(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】遠心力で操作されるブレーキを備えたホイスト用のスピードリミッタ
(51)【国際特許分類】
B66D 5/06 20060101AFI20240216BHJP
B66B 5/04 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B66D5/06
B66B5/04 B
(21)【出願番号】P 2021526750
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2019081752
(87)【国際公開番号】W WO2020104428
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】202018005316.3
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】202019105089.6
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521209395
【氏名又は名称】ウィター ホールディング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WITTUR HOLDING GMBH
【住所又は居所原語表記】Rohrbachstr.26-30 85259 Wiedenzhausen (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】ホルザー,レネ
(72)【発明者】
【氏名】ダッシュバチャー,レオポル
(72)【発明者】
【氏名】ラスウルム,クリストップ
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-060584(JP,A)
【文献】特開平08-119555(JP,A)
【文献】国際公開第2010/23745(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007052280(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第1800270(DE,A1)
【文献】特開2009-154984(JP,A)
【文献】国際公開第2012/86026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 5/06
B66B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイスト用、特にリフト設備用のスピードリミッタ(1)であって、
主軸(H)を中心に回転し、スピードリミッタロープによって駆動されるロープシーブ(4)と、
前記ロープシーブ(4)を制動するためのブレーキと
を具備し、
前記ブレーキは、前記ロープシーブ(4)に揺動可能に軸支された偏心片(7a、7b)を少なくとも1つ具備し、
前記ブレーキは、第1遠心力作用おもり(8a)と、第2遠心力作用おもり(8b)とを具備し、
前記偏心片(7a、7b)は、前記第1遠心力作用おもり(8a)に揺動可能に軸支されていて、かつ前記第2遠心力作用おもり(8b)に揺動可能に軸支されていて、
前記第1および前記第2遠心力作用おもり(8a、8b)が遠心力によってシフトされる場合、前記第1および前記第2遠心力作用おもり(8a、8b)は、前記偏心片(7a、7b)を揺動し、
前記ブレーキは、ばねシステムを有するリセットユニット(10)を具備し、前記リセットユニットは、前記遠心力作用おもり(8a、8b)を、前記ばねシステムによって提供されるばね力でその偏位のない位置(9)の方向に引っ張る、
スピードリミッタ(1)において、
前記ばねシステムは、前記ロープシーブ(4)の電気的切り替え速度までは第1ばね定数(D1)を有し、
前記ばねシステムは、前記ロープシーブ(4)の前記電気的切り替え速度以降は第2ばね定数(D2)を有し、かつ
前記第2ばね定数(D2)が前記第1ばね定数(D1)よりも大き
く、
前記ばねシステムが、前記第1ばね定数(D1)を有する第1ばね(11)と、第2ばね(13)とを有し、かつ
前記第2ばね定数(D2)は、前記第1および前記第2ばね(11、13)のばね定数の相互作用、特に加算から得られることを特徴とする、スピードリミッタ(1)。
【請求項2】
前記第1ばね定数(D1)が一定であることを特徴とする、請求項1に記載のスピードリミッタ。
【請求項3】
前記第2ばね定数(D2)が一定であることを特徴とする、請求項1または2に記載のスピードリミッタ。
【請求項4】
前記第1ばね(11)が圧縮ばねであり、一方のばね端部(15a)で前記第1遠心力作用おもり(8a)に支持され、かつ
前記第1ばね(11)が、他方のばね端部(15c)でばね支持部(16)に支持され、
前記ばね支持部(16)が、前記第2遠心力作用おもり(8b)に動作可能に連結されていることを特徴とする、請求項
1に記載のスピードリミッタ。
【請求項5】
前記第2ばね(13’’)は引張ばねであり、
前記第2ばね(13’’)は、一方のばね端部(17a’’)で前記第1遠心力作用おもり(8a)に取り付けられていて、特に掛けられていて、かつ
前記第2ばね(13’’)は、他方のばね端部(17c’’)で前記第2遠心力作用おもり(8b)に取り付けられていて、特に掛けられていることを特徴とする、請求項
1または
4に記載のスピードリミッタ。
【請求項6】
前記第2ばね(13)は、ねじりばねであり、一方の腕部が前記偏心片(7a、7b)上で支持され、他方の腕部が、最も遅くとも前記電気的切り替え速度以降に双方の前記遠心力作用おもり(8a、8b)の一方の上で支持されることを特徴とする、請求項
1、4および5のいずれか1項に記載のスピードリミッタ。
【請求項7】
前記遠心力作用おもり(8a、8b)の1つに、ストッパボルトが取り付けられており、かつ
前記ストッパボルトが前記第2ばね(13)用のストッパとして機能することを特徴とする、請求項
1および4~6のいずれか1項に記載のスピードリミッタ。
【請求項8】
前記ストッパボルトが偏心ボルト(18a、18b)として実施されていることを特徴とする、請求項
7に記載のスピードリミッタ。
【請求項9】
前記第2ばね(13)が付勢されていることを特徴とする、請求項
1および4~8のいずれか1項に記載のスピードリミッタ。
【請求項10】
前記第2ばね(13)が、ばねホルダ(22)に固定されていて、前記ばねホルダが前記偏心片(7a、7b)に変位可能に取り付けられていて
特に、前記ばねホルダ(22)を変位させることにより、前記第2ばね(13)の前記付勢が設定可能であることを特徴とする、請求項
9に記載のスピードリミッタ。
【請求項11】
前記第2ばね(13)の一端が、前記電気的切り替え速度までは、長穴(23、32)中で移動可能であり、かつ
前記長穴(23、32)が、特に前記双方の遠心力作用おもり(8a、8b)の1つの中に配置されていることを特徴とする、請求項
1および4~10のいずれか1項に記載のスピードリミッタ。
【請求項12】
前記ブレーキは、前記ロープシーブ(4)に揺動可能に軸支された2つの偏心片(7a、7b)を具備し、
前記偏心片(7a、7b)のそれぞれは、前記第1遠心力作用おもり(8a)に揺動可能に、かつ前記第2遠心力作用おもり(8b)に揺動可能に軸支されていて、
前記第1および前記第2遠心力作用おもり(8a、8b)が遠心力によってシフトした場合に、前記第1および前記第2遠心力作用おもり(8a、8b)は前記偏心片(7a、7b)を揺動させ、
前記第1ばね(11)が、2つの特に同一の第1単独ばね(12a、12b)からなり、
前記各第1単独ばね(12a、12b)が、その一方のばね端部(15a、15b)で、前記双方の遠心力作用おもり(8a、8b)の一方に支持され、
前記各第1単独ばね(12a、12b)が、その他方のばね端部(15c、15d)でばね支持体(16)に支持され、
前記双方の第1単独ばね(12a、12b)が、前記ばね支持体(16)を介して互いに動作可能に連結されており、
前記第2ばね(13)が、それぞれ2つの特に同一構造を有する第2単独ばね(14a、14b)からなり、
特に、少なくとも前記電気的切り替え速度以降は、前記第2単独ばね(14a、14b)のそれぞれが、そのばね端部(17a、17b)の一方で、前記双方の遠心力作用おもり(8a、8b)のうちの1つに支持され、そのばね端部(17c、17d)の他方で、それぞれ1つの偏心片(7a、7b)に支持される
ことを特徴とする、請求項
1および4~11のいずれか1項に記載のスピードリミッタ。
【請求項13】
前記第1ばね(11)が付勢されていて、
特に、通常の運転動作で発生する公称回転速度よりも最大で約10%、特に最大で約5%、特に最大で約2~3%より高い回転数からのみ、発生する遠心力が前記遠心力作用おもり(8a、8b)を動かすような強さで、前記第1ばね(11)が付勢されていることを特徴とする、請求項1~
12のいずれか1項に記載のスピードリミッタ。
【請求項14】
ばねシステムの力に抗して、遠心力で作動する、ホイスト用、特にリフト設備用のスピードリミッタ(1)であって、
前記スピードリミッタ(1)は、第1切り替え速度を有し、前記第1切り替え速度は、それを上回る速度では、前記スピードリミッタは、好ましくは駆動鋼車または駆動鋼車シャフトを制動するブレーキの形態でのブレーキをかけ、
前記スピードリミッタ(1)は、より速い第2切り替え速度を有し、前記第2切り替え速度に達すると、前記スピードリミッタは、好ましくはそれ自体で制動または遮断し、その後、スピードリミッタケーブルには張力をかけられ、これにより少なくとも1つのさらなる方策をトリガーする
スピードリミッタ(1)において、
前記ばねシステムは、前記第1切り替え速度まで、または好ましくはいずれにしてもその近い範囲(±20%)まで、第1ばね定数(D1)を有し、
前記ばねシステムは、その後第2ばね定数(D2)を有し、かつ、
前記第2ばね定数(D2)は前記第1ばね定数(D1)よりも大き
く、
前記ばねシステムは、少なくとも一対のばねを有し、そのうち第1ばねは、前記第1ばね定数を単独で表す一方、第2ばねは、その端部のうちの少なくとも一方の領域中では、最初は、前記第2ばねが力をかけうる部材とまだ接触しないように遊びを持って固定されていて、かつ
また、前記第2ばねは、前記スピードリミッタの少なくとも1つの構成要素の遠心力による位置移動の結果、両端で前記第1ばねに対して当接し、その後、前記第1ばねとともに前記第2ばね定数を表すように固定されていることを特徴とする、スピードリミッタ(1)。
【請求項15】
前記ばねシステムは、少なくとも一対のばねからなり、前記一対のばねのうちの一方のばねはコイルばねであり、他方のばねは、ねじりばねまたは回転ばねであり、すなわち、中心に円筒状のコイルを備えていて、前記コイルから前記コイルをねじる腕部が突出していることを特徴とする、請求項
14に記載のスピードリミッタ。
【請求項16】
前記ねじりばねまたは前記回転ばねでは、保持スパイクが貫通していることを特徴とする、請求項
14または15に記載のスピードリミッタ。
【請求項17】
前記腕部のうちの1つの支持点を位置移動させることにより、前記ねじりばねまたは前記回転ばねの付勢および/またはこれが有効になる時点を設定することを特徴とする、請求項
14~16のいずれか1項に記載のスピードリミッタ。
【請求項18】
ガイドレール上で案内されるリフトケージと、駆動システムと、前記リフトケージの許容できない移動状態を終了させるために前記ガイドレールと協働する制動装置と、前記制動および安全装置をトリガーさせるための請求項1~
17のいずれか1項に記載のスピードリミッタ(1)とを備えた搬送手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のスピードリミッタに関し、かつガイドレール上で案内されるリフトケージを備えたコンベヤとそれに対応するスピードリミッタとを備えた搬送手段に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスピードリミッタは、特にロープ式リフトおよびロープ油圧式リフトで採用され、リフトケージが許容できない方法または許容できない速度で動くとすぐに、ブレーキおよび/または安全装置を作動させる。ここで、「リフトケージ」という概念は広く解釈されるべきで、あらゆるタイプのキャビン、荷物搬送部、荷物積載プラットフォームなどが対象となる。
【0003】
数多くの公知のスピードリミッタが、遠心力で作動するブレーキの原理に基づく。この場合、通常はロープシーブと、このロープシーブに連結された遠心力作用おもりが設けられていて、ロープシーブが静止しているときには、このおもりは偏位のない位置にあり、回転数が上昇すると遠心力によって半径方向外側に駆動されるようになっている。個々の遠心力作用おもりを、ばねを介して保持し、ばねが発揮する力は、遠心力に対抗する。一方で、ばねは、回転数が低下すると、遠心力作用おもりを偏位のない位置に戻すために機能する。他方、ばねは、遠心力作用おもりの移動距離を減らすために機能する。
【0004】
最近のスピードリミッタは、通常、公称速度(すなわち、ホイストの通常の動作速度)を上回る少なくとも2つの速度を検出する。検出されうる速度は、電気的切り替え速度と、電気的切り替え速度よりも速い機械的切り替え速度である。これらの切り替え速度は、それぞれ遠心力作用おもりの偏位を介して測定され、その偏位は、ばね力と遠心力とに依存する。電気的切り替え速度が検出されると、電気手段、特に駆動モータを介して、ホイストの走行速度が低下する。機械的切り替え速度が検出されると、ホイストの安全装置のスイッチが入れられる。
【0005】
遠心力で操作されるブレーキを備えた公知のスピードリミッタの問題は、遠心力が、遠心力作用おもりの回転軸からの距離に比例して増加し、回転速度の増加に対して二次関数的に増加するため、従来のスピードリミッタでは、切り替え速度の検出感度が高くなってしまうという問題があった。これにより、電気的・機械的切り替え速度を検出する手段の設定が非常に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、簡単に設定しうるスピードリミッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を備えたスピードリミッタによって解決される。
【0008】
これによれば、ホイスト用、特にリフト設備用のスピードリミッタが設けられていて、これは、主軸(H)を中心に回転しスピードリミッタロープによって駆動されるロープシーブと、ロープシーブを制動するためのブレーキとを具備する。このブレーキは、ロープシーブに揺動可能に軸支された偏心片を少なくとも1つ具備し、またこのブレーキは、第1遠心力作用おもりと、第2遠心力作用おもりとを具備する。この偏心片は、第1遠心力作用おもりに揺動可能に軸支されていて、かつ第2遠心力作用おもりに揺動可能に軸支されていて、第1および第2遠心力作用おもりが遠心力によってシフトする場合、これらの第1および第2遠心力作用おもりは、偏心片を揺動する。このブレーキは、ばねシステムを有するリセットユニットを具備し、このリセットユニットは、遠心力作用おもりを、ばねシステムによって提供されるばね力でその偏位のない位置の方向に引っ張る。このばねシステムは、ロープシーブの電気的切り替え速度まで(=好ましくは正確にこの値「まで」、広義には上下に+25%まで、より好ましくは上下+10%までのみ、理想的には上下+7.5%までの範囲)は第1ばね定数を有し、かつロープシーブの電気的切り替え速度以降は第2ばね定数を有する。第2ばね定数が第1ばね定数よりも大きい。特に、第2ばね定数は、第1ばね定数よりも約1.05倍、合目的には約1.5倍、特に合目的には約2倍大きい。
理想的には、ばねが作動すると、特性曲線がすぐに上昇し、その後は平坦な特性曲線になるように、第2ばねは付勢されうる。
【0009】
このようにして、非線形および/または不連続な、特に部分的に線形であるばね特性曲線が達成され、これにより、偏位がより大きい場合、特に電気的切り替え速度以降の場合に、ばね定数が偏位全体にわたって一定であるばね特性曲線と比較して、非線形および/または不連続性がゆえに、ばね力がより激しく増加する。その結果、遠心力が大きく高速の場合には、大きなばね力も発生する。さらに、双方のばね定数を互いに依存せず選択することで、スピードリミッタの双方のトリガー点を互いに依存せずより簡単に設定することができる。特に、電気的・機械的切り替え速度を検出する手段の設定は非常に簡単に可能になる。
【0010】
合目的には、第1ばね定数は一定である。合目的には、第2ばね定数は一定である。これにより、市販の安価なばねを採用することができる。さらに、ばね定数が一定であれば、電気的・機械的切り替え速度を検出する手段の設定が非常に容易に可能になる。
【0011】
本発明のさらなる実施形態
有利であるのは、ばねシステムが、第1ばね定数を有する第1ばねと、第2ばねとを有し、かつ第2ばね定数が、第1ばねのばね定数と第2ばねのばね定数との相互作用、特に加算から得られる場合である。合目的には、電気的切り替え速度に達するまでは、第2ばねは遠心力作用おもりに力を加えない。互いに依存しない双方のばねにより、電気的および機械的切り替え速度のトリガー点を、特に良好かつ容易に設定することができる。
【0012】
あるいは、単独のばねからなるばねシステムを採用することもでき、この単独のばねは、部分によって、第1および第2ばね定数を有する。合目的には、このような単独のばねは、コイルばね、特に引張ばねまたは圧縮ばねである。このような単独のばねは、特に円錐ばね、すなわち特に円錐形であってもよい。あるいは、この種の単独のばねは、加わる力に応じて個々のばね部分がブロック上にあるように設計されうる。単独のばねのみを使用することで、構成が単純化され、必要に応じて特に小型化することができる。
【0013】
好ましくは、第1ばねが圧縮ばねとして形成されていて、一方のばね端部で第1遠心力作用おもりに支持され、このばねが、他方のばね端部でばね支持部に支持され、かつ、ばね支持部が、第2遠心力作用おもりに動作可能に連結されている。これにより、双方の遠心力作用おもりは、ばねを介して互いに結合されている。
【0014】
合目的には、第2ばねは引張ばねであり、この第2ばねは、一方のばね端部で第1遠心力作用おもりに取り付けられていて、特に掛けられていて、かつこの第2ばねは、他方のばね端部で第2遠心力作用おもりに取り付けられていて、特に掛けられている。
【0015】
有利な場合、第2ばねは、ねじりばね(これは、回転ばねとも称する)として形成されていて、一方の腕部が偏心片上で支持され、他方の腕部が、最も遅くとも電気的切り替え速度以降に、双方の遠心力作用おもりの一方の上で支持される。さらなるある形成では、一方の腕部が双方の遠心力作用おもりのうちの1つの上で支持されることができ、かつ他方の腕部が、最も遅くとも電気的切り替え速度以降に、偏心片上で支持される。
【0016】
好ましくは、遠心力作用おもりのうちの1つに、ストッパボルト理想的には長穴が取り付けられており、かつこのストッパボルトまたは長穴が第2ばね用のストッパとして機能する。合目的には、第2ばね、特に第2ばねの腕部がこのストッパに接触するまで、ある程度の移動距離が設けられる。特に、第2ばね特に第2ばねの腕部は、電気的切り替え速度以降で初めてストッパに接触する。これにより、遠心力に対抗して作用する閉じる力が大きくなる。
【0017】
合目的には、ストッパボルトが偏心ボルトとして実施されている。これにより、偏心ボルトを回転させることで、ねじりばねが効く時点を簡単および正確に設定することができる。
【0018】
有利な場合には、第2ばねは付勢されている。これにより、第2ばねが有効になったときに、ばね特性曲線のほぼ急激な上昇を発生させることができ、それによって、遠心力作用おもりの距離節約がさらに最適化される。さらに、第2ばねは、比較的平坦なばね特性曲線、すなわち比較的小さいばね定数、特に第1ばねのばね定数よりも小さいばね定数を備えていて、しかし特に必要な力を加えることができる。その結果、第2ばねの付勢によってばね特性曲線が急激に上昇した後、再び平坦なばね特性曲線が得られる。これにより、この領域は、特段の感度がなくても簡単に設定することができる。
【0019】
好ましくは、第2ばねは、ばねホルダに固定されていて、このばねホルダは偏心片に変位可能に取り付けられていて、かつ、特に、ばねホルダを変位させることによって、第2ばねの付勢が設定可能である。この固定を変位させることで、ばねの付勢を変更でき、システムの設定が容易になる。
【0020】
合目的には、第2ばねの一端が、電気的切り替え速度までは、長穴中で移動可能であり、この際、この長穴が、特に双方の遠心力作用おもりのうちの1つの中に配置されている。この場合、ばねによる力の伝達はない。遠心力によって遠心力作用おもりが十分に移動すると、特にばねが長穴の端に当接し、ばねが力を伝達する。これにより、電気的切り替え速度までは、第2ばねが力を伝達しないことを容易に確保することができる。
【0021】
有利な場合には、ブレーキは、ロープシーブに揺動可能に軸支された2つの偏心片を具備し、偏心片のそれぞれは、第1遠心力作用おもりに揺動可能に取り付けられ、かつ第2遠心力作用おもりに揺動可能に軸支されていて、第1および第2遠心力作用おもりが遠心力によってシフトした場合に、これらの第1および第2遠心力作用おもりは偏心片を揺動させ、第1ばねが、2つの特に同一の第1単独ばねからなり、各第1単独ばねが、その一方のばね端部で、双方の遠心力作用おもりの一方に支持され、各第1単独ばねが、その他方のばね端部でばね支持体に支持され、双方の第1単独ばねが、ばね支持体を介して互いに動作可能に連結されており、第2ばねが、それぞれ2つの特に同一構造を有する第2単独ばねからなり、特に、少なくとも電気的切り替え速度以降は、第2単独ばねのそれぞれが、そのばね端部の一方で、双方の遠心力作用おもりのうちの1つに支持され、そのばね端部の他方で、それぞれ1つの偏心片に支持される。
【0022】
好ましくは、第1ばねが付勢されている。合目的には、特に公称回転速度(すなわち、ホイストの通常の動作速度)よりも少し上まで、特に約10%、合目的には約5%、特に合目的には約2%~3%より高い回転数までは、遠心力によって、偏位していない位置からの遠心力作用おもりの移動が起こらない程度の強さまで、第1ばねが付勢されている。
【0023】
合目的には、搬送手段は、ガイドレール上で案内されるリフトケージと、駆動システムと、リフトケージの許容できない移動状態を終了させるためにガイドレールと協働する制動装置と、制動および安全装置をトリガーさせるための請求項1~14のいずれか1項に記載のスピードリミッタとが設けられている。
【0024】
本発明のさらなる利点、作用、および可能な構成形態は、図を参照して以下に説明する実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】部分的に組み立てられたスピードリミッタの概要を図示する概略図である。
【
図2】ロープシーブを備えた部分的に組み立てたられたスピードリミッタの第1実施形態の正面図であり、遠心力作用おもりを備え、これが偏位のない位置にある状態の図である。
【
図3】部分的に組み立てられたスピードリミッタの第1実施形態の正面図であり、ロープシーブが電気的切り替え速度で回転する状態を示す図である。
【
図4】部分的に組み立てられたスピードリミッタの第1実施形態の分解斜視図である。
【
図5】スピードリミッタを組み立てた状態を示す概略図である。
【
図6】ロープシーブを備えた部分的に組み立てたられたスピードリミッタの第2実施形態の正面図であり、遠心力作用おもりを備えていてこれが偏位のない位置にある状態である正面図である。
【
図7】ロープシーブを備えた部分的に組み立てられたスピードリミッタの第2実施形態の透視図であり、遠心力作用おもりを備えていてこれが偏位のない位置にある状態の図である。
【
図8】部分的に組み立てられたスピードリミッタの第2実施形態の正面図であり、ロープシーブが電気的切り替え速度で回転する状態を示す図である。
【
図9】部分的に組み立てられたスピードリミッタの第2実施形態の正面図であり、ロープシーブが機械的切り替え速度で回転する状態を示す図である。
【
図10】偏心片の領域中の詳細図で、ロープシーブが機械的切り替え速度で回転する状態を示す図である。
【
図11】偏心片の領域中の詳細図で、ロープシーブが回転しない状態を示す図である。
【
図12】偏心片の領域中の詳細を示す分解図である。
【
図13】ロープシーブを備えた部分的に組み立てられたスピードリミッタの第3実施形態の正面図であり、ロープシーブが電気的切り替え速度で回転する状態を示す図である。
【
図14】部分的に組み立てられたスピードリミッタの第3実施形態の透視図であり、ロープシーブが電気的切り替え速度で回転する状態を示す透視図である。
【
図15】遠心力作用おもりの領域中の詳細図であり、ロープシーブが電気的切り替え速度で回転する状態を示す詳細図である。
【
図16】偏心片の領域中の詳細図であり、ロープシーブが電気的切り替え速度で回転する状態を示す詳細図である。
【
図17】リフトの速度に対して遠心力作用おもりにかかる遠心力を図示した概略図である。
【
図18】1つのばね定数を持ち付勢された第1ばねのばね特性曲線を示す概略図である。
【
図19】部分ごとに異なるばね定数を持ち付勢された第1ばねのばね特性曲線を示す概略図である。
【
図20】部分ごとに異なるばね定数を持ち付勢された第1および第2ばねを持つばね特性曲線を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1実施形態
図1では、スピードリミッタ1の一部を示している。スピードリミッタ1は、好ましくは人および/または品物を搬送する不図示の垂直リフト用に構想されているが、場合によっては、許容できない走行状態を検出するために走行移動を恒常的に監視する必要がある他の類似のホイストや搬送設備用にも採用することができる。
【0027】
必須ではないが、理想的には、スピードリミッタ1はその基本概念では、同一出願人のこれ以前の独国特許10 2007 052 280号から公知である従来のスピードリミッタと同様に設計されている。この特許出願は、その全体が本明細書の開示内容の一構成部分として参照されるので、この特許出願で好ましい実施形態として説明されているスピードリミッタの基本的な機能および基本的な構造を再度説明するには及ばない。既存の出願書面と区別される特徴を引き継ぐ権利が留保されている。
【0028】
スピードリミッタ1は支持構造体2を有し、これは、ここではL字型の鋼板からなる。この鋼板には、片側に突出したスタブアクスル3が固定されている。
【0029】
このスタブアクスル3は、スピードリミッタ1の主軸Hを予め規定する。このスタブアクスル3には、スピードリミッタロープ(図面中では不図示)用のロープシーブ4が回転可能に軸支されている。
【0030】
ロープシーブ4の横で、スタブアクスル3上には、ブレーキロータ5が取り付けられている。このブレーキロータ5は、ここでは円盤状の形状をしているが、本実施形態では、その周面が摩擦面であるので、ドラムブレーキのように作用する。
【0031】
ロープシーブ4は、その一端面に軸受けボルト6が設けられている。これらの軸受けボルト6は、それぞれ副軸Nを形成していて、これらは、通常それぞれ主軸Hと平行に配置されている。これらの上には、それぞれ1つの偏心片7a、7bが回転可能に軸支されている。偏心片7a、7bは、偏心ディスクまたは中間片などとみなすこともできる。これらの偏心片7a、7bのそれぞれは、必要に応じて適切な装備が施されており(ここでは不図示)、機能的にブレーキシューを形成している。各偏心片7a、7bが十分長い距離回転すると、ブレーキロータ5と制動接触する。大概(ここでは不図示の)幾何学形状では、偏心片7a、7bの十分長い距離の回転によりブレーキロータとの最初の摩擦接触が発生すると、すぐに制動効果自体が増大する。横方向の力の補償を達成するために、合目的には、可能な限り直径方向に対向する少なくとも2つの偏心片7a、7bが設けられている。3つ、4つ、またはそれ以上の偏心片7a、7bを有する変形実施形態が考えられるが、ここでは図示していない。
【0032】
偏心片7a、7b側ではそれぞれに、
図4に示すように、2つの結合ボルト2200が設けられている。偏心片7a、7b中には、結合ボルト2200用の結合ボルト孔220が設けられている(
図1参照)。その結合ボルト2200のうちの1つを介して、関連する偏心片7a、7bは、
図2に示す第1遠心力作用おもり8aに連結されている。他方の結合ボルト2200を介して、該当する偏心円板7a、7bは、第2遠心力作用おもり8bに連結されている。この点は、
図2を参照するとよくわかる。
【0033】
特許法の観点からは、「第1偏心片」および「第2偏心片」ならびに「第1遠心力作用おもり」および「第2遠心力作用おもり」などの概念は、まずは数についての制限を表すものではないことをおさえておくべきである。しかし、2つの偏心片、2つの遠心力作用おもりなどのみを使用することで、部品コストを低く抑えることができるので、好ましい実施形態である。必要に応じて、1つの遠心力作用おもり8a、8bだけ、および/または1つの偏心片7a、7bだけを設けることが合目的でありうる。必要に応じて、3つ以上の遠心力作用おもり8a、8bおよび/または3つ以上の偏心片7a、7bを設けることが合目的でありうる。
【0034】
本実施形態では、双方の遠心力作用おもり8a、8bは半円盤状に形成されている。特定の場合では、これらの好ましくは板金からなる半円盤の正味の質量は、応答が意図された通りに行われるはずの回転数で十分な遠心力を展開するのに十分な質量である。また、別の場合には、これらの半円盤に追加のおもりを設けることもできる。
【0035】
双方の遠心力作用おもり8a、8bのいずれも、それ自体は直接主軸Hに対して軸支されていず、またスタブアクスル3上にも軸支されていない。これに代えて、これらの遠心力作用おもりは、偏心ディスク7aおよび7b(遠心力作用おもりは、これらと結合ボルト2200を介して結合され)によって、および、すぐ後でより詳しく説明するリセットユニット10によってよみ、その位置に保持され、遠心力作用おもり8aおよび8bが十分大きい回転数で半径方向外向きに位置移動できるようになっている。
【0036】
図2を見ると、遠心力作用おもり8a、8bは、それぞれに作用する遠心力が、遠心力作用おもり8a、8bをその偏位のない位置9に保持するばね力(これについては、後で詳しく説明する)に打ち勝つのに十分な大きさになると、遠心力作用おもり8a、8bが、対抗する方向である半径方向外側(矢印VRの方向)に移動するという点が容易に理解できる。
【0037】
これにより、偏心ディスク7a、7bにトルクが発生し、このトルクが、偏心ディスクや、これらをそれぞれ担持しているブレーキライニング(これも不図示)を回転させ、
図1に示したブレーキロータ5に接触するようにし、通常続いて、すでに述べた自己補強効果の結果、遮断が発生する。その結果、ロープシーブ4が制動される。スピードリミッタロープに引張力が生じる。これにより、これに固定されたブレーキまたは安全装置が作動するようになる。
【0038】
ここで重要であるのは、偏心ディスク7a、7bの回転により、遠心力作用おもりを保持している結合ボルト22の主軸Hに対する位置が変化するので、
図2に示す遠心力作用おもり8a、8bが、純粋に半径方向に外側に位置移動するだけでなく、ある程度の横方向の動きもすることを認識することである。したがって、双方の遠心力作用おもり8aまたは8bのそれぞれは、その半径方向外側への位置移動の過程で、横方向にも少しずつ位置移動する。これは、双方の遠心力作用おもり8aまたは8bが、それ自体が主軸Hに対して直接軸支されていない理由でもある。
【0039】
本発明で特に興味深いのは、リセットユニット10である。このリセットユニット10は、
図2、
図3および
図4に基づいて最もよく説明することができる。リセットユニット10は、ばねシステムを具備し、このばねシステムは、これによって提供されるばね力で、遠心力作用おもり8a、8bをその偏位のない位置9に向かって引っ張る。
【0040】
このばねシステムは、第1ばねを具備する。
図2による実施形態では、第1ばねは、好ましくは2つ(またはそれ以上)の第1単独ばね12a、12bからなる。双方の第1単独ばね12a、12bは、同一の構造で実施されている。この実施形態では、双方の第1単独ばね12a、12bは、コイルばねとして形成されている。
【0041】
双方の第1単独ばねのうち第1の第1単独ばね12aは、その一方のばね端部15aで第1遠心力作用おもり8aに支持されている。その他方のばね端部15cでは、双方の第1単独ばねのうちの第1の第1単独ばね12aは、
図4に示すばね支持部16に支持されている。双方の第1単独ばねのうち第2の第1単独ばね12bは、その一方のばね端部15bで第2遠心力作用おもり8bに支持されている。その他方のばね端部15dでは、双方の第1単独ばね12bのうちの第2の第1単独ばねは、ばね支持部16に支持されている。このように、双方の第1単独ばね12a、12bは、ばね支持部16を介して互いに作用連結されている。
【0042】
ばねシステムは、
図2に示す第2ばねを具備する。
図2による実施形態では、第2ばねは、2つの第2単独ばね14a、14bからなる。双方の第2単独ばね14a、14bは、同一の構造で実施されている。この実施形態では、双方の第2単独ばね14a、14bは、ねじりばね(回転ばねとも呼ばれる)として形成されている。
【0043】
双方の遠心力作用おもり8a、8bのそれぞれには、偏心ボルト18a、18bの形態のストッパボルトが固定されている。これらの偏心ボルト18a、18bの形態のストッパボルトは、第2ばね(これは、双方の第2単独ばね14、14bの形態を有する)用のストッパとして機能する。双方の第2単独ばねのうちの第1の第2単独ばね14aは、その一方のばね端部17aというかその一方の腕部で、第2偏心ボルト18bに支持されることができる。その他方のばね端部17cというか他方の腕部では、双方の第2単独ばね14aのうちの第1の第2個単独ばねが第1偏心片7aに支持されている。その1つのばね端部17bというかその1つの腕部で、双方の第2単独ばねのうちの第2の第2単独ばね14bは、第1偏心ボルト18aに支持され得る。その他方のばね端部17dというか他方の腕部では、双方の第2単独ばね14bのうちの第2の第2単独ばねが第2偏心片7aに支持されている。
【0044】
図2に示す遠心力作用おもり8a、8bの偏位のない位置9では、第2単独ばね14a、14bの一方のばね端部17a、17cは、偏心ボルト18a、18bに支持されていない、すなわちまだばねが活性化していない。
【0045】
ロープシーブ4と、これに伴って双方の遠心力作用おもり8a、8bとが、第1電気的切り替え速度よりも低い速度で回転し始めると、その回転と遠心力作用おもり8a、8bの質量とから生じる遠心力が、双方の第1単独ばね12a、12bの形態の第1ばねを押し、この際、遠心力は、第1ばねのばね力(第1単独ばね12a、12bを用いて、およびばね支持部16を介して発生する)を介して、平衡状態で補償される。好ましくは、第1電気的切り替え速度まで、またはそれ以上では、ばねシステムは第1ばね定数D1を有し、この際、本実施形態のばね定数D1は、双方の第1単独ばね12a、12bの双方のばね定数を加算したものである。
【0046】
ロープシーブ4の回転数が第1電気的切り替え速度まで、またはそれ以上に増加した場合、偏心片7a、7bには、これに固定された第2単独ばね14a、14bと共に揺動し、双方の第2単独ばね14a、14bのばね端部17a、17bが偏心ボルト18a、18bに当接する。第1電気的切り替え速度以上の速度では、遠心力作用おもり8a、8bの回転と質量とに由来する遠心力が、双方の第1単独ばね12a、12bの形態の第1ばねを押し、その遠心力は、第1ばねのばね力を介して、第1単独ばね12a、12bを介して、およびばね支持部16を介して、双方の第2単独ばね14a、14bの形態の第2ばね上に発生し、それによって、このばね力は、平衡状態で補償されることになる。したがって、第1電気的切り替え速度以上では、ばねシステムは第2ばね定数D2を有し、本実施形態のばね定数D2は、双方の第1単独ばね12a、12bおよび双方の第2単独ばね14a、14bの双方のばね定数を加算して合わせたばね定数となる。
【0047】
本実施形態では、個々のばね12a、12b、14a、14bの全てのばね定数、およびしたがって第1ばねの第1ばね定数と第2ばねの第2ばね定数とは一定である。
【0048】
図4では、偏心ボルト18aが、止めナットまたは薄ナット19とのねじ接続の形態で、第2遠心力作用おもり8bに固定されていることがはっきりとわかる。同様に、他方の偏心ボルト18bは、不図示のこのようなナットとのねじ接続の形態で、第1遠心力作用おもり8aに取り付けられている。偏心ボルト18a、18bは、頭部側にスリット(一本、十字スリットまたは星形)を有している。これは、ドライバーを当てるために設けられている。偏心ボルト18a、18bの頭部は、偏心して回転する。これにより、偏心ボルトから、それぞれの第2単独ばね14a、14bの端部までの相対的な距離を容易に設定することができる。これにより、いずれの回転数以降で、第2単独ばね14a、14bの形態の第2ばねが偏心ボルト18a、18bに当接するかを設定し、システム全体におけるばね定数を高くすることができる。
【0049】
図5は、スピードリミッタ1が完全に組み立てられた状態を示している。スピードリミッタ1には、スイッチ形態の手段20が取り付けられている。そして、ロープシーブ4が予設定された速度、特に電気的切り替え速度を上回ると、このスイッチが切り替わる。続いて、電気信号が、ホイストを制御するための図面中では不図示の電子制御装置に送られ、それによって、例えば、ホイストの速度が低下するように電気モータが絞られる。
【0050】
さらにホイストの速度が機械的切り替え速度にまで上がると、ロープシーブ4がブレーキにより制動され、ロープシーブの周りを走行しキャビンに接続されているロープが機械的な制動を引き起こす。
【0051】
第2実施形態
図6~
図12は、スピードリミッタ1’の第2実施形態を示す。
【0052】
第2実施形態のスピードリミッタ1’は、第1実施形態のスピードリミッタ1と実質的に同じであるため、第1実施形態によるスピードリミッタ1について上述した事柄は、第2実施形態によるスピードリミッタ1’’についても、第2実施形態での変更点を除いて該当する。特に、同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
【0053】
第1実施形態によるスピードリミッタ1と比較すると、第2の実施形態によるスピードリミッタ1’の実質的な相違点は、第2ばね13’が異なる方法で、より有利に、すなわち大概より感度が高く、またはより広い範囲で設定可能である点である。
【0054】
以下、
図10~
図12に基づいて、および第1偏心片7aに配置された第2単独ばね14a’に基づいて、第2ばね13’の付勢を発生させるための構造を説明する。ここで該当する相応の説明は、第2偏心片7b上に配置されている他方の第2単独ばね14b’に転用することができる。
【0055】
第1偏心片7aには、ばねホルダ22が配置されている。保守および設定のために、このばねホルダ22は、変位ねじVSを用いて偏心片7aに対して変位可能であり、例えば揺動可能である(
図10参照)。ホイストの動作中、このばねホルダ22は、偏心片7aと固定的に連結されている。
【0056】
この実施形態では、ばねホルダ22は、好ましくは板金から製造され、曲げられている。ばねホルダ22は底面25を具備し、この底面25には、特に円形の開口部26が開けられている(
図12参照)。この開口部26は、取り付けられた状態では、結合ボルト2200を取り囲んでいる。底面25は、結合ボルト2200上のストッパに当接し、これにより、軸方向、すなわち主軸H(
図1)に平行な方向に固定されている。底面22に続いて、第1端面27が設けられている。この第1端面27は、この底面に対して約90°の位置にある。第1端面27には、受容溝24が配置されている。受容溝24は、端面27の下端に向かって開いている。さらなる実施形態では、受容溝24は、孔または長穴などでもよい。
【0057】
動作状態では、第2単独ばね14a’のばね端部17c、特に腕部は、受容溝24内にある(特に
図11を参照)。
【0058】
図12に示すように、ばねホルダ22は、第2端面28を具備する。第2端面28は、底面25にほぼ直交し、かつ第1端面27にほぼ直交する。第2端面28の縁部は、ストッパ29を形成する。ストッパ29は、動作状態において、第2単独ばね14a’のばね端部17a’の始まり領域、特に腕部の始まり部に当たる。ストッパ29は、結合ボルト2200の回転対称軸から距離をとっている。ストッパ29から結合ボルト2200の回転対称軸への距離は、保守の間に変更することができるが、これは、上述の設定ねじVS(これは、例えば
図12からわかる)を用いて偏向することができるが、しかし、分解図から示唆されているように思えるのとは異なり、例えば後ですぐより詳しく説明するガイド板金21を通って挿入されるのではなく、ガイド板金21の下方でねじ込まれ、その結果、第2端面28を支持または位置決めする。この距離を変えることで、第2ばねの付勢が変わる。特に、距離が短くなると付勢が大きくなる。
【0059】
図12から明確に分かるように、第2単独ばね14a’のばね端部17a’の端部領域、特に腕部の始まり部分は、約90°クランクしている。設置された状態では、ばね端部17a’の端部領域は、第1遠心力作用おもり8a’に配置された長穴23に挿入されている。ばね端部17a’が動作中に誤って長穴23から滑り落ちないための防御装置として、ガイド板金21が設けられている。ガイド板金21は、偏心片7aに固定、特にネジ止めされている。ガイド板金21はガイド溝30を有する。ガイド溝30は、第2単独ばね14a’のばね端部17cにほぼ平行に延び、第2単独ばね14a’の他方のばね端部17aとほぼ直交している。
【0060】
オプションとして(特に好ましくは)、
図6、
図7および
図11に示すように、電気的切り替え速度以下の動作状態においては、第2ばね13’がブレーキにばね力を伝達せず、したがって特にばね定数D1に追加的に寄与しないという意味合いで、第2ばね13’、特に第2単独ばね14a’は遠心力作用おもり8bに対して当接しないように、長穴23が設けられている。
【0061】
速度が電気的切り替え速度以上になると、
図8、
図9および
図10に示すように、第2ばね13’、特に第2単独ばね14a’は、第2ばね13’がブレーキにばね力を伝達するという意味合いで、長穴23の端部を介して遠心力作用おもり8bと当接し、その結果、特にばね定数D1に追加的に寄与し、ばね定数D2が生じることになる。
図8は電気的切り替え速度を示し、
図9は機械的切り替え速度を示している。電気的切り替え速度の状態と機械的切り替え速度の状態との両方で、ばね定数D2が存在していることがよくわかる。
【0062】
第3実施形態
図13~
図16は、スピードリミッタ1’’の第3実施形態を示す図である。第3実施形態のスピードリミッタ1’’は、第1実施形態のスピードリミッタ1と実質的に同じであるため、第1実施形態によるスピードリミッタ1について上述した事柄は、第3実施形態によるスピードリミッタ1’’についても、第2実施形態での変更点を除いて相当する。特に、同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
【0063】
第1実施形態によるスピードリミッタ1と比較すると、第3実施形態によるスピードリミッタ1’’の実質的な相違点は、第3実施形態によるスピードリミッタ1’の第2ばねが、第1遠心力作用おもり8aと第2遠心力作用おもり8bとの間で直接作用することである。第3実施形態における第2ばねは、少なくとも1つのコイルばね、特に2つの端部フックを持つ引張ばねによって実現される。以下では、双方の第2単独ばね14a’’のうちの第1単独ばねを参照して作用原理を説明するが、これまで述べてきた内容が、双方の第2単独ばね14b’’のうちの第2の第2単独ばねに相応に該当する。
【0064】
双方の遠心力作用おもり8a、8bは、それぞれほぼ半円状の形状であり、主軸H(
図1)に面した内側の領域には、遠心力作用おもりを受容するための円形の凹部が設けられている。この円形の凹部の領域で、第1遠心力作用おもり8aに孔31が設けられている。第2単独ばね14a’’のばね端部17c’’は、孔31中に掛けられている。また、円形の凹部の領域中には、第2遠心力作用おもり8bに長穴32が設けられている。第2単独ばね14a’’のばね端部17a’’は、この長穴32中に掛けられている。オプションである長穴32により、第2単独ばね14a’’のばね端部17a’’は、電気的切り替え速度まで規則的に遊びを持っていて、その結果、第2ばね13’’、特に第2単独ばね14a’’は、双方の遠心力作用おもり8a、8bの間で力を伝達しない、または力を作用させない。速度が少なくとも電気的切り替え速度にまで上昇した場合、第2単独ばね14a’’のばね端部17a’’は、長穴32の端部に当接し、第2ばね13’’、特に第2単独ばね14a’’はばね力を伝達し、その結果、ばね定数の増加に寄与する。
【0065】
個々のばね14a’’、14b’’からなる第2ばねが付勢されている場合に合目的である。特に、このばねは付勢をつけて巻かれている。
【0066】
本発明は、図面中では不図示の搬送手段であってガイドレール上で案内されるリフトケージと、駆動装置と、リフトケージの許容できない移動状態を終了させるためにガイドレールと協働する制動装置と、図面について説明したスピードリミッタ1、1’、1’’とを備えた搬送手段を具備する。
【0067】
全ての実施形態の作用原理に関する基本的な指摘
図17~
図20を用いて、作用原理を理論的に説明する。
【0068】
図17は、リフト速度に依存する遠心力の一般的な物理的挙動を示したものである。遠心力は、遠心力作用おもりの質量に回転速度の2乗をかけたものに、遠心力作用おもりの回転軸からの半径方向の距離をかけた積に一致する。
F
z=m×ω
2×r
【0069】
遠心力作用おもり8a、8bで生じる遠心力は、設計によって異なりうる。添付の
図17は、リフトの速度に応じた遠心力の原理的な曲線である。ここで示す値は説明のためだけのものであり、設計および現地の規格要件に応じて適応させねばならない。
【0070】
好ましくは、公称速度、すなわちリフトの通常の動作速度のすぐ上の規定された速度までは、遠心力は(角)速度ωの二乗とともに増加するが、この理由は、この時点までは、遠心力作用おもり8a、8bが外側への移動をしないからである。この速度を上回ると、速度の増加に加えて、さらに回転軸までの遠心力作用おもり8a、8bの重心までの距離rも増加し、それに伴って遠心力も不均衡に増加するが、この理由は、第1ばね11により引き起こされる反力が遠心力作用おもりの移動を阻止できなくなるためである。
【0071】
そのため、絶対的な速度上昇が同じであっても、遠心力はますます大きくなっていく。これとは異なり、例えばばね11による反力が、遠心力作用おもり8a、8bの移動に伴って線形でのみ増加する設計特徴もある。そのため、より高速の速度域では、トリガー速度に関するスピードリミッタ1の感度が高くなり、規定の範囲内でのスピードリミッタ1の設定がますます困難になってしまう。このことは、遠心力作用おもり8a、8bにより作用する遠心力が、必要なばね力に伝達され、この目的のために必要な遠心力作用おもりの動きとなる場合、特に明らかになる。
【0072】
図18では、移動距離にわたっての、遠心力作用おもり8a、8bの遠心力に起因するばね力がプロットされている。第1ばね11を付勢することにより、少なくともほぼ公称速度程度(好ましくは、これよりも約2%~3%上)までは、遠心力作用おもり8a、8bは動かない。電気的切り替え速度から機械的トリガー速度に至るために必要なばね力の増加は、遠心力作用おもり8a、8bの移動距離の大部分を必要とする。しかし、特に
図17を見ればよくわかるように、特に角速度が大きい場合には、この力は不均衡に大きくなるため、電気的・機械的切り替え速度を検出する手段20をきれいに設定することは難しい。さらに、移動距離が限られていることが多い。
【0073】
図19では、移動距離にわたっての、遠心力作用おもり8a、8bの遠心力に起因するばね力がプロットされている。これにより、非線形のばね、というよりはむしろ最初に第1ばね11、続いて第1ばねに接続された第2ばね13による特性曲線がもたらされる。第2ばね13は、電気的切り替え速度に達するとすぐに活性化する。第2ばね13のさらなるばね力により、この点以降、特性曲線の傾斜はより急になり、その結果、
図18によるシステムと比較して、電気的切り替え速度と機械的切り替え速度との間で必要な遠心力作用おもり移動が小さくなる。さらに、第1ばね11の付勢と、第2ばね13が有効になる時点とにより、スピードリミッタ1の双方のトリガー点(電気的および機械的切り替え速度)を互いに独立して設定することがより容易になる。
【0074】
図20は、特に好ましい実施形態を示す。
図20では、第2ばね13は、例えば、ストッパ29に対して付勢されている。電気的切り替え速度以降、すなわち第2ばね13がばね力を伝達するときに、付勢によってばね特性曲線のほぼ急激な増加が生じる。その結果、遠心力作用おもり8a、8bの経路短縮をさらに最適化、特に低減することができる。さらに、第2ばね13は、平坦な曲線を持つばね特性曲線、すなわち、低いばね定数D2のばね特性曲線を有しうる。特に、第2ばね13のばね定数は第1ばね11のばね定数よりも小さい。付勢による力の増加後には、第1ばね11の特性曲線の傾きよりもわずかに大きいだけの平坦な特性曲線を再び示すことができる。したがって、この領域では、特段の感度なしに設定をすることが可能である。
【0075】
一般的な結論となる指摘
さらに、独立した保護は、以下の段落の1つ以上の特徴(これらの特徴は、オプションとして、既に記載された1つ以上の従属請求項の特徴および/または本明細書のさらなる特徴と組み合わせ可能である)を有するスピードリミッタに対しても権利主張される。
【0076】
ばねシステムの力に抗して、遠心力で作動する、ホイスト用、特にリフト設備用のスピードリミッタ(1)であって、このスピードリミッタ(1)は、第1切り替え速度を有し、この第1切り替え速度を上回る速度では、スピードリミッタは、好ましくは駆動鋼車または駆動鋼車シャフトを制動するブレーキの形態でのブレーキをかけ、スピードリミッタ(1)は、より速い第2切り替え速度を有し、第2切り替え速度に達すると、スピードリミッタは、好ましくはそれ自体で制動または遮断するスピードリミッタにおいて、ばねシステムは、上述の第1切り替え速度まで、または好ましくはいずれにしてもその近い範囲(±20%)まで、第1ばね定数(D1)を有し、ばねシステムは、その後第2ばね定数(D2)を有し、かつ、第2ばね定数(D2)は第1ばね定数(D1)よりも大きいことを特徴とする。
【0077】
先の段落に記載のスピードリミッタにおいて、ばねシステムは、少なくとも一対のばねを有し、そのうちこの第1ばねは、単独で第1ばね定数を表す一方、第2ばねは、その端部のうちの少なくとも一方の領域中では、最初は、第2ばねが力をかけうる部材とまだ接触しないように遊びを持って固定されていて、かつ同時に、第2ばねは、スピードリミッタの少なくとも1つの構成要素の遠心力による位置移動の結果、両端で第1ばねに対して当接し、その後、第1ばねとともに第2ばね定数を表すように固定されていることを特徴とする。
【0078】
先の2つの段落に記載のスピードリミッタにおいて、ばねシステムは、少なくとも一対のばねからなり、この一対のばねのうちの一方のばねは、コイルばねであり、他方のばねは、ねじりばねまたは回転ばねであり、すなわち、中心の円筒状のコイルを備えていて、このコイルからこのコイルをねじる腕部が突出していることを特徴とする。
【0079】
先の3つの段落のいずれか1つに記載のスピードリミッタにおいて、ねじりばねまたは回転ばねでは、保持スパイクが貫通していることを特徴とする。
【0080】
先の4つの段落のいずれか1つに記載のスピードリミッタにおいて、腕部のうちの1つの支持点を位置移動させることにより、ねじりばねまたは回転ばねの付勢および/またはこれが有効になる時点を設定することを特徴とする。
【符号の説明】
【0081】
H 主軸
N 副軸
1 スピードリミッタ
2 支持構造体
3 スタブアクスル
4 ロープシーブ
5 ブレーキロータ
6 軸受けボルト
7a、7b 偏心片
220 結合ボルト孔
2200 結合ボルト
8a、8b 遠心力作用おもり
9 偏位のない位置
10 リセットユニット
11 不図示の(第1ばね全体)
12a、12b 第1単独ばね
13 不図示の(第2ばね全体)
14a、14b 第2単独ばね
15a、15b、15c、15d ばね端部
16 ばね支持体
17a、17b、17c、17d ばね端部
18a、18b 偏心ボルト
19 薄ナット
20 手段
21 ガイド板金
22 ばねホルダ
23 長穴
24 受容溝
25 底面
26 開口
27 第1端面
28 第2端面
29 ストッパ
30 ガイド溝
31 孔
32 長穴