(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】イオン源
(51)【国際特許分類】
H01J 27/20 20060101AFI20240216BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01J27/20
H01J37/08
(21)【出願番号】P 2020101387
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】趙 維江
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】足立 昌和
(72)【発明者】
【氏名】糸井 駿
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-076322(JP,A)
【文献】特開2018-045905(JP,A)
【文献】特開2016-115508(JP,A)
【文献】特開平07-272656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0230713(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/00-27/26
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ室に形成された開口を通じて、前記プラズマ室の壁面と物理的に非接触な状態でプラズマ室内に配置された部材を支持する支持部材と、
前記開口から前記プラズマ室の外部に前記プラズマ室内のガスが流出することを防止するための筒状のシール部材と、を有するイオン源で、
前記シール部材の軸方向で前記シール部材の一端が前記支持部材に固定されているとともに、前記シール部材の他端が、
前記開口が形成された前記プラズマ室の壁面の一部と入れ子構造を成す、イオン源。
【請求項2】
前記シール部材の一端と前記支持部材にはネジ部が形成されており、各部
材同士を螺合することで、前記シール部材の一端が前記支持部材に固定さ
れる、請求項1記載のイオン源。
【請求項3】
前記開口が形成された前記プラズマ室の壁面は溝部を備えており、
前記シール部材の他端が前記溝部に配置される、請求項1または
2に記載のイオン源。
【請求項4】
前記溝部が円環状を成し、前記シール部材が円筒状を成す請求項
3記載のイオン源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プラズマ室からのガスの流出を防止するためのシール部材を有するイオン源に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ室と室内に配置されるカソードや反射電極は、プラズマ室の壁面に形成された開口を通じてプラズマ室の外部から支持されている。プラズマ室内にはプラズマ生成のためにガスが供給されているが、この開口を通じてプラズマ室の外部にガスが流出すると、プラズマの生成効率が低下する。
そこで、ガスの流出を防ぎ、ガスの利用効率向上を目的として、特許文献1に記載のシール部材が採用されている。
【0003】
図12は特許文献1に記載のイオン源1の模式図である。このイオン源1は、傍熱型イオン源と呼ばれている。
カソード4は、カソードホルダ5によってプラズマ室2の開口4Hを通じてプラズマ室の外部から支持されている。フィラメント3に通電することでカソード4が加熱されて、カソード4から熱電子が放出される。
熱電子は、プラズマ室2に供給されたガスを電離し、アーク放電によってプラズマが室内に生成される。
プラズマ室2の外側には図示されない引出電極があり、プラズマ室2のイオン引出し口11を通して、プラズマ室2で生成されたプラズマからイオンビームの引き出しが行われる。
【0004】
プラズマ室2の内壁は、プラズマによる内壁のスパッタリングを防止するためにライナー10で保護されている。プラズマ室2には、カソードと対向する位置に反射電極7が配置されている。この反射電極7は、電極支持棒8によってプラズマ室2の開口7Hを通じてプラズマ室2の外部から支持されている。
【0005】
上述したプラズマ室2の開口4H、7Hを塞ぐように、シール部材6、9が設けられていて、これらのシール部材6、9によって開口4H、7Hからのガスの流出が防止されている。
【0006】
図13は特許文献1に挙げられる反射電極側のシール部材9の構成例である。シール部材6の構成については、形状は異なるもののシール部材9と類似している。このため、ここではシール部材9の構造についてのみ説明する。
シール部材9は、シール部材9の表面22をプラズマ室2の外壁面に当接された状態でボルトとナットの締結によりプラズマ室2に取り付けられている。
図示されないプラズマ室2の壁面には、シール部材9のボルト挿通孔21と同等の孔が形成されている。この孔を通してプラズマ室2の外側から内側にボルトが挿入されていて、プラズマ室2の内壁でナットに螺合されている。
このシール部材9は、円筒状の空間を備えていて、同空間にはガスのコンダクタンスを低下させるための複数のリング状突起部24が設けられている。また、同空間には反射電極支持棒8を挿入するための開口23が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許公開公報US2008/0230713
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のシール部材9の構成であれば、ガスの流出を防止することはできるが、反射電極支持棒8と開口23との間には隙間が形成されているため、この隙間から少量のガスが流出する。
そこで、本発明では、より効果的にプラズマ室からのガス漏れを低減し、ガスの利用効率の向上を図ることのできるイオン源を提供することを期初の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
イオン源は、
プラズマ室に形成された開口を通じて、前記プラズマ室の壁面と物理的に非接触な状態でプラズマ室内に配置された部材を支持する支持部材と、
前記開口から前記プラズマ室の外部に前記プラズマ室内のガスが流出することを防止するための筒状のシール部材と、を有するイオン源で、
前記シール部材の軸方向で前記シール部材の一端が前記支持部材に固定されているとともに、前記シール部材の他端が、前記シール部材の径方向の少なくとも一部で、前記開口が形成された前記プラズマ室の壁面と重なっている。
【0010】
上記構成のイオン源であれば、シール部材の軸方向でシール部材の一端が支持部材に固定されているので、特許文献1で問題としていたガス流出の原因となる隙間がなくなる、または極力小さなものにすることが可能となる。
これにより、隙間起因のガス流出が減り、ガスの利用効率が向上する。
また、シール部材の軸方向において、シール部材の他端が、シール部材の径方向の少なくとも一部で、開口が形成されたプラズマ室の壁面と重なる構成とすることで、重なり部分が入れ子構造となり、プラズマ室の外壁面に沿ったガスの流出も防止することができる。
【0011】
具体的な固定構造としては、
前記シール部材の一端と前記支持部材にはネジ部が形成されており、
各部材のネジ部を用いて部材同士を螺合することで、前記シール部材の一端が前記支持部材に固定されている構造とすることが望ましい。
【0012】
上記構成であれば、ネジの開け閉めでシール部材の位置調整が可能となる等、シール部材の取り付けが簡便となる。
【0013】
より望ましくは、前記シール部材の他端が、前記シール部材の径方向の全周で、前記開口が形成された前記プラズマ室の壁面と重なっている。
【0014】
上記構成であれば、プラズマ室の外壁面に沿ったガスの流出をより効果的に防止することができる。
【0015】
具体的なプラズマ室の外壁面に沿ったガスの流出を防止する構造としては、
前記開口が形成された前記プラズマ室の壁面は溝部を備えており、
前記シール部材の他端が前記溝部に配置される構造が挙げられる。
【0016】
上記構造であれば、追加部材や難しい加工が必要なく、低コスト化を図ることができる。
【0017】
シール部材の取り付けをより簡便に行うには、
前記溝部が円環状を成し、前記シール部材が円筒状を成す構成とすることが望ましい。
【0018】
上記構成であれば、シール部材の軸方向における他端をプラズマ室の壁面の溝に配置しつつ、シール部材を回転させてシール部材の軸方向における位置調整を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
シール部材の軸方向でシール部材の一端が支持部材に固定されているので、特許文献1で問題としていたガス流出の原因となる隙間がなくなる、または極力小さなものにすることが可能となる。
これにより、隙間起因のガス流出が減り、ガスの利用効率が向上する。
また、シール部材の軸方向において、シール部材の他端が、シール部材の径方向の少なくとも一部で、開口が形成されたプラズマ室の壁面と重なる構成とすることで、重なり部分が入れ子構造となり、プラズマ室の外壁面に沿ったガスの流出も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図2に記載の主要部材を分解したときの状態を示す斜視図
【
図5】
図4に記載の主要部材を分解したときの状態を示す斜視図
【
図6】シール部材に係る変形例を示す模式図(A)ZX平面での模式的断面図(B)YZ平面での模式的平面図
【
図7】シール部材に係る別の変形例を示す模式図(A)ZX平面での模式的断面図(B)YZ平面での模式的平面図
【
図8】シール部材に係る他の変形例を示す模式図(A)ZX平面での模式的断面図(B)YZ平面での模式的平面図
【
図10】シール部材に係る他の変形例を示す模式的断面図(A)プラズマ室壁面とシール部材他端との入れ子構造に係る変形例(B)シール部材一端の構造に係る変形例(C)シール部材一端の構造に係る別の変形例
【
図11】シール部材の固定構造に係る変形例を示す模式的断面図
【
図12】従来技術のイオン源の構成を示す模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に係るイオン源31の構成例を示す模式的断面図である。
図12と符号が共通する部材は、同一の構成である。
図1の構成では、
図12で反射電極が取り付けられていた場所にスパッタターゲット34が設けられている。
図12の構成との主な違いは、カソード4側のシール部材32とスパッタターゲット34側のシール部材33の構造と、カソードホルダ50とターゲット支持棒35の構造である。
スパッタターゲット34側の要部C1とカソード4側の要部C2に関し、
図2乃至
図5を用いて以下に詳細を説明する。
【0022】
図2は、
図1のC1部位を拡大した模式的断面図である。プラズマ室2は6枚の板から構成されているが、
図2は要部を拡大した断面図であるため、図には一部の壁面(2A、2B、2C)のみが描かれている。なお、図示される壁面2Bには、
図1のイオン引出し口11が形成されている。
【0023】
スパッタターゲット34は締結部S3でターゲットホルダ36にネジ止めされていて、ターゲットホルダ36は締結部S2でターゲット支持棒35にネジ止めされている。
ターゲット支持棒35は、プラズマ室2の開口2AHを通して、プラズマ室2の外部からスパッタターゲット34を支持するための部材で、スパッタターゲット34と反対側の端部はボルトナットからなる締結具38でクランプ部材37に固定されている。
【0024】
本発明のスパッタターゲット34側のシール部材33は円筒状の部材であり、軸方向(図の上下方向)の一端33E2が締結部S1でターゲット支持棒35にネジ止めされている。
一方、シール部材33の軸方向(図の上下方向)における他端33E1は、壁面2Aに形成された環状の溝部G1内に配置されている。より望ましくは、シール部材33の軸方向で壁面2Aの溝部G1の底にシール部材33の他端33E1の先端が当接するように、締結部S1でターゲット支持棒35に対するシール部材33の位置調整が実施される。
環状の溝部G1と円筒状のシール部材33の組み合わせであれば、ターゲット支持棒35を固定した後で、シール部材33を回転することで上述したシール部材33のネジ止めによる位置調整が可能となる。
なお、シール部材33及び後述するシール部材32は耐熱性、腐食性が高いAl2O3やBN等の絶縁材料で構成されている。
【0025】
図3は、
図2に記載の主要部材を分解したときの状態を示す斜視図である。図示される一点鎖線は部材間の連結関係を示しており、後述する他の図面においても同様である。
ターゲット支持棒35には、ネジ部S11、S21が形成されている。シール部材33の軸方向における一端33E2には、ターゲット支持棒35のネジ部S11に対応するネジ部S12が形成されている。また、ターゲットホルダ36には、ターゲット支持棒35のネジ部S21に対応するネジ部S22が形成されている。
図2のクランプ部材37は、
図3に示される2つのクランプバー37A、37Bで構成されている。クランプバー37A、37Bの所定部位にターゲット支持棒35の端部を挟み込み、ボルト38A、ナット38Bからなる締結具で2つのクランプバーを締め付けることでターゲット支持棒35を固定している。
【0026】
上述した構成のシール部材33であれば、シール部材33の軸方向でシール部材33の一端33E2がターゲット支持棒35に固定されているので、特許文献1で問題としていたガス流出の原因となる隙間をなくすことが可能となる。
また、シール部材33の軸方向において、シール部材33の他端33E1が、シール部材33の径方向の全周で、プラズマ室の壁面2Aと重なっていることで、重なり部分が入れ子構造となり、プラズマ室2の外壁面に沿ったガスの流出も十分に防止することができる。
これらの構造によって、特許文献1の構成に比べてガスの利用効率が向上する。
【0027】
上述した実施形態は、スパッタターゲット34側のシール部材33についてのものであったが、カソード4側のシール部材32についても同様の構成を採用し、ガスの利用効率の向上を図ることができる。
【0028】
図4は、
図1に示すC2部位を拡大した模式的断面図である。
カソード4は、円柱状をしており、大径部と小径部を有している。カソード4の小径部には窪みがあり、この窪みに環状のワイヤーWが取り付けられることでカソードホルダ50にカソード4が支持されている。
カソードホルダ50はクランプ部材39に締結具38を用いて固定されており、クランプ部材39は絶縁部材41を介してクランプ部材40に取り付けられている。
クランプ部材40は、カソード4と所定距離離間させた状態で締結具38を用いてフィラメント3を固定支持する部材である。
【0029】
カソードホルダ50は、プラズマ室2の壁面2Dに形成された開口2DHを通してプラズマ室2の外部からカソード4を支持する部材であり、前述の実施形態で言うところのターゲット支持棒35と同様の支持部材である。このカソードホルダ50に対して、小径部と大径部を有する概略円筒状のシール部材32の軸方向(図の上下方向)における一端32E2が締結部S4でネジ止めされている。
また、シール部材32の軸方向(図の上下方向)における他端32E1はプラズマ室2の壁面2Dに形成された環状の溝部G2に配置されている。より望ましくは、シール部材32の軸方向で壁面2Dの溝部G2の底にシール部材32の他端32E1の先端が当接するように、締結部S4でカソードホルダ50に対するシール部材32のネジ止めによりシール部材32の位置調整が実施される。
スパッタターゲット34側のシール部材33と同様に、このシール部材32の位置調整についても、円筒形状のシール部材32と環状の溝部G2との組み合わせから、各部の組付けを終えた後でシール部材32の位置調整を実施することが可能となる。
【0030】
図5は、
図4に記載の主要部材を分解したときの状態を示す斜視図である。これまでに説明した図に記載の部材と共通する部材については同一の符号を使用しているため、その説明は省略する。
プラズマ室2を構成する壁面2Dにはカソードホルダ50とこれに支持されるカソード4が挿通される開口2DHが形成されている。カソードホルダ50は、カソード4を支持している側と反対側の端部が2つのクランプバー39A、39Bの間に配置され、締結具38でクランプバー39A、39Bを締め付けることで各クランプバー39A、39Bの間に固定されている。
カソードホルダ50が固定されている側の端部にはネジ部S41が形成されており、このネジ部S41とシール部材32の一端32E2に形成されたネジ部S42とが螺合することで、シール部材32がカソードホルダ50に取り付けられる。
【0031】
フィラメント3は2本の脚を有し、各脚はクランプバー40A、40Bに形成された貫通孔に挿入されている。各クランプバー40A、40Bは板40Cを取り付けるための空間を有しており、板40Cを締結具38で締め付けることでフィラメント3の各脚を各クランプバー40A、40Bに固定するように構成されている。
【0032】
上述した実施形態では、プラズマ室2を構成する壁面に環状の溝部を形成し、ここに円筒状のシール部材の端部を配置する構成であったが、本発明で想定される構成はこの構成に限られるものではない。
以下、シール部材とシール部材の端部が配置される壁面の構成についての変形例を説明する。
スパッタターゲット34側のシール部材33とプラズマ室2を構成する壁面2Aの構成についての変形例と、カソードホルダ50側のシール部材32とプラズマ室2を構成する壁面2Dの構成についての変形例とは、類似しており、要となる構成は同一である。
この点から、以下の変形例の説明ではスパッタターゲット34側の構成だけについて説明するが、同様の構成はカソードホルダ50側にも適用できる。
【0033】
図6は、シール部材33に係る第一の変形例を示す模式図である。
図6(A)はZX平面での模式的断面図を示し、
図6(B)はYZ平面での模式的平面図を示している。
これまでの実施形態では、プラズマ室2を構成する壁面2Aの表面を部分的に削って環状の溝部G1を形成していたが、
図6(A)に描かれているように、壁面2Aを部分的に突出させて環状の溝部G1を形成するようにしてもよい。
なお、壁面2Aの溝部G1の形成にあたっては、壁面2Aを削り出しで形成してもいいが、壁面2Aに別部材を取り付けて突出部位を形成するようにしてもよい。
【0034】
図7は、シール部材33に係る第二の変形例を示す模式図である。
図7(A)はZX平面での模式的断面図を示し、
図7(B)はYZ平面での模式的平面図を示している。
これまでの実施形態との違いは、環状の溝部G1の代わりに、壁面2Aに環状の突起部2A1を形成し、その内側にシール部材33の軸方向(X方向)における他端33E1を配置している。
【0035】
この構成でも先の実施形態の構成と同じく、シール部材32の径方向(Z方向)において、シール部材33の軸方向(X方向)における他端33E1が突起部2A1と重なる、換言すれば入れ子構造になるため、壁面2Aとシール部材33の間からガスが流出することを防止することができる。
なお、突起部2A1は壁面2Aと別部材で構成してもいい。また、
図7の突起部2A1を形成する際に、壁面2Aのシール部材33と対向する中央部分のみを削って突起部2A1を形成するようにしてもよい。
さらに、突起部2A1をシール部材33の他端33E1の外側に配置する構成に代えて、突起部2A1をシール部材33の他端33E1の内側に配置する構成にしてもよく、同等の効果を奏することができる。
【0036】
図8は、シール部材33に係る第三の変形例を示す模式図である。
図8(A)はZX平面での模式的断面図を示し、
図8(B)はYZ平面での模式的平面図を示している。
これまでの実施形態との違いは、
図8(B)に描かれているように、突起部2A1を部分的に形成している点にある。
図8のように突起部2A1を部分的に形成する構成であっても、突起部2A1が形成されている部位については先の実施形態で述べたガス流出を防止する効果を奏することができる。
【0037】
図9は、シール部材33に係る第四の変形例を示す斜視図である。
これまでの実施形態では、壁面2Aに形成された環状の溝部G1にシール部材33の他端33E1を配置する構成であったが、
図9に描かれているように、溝部G1の形状を矩形状とし、そこに角筒形状をしたシール部材33の他端33E1を配置する構成にしてもよい。
なお、この構成の場合、物理的な干渉が起きることから、ターゲット支持棒35を固定した後で、溝部G1にシール部材33の他端33E1が配置された状態でシール部材33を回転させてシール部材33の位置調整を行うことは不可能となる。
このことから、先にターゲット支持棒35に対するシール部材33の取り付け位置の調整を実施した後で、ターゲット支持棒35の位置を固定することになる。
【0038】
図10は、シール部材に係る第五の変形例を示す模式的断面図である。
図10(A)はプラズマ室2の壁面2Aとシール部材33の他端33E1との入れ子構造に係る変形例であり、
図10(B)はシール部材33の一端33E2の構造に係る変形例である。また、
図10(C)はシール部材33の一端33E2の構造に係る別の変形例である。
【0039】
図10(A)に描かれているように、環状の溝部G1をシール部材33の他端33E1に形成しておき、ここに壁面2Aの突起部2A1を配置する構成にしてもよい。
これまでの実施形態ではシール部材33の一端33E2を部分的にシール部材33の外側に突出させていたが、
図10(B)に描かれているように、一端33E2の厚みを増し、突出部位をなくしシール部材33の一端33E2を面一としてもよい。ただし、材料費の観点からは、
図10(A)や後述する
図10(C)のように一端33E2を突出させた構造を用いる方が望ましい。
さらに、
図10(C)に描かれているように、シール部材33の一端33E2を部分的にシール部材33の内側に突出させる構成にしてもよい。
なお、
図10(B)、
図10(C)の構成を採用する場合、シール部材33の他端33E1と壁面2Aの構成は必ずしも図示される構成を採用する必要はなく、これまでの実施形態で説明した様々な構成を採用してもよい。
【0040】
これまでの実施形態では、シール部材33をターゲット支持棒35にネジ止めする構成を挙げていたが、両部材の固定については
図11に示す構成を採用してもよい。
図11では、ターゲット支持棒35に溝部G3を形成し、シール部材33の一端33E2に形成された突起部42を嵌合する構成が採用されている。
このような固定構造を採用しても、特許文献1で問題にしていた隙間がなくなるため、特許文献1に比べて高いガスの流出防止効果を得ることが出来る。
なお、一端33E2に形成される突起部42は環状の突起であってもいいが、周方向において部分的に突出した構成であってもよい。さらに、溝部G3と突起部42を形成する部材を反対にしておいてもいい。つまり、溝部G3をシール部材33の一端33E2に形成し、ターゲット支持棒35に突起部42を形成しておいてもいい。
【0041】
その他、前述した以外に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行っても良いのはもちろんである。
例えば、本発明の実施形態では、カソード4に対向した位置にスパッタターゲット34を配置した構成を採用していたが、スパッタターゲット34に代えて、特許文献1と同様の反射電極を配置する構成にも適用できる。
また、これまでの実施形態では、2つのシール部材32、33を備える構成について説明したが、本発明のイオン源31はいずれか一方のシール部材を備える構成であってもよい。そのような構成であっても、シール部材単独でみたときのガスの流出防止効果は従来技術よりも優れている。
【符号の説明】
【0042】
2 プラズマ室
2AH、2DH 開口
2A、2B、2C、2D プラズマ室の壁面
32、33 シール部材
31 イオン源
35、50 支持部材(ターゲット支持棒、カソードホルダ)