本発明は、制御されたスイッチングなどの電力システム用途に関与するスイッチング装置がある、送電または配電システムなどの電力システムに関する。一般に知られているように、制御されたスイッチングは、コンデンサ、リアクトル、変圧器または他の電力システム機器などの負荷の計画されたスイッチングを実行することによって、有害な電気的過渡現象を排除または最小化するために使用される。そのような用途では、回路遮断器などのスイッチング装置は、通常、電源を負荷に接続する(または負荷を充電または通電する)ために使用される。回路遮断器の動作の制御および負荷のスイッチングのために、コントローラ、リレー、またはインテリジェント電子装置(IED)を使用することができる。
【0025】
回路遮断器(または遮断器)の動作は、遮断器における開閉動作を最適化することによって制御される。一例として、遮断器の極の開閉時間が制御される。異なるタイプの負荷および負荷構成に起因して、異なる電力システム構成が存在する。また、測定機器は、特定の場所でのみ利用可能であってもよい。これは、開閉時間推定に大きな影響を与える可能性がある。特定の電力システムでは、電圧測定はソース側でのみ利用可能である。また、負荷およびその接続/構成によれば、負荷側で異なる相の間に結合があり、これは制御されたスイッチングに影響を与える。
【0026】
本発明は、電圧測定がソース側でのみ利用可能であり、負荷側で2つ以上の相の間に結合が存在するそのような電力システム構成のための最適化された制御されたスイッチングを提供する。本発明は、
図1に示す電力システム(100)を例にして説明する。
【0027】
図1に示す電力システムは、負荷(104)に電力を供給するための電源(102)を含む。電源は三相交流電源とすることができ、負荷は結合負荷である。例えば、電源はACグリッドとすることができ、一方、負荷は、コンデンサバンク、分路リアクトル、電力変圧器、3脚リアクトルを含むことができる。負荷は、磁気的および/または電気的に結合することができる。例えば、負荷は、異なる設計および/または接続構成を有する誘導性、容量性、抵抗性、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0028】
電源は、スイッチング装置(106)を介して負荷に接続される。スイッチング装置は、断路回路遮断器またはパワーエレクトロニクス技術に基づく他の同様のスイッチング装置などの、遮断器、断路器、またはそれらの組み合わせとすることができる。スイッチング装置は、1つまたは複数の極を有し、その各々は、負荷が接続されている対応する相を通電または非通電するために動作する(すなわち、接続または切断されている)。
【0029】
異なる実施形態によれば、負荷は結合負荷である。言い換えれば、負荷およびその接続構成に起因して、負荷側において2つ以上の相の間に結合が存在する。
図2の実施形態について検討する。図示のように、中性点接地リアクトルを有する三相リアクトルは負荷(204)である。この場合、各相に1つずつ、3つのリアクトル(L
p)と、中性点と接地とを接続する中性点接地リアクトル(L
n)とが存在する。このような構成により、いずれかの相に電圧が与えられるたびに、その電圧のある割合が他の相に誘起される。例えば、
図2の進み位相の負荷に電源(202)が接続されている場合、負荷側のリアクトルの接続により、負荷側の第1の後続相に電圧が誘起される。
【0030】
負荷側で2つ以上の相の間に結合が存在する負荷の他の例には、固体接地負荷、中性抵抗器またはリアクトルを有するスター接地負荷、非接地/デルタ負荷、およびスター接地結合リアクトルが含まれるが、これらに限定されない。負荷およびその接続/構成によるこの結合はギャップ電圧に影響を及ぼし、各相の各極の閉鎖時間を正確に推定することを考慮する必要がある。負荷側の結合により、進み位相の極が閉じた後、後続相のスイッチング装置の端子間のギャップ電圧が変化する。これは、閉鎖時間推定に影響を及ぼす。
【0031】
閉鎖時間を推定するためには、電源側の電圧の測定(電圧測定)が必要となる。測定は、異なる線位置で測定を実行するために設けられた測定機器を用いて実行される。例えば、測定機器は、線から感知された電圧に対応する信号を提供する、電位変圧器、センサベースの測定機器(例えば、ロゴスキーコイル、非従来型機器変圧器など)などを含むことができる。例えば、変圧器は単相/多相電圧信号を提供する。
【0032】
ソース側に電位変圧器(302)がある、
図3に示す実施形態を検討する。電位変圧器は、ソース側の各相の電圧を測定する。対応する線/位相に関連する測定を実行するために、線/位相ごとに測定機器を設けることができることに留意されたい。したがって、ソース側で電力を供給する3つの線のための3つの電位変圧器が存在する。あるいは、そのような測定のために供給される3つの配線が存在し得る。
【0033】
測定機器で得られた測定値は、装置(304)に提供される。例えば、リレーまたはインテリジェント電子装置(IED)は、測定機器から信号を受信し、信号から測定値を取得する。あるいは、測定機器はバス(例えばプロセスバス)を介して測定値をパブリッシュし、IED(例えば、そのようなバスからデータを受信するように設定される)は測定値を受け取る。電圧信号は、必要に応じて事前フィルタリングを含む1つまたは複数のステップで処理することができることに留意されたい。そのような処理は、配線および/またはフィルタリング回路ならびに装置(304)に提供される出力のいずれかを使用することによって行うことができる。あるいは、信号は、異なる位相の電圧などの必要な電気的パラメータの必要な測定値を取得するために、装置で内部的に処理することができる。
【0034】
106などのスイッチング装置の動作は、ソース側電圧測定値を有する304などの装置を使用して最適に制御することができる。次に、本発明の様々な実施形態による、電力システム(例えば100)内のスイッチング装置(例えば106)の動作を制御するための方法のフローチャートである
図4を参照する。
【0035】
402において、本方法は、ソース側で三相の各相の電圧の測定値を取得するステップを備える。
図5に示す一般的な三相ソース負荷構成を検討する。ここで、V
sa、V
sb、およびV
scは、スイッチング装置のソース側(端部)の各相の位相対接地電圧を表す。この例では、スイッチング装置は遮断器である。また、V
la、V
lbおよびV
lcは、遮断器の負荷側(端部)の各相の位相対接地電圧である。
【0036】
このような電力システムに基づいて、測定機器(例えば302)を用いて、電圧、Vsa、VsbおよびVscが測定される。測定値は、閉角度を推定するために装置(例えば304)で利用可能である。負荷側電圧、Vla、VlbおよびVlcは利用できず、閉角度を推定しながら決定する必要がある。
【0037】
404において、本方法は、スイッチング基準、スイッチングシーケンス、およびソース側の各相で測定された電圧に従って、スイッチング装置の各極の閉角度を推定するステップをさらに備える。スイッチング基準およびスイッチングシーケンスは、負荷の構成に基づくことができる。
【0038】
スイッチング基準は、限定はしないが、電気的および機械的散乱などのスイッチング装置の特性を考慮して決定される。スイッチング基準は、電源と負荷との間の接続(極)が閉じられるべきギャップ電圧の位相角を規定する。ここで、ギャップ電圧とは、スイッチング装置の端子間電圧を指す。閉角度は、一般に、ギャップ電圧のピーク、ゼロ交差などで閉鎖が起こるように推定される。例えば、閉角度は、負荷が本質的に誘導性であるとき(例えば、インダクタ、トランスなど)、各相のギャップ電圧のピークで閉鎖が起こるようにすべきである。別の例を挙げると、閉角度は、負荷が本質的に容量性であるとき(例えば、コンデンサ)、各相のギャップ電圧のゼロ交差で閉鎖が起こるようにすべきである。
【0039】
スイッチングシーケンスは、三相の電源と負荷との間の接続を閉じるためのシーケンスを規定する。スイッチングシーケンスでは、進み位相の接続が最初に閉じられ、続いて第1の後続相の接続が閉じられ、さらに続いて第2の後続相の接続が閉じられる。一例として、A相の極を最初に閉じることができ、次いでC相の極を閉じることができ、最終的にB相の極を閉じることができる。別の例を挙げると、B相の接続を最初に閉じ、その後にそれぞれA相およびC相の接続を閉じることができる。このようなシーケンスは、電源と負荷との間の接続、および負荷タイプに依存し、事前に定義される。
【0040】
閉角度(または通電角度)を決定するために、ソース電圧パラメータ(例えば、角度)をギャップ電圧パラメータに変換する必要がある。
図5の電力システムを例に、変換および電位最適化の必要性を説明する。
図5の構成では、遮断器接点(スイッチング装置接点)間のギャップ電圧は、A相、B相およびC相それぞれについて式(1)、(2)および(3)から評価することができる。
【0041】
【0042】
ここで、相ごとにネットワーク全体を再定義すると、ギャップ電圧とソース電圧との間の関係を
図7から視覚化することができ、
・δ=ギャップ電圧と位相対接地電圧との間の位相差であり、
・β=位相対接地電圧に対する予定通電(閉)角度であり、
・∝=遮断器のギャップ電圧にマッピングされた予定通電(閉)角度である。
【0043】
【0044】
【0045】
通常、位相対接地電圧(β)に対する通電角度が利用可能である。しかしながら、物理的には、システムで遮断器はギャップ電圧をオンにする。したがって、位相対接地通電角度(β)をギャップ電圧通電角度(α)に変換することは、最適化されたスイッチングを達成するために必要なステップである。さらに、すべての散乱最適化をギャップ電圧通電角度(α)に対して実行する必要がある。
【0046】
したがって、
図6に示すように、閉角度を推定するステップは、602で位相対接地通電角度をギャップ電圧通電角度に変換するステップを含むことができる。一実施形態では、通電角度を変換するために、位相対接地通電角度(β)をギャップ電圧通電角度(α)にマッピングする変換関数が推定される。
【0047】
位相対接地通電角度(β)をギャップ電圧通電角度(α)にマッピングする変換関数は、遮断器のスイッチングシーケンスおよびギャップ電圧の大きさに関する情報を必要とする。式(4)に与えられるように、変換関数は、ギャップ電圧と位相対接地電圧(δ)との間の位相差に依存する。
【0048】
スイッチングシーケンスに基づいて、遮断器の3つの極は、以下のように呼ぶことができる。
【0049】
・進み位相極( lpの下付き文字で表記)
・第1の後続相極( ffpの下付き文字で表記)
・第2の後続相極( sfpの下付き文字で表記)
上記表記の上付き文字は、適切なパラメータ表記で埋めることができる。例えば、Vs_ffpは、第1の後続相極のソース電圧を表す。
【0050】
進み位相極:
進み位相極の場合、∝lp=βlpであり、これは、位相対接地電圧とギャップ電圧(δlp)との間の位相差がゼロであることを意味する。これは、非通電負荷では、進み位相の遮断器極のギャップ電圧(VCB_lp)が遮断器極のソース電圧(Vs_lp)に等しいからである。
【0051】
第1の後続相極:
第1の後続相極の場合、進み位相の通電後、進み位相との電気的結合に起因して、遮断器極の負荷端に誘起電圧が存在する。負荷側における接続の結果として、遮断器極の負荷端における誘起電圧の位相シフトは、通電された進み位相の位相シフトと同じである。相の電気的または磁気的結合に起因して、誘起電圧は、位相差のない通電された進み位相電圧のスケーリングされたバージョンになる。第1の後続相極のギャップ電圧方程式は、式(5)によって再定義することができる。
【0052】
【0053】
式5において、
・VCB_ffp=第1の後続相遮断器極の遮断器接点間のギャップ電圧であり、
・Vs_ffp=第1の後続相極の遮断器のソース端の位相対接地電圧であり、
・Vl_ffp=第1の後続相極の遮断器の負荷端の位相対接地電圧である。
【0054】
上記の太字の文字成分は、ベクトル量(すなわち、大きさおよび角度)を表す。
遮断器極の負荷端における誘起電圧の位相が通電された進み位相の位相と同じであることを考慮すると、
図7において、式(5)は極形式で再定義することができ、式(6)で与えられる。
【0055】
【0056】
式6において、
・θffp=第1の後続相極の遮断器のソース端の位相対接地電圧の位相シフトであり、
・θlp=進み位相極の遮断器のソース端の位相対接地電圧の位相シフトであり、
・δffp=ギャップ電圧と、第1の後続相極の位相対接地電圧との間の位相差であり、
・VCB_ffp=第1の後続相極遮断器の遮断器接点間のギャップ電圧のRMSであり、
・Vs_ffp=第1の後続相極の遮断器のソース端の位相対接地電圧のRMSであり、
・Vl_ffp=第1の後続相極遮断器の遮断器の負荷端の位相対接地電圧のRMSである。
【0057】
既知のスイッチングシーケンスおよび各遮断器極のギャップ電圧を用いると、式中の既知のパラメータは以下の通りである。
【0058】
・θffp
・θlp
・VCB_ffp
・Vs_ffp
式(6)の実部を比較して解くと、式(7)が得られる。
【0059】
【0060】
式(7)より、式(8)に示すようにVl_ffpを解くことができる。
【0061】
【0062】
Vl_ffpの計算値を用いて(6)を解くと、式(9)に示すδffpが得られる。
【0063】
【0064】
したがって、ギャップ電圧通電角度(∝ffp)は、式(10)による位相対接地通電角度(βffp)から得ることができる。
【0065】
【0066】
第2の後続相極:
第2の後続相極の場合、進み位相および第1の後続相の通電に起因して、遮断器の第2の後続相極の負荷端における誘起電圧は、ゼロまたは遮断器のソース端と同相である。これは、すべての平衡システムの場合、3つすべての相電圧または3つのすべての磁束の合計がゼロに等しくなるからである。これにより、遮断器極のうちの2つが既に通電されている場合、遮断器の負荷端の第2の後続相極における誘起電圧が事前に決定されることが保証される。したがって、数学的には、遮断器の負荷端の電圧がゼロまたはソース端と同相である場合、ギャップ電圧もソース電圧と同相である。これを考慮すると、以下が推察される。
【0067】
【0068】
または
【0069】
【0070】
したがって、進み位相(∝lp)の極の閉角度は、ソース側の進み位相で測定された電圧の位相角、すなわち、βlpに基づいて決定される。
【0071】
同様に、第1の後続相(αffp)の極の閉角度は、ソース側(βffp)の第1の後続相で測定された電圧の位相角と、ソース側の進み位相および第1の後続相で測定された電圧間の位相差と、第1の後続相のギャップ電圧の大きさまたは第1の後続相のギャップ電圧に関連する倍増率の少なくとも1つとに基づいて決定される(δffp -式9参照)。
【0072】
第2の後続相(∝sfp)の極の閉角度は、ソース側の第2の後続相で測定された電圧の位相角、すなわち、βsfpに基づいて決定される。
【0073】
留意され得るように、ギャップ電圧または増倍率の大きさは、負荷の構成に基づいてもよい。
【0074】
結果を決定するためにギャップ電圧指数が方程式で使用されている。上記の式に見られるように、VCB_ffpなどの項は、第1の後続相におけるギャップ電圧の大きさである。これは、以下のように評価される。
(ギャップ電圧指数*測定されたソース電圧の大きさ)
上記では、測定されたソース電圧の大きさがベース値である。
【0075】
異なる負荷に対して、ギャップ電圧指数は異なる。例えば、負荷がスター接地されている場合、ギャップ電圧指数は1である。別の例を挙げると、負荷がスター非接地またはデルタである場合、ギャップ電圧指数は1.732である。
【0076】
中性点リアクトル接地リアクトル負荷にも同様の手法を使用することができる。中性点接地リアクトルと負荷リアクトルのインピーダンス比を0.3とすると、ギャップ電圧指数は1.13である。
【0077】
ギャップ電圧指数の代わりに、ギャップ電圧の大きさを直接使用してもよく、上記の式に適切な変更を加えて結果を得ることができることに留意されたい。
【0078】
変換(602)で得られたギャップ電圧通電角度(閉角度)は、最適化され、位相対接地にマッピングし直す必要がある。したがって、
図6に示すように、閉角度を推定するステップは、604において、ギャップ電圧通電角度を最適化するステップと、通電角度を位相対接地ソース電圧角度にマッピングするステップとを含むことができる。閉鎖中の最適なスイッチング角度は、RDDSおよび散乱値(電気的および機械的)の両方に依存する。CIGRE WG 13.07(1998年)に示されているように、RDDSが1pu/rad未満であるか1pu/radを超えるかに応じて、スイッチング角度を最適化するための2つの方法がある。ここで、ベース値をギャップ電圧のピークとする。
【0079】
正規化のための方法論を以下に説明する。
RDDS>1pu/rad
RDDS>1pu/radの正規化を
図8に示す。
図7は、回路遮断器の両端のギャップ電圧(V
CB)および位相対接地電圧(V
S)を示す。V
CBおよびV
Sの間の位相差、すなわちδは、上記の変換ステップに関連して説明したように評価されている。
【0080】
ゼロ電圧スイッチングの場合、点Aおよび点Bにおける電圧レベルが等しくなり、散乱の影響が最小になるように、スイッチング角度が右にシフトされる。したがって、ゼロスイッチングのための最適化された角度はαLである。同様に、電圧ピークスイッチングの場合、スイッチング角度は、A’およびB’における電圧レベルが等しくなるように90°の左にシフトされる。電圧ピークスイッチングの最適化された角度はαUである。スイッチング角度がαLとαUの間である場合、上昇勾配のために正規化は不可能である。
【0081】
RDDS<1pu/rad
RDDS<1pu/radの正規化を
図9に示す。
図7は、回路遮断器の両端のギャップ電圧(V
CB)および位相対接地電圧(V
S)を示す。V
CBおよびV
Sの間の位相差、すなわちδは、前のセクションで評価されている。
【0082】
ゼロ電圧スイッチングの場合、スイッチング角度は0°の右にシフトされ、それによって、最も左側のRDDS散乱線は、ギャップ電圧波の勾配がその勾配(A)に等しいギャップ電圧波上の点に到達する。対応する最適化されたゼロスイッチング角度はαLである。同様に、電圧ピークスイッチングの場合、スイッチング角度は90°の左に向かってシフトされ、それによって、最も右のRDDS散乱線は、ギャップ電圧波の勾配がその勾配(A’)に等しいギャップ電圧波上の点に到達する。対応する最適化されたゼロスイッチング角度はαUである。
【0083】
スイッチング角度の下限および上限、すなわちαLおよびαUをそれぞれ発見した後、これらは位相対接地電圧にマッピングされなければならない。マッピング関係は、式(13)で与えられる。
【0084】
【0085】
上記において、
・δ=ギャップ電圧と位相対接地電圧との間の位相差であり、
・β
L=(
図8および9に示す)α
Lに対応する位相対接地電圧のスイッチング角度である。
【0086】
同様に、βUは式(14)から評価できる。
【0087】
【0088】
最終相から接地へのマッピングされた角度は、操作要員に報告するために、またはその後の適応制御スイッチングのために使用することができる。
【0089】
閉角度は、スイッチング動作で使用される。したがって、406(
図4参照)において、本方法は、スイッチング装置の各極について推定された閉角度に基づいて、スイッチング装置の動作のための信号を生成するステップを備える。信号は、スイッチング装置の各極がスイッチング基準およびスイッチングシーケンスに従って動作するように生成され、極の推定閉角度に基づいてスイッチング過渡現象を最小にすることができる。この信号は、上記で推定された閉角度(β
L,β
U)で生成され得る。
【0090】
本方法は、ソース側で三相の測定値を有する装置304などの電力システムの装置を用いて実施することができる。これらの測定値は、ソース側の1つまたは複数の測定機器を用いて取得することができる。一実施形態によれば、装置は、回路遮断器(例えば、
図3に示す)と動作可能に結合されたリレーである。また、測定機器は電位変圧器とすることができ、リレーは電位変圧器から電圧測定値を受け取る。
【0091】
一実施形態によれば、装置は、方法またはそのステップを実行するための複数の構成要素を備える。装置の構成要素またはモジュールは、プロセッサ、I/Oなどのハードウェアで実装することができ、方法の様々なステップを実行するように構成することができる。
図10に示す実施形態では、装置は、測定ユニット(1002)と、推定器(1004)と、制御ユニット(1006)と、出力インターフェース(1008)とを備える。測定ユニットは、測定機器から測定値を取得するように構成される。測定ユニットは、ノイズを除去するために特定の信号処理を実行するように構成することができる。電圧信号が別の装置で処理される場合、測定ユニットは、方法の様々なステップを実行するために処理された信号/測定値を受け取るように構成することができる。
【0092】
推定器は、閉動作のためのスイッチング装置の閉角度を推定するように構成される。制御ユニットは、スイッチング装置用の信号を生成するために通電角度を利用するように構成される。出力インターフェースは、後続のスイッチングのために情報を利用するために、例えば出力コマンドなどの出力として信号をスイッチングに提供するように構成される。オプションのメモリ(1010)は、前の動作の必要な情報および異なるステップを実行するために必要な情報を記憶することができる。例えば、メモリは、測定値、スイッチング瞬間の情報などを記憶することができる。
【0093】
上記のモジュールは、リレー、インテリジェント電子装置、または制御されたスイッチングのための他の電力システム装置とすることができる装置(304)に実装することができる。
【0094】
上記の方法および装置は、ソース側での電圧測定値のみを用いて、そして負荷が結合されている場合は、負荷およびその構成に従って閉角度を推定することによって、スイッチング装置における制御されたスイッチングを可能にすることができる。したがって、本明細書に開示される方法および装置は、遮断器特性の統計的挙動に起因する誤ったスイッチングを回避するのを支援する。本方法は、スイッチングのためのギャップ電圧角度の上限および下限を確立する。これらの限界を超えて、スイッチング装置がギャップ電圧の前の半周期または次の半周期において非常に異なる角度でスイッチングする可能性がある。
【0095】
ソースバス電圧の任意の大きなまたは小さな変化に対する動的かつ適応的な整合が存在する。ソース側電圧は、評価に使用されているリアルタイム測定量であるため、ソース側(またはバス)電圧の変動を本方法に適応させることができる。
【0096】
以下の説明は、異なる負荷およびその構成に対するシミュレーションの結果を提供する。
【0097】
固体接地負荷
固体接地負荷では、各相は互いに独立している。検討されるスイッチングシーケンスはa-c-bである。この構成では、回路遮断器の両端のギャップ電圧は常に1pu(ユニットあたり)になる。A相の閉鎖後、中性点が接地されることにより、回路遮断器の負荷側電圧Vlcは0となる。式(9)から、δはソース電圧Vscの位相角と同じ120°になる。
【0098】
図11は、スター接地負荷の回路図をソース側および負荷側電圧と共に示す。ここで取られたソース電圧は100Vピークである。A相の閉鎖後、B相(VSB-VLB)とC相(VSC-VLC)の両端のギャップ電圧を
図12に示す。C相の両端のギャップ電圧(VSC-VLC)は、式(9)から得られた結果と同じであるA相ソース電圧から離れた120°である。
【0099】
中性リアクトルを有するスター接地負荷
ここでは、中性点接地リアクトルと呼ばれるリアクトルを介して接地が行われた場合を取り上げている。中性点接地リアクトルと負荷リアクトルのインピーダンス比を0.3とする。検討されるスイッチングシーケンスはa-c-bである。
【0100】
進み位相(A)の閉鎖後、C相(第1の後続相)の両端のギャップ電圧は、インピーダンス比の関数である1.13puである。ここで、ベース値をソース端電圧のピークとする。式(8)にVCB_ffp=1.13、θffp=120°およびθlp=0°を代入すると、Vl_ffp=0.2306puが得られる。
【0101】
V
l_
ffpの評価後、式(9)からδ=130.15°が得られる。
これをシミュレーションした結果は
図13に示す通りである。
図13から、進み位相の閉鎖後、第1の後続相極(V
l_
ffp)の遮断器の位相対接地電圧の負荷端相の大きさは、計算値と等しい0.23074puであることが分かる。さらに、δは、計算された値とほぼ一致する130.28°になる。
【0102】
非接地/デルタ負荷
検討されるスイッチングシーケンスはac-bである。
図14に非接地負荷の回路図を示す。進み位相および第1の後続相の通電後、B相は90°後に閉じることができる。B(VSB-VLB)相の両端のギャップ電圧は1.5puであり、B相のソース電圧(VSB)と同相である。ここで、ベース値をソース端電圧のピークとする。
図15からも同様のことが分かる。
【0103】
位相対接地電圧とギャップ電圧との間の位相差が既知になると、ギャップ電圧で評価されるRDDSの正規化は、位相対接地電圧に容易にマッピングすることができる。
【0104】
スター接地結合リアクトル
第1の相の閉鎖後、第1の相の他の2つの相への結合効果に起因して、他の相にいくらかの誘起電圧が存在する。したがって、他の2つの相にわたるギャップ電圧は、位相電圧と誘起電圧との差となる。したがって、式(9)に(他の非通電相の等しい磁束分布を考慮して)V
CB_
ffp=0.866puを代入することによってδ=90°が得られ、これは
図16に示すようにシミュレーションからも検証することができる。