(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】再生可能エネルギー活用型空気分離システム
(51)【国際特許分類】
F01K 25/10 20060101AFI20240216BHJP
F25J 3/04 20060101ALI20240216BHJP
B01D 53/22 20060101ALN20240216BHJP
F25J 5/00 20060101ALN20240216BHJP
B01D 53/04 20060101ALN20240216BHJP
F03B 3/10 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
F01K25/10 R
F25J3/04 A
B01D53/22
F25J5/00
B01D53/04 220
F03B3/10 Z
(21)【出願番号】P 2020070059
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519006506
【氏名又は名称】Solution Creators株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 重晴
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-002790(JP,A)
【文献】特開2018-062868(JP,A)
【文献】特表2018-524551(JP,A)
【文献】特開2014-134199(JP,A)
【文献】特開2012-236736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/10
F25J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱流体かバイオマスの燃焼熱か水流の何れかのエネルギーを駆動源とするタービンと、
前記タービンの軸に直接または変速機を介して接続された、空気を吸気圧縮する空気圧縮機と、
前記空気圧縮機を用いて吸気圧縮された空気が供給される分離膜モジュールと、を有する、再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項2】
地熱流体を汽水分離器で高温の地熱蒸気と熱水に分離して得られた前記地熱蒸気で駆動する、駆動源とするエネルギーが地熱流体であるタービン、バイオマスの燃焼熱を用いて得られた蒸気であって汽水分離器に導入されて熱水が分離された蒸気で駆動する、駆動源とするエネルギーがバイオマスの燃焼熱であるタービン、または、駆動源とするエネルギーが水流であるタービンと、
前記タービンの軸に直接または変速機を介して接続された、空気を吸気圧縮する空気圧縮機と、
前記空気圧縮機を用いて吸気圧縮された空気が供給される分離膜モジュールと、を有し、
更に、
前記エネルギーが地熱流体である前記タービンまたは前記エネルギーがバイオマスの燃焼熱である前記タービンを有する場合は前記汽水分離器から排出される熱水で駆動し、前記エネルギーが水流である前記タービンを有する場合は前記タービンから排水された
流水で駆動する発電システム、を有する、再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項3】
地熱流体を汽水分離器で高温の地熱蒸気と熱水に分離して得られた前記地熱蒸気で駆動する、駆動源とするエネルギーが地熱流体であるタービン、バイオマスの燃焼熱を用いて得られた蒸気であって汽水分離器に導入されて熱水が分離された蒸気で駆動する、駆動源とするエネルギーがバイオマスの燃焼熱であるタービン、または、駆動源とするエネルギーが水流であるタービンと、
前記タービンの軸に直接または変速機を介して接続された膨張タービンによって、空気を断熱膨張させて低温空気とする空気膨張機と、
前記空気膨張機を出た低温空気の成分を分離する精留塔と、を有し、
更に、
前記エネルギーが地熱流体である前記タービンまたは前記エネルギーがバイオマスの燃焼熱である前記タービンを有する場合は前記汽水分離器から排出される熱水で駆動し、前記エネルギーが水流である前記タービンを有する場合は前記タービンから排水された流水で駆動する発電システム、を有する、再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項4】
前記エネルギーが地熱流体である前記タービンまたは前記エネルギーがバイオマスの燃焼熱である前記タービンを有し、
前記発電システムが、前記汽水分離器から排出される熱水が供給されて発電を行うバイナリー発電システムである、請求項2または3に記載の再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項5】
前記発電システムで得られた発電電力が、再生可能エネルギー活用型空気分離装置を構成する構成機器の駆動に用いられる、請求項2~4のいずれか一項に記載の再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項6】
前記エネルギーが地熱流体である前記タービンまたは前記エネルギーがバイオマスの燃焼熱である前記タービンを有し、
前記発電システムで得られた発電電力が、
前記空気圧縮機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる、冷媒または熱媒の循環ポンプ、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる冷凍機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が前記冷凍機を有する場合において、再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる前記冷凍機の冷却塔、
の、何れか1つ以上の駆動に用いられる、請求項2に記載の再生可能エネルギー活用型
空気分離装置。
【請求項7】
前記エネルギーが地熱流体である前記タービンまたは前記エネルギーがバイオマスの燃焼熱である前記タービンを有し、
前記発電システムで得られた発電電力が、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる空気圧縮機、
前記空気膨張機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる、前記精留塔から得られた酸素を圧縮する酸素圧縮機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる、冷媒または熱媒の循環ポンプ、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる冷凍機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が前記冷凍機を有する場合において、再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる前記冷凍機の冷却塔、
の、何れか1つ以上の駆動に用いられる、請求項3に記載の再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項8】
前記エネルギーが水流である前記タービンを有し、
前記発電システムで得られた発電電力が、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる空気圧縮機、
前記空気膨張機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる、前記精留塔から得られた酸素を圧縮する酸素圧縮機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる、冷媒または熱媒の循環ポンプ、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に空気中の不純物を除去する吸着材が充填され、前記吸着材に温熱を供給して吸着された二酸化炭素または水分を脱着して再生する吸着器、
の、何れか1つ以上の駆動に用いられる、請求項3に記載の再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項9】
駆動源とするエネルギーが地熱流体であり、汽水分離器で前記地熱流体を高温の地熱蒸気と熱水に分離して得られた前記地熱蒸気で駆動するタービン、または、駆動源とするエネルギーがバイオマスの燃焼熱であり、前記燃焼熱を用いて得られた蒸気であって汽水分離器に導入されて熱水が分離された蒸気で駆動するタービンと、
前記タービンの軸に直接または変速機を介して接続された、空気を吸気圧縮する空気
圧縮機と、
前記汽水分離器から排出される熱水で駆動する吸収式または吸着式の冷凍機と、
前記タービンの排出口に接続され、前記冷凍機により得られる冷熱が供給される復水器、および、前記冷凍機により得られる冷熱が供給され、前記空気圧縮機を用いて吸気圧縮された空気を冷却する熱交換器の少なくとも一方と、を有し、
更に、
前記タービンの軸に直接または変速機を介して接続された膨張タービンによって、前記空気圧縮機を用いて吸気圧縮された空気を断熱膨張させて低温空気とする空気膨張機と、前記空気膨張機を出た低温空気の成分を分離する精留塔と、を有するか、または、
前記空気圧縮機を用いて吸気圧縮された空気が供給される分離膜モジュール、を有する、再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項10】
前記冷凍機が、第一の冷凍機と、第二の冷凍機と、を含み、
前記第二の冷凍機は、前記第一の冷凍機から排出された温水で駆動する、請求項9に記載の再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項11】
前記空気圧縮機の出口流路側に接続された、空気中の二酸化炭素と水分を除去するための吸着材が充填された吸着器を有し、
前記吸着材に吸着された二酸化炭素と水分を脱着して再生するために、
前記地熱流体の温熱、前記バイオマスの燃焼熱の温熱、前記タービンから排出される熱水の温熱、前記冷凍機から排出される温水の温熱の、何れか1つ以上の温熱が用いられる、請求項9または10に記載の再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
(ただし、前記地熱流体の温熱が用いられるのは、前記タービンが駆動源とするエネルギーとして地熱流体が用いられている場合に限り、前記バイオマスの燃焼熱の温熱が用いられるのは、前記タービンが駆動源とするエネルギーとしてバイオマスの燃焼熱が用いられている場合に限る。)
【請求項12】
前記汽水分離器から排出される熱水が供給されて発電を行うバイナリー発電システムを有し、
前記バイナリー発電システムで得られた発電電力が、
前記空気圧縮機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が前記空気膨張機を有する場合における前記空気膨張機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が前記精留塔を有する場合において、再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる前記精留塔から得られた酸素を圧縮する酸素圧縮機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる、冷媒または熱媒の循環ポンプ、
前記冷凍機または前記バイナリー発電システムを構成する冷却塔、の、何れか1つ以上の駆動に用いられる、請求項9~11のいずれか1項に記載の再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項13】
水流のエネルギーを駆動源とするタービンと、
前記タービンの軸に直接または変速機を介して接続された、空気を吸気圧縮する空気圧縮機と、を有し、
更に、
前記タービンの軸に直接または変速機を介して接続された膨張タービンによって、前記空気圧縮機を用いて吸気圧縮された空気を断熱膨張させて低温空気とする空気膨張機と、前記空気膨張機を出た低温空気の成分を分離する精留塔と、を有するか、または、
前記空気圧縮機を用いて吸気圧縮された空気が供給される分離膜モジュール、を有する、再生可能エネルギー活用型空気分離装置であって、
加えて、
前記空気圧縮機の出口流路側に接続された、空気中の二酸化炭素と水分を除去するための吸着材が充填された吸着器と、
前記タービンから排水された流水で駆動される水力発電システムと、
前記水力発電システムの発電電力で発熱する電気ヒータと、を有し、
前記吸着材に吸着された二酸化炭素と水分を脱着して再生するために、前記電気ヒータから得られる温熱が用いられる、再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【請求項14】
水流のエネルギーを駆動源とするタービンと、
前記タービンの軸に直接または変速機を介して接続された、空気を吸気圧縮する空気圧縮機と、を有し、
更に、
前記タービンの軸に直接または変速機を介して接続された膨張タービンによって、前記空気圧縮機を用いて吸気圧縮された空気を断熱膨張させて低温空気とする空気膨張機と、前記空気膨張機を出た低温空気の成分を分離する精留塔と、を有するか、または、
前記空気圧縮機を用いて吸気圧縮された空気が供給される分離膜モジュール、を有する、再生可能エネルギー活用型空気分離装置であって、
加えて、
前記タービンから排水された流水で駆動される水力発電システムを有し、
前記水力発電システムで得られた発電電力が、
前記空気圧縮機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が前記空気膨張機を有する場合における前記空気膨張機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が前記精留塔を有する場合において、再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる前記精留塔から得られた酸素を圧縮する酸素圧縮機、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる、冷媒または熱媒の循環ポンプ、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に空気中の不純物を除去する吸着材が充填され、前記吸着材に温熱を供給して吸着された二酸化炭素または水分を脱着して再生する吸着器、
再生可能エネルギー活用型空気分離装置が更に有することができる、前記水力発電システムの冷却塔、
の、何れか1つ以上の駆動に用いられる、再生可能エネルギー活用型空気分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の成分を分離して高純度の窒素ガスや酸素ガス、アルゴンガスまたは液化窒素や液化酸素、液化アルゴンを製造する空気分離装置に関するもので、特に多量の電力を消費する空気分離のプロセスにおいて、再生可能エネルギーを活用して効率よくかつ連続的に空気分離を行う方法と、この方法を適用した再生可能エネルギー活用型空気分離システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気の分離方法には、深冷分離法と吸着分離法および膜分離法が広く知られ、工業的に広く利用されており、特に高純度ガスを多量生産するとともに、液化窒素や液化酸素のほか、アルゴンやキセノン、クリプトンなどの希ガス製造も可能な方法として深冷分離法が広く利用されているほか、得られるガスが低純度の窒素ガスや酸素富化空気となるものの、小規模で起動停止が容易な空気分離法として、膜分離法が広く利用されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】空気分離装置の豆知識 http://www.sac.co.jp/pdf/kiso2.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の通り、非特許文献1に示された従来技術によれば、空気分離による高純度ガスや液化ガスの製造が可能となるが、本技術には以下に示す5つの課題がある。
【0005】
まず深冷分離法と膜分離法では、いずれも多量の電力消費を伴う空気圧縮機を駆動して空気を吸気圧縮するほか、深冷分離法では空気を断熱膨張させる膨張タービンを駆動したり、得られた高純度の窒素や酸素のガスを圧縮する圧縮機など、ガスの製造プロセスで多量の電力を消費するため、この電力が化石燃料起源である場合には、化石燃料の消費とともに、高純度ガスの製造に係わる二酸化炭素の排出量が多くなるという課題がある。
【0006】
また深冷分離法では、空気を断熱膨張させる前に空気中の水分や二酸化炭素を除去するため、これらを吸着材で吸着させて除去する際に加熱して脱離させたり、高温の圧縮空気を断熱膨張により極低温化させる前に熱交換器で予冷するほか、膜分離法では膜モジュールに圧縮空気を供給する前に、高温化した圧縮空気を冷却したり、分離膜モジュールが最適な性能を発揮する温度に加熱や冷却を行って温度維持するうえで、温熱や冷熱を必要とするが、この温熱や冷熱の供給でも化石燃料や化石燃料起源の電力を消費する場合には、化石燃料の消費とともに、高純度ガスの製造に係わる二酸化炭素の排出量が多くなるという課題がある。
【0007】
また、空気分離のプロセスにおいて、電力系統から供給される電力を利用する場合、ガスの製造プロセスが電力系統に依存し、電力系統に接続された発電システムが停止したり、送電線の断線や落雷等によって停電した場合には、空気分離による高純度ガスの製造も継続不能となり、停電や災害時に高純度の窒素や酸素のガス製造が困難となる課題がある。
【0008】
一方、化石燃料の消費をせず、二酸化炭素の排出も伴わないエネルギーとして、地熱蒸気や温泉熱、バイオマスやバイオガスの燃焼熱、河川水や潮流の流水といった再生可能エネルギーが注目されているが、これらのエネルギーは電力系統線との接続が困難な場所に賦存していたり、電力系統との接続が容易な場所であっても、送配電網の容量不足によって発電した電力を接続供給できず、有効活用できない場所があるという課題がある。
【0009】
また、再生可能エネルギーを利用した発電を行い、得られた電力で空気圧縮機や空気膨張機のほか、ターボ冷凍機を駆動して得られる冷熱や、電気ヒータを利用して得られる温熱によって一連の空気分離プロセスを行う方法も考えられるが、この場合には再生可能エネルギーを一度電気に変換し、得られた電気を圧縮機や膨張機の回転駆動力にしたり、冷却や加熱するための冷熱や温熱に変換する過程でエネルギー損失を伴うため、高純度ガスの製造に係わるエネルギー効率が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、地熱蒸気やバイオマスまたはバイオガスの燃焼熱、あるいは水力や潮力といった再生可能エネルギーから得られる回転駆動力や温冷熱と電力を直接的に空気分離プロセスに利用することで、高純度ガスの製造に係わる化石燃料の消費と二酸化炭素の排出を無くすとともに、送配電網の容量不足や熱の貯蔵輸送の制約から再生可能エネルギーの利用が困難な場所であっても、高効率な再生可能エネルギー活用を可能とし、電力系統が停電しても高純度ガスの継続製造を可能とする、再生可能エネルギー活用型の空気分離システムを提供することである。
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
地熱流体かバイオマスの燃焼熱か水流の何れかのエネルギーを駆動源とするタービンと、前記タービン軸に直接または変速機を介して接続された空気圧縮機によって、空気を吸気圧縮することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、
地熱流体かバイオマスの燃焼熱か水流の何れかのエネルギーを駆動源とするタービンと、前記タービン軸に直接または変速機を介して接続された膨張タービンによって空気を断熱膨張させて低温空気とすることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、
地熱流体かバイオマスの燃焼熱か水流の何れかのエネルギーを駆動源とするタービンと、請求項1に記載の空気圧縮機と請求項2に記載の空気膨張機の駆動軸が、全て直接または変速機を介して接続されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載のタービンから排出された地熱流体またはバイオマスの燃焼熱によって得られる熱水が、前記の熱水で駆動する吸収式または吸着式の冷凍機に供給されることにより得られる冷熱か、請求項1に記載のタービンから排水された流水がもつ冷熱が、前記のタービン排出口に接続された復水器か、請求項1に記載の空気圧縮機を出た高温圧縮空気を冷却する熱交換器の何れか一方または両方に供給されることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、
請求項4に記載の冷凍機から排出された温水が、前記温水の熱で駆動する吸収式または吸着式の冷凍機に供給され、前記の冷凍機から得られる冷熱が、前記タービン排出口に接続された復水器か、請求項1に記載の空気圧縮機を出た高温圧縮空気を冷却する熱交換器の何れか一方または両方に供給されることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、
請求項1に記載の空気圧縮機の出口流路に、空気中の二酸化炭素と水分を除去するための吸着材が充填された吸着器が接続されており、前記吸着材に吸着された二酸化炭素と水分を脱着して再生するために、請求項1に記載の地熱流体かバイオマス燃焼熱の一部か、請求項1に記載のタービンから排出された熱水か、請求項4または請求項5に記載の冷凍機から排出された温水の何れか1つ以上が有する温熱が供給されることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、
請求項1に記載の空気圧縮機の出口流路に、空気中の二酸化炭素と水分を除去するための吸着材が充填された吸着器が接続されており、前記吸着材に吸着された二酸化炭素と水分を脱着して再生するために、請求項1~請求項3に記載の空気圧縮機または空気膨張機を駆動する流水タービンから排水された流水で駆動される水力発電システムの発電電力で発熱する電気ヒータから得られる温熱が供給されることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は、
請求項6に記載の吸着器から排出された不純物除去空気を、請求項2に記載の膨張タービンで断熱膨張させて低温化した後に、精留分離塔に導入して窒素、酸素、アルゴンに深冷分離することで、高純度の窒素ガスと酸素ガスおよび液化された窒素、酸素または液化アルゴンのうち1つ以上を得ることを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の発明は、
請求項6に記載の吸着器から排出された不純物除去後の圧縮空気を分離膜モジュールに供給することで、高純度の窒素ガスと酸素富化空気を得ることを特徴とする。
【0020】
請求項10に記載の発明は、
請求項1に記載した地熱流体かバイオマスの燃焼熱によって得られる蒸気が汽水分離器に導入され、前記の汽水分離器から排出される熱水がバイナリー発電システムに供給されて発電を行い、得られた発電電力によって、空気分離装置を構成する空気圧縮機か空気膨張機または酸素圧縮機か、請求項4または請求項5に記載の冷熱か請求項6に記載の温熱を供給するための媒体循環ポンプか、前記のバイナリー発電システムや請求項4または請求項5に記載の冷凍機を構成する冷却塔の何れか1つ以上が駆動されることを特徴とする。
【0021】
請求項11に記載の発明は、
請求項1~請求項3に記載の空気圧縮機または空気膨張機を駆動する流水タービンから排水された流水で駆動される水力発電システムの発電電力によって、空気分離装置を構成する空気圧縮機か空気膨張機または酸素圧縮機か、請求項4または請求項5に記載の冷熱か請求項6に記載の温熱を供給するための媒体循環ポンプか冷却塔の何れか1つ以上が駆動されることを特徴とする。
【0022】
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、地熱蒸気やバイオマスまたはバイオガスの燃焼熱、あるいは水力や潮力といった再生可能エネルギーから得られる回転駆動力や温冷熱と電力を直接的に空気分離プロセスに利用することで、高純度ガスの製造に係わる化石燃料の消費と二酸化炭素の排出を無くすとともに、送配電網の容量不足や熱の貯蔵輸送の制約から再生可能エネルギーの利用が困難な場所であっても、高効率な再生可能エネルギー活用を可能とし、電力系統が停電しても高純度ガスを継続製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る第1実施形態である、地熱蒸気活用型の深冷分離式空気分離システムを示す模式図である。
【
図2】本発明に係る第2実施形態である、地熱蒸気活用型の膜分離式空気分離システムを示す模式図である。
【
図3】本発明に係る第3実施形態である、流水活用型の深冷分離式空気分離システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、本実施形態に限定されるものではない。
【0026】
(第1実施形態)
【0027】
まず本発明の第1実施形態に係る、地熱蒸気活用型の深冷分離式空気分離システムについて、
図1に基づいて説明する。
【0028】
図1に示すように、この空気分離システムには、地熱流体1を高温の地熱蒸気と熱水に分離する汽水分離器2と、前記の汽水分離器から排出された地熱蒸気で駆動される蒸気タービン3と、この蒸気タービンの回転軸に直接接続され、周囲の空気を吸気して空気フィルタ4を通過した清浄空気を圧縮する空気圧縮機5と、前記の空気圧縮機で圧縮された高温空気を冷却する冷却器6と、空気中の水分と二酸化炭素を吸着除去するための吸着器7と、不純物除去後の純空気を冷却する熱交換器8と、熱交換器通過後の純空気を断熱膨張させて極低温化させるために、前記の蒸気タービン3の回転軸に直接接続された空気膨張機9と、膨張機9を出た低温空気の成分を分離するための精留塔10から構成されている。
【0029】
このように、本発明の深冷分離式空気分離システムでは、空気分離プロセスの中でも最もエネルギー消費の大きい空気圧縮について、蒸気タービンから発電した電力を利用して空気圧縮機を運転するのではなく、蒸気タービンの回転駆動力を直接空気圧縮機の回転駆動力として利用するほか、不純物除去後の純空気の膨張タービンも同様に、直接回転駆動力を利用することで、再生可能エネルギーを直接利用して空気分離できるよう、構成されている。
【0030】
また、この空気分離システムには、前記の汽水分離2から排水される高温の熱水で駆動されるバイナリー発電システム11と、前記発電システム駆動後に排出される高温水で駆動される吸収式冷凍機12と、前記吸収式冷凍機駆動後に排出される温水で駆動される吸着式冷凍機13と、前記吸着式冷凍機駆動後に排出される低温の温水から循環熱媒が温熱を得る熱交換器14も構成され、前記の熱交換器を通過した排水は、排水溝や還元井に排水されている。
【0031】
さらに、この空気分離システムには、前記の蒸気タービン3の排気口近傍に復水器15が接続され、この復水器15を循環する冷却水は冷却塔16で冷却されるほか、前記の冷凍機12から得られる冷熱が冷媒循環により供給される冷却器17でさらに冷却されることで、蒸気タービン3の駆動力が高められ、空気分離プロセスでのエネルギー消費比率の大きい空気圧縮機の駆動力として利用されている。
【0032】
また、この空気分離システムの吸着器7は、前記の冷凍機13から得られる冷熱が冷媒循環により冷却器6に供給されるため、空気圧縮機5を通過した高温空気が再生可能エネルギー熱で効率よく冷却されるほか、不純物吸着器7から水や二酸化炭素を脱離させる際に必要となる温熱も、熱交換器14を介して得られる温熱が熱媒循環により吸着器7に供給されることで、再生可能エネルギー熱を利用して効率よく不純物を脱離除去できるようになっている。
【0033】
さらに、精留塔10において、空気中成分の沸点の違いから得られる酸素は、酸素圧縮機18で高圧酸素ガスとして得られるほか、アルゴンは公知の技術によって液化アルゴンとして回収され、酸素や窒素の一部も精留塔で液体として回収され、輸送や利用できるようになっている。
【0034】
また、この空気分離システムを構成する、冷却水や冷媒および熱媒の循環ポンプと、吸収式および吸着式の冷凍機と、発電機や冷凍機を運転する際に利用する冷却塔は、全て前記のバイナリー発電システム11の発電により得られた電力で稼働させるように構成することで、この空気分離システムの運用に係わるエネルギーを全て再生可能エネルギーとすることで、空気分離プロセスに係わる省エネルギー化と二酸化炭素の削減を実現できるほか、停電時も継続して高純度ガスを製造することが可能となる。
【0035】
さらに、この空気分離プロセスは、システムの周囲に空気があれば、送配電網がない場所や、送配電網に空き容量が無い場所であっても適用が可能となる。すなわち現地の再生可能エネルギーを地産地消することで高純度ガスの製造が可能となるため、再生可能エネルギー資源が充分にあっても送配電網への接続が困難で発電利用できない場所で適用できる、新たな再生可能エネルギーの活用方法となる。
【0036】
以上の構成とすることで、豊富な地熱蒸気があっても、送配電網への接続が困難で発電利用できない場所であっても、地熱蒸気のエネルギーを有効活用することで、化石燃料の消費や二酸化炭素の排出を伴うことなく、高純度の空気分離ガスを製造することが可能となる。
(第2実施形態)
【0037】
次に、本発明の第2実施形態に係る、地熱蒸気活用型の膜分離式空気分離システムについて、
図2に基づいて説明する。
【0038】
図2に示すように、第2実施形態の空気分離システムは、空気分離の方法として、圧縮空気を窒素分離膜モジュール19に通過させることで、高純度の窒素ガスと、酸素富化空気に分離するものであり、その他の構成機器と機能は
図1で示したものと同様である。
【0039】
なお、前記の分離膜モジュール19には、ガス分離を行う上で最適な温度があるが、それぞれの膜素材に応じて最適な温度に維持するために、モジュール内の膜温度を計測しつつ、計測温度と膜モジュールの最適運転温度を比較して、吸収式または吸着式の冷凍機から得られる冷熱と、バイナリー発電後の温水熱や冷凍機通過後の温水の温熱の選択と供給量を制御することが望ましい。
(第3実施形態)
【0040】
次に、本発明の第3実施形態に係わる、河川水の流水エネルギーと冷熱を直接利用して、膜分離式によって空気分離を行う、流水活用型の深冷分離式空気分離システムについて、
図3を用いて説明する。
【0041】
図3に示すように、第3実施形態の空気分離システムは、河川の流水で回転する水車20で駆動される空気圧縮機21によって吸気した空気の圧縮を行うとともに、空気中の不純物を除去するための吸着器7の脱離では、前記の水車20を駆動した後の排水で駆動される水車22で駆動される水力発電機23によって得られる電気で加熱して温熱を得る電気ヒータ24からの温熱が供給される点が異なっており、その他の詳細は
図2で示したものと同様である。
【0042】
以上のように、地域に分散する多様な再生可能エネルギーを利用して空気分離を行うことで、化石燃料消費の削減と、化石燃料消費に伴う二酸化炭素の発生量を削減し、省エネルギー性と環境性の高い、空気分離ガスの製造供給を行うことが可能となる。また、送配電網への接続が困難な場所でも適用可能で、電力系統で停電が起こっても継続的に高純度ガス製造を行えるようになり、幅広い地域で空気からの高純度ガス製造が行えるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
なお本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、例えば
図1や
図2の実施形態は、木質バイオマスのガス化燃焼やバイオガスの燃焼で発生させた蒸気でも適用可能であり、
図3の実施形態は河川流域の河川水利用に限らず、潮流発電が可能な海峡地域においても適用可能である。
【0044】
このように、前記の実施形態は例示であり、本発明の特許請求範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0045】
1・・・・地熱流体
2・・・・汽水分離器
3・・・・蒸気タービン
4・・・・空気フィルタ
5・・・・空気圧縮機
6・・・・圧縮空気冷却器
7・・・・吸着器
8・・・・純空気冷却器
9・・・・膨張タービン
10・・・精留塔
11・・・熱水駆動型バイナリー発電システム
12・・・高温水駆動型吸収式冷凍機
13・・・温水駆動型吸着式冷凍機
14・・・熱交換器
15・・・復水器
16・・・冷却塔
17・・・冷却水冷却用熱交換器
18・・・酸素圧縮機
19・・・窒素分離膜モジュール
20・・・水車
21・・・水車駆動型空気圧縮機
22・・・水力発電機
23・・・電気ヒータ