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特許7437586変圧器ブリーザのためのブリーザ健全性評価のための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】変圧器ブリーザのためのブリーザ健全性評価のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20240216BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01F27/00 H
G01G19/52 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022567168
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021061560
(87)【国際公開番号】W WO2021224176
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】20172781.5
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イスラー,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベンツ,クリストフ
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0212058(US,A1)
【文献】特表2020-503689(JP,A)
【文献】特開2011-035303(JP,A)
【文献】特開2013-077723(JP,A)
【文献】特開2010-085299(JP,A)
【文献】特開2013-188659(JP,A)
【文献】特開2008-118039(JP,A)
【文献】特開2004-025476(JP,A)
【文献】特開2020-095090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00
G01G 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器ブリーザ(40)のブリーザ健全性評価を実行する方法であって、前記変圧器ブリーザ(40)は乾燥剤を含み、流体絶縁変圧器(20)、特に油絶縁変圧器(20)の膨張タンク(30)と流体連通しており、前記方法は、
重量測定値(81;91;w)を受信することであって、前記重量測定値(81;91;w)は、前記変圧器ブリーザ(40)、又は前記乾燥剤の少なくとも一部を含む前記変圧器ブリーザ(40)の構成要素若しくはサブアセンブリの重量に依存する、受信することと、
前記変圧器ブリーザ(40)の前記ブリーザ健全性を評価するために前記重量測定値(81;91;w)を処理することとを含み、
前記方法は、前記変圧器(20)が動いているか否か、及び/又は前記変圧器ブリーザ(40)が振動を受けているか否かを判定することをさらに含み、
前記変圧器(20)が動いているとき、又は前記変圧器ブリーザ(40)が振動を受けているときに、前記重量測定値(81;91;w)を提供するように適合された重量センサ(50)のための機械的ロックを作動させること、
前記変圧器(20)が動いている間又は前記変圧器ブリーザ(40)が振動を受けている間に捕捉される前記重量測定値(81;91;w)を破棄すること、
前記変圧器(20)が動いていないとき、又は前記変圧器ブリーザ(40)が振動を受けていないときにのみ選択的に前記重量測定値(81;91;w)を取得すること、のうちの少なくとも1つとを含む、方法。
【請求項2】
前記重量測定値(81;91;w)を処理することは、前記乾燥剤を交換しなければならないか否かを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重量測定値(81;91;w)を処理することは、前記乾燥剤を交換しなければならないメンテナンス時期(94)を計算することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記メンテナンス時期(94)は、時間の関数としての前記重量(91,92)の変化に基づいて計算される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記メンテナンス時期(94)は、前記変圧器ブリーザ(40)への気体流量(Q)の関数として計算される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
変圧器油温(T)を取り出すことと、前記気体流量(Q)を前記変圧器油温(T)の関数として決定することとをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
過去の気体流量に基づいて予測気体流量を計算することと、前記予測気体流量を使用して前記メンテナンス時期(94)を計算することとをさらに含み、任意選択的に、前記メンテナンス時期(94)を計算するために機械学習アルゴリズムが実行される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記メンテナンス時期(94)は、前記変圧器ブリーザ(40)に入る気体の気体温度(T)と、前記変圧器ブリーザ(40)に入る前記気体の相対湿度(RH)又は前記変圧器(20)の油中の含水量の少なくとも一方との関数としてさらに計算され、任意選択的に、前記方法は、前記変圧器ブリーザ(40)に入る前記気体の予測気体温度及び予測相対湿度を計算することと、前記予測気体温度及び前記予測相対湿度を使用して前記メンテナンス時期を計算することとをさらに含み、任意選択的に、前記予測気体温度は、過去の気体温度に基づいて計算され、任意選択的に、前記予測相対湿度は、過去の相対湿度に基づいて計算される、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
広域ネットワーク(109)、WANを介して前記気体温度(T)及び前記相対湿度(RH)を取り出すことをさらに含み、任意選択的に、前記変圧器(20)の地理的位置が、前記気体温度(T)及び前記相対湿度(RH)を取得するために使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ユーザ指定のアラート間隔(96)を受信することと、前記計算されたメンテナンス時期(94)及び前記ユーザ指定のアラート間隔(96)に基づいて出力を選択的に生成することとをさらに含む、請求項3~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記変圧器が動いているか否かを判定することは、位置データの時間依存変化及び/又は加速度センサを使用して捕捉された加速度データ及び/又は速度データ及び/又は慣性測定ユニットの出力に基づく、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記重量測定値(81;91;w)は、前記変圧器(20)から遠隔的に処理され、任意選択的に、前記重量測定値(81;91;w)は、クラウドベースのコンピューティングインフラストラクチャ(60)において処理される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
変圧器ブリーザ(40)のブリーザ健全性評価を実行するためのシステムであって、前記変圧器ブリーザ(40)は乾燥剤を含み、流体絶縁変圧器(20)、特に油絶縁変圧器(20)の膨張タンク(30)と流体連通しており、前記システムは、
重量測定値(81;91;w)を受信するように適合されているインターフェース(62)であって、前記重量測定値(81;91;w)は、前記変圧器ブリーザ(40)、又は前記乾燥剤の少なくとも一部を含む前記変圧器ブリーザ(40)の構成要素若しくはサブアセンブリの重量に依存する、インターフェース(62)と、
前記変圧器ブリーザ(40)の前記ブリーザ健全性を評価するために前記重量測定値(81;91;w)を処理するように適合されている少なくとも1つの集積回路(61)とを備え、
前記システムは、前記変圧器(20)が動いているか否か、及び/又は前記変圧器ブリーザ(40)が振動を受けているか否かを判定するように適合されていて、
前記変圧器(20)が動いているとき、又は前記変圧器ブリーザ(40)が振動を受けているときに、前記重量測定値(81;91;w)を提供するように適合された重量センサ(50)のための機械的ロックを作動させること、
前記変圧器(20)が動いている間又は前記変圧器ブリーザ(40)が振動を受けている間に捕捉される前記重量測定値(81;91;w)を破棄すること、
前記変圧器(20)が動いていないとき、又は前記変圧器ブリーザ(40)が振動を受けていないときにのみ選択的に前記重量測定値(81;91;w)を取得すること、の少なくとも1つを行うように適合されている、システム。
【請求項14】
前記システム(60)が、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実行するように適合されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
変圧器システム(10)であって、
変圧器タンク(31)を有する油絶縁変圧器(20)と、
前記変圧器タンク(31)と流体連通する膨張タンク(30)と、
乾燥剤を含む変圧器ブリーザ(40)であって、前記変圧器ブリーザ(40)は、前記膨張タンク(30)と流体連通する、変圧器ブリーザ(40)と、
重量測定値(81;91;w)を提供するように適合された重量センサ(50)と、 前記重量センサ(50)に通信可能に結合され、前記変圧器ブリーザ(40)のブリーザ健全性を評価するために前記重量測定値(81;91;w)を処理するように適合された請求項13又は14に記載のシステム(60)と、を備える、変圧器システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、変圧器ブリーザに関し、より詳細には、変圧器ブリーザの健全性を評価するための技法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
油絶縁変圧器などの流体絶縁変圧器は、変動する温度下での流体の膨張及び収縮から生じる絶縁流体の追加の体積を補償するための装置を必要とする。膨張タンクが、絶縁流体の膨張に対応するために、流体絶縁変圧器の変圧器タンクに流体接続される。主に絶縁流体として油を参照するが、本明細書に開示される技法は他の絶縁流体にも適用可能であることが理解されよう。
【0003】
膨張タンクは、妥当なマージンを伴って、低定格温度において油面高さが最膨張タンクの底部にある一方で、最大定格温度において油面高さが膨張タンクの上部にあるように設計される。したがって、膨張タンクは、油と空気との混合物を収容し、空気に含まれる成分が油へと移動し、その逆も可能である場所である。
【0004】
絶縁流体中の湿度(すなわち、水)の存在を回避又は最小化することが重要である。これは、そのような湿度が、電圧に耐える誘電体の能力に悪影響を及ぼし、酸化などの劣化化学反応を促進する。したがって、膨張タンク内に存在する空気中の湿度も回避又は最小化する必要がある。
【0005】
米国特許第9026374号明細書は、絶縁液体及び気体を収容するタンク内に設けられたセンサを使用する、絶縁液体充填電気機器の相対湿度を決定するための技法を開示している。
【0006】
膨張タンク内の空気中に存在する湿度の量を最小限に抑えるために、付属デバイスとしてエアブリーザが使用される。エアブリーザは、外界と接触する空気入口及び膨張タンクと接触する出口と、その内部にあるいくつかの乾燥要素(乾燥剤とも呼ばれる)とを有する。
【0007】
乾燥剤の吸収能力は限られている。乾燥剤が水で飽和すると、乾燥剤が空気から湿度を抽出することはもはや不可能である。したがって、エアブリーザが常に完全に動作可能であることを保証するために、乾燥剤を交換しなければならない。
【0008】
乾燥剤が定期的な所定の間隔をおいて交換される場合、メンテナンス作業は、変圧器、膨張タンク、及びエアブリーザが動作することができる様々な動作条件を適切に考慮しない可能性がある。メンテナンス間隔の保守的な推定の結果として、多くの場合、乾燥剤が必要であるよりも早く交換される場合があるが、メンテナンス間隔が長くなることは、膨張タンク内の空気湿度が増加するリスクに関連し、したがって変圧器に損傷を与えるリスクが増加する可能性がある。
【0009】
湿度に反応する乾燥剤に化学成分を添加して、乾燥剤要素の飽和を示す色変化を生じさせることができる。このとき、計画されたメンテナンスは、ブリーザの目視検査を数日から1ヶ月まで変化し得る定期的な間隔で行うことに存する。色が特定の割合の乾燥剤要素が飽和していることを示すときに限り、エアブリーザは空にされ、新しい乾燥剤要素が補充される。エアブリーザの他のアーキテクチャも存在する。例示のために、乾燥剤は、エアブリーザ内のカートリッジに収容されてもよく、必要に応じてカートリッジ全体を交換することができる。
【0010】
以下の様々な欠点が、乾燥剤の色の変化及び目視検査に依存するメンテナンスに関連している。
【0011】
-乾燥剤要素の色を検査するためにブリーザにアクセスすることは困難であることが多く、これは目視検査のコスト及び/又は検査の品質に影響を及ぼす。これは、変圧器が牽引変圧器である場合に特に当てはまり、検印変圧器では、検査は、牽引変圧器が設置されている車両の動作スケジュールに従ってスケジュールされなければならない。乾燥剤要素を交換しなければならないか否かを確実に検出するという課題は、列車上の牽引変圧器の場合のように、ブリーザが埃で覆われる可能性がある場合、及び/又はアクセスが困難な場所に配置される場合に悪化する可能性がある。
【0012】
-色の変化は、明確な客観的判断を提供せず、検査を実行するメンテナンススタッフによる何らかの解釈の余地を残す。目視検査を実行している人に応じて、主観的に異なる判断が行われる可能性がある。これは、特に、経験の浅い人員が目視検査を実行するために配置される場合に当てはまる。
【0013】
-異なる製造業者から得られた乾燥要素はまた、乾燥剤要素が依然として適切に機能しているか否か、又はそれらを交換しなければならないか否かを示すために異なる色を使用する場合がある。これにより、目視検査中に誤りが発生するリスクが高まる。
【0014】
これらの様々な欠点は、各々が問題となる2つの異なるシナリオをもたらす可能性がある。
【0015】
ブリーザ健全性は依然として良好であるが、目視検査を行うメンテナンス人員が乾燥剤要素を交換するという決定を下すと、リソースが浪費され、運用コストが増加する。
【0016】
ブリーザ健全性がもはや満たされなくなったが、目視検査を行うメンテナンス人員が、乾燥剤要素を交換しないことを決定し、次の目視検査を待つとき、水による油汚染を引き起こす可能性がある。これによって、絶縁油の絶縁強度が低下する可能性があり、より速い経年劣化をもたらす可能性がある。このようなより速い経年劣化は、絶縁油の酸化によってもたらされ得るが、これに限定されない。これは、変圧器の動作安全性に悪影響を及ぼす。
【0017】
自己脱水ブリーザ(SDB)は、乾燥剤要素を再生することができる加熱要素を含む。再生は、タイマによって、又はブリーザ健全性推定値に基づいてトリガすることができる。しかしながら、SDBはコストがかかり、SDBを使用することは必ずしも魅力的ではない。さらに、SDBは、典型的には、再生のための発熱体を含まない従来のブリーザよりも大きい。構造スペースの増加は、スペースが非常に制約されている牽引変圧器などの小型変圧器にとって問題となり得る。
【0018】
米国特許出願公開第2019/0212058号明細書及び中国特許出願公開第108873997号明細書は、電力変圧器吸湿剤を開示している。米国特許出願公開第2019/0212058号明細書及び中国特許出願公開第108873997号明細書のシステムは、乾燥剤材料を加熱することによっていつ再生がトリガされるかを決定するために重量測定値を処理する。
【0019】
欧州特許出願公開第3608930号明細書及び独国特許出願公開第102018207847号明細書は、牽引変圧器を開示している。欧州特許出願公開第3608930号明細書及び独国特許出願公開第102018207847号明細書のシステムは、空気湿度センサを使用して乾燥剤材料中の水の量を計算的に決定する。これらの技法は、メンテナンスをスケジュールするために使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
概要
変圧器ブリーザのブリーザ健全性を評価するための改善された技法を提供する必要がある。特に、ブリーザ健全性を評価するために色変化乾燥剤の目視検査に依拠することに関連する問題を軽減する技法が必要とされている。ブリーザ健全性を自動的且つ客観的に判定することを可能にする方法及びシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の実施形態によれば、重量測定値が、ブリーザ健全性を評価するために処理される。重量測定値は、変圧器ブリーザ、又は乾燥剤を含む変圧器ブリーザのサブアセンブリ若しくは構成要素の重量に依存する。ブリーザ健全性を評価することは、乾燥剤を交換する必要があるか否かを判定することを含むことができる。ブリーザ健全性を評価することは、代替的又は付加的に、乾燥剤を交換する必要があるメンテナンス時期を予測することを含んでもよい。
【0022】
重量測定値は、これに限定されるものではないが、以下のいずれか1つを表してもよく、又はそれに依存してもよい。
【0023】
-変圧器ブリーザに作用する重力、
-乾燥剤を含む変圧器ブリーザの構成要素又はサブアセンブリに作用する重力、
-変圧器ブリーザに作用する重力に依存する、変圧器ブリーザの支持体などの別の構造要素に変圧器ブリーザによって加えられる力、
-乾燥剤を含む変圧器ブリーザの構成要素又はサブアセンブリに作用する重力に依存する、乾燥剤を含む変圧器ブリーザの構成要素又はサブアセンブリによって別の構造要素(乾燥剤を含むカートリッジが搭載されたハウジングなど)に加えられる力、
-経時的に生じる上記量のいずれか1つの変化。
【0024】
本明細書において使用される場合、「重量測定値」という用語は、特に重力及び質量、又は重力若しくは質量の変化を包含する。
【0025】
「重量測定値」は、データ又は信号の形態であってもよい。
重量測定値は、変圧器ブリーザ、乾燥剤、又は乾燥剤を含む構成要素若しくはサブアセンブリの実際の重力又は質量を示すことができるが、必ずしも示す必要はない。本明細書に開示される技法は、乾燥剤の重量又は乾燥剤の重量の変化に関する情報を提供する様々なタイプの重量測定値を使用して利用することができる。
【0026】
重量測定値に加えて、様々なデータを処理することができる。例示のために、空気温度、空気の相対湿度、及び変圧器ブリーザに入る空気の体積流量に関する情報を使用して、変圧器ブリーザの健全性を評価することができる。空気温度及び相対湿度は、センサ読み値によって取得されてもよく、又はインターネットを介して取り出されてもよい。体積流量は、圧力降下測定装置若しくは流量計を使用して測定されてもよく、又は変圧器タンク内の絶縁油の油温を処理することによって決定されてもよい。
【0027】
警報、警告、又は他の出力信号を、乾燥剤を交換する必要があるか否かの判定の結果に基づいて、及び/又は乾燥剤を交換する必要がある推定メンテナンス時期に基づいて出力することができる。
【0028】
一実施形態によれば、変圧器ブリーザのブリーザ健全性評価を実行する方法が提供される。変圧器ブリーザは乾燥剤を含み、流体絶縁変圧器、特に油絶縁変圧器の膨張タンクと流体連通している。本方法は、重量測定値を受信することであって、重量測定値は、変圧器ブリーザ、又は乾燥剤を含む変圧器ブリーザのサブアセンブリ若しくは構成要素の重量に依存する、受信することと、変圧器ブリーザのブリーザ健全性を評価するために重量測定値を処理することとを含む。
【0029】
上述したように、重量測定値は様々な形態をとることができ、例えば、重量又は質量センサ読み値によって提供することができる。重量測定値は、ブリーザ健全性を評価するために互いに比較される時系列的に捕捉されたセンサ読み値を含むことができ、又は例えば、単一のセンサ読み値を閾値と比較することによって動作することができる。
【0030】
重量測定値を処理することは、乾燥剤を交換しなければならないか否かを決定することを含むことができる。
【0031】
重量測定値を処理することは、乾燥剤を交換しなければならないメンテナンス時期を計算することを含んでもよい。
【0032】
メンテナンス時期は、時間の関数としての重量の変化に基づいて計算することができる。重量測定値は、変化を決定することを可能にする、時系列的に捕捉されたセンサ読み値を含むことができる。
【0033】
メンテナンス時期は、変圧器ブリーザへの気体流量の関数として計算することができる。
【0034】
変圧器ブリーザに入る気体は、周囲環境から入る空気であってもよい。
周囲環境は、地球の大気、又は、変圧器ブリーザの吸気口が収容されるエンクロージャ(可動プラットフォームのキャビネット又はシェルなど)の内部であってもよい。
【0035】
本方法は、変圧器油温を取り出すことと、気体流量を変圧器油温の関数として決定することとをさらに含むことができる。
【0036】
本方法は、変圧器タンク内の変圧器油温に基づいて膨張タンク内の油の密度を推定することと、気体流量を決定するために密度を使用してこととを含むことができる。
【0037】
本方法は、膨張タンク内の変圧器油温を取り出すことと、気体流量を膨張タンク内の変圧器油温の関数として決定することとをさらに含むことができる。
【0038】
本方法は、過去の気体流量に基づいて予測気体流量を計算することと、予測気体流量を使用してメンテナンス時期を計算することとをさらに含むことができる。
【0039】
メンテナンス時期を計算するために機械学習アルゴリズムが実行されてもよい。
本方法は、変圧器の動作前に機械学習アルゴリズムを訓練することを含むことができる。
【0040】
本方法は、変圧器の動作中に機械学習アルゴリズムを訓練することを含むことができる。
【0041】
メンテナンス時期は、さらに、周囲環境から変圧器ブリーザに入る気体の気体温度、及び、変圧器ブリーザに入る気体の相対湿度又は変圧器の油中の含水量の少なくとも一方の関数として計算することができる。
【0042】
本方法は、過去の気体温度に基づいて変圧器ブリーザに入る気体の予測気体温度を計算することと、予測気体温度を使用してメンテナンス時期を計算することとをさらに含むことができる。
【0043】
本方法は、過去の気体温度に基づいて変圧器ブリーザに入る気体の予測相対湿度を計算することと、予測相対湿度を使用してメンテナンス時期を計算することとをさらに含むことができる。
【0044】
本方法は、広域ネットワーク(WAN)を介して、特にインターネットを介して気体温度及び相対湿度を取り出すことをさらに含むことができる。
【0045】
本方法は、変圧器の地理的位置を検知することと、検知された地理的位置に基づいて気体温度及び相対湿度を取り出すこととを含むことができる。
【0046】
本方法は、ユーザ指定のアラート間隔を受信することと、計算されたメンテナンス時期及びユーザ指定のアラート間隔に基づいて出力を選択的に生成することとをさらに含むことができる。
【0047】
変圧器は、移動支持体、特に車両上に設置することができる。変圧器は牽引変圧器であってもよい。
【0048】
本方法は、変圧器が動いているか否かを判定することをさらに含むことができる。変圧器が動いているか否かを判定することは、位置データ(GPSセンサ又は他の位置センサを使用して検知することができる)の時間依存変化及び/又は加速度センサを使用して捕捉された加速度データ及び/又は速度データ及び/又は慣性測定ユニット(IMU)の出力に基づくことができる。
【0049】
本方法は、変圧器が動いているとき、又は変圧器ブリーザが振動を受けているときに重量測定値を提供する重量センサのための機械的ロックを作動させることをさらに含むことができる。
【0050】
本方法は、変圧器が動いている間、又は変圧器ブリーザが振動を受けている間に捕捉された重量測定値を破棄することをさらに含むことができる。
【0051】
本方法は、変圧器が動いていないか、又は変圧器ブリーザが振動を受けていないときにのみ選択的に、重量測定値を取得することをさらに含むことができる。
【0052】
重量測定値は、変圧器から遠隔的に処理することができる。
重量測定値は、クラウドベースのコンピューティングインフラストラクチャ内で処理することができる。
【0053】
重量測定値は、ゲートウェイ又は他のデータアグリゲータを介して取り出すことができる。
【0054】
変圧器が動いているか否か、若しくは変圧器ブリーザが振動を受けているか否かを示すデータ、及び/又は気体流量を決定することを可能にするデータは、ゲートウェイ又は他のデータアグリゲータを介して取り出すことができる。
【0055】
乾燥剤はシリカを含んでいてもよく、又はシリカからなっていてもよい。
変圧器ブリーザは、電力供給を必要とする構成要素を含まない受動素子であってもよい。変圧器ブリーザは、乾燥剤の再生のための加熱要素を一切含まなくてもよい。
【0056】
別の実施形態によれば、変圧器ブリーザのブリーザ健全性評価を実行するためのシステムが提供され、変圧器ブリーザは乾燥剤を含み、流体絶縁変圧器、特に油絶縁変圧器の膨張タンクと流体連通する。システムは、重量測定値を受信するように適合されているインターフェースを備え、重量測定値は、変圧器ブリーザ、又は乾燥剤を含む変圧器ブリーザのサブアセンブリ若しくは構成要素の重量に依存する。システムは、変圧器ブリーザのブリーザ健全性を評価するために重量測定値を処理するように適合された少なくとも1つの集積回路を備える。
【0057】
システムは、重量測定値を捕捉するために変圧器ブリーザ又はそのサブアセンブリ若しくは構成要素に動作可能に結合された重量センサを備えることができる。上述したように、重量測定値は、様々な異なる形態をとることができ、それに限定されることなく、重力又は質量の測定値を含むことができる。
【0058】
システムは、本明細書に開示される実施形態のいずれか1つの方法を実行するように適合させることができる。
【0059】
少なくとも1つの集積回路は、乾燥剤を交換しなければならないか否かを決定するために重量測定値を処理するように適合させることができる。
【0060】
少なくとも1つの集積回路は、乾燥剤を交換しなければならないメンテナンス時期を計算するために重量測定値を処理するように適合させることができる。
【0061】
少なくとも1つの集積回路は、時間の関数としての重量の変化に基づいてメンテナンス時期を計算するように適合させることができる。重量測定値は、変化を決定することを可能にする、時系列的に捕捉されたセンサ読み値を含むことができる。
【0062】
少なくとも1つの集積回路は、変圧器ブリーザへの気体流量の関数としてメンテナンス時期を計算するように適合させることができる。変圧器ブリーザに入る気体は、周囲環境からの空気であってもよい。
【0063】
周囲環境は、地球の大気、又は、変圧器ブリーザが収容されるエンクロージャ(可動プラットフォームのキャビネット又はシェルなど)の内部であってもよい。
【0064】
システムは、変圧器油温を取り出すように適合させることができる。少なくとも1つの集積回路は、気体流量を変圧器油温の関数として決定するように適合させることができる。
【0065】
少なくとも1つの集積回路は、過去の気体流量に基づいて予測気体流量を計算し、予測気体流量を使用してメンテナンス時期を計算するように適合させることができる。
【0066】
少なくとも1つの集積回路は、メンテナンス時期を計算するための機械学習アルゴリズムを実行するように適合させることができる。
【0067】
機械学習アルゴリズムは、変圧器の動作前に訓練することができる。
少なくとも1つの集積回路は、変圧器の動作中に機械学習アルゴリズムを訓練するように適合させることができる。
【0068】
少なくとも1つの集積回路は、メンテナンス時期を、周囲環境から変圧器ブリーザに入る気体の気体温度、及び、変圧器ブリーザに入る気体の相対湿度又は変圧器の油中の含水量の少なくとも一方の関数として計算するように適合させることができる。
【0069】
システムは、WANを介して、特にインターネットを介して気体温度及び相対湿度を取り出すように適合させることができる。
【0070】
システムは、変圧器の地理的位置を検知することと、検知された地理的位置に基づいて気体温度及び相対湿度を取り出すこととを行うように適合させることができる。
【0071】
システムは、ユーザ指定のアラート間隔を受信することと、計算されたメンテナンス時期及びユーザ指定のアラート間隔に基づいて出力を選択的に生成することとを行うように適合させることができる。
【0072】
変圧器は、移動支持体、特に車両上に設置することができる。変圧器は牽引変圧器であってもよい。
【0073】
システムは、変圧器が動いているか否かを判定するように適合することができる。システムは、位置データ(GPSセンサ又は他の位置センサを使用して検知することができる)の時間依存変化及び/又は加速度センサを使用して捕捉された加速度データ及び/又は速度データ及び/又は慣性測定ユニット(IMU)の出力に基づいて、変圧器が動いているか否かを判定するように適合させることができる。
【0074】
システムは、変圧器が動いているときに重量センサの機械的ロックを作動させるためのコマンドを発行するように適合させることができる。
【0075】
少なくとも1つの集積回路は、変圧器が動いている間に捕捉された重量測定値を破棄するように適合させることができる。
【0076】
少なくとも1つの集積回路は、変圧器が動いていないときにのみ選択的に、重量測定値を取得するように適合させることができる。
【0077】
システムは、変圧器から遠隔的に配置されてもよい。
システムは、クラウドベースのコンピューティングインフラストラクチャであってもよい。
【0078】
システムは、重量測定値、及び任意選択的に、変圧器が動いているか否かを示すデータ及び/又は気体流量をゲートウェイを介して決定することを可能にするデータを受信することができる。
【0079】
乾燥剤はシリカを含んでいてもよく、又はシリカからなっていてもよい。
変圧器ブリーザは、電力供給を必要とする構成要素を含まない受動素子であってもよい。変圧器ブリーザは、乾燥剤の再生のための加熱要素を一切含まなくてもよい。
【0080】
一実施形態による変圧器システムは、変圧器タンクを有する油絶縁変圧器と、変圧器タンクと流体連通する膨張タンクと、乾燥剤を含む変圧器ブリーザであって、変圧器ブリーザは、膨張タンクと流体連通する、変圧器ブリーザと、重量測定値を提供するように適合されたセンサと、重量センサに通信可能に結合され、変圧器ブリーザのブリーザ健全性を評価するために重量測定値を処理するように適合されたブリーザ健全性評価を実行するためのシステムとを備える。
【0081】
変圧器は、牽引変圧器であってもよい。
変圧器、膨張タンク、及び変圧器ブリーザは、移動プラットフォーム、特に車両上に設置することができる。車両は列車であってもよい。
【0082】
移動プラットフォームは、位置センサ及び/又は加速度センサ及び/又は速度センサ及び/又は慣性測定ユニット(IMU)を含むことができる。センサは、変圧器又はその付属品(例えば、膨張タンク及び/又はブリーザ)上にあってもよいが、移動プラットフォーム上の他の場所に配置されてもよい。例示のために、位置センサ及び/又は加速度センサは、牽引変圧器、膨張タンク、及びブリーザが搭載された列車の制御スタンド内に設置されてもよい。制御目的のために任意の速度で提供されるそのようなセンサ(複数可)のセンサ出力(複数可)は、本明細書に開示される変圧器ブリーザ健全性評価のための技法に使用することができる。
【0083】
信号又はデータを提供するセンサ(複数可)は、変圧器上に予め設置されたセンサ(複数可)及び/又は可動プラットフォーム上に予め設置されたセンサ(複数可)を含んでもよい。例示のために、変圧器及び/又は可動プラットフォームに対する異なる制御又は監視目的に(にも)使用されるセンサ(複数可)を、ブリーザ健全性評価を実行するためにさらに使用することができる。
【0084】
ブリーザ健全性評価を実行するためのシステムは、位置センサを使用して捕捉された位置データ及び/又は加速度センサを使用して捕捉された加速度データを受信し、ブリーザ健全性評価を実行するときに位置データ及び/又は加速度データを使用するように適合させることができる。
【0085】
変圧器は、油温センサを含んでもよい。
ブリーザ健全性評価を実行するためのシステムは、油温センサを使用して捕捉された油温データを受信し、油温データを使用して変圧器ブリーザへの気体流量を導出し、ブリーザ健全性評価を実行するために、導出された気体流量を使用するように適合させることができる。
【0086】
油温データは、変圧器タンク内の油温又は膨張タンク内の油温を示すことができる。油温データが変圧器タンク内の油温を示す場合、システムは、変圧器タンク内の油温に基づいて膨張タンク内の油温を推定するように適合させることができる。
【0087】
システムは、油温データに基づいて膨張タンク内の油の密度を推定し、推定された密度を使用して気体流量を導出するように適合させることができる。変圧器ブリーザに入る気体は、周囲空気であってもよい。
【0088】
周囲環境は、地球の大気、又は、変圧器ブリーザが収容されるエンクロージャ(可動プラットフォームのキャビネット又はシェルなど)の内部であってもよい。
【0089】
絶縁流体は絶縁油であってもよい。
別の実施形態によれば、一実施形態による変圧器システムを備える可動プラットフォームが開示される。
【0090】
可動プラットフォームは、列車又は機関車であってもよい。
列車又は機関車は、変圧器の出力に接続された機械を有することができる。
【0091】
列車は、機械によって推進される電気機関車又は機械によって推進されるディーゼル電気機関車を有することができる。
【0092】
実施形態による方法、装置及びシステムによって、様々な効果が達成される。本方法及びシステムは、変圧器ブリーザ健全性を定量的、客観的に評価することを可能にし、それによってブリーザ健全性を評価するために色変化乾燥剤の目視検査に依拠することに関連する問題を軽減する。
【0093】
変圧器ブリーザ健全性の将来の変化を予測するために気体流量が計算されるとき、及び/又は変圧器ブリーザに入る空気の空気温度及び相対湿度に関する情報がインターネット若しくはWANを介してデータベースから取り出されるとき、本明細書に開示される技法は、特に効率的な方法で実施することができ、追加のセンサ機器を搭載する必要がほとんどない。
【0094】
変圧器、膨張タンク、及び変圧器ブリーザが搭載されている可動プラットフォームの動きに関する情報を考慮に入れると、重量測定値が不正確になるリスクが低減され、それにより、牽引変圧器に関連して使用される変圧器ブリーザの場合でも信頼性の高い健全性評価が提供される。
【0095】
本発明の実施形態は、油絶縁牽引変圧器に使用することができるが、それに限定されない。
【0096】
図面の簡単な説明
本発明の主題は、添付の図面に例示される好ましい例示的な実施形態を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】一実施形態による変圧器システムの概略図である。
図2】一実施形態によるシステムの動作を示すグラフ図である。
図3】一実施形態によるシステムの動作を示すグラフ図である。
図4】一実施形態によるシステムの概略図である。
図5】一実施形態によるシステムの概略図である。
図6】一実施形態によるシステムの概略図である。
図7】一実施形態による方法のフローチャートである。
図8】一実施形態による方法のフローチャートである。
図9】一実施形態による方法のフローチャートである。
図10】一実施形態による変圧器システムの概略図である。
図11】一実施形態によるシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
実施形態の詳細な説明
本発明の例示的な実施形態は、図面を参照して説明され、図面において、同一又は類似の参照符号は同一又は類似の要素を示す。いくつかの実施形態は、油絶縁牽引変圧器の文脈で説明されるが、実施形態はそれに限定されない。実施形態の特徴は、特に明記しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0099】
本発明の実施形態によれば、変圧器ブリーザ内の乾燥剤の飽和を示す定量的且つ信頼性の高い測定値を得るために、変圧器ブリーザと固定点との間に重量センサを挿入することができる。固定点は膨張タンク上にあってもよく、重量センサは膨張タンクと変圧器ブリーザとの間に挿入される。変圧器ブリーザはまた、主変圧器タンク、車両(例えば、列車)、又は別の支持体に機械的に支持されてもよく、重量センサは、変圧器ブリーザとその固定点との間に挿入されてもよい。さらに他の変形例では、変圧器ブリーザ全体の重力を測定する必要はないが、乾燥剤の少なくとも一部を含む変圧器ブリーザのサブアセンブリ又は構成要素に作用する力(重力又は慣性力)を測定するように構成することができる力センサを使用することができる。
【0100】
前述のように、本発明の実施形態で処理される「重量測定値」は、限定はしないが、以下を含む様々な形態のいずれか1つを取ることができる。
【0101】
-変圧器ブリーザに作用する重力、
-乾燥剤を含む変圧器ブリーザの構成要素又はサブアセンブリに作用する重力、
-変圧器ブリーザに作用する重力に依存する、変圧器ブリーザの支持体などの別の構造要素に変圧器ブリーザによって加えられる力、
-乾燥剤を含む変圧器ブリーザの構成要素又はサブアセンブリに作用する重力に依存する、乾燥剤を含む変圧器ブリーザの構成要素又はサブアセンブリによって別の構造要素(乾燥剤を含むカートリッジが搭載されたハウジングなど)に加えられる力、
-経時的に生じる上記量のいずれか1つの変化。
【0102】
本明細書において使用される場合、「重量測定値」という用語は、特に重力及び質量を包含する。
【0103】
したがって、重量測定値は、様々な異なるセンサタイプを使用して捕捉することができる。単純にするために、これらのセンサは、本明細書では「重量センサ」と呼ばれる。
【0104】
メンテナンスの決定は、色変化乾燥剤の色の主観的な解釈に依拠する必要なく、客観的で明確な基準に基づいて自動的に行うことができる。
【0105】
変圧器ブリーザの目視検査に関連する問題が排除される。重量センサは、電子的に読み取ることができる。例示のために、重量センサは、情報を遠隔処理システムにとって利用可能にするデータアグリゲータに接続することができる。しかしながら、本明細書で開示される処理はまた、重量センサ読み値を遠隔処理デバイスに送信することを必要とせずに、ローカルに実行されてもよい。例示のために、移動プラットフォーム(例えば、列車)に搭載された1つ以上の集積回路が、本明細書に開示された処理動作を実行することができ、実行されたブリーザ健全性評価に基づいて警告、アラート、又は他の信号を選択的に発することができる。
【0106】
牽引変圧器の変圧器ブリーザ内の典型的な乾燥剤要素は、数百グラムであってもよく、又は1kgを超えてもよく、数キログラム程度であってもよい重量を有する。乾燥剤の不飽和状態と飽和状態との間の相対重量差は、数十%程度である。したがって、ひずみゲージ又は他の既知のセンサなどの安価なセンサを使用して、十分な精度で重量測定を実行することができる。
【0107】
図1は、一実施形態による変圧器システム10の概略図である。変圧器システム10は、油絶縁変圧器20と、膨張タンク30と、変圧器ブリーザ40と、重量センサ50と、変圧器ブリーザ40のブリーザ健全性評価を実行するように適合された処理システム60とを備える。
【0108】
変圧器20は、絶縁油又は別の絶縁流体を収容することができる変圧器タンク21を有する。変圧器20は、能動部品及びブッシング22などの様々な従来の変圧器構成要素を含む。
【0109】
変圧器タンク21の内部容積は、少なくとも1つの油導管31を介して膨張タンク30と流体連通している。膨張タンク30は、妥当なマージンを伴って、低定格温度において油面高さが最膨張タンク30の底部にある一方で、最大定格温度において油面高さが膨張タンク30の上部にあるように設計される。したがって、膨張タンク30は、油と空気との混合物を収容する。
【0110】
膨張タンク30は、少なくとも1つの空気導管32を介して変圧器ブリーザ40と流体連通している。変圧器ブリーザ40は、乾燥剤を含む内部容積を有する。乾燥剤は、それに限定されることなく、シリカを含んでいてもよく、又はシリカからなっていてもよい。乾燥剤は、変圧器ブリーザ40のシェル内に取り外し可能に設けられ得るカートリッジに収容されてもよい。変圧器ブリーザ40は、使用時の電力消費がゼロである受動構成要素であってもよい。変圧器ブリーザ40は、乾燥剤の再生のための能動要素を一切含まないように実装されてもよい。変圧器ブリーザ40は、乾燥剤がまだ飽和に達していないときに、空気が空気導管32を介して膨張タンク30に流れる前に変圧器ブリーザ40に入る空気中に同伴され得る水(気体形態又は小滴形態であってもよい)を除去するように動作することができる。
【0111】
変圧器ブリーザ40は、支持体11に搭載することができる。支持体11は、膨張タンク30と一体であってもよい。変圧器ブリーザ40は、膨張タンク30に懸架されてもよい。重量センサ50は、変圧器ブリーザ40とその支持体との間に介在してもよい。変圧器ブリーザ40を支持する他の構成が使用されてもよい。
【0112】
他の構成が使用されてもよい。例示のために、支持体11は、主変圧器タンク21、車両(例えば、列車)、又は別の支持体と一体であってもよく、重量センサは、変圧器ブリーザとその固定点との間に挿入されてもよい。さらに他の変形形態では、乾燥剤を収容するカートリッジと変圧器ブリーザのシェルとの間に介在する力センサを使用することができる。
【0113】
処理システム60は、一般に、変圧器ブリーザ40の重量を示すか又は他の様態でそれに依存するデータ又は信号を処理するように動作する。この情報は、本明細書では重量測定値と呼ばれる。重量測定値は、変圧器ブリーザ40(又は乾燥剤を含むサブアセンブリ若しくは構成要素)の重量を時間の関数として示す時系列情報を含んでもよく、又はそれであってもよい。処理される時系列データは、一定の間隔をおいて捕捉又はサンプリングされる必要はない。例示のために、変圧器20が牽引変圧器である場合、ブリーザ健全性を評価するために処理システム60によって処理される重量測定値は、重量センサ50の出力が信頼できると考えられる間に捕捉されたデータを含んでもよく、又はそれからなってもよい。例示のために、処理システム60は、変圧器20、膨張タンク30、及び変圧器ブリーザ40が静止していた間、又は変圧器ブリーザ40が振動を受けていなかった間に、重量センサ50によって捕捉された重量データを含む重量測定値を選択的に処理することができる。重量測定値は、重力又は質量を表すことができるが、これに限定されない。重量測定値は、データ又は信号の形態であってもよい。
【0114】
処理システム60は、一般に、変圧器ブリーザ40の変圧器ブリーザ健全性を評価するように動作する。本明細書において使用される場合、変圧器ブリーザ健全性を評価することは、変圧器ブリーザ40内の乾燥剤が飽和状態に近づくか又は飽和状態に達するか否かを判定し、場合によってはいつ飽和状態に近づくか又は飽和状態に達するかを予測することを含んでもよく、又はそれからなってもよい。
【0115】
処理システム60は、任意選択的に、変圧器ブリーザ健全性評価を実行するために重量測定値以外の情報を処理することができる。処理することができる例示的な情報は、以下のいずれか1つ又は任意の組み合わせを含む。
【0116】
-変圧器ブリーザ40の移動に関する情報;この情報は、変圧器ブリーザ40が動いているか否かに関する情報(これに限定されず、重量データが信頼できるとみなされるべきか否かを判定するために使用されてもよい)及び/又は変圧器ブリーザ40の地理的位置に関する情報(予測ブリーザ健全性評価のための空気温度及び/又は空気相対湿度(RH)データを取り出すため、及び/又は予測ブリーザ健全性評価に使用される機械学習(ML)モデルを訓練するために使用され得る反復運動のパターンを識別するために使用され得る)を含むことができる。この情報は、GPSセンサなどの位置センサを使用して、及び/又は加速度センサを使用して捕捉することができる。
【0117】
-周囲環境から変圧器ブリーザ40に入る空気の空気温度及び/又は空気RHに関する情報。この情報は、特に乾燥剤の将来の飽和を予測するための予測ブリーザ健全性評価に使用することができる。この情報は、エアブリーザ(例えば、変圧器20が搭載された車両上の)に又はその近くに設置することができる温度センサ及び/又は空気湿度センサを使用して捕捉することができる。あるいは、この情報は、インターネット又は別の広域ネットワーク(WAN)を介して、データベース、例えば気象データベースから取り出されてもよい。
【0118】
-周囲空気が変圧器ブリーザ40に入る流量に関する情報。この情報は、流量計測定値若しくは圧力降下測定装置に基づいてもよく、又は例えば変圧器油の検知された油温に基づいて変圧器モデルを使用して計算されてもよい。この情報は、特に乾燥剤の将来の飽和を予測するための予測ブリーザ健全性評価に使用することができる。
【0119】
処理システム60は、ゲートウェイを介して、1つ以上のセンサを用いて捕捉されたデータを取り出すことができる。処理システム60は、変圧器ブリーザ40から遠隔に、例えばクラウドコンピューティングシステム内に設けられてもよい。処理システム60は、センサデータを受信するためのインターフェース62を有する。
【0120】
処理システム60は、例えばヒューマンマシンインターフェース(HMI)70に出力を提供するための、又は制御動作を自動的にトリガするコマンドを発行するためのさらなるインターフェース63を有することができる。
【0121】
HMI70は、処理システム60に近接して配置されてもよいが、また、処理システム60から遠隔に設けられてもよい。HMI70及び処理システム60は、インターネット又は別のWANを介して通信可能に接続されてもよい。HMIは、処理システム60から遠隔的に実行されるクラウド又はソフトウェア上に実装することができる。
【0122】
処理システム60は、少なくとも1つの集積回路(IC)61を有し、これは、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のコントローラ、1つ以上のプロセッサ、又はそれらの任意の組み合わせによって実装することができる。処理システム60は、いくつかのICが拡張領域にわたって分散される分散処理システムとして実装されてもよい。少なくとも1つのICは、図2図11を参照してより詳細に説明される処理動作を実行する。
【0123】
図2は、変圧器ブリーザ40又は乾燥剤を含むサブアセンブリ若しくは構成要素の重量の変化を示す重量81を示すグラフであり、これは、その中に含まれる乾燥剤の重量を含む。重量81は、単調増加関数であり、時系列データとして断続的に処理システム60によって受信されてもよい。
【0124】
処理システム60は、変圧器ブリーザの重量81が、乾燥剤が飽和点に近いがまだ飽和していないことを示す閾値82に達したか否かを判定することによって、変圧器ブリーザ健全性評価を実行するように動作することができる。閾値82は、それぞれの変圧器ブリーザに含まれる乾燥剤の量及びその飽和特性に応じて、変圧器ブリーザ固有の方法で設定することができる。
【0125】
処理システム60及び任意選択的にHMI70は、閾値82を指定するユーザ入力を受信するように適合させることができる。この場合、処理システム60は、閾値82の推奨値を示すデータをHMI70に提供することができ、使用される閾値82を指定するユーザ入力を受信することができる。代替的又は付加的に、閾値82は、処理システム60によって自動又は半自動的に決定されてもよい。例えば、変圧器のタイプ、膨張タンクのタイプ(特に、限定ではないが、膨張タンク容積)、及び/又は変圧器ブリーザのタイプ(特に、限定ではないが、乾燥剤の初期重量、使用される乾燥剤の種類、及び/又は変圧器ブリーザの容積)に関する情報が、閾値82を提案又は決定するために処理システム60によって使用されてもよい。閾値82を提案又は設定するために必要な情報は、HMI70によって受信されたユーザ入力、データベースに格納された構成データ、又は他の情報源に基づくことができる。
【0126】
処理システム60は、重量測定値81が閾値82に達したと判定すると、乾燥剤が飽和に近づいていることを示す警告、アラート、又は他の情報などの出力を引き起こすことができる。閾値82は、通常、乾燥剤飽和に対応する重量よりも低くなるように選択されることが理解されよう。
【0127】
処理システム60は、すでに測定された重量が、変圧器ブリーザ40内の乾燥剤が飽和に近づき、メンテナンスを必要とすることを示すか否かを判定するだけでなく、変圧器ブリーザ健全性の予測評価を実行するように適合させることができる。変圧器ブリーザ健全性の予測評価は、(乾燥剤飽和の測度である)重量の将来の変化を予測することを含むことができる。変圧器ブリーザ健全性の予測評価は、重量が閾値レベルに達すると予測される時間を計算によって予測することを含むことができる。
【0128】
図3は、過去の変圧器ブリーザ40(又は乾燥剤を含むサブアセンブリ若しくは構成要素)の重量の変化を示す、過去に測定された重量91を示すグラフであり、これは、その中に含まれる乾燥剤の重量を含む。重量変化91及び任意選択の他のデータ(下記により詳細に説明する)に基づいて、処理システム60は、最新の重量データが捕捉された時間よりも後の時間についての重量の予測変化92を計算することができる。処理システム60は、予測重量変化92が乾燥剤を交換しなければならないレベル93に達する時間94を計算することができる。
【0129】
処理システム60は、新しい重量測定値が利用可能になると、予測変化92及び/又は予測変化92を計算するために使用されるモデルを更新するように適合させることができる。例示のために、機械学習モデルは、新しい重量データサンプルが利用可能になると、予測変化92と実際の重量測定値との比較に基づいて更新されてもよい。
【0130】
処理システム60は、信号出力時間95において警告、警報、又は他の信号の出力を選択的に引き起こすように適合させることができる。信号出力時間95は、乾燥剤が交換されなければならない予測時間94に期間96だけ先行する。期間96は、HMI70を介して設定することができるユーザ定義の期間であってもよい。このようにして、変圧器20の現場で実際の人間の保守作業が必要とされる前に、事前通知のために変圧器20のオペレータが所望する時間に応じて、ユーザ構成可能な警報、警告、又は他の出力を生成することができる。
【0131】
図4図9を参照してより詳細に説明するように、変圧器ブリーザ健全性の予測評価は、様々な方法で実施することができる。処理システム60は、乾燥剤を交換しなければならなくなる前にオペレータに事前に通知し警告するように適合させることができる。これは、変圧器ブリーザ40を流れる空気の量の知識と、この空気に関する情報(温度及びRH)とを、これらのデータを乾燥剤の飽和にリンクさせるモデルを使用することによって組み合わせることによって行うことができる。空気特性及び空気流量を乾燥剤の飽和度に関連付けるそのようなモデルは当該技術分野で知られており、例えば変圧器設計に使用されることが理解されよう。
【0132】
図4は、予測診断モジュール100の動作を示す。予測診断モジュール100は、処理システム60のIC(複数可)61によって実行されて、乾燥剤飽和がいつ飽和に達すると予測されるかを事前に決定することができる。
【0133】
予測診断モジュール100は、重量センサ50から重量信号wを受信する。予測診断モジュール100は、変圧器ブリーザ40への周囲空気の流量Qを受信する。周囲空気は、地球の大気から入る空気であってもよいが、また、変圧器ブリーザ40の吸気口が配置されたエンクロージャ内から入る空気であってもよい。
【0134】
流量Qは、流量測定値又は圧力降下測定値から決定又は導出することができる。流量測定を実行するために流量計又は圧力降下測定装置を使用することができるが、流量Qは、下記により詳細に説明するように、他のセンサデータから計算的に導出される。流量Qは、過去からの履歴流量であり、これは、最後の重量測定値wからの変圧器ブリーザ重量の将来の変化を予測するために将来に外挿することができる。重量の変化は、乾燥剤飽和を示す。
【0135】
予測診断モジュール100は、下記により詳細に説明するように、位置センサ及び/又は加速度センサ及び/又は速度センサ及び/又は慣性測定ユニット(IMU)から入力を受信することができる。
【0136】
予測診断モジュール100は、変圧器ブリーザ40に入る周囲空気の気体温度Tを受信する。気体温度Tは、温度センサを使用して捕捉されてもよく、又は気象データベースから取り出されてもよい。温度センサ読み値が使用される場合、外挿及び/又は履歴データとの組み合わせを利用して、将来の気体温度Tの変化を予測することができる。気象データベースがアクセスされる場合、時刻及び/又は日付の関数としての気体温度Tの特性変化を示す履歴データが利用可能である。
【0137】
予測診断モジュール100は、変圧器ブリーザ40に入る周囲空気の気体RHを受信する。気体RHは、空気湿度センサを使用して捕捉されてもよく、又は気象データベースから取り出されてもよい。空気湿度センサ読み値が使用される場合、外挿及び/又は履歴データとの組み合わせを利用して、将来の気体RHの変化を予測することができる。気象データベースがアクセスされる場合、時刻及び/又は日付の関数としての気体RHの特性変化を示す履歴データが利用可能である。
【0138】
気体温度T及び/又は気体RHを捕捉するためにセンサが使用される場合、センサは、他の目的のために変圧器、膨張タンク、又は可動プラットフォームに設置されたセンサであってもよい。例示のために、変圧器ブリーザ40を使用することができる列車に搭載された、又は列車に組み込まれた温度計及び/又は湿度計の出力を示す。
【0139】
予測診断モジュール100は、将来の期間について予測される流量Q、気体温度T、及び気体RHをモデルに入力することができる。モデルは、流量Q、気体温度T、及び気体RHの関数として乾燥剤重量の変化を反映する経験的モデルであってもよい。上述したように、そのようなモデルは当業者に知られており、変圧器設計プロセスに使用される。
【0140】
予測診断モジュール100は、予測診断結果105を計算して出力することができる。予測診断結果105は、予測診断モジュール100によって予測されるものとして、変圧器ブリーザ40の重量変化が重量閾値に達すると予測される予測時間94に依存し得る。予測診断結果105は、図3を参照して説明したように、ユーザ指定の通知期間96に依存し得る。
【0141】
上述したように、流量計又は圧力降下測定値を使用して流量Qを決定することは可能であるが、不可避ではない。追加の流量計又は圧力降下測定装置に必要なコスト及びスペースを回避するために、流量Qを計算的に導出することができる。変圧器20又は膨張タンク30に存在する任意の速度のセンサのセンサデータを、流量Qを計算するために使用することができる。
【0142】
例示のために、変圧器ブリーザ40を通って流れる空気量の良好な推定は、データアグリゲータに接続することもできる既存のオイルセンサ(Pt100変圧器オイルセンサなど)を使用して行うことができる。この油温センサによって測定される温度は、平均油温に特徴的である。したがって、予測診断モジュール100は、任意の時点で膨張タンク30内に存在する油の量を油温から導出し、次いでこの量の経時的な変化を分析することによって空気流を導出することができる。油量の正確な量は必要ではなく、推定技法を使用することができる。
【0143】
例示のために、膨張タンク内の油温を示す油温データを使用して、膨張タンク内の油の密度を(例えば、ルックアップテーブル又は閉じた式を使用して)計算することができる。密度は、気体流量を計算するために使用することができる。
【0144】
代替的又は付加的に、変圧器タンク内の油温を示す油温データが使用されてもよい。変圧器タンク内の油温は、膨張タンク内の油温の合理的な近似値として使用することができ、したがって、膨張タンク内の油の密度を(例えば、ルックアップテーブル又は閉じた式を使用して)計算するために使用することができる。密度は、気体流量を計算するために使用することができる。
【0145】
膨張タンク内の油温は、主変圧器タンク内の油温よりも小さい可能性があるが、本明細書に記載の機能にとって十分に正確な油密度の推定値を計算することができる。
【0146】
図5は、変圧器絶縁油の油温を測定するセンサ106が油温Tを提供する実施形態を示す。油温Tは、例えば変圧器モデル107を使用して処理されて、空気流量Qが計算的に導出される。次いで、空気流量Qは、図4を参照して説明したように、乾燥剤飽和プロセスの将来の変化を予測するために、気体温度T及び気体RHと組み合わせて、予測診断モジュールによってさらに処理される。
【0147】
変圧器ブリーザ40に入る周囲空気の温度及びRHは、センサを使用して捕捉することができるが、図6に示すように、インターネットからの気象データに基づいて決定することもできる。
【0148】
図6は、予測診断モジュール100がインターネット109を介して気象データ108にアクセスして、乾燥剤飽和の将来の変化を予測するために使用される周囲の温度及びRHを決定する実施形態を示す。
【0149】
牽引変圧器20が設置される車両の種類に応じて、気象データを決定する必要があるロケーションを固定することができる(専用の空港シャトル、短距離地方列車などの場合に当てはまり得る)。あるいは、気体温度T及び気体RHが決定される気象データを取り出すために使用される位置は、長距離列車及び年間を通して異なるルートに割り当てられた列車のGPS又は他の位置センサに基づくことができる。
【0150】
飽和に起因する乾燥剤重量の変化は、数週間又は数ヶ月にわたって起こる遅い化学プロセスである。したがって、気象データは、1日の間信頼性がある必要はないが、本発明は、例えば、所与の場所における所与の月の平均気温、及び同様に平均RHを予測する能力を利用する。月ごとの温度/湿度に関する統計情報はすでに広く利用可能であり、予測診断モジュール100によって使用することができる。
【0151】
今後数日又は数週間の推定空気流Qは、移動平均又は他の統計的尺度に基づくことができ、より高度な技法を使用することができる。例示のために、図9を参照してより詳細に説明するように、機械学習を利用することができる。
【0152】
図7は、一実施形態による方法110のフローチャートである。方法110は、処理システム60によって自動的に実行されてもよい。
【0153】
ステップ111において、重量測定値が取り出される。重量測定値は、ゲートウェイ又は他のデータアグリゲータを介して重量センサ60から取り出すことができる。
【0154】
ステップ112において、将来のブリーザ健全性の変化が予測される。これは、変圧器ブリーザ重量の将来の変化、したがって乾燥剤飽和が起こる程度の変化を予測することを含むことができる。
【0155】
ステップ113において、予測された将来のブリーザ健全性の変化に基づいて出力(警報、警告、又は他の信号など)を選択的に出力することができる。出力が生成される時間及び/又は出力のタイプは、図3を参照して説明したように、変圧器ブリーザ40の重量変化が重量閾値に達すると予測される予測時間94、及び/又はユーザ指定の通知期間96に依存し得る。
【0156】
図8は、一実施形態による方法115のフローチャートである。方法115は、処理システム60によって自動的に実行されてもよい。
【0157】
ステップ111及び112は、図7を参照して説明したように実施することができる。
ステップ116において、出力を生成するためのトリガ基準が満たされているか否かが判定される。トリガ基準は、変圧器ブリーザ重量と閾値との比較に基づくことができる。トリガ基準は、変圧器ブリーザ40の重量変化が重量閾値に達すると予測される予測時間94と現在の時間との間の時間差を、閾値と比較することに基づいてもよい。差が閾値未満である場合、出力が生成され得る。閾値は、ユーザがどの程度の事前通知を所望するかを示すユーザ指定の閾値であってもよい。
【0158】
ステップ113において、トリガ基準が満たされた場合、出力(警報、警告、又は他の信号など)が出力される。
【0159】
図9は、一実施形態による方法120のフローチャートである。方法120は、処理システム60によって自動的に実行されてもよい。
【0160】
ステップ121において、重量測定値が取り出される。重量測定値は、ゲートウェイ又は他のデータアグリゲータを介して重量センサ60から取り出すことができる。
【0161】
ステップ122において、機械学習(ML)モデルを使用して将来のブリーザ健全性の変化が予測される。これは、MLモデルに基づいて、変圧器ブリーザ重量の将来の変化、したがって乾燥剤飽和が起こる程度の変化を予測することを含むことができる。
【0162】
ステップ123において、更新済み重量測定値が取り出される。更新済み重量測定値は、異なる時間に採取された複数の重量データサンプルを含むことができる。
【0163】
ステップ124において、更新済み重量測定値が、MLモデルを訓練するために使用される。例示のために、MLモデルのパラメータは、更新済み重量測定値に基づいて調整され得る。
【0164】
ステップ125において、出力を生成するためのトリガ基準が満たされているか否かが判定される。トリガ基準は、変圧器ブリーザ重量と閾値との比較に基づくことができる。トリガ基準は、変圧器ブリーザ40の重量変化が重量閾値に達すると予測される予測時間94と現在の時間との間の時間差を、閾値と比較することに基づいてもよい。差が閾値未満である場合、出力が生成され得る。閾値は、ユーザがどの程度の事前通知を所望するかを示すユーザ指定の閾値であってもよい。トリガ基準が満たされない場合、方法はステップ122に戻ることができる。
【0165】
ステップ126において、トリガ基準が満たされた場合、出力(警報、警告、又は他の信号など)が出力される。
【0166】
図10及び図11は、変圧器ブリーザが牽引変圧器の膨張タンクに関連して使用される実施形態を示す。牽引変圧器の膨張タンクに関連して使用される変圧器ブリーザの場合、変圧器ブリーザ40の動き(変圧器20及び膨張タンク30の動きと実質的に同一である)に関する情報は、処理システム60によって処理することができる。例示のために、位置センサ13(GPSセンサなど)、加速度センサ14、慣性中心14などの慣性測定ユニット、又は速度センサ(変圧器20が搭載された列車内に組み込まれてもよい)を使用して、変圧器20、膨張タンク30、及び変圧器ブリーザ40が搭載された列車12が動かないときを検出し、及び/又は変圧器ブリーザ40が振動を受けていないときを検出することができる。
【0167】
変圧器ブリーザ40が動いているとき又は変圧器ブリーザ40が振動を受けているときに関する情報を提供するセンサ(複数可)13、14は、変圧器上に予め設置されたセンサ(複数可)及び/又は列車などの可動プラットフォーム上に予め設置されたセンサ(複数可)を含むことができる。例示のために、変圧器及び/又は可動プラットフォームに対する異なる制御又は監視目的に(にも)使用されるセンサ(複数可)を、付加的に、変圧器ブリーザ40が動いている時間間隔又は変圧器ブリーザ40が振動を受けている時間間隔を識別するために使用することができる。
【0168】
図11は、概略ブロック図である。上述の実施形態のいずれかの処理モジュールは、変圧器ブリーザ40が動いているか及び/若しくは振動を受けているか否か、又は変圧器ブリーザ40が動いているか及び/若しくは振動を受けている期間(複数可)を示す信号又はデータを受信するように強化することができる。
【0169】
位置若しくは運動センサ又はIMUによって提供される情報は、限定はしないが、以下のいずれか又は任意の組み合わせを含む、様々な方法で処理モジュール100によって使用され得る。
【0170】
-重量データが信頼できると考えられるべきか否かを決定すること、並びに/又は重量測定値の捕捉及び/若しくは処理を制御すること。これは、限定するものではないが、以下のいずれか1つ又は任意の組み合わせを含むことができる。
【0171】
・変圧器ブリーザが動いている間、及び/又は変圧器ブリーザが振動を受けている間に、重量センサの機械的ロックを作動させるためのコマンドを発行すること、
・変圧器ブリーザが動いている間、及び/又は変圧器ブリーザが振動を受けている間に捕捉された重量測定値を破棄すること、
・変圧器ブリーザが動いていないときにのみ、及び/又は変圧器ブリーザが振動を受けていないときにのみ選択的に、重量測定値を取得すること。
【0172】
-位置に基づくブリーザ健全性の予測評価のために、インターネットから空気温度及び/又は空気RHデータを取り出すこと。
【0173】
-ブリーザ健全性の予測評価に使用される機械学習(ML)モデルを訓練するために使用され得る反復運動のパターンを識別すること。
【0174】
例示のために、変圧器ブリーザ40の重量測定値は、測定値が列車12の移動によって引き起こされる衝撃及び振動によって汚染されていない停止間隔中にのみ捕捉されてもよい。
【0175】
様々な効果及び利点が本発明に関連する。本発明は、特に乾燥剤が交換されなければならない飽和状態に近づくか否かを判定することによって、変圧器ブリーザ健全性を確実に評価するための定量的技法を提供する。本発明の実施形態は、乾燥剤をいつ変更すべきかの予測を提供するなど、追加の効果を提供する。自己脱水ブリーザ(SDB)ソリューションに関連し得る追加コストに頼る必要なく、必要な現場検査の量が削減される。
【0176】
本発明による方法及びシステムは、これに限定されることなく、油絶縁牽引変圧器に関連して使用することができる。
【0177】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に説明されてきたが、そのような説明は、実例又は例示であって限定ではないと考えられるべきである。開示された実施形態に対する変更は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から当業者によって理解され、請求された発明を実施することができる。特許請求の範囲において、「備える(comprising)」という単語は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。特定の要素又はステップが別個の特許請求項に記載されているというだけの事実は、これらの要素又はステップの組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではなく、具体的には、実際の特許請求項の従属性に加えて、任意のさらなる意味のある特許請求項の組み合わせが開示されていると考えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11