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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】バーリング装置、及びバーリング方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 19/08 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
B21D19/08 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022029479
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023125412
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】522078185
【氏名又は名称】有限会社大松管工
(73)【特許権者】
【識別番号】516207230
【氏名又は名称】窪田エンジニアズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2229093(KR,B1)
【文献】特開平8-206744(JP,A)
【文献】特開2018-58092(JP,A)
【文献】特開平11-47853(JP,A)
【文献】特開平9-155458(JP,A)
【文献】特開平9-103827(JP,A)
【文献】実開昭62-147680(JP,U)
【文献】実開昭58-45286(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴部が設けられた管を押さえることが可能な基部と、
前記基部の上方に配された上部と、
前記上部を前記基部に対し相対的に上下に変位させる第1変位機構と、
前記上部から下方に延在した延在部と、
前記延在部に対し着脱可能とされ、前記穴部よりも径が大きい引抜部と、
前記基部の下方に配され前記基部を移動可能とする車輪と、を備え、
前記引抜部が前記管の内部から前記穴部を通じて前記延在部に取り付けられ、前記基部が前記管を押さえて、前記第1変位機構が前記上部を前記基部に対し上方に変位させた場合に、前記引抜部を前記穴部から引き抜き可能な構成とされる、バーリング装置。
【請求項2】
前記第1変位機構による前記上部の変位に基づいて、前記基部を前記車輪に対し相対的に上下に変位させる第2変位機構を備える、請求項1に記載のバーリング装置。
【請求項3】
前記車輪が取り付けられた脚部と、
前記第1変位機構による前記上部の変位に基づいて、前記基部を前記脚部に対し相対的に上下に変位させる第2変位機構と、備え、
前記第2変位機構は、
てこ部と、
前記てこ部と前記上部とを連結可能なワイヤと、を備え、
前記てこ部は、
前記脚部に連結した支点部と、
前記ワイヤに連結可能な力点部と、
前記基部に連結した作用点部と、を備える、請求項1又は請求項2に記載のバーリング装置。
【請求項4】
前記基部は、前記延在部の下方に位置する開口部を備え、
前記力点部は、前記支点部及び前記作用点部よりも前記開口部側に位置している、請求項3に記載のバーリング装置。
【請求項5】
前記作用点部は、前記支点部よりも前記開口部側に位置している、請求項4に記載のバーリング装置。
【請求項6】
前記第2変位機構は、少なくとも一対の前記てこ部を備え、
前記ワイヤは、中央部が前記上部に連結し、両端部が前記一対のてこ部にそれぞれ連結可能とされる、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のバーリング装置。
【請求項7】
前記車輪が取り付けられた脚部と、
前記第1変位機構による前記上部の変位に基づいて、前記基部を前記脚部に対し相対的に上下に変位させる第2変位機構と、
前記脚部に対する前記基部の位置を固定可能な固定部と、備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のバーリング装置。
【請求項8】
前記引抜部と前記延在部とに連結ピンが挿通されることで、前記引抜部が前記穴部を通じて前記延在部に取り付けられた状態となる、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のバーリング装置。
【請求項9】
管に穴部を開け、
前記管を押さえることが可能な基部と、前記基部の上方に配された上部と、前記上部を前記基部に対し相対的に上下に変位させる第1変位機構と、前記上部から下方に延在した延在部と、前記延在部に対し着脱可能とされ、前記穴部よりも径が大きい引抜部と、前記基部の下方に配され前記基部を移動可能とする車輪と、を備えるバーリング装置を準備し、
前記穴部の下方に位置するように前記引抜部を前記管の内部に入れ、
前記延在部が前記穴部の上方に位置するように前記基部を移動させ、
前記管の内部から前記穴部を通じて前記引抜部を前記延在部に取り付け、
前記基部で前記管を押さえて、
前記第1変位機構によって前記上部を前記基部に対し上方に変位させることで、前記引抜部を前記穴部から引き抜く、バーリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バーリング装置、及びバーリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属管等の管に開けられた穴部から構造体を抜く等により、この穴部の端部を立ち上げる技術(バーリング)が知られている。このようなバーリングを行うバーリング装置について、例えば、特許文献1には、バーリング装置が、鋼球と、管(金属管)に密接する型と、型の上方に設けられた牽引装置と、を備え、管の穴部(孔)の真下に置いた鋼球に、牽引装置から垂下した牽引具を係止し、牽引具を上昇させて鋼球を引き上げ、鋼球を強制的に管から引き抜くことで、穴部が設けられていた位置の周りに、なだらかな曲面を描いて起立する鍔を形成させること、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-20674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、管の所望の位置(穴部が開けられた部分)でバーリングを行うために、バーリング装置を管に近接又は離間(近接等)させるか、管をバーリング装置に近接等させる必要がある。仮にバーリング装置を管に近接等させる場合、バーリング装置をクレーン等で吊り上げて移動させる必要があり、手間、時間、コスト等がかかり煩雑である。一方、管をバーリング装置に近接等させる場合、例えば管の大きさや長さによっては、管を移動させることが困難な場合がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、容易にバーリングを行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、穴部が設けられた管を押さえることが可能な基部と、前記基部の上方に配された上部と、前記上部を前記基部に対し相対的に上下に変位させる第1変位機構と、前記上部から下方に延在した延在部と、前記延在部に対し着脱可能とされ、前記穴部よりも径が大きい引抜部と、前記基部の下方に配され前記基部を移動可能とする車輪と、を備え、前記引抜部が前記管の内部から前記穴部を通じて前記延在部に取り付けられ、前記基部が前記管を押さえて、前記第1変位機構が前記上部を前記基部に対し上方に変位させた場合に、前記引抜部を前記穴部から引き抜き可能な構成とされる、バーリング装置である。
【0007】
このようなバーリング装置によると、穴部よりも径が大きい引抜部を穴部から引き抜くことにより、穴部の端部をその引き抜き方向に立ち上げて、バーリングを行うことができる。また、基部を移動可能とする車輪を、バーリング装置が備えているので、引抜部の延在部への取付のために、例えば穴部の下方に配した引抜部の上方に延在部が位置するように、車輪の回転によって基部を管に対し近接させることをスムーズに行うことができる。また、引抜部を穴部から引き抜いた後は、車輪の回転によって基部を管に対し離間するようにスムーズに移動させることができる。これにより、クレーン等を用いることなく基部を管に近接・離間させることができ、容易にバーリングを行うことができる。
【0008】
当該バーリング装置は、前記第1変位機構による前記上部の変位に基づいて、前記基部を前記車輪に対し相対的に上下に変位させる第2変位機構を備えていてもよい。
【0009】
このようなバーリング装置によると、引抜部を穴部から引き抜くための第1変位機構に係る動力を、車輪に対する基部の相対的な上下の位置を変位させる第2変位機構に兼用することができる。これにより、コンパクト化によって自身の移動をよりスムーズにさせることや、省コスト化を実現可能なバーリング装置を提供することができる。
【0010】
当該バーリング装置は、前記車輪が取り付けられた脚部と、前記第1変位機構による前記上部の変位に基づいて、前記基部を前記脚部に対し相対的に上下に変位させる第2変位機構と、備え、前記第2変位機構は、てこ部と、前記てこ部と前記上部とを連結可能なワイヤと、を備え、前記てこ部は、前記脚部に連結した支点部と、前記ワイヤに連結可能な力点部と、前記基部に連結した作用点部と、を備えていてもよい。
【0011】
このようなバーリング装置によると、てこ部及び上部へのワイヤの連結によって第1変位機構の動力を第2変位機構にも伝える切り替えを容易にすることができる。また、上部からワイヤを介して力点部に力が加わると、支点部を支点として作用点部に上手く力を伝えることができる。これにより、基部を脚部に対して上下にスムーズに変位させることができる。
【0012】
上記構成において、前記基部は、前記延在部の下方に位置する開口部を備え、前記力点部は、前記支点部及び前記作用点部よりも前記開口部側に位置していてもよい。このような構成によると、第1変位機構の動力を第2変位機構に上手く伝えることができ、実用的なバーリング装置を提供することができる。
【0013】
上記構成において、前記作用点部は、前記支点部よりも前記開口部側に位置していてもよい。このようなバーリング装置によると、第1変位機構の動力を第2変位機構に一層上手く伝えることができ、より実用的なバーリング装置を提供することができる。
【0014】
上記構成において、前記第2変位機構は、少なくとも一対の前記てこ部を備え、前記ワイヤは、中央部が前記上部に連結し、両端部が前記一対のてこ部にそれぞれ連結可能とされていてもよい。このようなバーリング装置によると、第1変位機構の動力を一つのワイヤを介して一対のてこ部に対し均等に伝えることができ、さらに実用的なバーリング装置を提供することができる。
【0015】
当該バーリング装置は、前記車輪が取り付けられた脚部と、前記第1変位機構による前記上部の変位に基づいて、前記基部を前記脚部に対し相対的に上下に変位させる第2変位機構と、前記脚部に対する前記基部の位置を固定可能な固定部と、備えていてもよい。このようなバーリング装置によると、第2変位機構で変位させた基部の位置を固定部によって固定することができるので、第1変位機構から動力を生じさせ続けて基部の位置を固定する必要が無く、好適である。
【0016】
上記構成において、前記引抜部と前記延在部とに連結ピンが挿通されることで、前記引抜部が前記穴部を通じて前記延在部に取り付けられた状態となることとしてもよい。このようなバーリング装置によると、引抜部と延在部との着脱を連結ピンによりスムーズに行うことができ、好適である。
【0017】
また、本開示は、管に穴部を開け、前記管を押さえることが可能な基部と、前記基部の上方に配された上部と、前記上部を前記基部に対し相対的に上下に変位させる第1変位機構と、前記上部から下方に延在した延在部と、前記延在部に対し着脱可能とされ、前記穴部よりも径が大きい引抜部と、前記基部の下方に配され前記基部を移動可能とする車輪と、を備えるバーリング装置を準備し、前記穴部の下方に位置するように前記引抜部を前記管の内部に入れ、前記延在部が前記穴部の上方に位置するように前記基部を移動させ、前記管の内部から前記穴部を通じて前記引抜部を前記延在部に取り付け、前記基部で前記管を押さえて、前記第1変位機構によって前記上部を前記基部に対し上方に変位させることで、前記引抜部を前記穴部から引き抜く、バーリング方法である。
【0018】
このようなバーリング方法によると、穴部よりも径が大きい引抜部を穴部から引き抜くことにより、穴部の端部をその引き抜き方向に立ち上げて、バーリングを行うことができる。また、基部を移動可能とする車輪によって基部を管に対しスムーズに近接・離間させることができ、基部の移動にクレーン等を用いることが無く、容易にバーリングを行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、容易にバーリングを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係るバーリング装置と金属管を示す説明図
図2】本体ユニットの正面図
図3】本体ユニットを左方から視た図
図4】本体ユニットを上方から視た図
図5】本体ユニットを金属管の左方に移動させた態様を示す正面図
図6】ワイヤを取り付けた状態においてシリンダを伸ばした態様を示す正面図
図7】基部が金属管上に位置するように本体ユニット移動させた態様を示す正面図
図8】シリンダを縮めた態様を示す正面図
図9】ワイヤを取り外し、連結部を介して引抜部を延在部に連結した態様を示す正面図
図10】シリンダを伸ばして穴部を立ち上げた態様を示す正面図
図11】引抜部が引き抜かれ、穴部の端部が立ち上がった態様を示す拡大断面図
図12】本体ユニットを金属管から離間させた態様を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
本開示の実施形態を図1から図12によって説明する。本実施形態では、金属管7に設けた穴部7Aから、引抜部67を引き抜くことで、穴部7Aの端部7A1(図11参照)をその上方に立ち上げる(バーリングを行う)バーリング装置1について説明する。尚、矢印方向Fを前方(正面側)、矢印方向Bを後方(背面側)、矢印方向Uを上方、矢印方向Bを下方、矢印方向Lを左方、矢印方向Rを右方として各図を説明する。また、図1では、バーリング装置1のうち、本体ユニット2を、後方から視た背面図で示し、ポンプユニット3を、上方から視た斜視図で示す(矢印方向は本体ユニット2の向きに対応している)。図2以降の図では、バーリング装置1のうち、ポンプユニット3の図示を省略する。金属管7は、正面視において左右方向に延びた円筒状をなしているものとする。
【0022】
図1に示すように、バーリング装置1は、本体ユニット2と、本体ユニット2に対し2つの油圧ホース4を介して接続されたポンプユニット(油圧ユニット)3と、を備えている。ポンプユニット3は、油を加圧するポンプ本体80と、ポンプ本体80の下側に取り付けられた複数の車輪81と、ポンプ本体80の上側に取り付けられた制御部82と、制御部82から延びた手元操作ボタン83と、を備える。ポンプユニット3は、複数の車輪81の回転によって、本体ユニット2と共に床面Gを移動可能とされる。ポンプ本体80は、加圧した油を、油圧ホース4を介して本体ユニット2のシリンダ(第1変位機構)40に送る(又はシリンダ40から戻す)ことが可能とされる。制御部82は、作業者による手元操作ボタン83の操作に基づいて、ポンプ本体80から本体ユニット2に送る油の圧力を変更することで、シリンダ40の伸縮を制御することができる。
【0023】
図1から図4に示すように、本体ユニット2は、全体としてその板面が左右前後方向に広がる板状の本体部10Aを有する基部10と、本体部10Aの上方に配された上部30と、本体部10Aと上部30との間に配された2つのシリンダ40と、を備える。また、本体ユニット2は、本体部10Aの下方に配された4つの車輪70と、4つの車輪70のそれぞれが取り付けられた4つの脚部71と、を備える。4つの車輪70は、自身が床面Gに当接して回転することにより、基部10を左右前後方向に移動可能とする。
【0024】
図4に示すように、基部10は、後述する延在部60の下方に位置し、本体部10Aの前後方向及び左右方向における中央部分において、上下に貫通した円孔状をなす開口部11と、開口部11の後方に配され、本体部10Aの上面から立ち上がる長板状の油圧接続部12と、を備える。開口部11の円孔の直径は、引抜部67の円柱部67B(図10参照)における直径よりも大きく、引抜部67が通る大きさとされる。図1及び図4に示すように、油圧接続部12には、ポンプ本体80から延びる2つの油圧ホース4と、2つのシリンダ40に2つずつ接続する4つの油圧ホース5と、が取り付けられている。油圧ホース5は、ポンプ本体80から油圧ホース4を介して送られる油を、シリンダ40に送ること、及び、シリンダ40に送られた油を、油圧ホース4を介してポンプ本体80に戻すことができる。
【0025】
図2から図4に示すように、基部10は、本体部10Aの四隅の角部10A1,10A2,10A3,10A4の裏面(下面)側からそれぞれ下方に延びた円筒状の4つの筒状部16と、本体部10Aの裏面側であって開口部11の左右両側に取り付けられた2つの保持部14と、本体部10Aの四隅の角部10A1,10A2,10A3,10A4からそれぞれ垂れ下がり、脚部71に対する基部10の位置を固定可能な4つのロックピン(固定部)15と、を備える。筒状部16は、その内部に脚部71の一部が挿通されており、脚部71に対してその位置を上下に変位させることが可能とされる。これにより、基部10は、車輪70及び脚部71に対して、その位置を相対的に上下に変位させることが可能とされる。筒状部16には、その側面に一つの孔部16Aが設けられている。脚部71には、その側面に複数の孔部71Aが上下に並んで設けられている。
【0026】
ロックピン15を、脚部71の複数の孔部71Aのうちいずれかの孔部71Aのみに挿通させると、筒状部16の下端部16Bが、挿通されたロックピン15に引っ掛かる(図2及び図3参照)。これにより、本体ユニット2は、脚部71に対する基部10の高さ(上下方向における相対的な位置)を固定(維持)しつつ、脚部71及び車輪70が、筒状部16の上下方向に延びる軸回りに回転可能な状態となる。一方、ロックピン15を、筒状部16の孔部16Aと脚部71の複数の孔部71Aのうちいずれかの孔部71Aとに、共に挿通させると、本体ユニット2は、脚部71に対する基部10の高さを固定(維持)しつつ、脚部71及び車輪70を、筒状部16の上下方向に延びる軸回りに回転不可能な状態となる。尚、上記いずれの状態であっても、前後方向を回転軸とする車輪70の回転は可能であるため、本体ユニット2は、少なくとも左右方向に移動することができる。
【0027】
図3に示すように、保持部14は、下部が半月状に窪んだ凹部14Aを備える。保持部14は、凹部14Aの大きさが異なる複数の種類が用意されており、バーリングを行いたい所望の金属管7の側面に凹部14Aが嵌合するように、本体部10Aに対して任意の種類の保持部14を着脱可能とされている。図8等に示すように、基部10は、後述する第2変位機構50によって当該基部10の高さが調節され、保持部14の凹部14Aを金属管7に嵌合させることで、金属管7を保持部14によって上方から押さえることが可能である。
【0028】
図2及び図3に示すように、シリンダ40は、ポンプ本体80から送られる油の圧力によって上下に伸縮可能な油圧式シリンダとされ、上部30を基部10(本体部10A)に対し相対的に上下に変位させることが可能である。シリンダ40は、開口部11(図4参照)の左右両側に1つずつ、合計2つが配され、それぞれが上下に延びた円柱状をなしている。シリンダ40は、その下端部40Aが本体部10Aに取り付けられ、その上端部40Bが上部30に取り付けられている。シリンダ40が上下方向に伸びると、基部10と上部30との間が広がり、上部30が基部10に対して上方に変位する(図2及び図3等参照)。一方、シリンダ40が上下方向に縮むと、基部10と上部30との間が狭まり、上部30が基部10に対して下方に変位する(図8等参照)。
【0029】
図2から図4に示すように、上部30は、左右方向を長辺とする角柱状をなしている。上部30は、その上面側に取り付けられた2つの環状体31を備える。また、本体ユニット2は、上部30の下面から下方に延在した延在部60と、延在部60の下部に対し連結部68及び連結ピン69を介して着脱可能な引抜部(抜き玉)67と、を備える。延在部60は、2つのシリンダ40の間に位置しており、その上部が上下方向に延びた棒状体とされ、その下部が四角形状の構造体とされる。延在部60は、その下部において、後述する連結ピン69を挿通可能な円孔が貫通形成された連結孔部60Aを備える。
【0030】
図9から図11に示すように、引抜部67は、下方に向かうほど直径(水平方向における直径)が広がるテーパ部67Aと、テーパ部67Aの下側に位置し、円柱状の円柱部67Bと、を備える。テーパ部67Aの途中部分から下側と、円柱部67Bは、金属管7に予め開けられた穴部7Aよりも直径が大きい。テーパ部67Aの上面側には、連結部68が螺合される溝を有する穴状の被螺合部が設けられている。
【0031】
図2から図4に示すように、本体ユニット2は、シリンダ40による上部30の変位に基づいて、基部10を脚部71に対し相対的に上下に変位させる2つの第2変位機構50を備える。2つの第2変位機構50は、4つのてこ部52と、4つのてこ部52のうち前後に並んだ2つずつ(一対のてこ部52)と上部30とを連結可能な2つのワイヤ51と、を備える。図4に示すように、4つのてこ部52は、開口部11と本体部10Aの四隅の角部10A1,10A2,10A3,10A4との間にそれぞれ配されており、それぞれが互いに前後左右対称となる形で設けられている。
【0032】
ワイヤ51は、金属製の紐状体であり、その中央部51Bが上部30の上面に設けられた溝(不図示)に引っ掛かることで連結し、その両端部51A,51Aが一対のてこ部52、52にそれぞれ引っ掛かることで連結可能とされる。ワイヤ51は、中央部51Bが、上方視、延在部60とシリンダ40との間に位置し、両端部51Aが、開口部11の端部上に位置するように、上部30の上面に設けられた溝に引っ掛けられる。
【0033】
図2から図4に示すように、てこ部52は、棒状の棒部54と、棒部54に対し回動可能に取り付けられ、ワイヤ51の両端部51Aを引っ掛けて連結可能なフック部53と、を備える。棒部54は、脚部71のうち本体部10A上に飛び出すように延びた突出部71Bに連結した支点部57と、本体部10Aの上面から上方に立ち上がった立上部13に連結した作用点部56と、フック部53を介してワイヤ51の両端部51Aに連結可能な力点部55と、を備える。作用点部56は、支点部57よりも開口部11側に位置している。力点部55は、支点部57及び作用点部56よりも開口部11側に位置している。てこ部52は、支点部57を回転軸として作用点部56及び力点部55が(開口部11側が)上下に回動可能とされている。支点部57を軸として力点部55が上方に変位すると、作用点部56も上方に変位し、基部10が上昇する。支点部57を軸として力点部55が下方に変位すると、作用点部56も下方に変位し、基部10が下降する。
【0034】
続いて、バーリング装置1を用いて金属管7に対しバーリングを行うバーリング方法について説明する。尚、以降の説明では、バーリング装置1のうち主に本体ユニット2について説明する。ポンプユニット3は、本体ユニット2の近傍に位置するように移動されていることとする。図5に示すように、まず、金属管7の側壁において、所望の位置に穴部7Aを開ける。穴部7Aを開ける方法は、特に限定されず、例えばプラズマ切断、ガス切断、又はレーザー切断等により行うことができる。穴部7Aの形状は、少なくとも引抜部67の最大径(円柱部67Bの直径)よりも小さい直径の部分が存在した形であればよく、例えば、上方視円形状や左右方向を長辺とする楕円形状等であってもよい。次に、床面Gに規制具6を置き、穴部7Aが上方を向くように規制具6上に金属管7を載置する。規制具6は、上面が凹状をなしており、金属管7が床面Gを転がる等して移動することを規制する部材である。続いて、引抜部67を、穴部7Aの下方に位置するように金属管7の左端(又は右端)からその内部に入れる。
【0035】
次に、バーリング装置1を準備し、本体ユニット2を金属管7の側方(左方)に移動させる。そして、上部30とてこ部52をワイヤ51で連結し、シリンダ40の伸縮と第2変位機構50による基部10の変位とが連動する連動状態にする。このとき、ロックピン15を、筒状部16の孔部16Aと脚部71の複数の孔部71Aから外して、本体部10Aからぶら下げた非固定状態にしておく。図5に示すように、保持部14の凹部14Aが金属管7の上面よりも低い場合、シリンダ40を上下方向に伸ばして上部30を上方に変位させる。すると、図6に示すように、上部30の上方への変位に伴い、ワイヤ51がフック部53を介して力点部55を吊り上げ、棒部54が支点部57を軸として上方に回動し、基部10が脚部71に対し相対的に上方に変位する。そして、保持部14の凹部14Aが金属管7の上面よりも高くなるまで、シリンダ40を上下方向に伸ばす。その後、ロックピン15を脚部71の複数の孔部71Aのうち筒状部16の下端部16Bの直下に位置する孔部71Aに差し込んだ(又は、筒状部16の孔部16Aと脚部71の孔部71Aとを連通するように差し込んだ)固定状態にしてもよい。
【0036】
続いて、図7に示すように、本体ユニット2を右方に移動させることで、延在部60が穴部7Aの上方に位置するように基部10を移動させる。そして、連結部68を穴部7Aに上方から挿入し、金属管7の内部において、連結部68を引抜部67のテーパ部67Aの上面側に設けられた被螺合部に螺合して取り付ける。
【0037】
次に、図8に示すように、ロックピン15を非固定状態にし、シリンダ40を上下に縮めて上部30を下方に変位させる。すると、上部30の下方への変位に伴い、ワイヤ51がてこ部52のフック部53を介して力点部55を下降させ、棒部54が支点部57を軸として下方に回動し、基部10が脚部71に対し相対的に下方に変位する。そして、保持部14の凹部14Aが金属管7の側壁に上方から当接することで、基部10が金属管7を上方から押さえた状態となる。これにより、金属管7の上方への移動が規制される。
【0038】
続いて、連結部68及び引抜部67を作業者が持ち上げ、図9に示すように、引抜部67に螺合した連結部68の上部と延在部60の連結孔部60Aとに連結ピン69を挿通することで、引抜部67が連結部68を介して延在部60に取り付けられた状態となる。このとき、引抜部67は、金属管7の内部から穴部7Aを通じて金属管7の外部にある延在部60に対し連結部68を介して取り付けられる。また、このとき、ワイヤ51を上部30及びフック部53から取り外し、シリンダ40の伸縮と第2変位機構50による基部10の変位とが連動していない非連動状態にした上で、シリンダ40を伸縮させることにより、延在部60の位置を上下に調節しながら、連結部68を引抜部67と延在部60とに挿通してもよい。尚、連結部68及び引抜部67の持ち上げは、延在部60から延びる補助ワイヤ(不図示)を連結部68に取り付けて、シリンダ40を縮ませることで持ち上げてもよい。また、連結部68及び引抜部67の持ち上げた後に、U字状の板状部材である補助具を金属管7の外部において連結部68に側方から差し込み、当該補助具を穴部7Aに橋掛けるようにして、連結部68及び引抜部67の位置を仮保持し、その後、連結部68を引抜部67と延在部60とに挿通してもよい。
【0039】
次に、図10に示すように、シリンダ40と第2変位機構50とが連動していない非連動状態において、シリンダ40を上下に伸ばすことで、上部30を基部10に対し上方に変位させ、引抜部67を穴部7Aから上方に引き抜く。すると、引抜部67のテーパ部67Aが穴部7Aの端部7A1に摺動することにより、穴部7Aが拡径しつつ、図11に示すように、その端部7A1が上方に立ち上がった形となる。立ち上げられた端部7A1には、金属管7とは異なる管を溶接等によって接合することで、金側管7を分岐させる分岐加工を行うことができる。これにより、例えばT字状の分岐管を用いることなく、金属管7を分岐させることができるので、接合箇所を減らすことができ、迅速に金属管7の分岐加工を行うことができる。
【0040】
その後、上部30とてこ部52をワイヤ51で連結し、シリンダ40の伸縮と第2変位機構50による基部10の変位とが連動する連動状態にし、シリンダ40を上下に伸ばして上部30及び基部10を脚部71に対し相対的に上方に変位させる。そして、保持部14の凹部14Aが金属管7の端部7A1よりも上方に変位した後、本体ユニット2を金属管7の側方(左方)に移動させる(図12参照)。このとき、ロックピン15を固定状態にして本体ユニット2を移動させてもよい。
【0041】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、穴部7Aが設けられた金属管7を押さえることが可能な基部10と、基部10の上方に配された上部30と、上部30を基部10に対し相対的に上下に変位させるシリンダ40と、上部30から下方に延在した延在部60と、延在部60に対し着脱可能とされ、穴部7Aよりも径が大きい引抜部67と、基部10の下方に配され基部10を移動可能とする車輪70と、を備え、引抜部67が金属管7の内部から穴部7Aを通じて延在部60に取り付けられ、基部10が金属管7を押さえて、シリンダ40が上部30を基部10に対し上方に変位させた場合に、引抜部67を穴部7Aから引き抜き可能な構成とされる、バーリング装置1を示した。
【0042】
このようなバーリング装置1によると、穴部7Aよりも径が大きい引抜部67を穴部7Aから引き抜くことにより、穴部7Aの端部をその引き抜き方向(上方)に立ち上げて、バーリングを行うことができる。また、基部10を移動可能とする車輪70を、バーリング装置1が備えているので、引抜部67の延在部60への取付のために、例えば穴部7Aの下方に配した引抜部67の上方に延在部60が位置するように、車輪70の回転によって基部10を金属管7に対し近接させることをスムーズに行うことができる。また、引抜部67を穴部7Aから引き抜いた後は、車輪70の回転によって基部10を金属管7に対し離間するようにスムーズに移動させることができる。これにより、クレーン等を用いることなく基部10を金属管7に近接・離間させることができ、容易にバーリングを行うことができる。
【0043】
バーリング装置1は、シリンダ40による上部30の変位に基づいて、基部10を車輪70に対し相対的に上下に変位させる第2変位機構50を備えている。
【0044】
このようなバーリング装置1によると、引抜部67を穴部7Aから引き抜くためのシリンダ40に係る動力を、車輪70に対する基部10の相対的な上下の位置を変位させる第2変位機構50に兼用することができる。これにより、コンパクト化によって自身の移動をよりスムーズにさせることや、省コスト化を実現可能なバーリング装置1を提供することができる。
【0045】
バーリング装置1は、車輪70が取り付けられた脚部71と、シリンダ40による上部30の変位に基づいて、基部10を脚部71に対し相対的に上下に変位させる第2変位機構50と、備え、第2変位機構50は、てこ部52と、てこ部52と上部30とを連結可能なワイヤ51と、を備え、てこ部52は、脚部71に連結した支点部57と、ワイヤ51に連結可能な力点部55と、基部10に連結した作用点部56と、を備えている。
【0046】
このようなバーリング装置1によると、てこ部52及び上部30へのワイヤ51の連結によってシリンダ40の動力を第2変位機構50にも伝える切り替えを容易にすることができる。また、上部30からワイヤ51を介して力点部55に力が加わると、支点部57を支点として作用点部56に上手く力を伝えることができる。これにより、基部10を脚部71に対して上下にスムーズに変位させることができる。
【0047】
基部10は、延在部60の下方に位置する開口部11を備え、力点部55は、支点部57及び作用点部56よりも開口部11側に位置している。このような構成によると、シリンダ40の動力を第2変位機構50に上手く伝えることができ、実用的なバーリング装置1を提供することができる。
【0048】
作用点部56は、支点部57よりも開口部11側に位置している。このようなバーリング装置1によると、シリンダ40の動力を第2変位機構50に一層上手く伝えることができ、より実用的なバーリング装置1を提供することができる。
【0049】
第2変位機構50は、一対のてこ部52を備え、ワイヤ51は、中央部51Bが上部30に連結し、両端部51Aが一対のてこ部52にそれぞれ連結可能とされる。このようなバーリング装置1によると、シリンダ40の動力を一つのワイヤ51を介して一対のてこ部52に対し均等に伝えることができ、さらに実用的なバーリング装置1を提供することができる。
【0050】
バーリング装置1は、車輪70が取り付けられた脚部71と、シリンダ40による上部30の変位に基づいて、基部10を脚部71に対し相対的に上下に変位させる第2変位機構50と、脚部71に対する基部10の位置を固定可能なロックピン15と、備えている。このようなバーリング装置1によると、第2変位機構50で変位させた基部10の位置をロックピン15によって固定することができるので、シリンダ40から動力を生じさせ続けて基部10の位置を固定する必要が無く、好適である。
【0051】
引抜部67と延在部60とに連結ピン69が挿通されることで、引抜部67が穴部7Aを通じて延在部60に取り付けられた状態となる。このようなバーリング装置1によると、引抜部67と延在部60との着脱を連結ピン69によりスムーズに行うことができ、好適である。
【0052】
また、本実施形態では、金属管7に穴部7Aを開け、金属管7を押さえることが可能な基部10と、基部10の上方に配された上部30と、上部30を基部10に対し相対的に上下に変位させるシリンダ40と、上部30から下方に延在した延在部60と、延在部60に対し着脱可能とされ、穴部7Aよりも径が大きい引抜部67と、基部10の下方に配され基部10を移動可能とする車輪70と、を備えるバーリング装置1を準備し、穴部7Aの下方に位置するように引抜部67を金属管7の内部に入れ、延在部60が穴部7Aの上方に位置するように基部10を移動させ、金属管7の内部から穴部7Aを通じて引抜部67を延在部60に取り付け、基部10で金属管7を押さえて、シリンダ40によって上部30を基部10に対し上方に変位させることで、引抜部67を穴部7Aから引き抜く、バーリング方法を示した。
【0053】
このようなバーリング方法によると、穴部7Aよりも径が大きい引抜部67を穴部7Aから引き抜くことにより、穴部7Aの端部をその引き抜き方向に立ち上げて、バーリングを行うことができる。また、基部10を移動可能とする車輪70によって基部10を金属管7に対しスムーズに近接・離間させることができ、基部10の移動にクレーン等を用いることが無く、容易にバーリングを行うことができる。
【0054】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0055】
(1)引抜部と延在部の取付構造は適宜変更可能である。上記実施形態では、連結部を介して引抜部と延在部とを取り付けることとしたが、これに限定されない。例えば、引抜部は、延在部に引っ掛かる等により直接取り付けられていてもよい。また、引抜部が管の穴部を通じて延在部に取り付けられる際は、穴部に引抜部が挿通されていてもよく、穴部に延在部が挿通されていてもよい。引抜部と延在部の取り付けは、管の内部において行われてもよい。
【0056】
(2)上記実施形態では、第1変位機構は油圧式のシリンダとしたが、これに限定されない。例えば、第1変位機構は、電動式のシリンダであってもよい。その場合、バーリング装置は、ポンプユニットを備えず、基部に制御部や手元操作ボタンが設けられ、第1変位機構に直接通電される構成であってもよい。
【0057】
(3)基部が管を上方から押さえる工程と、引抜部を延在部に取り付ける工程は、順序が逆でもよい。即ち、引抜部を延在部に取り付けた後に、基部が管を押さえるように基部を下降させてもよい。
【0058】
(4)引抜部の形状は特に限定されない。引抜部は、管の内部から穴部を通して管の外部に引き抜かれることで、穴部の端部をその引き抜き方向に立ち上げ可能な形であればよい。
【符号の説明】
【0059】
1…バーリング装置、5…油圧ホース、7…金属管(管)、7A…穴部、10…基部、11…開口部、15…ロックピン(固定部)、30…上部、40…シリンダ(第1変位機構)、50…第2変位機構、51…ワイヤ、51A…両端部、51B…中央部、52…てこ部、55…力点部、56…作用点部、57…支点部、60…延在部、67…引抜部、69…連結ピン、70…車輪、71…脚部
図1
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図12