(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16D 65/12 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
F16D65/12 R
F16D65/12 B
(21)【出願番号】P 2020071109
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000154303
【氏名又は名称】株式会社フジコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】柴田 公文
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-216649(JP,A)
【文献】実開昭58-006020(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対峙した2枚のディスクと、
車両の車軸に取付可能な中央部、及び前記中央部から径方向に向かって放射状に複数延設され、前記2枚のディスクを所定寸法離間させつつ支持する支持部を有した本体と、
を具備したベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法において、
前記中央部に対して支持部が一体化しつつ平面状に延設して形成された一体成形部品を得る成形工程と、
前記支持部の基端部を前記中央部の周方向に捩り加工し、当該基端部より先端側の延設部を前記中央部の径方向に対して回転させる捩り工程と、
前記捩り工程により回転した前記延設部の側端面に前記2枚のディスクをそれぞれ当接させつつ接合する接合工程と、
を有する
とともに、前記捩り工程は、それぞれの前記基端部の捩り方向が任意に設定されたことを特徴とするベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法。
【請求項2】
前記成形工程で得られる前記中央部は、円筒状の部位から成るとともに、前記支持部は、前記中央部の開口縁部から一体的に延設された矩形状の部位から成ることを特徴とする請求項1記載のベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法。
【請求項3】
前記捩り工程は、前記延設部の側端面が前記2枚のディスクの面に対して略平行となるまで前記基端部を捩り加工することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法。
【請求項4】
前記捩り工程は、前記2枚のディスクの離間寸法に応じた捩り角度に設定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法。
【請求項5】
前記捩り工程による捩り加工時又は当該捩り加工後、前記延設部を前記中央部の周方向に向かって弧状に屈曲形成する屈曲形成工程を有することを特徴とする請求項1~
4の何れか1つに記載のベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部にて支持された2枚のディスクを有するベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車や二輪車等の車両に配設された制動手段として、例えば特許文献1に開示されているように、互いに対峙した2枚のディスクの間に複数のフィン(支持部)を放射状に介在させて構成されたベンチレーテッド型ブレーキディスクが挙げられる。そして、ベンチレーテッド型ブレーキディスクを車両に取り付けて車輪と一体に回転可能とするとともに、ディスクにブレーキパッドを押圧させることにより、制動力を得るよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の如きベンチレーテッド型ブレーキディスクにおいては、2枚のディスク及びフィン(支持部)をそれぞれ別体で構成し、これらを例えばロウ付けで組み付けてベンチレーテッド型ブレーキディスクを製造する場合、2枚のディスクの間隙寸法がフィン(支持部)の板厚で決まるため、当該間隙寸法を任意に調整したい場合、フィン(支持部)の板厚を変更する必要があり、設計自由度が低く、且つ、製造コストが嵩んでしまう虞があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、設計自由度を向上させることができるとともに、製造コストを低減させることができるベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、互いに対峙した2枚のディスクと、車両の車軸に取付可能な中央部、及び前記中央部から径方向に向かって放射状に複数延設され、前記2枚のディスクを所定寸法離間させつつ支持する支持部を有した本体とを具備したベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法において、前記中央部に対して支持部が一体化しつつ平面状に延設して形成された一体成形部品を得る成形工程と、前記支持部の基端部を前記中央部の周方向に捩り加工し、当該基端部より先端側の延設部を前記中央部の径方向に対して回転させる捩り工程と、前記捩り工程により回転した前記延設部の側端面に前記2枚のディスクをそれぞれ当接させつつ接合する接合工程とを有するとともに、前記捩り工程は、それぞれの前記基端部の捩り方向が任意に設定されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法において、前記成形工程で得られる前記中央部は、円筒状の部位から成るとともに、前記支持部は、前記中央部の開口縁部から一体的に延設された矩形状の部位から成ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法において、前記捩り工程は、前記延設部の側端面が前記2枚のディスクの面に対して略平行となるまで前記基端部を捩り加工することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法において、前記捩り工程は、前記2枚のディスクの離間寸法に応じた捩り角度に設定されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載のベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法において、前記捩り工程による捩り加工時又は当該捩り加工後、前記延設部を前記中央部の周方向に向かって弧状に屈曲形成する屈曲形成工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、中央部に対して支持部が一体化しつつ平面状に延設して形成された一体成形部品を得る成形工程と、支持部の基端部を中央部の周方向に捩り加工し、当該基端部より先端側の延設部を中央部の径方向に対して回転させる捩り工程と、捩り工程により回転した延設部の側端面に2枚のディスクをそれぞれ当接させつつ接合する接合工程とを有するので、設計自由度を向上させることができるとともに、製造コストを低減させることができる。
また、捩り工程は、それぞれの基端部の捩り方向が任意に設定されたので、任意の捩り方向にて延設部を延設させることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、成形工程で得られる中央部は、円筒状の部位から成るとともに、支持部は、中央部の開口縁部から一体的に延設された矩形状の部位から成るので、円筒状の中央部を有したベンチレーテッド型ブレーキディスクを容易に製造することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、捩り工程は、延設部の側端面が2枚のディスクの面に対して略平行となるまで基端部を捩り加工するので、延設部の幅寸法を任意設定することにより2枚のディスクの離間寸法を設定することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、捩り工程は、2枚のディスクの離間寸法に応じた捩り角度に設定されたので、延設部の幅寸法に関わらず捩り角度に応じて2枚のディスクの離間寸法を任意に設定することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、捩り工程による捩り加工時又は当該捩り加工後、延設部を中央部の周方向に向かって弧状に屈曲形成する屈曲形成工程を有するので、ベンチレーテッド型ブレーキディスクが車両の車輪と共に回転する際、弧状に屈曲した延設部にて形成された空気の流通路にて空気を効果的に外側に向かって流通させることができ、熱の放散効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクを示す斜視図
【
図2】同ベンチレーテッド型ブレーキディスクを示す斜視図
【
図3】同ベンチレーテッド型ブレーキディスクのディスクを示す斜視図
【
図4】同ベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体を示す斜視図
【
図5】同ベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体を示す正面図
【
図6】同ベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体を示す側面図
【
図7】同ベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法における成形工程で得られた一体成形部品を示す正面図
【
図9】同ベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法における捩り工程を示す模式図
【
図11】同ベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法における接合工程を示す模式図
【
図12】同捩り工程を経て得られたベンチレーテッド型ブレーキディスクを示す断面図
【
図13】本発明の他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスク(延設部がディスクの外縁より長いもの)を示す斜視図
【
図14】本発明の他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスク(延設部がディスクの外縁より短いもの)を示す斜視図
【
図15】本発明の第2の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスク(延設部が一方向に傾斜したもの)を示す斜視図
【
図16】同実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体を示す斜視図
【
図17】同実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法における捩り工程を示す模式図
【
図18】同実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法における接合工程を示す模式図
【
図19】本発明の他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体(隣接する延設部が互いに異なる方向に傾斜したもの)を示す斜視図
【
図20】同他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法における接合工程を示す模式図
【
図21】本発明の他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスク(延設部が周方向に向かって弧状に屈曲形成されたもの)を示す斜視図
【
図22】同他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体を示す正面図
【
図23】本発明の他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体(中央部が平面状のもの)を示す斜視図
【
図24】同他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体を示す断面図
【
図25】本発明の他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体(延設部がL字状に屈曲形成されたもの)を示す斜視図
【
図26】同他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクを示す側面図
【
図27】本発明の他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの本体(延設部がコ字状に屈曲形成されたもの)を示す斜視図
【
図28】同他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクを示す側面図
【
図29】同他の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクのディスクを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクは、自動車や二輪車等の車両の車軸に取り付けられて当該車軸と一体的に回転可能とされ、ブレーキパッドが押圧されることにより車両の制動力を得るためのものであり、
図1~12に示すように、中央が開口した円環状部材から成り、互いに対峙した2枚のディスク1と、車両の車軸に取付可能な中央部3、及び中央部3から径方向Dに向かって放射状に複数延設され、2枚のディスク1を所定寸法離間させつつ支持する支持部4を有した本体2とを具備して構成されている。
【0026】
ディスク1は、
図3に示すように、中央に開口1aを有するとともに、表面f1及び裏面f2を有した円環状のステンレス材等から成るもので、
図1、2に示すように、2枚のディスク1のそれぞれの裏面f2が支持部4と接合されて支持されている。かかるディスク1は、本ベンチレーテッド型ブレーキディスクが車両の車軸に取り付けられた状態において、ブレーキパッド(不図示)と近接した位置に配設されるとともに、運転者がブレーキ操作することによって、当該ブレーキパッドが各ディスク1を押圧して制動力が得られるようになっている。
【0027】
本体2は、
図4~6に示すように、中央部3及び支持部4が一体形成されたアルミ材(アルミニウムを主な組成として含む材料であって、アルミニウム合金等を含む)等の金属製部材から成るもので、車両の車軸に取り付けられる中央部3の周方向に亘って等間隔に複数の支持部4が突出形成されて構成されている。本実施形態に係る中央部3は、円筒状の部位から成り、中央に大きく開口した中央孔3aと、中央孔3aの外周部に形成されて車軸に形成されたボルト(不図示)を挿通可能な複数の取付孔3bとを有している。
【0028】
支持部4は、本体2と同様の金属製部材から成るとともに、中央部3から径方向Dに向かって放射状に複数延設され、2枚のディスク1を所定寸法離間させつつ支持するもので、
図4~6に示すように、中央部3の開口縁部(開口端側の縁部)から一体的に延設された矩形状の部位から成る。また、本実施形態に係る支持部4は、同図に示すように、中央部3との境界部(根元部位)に位置する基端部4aと、基端部4aから中央部3の径方向Dに向かって延設され、側端面(T1、T2)がディスク2の裏面f2に当接しつつ接合(
図1、2参照)された延設部4bとを有して構成されている。
【0029】
そして、取付孔3bにボルトを挿通して車両の車軸に本ベンチレーテッド型ブレーキディスクを取り付けた後、車両が走行して車輪が回転すると、隣接する支持部4の間において内側から外側に向かって空気が流動するとともに、支持部4がフィンとして機能してディスク1に対する冷却効果が得られるようになっている。このように、2枚のディスク1の間に空気が流れることにより、ブレーキ性能を維持することができる。
【0030】
ここで、本実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクにおける支持部4は、その基端部4aが中央部3の周方向に捩られた形状とされている。この形状により、延設部4bの側端面(T1、T2)は、ディスク1の取付方向(離間方向)に面して延設することとなり、これら側端面(T1、T2)にそれぞれディスク1を接合させることによって、延設部4bの幅寸法(すなわち、側端面T1と側端面T2との間の寸法)がディスク1の離間寸法とされる。
【0031】
次に、本実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法について説明する。
先ず、
図7、8に示すように、プレス加工やトリミング加工等によって、中央部3に対して支持部4が一体化しつつ平面状に延設して形成された一体成形部品を得る(成形工程)。かかる成形工程で得られた一体成形部品は、支持部4の基端部4aが捩られておらず、平面状とされている。
【0032】
そして、工具や治具等にて各支持部4を挟持し、
図9に示すように、径方向Dを中心として支持部4を角度αだけ回転させることにより、支持部4の基端部4aを中央部3の周方向に捩り加工する(捩り工程)。すなわち、捩り工程は、支持部4の基端部4aを中央部3の周方向に捩り加工し、当該基端部4aより先端側の延設部4bを中央部3の径方向Dに対して回転させる工程である。また、本実施形態における捩り工程は、支持部4を90°(α=90°)回転させており、延設部4bの側端面(T1、T2)が2枚のディスクの面に対して略平行(
図11参照)となるまで基端部4aを捩り加工している。
【0033】
かかる捩り工程を経ることにより、延設部4bが径方向Dを軸として角度αだけ回転し、隣合う側端面T1、T2が対向した平面状の形状(
図7参照)から、
図4~6、10に示すように、立ち上がった形状(成形工程で得られた一体成形部品の平面に対して垂直方向に立設した立体形状)とされる。その後、
図11、12に示すように、2枚のディスク1のうち一方のディスク1の裏面f2を延設部4bの一方の側端面T1に当接させつつ接合するとともに、他方のディスク1の裏面f2を延設部4bの他方の側端面T2に当接させつつ接合する(接合工程)。
【0034】
かかる接合工程を経ることにより、延設部4bの両側端面(T1、T2)が2枚のディスク1のそれぞれの裏面f2に当接しつつ接合されるので、
図11に示すように、延設部4bの幅寸法(側端面T1と側端面T2との間の寸法)が2枚のディスク1の離間寸法Sとされる。しかるに、隣合う延設部4bが形成する空間は、車両の走行時に車軸と共にベンチレーテッド型ブレーキディスクが回転する際、本体2の中央から外側に向かって空気を流動させ得る流通路とされる。
【0035】
すなわち、支持部4は、2枚のディスク1を所定寸法離間させて支持する機能(保持機能)と、空気を流動させ得る流通路を形成する機能と、流通路を流通する空気に接触して放熱させる機能(フィンとしての冷却機能)とを併せ持つもので、本実施形態によれば、基端部4aを単に捩り加工することにより、これら機能を有した支持部4を得ることができる。なお、成形工程で得られる一体成形部品(
図7参照)における支持部4の幅寸法を設定することにより、2枚のディスク1の離間寸法を種々変更することができる。
【0036】
なお、本実施形態においては、
図1、2に示すように、延設部4bがディスク1の外縁と同等の長さに設定されているが、
図13に示すように、延設部4bがディスク1の外縁より長く設定され、延設部4bの突端がディスク1の外周縁から外側に突出したもの、或いは
図14に示すように、延設部4bがディスク1の外縁より短く設定され、延設部4bの突端がディスク1の外周縁の内側に没した状態のものであってもよい。
【0037】
本実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法によれば、中央部3に対して支持部4が一体化しつつ平面状に延設して形成された一体成形部品を得る成形工程と、支持部4の基端部4aを中央部3の周方向に捩り加工し、当該基端部4aより先端側の延設部4bを中央部3の径方向Dに対して回転させる捩り工程と、捩り工程により回転した延設部4bの側端面(T1、T2)に2枚のディスク1をそれぞれ当接させつつ接合する接合工程とを有するので、離間寸法Sを容易に調整することができ、設計自由度を向上させることができるとともに、製造コストを低減させることができる。
【0038】
同様に、本実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクによれば、支持部4は、中央部3の周方向に捩られた形状の基端部4aと、基端部4aから中央部3の径方向Dに向かって延設され、側端面(T1、T2)がディスク1に当接しつつ接合された延設部4bとを有するので、ベンチレーテッド型ブレーキディスクを製造する際、支持部4を容易に形成することができ、製造コストを低減させることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、成形工程で得られる中央部3は、円筒状の部位から成るとともに、支持部4は、中央部3の開口縁部から一体的に延設された矩形状の部位から成るので、円筒状の中央部3を有したベンチレーテッド型ブレーキディスクを容易に製造することができる。さらに、本実施形態に係る捩り工程は、
図9、11に示すように、延設部4bの側端面(T1、T2)が2枚のディスク1の面に対して略平行となるまで基端部4aを捩り加工するので、延設部4bの幅寸法を任意設定することにより2枚のディスク1の離間寸法Sを設定することができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスク及びその製造方法について説明する。
本実施形態に係るベンチレーテッド型ブレーキディスクは、第1の実施形態と同様、自動車や二輪車等の車両の車軸に取り付けられて当該車軸と一体的に回転可能とされ、ブレーキパッドが押圧されることにより車両の制動力を得るためのものであり、
図15~18に示すように、中央が開口した円環状部材から成り、互いに対峙した2枚のディスク1と、車両の車軸に取付可能な中央部3、及び中央部3から径方向Dに向かって放射状に複数延設され、2枚のディスク1を所定寸法離間させつつ支持する支持部4を有した本体2とを具備して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の部位には、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0041】
本実施形態に係る支持部4は、その基端部4aが中央部3の周方向に捩られた形状とされるとともに、
図15、16に示すように、2枚のディスク1の離間寸法Sに応じた捩り角度に設定されて構成されている。具体的には、第1の実施形態と同様の成形工程を経た後、捩り工程において、工具や治具等にて各支持部4を挟持し、
図17に示すように、径方向Dを中心として支持部4を角度β(β<α)だけ回転させることにより、支持部4の基端部4aを中央部3の周方向に捩り加工する(捩り工程)。
【0042】
すなわち、捩り工程は、支持部4の基端部4aを中央部3の周方向に角度βだけ捩り加工し、当該基端部4aより先端側の延設部4bを中央部3の径方向Dに対して回転させる工程である。かかる捩り工程を経ることにより、延設部4bが径方向Dを軸として角度βだけ回転し、隣合う側端面T1、T2が対向した平面状の形状(
図7参照)から、
図15、16に示すように、所定角度傾斜して立ち上がった形状(成形工程で得られた一体成形部品の平面に対して角度βだけ傾斜しつつ立設した立体形状)とされる。
【0043】
その後、
図18に示すように、2枚のディスク1のうち一方のディスク1の裏面f2を延設部4bの一方の側端面T1に当接させつつ接合するとともに、他方のディスク1の裏面f2を延設部4bの他方の側端面T2に当接させつつ接合する(接合工程)。かかる接合工程を経ることにより、延設部4bの両側端面(T1、T2)が2枚のディスク1のそれぞれの裏面f2に当接しつつ接合されるので、
図18に示すように、支持部4の傾斜角度に応じた2枚のディスク1の離間寸法Sとされる。
【0044】
かかる実施形態によれば、捩り工程において、2枚のディスク1の離間寸法Sに応じた捩り角度βに設定されたので、延設部4bの幅寸法に関わらず捩り角度βに応じて2枚のディスク1の離間寸法Sを任意に設定することができる。また、捩り工程において、それぞれの基端部4aの捩り方向が任意に設定されていてもよく、例えば
図19、20に示すように、隣合う支持部4が互いに異なる方向に捩り加工されるようにしてもよい。このように、捩り工程において、それぞれの基端部4aの捩り方向が任意に設定されるようにすれば、任意の捩り方向にて延設部4bを延設させることができる。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図21、22に示すように、延設部4bが中央部3の周方向に向かって弧状に屈曲して成るものとしてもよい。この場合、製造方法において、捩り工程による捩り加工時又は当該捩り加工後、延設部4bを中央部3の周方向に向かって弧状に屈曲形成する屈曲形成工程を有するのが好ましい。このように、中央部3の周方向に向かって弧状に屈曲して成るので、ベンチレーテッド型ブレーキディスクが車輪と共に回転する際、弧状に屈曲した延設部4bにて形成された空気の流通路にて空気を効果的に外側に向かって流通させることができ、熱の放散効果をより高めることができる。また、中央部3は、上記実施形態の如く円筒状の部位に限らず、例えば
図23、24に示すように、平面状の中央部3としてもよい。かかる中央部3には、上記実施形態と同様、中央孔3a及び複数の取り付け孔3bが形成されている。
【0046】
さらに、
図25、26に示すように、延設部4bを屈曲加工(例えばプレス加工)してL字状の延設部4b(断面L字状の延設部4b)としてもよい。この場合、L字状の延設部4bの側端面T1’、T2は、ディスク1の裏面f2にそれぞれ接合されることとなる。またさらに、
図27、28に示すように、延設部4bを屈曲加工して(例えばプレス加工)してコ字状の延設部4b(断面コ字状の延設部4b)としてもよい。この場合、コ字状の延設部4b側端面T1’、T2’は、ディスク1の裏面f2にそれぞれ接合されることとなる。
【0047】
ディスク1は、本願発明の如く中央が開口した円環状部材から成るものに限らず、例えば
図29に示すように、弧状の複数の部材(B1~B3)を組み合わせてディスク1’を構成してもよい。なお、同図においては、弧状の部材(B1~B3)を3枚組み合わせて1つのディスク1としているが、2枚の組み合わせ又は3枚以上の組み合わせでディスク1’を構成するようにしてもよい。また、支持部4は、上記実施形態の如く矩形状の部位に限らず、他の形状であってもよい。なお、本実施形態においては、支持部4に対してディスク1をロウ付けにて接合しているが、溶接等他の接合方法にて接合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
中央部に対して支持部が一体化しつつ平面状に延設して形成された一体成形部品を得る成形工程と、支持部の基端部を中央部の周方向に捩り加工し、当該基端部より先端側の延設部を中央部の径方向に対して回転させる捩り工程と、捩り工程により回転した延設部の側端面に2枚のディスクをそれぞれ当接させつつ接合する接合工程とを有するベンチレーテッド型ブレーキディスクの製造方法及びベンチレーテッド型ブレーキディスクであれば、他の形態のものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ディスク
1a 開口
2 本体
3 中央部
3a 中央孔
3b 取付孔
4 支持部
4a 基端部
4b 延設部
f1 表面
f2 裏面
T1、T2 側端面
D 径方向
S 離間寸法