(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電池及び電池用保護テープ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/595 20210101AFI20240216BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240216BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240216BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240216BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240216BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240216BHJP
H01M 10/0587 20100101ALN20240216BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240216BHJP
【FI】
H01M50/595
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/04
H01M10/04 W
H01M50/586
H01M10/0587
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2020553067
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039319
(87)【国際公開番号】W WO2020085048
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2018199474
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 朝樹
(72)【発明者】
【氏名】吉井 一洋
(72)【発明者】
【氏名】西野 肇
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-152870(JP,A)
【文献】特開2018-083904(JP,A)
【文献】特開2006-093147(JP,A)
【文献】特開2014-005465(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163932(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、C09J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、前記正極に接続されている正極リード、前記正極リードを覆う保護テープを有する電池であって、
前記保護テープは、基材層と、前記基材層上に設けられる接着層とを有し、
前記接着層は、リン酸-金属塩、ポリリン酸アンモニウム、ホウ酸基含有化合物及びケイ酸基含有化合物のうちの少なくとも1つを含む充填材と、粘着材とを有し、
前記リン酸-金属塩は、リン酸-ナトリウム塩、リン酸-カリウム塩、リン酸-カルシウム塩、リン酸-マグネシウム塩、リン酸アルミニウムのうち少なくとも1つを含み、
前記ケイ酸基含有化合物は、ケイ酸-金属塩、ケイ酸エステル及び縮合ケイ酸塩のうち少なくとも1つを含む、電池。
【請求項2】
前記リン酸-金属塩は、
さらに、リン酸-リチウム
塩を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記ホウ酸基含有化合物は、ホウ酸-金属塩、ホウ酸エステル、縮合ホウ酸塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の電池。
【請求項4】
前記ホウ酸基含有化合物は、ホウ酸-リチウム塩、ホウ酸-ナトリウム塩、ホウ酸-カリウム塩、ホウ酸-カルシウム塩、ホウ酸-マグネシウム塩、ホウ酸アルミニウム及びホウ酸メラミンのうち少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記ケイ酸基含有化合物は、ケイ酸-リチウム塩、ケイ酸-ナトリウム塩、ケイ酸-カリウム塩、ケイ酸―カルシウム塩、ケイ酸-マグネシウム塩、ケイ酸―バリウム塩、ケイ酸―マンガン塩のうち少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記接着層中の前記充填材の含有率は、1質量%~50質量%の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
前記接着層中の前記充填材の含有率は、1質量%~30質量%の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記接着層の厚みは、5μm~20μmの範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
前記接着層は、発泡促進材として、アンモニウム塩、ジシアンジアミドおよびメラミンのうち少なくとも1つを含み、
前記発泡促進材は、熱により分解されてガス成分を放出する、請求項1~8のいずれか1項に記載の電池。
【請求項10】
基材層と、前記基材層上に設けられる接着層とを有し、
前記接着層は、リン酸-金属塩、ポリリン酸アンモニウム、ホウ酸基含有化合物及びケイ酸基含有化合物のうちの少なくとも1つを含む充填材と、粘着材とを有し、
前記リン酸-金属塩は、リン酸-ナトリウム塩、リン酸-カリウム塩、リン酸-カルシウム塩、リン酸-マグネシウム塩、リン酸アルミニウムのうち少なくとも1つを含み、
前記ケイ酸基含有化合物は、ケイ酸-金属塩、ケイ酸エステル及び縮合ケイ酸塩のうち少なくとも1つを含む、電池用保護テープ。
【請求項11】
前記リン酸-金属塩は、
さらに、リン酸-リチウム
塩を含む、請求項10に記載の電池用保護テープ。
【請求項12】
前記ホウ酸基含有化合物は、ホウ酸-金属塩、ホウ酸エステル、縮合ホウ酸塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項10~11のいずれか1項に記載の電池用保護テープ。
【請求項13】
前記ホウ酸基含有化合物は、ホウ酸-リチウム塩、ホウ酸-ナトリウム塩、ホウ酸-カリウム塩、ホウ酸-カルシウム塩、ホウ酸-マグネシウム塩、ホウ酸アルミニウム及びホウ酸メラミンのうち少なくとも1つを含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の電池用保護テープ。
【請求項14】
前記ケイ酸基含有化合物は、ケイ酸-リチウム塩、ケイ酸-ナトリウム塩、ケイ酸-カリウム塩、ケイ酸-カルシウム塩、ケイ酸-マグネシウム塩、ケイ酸-バリウム塩、ケイ酸-マンガン塩のうち少なくとも1つを含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の電池用保護テープ。
【請求項15】
前記接着層中の前記充填材の含有率は、1質量%~50質量%の範囲である、請求項10~14のいずれか1項に記載の電池用保護テープ。
【請求項16】
前記接着層中の前記充填材の含有率は、1質量%~30質量%の範囲である、請求項10~14のいずれか1項に記載の電池用保護テープ。
【請求項17】
前記接着層の厚みは、5μm~20μmの範囲である、請求項10~16のいずれか1項に記載の電池用保護テープ。
【請求項18】
前記接着層は、発泡促進材として、アンモニウム塩、ジシアンジアミドおよびメラミンのうち少なくとも1つを含み、
前記発泡促進材は、熱により分解されてガス成分を放出する、請求項10~17のいずれか1項に記載の電池用保護テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池及び電池用保護テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極に接続された正極リードを保護テープで覆い、正極リードと負極間の絶縁性を向上させた電池が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図4は、特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池の正極の構成図であり、
図4(A)は集電体の一主面側から観察した部分上面図、
図4(B)は
図4(A)における線L1―L1に沿った断面図である。
【0004】
図4に示すように、正極集電体40Aの一主面側に配置される絶縁テープ44は、正極合材層40Bが形成されていない両面未塗布部40bにおける正極集電体露出面40a、正極集電体露出面40a上の正極リード42、正極リード42の下端部分と正極集電体露出面40aとの間に介在される保護層46を覆っている。この絶縁テープ44が、保護テープであり、例えば、電池の異常時において、正極と負極との間のセパレータが溶融したり裂けたりした際に、絶縁テープ44(保護テープ)によって、正極リードと負極間の内部短絡を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-89856号公報
【文献】国際公開第2017/038010号
【発明の概要】
【0006】
ところで、電池内に混入した異物が保護テープを貫通して、正極リードと負極間で内部短絡が生じると、電池が発熱し、保護テープが溶融又は分解する場合がある。その結果、短絡部分の拡大或いは短絡が継続するため、更なる発熱が生じ、電池温度の上昇へと繋がる。そこで、従来では、保護テープに、耐熱性を向上させる充填材(アルミナ等の金属酸化物)が添加される場合がある。
【0007】
しかし、従来の保護テープに添加される充填材では、含有率を非常に高くしないと、異物が保護テープを貫通して内部短絡が発生した際の発熱により、保護テープが溶融又は分解し、電池温度の上昇が十分に抑制されない場合がある。一方、充填材の含有率を高くすると、保護テープの粘着力が低下するため、正極リードから保護テープが剥がれる等の保護テープの長期信頼性が低下する虞がある。したがって、保護テープ中の充填材の含有率を低くすることが望まれている。
【0008】
そこで、本開示の目的は、従来の充填材と比較して、少ない充填材の含有率であっても、異物が保護テープを貫通して内部短絡が発生した際の電池温度の上昇を抑制することができる保護テープ及び当該保護テープを備える電池を提供することである。
【0009】
本開示の一態様に係る電池は、正極、負極、前記正極に接続されている正極リード、前記正極リードを覆う保護テープを有する電池であって、前記保護テープは、基材層と、前記基材層上に設けられる接着層とを有し、前記接着層は、リン酸基含有化合物、ホウ酸基含有化合物及びケイ酸基含有化合物のうちの少なくとも1つを含む充填材と、粘着材とを有する。
【0010】
本開示の一態様に係る電池用保護テープは、基材層と、前記基材層上に設けられる接着層とを有し、前記接着層は、リン酸基含有化合物、ホウ酸基含有化合物及びケイ酸基含有化合物のうちの少なくとも1つを含む充填材と、粘着材とを有する。
【0011】
本開示によれば、従来の充填材と比較して、少ない充填材の含有率であっても、異物が保護テープを貫通して内部短絡が発生した際の電池温度の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(A)は、正極の一主面側から観察した部分上面図であり、(B)は、(A)における線L1―L1に沿った断面図である。
【
図3】本実施形態で用いられる保護テープの部分断面図である。
【
図4】特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池の正極の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の一態様である電池の一例について説明する。以下の実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。
【0014】
図1は、実施形態に係る電池の断面図である。
図1に示す電池10は、リチウムイオン二次電池の一例を示すものであるが、実施形態に係る電池は、リチウムイオン二次電池に限定されず、金属リチウム二次電池や全固体電池等でもよい。以下、
図1の電池10をリチウムイオン二次電池10と称する。
【0015】
図1に示すリチウムイオン二次電池10は、正極11及び負極12がセパレータ13を介して巻回されてなる巻回型の電極体14と、非水電解質と、電極体14の上下にそれぞれ配置された絶縁板18,19と、正極リード20及び負極リード21と、正極リード20を覆う保護テープ(不図示)と、電池ケース15とを備える。
【0016】
電極体14は、巻回型に限定されるものではなく、例えば、正極及び負極がセパレータを介して交互に積層されてなる積層型等、他の形態が適用されてもよい。
【0017】
電池ケース15は、電極体14や非水電解質等を収容するものであり、例えば、開口部を有する有底円筒形状のケース本体16と、ケース本体16の開口部を封口する封口体17とを備える。電池ケース15は、ケース本体16と封口体17との間に設けられるガスケット28を備えることが望ましく、これにより、電池内部の密閉性が確保される。電池ケース15としては、円筒形に限定されるものではなく、例えば、角形、ラミネート型等でもよい。
【0018】
ケース本体16は、例えば、側面部の一部が内側に張出した、封口体17を支持する張り出し部22を有する。張り出し部22は、ケース本体16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。
【0019】
封口体17は、電極体14側から順に、フィルタ23、下弁体24、絶縁体25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば、円板形状又はリング形状を有し、絶縁体25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁体25が介在している。内部短絡等による発熱で内圧が上昇すると、例えば下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断し、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0020】
正極リード20は、その一端が正極11に接続されている。また、正極リード20は、正極11から絶縁板18の貫通孔を通ってフィルタ23まで延び、正極リード20の他端がフィルタ23の下面に接続されている。これにより、フィルタ23と電気的に接続されているキャップ27が正極端子となる。また、負極リード21は、その一端が負極12に接続されている。また、負極リード21は、負極12から絶縁板19の外側を通って、ケース本体16の底部内面まで延び、負極リード21の他端がケース本体16の底部内面に接続されている。これにより、ケース本体16が負極端子となる。
【0021】
以下に、正極11、及び正極リード20を覆う本実施形態の保護テープについて説明する。
【0022】
図2(A)は、正極の一主面側から観察した部分上面図であり、
図2(B)は、
図2(A)における線L1―L1に沿った断面図である。なお、
図2では、正極11の構成を明らかにするために、
図2(A)では正極リード20を覆う保護テープ(符号30)を透過図として一点鎖線で示している。
【0023】
正極11は、正極集電体32と、正極集電体32上に形成された正極活物質層34とを備えている。正極集電体32には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。正極活物質層34は、正極活物質を含む。また、正極活物質層34は、正極活物質の他に、導電材及び結着材を含むことが好適である。
【0024】
正極活物質層34に含まれる正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられ、具体的にはコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物等を用いることができ、これらのリチウム遷移金属複合酸化物にAl、Ti、Zr、Nb、B、W、Mg、Mo等を添加してもよい。
【0025】
正極活物質層34に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素粉末等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
正極活物質層34に含まれる結着材としては、フッ素系高分子、ゴム系高分子等が挙げられる。例えば、フッ素系高分子としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはこれらの変性体等、ゴム系高分子としてエチレンープロピレンーイソプレン共重合体、エチレンープロピレンーブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
正極集電体32は、正極活物質層34が形成されていない露出部32aを有する。なお、
図2に示す露出部32aは、正極集電体32の一主面側及び他主面側の両方に形成されている。露出部32aは正極集電体32のいずれの箇所に形成されていてもよいが、一般的には、正極集電体32の長手方向中央部側に形成される。
【0028】
正極リード20は、正極集電体32の露出部32aに接続されている一端部20a、正極集電体32の周縁部32b外側に延出している延出部20bを備えている。また、
図2では不図示であるが、正極リード20は、延出部20bより先端側に他端部を有し、その他端部が、既述したように、封口体17のフィルタ23に接続されている。正極リード20の一端部20aと正極集電体32の露出部32aの接続方法は、正極リード20と正極集電体32との電気的な接続が担保されていれば特に制限されるものではなく、例えば、超音波溶接等が挙げられる。
【0029】
正極リード20の素材は、アルミニウム、チタン等の金属等、特に制限されるものではない。
【0030】
図2に示す保護テープ30は、正極リード20の一端部20aを覆っている。すなわち、保護テープ30は、正極集電体32の露出部32a上に位置する正極リード20を覆っている。但し、保護テープ30で覆う正極リード20の位置は、正極リード20の一端部20aに限定されるものではなく、例えば正極リード20の延出部20bでもよいし、封口体17との接続部である正極リード20の他端部でもよい。正極リード20と負極12との間で発生する内部短絡は、主に、正極リード20の一端部20aと負極12との間や正極リード20の延出部20bと負極12との間で起こり易いため、保護テープ30は、正極リード20の一端部20a及び延出部20bのうちの少なくともいずれか一方を覆うことが好ましく、特に正極リード20の一端部20aを覆うことが好ましい。なお、正極リード20の一端部20aを保護テープ30で覆う場合には、正極リード20の一端部20aの一部を保護テープ30で覆っていればよいが、内部短絡の発生を効果的に抑制する等の点で、一端部20a全体を覆っていることが好ましい。また、正極リード20の延出部20bを保護テープ30で覆う場合も同様に、延出部20bの一部を保護テープ30で覆っていればよいが、延出部20bの全体を覆っていることが好ましい。また、正極リード20の延出部20bの一部又は全部を保護テープ30で覆う場合には、保護テープ30を延出部20bに巻き付けて、延出部20bの外周全体を覆うことが好ましい。
【0031】
また、
図2に示すように、保護テープ30は、正極リード20の一端部20aを覆うと共に、正極集電体32の露出部32aを覆っていてもよい。露出部32aを保護テープ30で覆う場合には、露出部32aの一部を保護テープ30で覆っていればよいが、内部短絡の発生を効果的に抑制する点等で、露出部32a全体を覆っていることが好ましい。なお、
図2では保護テープ30と露出部32aとの間に空間(距離)があるように示されているが、保護テープ30は露出部32aに接着してされても良い。
図2に示すように、保護テープ30は、露出部32aからはみ出して、正極活物質層34上に配置されていてもよい。
【0032】
以下に、保護テープ30の構成について説明する。
【0033】
図3は、本実施形態で用いられる保護テープの部分断面図である。
図3に示すように、保護テープ30は、接着層30aと、基材層30bとを有する。保護テープ30の接着層30aは、正極リード20に接着する層である。すなわち、保護テープ30は、正極リード20側から、接着層30a、基材層30bの順に積層された積層構造を有する。
【0034】
基材層30bは、耐熱性、機械的強度等の点で、有機材料を主体とする層であることが望ましい。有機材料を主体とするとは、基材層30bを構成する材料の中で有機材料の割合が最も高いことを意味するが、有機材料の含有量は、保護テープ30の強度等の点で、例えば、基材層30bの総質量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。有機材料は、例えば、セルロース誘導体(例えば、セルロースエーテル、セルロースエステル等)、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリスチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。中でも、ポリイミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)が好ましく、特にポリイミドが好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、基材層30bは、第1樹脂層と第2樹脂層とを含む積層構造でもよく、例えば、ポリイミドを含む第1樹脂層と、ポリイミド以外の樹脂を含む第2樹脂層とを含む積層構造等が挙げられる。基材層30bにポリイミドを含む場合には、ポリイミドの含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0035】
ポリイミドは、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子の総称であるが、通常は芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドを意味する。芳香族ポリイミドは、芳香環と芳香環との間にイミド結合が介在する共役構造を有するため、剛直であり、強固な分子構造を有する。ポリイミドの種類は、特に限定されず、ポリピロメリットイミドのような全芳香族ポリイミドでもよく、ポリエーテルイミドのような半芳香族ポリイミドでもよく、ビズマレイミドと芳香族ジアミンとを反応させた熱硬化性ポリイミドでもよい。
【0036】
基材層30bの厚さは任意であるが、保護テープ30の強度等の点で、例えば、5μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0037】
なお、基材層30bは、無機材料等の充填材を含むことを制限するものではないが、保護テープ30の柔軟性等の点で、充填材はできるだけ含まない方がよい。
【0038】
接着層30aは、粘着材及び充填材を含む。粘着材は、正極リード20等の接着部に対して接着性を有する材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、粘着材は、樹脂材料以外に、必要に応じて、粘着付与材、架橋材、老化防止材、着色材、酸化防止材、連鎖移動材、可塑材、軟化材、界面活性材、帯電防止材等の添加材や、溶剤を含んでいてもよい。
【0039】
充填材は、リン酸基含有化合物、ホウ酸基含有化合物及びケイ酸基含有化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0040】
リン酸基含有化合物は、リン酸基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、リン酸-金属塩、リン酸エステル、縮合リン酸塩等が好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
リン酸-金属塩における金属種としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、Al等が好ましく、特に、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムが好ましく、リチウム、カルシウムがより好ましい。リン酸-金属塩の具体例としては、例えば、リン酸リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム等のリン酸-リチウム塩、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸-ナトリウム塩、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム等のリン酸-マグネシウム塩、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム等のリン酸-カリウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム等のリン酸-カルシウム塩等やリン酸アルミニウムが挙げられる。
【0042】
リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(2,6-ジメチルフェニルホスフェート)、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェート並びにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステル等が挙げられる。
【0043】
縮合リン酸塩としては、例えば、ピロリン酸塩やトリポリリン酸塩などのポリリン酸塩、トリメタリン酸塩やテトラメタリン酸塩などのメタリン酸塩、あるいはウルトラリン酸塩等が挙げられる。具体的には、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸グアニジン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0044】
ホウ酸基含有化合物は、ホウ酸基を含有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ホウ酸-金属塩、ホウ酸エステル、縮合ホウ酸塩等が好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
ホウ酸-金属塩における金属種としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、Al等が好ましく、具体的には、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムが好ましく、リチウム、カルシウムがより好ましい。ホウ酸-金属塩の具体例としては、例えば、メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等のホウ酸-リチウム塩、メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等のホウ酸-ナトリウム塩、オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等のホウ酸-マグネシウム塩、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等のホウ酸-カリウム塩、二ホウ酸カルシウム、四ホウ酸三カルシウム、四ホウ酸五カルシウム、六ホウ酸カルシウム等のホウ酸-カルシウム塩等、ホウ酸アルミニウムが挙げられる。
【0046】
ホウ酸エステルとしては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリブチルボレート等の脂肪族ホウ酸エステル、トリクレジルボレート、トリフェニルボレート等の芳香族ホウ酸エステル等が挙げられる。
【0047】
縮合ホウ酸塩としては、例えば、無水ホウ酸メラミン、四ホウ酸メラミン等のホウ酸メラミンが挙げられる。
【0048】
ケイ酸基含有化合物は、ケイ酸-金属塩、ケイ酸エステル及び縮合ケイ酸塩が好ましく、ケイ酸-リチウム塩、ケイ酸-ナトリウム塩、ケイ酸-カリウム塩、ケイ酸-カルシウム塩、ケイ酸-マグネシウム塩、ケイ酸-バリウム塩、ケイ酸-マンガン塩があげられる。例えば、メタケイ酸リチウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、メタケイ酸マグネシウム、メタケイ酸カルシウム、メタケイ酸バリウム、メタケイ酸マンガン等が挙げられる。
【0049】
リン酸基含有化合物、ホウ酸基含有化合物及びケイ酸基含有化合物は、難燃性を有するものであり、接着層30aにこれらの化合物を含ませることで、保護テープ30の耐熱性を向上させることが可能となる。例えば、異物が保護テープ30を貫通して、正極リード20と負極12間で内部短絡が生じ、電池が発熱しても、保護テープ30の溶融又は分解が抑えられる。その結果、短絡部分の拡大或いは短絡の継続が抑えられ、電池温度の上昇が抑制される。また、リン酸基含有化合物、ホウ酸基含有化合物及びケイ酸基含有化合物は、従来の充填材(アルミナ等の金属酸化物)と比べて、少ない含有率で、保護テープ30の耐熱性を同等以上とすることができる。すなわち、従来の充填材と比較して、少ない含有率で、異物が保護テープ30を貫通して短絡が発生した際の電池温度の上昇を抑制することができる。さらに、本実施形態では、充填材(リン酸基含有化合物、ホウ酸基含有化合物、ケイ酸基含有化合物)の含有率を従来の充填材より低く抑えることができるため、保護テープ30の粘着力(実質的には接着層30aの粘着力)を向上させることも可能となる。その結果、正極リード20から保護テープ30が剥がれる等の保護テープ30の長期信頼性の低下を抑制することができ、ひいては電池の長期安全性を確保することができる。
【0050】
接着層30a中の充填材の含有量は、保護テープ30の耐熱性及び粘着力の点等から、例えば、1質量%~50質量%の範囲であることが好ましく、1質量%~30質量%の範囲であることがより好ましい。
【0051】
接着層30aの厚さは任意であるが、保護テープ30の接着性、及び保護テープ30の溶融又は分解を効果的に抑制する等の点で、例えば、1μm~25μmの範囲であることが好ましく、5μm~20μmの範囲であることがより好ましい。
【0052】
接着層30aは、粘着材及び充填材の他に、発泡促進材を含むことが好ましい。発泡促進材とは、熱による分解により、窒素ガス、アンモニア等のガス成分を放出する機能を有するものであり、例えば、分解性のあるアンモニウム塩、ジシアンジアミド、メラミン等の含窒素化合物等が挙げられる。発泡促進材を含む場合、熱による分解時に発泡性の断熱層を形成することで、周辺への熱分解の拡大と発熱の継続を抑制することができる。その結果、発泡促進材を含まない場合と比べて、より少ない充填材の使用で同等の効果を得ることができる。
【0053】
保護テープ30の厚みは特に制限されるものではないが、例えば、10~55μmの範囲が好ましい。保護テープ30の厚みが10μm未満であると、電池内に混入した異物により破断し易くなる。また、保護テープ30の厚みが55μm超であると、所定の大きさのケース本体16に電極体14を納めるために他の構成部材の容積を減らす必要がある場合がある。
【0054】
電池の内部短絡による電池温度の上昇は、主に、正極リード20と負極12とが接触した際に起こり易いため、上記で例示したように、保護テープ30で正極リード20(及び正極集電体32の露出部32a)を覆うことが好ましい。但し、保護テープ30で覆う箇所は、正極リード20(及び正極集電体32の露出部32a)に限定されるものではなく、電池の内部短絡によって電池温度が上昇する虞のある個所であれば特に限定されるものではない。例えば、負極12は、通常、正極11と同様に、負極集電体の露出部が形成され、当該露出部上に負極リード21の一端が接続されるが、この場合、保護テープ30で負極リード21や負極集電体の露出部を覆ってもよい。
【0055】
以下に、負極12、非水電解質、セパレータ13について説明する。
【0056】
負極12は、負極集電体と、負極集電体上に形成される負極活物質層とを備える。負極集電体には、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質層は、負極活物質の他に、増粘材、結着材を含むことが好適である。
【0057】
負極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素材料を用いることができ、黒鉛の他に、難黒鉛性炭素、易黒鉛性炭素、繊維状炭素、コークス及びカーボンブラック等を用いることができる。さらに、非炭素系材料として、シリコン、スズ及びこれらを主とする合金や酸化物を用いることができる。
【0058】
結着材としては、正極の場合と同様にPTFE等を用いることもできるが、スチレンーブタジエン共重合体(SBR)又はこの変性体等を用いてもよい。増粘材としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。
【0059】
図での説明は省略するが、負極集電体は、既述した正極集電体32と同様に、負極活物質層が形成されていない露出部を有する。なお、負極集電体の露出部は、負極集電体のいずれの箇所に形成されていてもよいが、一般的には、負極集電体の長手方向端部側に形成される。また、負極リード21は、既述した正極リード20と同様に、負極集電体の露出部に接続されている一端部、一端部から負極集電体の周縁部外側に延出している延出部を備えている。また、負極リード21は、延出部より先端側に他端部を有し、その他端部が、ケース本体16の底部内面に接続されている。負極リード21の素材はニッケル、チタン等の金属等、特に制限されるものではない。
【0060】
負極リード21の一端部、延出部、他端部のうちの少なくともいずれか1箇所は、保護テープ30により覆われていてもよい。また、負極集電体の露出部も、保護テープ30により覆われていてもよい。
【0061】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質でもあってもよい。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0062】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0063】
上記エーテル類の例としては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0064】
上記ニトリル類の例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、n-ヘプタニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジボニトリル、ピメロニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル等が挙げられる。
【0065】
上記ハロゲン置換体の例としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0066】
電解質塩の例としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(P(C2O4)F4)、LiPF6-x(CnF2n+1)x(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li2B4O7、Li(B(C2O4)F2)等のホウ酸塩類、LiN(SO2CF3)2、LiN(ClF2l+1SO2)(CmF2m+1SO2){l,mは0以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。電解質塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。電解質塩の濃度は、例えば非水溶媒1L当り0.8~1.8モルである。
【0067】
セパレータ13には、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シート等が用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータ13は、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータの表面にアラミド系樹脂、セラミック等の材料が塗布されたものを用いてもよい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質である100質量部のLiNi0.82Co0.15Al0.03O2と、1.0質量部のアセチレンブラック(導電材)と、0.9質量部のポリフッ化ビニリデン(結着材)と、適量のNMPを混合して、正極合材スラリーを調製した。得られた正極合材スラリーを、正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後、圧延して、帯状の正極を作製した。但し、正極の長手方向における中央付近の両面に、スリット状の露出部を設けた。正極集電体の露出部上に、正極リードの一端部を配置し、一端部を露出部に溶接した。
【0070】
正極リードの一端部及び正極集電体の露出部の全面が覆われるように、保護テープを張り付けた。使用した保護テープは、厚さ25μmのポリイミドからなる基材層と、厚さ7μmの接着層とを有する保護テープである。ポリイミドは、ピロメリット酸無水物とジアミノジフェニルエーテルとの反応により合成されたものである。接着層は、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材75質量部と、充填材であるLiPO4粒子(シグマ アルドリッチ ジャパン製)25質量部との混合物を用いた。
【0071】
[負極の作製]
負極活物質である平均粒子径が約20μmの鱗片状の人造黒鉛100質量部と、1質量部のスチレンブタジエンゴム(結着材)と、1質量部のカルボキシメチルセルロース(増粘材)と、水とを混合して、負極合材スラリーを調製した。得られた負極合材スラリーを、負極集電体となる厚さ8μmの銅箔の両面に均一に塗布し、乾燥後、圧延して、帯状の負極を作製した。但し、負極の巻き終わり側の端部の両面に、露出部を設けた。負極集電体の露出部上に、負極リードの一端部を配置し、一端部を露出部に溶接した。
【0072】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとの混合溶媒(体積比1:1:8)に、LiPF6を1.4mol/Lの濃度となるように溶解させて非水電解質を調製した。
【0073】
[電池の作製]
正極と負極とを、セパレータを介して積層し、巻回して電極体を形成した。この電極体の上下に絶縁板を配置した上で、内面にニッケルメッキを施した鉄製のケース本体に収納した。電極体から突出している負極リードを電池ケースの底面に溶接し、電極体から突出している正極リードを、周縁部にガスケットを具備する封口体の内面に溶接した。ケース本体内に非水電解質を注液した後、封口体でケース本体の開口を塞ぎ、ケース本体の開口端部を、ガスケットを介して封口体の周縁部にかしめ、円筒型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0074】
<実施例2>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材70質量部と、充填材であるLiPO4粒子30質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0075】
<実施例3>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材50質量部と、充填材であるLiPO4粒子50質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0076】
<実施例4>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材75質量部と、充填材であるリン酸カルシウム粒子(和光純薬工業株式会社製)25質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0077】
<実施例5>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材70質量部と、充填材であるリン酸カルシウム粒子30質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0078】
<実施例6>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材75質量部と、充填材であるポリリン酸アンモニウム粒子(太平化学産業株式会社製)25質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0079】
<実施例7>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材70質量部と、充填材であるポリリン酸アンモニウム粒子30質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0080】
<実施例8>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材75質量部と、充填材であるポリリン酸メラミン粒子(株式会社 三和ケミカル製)25質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0081】
<実施例9>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材70質量部と、充填材であるポリリン酸メラミン粒子30質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0082】
<実施例10>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材70質量部と、充填材であるLi2B4O7粒子(和光純薬工業株式会社製)30質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0083】
<実施例11>
保護テープの接着層として、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材70質量部と、充填材であるLi2SiO3粒子(和光純薬工業株式会社製)30質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0084】
<比較例1>
接着層は、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材75質量部と、充填材であるAl2O3粒子25質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0085】
<比較例2>
接着層は、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材50質量部と、充填材であるAl2O3粒子50質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0086】
<比較例3>
接着層は、アクリル樹脂を主成分とするアクリル系粘着材30質量部と、充填材であるAl2O3粒子70質量部との混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にリチウムイオン二次電池を作製した。
【0087】
[強制内部短絡試験]
JIS C 8714に準拠して、各実施例及び比較例の電池の強制内部短絡試験を行った。ただし、標準サイズのニッケル小片より大きなサイズのニッケル小片(高さ0.5mm、幅0.2mm、一辺3mmのL字形(角度90°))を用いた過酷試験を行った。ニッケル小片は、当該小片が保護テープを貫通するように、保護テープとセパレータとの間に配置した。そして、電池側面の上昇温度を熱電対で測定した。その結果を表1に示す。
【0088】
[保護テープ粘着力試験]
JIS Z 0237:2009の10.4.1(試験板に対する180°引きはがし粘着力)に準拠して、各実施例及び比較例で用いた保護テープの粘着力(N/10mm)を評価した。その結果を表1に示す。
【0089】
【0090】
保護テープに添加された充填材としてリン酸基含有化合物、ホウ酸基含有化合物又はケイ酸基含有化合物を用いた実施例と充填材としてAl2O3粒子を用いた比較例とを比較する。実施例1,4,6及び8は、比較例1と比較して、充填材の含有率が同じであるにも関わらず、強制内部短絡試験による電池温度の上昇は抑制された。また、実施例1~2、5~11は、比較例2より充填材の含有率が低いにも関わらず、強制内部短絡試験による電池温度の上昇は抑制された。また、実施例2,3,5,7,9,10,11は、比較例3より充填材の含有率が低いにも関わらず、比較例3と同様に強制内部短絡試験による電池温度の上昇は見られなかった。また、リン酸基含有化合物、ホウ酸基含有化合物又はケイ酸基含有化合物を充填材として用いることで、充填材の含有率を抑えることができるため、保護テープの粘着力の向上を図ることも可能となる。
【符号の説明】
【0091】
10 リチウムイオン二次電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 電極体
15 電池ケース
16 ケース本体
17 封口体
18,19 絶縁板
20 正極リード
20a 一端部
20b 延出部
21 負極リード
22 張り出し部
23 フィルタ
24 下弁体
25 絶縁体
26 上弁体
27 キャップ
28 ガスケット
30 保護テープ
30a 接着層
30b 基材層
32 正極集電体
32a 露出部
32b 周縁部
34 正極活物質層