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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】スライサ
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20240216BHJP
   B26D 1/30 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B26D3/28 620J
B26D1/30 501G
B26D1/30 501M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022176836
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】593060768
【氏名又は名称】有限会社和田技研
(74)【代理人】
【識別番号】100086863
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 英世
(72)【発明者】
【氏名】曽我 好輝
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6988135(JP,B2)
【文献】特許第6781913(JP,B2)
【文献】特許第5780901(JP,B2)
【文献】国際公開第2012/105257(WO,A1)
【文献】特許第5569798(JP,B2)
【文献】特開2004-291133(JP,A)
【文献】特開2003-220593(JP,A)
【文献】特開2001-353692(JP,A)
【文献】特開平7-136979(JP,A)
【文献】実公平7-24231(JP,Y2)
【文献】実公昭59-20957(JP,Y2)
【文献】実開昭54-43683(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/175569(US,A1)
【文献】米国特許第4383365(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
B26D 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のスライス刃と、
該スライス刃と平行で且つその上方に設けられ、該スライス刃との間で被スライス材を囲って被スライス材保持空間を作り、そこに被スライス材を保持できる保持具と、
該被スライス材保持空間に被スライス材が保持された時に、被スライス材の上面側から該被スライス材に押し付けられるプッシャと、
ニュートラル時に該プッシャを昇降上端に位置させ、被スライス材保持空間に被スライス材が保持された時に、該プッシャをガイドすることで、被スライス材保持空間に向けて昇降可能にすると共に、その下降時には、上記プッシャ下面がスライス刃まで接触させることになるガイド装置とを有しており、
プッシャがニュートラル昇降上端にある時に、上記被スライス材保持空間に被スライス材を保持させ、ガイド装置にガイドされてプッシャを下降させた時に、該プッシャ下面をスライス刃まで移動させることによって被スライス材を切り落とすことを特徴とするスライサ。
【請求項2】
上記プッシャにつき、その下面に、上記スライス刃が入り込むスリットが設けられており、且つこのスリットのあるプッシャ下面側の形状が、被スライス材の形状に応じて形成されることを特徴とする請求項1記載のスライサ。
【請求項3】
上記スライス刃と保持具の構成を一体にした構成とすることを特徴とする請求項1又は2記載のスライサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物など比較的柔らかいもの、特にゆで卵や乳製品、野菜、果物などのスライス用に使用されるスライサに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、図12で示されるように、板状食材保持部の凹部102に被スライス材を納め、図13に示すように、ワイヤで形成した切断具104を被スライス材に押し当て、この被スライス材をスライスするスライサ100が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-300894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の従来技術の構成は、ゆで卵などの被スライス材をスライスする場合、1)切断具104を持ち上げ、2)被スライス材を凹部102に置き、3)切断具104を回転させながら手前に引き下げ、4)被スライス材を凹部102から取ることで行われる。この様に動作フローが4段階からなり、それだけ手数が必要となる。
【0005】
量産とは言わないまでも、業務でこのようなスライサ100を使用した場合、上記のような作業を繰り返し行わねばならぬので、作業者の負担が増大して、作業効率も落ちるし、作業効率が落ちれば、注意力も散漫になり、作業者の怪我などの心配も出てくる。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み創案されたものであって、切断を繰り返し行う作業にて作業者の行うべき作業量を減らして作業者の負担を減らし、それにより作業効率をアップすることができるスライサを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスライサは、
少なくとも1のスライス刃と、
該スライス刃と平行で且つその上方に設けられ、該スライス刃との間で被スライス材を囲って被スライス材保持空間を作り、そこに被スライス材を保持できる保持具と、
該被スライス材保持空間に被スライス材が保持された時に、被スライス材の上面側から該被スライス材に押し付けられるプッシャと、
ニュートラル時に該プッシャを昇降上端に位置させ、被スライス材保持空間に被スライス材が保持された時に、該プッシャをガイドすることで、被スライス材保持空間に向けて昇降可能にすると共に、その下降時には、上記プッシャ下面がスライス刃まで接触させることになるガイド装置とを有しており、
プッシャがニュートラル昇降上端にある時に、上記被スライス材保持空間に被スライス材を保持させ、ガイド装置にガイドされてプッシャを下降させた時に、該プッシャ下面をスライス刃まで移動させることによって被スライス材を切り落とすことを基本的特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、例えばゆで卵などの被スライス材が保持具とスライス刃との間の被スライス材保持空間で保持された時に、プッシャをニュートラルな昇降上端位置から上記ガイド装置により被スライス材保持空間に向けて作業者が下降せしめると、その下降途中で被スライス材のスライスが始まり、該プッシャ下面がスライス刃まで移動せしめられるころには(被スライス材Sの素材によってはプッシャ下面がスライス刃まで届かない直前の位置でも)、それによって被スライス材が切り落とされることになる。その後はプッシャが下方に向かう作業者の力から解放され、上記ガイド装置により昇降上端のニュートラル位置に自動的にプッシャは戻されることになる。
【0009】
この様に、本構成は、上記従来技術の場合に比べて、1)被スライス材保持空間への被スライス材の投入と、2)ガイド装置に沿ったプッシャの押し下げと言った、繰り返し行う動作が、作業者自身のペースで行えるようになって、日常業務で行われる作業者の負担を軽減でき、よって、作業効率が向上することになる。作業効率が上がれば、注意力も散漫にならず、怪我などの心配も少なくなる。
【0010】
他方、上記プッシャにつき、その下面に、上記スライス刃が入り込むスリットが設けられており、且つこのスリットのあるプッシャ下面側の形状が、被スライス材の形状に応じて形成されていると望ましい。
【0011】
例えば、被スライス材保持空間に被スライス材があるとした場合に、該被スライス材上面の形状(被スライス材上部の形状全体が凹及び/又は凸の形状になっている場合を含む)に応じてプッシャ下面側の形状が形成されていることで、プッシャが上記被スライス材保持空間に向けて下降せしめられ、上記保持具とスライス刃とプッシャ下面の間で被スライス材が保持(拘束)され、被スライス材の上面の形状(凹及び/又は凸等の形状を含む)を上記プッシャ下面側の形状で吸収しながら上記スリットにスライス刃が入り込んで、該被スライス材がスライス刃により切り落とされるようになる。そのため、被スライス材がゆで卵のような安定的に一定の形状をしている場合に、その切り落としが簡単にできることになる。
【0012】
ここで、「被スライス材保持空間に被スライス材があるとした場合に、該被スライス材上面の形状(被スライス材上部の形状全体が凹及び/又は凸の形状になっている場合を含む)に応じてプッシャ下面側の形状が形成されている」とは、例えば被スライス材がゆで卵のような例では、ゆで卵が被スライス材保持空間に寝かせて安定的に載地された場合に、ゆで卵の上部は、真横から見た時に、緩い凸円弧を描くことが普通であるが、そのような円弧に合わせてプッシャ下面側の形状を凹状の緩い円弧にすることである。もし、ゆで卵が被スライス材保持空間に立てて安定的に載地された場合はゆで卵の上部は、真横から見た時に、尖った凸状円弧を描くことが普通であるが、そのような円弧に合わせてプッシャ下面側の形状を凹状の尖った円弧にすることになる。他方、被スライス材が例えば長方形のチーズのような場合は、該チーズ上部は平面であるので、そのような凹凸のない平面に合わせてプッシャ下面側の形状を平面にすることになる。
【0013】
以上の構成は、被スライス材保持空間に被スライス材がある時に、下降してくるプッシャ下面側の形状が被スライス材を拘束しにくい場合につき、該被スライス材の形状に合わせて該プッシャ下面側の形状を形成しておくことで、その拘束を容易且つ完全にする構成である。そのような構成にしておけば、上記被スライス材保持空間内にある被スライス材に該プッシャが押し下げられた時に、該被スライス材保持空間内における被スライス材が拘束され(被スライス材の動きが抑えられ)、それによって一気に該被スライス材が切り落とされるようになり、本スライサの切れ味がより向上することになる。
【0014】
上記スライス刃と保持具の構成を一体にした構成とすると良い。スライス刃と保持具が一体構成であれば、(プッシャの構成と共に、或いはそれとは別に、)これらを適宜取り替えることで、様々な種類及び/又は形状の被スライス材の切り落としに対応できるようになる。スライス刃が中央で交差し、3枚6空間で仕切られる保持具一体構成の場合(プッシャ側のスリットが中央に交差点のある3本の構成)など、後述する実施例1で説明する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスライサによれば、ガイド装置によりプッシャが昇降上端のニュートラル位置にあり、被スライス材保持空間に向けての間口を開けているが、作業者により被スライス材が該空間に投入され保持具とスライス刃との間で保持された時に、作業者がガイド装置を使用してプッシャを上記被スライス材保持空間に向けて下降せしめると、下降途中で被スライス材のスライスが始まり、該プッシャ下面がスライス刃まで移動せしめられるころには、それによって被スライス材が切り落とされることになる。その後はプッシャが下方に向かう作業者の力から解放され、上記ガイド装置により昇降上端のニュートラル位置に自動的にプッシャは戻ることになる。
【0016】
そのため、本構成は、上記従来技術の場合に比べて、1)被スライス材保持空間への被スライス材の投入と、2)ガイド装置に沿ったプッシャの押し下げと言った、繰り返し行う動作が、作業者自身のペースで行えるようになって、日常業務で行われる作業者の負担を軽減でき、よって、作業効率が向上することになると言った優れた効果を有することになる。作業効率が上がれば、注意力も散漫にならず、怪我などの心配もなくなる。
【0017】
上記プッシャについて、スリットと、所定の下面側形状を有する構成にすれば、被スライス材保持空間内における被スライス材の動きの拘束がより強化され(被スライス材が被スライス材保持空間内でぐらつくことがなくなり)、それによってプッシャを押し込められさえすれば、該被スライス材の切り落としが簡単にでき、本スライサの切れ味がより向上することになる。
【0018】
さらにスライス刃と保持具が一体構成であれば、プッシャの構成と共に、これらを取り替えることで、様々な種類及び/又は形状の被スライス材の切り落としに対応できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のスライサを実施する実施例1の斜視図である。
図2】スライス刃1a~1cの張設状体を示す説明図である。
図3】被スライス材Sが被スライス材保持空間Hに載置された状体を示す説明図である。
図4】プッシャ3が下降せしめられて、被スライス材Sがスライス刃1a~1cによって、完全に切り落とされている状体になることを示す説明図である。
図5】ガイド装置4の詳細を示す説明図である。
図6】プッシャ3の構成を示す斜視図である。
図7】一本の軸と2個のベアリングの構成とした場合に、プッシャ3をガイド孔41a及び41bに沿って、下降せしめる際には、L字型ブラケット44が本体の重みとプッシャ3の重みで、傾いてしまうことを示す説明図である。
図8】上下2本の軸42a及び42bと4個のベアリング43a~43dの構成とすることで、スライサ本体Bの張り出し部Tに平行にL字型ブラケット44の張り出し他端44aを保持できるようになる本実施例の構成を示す説明図である。
図9】ニュートラルの昇降上部で、ガイド孔41a及び41bがプッシャ3の設けられるのとは反対斜め上方向に延出しており、上左右の2個のベアリング43a及び43cがその延出方向に進むことで、プッシャ3をガイド孔41a及び41b上部で、被スライス材Sの搬入間口が広がるようにする構成を示す説明図である。
図10】2本のガイド孔41a及び41bが上部で曲がっていない構成の場合であって、ニュートラル状態の時のように、同じストロークで被スライス材S投入部分のスペースを大きく確保できる構成を示す説明図である。
図11】実施例2の構成を示す斜視図である。
図12】従来技術のスライサの構成を示す斜視図である。
図13】上記スライサにおける被スライス材をスライスする状体を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明のスライサを実施する実施例1の斜視図である。同図において、スライサ本体Bは、後述するガイド装置4の一部を構成することになる、その上方に延出する昇降ガイド40a及び40bと、そのスライサ本体Bの途中から平行に張り出される、円形の穴(本実施例では円形だが他の形状でもかまわない)の開いた張り出し部Tとを有している。
【0022】
この様な構成において、本実施例は、3つのスライス刃1a~1cと、該スライス刃1a~1cと一体になって設けられ、その中央がスライス刃1a~1cの張設した穴に連通する穴を有する保持具2とを、張り出し部Tの円形の穴の直上に有すると共に、一体となった保持具2とスライス刃1a~1cとの間に形成される被スライス材保持空間Hに被スライス材Sが保持された時に、被スライス材Sの上面側から該被スライス材Sに押し付けられるプッシャ3と、ニュートラル時に該プッシャ3を昇降上端に位置させ、被スライス材保持空間Hに被スライス材Sが保持された時に、該プッシャ3をガイドすることで、被スライス材保持空間Hに向けて昇降可能にすると共に、その下降時には、上記プッシャ3下面がスライス刃1a~1cまで接触させることになるガイド装置4とを有している。
【0023】
そして本スライサは、ガイド装置4によりプッシャ3がニュートラル昇降上端にある時に、上記被スライス材保持空間Hに被スライス材Sを保持させ、続いて該ガイド装置4にガイドされてプッシャ3を下降させた時に、該プッシャ3下面をスライス刃1a~1cまで移動させることによって(被スライス材Sの素材によってはプッシャ下面がスライス刃まで届かない直前の位置に移動させることでも良い)被スライス材Sを切り落とすことになる。
【0024】
上記スライス刃1a~1cは、本実施例ではワイヤで構成されており、図2に示すように、これらが被スライス材保持空間Hの中央で交差するように、3方向から張設されている。そのため、プッシャ3の接触・下降により被スライス材Sが上方から押しつけられて、スライス刃1a~1cで切り落とされた場合、最大6つの切片になる。
【0025】
上記保持具2は、スライス刃1a~1c張設上部にこれらと一体になって取り付けられており、該スライス刃1a~1cとの間で被スライス材Sを囲ってその被スライス材Sを保持できる構成である。本構成は、図2に示すように、スライス刃1a~1cと一体になって厚みのある直方体(実施例では直方体であるが、形状は例えば円柱体などや他の形状でもかまわない)の構成であり、ほぼ中央に被スライス材保持空間Hを構成する穴が設けられている。この被スライス材保持空間Hは、保持具2とスライス刃1a~1cとの間で被スライス材Sが保持された時に、上記スライス刃1a~1cとその上方にある保持具2の穴との間に、形成されるものである。
【0026】
このような一体構成では、上述のように、本スライサ本体Bから平行に張り出される、円形の穴(上述のように円形の穴に限定されない)の開いた張り出し部Tにおいて、スライス刃1a~1cが、上記円形の穴(被スライス材保持空間Hを構成する穴、実施例では円形の穴であるが本発明ではこの形にこだわらない)の中央で交差するように、3方向から張設されている。さらに、上記円形の穴とほぼ同じ大きさの穴(上記のように円形の穴にこだわらない)が形成された保持具2は、2つの円形の穴(張り出し部Tの穴及び保持具2の穴)が連通して被スライス材保持空間Hを形成するように、張り出し部Tにネジ止めされている。
【0027】
上記プッシャ3は、スライス刃1a~1cに向けて被スライス材Sを上方から押し込む構成である。該プッシャ3は、保持具2とスライス刃1a~1cとの間(被スライス材保持空間H)で被スライス材Sが保持された時に、後述するガイド装置4の構成により、上記保持具2とスライス刃1a~1cとの間に形成される被スライス材保持空間Hに向けて昇降可能な構成となっている。そのような構成によって、プッシャ3が上記被スライス材保持空間Hに向けて下降せしめられた時に、下降の途中からスライスが始まり、その下面がスライス刃1a~1cに接触するころには(被スライス材Sの素材によってはプッシャ下面がスライス刃まで届かない直前の位置でも)、スライス刃1a~1cによる被スライス材Sの切り落としが可能となる。
【0028】
本実施例では、被スライス材Sとして、ゆで卵を想定しており(スライス刃1a~1cが切断できるものであれば他のものでも良い)、上記被スライス材保持空間Hにこれを直立させて、プッシャ3を下降せしめることで、6片の被スライス材Sに切り落とすことができるようになっている。
【0029】
そのため、プッシャ3の下面構成は、中央にすり鉢状の尖った凹状円弧に形成されており、該凹みを中心に放射状にスリット30が形成されている。また図3の被スライス材Sが被スライス材保持空間Hに載置された状体から、図4に示す被スライス材Sの切り落とし状体になるように、プッシャ3が下降せしめられて、下面がスライス刃1a~1cに接触する際に、スライス刃1a~1cが上記スリット30に嵌入し、その時被スライス材Sはスライス刃1a~1cによって、完全に切り落とされている状体になる。
【0030】
以上の様に、構成されているため、一体となったスライス刃1a~1cと保持具2、(及び上記プッシャ3の2つ)の構成は、被スライス材Sの形態や固さなどに応じて、種々のアタッチメントとして用意しておくことで、様々なもののスライスができるようになる。
【0031】
上記ガイド装置4は、本実施例において、ニュートラル時に該プッシャ3を昇降上端に位置させ、被スライス材保持空間Hに被スライス材Sが保持された時に、該プッシャ3をガイドすることで、被スライス材保持空間Hに向けて昇降可能にすると共に、その下降時には、上記プッシャ3下面がスライス刃1a~1cまで接触させる構成である。
【0032】
本構成は、図1に示すように、スライサ本体Bの上方に延出する上記昇降ガイド40a及び40bと、該昇降ガイド40a及び40bに沿って設けられた2本のガイド孔41a及び41bと、図5に示すように該ガイド孔41a及び41bに掛架された上下2本の軸42a及び42bと、これらの軸42a及び42bを中心にし、上記ガイド孔41a及び41bにガイドされる上下左右の計4個のベアリング43a~43dと、上下2本の軸42a及び42bを支持して4個のベアリング43a~43dと係合しそこから突き出たL字型ブラケット44により、プッシャ3を昇降可能な構成にしている。
【0033】
本実施例では、図1に示すように、L字型ブラケット44の張り出し他端44aに、図6に示すようなプッシャ3が取り付けられており、その取り付け側の構成は、その時々に応じて形などが変えられる様に、該プッシャ3をネジ止めする構成である。尚、図1に示すように、このプッシャ3の付いたL字型ブラケット44は、スライサ本体Bとの間に張下されたスプリング45などの弾性体により、作業者の力が加わらないニュートラルの状体の時に、該プッシャ3を昇降上端に位置させる様になっている。
【0034】
本実施例で上記ガイド装置4における、上下2本の軸42a及び42bとそれに支持される4個のベアリング43a~43dの構成としているのは、次のような理由による。もし仮に一本の軸と2個のベアリングの構成とした場合、プッシャ3をガイド孔41a及び41bに沿って、下降せしめる時には、図7に示すように、L字型ブラケット44が本体の重みとプッシャ3の重みで、傾いて(旋回して)しまい、プッシャ3の本来の役割を果たさないためである。これに対し、本実施例のように、上下2本の軸42a及び42bと4個のベアリング43a~43dの構成とすることで、図8に示すように、スライサ本体Bの張り出し部T(ひいては被スライス材保持空間H)に平行にL字型ブラケット44の張り出し他端44aを保持できるようになる。
【0035】
上記2本のガイド孔41a及び41bは、本実施例では、上部で、本スライサ本体Bの張り出し部Tと反対方向に曲がっている。これは、上述のように、L字型ブラケット44を上下2本の軸42a及び42bと、これらの軸42a及び42bを中心にして設けられた上下左右の計4個のベアリング43a~43dとで、昇降ガイド40a及び40bに設けられたガイド孔41a及び41bにガイドされ上下に昇降するが、ニュートラルの昇降上部では、ガイド孔41a及び41bがプッシャ3の設けられるのとは反対斜め上方向に延出しており、上下左右の計4個のベアリング43a~43dのうち上左右の2個43a及び43cがその延出方向にスプリング45の戻す力により進むことで、プッシャ3をガイド孔41a及び41b上部で、図9に示すような位置に導き、被スライス材Sの搬入間口が広がるようにしている。もし仮に2本のガイド孔41a及び41bが上部で曲がっていない構成であれば、図10に示すニュートラル状態の時のように、同じストロークで被スライス材S投入部分のスペースを大きく確保できずその投入がしにくい構成となってしまうことになる。
【0036】
以上の構成を有する本実施例構成では、ニュートラルの状態の時には、プッシャ3の付いたL字型ブラケット44が、図9に示すように、その間口を広げて、被スライス材Sの投入を待つ状態になる。
【0037】
また、本実施例では、上下2本の軸42a及び42bとそれに支持される4個のベアリング43a~43dの構成としため、図8に示すように、スライサ本体Bの張り出し部T(ひいては被スライス材保持空間H)に平行にL字型ブラケット44の張り出し他端44aを保持可能である。
【0038】
さらに、本構成では、ニュートラルの昇降上部において、プッシャ3が設けられるのとは反対斜め上方向にガイド孔41a及び41bが延出しており、上記スプリング45の反発力により、上下左右の計4個のベアリング43a~43dのうち上左右の2個43a及び43cがその延出方向に進むことで、プッシャ3をガイド孔41a及び41b上部で、図9に示すように、被スライス材Sの搬入間口が広がるようにしている。そのため、被スライス材Sの投入間口が格段に広がり、操作性が一段と向上することになる。
【0039】
本実施例のスライサ構成によれば、ガイド装置4によりプッシャ3が昇降上端のニュートラル位置にあり、被スライス材保持空間Hに向けての間口を開けているが、被スライス材Sが該空間Hに投入され保持具2とスライス刃1a~1cとの間で保持された時に、作業者がガイド装置4を使用してプッシャ3を上記被スライス材保持空間Hに向けて下降せしめると、下降途中で被スライス材Sのスライスが始まり、該プッシャ3下面がスライス刃1a~1c(近く)まで移動せしめられるころには、それによって被スライス材Sが切り落とされることになる。その後はプッシャ3が下方に向かう作業者の力から解放され、上記ガイド装置4のスプリング45により昇降上端のニュートラル位置に自動的にプッシャ3は戻ることになる。
【0040】
そのため、本実施例構成では、上記従来技術の場合に比べて、1)被スライス材保持空間Hへの被スライス材Sの投入と、2)ガイド装置4に沿ったプッシャ3の押し下げと言った、繰り返し行う動作が、作業者自身のペースで行えるようになって、日常業務で行われる作業者の負担を軽減でき、よって、作業効率が向上するようになる。作業効率が上がれば、注意力も散漫にならず、怪我などの心配もなくなる。
【0041】
また本実施例構成では、上記プッシャ3について、スリット30を設けることと、所定の下面側形状を有する構成にすることにより、被スライス材保持空間H内における被スライス材Sの動きの拘束がより強化され、それによってプッシャ3を押し込められさえすれば、該被スライス材Sの切り落としが簡単にでき、本スライサの切れ味がより向上することになる。
【0042】
さらにスライス刃1a~1cと保持具2が一体構成であれば、プッシャ3の構成と共に、これらを取り替えることで、様々な種類及び/又は形状の被スライス材Sの切り落としに対応できるようになる。
【実施例2】
【0043】
図11は、2つ目の実施例2の構成を示している。同図に示す構成では、スライス刃1と、該スライス刃1と平行で且つその上方に設けられ、その中央がスライス刃1の張設されたスライサ本体Bの途中から平行に張り出される張り出し部Tに開いた円形の穴(本実施例では円形だが他の形状でもかまわない)に連通する穴を有しており、該スライス刃1との間で被スライス材Sを囲って被スライス材保持空間Hを作り、そこに被スライス材Sを保持できる一対の保持具2a及び2bと、該被スライス材保持空間Hに被スライス材Sが保持された時に、被スライス材Sの上面側から該被スライス材Sに押し付けられるプッシャ3と、ニュートラル時に該プッシャ3を昇降上端に位置させ、被スライス材保持空間Hに被スライス材Sが保持された時に、該プッシャ3をガイドすることで、被スライス材保持空間Hに向けて昇降可能にすると共に、その下降時には、該プッシャ3下面をスライス刃1a~1cまで移動させることによって(被スライス材Sの素材によってはプッシャ下面がスライス刃まで届かない直前の位置に移動させることでも)被スライス材Sを切り落とすことを可能にするガイド装置4とを有している。
【0044】
実施例1の構成との違いは、スライス刃1が1つであり、被スライス材Sが切り落とされる時は、2つの切片になっていること、そして、スライス刃1と保持具2a及び2bが一体の構成になっていないことである。
【0045】
後者の保持具2a及び2bは、スライス刃1と平行で且つその上方に設けられ、該スライス刃1との間で被スライス材Sを囲ってその被スライス材Sを保持できる保持空間Hを形成している。本実施例構成では、被スライス材Sは、ゆで卵を想定しており、このゆで卵の場合でも、横に寝かせて被スライス材保持空間Hに載地する構成である。そのため、ゆで卵の場合に、卵のサイズに合わせて、被スライス材保持空間Hを広げたり縮めたり調整できるよう、保持具2a及び2bを水平方向に移動できる構成としている。他方ゆで卵を縦に起こして被スライス材保持空間Hに載地する構成の場合、リング状に保持具2の構成を狭めても良い。この様なリング状の保持具2a及び2bの構成では、卵の大きさに合わせて中央の穴の大きさを適したものにすることが可能である。もちろん、被スライス材Sが他のものの場合、保持具2a及び2bは、その形状に即して適宜形状のものにすることができる。
【0046】
また、ガイド装置4のL字型ブラケット44に取り付けられたプッシャ3は、サイドから見るとほぼ直方体の構成であるが、正面から見ると、上記実施例1の構成とほぼ同様、被スライス材S(ゆで卵)の上面形状に合わせてその下面の形状が形成されている。すなわち、ゆで卵を横向きに載地させた時の上面の緩やかな凸状円弧に合わせて緩やかな凹状円弧を描いた構成とされている。そしてその様な下面形状のところに、上記スライス刃1が食い込まれるように、1条のスリット30が形成されている。プッシャ3が下降せしめられて、下面がスライス刃1に接触する際に、スライス刃1が上記スリット30に嵌入し、その時被スライス材Sはスライス刃1によって、完全に切り落とされている状体になる。尚、被スライス材Sの素材によってはプッシャ3下面がスライス刃1まで届かない直前の位置でも切り落とされることはあり得る。
【0047】
本実施例のスライサ構成によれば、ガイド装置4によりプッシャ3が昇降上端のニュートラル位置にあり、被スライス材保持空間Hに向けての間口を開けているが、被スライス材Sが該空間Hに投入され保持具2a及び2bとスライス刃1との間で保持された時に、作業者がガイド装置4を使用してプッシャ3を上記被スライス材保持空間Hに向けて下降せしめると、下降途中で被スライス材Sのスライスが始まり、該プッシャ3下面がスライス刃1(近く)まで移動せしめられるころには、それによって被スライス材Sが切り落とされることになる。その後はプッシャ3が下方に向かう作業者の力から解放され、上記ガイド装置4(のスプリング45)により昇降上端のニュートラル位置に自動的にプッシャ3は戻ることになる。
【0048】
そのため、本実施例構成では、実施例1の場合と同様に、上記従来技術の場合に比べて、1)被スライス材保持空間Hへの被スライス材Sの投入と、2)ガイド装置4に沿ったプッシャ3の押し下げと言った、繰り返し行う動作が、作業者自身のペースで行えるようになって、日常業務で行われる作業者の負担を軽減でき、よって、作業効率が向上するようになる。
【0049】
他の構成は、上記実施例1と同じであるので、その詳細については省略する。
【0050】
尚、本発明のスライサは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のスライサは、上述のゆで卵だけではなく、柔らかで、上記スライス刃で切断できるものであれば、特に限定はなく、例えば野菜、果物、チーズなどの乳製品、その他、色々なもののスライサとして使用できる。
【符号の説明】
【0052】
1、1a~1c スライス刃
2、2a、2b 保持具
3 プッシャ
30 スリット
4 ガイド装置
40a、40b 昇降ガイド
41a、41b ガイド孔
42a、42b 軸
43a~43d ベアリング
44 L字型ブラケット
44a 張り出し他端
45 スプリング
100 スライサ
102 凹部
104 切断具
B スライサ本体
H 被スライス材保持空間
S 被スライス材
T 張り出し部
【要約】
【課題】 切断を繰り返し行う作業にて動作を減らすことで作業者の負担を減らし作業効率がアップするスライサを提供しようとする。
【解決手段】 スライス刃1a~1cと、該スライス刃と平行で且つその上方に設けられ、該スライス刃との間で被スライス材Sを囲って被スライス材保持空間Hを作り、そこに被スライス材を保持できる保持具2と、該被スライス材保持空間Hに被スライス材Sが保持された時に、被スライス材の上面側から該被スライス材に押し付けられるプッシャ3と、ニュートラル時に該プッシャを昇降上端に位置させ、被スライス材保持空間Hに被スライス材Sが保持された時に、該プッシャをガイドすることで、被スライス材保持空間に向けて昇降可能にすると共に、その下降時には、上記プッシャ下面がスライス刃まで接触させることになるガイド装置4とを有している。
【選択図】 図1
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