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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】遠隔指示制御システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/14 20060101AFI20240216BHJP
   G02B 27/20 20060101ALI20240216BHJP
   G06F 3/04812 20220101ALI20240216BHJP
【FI】
H04N7/14
G02B27/20
G06F3/04812
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022116892
(22)【出願日】2022-07-22
(65)【公開番号】P2024014221
(43)【公開日】2024-02-01
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505386270
【氏名又は名称】株式会社ソフトシーデーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】木村 正樹
【審査官】富樫 明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-204534(JP,A)
【文献】特開2004-219847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/14-7/15
G02B 27/20
G06F 3/04812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間内の指示対象に向けレーザポインタを投射し作業者へ指示を行う遠隔指示制御システムであって、
所定空間を検知可能な現状検知手段、作業者に装着され指示部の示した所定空間内の対象へ投射可能なレーザポインタ、並びに、レーザポインタの投射位置を調整可能な駆動部、を備える映像ユニットと、
現状検知手段にて検知された所定空間を表示可能なモニタ、並びに、レーザポインタが示す対象を指示する指示手段、を備える指示部と、
レーザポインタの投射座標を計算するために備える一乃至複数の基準点、並びに、該基準点を使用し自動的にレーザポインタの投射位置を計算する計算部、を備える位置データ管理部と、
所定空間内の基準点座標や位置データを記憶するデータサーバと、
で構成されて成り、
指示部が所定空間内の作業者へ指示手段を使用して作業指示を行うにあたって、レーザポインタの起点位置の掌握と基準点との差異を計算し座標として随時記録し、基準点と指示座標との距離を所定空間内の距離へ自動的に計算し座標を置き換えることにより、記録させたレーザポインタの起点位置から指示対象へレーザポインタを投射可能な機能が備えられて成る遠隔指示制御システム。
【請求項2】
前記駆動部が、多軸制御であることを特徴とする請求項1に記載の遠隔指示制御システム。
【請求項3】
前記計算部が、レーザポインタに備えられた傾きセンサによりレーザポインタの傾きを自動的に調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔指示制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔からの指示を制御するシステムに関し、詳しくは、遠隔からレーザポインタを使って正確な指示を可能にする遠隔指示制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な業種で、在宅勤務を始めとしたパソコン等を使用した遠隔操作による仕事を行う業務形態が増加している。また、ノートパソコンやタブレットを使用して出先から作業現場へ指示を行うといった、場所にとらわれない働き方も浸透してきている。しかし、遠隔作業や遠隔指示による仕事上では、指示者と作業者とのコミュニケーションの齟齬が発生したり、指示者が作業者へ指示を出さないと作業が進まなかったり、といった問題が多々発生する。
【0003】
上記問題を解決すべく、特開2008-294684号公報(特許文献1)や特開2013-86939号公報(特許文献2)に記載の技術提案がなされている。具体的には、特許文献1において、ビデオカメラにて撮像された対象物へアノテーション(注釈)画像をプロジェクタにて投影させる技術提案がなされている。また、特許文献2では、棚に設置されたレーザポインタを入出庫部品のタグに照射し部品管理を行う技術提案がなされている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術提案では、撮像手段及び投影手段を、ほぼ同画角となるよう配置しなくてはならず、別の撮像対象へ投影する場合には、改めて撮像手段及び投影手段を設置し直す必要があり、連続した作業に対する指示が困難である、といった問題があった。
また、特許文献2に記載の技術提案では、予め登録してあるタグ位置への照射となるため、部品収納場所以外の技術的な指示等に使用することが困難である、といった問題があった。
【0005】
本出願人は、以上のような問題点、すなわち、遠隔指示が必要な作業時において、継続して指示を出すことが困難であったり、レーザポインタを使った臨機応変な作業指示が困難である、といった問題点に着目し、レーザポインタを使用して正確かつ継続的にあらゆる遠隔指示を行えないものかとの着想のもと、レーザポインタによる投射角度の自動補正を行うことで、正確かつ継続的な遠隔指示を可能にするシステムを開発し、本発明にかかる「遠隔指示制御システム」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-294684号公報
【文献】特開2013-86939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、レーザポインタによる投射角度の自動補正を行うことで、正確かつ継続的な遠隔指示が可能な遠隔指示制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、所定空間内の指示対象に向けレーザポインタを投射し作業者へ指示を行う遠隔指示制御システムであって、所定空間を検知可能な現状検知手段と、作業者に装着され指示部の示した所定空間内の対象へ投射可能なレーザポインタと、レーザポインタの投射位置を調整可能な駆動部と、を備えた映像ユニットと、現状検知手段にて検知された所定空間を表示可能なモニタと、レーザポインタが示す対象を指示する指示手段と、を備えた指示部と、レーザポインタの投射座標を計算するために備える一乃至複数の基準点と、基準点を使用し自動的にレーザポインタの投射位置を計算する計算部と、を備えた位置データ管理部と、所定空間内の基準点座標や位置データを記憶するデータサーバと、で構成されて成り、指示部が所定空間内の作業者へ指示手段を使用して作業指示を行うにあたって、レーザポインタの起点位置の掌握と基準点との差異を計算し座標として随時記録し、基準点と指示座標との距離を所定空間内の距離へ自動的に計算し座標を置き換えることにより、記録させたレーザポインタの起点位置から指示対象へレーザポインタを投射可能な機能が備えられて成る手段を採る。
【0009】
また、本発明は、前記駆動部が、多軸制御である手段を採る。
【0010】
さらに、本発明は、計算部が、レーザポインタに備えられた傾きセンサによりレーザポインタの傾きを自動的に調整する手段を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる遠隔指示制御システムによれば、指示者による遠隔指示にてレーザポインタの操作が可能となり、所定空間内の作業者に対する作業指示が容易となる、といった優れた効果を奏する。
【0012】
また、本発明にかかる遠隔指示制御システムによれば、所定空間内に基準点を設けることにより、撮影映像とモニタ映像の差異を検出してレーザポインタの指し示す方向の是正が可能となるため、レーザポインタによる確実な指示対象の投射を実現することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかる遠隔指示制御システムによれば、駆動部が多軸制御であることにより、指示者の希望通りの指示箇所をレーザポインタにて投射可能となる。
【0014】
またさらに、本発明にかかる遠隔指示制御システムによれば、傾きセンサが設けられていることで、レーザポインタ自体の傾きを調整可能となり、より正確な指示に資することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にかかる遠隔指示制御システムの実施形態の例を示すブロック図である。
図2】本発明にかかる遠隔指示制御システムの実施形態の例を示すフロー図である。
図3】本発明にかかる遠隔指示制御システムの実施形態の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかる遠隔指示制御システムは、指示者がモニタ上の指示手段によって所定空間内の指示対象へレーザポインタを投射するシステムであって、現状検知手段で検知した映像データに基準点を設けデータサーバへ記録すると共に、送信時の映像データと指示部にて指示座標が入力された映像データを、基準点を使用して差異を修正することで、正確かつ継続的な遠隔指示が可能なことを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる遠隔指示制御システムの実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
尚、本発明にかかる遠隔指示制御システムは、以下に述べる実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる構成態様の範囲内で適宜変更することができる。
【0018】
図1は、本発明にかかる遠隔指示制御システムの実施形態の例を示すブロック図である。また、図2及び図3は、本発明にかかる遠隔指示制御システムの実施形態の例を示すフロー図であり、図2は指示開始・作業開始時のフロー、図3は指示終了・作業終了時のフローである。
本発明にかかる遠隔指示制御システムは、所定空間の指示箇所へレーザポインタを投射し遠隔指示を行うシステムであり、主に映像ユニットと、指示部と、位置データ管理部と、データサーバにて構成されている。
【0019】
作業者は、所定空間内にて作業を行う者であり、映像ユニットを介してなされた指示に従い作業を行う人である。また、指示者は、作業を行う所定空間外にて指示を行う者であり、モニタ及び指示手段を使用し、作業者へ指示を行う人やサーバ(プログラム)、AIロボットなどが該当する。
作業者及び指示者の数に限定はなく、例えば、複数の作業者が夫々別の所定箇所において作業を行っている状態であれば、指示者がモニタ上に表示される所定箇所の検知映像を順次切替えて、夫々の作業者に対して作業指示を行う態様や、複数の指示者により、作業内容毎に専門の指示者から作業者へ指示を行う態様等が考え得る。
【0020】
映像ユニットは、所定空間内を検知可能な現状検知手段と、指示部に指示された箇所を投射可能なレーザポインタと、レーザポインタの投射位置を調整可能な駆動部にて構成され、指示者による遠隔指示に従い、作業者に対し実際に指示を行うための装置である。
【0021】
現状検知手段は、所定空間内の現状を検知する手段であり、作業箇所全体が検知可能な所定空間内天井部に設置されたり、作業者の目線の先を検知可能な作業者の頭部等に装着される。現状検知手段として採用される具体的機器については、所定空間内を検知可能な機器であれば特に限定するものではないが、例えば所定空間内をそのまま撮影・録画可能なカメラが好適である。カメラ以外にも、物体までの距離を検知することで所定空間内の各種配置をデータ的に判読可能な超音波センサ、物体の温度の違いから所定空間内の各種配置をデータ的に判読可能な赤外線センサなどを採用することもできる。現状検知手段の種類や数は限定されるものではなく、例えば、ドーム型の監視カメラを所定空間内に複数設置する態様や、カメラと超音波センサなど異種の機器を重畳的に複数設置する態様等が考えられる。現状検知手段で検知された所定空間内の現状は、データサーバにて保存された後、位置データ管理部にて基準点設定処理された後、指示部のモニタにて表示されることとなる。
また、現状検知手段としてカメラを採用する場合、その構造としてPTZ機能(水平・垂直移動及びズーム機能)が搭載された構造が好適である。かかるPTZ機能搭載のカメラであれば、カメラの移動によりモニタ上の死角が発生しにくくなると共に、指示対象へのズーム等により詳細な指示が可能となる。
【0022】
現状検知手段の現状は、映像データとしてデータサーバへ自動的に保存されることとなる。データの送信方法は特に限定しないが、機器の移動が少ない現状検知手段においては、有線通信手段を用いる態様が好適である。かかる有線通信手段を採ることで、複数台の現状検知手段を設置した場合においても、電波の状況に左右されずに安定的な通信速度を保つことが可能となる。
【0023】
レーザポインタは、対象物へ直線的に画像を投射可能な装置である。指示部の指示により位置データ管理部にて投射角の計算が行われ、レーザポインタに備えられた駆動部が投射角を設定することにより、指示対象に向けレーザポインタを投射することとなる。レーザポインタの構造について特に限定しないが、一般的な点状あるいは線状にレーザを投射する方式のほか、文字形式の投射光を対象に表示させる方式であったり、プロジェクタ等を利用して映像形式の投射光を対象に表示させる方式なども採用し得る。
また、レーザポインタの設置箇所や数について、作業者に装着されるほかは特に限定はなく、作業者の頭部や胸部等一乃至複数設置する態様が考え得る。例えば、作業者の胸部に備え、作業者の位置情報をもとにレーザポインタの起点位置を決定し、指示対象への投射方向を指示できる態様や、レーザポインタを作業者の数箇所設置し、指示対象の場所によって使用するレーザポインタを投射位置の近い箇所から自動的に選別する態様等が考え得る。
【0024】
レーザポインタの起点確認方法については、特に限定はないが、例えば、作業者がレーザポインタに備わるスイッチを押下すると、無線通信にてレーザポインタの位置情報が位置データ管理部へ送信される態様が考え得る。レーザポインタの起点位置が定まることで、後述する基準点からの距離と指示箇所への距離に基づき、指示対象へ向けた投射角度が計算部によって自動計算され、自動でレーザポインタの投射方向が調整されることとなる。
【0025】
レーザポインタの投射位置や角度といった位置データは、位置データ管理部及びデータサーバとの通信によって記録・変更されることとなる。位置データの送受信方法について特に限定はしないが、設置・装着後も移動する可能性のあるレーザポインタにおいては、無線通信手段を用いる態様が好適である。かかる無線通信手段を採ることで、レーザポインタを設置・装着した状態での移動が容易となる。
【0026】
レーザポインタには、傾きを検知するジャイロセンサや、加速度センサ、多軸慣性センサ等(以下、各センサ類、と呼ぶことがある。)が搭載される態様が好適である。かかる態様により、位置だけでなく傾きによってもレーザポインタの投射方向の調整が可能となって、より正確な補正に資する。尚、各センサ類のデータをもとに、レーザポインタが自動調整される態様が望ましい。
【0027】
駆動部は、レーザポインタの所定箇所に備えられ、レーザポインタの投射方向を多軸制御により調整するための装置である。駆動方法は特に限定はしないが、例えば、水平方向と垂直方向に夫々駆動する二軸制御駆動や、更に前後に駆動する三軸制御駆動などが考え得る。そして駆動部は、レーザポインタが指示対象へ正確にレーザを投射し得るよう、位置データ管理部からの指令によりレーザポインタを駆動させる。
【0028】
映像ユニットは、作業者と共に移動可能な自走車両に搭載される態様が考え得る。この態様により、固定化された部屋内のみならず、様々な作業箇所にてシステムを利用可能となる。また、自走車両には、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)が備わっている態様が好ましく、GPSにより自動的に車両位置を確認しつつ、指示者による指示にて移動先や現状検知手段の検知方向を決定することが可能となる。
【0029】
指示部は、現状検知手段にて検知された所定空間を表示可能なモニタと、レーザポインタが示す対象を指示する指示手段にて構成され、作業者に対して指示者による遠隔指示を行うための部所である。具体的には、モニタ上の指示対象へ指示手段を使用し指示することにより、所定空間内に備えられたレーザポインタから指示対象へ向けレーザが投射され、作業者への指示が行われる。
【0030】
モニタは、現状検知手段にて検知された所定空間を表示可能な表示媒体であり、モニタの形状や形式に特に限定されるものではなく、例えば、パソコンのディスプレイや、タブレット、スマートフォンといった携帯端末であってもよい。モニタには、指示手段を使用して指定した指示箇所を位置データ管理部へ送信できる指示開始ボタンや、位置データ管理部への送信を停止できる指示終了ボタン等が備えられ、また、現状検知手段としてのカメラに搭載されたPTZ機能を利用できる操作ボタンが備わる態様も好適である。さらに、モニタとしてタッチパネル式のものを採用することで、画面上をタッチして指示箇所を指定し得る態様も好適である。
【0031】
モニタには、所定空間内の作業者と直接音声通信が可能なマイク及びスピーカを備える態様が好適であり、直接的な作業指示は口頭で行い、それに付随して指示対象を指し示す際にレーザポインタを使用し指示する、といった態様が有用である。また、モニタによる音声通信が難しい場合、スマートフォン等の携帯端末やトランシーバなど、別途の音声通信機器を併用する態様も考え得る。
【0032】
指示手段は、モニタ上において所定空間内の指示対象を指示可能な手段であり、例えば、モニタ上にカーソルを表示させ動作させるマウスや、タッチパネル式のモニタ画面にて、指定対象をモニタ画面上でタッチ可能なタッチペン等が考え得る。指示手段にて指示した箇所がレーザポインタにて投射されるが、レーザポインタの投射可能な範囲で、文字を入力や画像の添付等を行うことも可能となる。
【0033】
指示手段による指示対象への指示は、自動的もしくは別途送信ボタンを押すことにより、位置データ管理部へ送信される。自動的に送信される態様であれば、指示した内容がリアルタイムで位置データ管理部へ送られ、即時的にレーザポインタを動作させる態様となる。別途送信ボタンを押すことにより送信される態様であれば、モニタ上に送信ボタンを配置し、ボタンを押すことで指示内容が位置データ管理部に送信されることとなって、レーザポインタを動作させるタイミングを任意に決定し得ることとなる。
【0034】
位置データ管理部は、レーザポインタの投射座標を計算するために備える一乃至複数の基準点と、基準点を使用し自動的にレーザポインタの投射位置を計算する計算部にて構成される。位置データ管理部では、データサーバに記録された所定空間の映像が座標データ化されている。すなわち、映像の画面端や画面中央を0地点として、映像画面全体に座標が設けられている。尚、映像として映し出される対象は立体空間であるため、座標は3次元に設けられる。映像画面を座標データ化することにより、基準点や指示対象、レーザポインタの起点・終点位置等を座標として示すことが可能となり、計算部による投射角計算の簡略化に資することとなる。
【0035】
基準点は、現状検知手段にて検知された所定空間の映像と、指示部から受信した映像データに差異が出ないよう設けられるものであり、詳しくは、現状検知手段から送信された所定空間の映像に複数の基準点を設けた状態の映像データをデータサーバに記録し、モニタに表示された映像データをもとに指示者による指示対象の入力後、基準点設定時の映像データと指示部から受信した映像データとを合わせることにより差異の修正を行うものである。また、基準点を中心とした座標を形成する態様により、指示対象の位置やレーザポインタの起点・終点位置の座標管理が可能となり、指示対象へレーザポインタの投射が可能な投射角を計算するといったことも可能である。
基準点が設けられるタイミングは特に指定しないが、例えば、作業員に装着された現状検知手段の検知映像がデータサーバへ記録される前に、自動的に基準点が設けられて記録される、といった態様等が考え得る。
尚、撮影対象である所定空間内に基準点用のマーク(例えばARマーカーや二次元バーコード、○印など)を実際に付設して、当該マークの位置の違いから差異修正を行う態様であってもよい。
また、基準点の数や位置も特に限定しないが、現状検知手段にて検知された所定空間の映像データの基準点を、縦・横・角のいずれかが調整可能であるように設け、少なくとも二点以上の基準点にて映像データの差異を訂正できる態様が好ましい。
【0036】
また、一の基準点を中心に、水平方向と垂直方向に夫々一点以上基準点を設け、中心である一の基準点と結びつつ画面端まで貫通させることで、座標の基準線である水平線と垂直線とする態様も考え得る。かかる基準線とする場合、一の基準点は映像データの中心点、もしくは左下端等の角に設けることで、計算部は基準点の調整と共に、一の基準を0とした指示対象の座標変換及び投射角計算等も同時に行うことが可能となる。
【0037】
計算部は、現状検知手段にて検知された所定空間の映像と、指示部から受信した映像データの差異を、映像データ送信時の基準点と受信した映像データの基準点を合わせることで自動的に調整すると共に、指示対象やレーザポインタの起点・終点情報を基にレーザポインタの投射角を計算し、レーザポインタへ投射角情報を送信するものである。レーザポインタは、投射角情報に合わせ駆動部にて投射角を自動調整し指示対象へ投射することとなる。
また、映像データが座標化されている場合、基準点や指示対象、レーザポインタの起点・終点情報等の位置を座標へ変換し、夫々の座標データを基に映像データの差異修正や投射角の計算を行うこととなる。
【0038】
データサーバは、指示者による指示開始日時や指示内容、作業員の作業開始日時や作業内容、所定箇所に備えられた現状検知手段にて検知された所定空間の映像やレーザポインタの起点情報、位置データ管理部により設けられた基準点等を随時記録・集積するサーバであり、記録内容に基づいて指示部が指示を行ったり計算部が投射角を計算したりすることとなる。
データサーバに記録・収集されるデータは特に限定されるものではないが、上記記録内容の他に、所定空間内におけるデータ(気温・湿度・酸素濃度等)や、作業者と指示者の個人データといった使用者情報等が考え得る。
【0039】
データサーバには、AI(人工知能)が搭載される態様も考え得る。
AIとは、データサーバ内に記録された各種データ及び関連する情報による機械学習や、ビックデータを使用したディープランニング等の蓄積により学習し、その学習結果に基づき問題の解決を図る機能である。
AIによる活用方法としては、予め登録した作業手順をもとに、指示者として作業者の作業スピードに合わせ自動的に作業案内の指示を行う態様や、作業工程において必要となる部品や工程内容の表示、作業手順の誤りに対する復旧手順、作業工程終了予測等の他に、作業工程の緊急停止処理や、所定空間内や作業箇所の緊急避難誘導といった非常時の対応を、AIによる判断で行うといった態様が考え得る。
また、AIによる指示に機械音声を使用し、部品や作業工程を読み上げる態様も好適である。この態様を採ることにより、指示内容への理解が容易となり作業者の負担軽減に資することとなる。
【0040】
以上の各構成要素により、本発明にかかる遠隔指示制御システムは構成されている。該遠隔指示制御システムは、所定空間内に設置された現状検知手段による検知映像に、位置データ管理部が基準点を設け映像データとしてデータサーバに記録される。指示者は、映像データをモニタで確認し、指示対象を指示手段にて指示することにより、指示対象を含めた映像データが位置データ管理部へ送信される。データサーバに記録されたレーザポインタの起点・終点情報と指示対象の位置情報をもとに、レーザポインタの投射角が計算部により計算され、位置データ管理部から投射角情報を受信した駆動部によってレーザポインタの投射位置が変更され、所定空間内の指示対象へレーザポインタが投射されることにより、所定空間内の作業者に対し遠隔にて指示を行うことが可能となる。
【0041】
本発明にかかる遠隔指示制御システムの使用態様の例について、以下に説明する。
所定空間内にて作業を行う作業者の胸部所定箇所には、現状検知手段として作業者前方箇所を撮影するPTZ機能を有するカメラと、傾きセンサによる自動補正が可能なレーザポインタが装着されると共に、指示者との音声通信が可能な端末が身体所定箇所に装着される。なお、カメラとレーザポインタは、隣接位置に装着もしくは夫々を1つの装置として組み込むことにより、カメラの中心点がレーザポインタの起点に近い位置となる。そして、作業者のカメラにて撮影された映像は、映像データとしてデータサーバに無線通信にて随時送信され記録された後、位置データ管理部によって座標化されると共に基準点が設けられる。また、指示者には、基準点が設けられた映像データをリアルタイムで閲覧可能なモニタと、モニタ上の指示対象を指示可能なマウスと、作業者との音声通信が可能な端末が夫々備わっている。
【0042】
作業者は、所定空間内にて作業準備を行うと共に、胸部に装着されたカメラとデータサーバ間の通信を開始し、レーザポインタと端末を夫々通信待機状態にした後、所定空間内の作業を開始する。また、データサーバは、作業員のカメラとの通信が開始されると共に作業開始日時を記録し、カメラの映像を随時記録することとなる。位置データ管理部は、データサーバに記録された映像を座標化すると共に、映像の所定箇所へ基準点を設け映像データとしてデータサーバへ記録する。指示者は、モニタの起動と共にデータサーバと接続することで、位置データ管理部によって座標化された映像データをモニタ上にて閲覧可能となる。また、カメラのPTZ機能を利用しカメラを遠隔操作することで、任意の場所を詳細に確認することが可能となる。そして、モニタにて作業者の作業進捗状況を確認した指示者は、任意のタイミングで作業者へ向け音声及びレーザポインタの投射による作業指示を行うこととなる。
【0043】
まず、指示者がマウスにてモニタ画面所定位置にある指示開始ボタンを押下すると、データサーバにて指示開始日時が記録されると同時に、指示開始情報が位置データ管理部へ送信される。指示開始情報を受信した位置データ管理部は、作業者の胸部に備えたレーザポインタとの通信を開始し、起点位置及び投射距離を取得することでレーザポインタの起点情報が確定される。この起点情報は、指示部による指示対象への押下時に計算部へ送信され、モニタ画面所定位置にある指示終了ボタンの押下が行われるまで、所定のタイミングで測定される。また、レーザポインタは、位置データ管理部との接続が開始されると同時に傾きセンサを起動させ、投射軸を水平垂直に自動調整した後、位置データ管理部へレーザポインタの位置データ及び投射距離を送信する。レーザポインタは、位置データ管理部から投射角データが送信されるまで、傾きセンサを使用した調整機能により自動的に水平垂直位置を保つ投射軸調整を行うこととなる。
【0044】
指示者が、モニタ上の指示対象に向けてマウスをクリックすると同時に、指示部はクリックした指示対象の地点情報を映像データと共に位置データ部へ送信する。そして、位置データ管理部は、指示部から受信した映像データとデータベースに記録した送信時の映像データを計算部へ送信する。計算部は、受信した夫々の映像データに設けられた基準点同士を重ねることで映像データの差異を確認して修正を行うと共に、指示対象の地点情報を基に指示座標を確定させる。その後、受信したレーザポインタの起点・終点座標と投射距離及び確定させた指示座標からレーザポインタの投射角を自動計算し、レーザポインタへ投射角を送信することにより、レーザポインタの駆動部にて角度調整が行われ、指示対象へとレーザポインタが投射される。
【0045】
また、マウスによるドラッグが行われた時は、連続した地点情報と映像データとレーザポインタの位置情報をもとに、計算部による自動計算を随時行うことでレーザポインタへの投射角指示が連続で行われることにより、レーザポインタの投射角も指示に併せて随時変更され、ドラッグが終了するまでレーザポインタの投射は継続される。そのため、レーザポインタの投射光はマウスの動きと擬似的に同期することとなり、作業者に対して柔軟な指示を行うことが可能となる。また、指示者による説明や指示の内容によって、レーザポインタによる投射光の色を変化させたり、文字や画像を表示させたりするボタンをモニタ上に配置する態様も考え得る。
【0046】
指示部がモニタ画面所定位置にある指示終了ボタンをマウスにて押下すると、位置データ管理部にて指示終了処理が行われ、位置データ管理部からレーザポインタへの位置データ送信指示が停止することで、レーザポインタの投射軸調整も同時に停止する。また、データサーバにて指示終了日時が記録されることとなる。
【0047】
所定空間内作業の終了時は、作業員による作業終了処理が行われ、カメラの電源をOFFにすると、カメラとデータサーバの通信が切断されるのと同時に、データサーバにて作業終了日時が記録されると共に、位置データ管理部の映像データ座標化及び基準点付与処理も終了する。
【0048】
以上の通り、本発明にかかる遠隔指示制御システムによれば、作業指示者が遠隔地にあっても、作業者に装着された現状検知手段とレーザポインタを使用することで遠隔による作業指示が可能であり、現状検知手段が検知した映像画面とモニタの画面の差異が発生した場合でも、映像画面上に基準点を設けることで位置データ管理部による自動調整が容易となり、モニタ画面と指示手段を使用した的確な作業指示が実行可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明にかかる遠隔指示制御システムは、レーザポインタを使用した指示を正確な位置に示すことが可能であり、医療における手術補助や、商品の遠隔メンテナンスといった様々な業種における指示方法として本発明を利用することが可能である。したがって、本発明にかかる遠隔指示制御システムの産業上の利用可能性は、大であると思料する。
【符号の説明】
【0050】
10 映像ユニット
20 指示部
30 位置データ管理部
40 データサーバ


図1
図2
図3