IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イズテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-台車式搬送装置 図1
  • 特許-台車式搬送装置 図2
  • 特許-台車式搬送装置 図3
  • 特許-台車式搬送装置 図4
  • 特許-台車式搬送装置 図5
  • 特許-台車式搬送装置 図6
  • 特許-台車式搬送装置 図7
  • 特許-台車式搬送装置 図8
  • 特許-台車式搬送装置 図9
  • 特許-台車式搬送装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】台車式搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/12 20060101AFI20240216BHJP
   B65G 35/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B61B13/12 F
B65G35/06 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020113505
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021187424
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】598096452
【氏名又は名称】イズテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安形 竹志
(72)【発明者】
【氏名】桐山 太一
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-274451(JP,A)
【文献】特開2013-252857(JP,A)
【文献】特開2007-030578(JP,A)
【文献】特表2018-523086(JP,A)
【文献】特開2018-069972(JP,A)
【文献】国際公開第2009/000438(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0127256(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00-13/12
B65G 35/06、49/00-49/08
B62D 65/00-65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを積載する台車を搬送するための台車式搬送装置であって、
フラットな上面を有する形鋼部材の上面に所定の間隔を隔てて複数の案内支持部が立設された案内レール機構が前記台車の搬送経路に沿って設けられており、
前記台車の下面側には、前記案内支持部に支持されながら案内されるガイド部材が設けられており、
前記案内レール機構には、前記ガイド部材を押圧しながら回転することにより前記台車を移動させるための駆動力を伝達する駆動伝達手段が設けられていることを特徴とする台車式搬送装置。
【請求項2】
前記案内支持部は、
前記形鋼部材の上面に略鉛直方向に延びる支柱と、
前記支柱の上端に接続され、その接続部分から搬送方向に直交する方向にそれぞれ延びる水平部材と、
前記水平部材の両端にそれぞれ回転自在に設けられたガイドローラと、
から構成される、請求項1に記載の台車式搬送装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、
前記台車の下面側に搬送方向と同一方向に延びた一対のコの字状部材によって構成されており、
前記各コの字状部材の内側に、前記案内支持部の前記ガイドローラがそれぞれ転動されることにより、前記ガイド部材が前記案内支持部によって案内される、請求項2に記載の台車式搬送装置。
【請求項4】
前記駆動伝達手段は、
一方のコの字状部材の側面に当接され回転駆動力を付与する駆動輪と、
前記ガイド部材を介在して前記駆動輪と対向する位置であって他方のコの字状部材の側面に当接される補助ローラと、を有する、請求項3に記載の台車式搬送装置。
【請求項5】
前記案内レール機構の開始端には、
前記台車のガイド部材と、前記案内レール機構の前記案内支持部との高さ位置を一致させるために、前記台車を上昇させるリフター機構が設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載の台車式搬送装置。
【請求項6】
前記案内レール機構の終了端には、
前記案内レール機構による前記台車の搬送方向を変換するためのトラバース機構が設けられている、請求項1ないし5のいずれかに記載の台車式搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを移載する台車を搬送するための台車式搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両等の組立工場において車両のパーツ等(以下、「ワーク」という)を移載する台車が用いられ、その台車を搬送するための複数種類の台車式搬送方式が提案されている。この台車式搬送方式では、例えば工場内のフロア上に所定の搬送経路が設けられ、その搬送経路に沿って台車が自動で搬送される(例えば特許文献1参照)。なお、台車は、例えば棒状の取手が接続され、作業員がそれを手押しすることにより移動することも可能とされる。
【0003】
従来の台車式搬送方式としては、例えばフロア上に搬送経路に沿ってガイドレールが設けられたフロアタイプのものがある。より詳細には、この台車式搬送方式は、図9に示すように、搬送経路に沿ってブラケット51が設けられ、ブラケット51に上方が開放された略コの字状のガイドレール52が設けられている(円内参照)。
【0004】
一方、台車50は、下面側に複数のキャスター54が設けられるとともに、側面近傍に水平方向に回転自在なローラ53が設けられている。ローラ53は、上記ガイドレール52の内側において転動される。また、搬送経路には、台車50の側面に当接しながら駆動力を付与する複数のフリクション駆動機構(図略)が備えられている。この構成によれば、フリクション駆動機構が回転駆動されることにより、台車50はフロアF上のブラケット51に沿って走行される。
【0005】
しかしながら、この台車式搬送方式では、台車50はフロアF上を直接走行するため、フロアFの勾配具合に大きく影響される。その対策として、台車50のキャスター54とフロアFとの間に例えば鉄板55等が敷設されるが、鉄板55等では多少の凹凸は改善されても、フロアFの勾配自体は必ずしも解消されるとは限らない。そのため、フリクション駆動機構に余計な負荷がかかったり、また方向転換時にキャスター54が空回りしたりして、フリクション駆動機構の押圧力を台車50に適切に付与することができないといった問題点がある。
【0006】
さらに、このような台車式搬送方式では、ワークを塗装する塗装ライン上で用いられる場合が多く、ワークから塗料が滴り落ちることがある。そのため、ガイドレール52やローラ53に塗料が付着し、ローラ53がスムーズに回転することが妨げられ、台車50の搬送に支障をきたすことがある。
【0007】
また、従来の他の台車式搬送方式としては、例えばフロア上に搬送経路に沿ってローラコンベヤが設けられたローラコンベヤタイプのものがある。この台車式搬送方式では、図10に示すように、ローラコンベヤ56に回転自在な複数のローラ57が並設され、ローラコンベヤ56の両側に、台車50を案内する案内機構が設けられている。案内機構は、台車50の下面端部を支持するとともに上下方向に回転自在な下面補助ローラ58と、台車50の側面に沿うとともに水平方向に回転自在な側面補助ローラ59と、下面補助ローラ58及び側面補助ローラ59をそれぞれ支持するブラケット60とからなる(円内参照)。
【0008】
また、ローラコンベヤ56には、台車50の側面に当接しながら駆動力を付与する複数のフリクション駆動機構(図略)が備えられ、フリクション駆動機構が回転駆動されることにより、ローラコンベヤ56に沿って台車50が搬送される。
【0009】
しかしながら、この台車式搬送方式では、例えば塗装ライン上で用いられる場合、側面補助ローラ59が外部に露出しているため、側面補助ローラ59に塗料が付着するときがあり、台車50の搬送に支障をきたすこといった問題点がある。また、この台車式搬送方式では、ローラコンベヤ56が台車50の搬送経路に沿って連続的に設けられるため、例えば作業員が搬送経路を横切りたいときにそれができないといった問題点があった。
【0010】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2013-252857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、フロアの凹凸や勾配に影響されず、塗料の付着を防止することができ、容易な構成でスムーズに台車を搬送することのできる台車式搬送装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によって提供される台車式搬送装置は、ワークを積載する台車を搬送するための台車式搬送装置であって、フラットな上面を有する形鋼部材の上面に所定の間隔を隔てて複数の案内支持部が立設された案内レール機構が前記台車の搬送経路に沿って設けられており、前記台車の下面側には、前記案内支持部に支持されながら案内されるガイド部材が設けられており、前記案内レール機構には、前記ガイド部材を押圧しながら回転することにより前記台車を移動させるための駆動力を伝達する駆動伝達手段が設けられていることを特徴としている。
【0014】
本発明の台車式搬送装置において、前記案内支持部は、前記形鋼部材の上面に略鉛直方向に延びる支柱と、前記支柱の上端に接続され、その接続部分から搬送方向に直交する方向にそれぞれ延びる水平部材と、前記水平部材の両端にそれぞれ回転自在に設けられたガイドローラと、から構成されるとよい。
【0015】
本発明の台車式搬送装置において、前記ガイド部材は、前記台車の下面側に搬送方向と同一方向に延びた一対のコの字状部材によって構成されており、前記各コの字状部材の内側に、前記案内支持部の前記ガイドローラがそれぞれ転動されることにより、前記ガイド部材が前記案内支持部によって案内されるとよい。
【0016】
本発明の台車式搬送装置において、前記駆動伝達手段は、一方のコの字状部材の側面に当接され回転駆動力を付与する駆動輪と、前記ガイド部材を介在して前記駆動輪と対向する位置であって他方のコの字状部材の側面に当接される補助ローラと、を有するとよい。
【0017】
本発明の台車式搬送装置において、前記案内レール機構の開始端には、前記台車のガイド部材と、前記案内レール機構の前記案内支持部との高さ位置を一致させるために、前記台車を上昇させるリフター機構が設けられているとよい。
【0018】
本発明の台車式搬送装置において、前記案内レール機構の終了端には、前記案内レール機構による前記台車の搬送方向を変換するためのトラバース機構が設けられているとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の台車式搬送装置によると、複数の案内支持部が立設された案内レール機構が台車の搬送経路に沿って設けられており、台車の下面側には、案内支持部に支持されながら案内されるガイド部材が設けられており、案内支持部はフラットな上面を有する形鋼部材に立設されているので、台車をフロアの勾配に影響されずスムーズに搬送することができる。また、ガイド部材は、台車の下面側に設けられるので、案内支持部を覆うことができ、例えばガイド部材の内側で転動するガイドローラに対して塗料が付着することを防止することができ、良好な搬送を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る台車式搬送装置の構成を示す斜視図である。
図2図1に示す台車式搬送装置の正面図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4図1に示す台車式搬送装置の側面図である。
図5図1に示す台車式搬送装置の平面図である。
図6】台車を上昇させるためのリフター機構を示す斜視図である。
図7】リフター機構の作用を説明するための図である。
図8】台車の搬送方向を変換するためのトラバース機構を示す斜視図である。
図9】従来の台車式搬送方式を示す図である。
図10】従来の他の台車式搬送方式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る台車式搬送装置の構成を示す斜視図である。図2図1に示す台車式搬送装置の正面図、図3図2の一部拡大図、図4図1に示す台車式搬送装置の側面図、図5は同じく平面図を示す。なお、図1ないし図5には、台車2(後述)によって移送されるワークが図示されていないが、通常、台車2の上面にはワークを搭載支持するための搭載支持機構が設けられている。
【0023】
台車式搬送装置1は、例えば車両等の組立工場内における塗装ラインにおいて用いられ、ワークを移載する台車2と、台車2の搬送経路に応じて設けられた台車レール機構3とによって構成される。台車式搬送装置1は、上記台車2を台車レール機構3に沿って搬送させるものである。なお、この台車式搬送装置1における台車2は、搬送経路としての台車レール機構3に沿って搬送されるが、台車レール機構3以外のフロアF上において例えば作業者が任意の場所に手押しして移動させることも可能である。
【0024】
台車2は、大きさが例えば長さ2m、幅1.5mのいわゆる4輪台車であり、全体形状が平面視矩形状に形成されている。より詳細には、台車2は、矩形の周囲枠4と、長手方向の中央部において短手方向に延びた補強片5と、長手方向の両端部近傍に短手方向に延びた2つの取付片6とがそれぞれ設けられている。これらの取付片6は、後述するキャスター7を取付支持するためのものである。
【0025】
台車2の4隅であって上記取付片6の各端部近傍には、回転自在な4つのキャスター7が設けられ、台車2は、これらのキャスター7によって台車レール機構3以外のフロアF上において単独で移動することができる。なお、各キャスター7には、それ自体の回転を阻止するストッパー機構8がそれぞれ付設されている。
【0026】
台車2の下面側であって短手方向の中央部には、長手方向に延びたガイド部材10が形成されている。ガイド部材10は、図2及び図3に示すように、断面視で一対のコの字状部材11によって構成され、台車2の長手方向の一端から他端まで連続して形成されている。台車2のガイド部材10は、詳細には後述するが、台車レール機構3の各ローラやフリクション駆動機構20の駆動輪21等に当接される。これにより、台車2は、ガイド部材10が台車レール機構3によって支持されることにより、台車レール機構3に案内されながらそれに沿って搬送される。
【0027】
台車レール機構3は、フロアF上に敷設され、所定の間隔(例えば650mmピッチ)を隔てて設けられた複数の案内支持部13を備えている。この場合、案内支持部13の配置ピッチが650mmであると、台車2は、図1,4,5に示すように、台車レール機構3上における搬送時、3個ないし4個の案内支持部13で支持されることになる。
【0028】
複数の案内支持部13は、略直線状に設けられたH形鋼14の上面に立設されている。H形鋼14はその上面がフラットに形成されており、複数からなる一対の板状部材15の上面側に支持されている。一対の板状部材15は、締結部材15a(図3参照)によって高さ方向に所定の間隔を有して配されている。すなわち、この一対の板状部材15によってフロアFとH形鋼14との間には、隙間S(図3及び図4参照)が形成される。この場合、各板状部材15の締結部材15aの締付位置を調整することによってH形鋼14を水平に敷設することができ、フロアFの凹凸や勾配を吸収することができる。
【0029】
また、背景技術の欄で示した、従来のフロアタイプやローラコンベヤタイプの台車式搬送方式では、例えば装置の電源線や制御線等をフロアF上の搬送経路を横断して這わしたいとき、ブラケット51やローラコンベヤ56が邪魔になり、搬送経路を迂回させなければならない場合がある。しかしながら、本実施形態においては、H形鋼14の下方に隙間Sが形成されるため、その隙間Sを利用して電源線や制御線等を這わすことができ、搬送経路を容易に横断させることができる。
【0030】
案内支持部13は、図3に示すように、略鉛直方向に延びる略円柱状の支柱16と、支柱16の上端に接続され、その接続部分から左右方向(搬送方向と直交する方向)にそれぞれ延びる水平部材17と、水平部材17の両端にそれぞれ上下方向に回転自在に設けられた一対のガイドローラ18とによって構成されている。一対のガイドローラ18は、台車2が台車レール機構3に沿って搬送される際、ガイド部材10の内側において転動される。
【0031】
また、水平部材17の下部であって支柱16の左右両側には、一対の補助ローラ19がそれぞれ水平方向に回転自在に設けられている。一対の補助ローラ19は、ガイド部材10の一対のコの字状部材11の先端面にそれぞれ当接される。
【0032】
台車レール機構3には、所定の間隔を隔ててフリクション駆動機構20が設けられている。フリクション駆動機構20は、ガイド部材10の側方を押圧しながら回転し台車2を搬送するための駆動力を伝達するものである。
【0033】
フリクション駆動機構20は、所定の厚みを有する略円盤状に形成された駆動輪21、駆動輪21や後述するリミットスイッチ26等の制動部材を支持する支持部材22を有している。駆動輪21は、台車2の台車レール機構3上における搬送時、その側面の当接面部が一方のコの字状部材11の側面に当接され、同軸上に設けられたモータ23が駆動されることによって回転駆動力がガイド部材10に対して付与される。この駆動輪21の回転駆動力により、台車2が台車レール機構3に沿って搬送される。なお、図3及び図5中の符号21aは、駆動輪21を覆うカバーである。
【0034】
フリクション駆動機構20には、ガイド部材10を介在して駆動輪21と対向する位置に対面ローラ(補助ローラ)24が設けられている。対面ローラ24は、図5に示すように、渡り部材25によって駆動輪21とは反対側に配置される。渡り部材25は、台車20の短手方向に延び、支持部材22と連結されている。対面ローラ24は、渡り部材25の至端に水平方向に回転自在に支持されており、駆動輪21が当接される一方のコの字状部材11とは反対側の他方のコの字状部材11に当接される。この構成により、ガイド部材10は、駆動輪21と対面ローラ24とによって挟持される格好となる。
【0035】
また、フリクション駆動機構20には、台車2の搬送時に台車2がガイド部材10から離間することを検出するリミットスイッチ26が備えられている。さらに、フリクション駆動機構20には、駆動輪21をガイド部材10側に押し付けるためのバネ27が備えられている。
【0036】
次に、台車式搬送装置1の作用について説明する。
【0037】
台車2は、台車レール機構3上に搭載されて搬送経路に沿って搬送される。この場合、台車2は、ガイド部材10が複数の案内支持部13によって支持されながら案内される。すなわち、台車2のガイド部材10の内側には、案内支持部13の一対のガイドローラ18がそれぞれ配されるとともに、一対のコの字状部材11の各先端面には、一対の補助ローラ19の側面がそれぞれ当接される。また、一方のコの字状部材11の側面には、フリクション駆動機構20の駆動輪21が当接される。さらに、他方のコの字状部材11の側面には、対面ローラ24が当接される。
【0038】
この状態において、モータ23が回転駆動すると、駆動輪21が回転され、駆動輪21の回転駆動力が台車2のガイド部材10に伝達される。これにより、台車2は、搬送経路(台車レール機構3)に沿って搬送される。この場合、案内支持部13の一対のガイドローラ18は、一対のコの字状部材11の内側でそれぞれ転動される。また、一対の補助ローラ19は、一対のコの字状部材11の各先端面に沿って回転する。さらに、対面ローラ24は、他方のコの字状部材11の側面に沿って回転する。
【0039】
このように、台車2は、下面側に設けられたガイド部材10がフロアF上に設けられた台車レール機構3の案内支持部13によって支持されて搬送されるので、容易な構成で台車2によるワークの移送を実現することができる。この場合、ガイド部材10は、その内側において一対のガイドローラ18が転動され、一対の補助ローラ19や対面ローラ24によって当接支持される。そのため、ガイド部材10は、案内支持部13によって安定的に支持されるので、台車2は、ワークを安定的にかつスムーズに移送することができる。
【0040】
従来のフロアタイプの台車式搬送方式では、台車50のキャスター54がフロアF上を移動するので、フロアFの勾配に大きく影響されることがあった。しかしながら、本実施形態においては、台車2は、フラットな上面を有するH形鋼14に立設された案内支持部13上を搬送されるので、フロアFの凹凸や勾配に影響されることはなく、安定した搬送が可能となる。
【0041】
また、フロアタイプやローラコンベヤタイプの従来の台車式搬送方式では、ガイドレールやローラ等に塗料が付着し、ローラ等がスムーズに回転することが妨げられ、台車の搬送に支障をきたす場合があった。しかしながら、本実施形態においては、台車2の搬送に寄与するガイドローラ18や一対の補助ローラ19等はガイド部材10によって覆われているので、ワークから滴る塗料の影響を受けず、台車2の搬送に支障をきたすことがない。
【0042】
さらに、ローラコンベヤタイプの従来の台車式搬送方式では、ローラコンベヤ56が台車50の搬送経路に沿って連続的に設けられるため、例えば作業員が搬送経路を横切ることができなかった。しかしながら、本実施形態では、搬送経路は主にH形鋼14と案内支持部13からなる台車レール機構3によって構成されるので、それらのフロアFにおける占有面積は狭く、例えば作業員はそれらを跨いで容易に横切ることができる。
【0043】
次に、フロアF上の台車2を台車レール機構3に搭載させる場合について説明する。
【0044】
図6は、台車2を上昇させるためのリフター機構30を示す斜視図である。リフター機構30は、台車2を台車レール機構3に搭載させる際に用いられるものである。図6によると、リフター機構30は、台車レール機構3の延長線上であって台車2の搬送開始端部において設けられている。
【0045】
リフター機構30は、断面視で略皿状に形成され台車レール機構3の延出方向に延びた可動部31を有している。可動部31は、その上縁端部に左右方向に延出された支持片32が形成されている。可動部31の内側底部には、複数の案内支持部33が所定の間隔を隔てて配設されている。案内支持部33は、台車レール機構3の案内支持部13よりその高さが低く形成されている。
【0046】
リフター機構30には、複数のシリンダ34が備えられ、各シリンダ34は、可動部31の左右両側にそれぞれ設けられ、それらの上端が可動部31の支持片32の裏面に当接されている。シリンダ34は、支持片32を支持しつつ駆動時には可動部31を上方に移動させるものである。なお、各シリンダ34は、台座35にそれぞれ配されている。
【0047】
台車2が台車レール機構3上に搭載される際には、まず、例えば作業員によって台車2がリフター機構30の配置位置まで手押しで移動される。この場合、リフター機構30の案内支持部33は、台車2のガイド部材10の高さ位置に合わして配されており、台車2がリフター機構30の位置に移動した際には、図7(a)に示すように、案内支持部33のガイドローラ18が台車2のガイド部材10の内側に配される。
【0048】
次いで、シリンダ34が駆動されることにより可動部31が上方に移動する。可動部31は、図7(b)に示すように、案内支持部33が台車レール機構3の案内支持部13と同じ高さ位置になるまで上昇する(矢印U参照)。これにより、台車2も上方に移動される。その後、台車2は、図示しないフリクション駆動機構によってリフター機構30から台車レール機構3に移動される。台車2を台車レール機構3に移動させるには、作業者による手押しによってされてもよい。
【0049】
このように、台車2は、リフター機構30によって上昇され、台車レール機構3上に移動されて容易に搭載される。なお、台車2が台車レール機構3上に搭載される方法としては、リフター機構30以外の他の装置や方法が用いられてもよい。
【0050】
次に、台車2の搬送方向を変換させる場合について説明する。
【0051】
図8は、台車2の搬送方向を変換するためのトラバース機構37を示す斜視図である。トラバース機構37は、台車レール機構3上に搭載された台車2を台車レール機構3の搬送方向と直交方向に搬送するためのものである。図7によると、トラバース機構37は、台車レール機構3の延長線上であって台車2の搬送終了端部において設けられている。
【0052】
トラバース機構37は、台車2を支持する案内台車38と、台車レール機構3と直交方向に敷設された一対のレール39とからなる。案内台車38は、平面視矩形状に形成された枠体40によって形成され、枠体40には、複数の案内支持部33が所定の間隔を隔てて立設されている。案内支持部33は、台車レール機構3の案内支持部13と同一方向に並設されている。枠体40の4隅の側面には、回動自在な複数の車輪41が設けられている。一対のレール39は、その上面を車輪41が転動するように所定の幅を有し、台車レール機構3と直交する方向に延びて配されている。
【0053】
上記の構成によれば、台車レール機構3上に搭載された台車2は、図示しないフリクション駆動機構によって台車レール機構3からその搬送終了端部において配された案内台車38上に移動される(矢印X参照)。この場合、案内支持部33は、案内支持部13と同一高さに形成されており、台車2のガイド部材10の内側に案内支持部33が配されることにより、台車2が案内台車38上に移動される。
【0054】
次いで、案内台車38の側方を図示しない別のフリクション駆動機構が押圧しながら回転駆動することにより、案内台車38を台車レール機構3の直交方向に移動させる。すなわち、案内台車38はレール39の敷設方向に移動され、案内台車38に搭載された台車2もレール39の敷設方向に移動される(矢印Y参照)。
【0055】
このように、台車2は、トラバース機構37によって搬送方向を変換させて搬送することができ、ワークをフロア上の所望の位置に効果的に移送することができる。台車2の搬送方向を変換する装置や方法は、上記したトラバース機構37の構成に限るものではない。
【0056】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば台車2、ガイド部材10、台車レール機構3、案内支持部13、H形鋼14、リフター機構30、トラバース機構37、案内台車38等の大きさ、数量、形状及び構造等は、上記した実施形態に限るものではない。、
【符号の説明】
【0057】
1 台車式搬送装置
2 台車
3 台車レール機構
7 キャスター
10 ガイド部材
11 コの字状部材
13 案内支持部
14 H形鋼
16 支柱
17 水平部材
18 ガイドローラ
20 フリクション駆動機構
21 駆動輪
24 対面ローラ
30 リフター機構
37 トラバース機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10