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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】溶接用治具及びレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20240216BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20240216BHJP
   H01M 50/528 20210101ALI20240216BHJP
【FI】
B23K26/21 N
B23K26/21 G
B23K26/70
H01M50/528
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020026347
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130123
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】598072179
【氏名又は名称】株式会社片岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 克俊
(72)【発明者】
【氏名】林 佳佑
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187775(WO,A1)
【文献】特開2019-025513(JP,A)
【文献】特開2019-067570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/22
B23K 26/70
H01M 10/0587
H01M 50/528
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状支持部材と、棒状支持部材と、圧力調整機構と、を含み、
前記板状支持部材は、レーザ光が通過可能な貫通孔を有し、
前記棒状支持部材は、ジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部に挿脱可能であり、且つ、その一端で、前記ジェリーロール型電極組立体の一端側に配置される電極及び電池缶底部を支持可能であり、
前記圧力調整機構は、前記板状支持部材及び前記電池缶底部の間に配置される弾性体で構成され、前記板状支持部材及び前記棒状支持部材の間に加える圧力を調整可能であることを特徴とする、前記レーザ光による前記電池缶と前記電極との溶接に用いられる溶接用治具。
【請求項2】
前記弾性体が、ばねである、請求項1記載の溶接用治具。
【請求項3】
前記ばねを複数含む、請求項2記載の溶接用治具。
【請求項4】
板状支持部材と、棒状支持部材と、圧力調整機構と、を含み、
前記板状支持部材は、レーザ光が通過可能な貫通孔を有し、
前記棒状支持部材は、ジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部に挿脱可能であり、且つ、その一端で、前記ジェリーロール型電極組立体の一端側に配置される電極及び電池缶底部を支持可能であり、
前記圧力調整機構が、前記棒状支持部材の他端側に配置される弾性体で構成され、前記板状支持部材及び前記棒状支持部材の間に加える圧力を調整可能であることを特徴とする、前記レーザ光による前記電池缶と前記電極との溶接に用いられる溶接用治具。
【請求項5】
前記弾性体が、ばねである、請求項4記載の溶接用治具。
【請求項6】
前記ばねを複数含む、請求項5記載の溶接用治具。
【請求項7】
板状支持部材と、棒状支持部材と、圧力調整機構と、を含み、
前記板状支持部材は、レーザ光が通過可能な貫通孔を有し、
前記棒状支持部材は、ジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部に挿脱可能であり、且つ、その一端で、前記ジェリーロール型電極組立体の一端側に配置される電極及び電池缶底部を支持可能であり、
前記板状支持部材の貫通孔の径と、前記ジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部の径とが、略同じ大きさであり、
前記圧力調整機構は、前記板状支持部材及び前記棒状支持部材の間に加える圧力を調整可能であることを特徴とする、前記レーザ光による前記電池缶と前記電極との溶接に用いられる溶接用治具。
【請求項8】
レーザ発振器と、溶接用治具と、を含み、
前記溶接用治具は、請求項1からのいずれか一項に記載の溶接用治具であり、
前記レーザ発振器から照射されるレーザ光が、前記溶接用治具の前記板状支持部材の貫通孔を通過可能であることを特徴とする、レーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接用治具及びレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の製造において、有底筒状の電池缶と、ジェリーロール型(巻回型)電極組立体の電極(例えば、負極)とをレーザ光で溶接する方法として、前記ジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部内に前記レーザ光の照射ノズルを挿入し、前記電池缶底部と前記電極とを密着させ、前記電池缶の内部からの前記レーザ光の照射により、前記電池缶と前記電極とを溶接する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5602050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記電池缶の内部からの前記レーザ光の照射による溶接では、前記電池缶1個毎に前記照射ノズルの挿脱を繰り返す必要があるため、タクトタイムが長くなるという問題がある。
【0005】
この問題の解決法として、レーザ光が通過可能な貫通孔を有する板状支持部材と、ジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部に挿脱可能であり、且つ、その一端で、前記ジェリーロール型電極組立体の一端側に配置される電極及び電池缶底部を支持可能な棒状支持部材とを備え、前記板状支持部材及び前記棒状支持部材の間に圧力を加えることで、電池缶底部内面と電極とを圧接可能な治具を用いることが考えられる。この治具を用いた場合、電池缶底部内面と電極とが圧接しているため、電池缶底部内面と電極との接触領域に対応する電池缶底部外面にレーザ光を照射することにより、電池缶と電極とを溶接可能である。
【0006】
しかしながら、前記治具を用いた溶接には、前記板状支持部材及び前記棒状支持部材の間に圧力を加える際に、電池缶に変形が生じるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、電池缶を変形させることなく、レーザ光により前記電池缶と電極とを溶接可能な溶接用治具及びそれを用いたレーザ加工機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の溶接用治具は、
板状支持部材と、棒状支持部材と、圧力調整機構と、を含み、
前記板状支持部材は、レーザ光が通過可能な貫通孔を有し、
前記棒状支持部材は、ジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部に挿脱可能であり、且つ、その一端で、前記ジェリーロール型電極組立体の一端側に配置される電極及び電池缶底部を支持可能であり、
前記圧力調整機構は、前記板状支持部材及び前記棒状支持部材の間に加える圧力を調整可能であることを特徴とし、前記レーザ光による前記電池缶と前記電極との溶接に用いられる。
【0009】
本発明のレーザ加工機は、
レーザ発振器と、溶接用治具と、を含み、
前記溶接用治具は、前記本発明の溶接用治具であり、
前記レーザ発振器から照射されるレーザ光が、前記溶接用治具の前記板状支持部材の貫通孔を通過可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電池缶を変形させることなく、レーザ光により前記電池缶と電極とを溶接可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。
図2図2は、本発明におけるジェリーロール型電極組立体について説明する概略斜視図である。
図3図3は、本発明におけるジェリーロール型電極組立体及び電池缶について説明する模式断面図であり、(A)が縦方向断面図、(B)が横方向断面図である。
図4図4は、実施形態2の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。
図5図5は、実施形態3の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。
図6図6は、実施形態4の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。
図7図7(A)~(D)は、実施形態1の溶接用治具を用いた溶接方法の一例を示す模式断面図である。
図8図8は、実施形態5の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。
図9図9(A)~(D)は、実施形態5の溶接用治具を用いた溶接方法の一例を示す模式断面図である。
図10図10は、実施形態6の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。
図11図11は、実施形態7のレーザ加工機におけるガルバノスキャナの一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「縦方向」は、後述するジェリーロール型電極組立体の巻回の軸方向を意味し、「横方向」は、前記巻回の軸と垂直方向を意味する。
【0013】
以下、本発明の溶接用治具及びレーザ加工機について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は、以下の説明に限定されない。なお、以下の図1図11において、同一部分には、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、図面においては、説明の便宜上、各部の構造は適宜簡略化して示す場合があり、各部の寸法比等は、実際とは異なり、模式的に示す場合がある。また、各実施形態は、特に言及しない限り、互いにその説明を援用できる。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。本実施形態は、レーザ光30を、電池缶22の底部外面に上方から照射する溶接用治具の一例である。図1に示すように、溶接用治具は、板状支持部材11と、棒状支持部材12と、圧力調整機構13と、を含む。板状支持部材11は、レーザ光30が通過可能な貫通孔11aを有する。棒状支持部材12は、ジェリーロール型電極組立体23の中空の軸芯部に挿脱可能であり、且つ、その一端(図1においては、上端)で、ジェリーロール型電極組立体23の一端側(図1においては、上側)に配置される電極21及び電池缶22の底部を支持可能である。電極21は、図1では1つとしているが、複数個が積層されていてもよい。図1において、ジェリーロール型電極組立体23、電極21及び電池缶22は、いずれも溶接用治具の構成部材ではなく、溶接対象(ワーク)であって、それらの詳細については後述する。圧力調整機構13は、板状支持部材11及び棒状支持部材12の間に加える圧力を調整可能である。溶接用治具は、さらに、任意の構成部材として、ジェリーロール型電極組立体23の落下を防止する支持体14、及び、支持体14を設置する支持台15を含んでもよい。図1では、支持体14として、ばねを例示したが、ジェリーロール型電極体23の落下を防止できるものであれば、ばね以外のものを用いてもよい。
【0015】
溶接用治具の構成部材の説明に先立ち、図2及び図3を用いて、ジェリーロール型電極組立体23及び電池缶22について説明する。図2は、ジェリーロール型電極組立体23について説明する概略斜視図である。図2に示すように、ジェリーロール型電極組立体23は、細長片である電極タブ21aが付着された第1の電極シート23a(例えば、正極)、電極タブ21bが付着された第2の電極シート(例えば、負極)23b、並びにセパレータ23d及びセパレータ23cからなり、セパレータ23d、第2の電極シート23b、セパレータ23c、第1の電極シート23aの順に積層されて、巻回の軸と垂直方向に切断したときの断面が、円状又は楕円形状に巻回することによって形成されたものである。なお、巻き終わったジェリーロール型電極組立体23は、例えば、テープ等で固定され、電池缶22内に収納し、電解質を含有する有機溶媒からなる電解液を含浸させて、リチウムイオン二次電池等として使用される。図2における電極タブ21bが、本発明における溶接対象(ワーク)である、図1に示す電極21に相当する。前述のとおり、図1では、電極21を1つとしているが、複数個が積層されていてもよい。
【0016】
図3は、ジェリーロール型電極組立体23及び電池缶22について説明する模式断面図であり、(A)が縦方向(巻回の軸方向)の断面図、(B)が横方向(巻回の軸と垂直方向)の断面図である。なお、図3(A)では、図1と上下が逆転している。図3(A)及び(B)に示すように、電池缶22内にジェリーロール型電極組立体23が収納されており、ジェリーロール型電極組立体23の軸芯部23eは、中空となっている。図2及び図3では、ジェリーロール型電極組立体23及び電池缶22の横方向(巻回の軸と垂直方向)の断面を円状としているが、ジェリーロール型電極組立体23の軸芯部が中空であれば、当該断面の形状は、正方形状、長方形状等の矩形状等であってもよい。
【0017】
本実施形態では、板状支持部材11は、その貫通孔11aがジェリーロール型電極組立体23の中空の軸芯部の上部に位置するように、電池缶22底部の上方に配置される。板状支持部材11は、レーザ光30が通過可能な貫通孔11aを有するものであればよく、その材質、厚み等は、特に制限されず、その平面形状も、円状、矩形状等、任意の形状とすればよいが、その横方向の断面積は、電池缶22底部の横方向の断面積よりも大きいことが好ましい。図1では、板状支持部材11を1枚としているが、3枚又は4枚等の複数枚であってもよい。貫通孔11aの形状等については、後述する。
【0018】
棒状支持部材12の横方向の断面積は、ジェリーロール型電極組立体23の中空の軸芯部の横方向の断面積より僅かに小さい。本実施形態において、棒状支持部材12の長さは、ジェリーロール型電極組立体23の中空の軸芯部の長さ及び支持体14の高さの合計と略同じである。棒状支持部材12としては、例えば、セロミックロッド等を用い得る。
【0019】
溶接時に発生する熱の影響がジェリーロール型電極組立体23に及ぶのを防止する観点から、板状支持部材11の貫通孔11aの横方向の断面の形状及び大きさは、棒状支持部材12及びジェリーロール型電極組立体23の中空の軸芯部の横方向の断面の形状及び大きさと略同じであることが好ましい。このとき、例えば、それらの断面形状が円状であれば、板状支持部材11の貫通孔11aの径と、棒状支持部材12及びジェリーロール型電極組立体23の中空の軸芯部の径とが、略同じ大きさとなる。
【0020】
圧力調整機構13の構成は、板状支持部材11及び棒状支持部材12の間に加える圧力を調整可能であれば、特に制限されない。本実施形態では、図1に例示するように、圧力調整機構13を、板状支持部材11及び電池缶22底部の間に配置している。図1では、圧力調整機構13をばねとしているが、ばね以外の弾性体としてもよい。
【0021】
つぎに、図7を用いて、本実施形態の溶接用治具を用いた溶接方法の一例について説明する。まず、図7(A)に示すように、電池缶22に、ジェリーロール型電極組立体23を収納し、棒状支持部材12を、ジェリーロール型電極組立体23の中空の軸芯部23eに挿入する。つぎに、図7(B)に示すように、棒状支持部材12の一端(図7(B)においては、上端)によって、電池缶22底部内面と電極21とを接触させる。つぎに、図7(C)に示すように、板状支持部材11及び圧力調整機構13によって、電池缶22底部を上方から押さえる。このとき、圧力調整機構13により、電池缶22に変形を生じさせない圧力で、電池缶22底部内面及び電極21を密着させる。つぎに、図7(D)に示すように、板状支持部材11の貫通孔11aからレーザ光30を照射し、電池缶22と電極21とを溶接する。図7(D)に示す例では、板状支持部材11の貫通孔11aを通過したレーザ光30は、圧力調整機構13であるばねの隙間から電池缶22底部外面に照射される。圧力調整機構13としてばね以外の弾性体を用いる場合には、弾性体にレーザ光30が通過可能な貫通孔を設ける等して、電池缶22底部外面にレーザ光30を照射すればよい。
【0022】
本実施形態によれば、圧力調整機構13により、板状支持部材11及び棒状支持部材12の間に加える圧力を調整することで、電池缶22を変形させることなく、レーザ光30により電池缶22と電極21とを溶接可能である。また、本実施形態によれば、従来のジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部内に挿入した照射ノズルを用いた電池缶の内部からのレーザ光の照射による溶接と異なり、電池缶22底部内面と電極21との接触領域に対応する電池缶22底部外面にレーザ光30を照射することにより、電池缶22と電極21とを溶接可能である。このため、本実施形態によれば、溶接部の形状を任意とできる。
【0023】
(実施形態2)
図4は、本実施形態の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。図4に示すように、本実施形態の溶接用治具は、圧力調整機構13のばねが、2つ(ばね13a及びばね13b)であること以外は、実施形態1の溶接用治具と同様である。図4では、圧力調整機構13のばねを2つとしているが、3つ以上としてもよい。このように、圧力調整機構13のばねを複数とすれば、電池缶22の水平を維持するのが容易となる。
【0024】
(実施形態3)
図5は、本実施形態の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。図5に示すように、本実施形態の溶接用治具は、さらに、電池缶ガイド16を含み、電池缶ガイド16により電池缶22の位置を調整可能であること以外は、実施形態1の溶接用治具と同様である。電池缶ガイド16は、例えば、図5に示すように、板状支持部材11から突出し、電池缶22の上部を囲う筒状等とすればよい。電池缶ガイド16を設ければ、板状支持部材11及び棒状支持部材12の間に圧力をかけたときに、電池缶22が傾くのを防止できる。
【0025】
(実施形態4)
図6は、本実施形態の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。図6に示すように、本実施形態の溶接用治具では、圧力調整機構13が、板状支持部材11及び電池缶22底部の間に配置されるのに代えて、支持台15を介して、棒状支持部材12の他端(図6においては、下端)側に配置される。本実施形態において、圧力調整機構13としては、例えば、棒状支持部材12の他端を押圧可能なモータ、エアシリンダ等を用い得る。それら以外は、本実施形態の溶接用治具は、図1に示す実施形態1の溶接用治具と同様である。
【0026】
(実施形態5)
図8は、本実施形態の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。本実施形態は、レーザ光30を、電池缶22の底部外面に下方から照射する溶接用治具の一例である。図8に示すように、本実施形態では、板状支持部材11、電池缶22、電極21、ジェリーロール型電極組立体23及びその中空の軸芯部に挿入された棒状支持部材12の位置関係が、図6に示す実施形態4と上下が逆転している。また、棒状支持部材12の長さは、ジェリーロール型電極組立体23の中空の軸芯部の長さよりも僅かに長い。そして、棒状支持部材12の他端(図8においては、上端)側に、圧力調整機構13c及び13dが配置されている。圧力調整機構13cは、図1に示す実施形態1の圧力調整機構13と同様である。圧力調整機構13dは、図6に示す実施形態4の圧力調整機構13と同様である。本実施形態の溶接用治具は、図8に示すように、圧力調整機構13c及び13dの双方を含んでもよいし、いずれか一方のみを含んでもよい。
【0027】
つぎに、図9を用いて、本実施形態の溶接用治具を用いた溶接方法の一例について説明する。まず、図9(A)に示すように、電池缶22及びジェリーロール型電極組立体23を、板状支持部材11上に設置する。つぎに、図9(B)に示すように、棒状支持部材12を、ジェリーロール型電極組立体23の中空の軸芯部23eに挿入する。つぎに、図9(C)に示すように、圧力調整機構13c及び13dによって、棒状支持部材12を押し下げて、電極21と棒状支持部材12の一端(図9(C)においては、下端)とを接触させる。このとき、圧力調整機構13c及び13dにより、電池缶22に変形を生じさせない圧力で、電池缶22底部内面及び電極21を密着させる。つぎに、図9(D)に示すように、板状支持部材11の貫通孔11aからレーザ光30を照射し、電池缶22と電極21とを溶接する。
【0028】
(実施形態6)
図10は、本実施形態の溶接用治具の構成の一例を示す模式断面図である。図10に示すように、本実施形態は、4つの溶接用治具が、圧力調整機構13cで連結されていること以外、図8に示す実施形態5の溶接用治具と同様である。図10では、溶接用治具を4つとしたが、必要に応じて増減できる。本実施形態の溶接用治具によれば、複数の電極21及び電池缶22底部を一度に支持し、それらを溶接することで、量産が可能となる。
【0029】
(実施形態7)
本実施形態は、レーザ加工機の一例である。本実施形態のレーザ加工機は、レーザ発振器と、前述の実施形態の溶接用治具と、を含み、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光が、前記溶接用治具の板状支持部材11の貫通孔11aを通過可能である。前記レーザ発振器としては、例えば、電池缶と電極との溶接に利用可能な市販品を用い得る。
【0030】
本実施形態のレーザ加工機が、図10に示す実施形態6の複数の電極21及び電池缶22底部を一度に支持可能な溶接用治具を含む場合等には、前記レーザ加工機は、さらに、ガルバノスキャナを含んでもよい。図11は、前記ガルバノスキャナの一例を示す概略斜視図である。ガルバノスキャナ41及び42は、レーザ光30を反射するミラー412及び422をモータ411及び421(例えば、サーボモータ、ステッピングモータ等)等で回動させるものであり、レーザ光30の光軸を変化させることができる。図11に示す例では、レーザ光30の光軸をX軸方向に変化させるX軸ガルバノスキャナ41と、レーザ光30の光軸をY軸方向に変化させるY軸ガルバノスキャナ42とを備え、レーザ光30の照射位置をXY二次元方向に制御できる。なお、図11において、符号43は、集光レンズ(例えば、Fθレンズ等)を示している。前記ガルバノスキャナは、自作してもよいし、市販品を用いてもよい。前記ガルバノスキャナを用いれば、例えば、図10に示す実施形態6の溶接用治具において、4つの板状支持部材11の貫通孔11aを順次通過するように、前記レーザ発振器から照射されたレーザ光を描画可能である。その結果、本実施形態のレーザ加工機によれば、従来の電池缶1個毎に照射ノズルの挿脱を繰り返す溶接よりも、タクトタイムを短くできる。
【0031】
<付記>
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
板状支持部材と、棒状支持部材と、圧力調整機構と、を含み、
前記板状支持部材は、レーザ光が通過可能な貫通孔を有し、
前記棒状支持部材は、ジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部に挿脱可能であり、且つ、その一端で、前記ジェリーロール型電極組立体の一端側に配置される電極及び電池缶底部を支持可能であり、
前記圧力調整機構は、前記板状支持部材及び前記棒状支持部材の間に加える圧力を調整可能であることを特徴とする、前記レーザ光による前記電池缶と前記電極との溶接に用いられる溶接用治具。
(付記2)
前記圧力調整機構が、前記板状支持部材及び前記電池缶底部の間に配置される弾性体である、付記1記載の溶接用治具。
(付記3)
前記圧力調整機構が、前記棒状支持部材の他端側に配置される弾性体である、付記1記載の溶接用治具。
(付記4)
前記弾性体が、ばねである、付記2又は3記載の溶接用治具。
(付記5)
前記ばねを複数含む、付記4記載の溶接用治具。
(付記6)
前記圧力調整機構が、前記棒状支持部材の他端を押圧可能なモータ及びエアシリンダの少なくとも一方である、付記1記載の溶接用治具。
(付記7)
前記棒状支持部材が、セラミックロッドである、付記1から6のいずれかに記載の溶接用治具。
(付記8)
複数の前記電極及び前記電池缶底部を一度に支持可能である、付記1から7のいずれかに記載の溶接用治具。
(付記9)
前記板状支持部材の貫通孔の径と、前記ジェリーロール型電極組立体の中空の軸芯部の径とが、略同じ大きさである、付記1から8のいずれかに記載の溶接用治具。
(付記10)
さらに、電池缶ガイドを含み、
前記電池缶ガイドにより前記電池缶の位置を調整可能である、付記1から9のいずれかに記載の溶接用治具。
(付記11)
レーザ発振器と、溶接用治具と、を含み、
前記溶接用治具は、付記1から10のいずれかに記載の溶接用治具であり、
前記レーザ発振器から照射されるレーザ光が、前記溶接用治具の前記板状支持部材の貫通孔を通過可能であることを特徴とする、レーザ加工機。
(付記12)
さらに、ガルバノスキャナを含み、
前記ガルバノスキャナにより、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光が、前記溶接用治具の前記板状支持部材の貫通孔を通過可能とされている、付記11記載のレーザ加工機。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、電池缶を変形させることなく、レーザ光により前記電池缶と電極とを溶接可能である。このため、本発明は、例えば、リチウムイオン二次電池等の各種電池の生産において、極めて有用である。
【符号の説明】
【0033】
11 板状支持部材
11a 貫通孔
12 棒状支持部材
13、13a、13b、13c、13d 圧力調整機構
14 支持体
15 支持台
16 電池缶ガイド
21 電極
21a、21b 電極タブ
22 電池缶
23 ジェリーロール型電極組立体
23e 中空の軸芯部
30 レーザ光
図1
図2
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図11