(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】支援情報提供システム、支援情報提供装置、支援情報提供方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240216BHJP
【FI】
G16H20/10
(21)【出願番号】P 2023060485
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2018191097の分割
【原出願日】2018-10-09
【審査請求日】2023-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2017196229
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596079138
【氏名又は名称】東日本メディコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】野本 禎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光幸
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-201110(JP,A)
【文献】特開2017-033173(JP,A)
【文献】特開平8-272882(JP,A)
【文献】特開2003-331059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象とされ、当該患者を特定する情報及び当該患者に対して発行された処方箋に関する情報を含む対象情報の要素と、前記患者への指導の観点における異なる分類を表す着眼点情報とを関連付ける第1の関連付け手段と、
前記着眼点情報と、薬学的な指導のための支援情報の候補とを関連付ける第2の関連付け手段と、
薬学的な指導の対象となる個別の患者の前記対象情報を含む個別対象情報を取得する個別対象情報取得手段と、
前記個別対象情報に含まれる前記対象情報の要素に対し、前記第1の関連付け手段による関連付けに基づく前記着眼点情報を取得する着眼点情報取得手段と、
前記着眼点情報取得手段によって取得された前記着眼点情報に対し、前記第2の関連付け手段によって関連付けられた前記支援情報の候補を取得する支援情報取得手段と、
前記支援情報取得手段によって取得された前記支援情報の候補の少なくとも一部を薬学的な指導の対象となる前記患者に対する前記支援情報として提供する支援情報提供手段と、
を備えることを特徴とする支援情報提供システム。
【請求項2】
前記第1の関連付け手段は、前記対象情報の要素と、前記着眼点情報との関連性の度合いを示す情報を有し、
前記着眼点情報取得手段は、前記個別対象情報に含まれる前記対象情報の要素に対し、前記第1の関連付け手段が有する前記関連性の度合いを示す情報に応じた前記着眼点情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の支援情報提供システム。
【請求項3】
前記第2の関連付け手段によって前記着眼点情報と関連付けられた前記支援情報の候補を、前記着眼点情報が示す前記個別対象情報に含まれる前記対象情報の要素との関連性の度合いに基づいて評価する支援情報評価手段を備え、
前記支援情報取得手段は、前記支援情報評価手段による評価結果に基づいて、前記支援情報の候補を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の支援情報提供システム。
【請求項4】
前記支援情報取得手段は、取得した前記支援情報の候補を前記支援情報評価手段による評価結果に基づいて並べられた一覧のデータとし、
前記支援情報提供手段は、前記一覧のデータを薬学的な指導の対象となる前記患者に対する前記支援情報として提供することを特徴とする請求項3に記載の支援情報提供システム。
【請求項5】
前記支援情報取得手段は、前記着眼点情報取得手段によって取得された前記着眼点情報を前記支援情報に含めることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の支援情報提供システム。
【請求項6】
前記個別対象情報取得手段は、調剤の対象となる患者に対する問診結果を含む前記個別対象情報を取得し、
前記着眼点情報取得手段は、薬剤の服用における異なる指導の観点を複数の前記着眼点情報として取得し、
前記支援情報取得手段は、取得された複数の前記着眼点情報に応じて、複数の服薬指導に関する情報から前記支援情報の候補を取得することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の支援情報提供システム。
【請求項7】
前記第1の関連付け手段は、前記対象情報の要素の組み合わせと、複数の前記着眼点情報の関連性とが予め定義された着眼点特定情報を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の支援情報提供システム。
【請求項8】
前記着眼点情報取得手段は、前記対象情報を抽象化した複数の第1の着眼点情報と、前記第1の着眼点情報を抽象化した第2の着眼点情報とを含む複数階層の前記着眼点情報を取得することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の支援情報提供システム。
【請求項9】
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象とされ、当該患者を特定する情報及び当該患者に対して発行された処方箋に関する情報を含む対象情報の要素と、前記患者への指導の観点における異なる分類を表す着眼点情報とを関連付ける第1の関連付け手段と、
前記着眼点情報と、薬学的な指導のための支援情報の候補とを関連付ける第2の関連付け手段と、
薬学的な指導の対象となる個別の患者の前記対象情報を含む個別対象情報を取得する個別対象情報取得手段と、
前記個別対象情報に含まれる前記対象情報の要素に対し、前記第1の関連付け手段による関連付けに基づく前記着眼点情報を取得する着眼点情報取得手段と、
前記着眼点情報取得手段によって取得された前記着眼点情報に対し、前記第2の関連付け手段によって関連付けられた前記支援情報の候補を取得する支援情報取得手段と、
前記支援情報取得手段によって取得された前記支援情報の候補の少なくとも一部を薬学的な指導の対象となる前記患者に対する前記支援情報として提供する支援情報提供手段と、
を備えることを特徴とする支援情報提供装置。
【請求項10】
情報処理装置が実行する支援情報提供方法であって、
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象とされ、当該患者を特定する情報及び当該患者に対して発行された処方箋に関する情報を含む対象情報の要素と、前記患者への指導の観点における異なる分類を表す着眼点情報とを関連付ける第1の関連付けステップと、
前記着眼点情報と、薬学的な指導のための支援情報の候補とを関連付ける第2の関連付けステップと、
薬学的な指導の対象となる個別の患者の前記対象情報を含む個別対象情報を取得する個別対象情報取得ステップと、
前記個別対象情報に含まれる前記対象情報の要素に対し、前記第1の関連付けステップにおける関連付けに基づく前記着眼点情報を取得する着眼点情報取得ステップと、
前記着眼点情報取得ステップにおいて取得された前記着眼点情報に対し、前記第2の関連付けステップにおいて関連付けられた前記支援情報の候補を取得する支援情報取得ステップと、
前記支援情報取得ステップにおいて取得された前記支援情報の候補の少なくとも一部を薬学的な指導の対象となる前記患者に対する前記支援情報として提供する支援情報提供ステップと、
を含むことを特徴とする支援情報提供方法。
【請求項11】
コンピュータに、
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象とされ、当該患者を特定する情報及び当該患者に対して発行された処方箋に関する情報を含む対象情報の要素と、前記患者への指導の観点における異なる分類を表す着眼点情報とを関連付ける第1の関連付け機能と、
前記着眼点情報と、薬学的な指導のための支援情報の候補とを関連付ける第2の関連付け機能と、
薬学的な指導の対象となる個別の患者の前記対象情報を含む個別対象情報を取得する個別対象情報取得機能と、
前記個別対象情報に含まれる前記対象情報の要素に対し、前記第1の関連付け機能による関連付けに基づく前記着眼点情報を取得する着眼点情報取得機能と、
前記着眼点情報取得機能によって取得された前記着眼点情報に対し、前記第2の関連付け機能によって関連付けられた前記支援情報の候補を取得する支援情報取得機能と、
前記支援情報取得機能によって取得された前記支援情報の候補の少なくとも一部を薬学的な指導の対象となる前記患者に対する前記支援情報として提供する支援情報提供機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援情報提供システム、支援情報提供装置、支援情報提供方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬局における薬剤師の業務を支援する情報処理技術が知られている。
例えば、特許文献1には、患者の薬歴のデータをデータベースによって管理し、患者に対する調剤業務を行う際に、データベースを参照して、薬歴等に基づく服薬指導を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、患者の薬歴等のデータをデータベースによって管理したとしても、調剤業務において薬剤師が考慮の対象とする情報は多岐にわたり、薬剤師がこれらを適切に考慮するためには、薬剤師の知識や経験等が必要とされる。特に、薬剤師が問診(アンケート)を行った場合に、患者が提示する情報の中から必要な情報を選別し、調剤を行うために適切に考慮することは容易ではない。
【0005】
本発明の課題は、薬剤師の業務をより適切に支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様の支援情報提供システムは、
ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む支援情報提供システムであって、
前記端末装置は、
患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となる対象情報を取得する対象情報取得手段と、
前記対象情報に基づいて、薬学的な指導のための支援情報の生成を前記サーバに依頼する支援依頼手段と、
前記支援依頼手段による依頼に応じて、前記サーバから送信された薬学的な指導のための支援情報を表示する支援情報表示手段と、を備え、
前記サーバは、
前記支援依頼手段の依頼に応じて、前記対象情報に基づいて前記支援情報を生成する過程で特定される情報であって、異なる分類を表す着眼点情報を取得する着眼点情報取得手段と、
前記着眼点情報に基づいて、前記支援情報を生成する支援情報生成手段と、
前記支援情報生成手段によって生成された前記支援情報を前記端末装置に送信する送信手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る支援情報提供システム1のシステム構成を示す図である。
【
図2】各装置を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】端末装置10の機能的構成を示すブロック図である。
【
図6】支援情報表示画面の一例を示す模式図である。
【
図7】支援情報表示画面の他の例を示す模式図である。
【
図8】薬局用コンピュータ20の機能的構成を示すブロック図である。
【
図9】薬剤DB174に記憶されている薬剤に関するデータのうち、服薬指導文に関するデータを示す模式図である。
【
図10】着眼点特定テーブルの内容を示す模式図である。
【
図11】端末装置10が実行する支援情報提供処理(端末側)の流れを示すフローチャートである。
【
図12】薬局用コンピュータ20が実行する支援情報提供処理(サーバ側)の流れを示すフローチャートである。
【
図13】着眼点として副作用が選択された場合に表示される遷移画面の一例を示す模式図である。
【
図14】副作用の推論機能を呼び出す操作が行われた場合に表示される遷移画面の一例を示す模式図である。
【
図15】副作用の推論結果表示画面の一例を示す模式図である。
【
図16】副作用の指導内容を表す表示画面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る支援情報提供システム1のシステム構成を示す図である。
本実施形態における支援情報提供システム1は、調剤薬局における薬剤師の業務を支援するために用いられ、例えば、処方箋を持参した患者に対して服薬指導を行う場合等に、患者に伝達する情報として推奨される内容を薬剤師に提示するものである。
【0011】
図1に示すように、支援情報提供システム1は、端末装置10と、薬局用コンピュータ20と、を含んで構成され、端末装置10と薬局用コンピュータ20とは、VPN(Virtual Private Network)等のネットワークによって通信可能に構成されている。また、薬局用コンピュータ20は、服薬指導文を含む薬剤情報を記憶している薬剤情報データベースサーバ等の外部サーバとネットワーク(インターネット等)を介して通信可能に構成されている。
【0012】
端末装置10は、薬剤師によって操作されるものであり、タブレット端末あるいはPC(Personal Computer)等の情報処理装置によって構成される。端末装置10は、薬剤師が患者に対して問診する際の問診内容を表示すると共に、問診結果の入力を受け付ける。また、端末装置10は、問診結果を含む患者に関する情報に基づいて、後述する支援情報提供処理によって提供された支援情報(ここでは、推奨される服薬指導内容)を表示する。
【0013】
薬局用コンピュータ20は、調剤薬局の業務に関する処理を実行するサーバコンピュータ等の情報処理装置によって構成され、複数の患者に関する患者属性、薬歴、問診結果等の各種データを管理している。また、薬局用コンピュータ20は、端末装置10から問診結果に基づく支援情報の提供依頼を受け付け、患者属性、問診結果及び処方箋のデータを参照して、その患者に対して服薬指導を行うことが推奨される服薬指導内容(支援情報)を生成する。そして、薬局用コンピュータ20は、生成した支援情報を端末装置10に提供する。
【0014】
なお、薬局用コンピュータ20は、端末装置10から問診結果に基づく支援情報の提供依頼を受け付けた場合に、支援情報の生成を外部サーバに依頼し、外部サーバによって生成された支援情報を取得することにより、端末装置10に支援情報を提供することとしてもよい。
【0015】
[ハードウェア構成]
次に、支援情報提供システム1における各装置のハードウェア構成を説明する。
支援情報提供システム1において、各装置はPC、サーバコンピュータあるいはタブレット端末等の情報処理装置によって構成され、その基本的構成は同様である。
【0016】
図2は、各装置を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、各装置を構成する情報処理装置800は、CPU(Central Processing Unit)811と、ROM(Read Only Memory)812と、RAM(Random Access Memory)813と、バス814と、入力部815と、出力部816と、記憶部817と、通信部818と、ドライブ819と、撮像部820と、を備えている。
【0017】
CPU811は、ROM812に記録されているプログラム、または、記憶部817からRAM813にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM813には、CPU811が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0018】
CPU811、ROM812及びRAM813は、バス814を介して相互に接続されている。バス814には、入力部815、出力部816、記憶部817、通信部818、ドライブ819及び撮像部820が接続されている。
【0019】
入力部815は、各種ボタン等で構成され、指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部816は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部817は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部818は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0020】
ドライブ819には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア831が適宜装着される。ドライブ819によってリムーバブルメディア831から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部817にインストールされる。
撮像部820は、レンズ及び撮像素子等を備えた撮像装置によって構成され、被写体のデジタル画像を撮像する。
なお、情報処理装置800が薬局用コンピュータ20として構成される場合には、撮像部820を省略した構成とすることも可能である。また、情報処理装置800がタブレット端末として構成される場合には、入力部815をタッチセンサによって構成し、出力部816のディスプレイに重ねて配置することにより、タッチパネルを備える構成とすることも可能である。
【0021】
[機能的構成]
次に、支援情報提供システム1における各装置の機能的構成について説明する。
【0022】
[端末装置10の機能的構成]
図3は、端末装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、端末装置10のCPU811においては、ユーザインターフェース表示制御部(UI表示制御部)51と、対象情報取得部52と、支援依頼部53と、支援情報取得部54と、が機能する。
【0023】
UI表示制御部51は、支援情報提供処理(端末側)における各種入出力画面の表示を制御する。例えば、UI表示制御部51は、支援情報提供処理(端末側)において支援情報を提供する対象の患者を選択する画面(以下、「患者選択画面」と称する。)、薬剤師が患者に対して問診する際の問診内容を表示する画面(以下、「問診表示画面」と称する。)、及び、支援情報提供処理(サーバ側)によって提供された支援情報(服薬指導内容)を表示する画面(以下、「支援情報表示画面」と称する。)等を表示(ディスプレイに出力)する。
【0024】
図4は、患者選択画面の一例を示す模式図である。
図4に示すように、患者選択画面においては、薬局用コンピュータ20によって管理されている患者属性に対応する各患者のリストが表示され、薬剤師は、このリストの中から、問診を行う患者を選択する。なお、新規の来局患者については、不図示の登録画面によって、新たに患者属性が登録される。
【0025】
また、
図5は、問診表示画面の一例を示す模式図である。
図5に示すように、問診表示画面においては、択一形式の質問を含む問診内容が表示され、患者の回答に応じて薬剤師が問診結果を入力する。このとき表示される問診内容は、患者属性に対応して選択された一連の質問であり、患者毎、処方箋の内容毎、あるいは、問診回数(例えば、初めての問診か、2回目の問診か)等に応じて決定される。
【0026】
また、
図6は、支援情報表示画面の一例を示す模式図である。
図6に示すように、支援情報表示画面においては、一般に薬剤師(特にベテランの薬剤師)が服薬指導を行う場合に辿る思考過程で想起している指標(以下、「着眼点」と称する。)が表示される。本実施形態において、着眼点は、「副作用」、「アドヒアランス」、「体調の変化」、「併用薬(相互作用)」、「高齢者」、及び、「生活指導」の6つのカテゴリとして提示される。また、本実施形態においては、これら着眼点に関して、問診に回答した患者の患者属性、薬歴、問診結果を基に、それぞれの着眼点のカテゴリに対する関連性(ここでは、重要度を示す百分率)が算出される。支援情報の提供を受ける薬剤師は、提示された着眼点の関連性を参照することで、問診に回答した患者について、どのような観点に注意して服薬指導を行うことが適切であるかを容易に認識することができる。また、薬剤師自身の思考結果と、支援情報に提示された着眼点の関連性との相違を認識することができ、薬剤師自身の自己評価あるいは研鑚に役立てることができる。
さらに、患者に対して行われた前回の指導時に、薬剤師が次回指導を行うべき着眼点を記録していた場合、
図6に示す支援情報表示画面において、記録されていた着眼点が識別表示(背景色を異ならせる、枠で囲む、点滅させる等)される。
【0027】
また、
図7は、支援情報表示画面の他の例を示す模式図である。
図7に示すように、支援情報表示画面においては、問診を行った患者について、推奨される服薬指導内容を示す服薬指導文の一覧(以下、「推奨服薬指導文一覧」と称する。)及び処方された薬剤に関する一般的な服薬指導文の一覧(以下、「一般服薬指導文一覧」と称する。)が表示される。推奨服薬指導文一覧は、支援情報提供処理(サーバ側)によって特定された各着眼点及びその関連性に基づいて選択された服薬指導文のリストを表すものであり、薬剤師(特にベテランの薬剤師)が服薬指導を行う場合に辿る思考過程で想起している内容を反映した結果を表している。また、一般服薬指導文一覧は、患者の処方箋のデータに応じて、処方される薬剤に対応して選択された結果を表している。なお、各服薬指導文にはチェックボックスが併せて表示されており、チェックボックスに薬剤師がチェックマークを付した服薬指導文が、薬剤師による確定操作(「薬歴へ送信」ボタンの操作等)を経て、服薬指導に用いられた服薬指導文の一覧として患者の薬歴に登録される。
なお、
図7の支援情報表示画面では、薬剤師が次回指導を行うべき着眼点を入力するための操作(次回指導内容の入力操作)を行うことが可能であり、薬剤師による確定操作(「薬歴へ送信」ボタンの操作等)によって、入力された内容を薬歴に記録しておくことができる。
【0028】
対象情報取得部52は、服薬指導を行う患者について、考慮の対象となる各種情報(以下、「考慮対象情報」と称する。)を取得する。即ち、考慮対象情報は、患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となる情報である。例えば、対象情報取得部52は、処方箋を持参した患者の氏名、年齢等、患者を特定するための情報、問診表示画面に対して薬剤師が入力した問診結果のデータ、患者が持参した処方箋の内容を表すデータ等を取得する。なお、対象情報取得部52が取得する情報は、これらに限られず、さらに、患者の薬歴のデータ、患者の前回来局時の服薬指導内容のデータ、電子お薬手帳に記憶されているデータ、あるいは、薬剤師が患者を視認して洞察する主観的情報等を取得することも可能である。
【0029】
支援依頼部53は、対象情報取得部52が取得した考慮対象情報と共に、支援情報の提供依頼を薬局用コンピュータ20に送信する。
支援情報取得部54は、支援依頼部53によって送信された支援情報の提供依頼に応じて薬局用コンピュータ20から送信される支援情報を取得する。支援情報取得部54によって取得された支援情報には、着眼点に関する情報、推奨される服薬指導内容を示す服薬指導文の一覧(推奨服薬指導文一覧)のデータ及び処方された薬剤に関する一般的な服薬指導文の一覧(一般服薬指導文一覧)のデータが含まれている。
【0030】
[薬局用コンピュータ20の機能的構成]
図8は、薬局用コンピュータ20の機能的構成を示すブロック図である。
図8に示すように、薬局用コンピュータ20のCPU811においては、支援依頼受付部151と、着眼点特定部152と、提示情報評価部153と、支援情報生成部154と、支援情報提供部155と、が機能する。また、薬局用コンピュータ20の記憶部817には、患者属性データベース(患者属性DB)171と、薬歴データベース(薬歴DB)172と、問診結果データベース(問診結果DB)173と、薬剤データベース(薬剤DB)174と、が形成される。
【0031】
患者属性DB171には、患者の住所、氏名、年齢、性別及び患者個人の特徴を表す各種情報といった患者属性のデータが記憶される。この患者属性は、薬剤師が患者との対話において取得した情報や、患者が問診(アンケート)等に回答して提供した情報等によって構成され、例えば、患者の趣味、仕事内容、家族構成、好きな食べ物等も含まれる。
薬歴DB172は、患者に対して処方された薬剤の履歴(薬歴)が各患者を識別する情報と対応付けて記憶されている。
【0032】
問診結果DB173は、患者に対して行われた問診の結果が、各患者を識別する情報及び問診日時と対応付けて記憶されている。
薬剤DB174は、薬局用コンピュータ20が設置された薬局において取り扱われている薬剤に関するデータが記憶されている。この薬剤に関するデータには、薬剤の名称(一般名)、薬剤コード等に加え、服薬指導文や添付文書の内容が含まれている。
【0033】
図9は、薬剤DB174に記憶されている薬剤に関するデータのうち、服薬指導文に関するデータを示す模式図である。
図9に示すように、薬剤コード及び薬剤の名称によって特定される各薬剤には、薬剤メーカーによって提供される複数の服薬指導文が対応付けられている。
図9においては、各薬剤に対応付けられた服薬指導文に対して、通し番号(指導文番号)が付されている。また、各服薬指導文は、1つまたは複数の着眼点と対応付けられており、考慮対象情報に対して着眼点の関連性が高くなることは、その着眼点と対応付けられた服薬指導文の重要性が相対的に高くなることを意味している。
【0034】
支援依頼受付部151は、端末装置10から考慮対象情報と共に支援情報の提供依頼を受信し、受信した考慮対象情報を着眼点特定部152に出力する。
着眼点特定部152は、考慮対象情報のうち、支援情報提供処理(サーバ側)における論理づけが行われている情報(以下、「論理化済み対象情報」と称する。)と、論理づけが行われていない情報(以下、「非論理化済み対象情報」と称する。)とを選別する。また、着眼点特定部152は、論理化済み対象情報の各組み合わせと各着眼点の関連性との対応関係を定義したテーブルデータ(以下、「着眼点特定テーブル」と称する。)を参照し、選別した論理化済み対象情報から各着眼点の関連性のデータを取得する。
【0035】
図10は、着眼点特定テーブルの内容を示す模式図である。
図10に示すように、着眼点特定テーブルには、論理化済み対象情報の種類及び内容の各種組み合わせと、各着眼点の関連性との関係が定義されている。
例えば、論理化済み対象情報の種類として、問診における各質問が定義され、論理化済み対象情報の内容として、その質問に対する択一的な回答内容が定義されている。そして、着眼点特定テーブルには、質問の種類及び択一的な回答内容の全ての組み合わせに対して、各着眼点の関連性の数値が予め定義されている。各着眼点の関連性の数値は、薬剤師が質問の種類及び択一的な回答内容を認識した場合に、各着眼点の関連性の数値がどのようになるかを実地での判断例(実際の服薬指導履歴の統計)に基づいて定めたものである。
【0036】
なお、問診における質問の他、患者属性(男性または女性)、患者の年齢層、処方薬剤の種類、患者の病名等を論理化済み対象情報とすることが可能であり、この場合、これらの情報を要素とする全ての組み合わせが着眼点特定テーブルで定義される。
【0037】
このように、着眼点特定部152は、着眼点特定テーブルを参照することで、論理化済み対象情報について、ベテランの薬剤師等が辿る思考過程に対応した各着眼点の関連性を特定することができる。
【0038】
提示情報評価部153は、着眼点特定部152によって特定された各着眼点の関連性に基づいて、提示対象情報(ここでは服薬指導文)の評価を行う。例えば、提示情報評価部153は、各服薬指導文に対して、その服薬指導文が関連する各着眼点の関連性を示す数値によって重み付けを行い、着眼点と関連付けられた服薬指導文の評価値を決定する。このように評価値が決定された服薬指導文は、推奨服薬指導文一覧に属するものとなる。なお、各薬剤において、服薬指導文の重みを設定しておき、この重みに対して、各着眼点の関連性を示す数値を反映させて服薬指導文の評価値を決定することとしてもよい。
【0039】
また、提示情報評価部153は、非論理化済み対象情報に基づいて、提示対象情報の評価を行う。例えば、非論理化済み対象情報が関連する提示対象情報については、同一の評価値を一律に付与することができる。一例として、処方箋に記載されている薬剤に関連する服薬指導文は、全てに対して同一の評価値を付与すること等が可能である。このように評価値が決定された服薬指導文は、一般服薬指導文一覧に属するものとなる。
【0040】
支援情報生成部154は、着眼点特定部152によって特定された各着眼点の関連性のデータを取得する。また、支援情報生成部154は、提示情報評価部153によって決定された提示対象情報の評価に基づいて、薬剤DB174から服薬指導文(提示対象情報)を取得する。即ち、支援情報生成部154は、着眼点の関連性に基づいて評価された服薬指導文を取得し、評価値の高いものから順に並べることにより、推奨服薬指導文一覧のデータを生成する。また、支援情報生成部154は、提示情報評価部153において、非論理化済み対象情報に基づいて評価された服薬指導文を取得し、所定の順に並べることにより、一般服薬指導文一覧のデータを生成する。なお、所定の順としては、種々の形態とすることができるが、一例として、参照頻度の高い順とすることができる。そして、支援情報生成部154は、各着眼点の関連性のデータと、推奨服薬指導文一覧のデータと、一般服薬指導文一覧のデータとを含む支援情報を生成し、支援情報提供部155に出力する。
【0041】
支援情報提供部155は、支援情報生成部154から入力された支援情報(各着眼点の関連性のデータと、推奨服薬指導文一覧のデータと、一般服薬指導文一覧のデータとを含む情報)を端末装置10に送信(ネットワークを介して端末装置10に出力)する。
【0042】
[動作]
次に、支援情報提供システム1の動作を説明する。
【0043】
[端末装置10の処理]
図11は、端末装置10が実行する支援情報提供処理(端末側)の流れを示すフローチャートである。
支援情報提供処理(端末側)は、端末装置10の入力部815を介して支援情報提供処理(端末側)の実行が指示入力されることに対応して開始される。
ステップS1において、UI表示制御部51は、患者選択画面を表示し、患者の選択を受け付ける。
ステップS2において、UI表示制御部51は、選択された患者に応じた問診表示画面を表示する。
【0044】
ステップS3において、UI表示制御部51は、問診に対する回答の入力を受け付ける。
ステップS4において、対象情報取得部52は、服薬指導を行う患者について、考慮の対象となる各種情報(考慮対象情報)を取得する。
ステップS5において、支援依頼部53は、対象情報取得部52が取得した考慮対象情報と共に、支援情報の提供依頼を薬局用コンピュータ20に送信する。
ステップS6において、支援情報取得部54は、支援依頼部53によって送信された支援情報の提供依頼に応じて薬局用コンピュータ20から送信される支援情報を取得する。
【0045】
ステップS7において、UI表示制御部51は、取得した支援情報に基づいて、支援情報表示画面を表示する。
ステップS8において、UI表示制御部51は、支援情報表示画面に対する操作が行われたか否かの判定を行う。
このとき、UI表示制御部51は、支援情報表示画面のページを変化させる操作(着眼点を表示するページと服薬指導文を表示するページの切り替え操作等)や、着眼点の関連性を表す数値を薬剤師の判断で変化させる操作(関連性をより高めるために数値を増加させる操作等)等を受け付ける。
支援情報表示画面に対する操作が行われた場合、ステップS8においてYESと判定されて、処理はステップS7に移行する。
一方、支援情報表示画面に対する操作が行われていない場合、ステップS8においてNOと判定されて、処理はステップS9に移行する。
【0046】
ステップS9において、UI表示制御部51は、支援情報表示画面の表示を終了させる操作が行われたか否かの判定を行う。
支援情報表示画面の表示を終了させる操作が行われていない場合、ステップS9においてNOと判定されて、処理はステップS8に移行する。
一方、支援情報表示画面の表示を終了させる操作が行われた場合、ステップS9においてYESと判定されて、支援情報提供処理(端末側)は終了する。
【0047】
[薬局用コンピュータ20の処理]
図12は、薬局用コンピュータ20が実行する支援情報提供処理(サーバ側)の流れを示すフローチャートである。
支援情報提供処理(サーバ側)は、薬局用コンピュータ20の入力部815を介して支援情報提供処理(サーバ側)の実行が指示入力されることに対応して開始される。
【0048】
ステップS21において、支援依頼受付部151は、端末装置10から考慮対象情報と共に支援情報の提供依頼を受信し、受信した考慮対象情報を着眼点特定部152に出力する。
ステップS22において、着眼点特定部152は、着眼点特定テーブルを参照し、論理化済み対象情報から各着眼点の関連性のデータを取得する。
【0049】
ステップS23において、提示情報評価部153は、提示対象情報の評価を行う。具体的には、提示情報評価部153は、着眼点特定部152によって特定された各着眼点の関連性に基づいて、提示対象情報(服薬指導文)の評価を行う。また、提示情報評価部153は、非論理化済み対象情報に基づいて、提示対象情報(服薬指導文)の評価を行う。
ステップS24において、支援情報生成部154は、各着眼点の関連性のデータと、推奨服薬指導文一覧のデータと、一般服薬指導文一覧のデータとに基づいて、支援情報を生成する。
【0050】
ステップS25において、支援情報提供部155は、支援情報生成部154から入力された支援情報を端末装置10に送信する。
ステップS25の後、支援情報提供処理(サーバ側)が繰り返される。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る支援情報提供システム1では、服薬指導を行う患者について、処方箋を持参した患者の氏名、年齢等、患者を特定するための情報、問診表示画面に対して薬剤師が入力した問診結果のデータ、患者が持参した処方箋の内容を表すデータ等、考慮の対象となる各種考慮対象情報が取得される。そして、着眼点特定テーブルを参照することで、考慮対象情報のうち、論理化済み対象情報に対応する各着眼点の関連性が一意に特定される。さらに、特定された各着眼点の関連性に応じて、服薬指導文の評価値が決定され、推奨服薬指導文一覧が生成される。また、考慮対象情報のうち、非論理化済み対象情報に基づいて、服薬指導文の評価値が決定され、一般服薬指導文一覧が生成される。そして、各着眼点の関連性のデータ、推奨服薬指導文一覧のデータ、及び、一般服薬指導文一覧のデータを含む支援情報が提供される。
【0052】
そのため、薬剤師が服薬指導を行う上で考慮すべき情報のうち、少なくとも一部に対応する服薬指導の推奨情報を提供することができる。このとき提供される推奨情報は、一般に薬剤師(特にベテランの薬剤師)が辿る思考過程を反映したものとなっている。
したがって、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
【0053】
また、考慮対象情報が多岐にわたる場合であっても、論理化済み対象情報に限定して各着眼点を特定することができる。
そのため、取得された考慮対象情報に応じた各着眼点の関連性を確実に提供することが可能となる。
【0054】
また、このとき表示される着眼点は、一般に薬剤師(特にベテランの薬剤師)が服薬指導を行う場合に辿る思考過程で想起しているカテゴリを表している。即ち、各着眼点は、多岐にわたる具体的な考慮対象情報を抽象化した指標となっている。
そのため、薬剤師が服薬指導における判断を行う上で、複雑で具体的な情報から直接的に結論を判断させるのではなく、思考過程における中間の状態を示唆することで、最終的な結論をより適切に判断することを支援するものとなる。
【0055】
なお、上述の実施形態においては、考慮対象情報から推奨服薬指導文一覧を提示する間に、考慮対象情報を抽象化した指標として、薬剤師の思考過程における中間の状態を一階層(着眼点の階層)のみ示すものとしたが、これに限られない。即ち、考慮対象情報から推奨服薬指導文一覧を提示する間に、考慮対象情報を抽象化した指標として、2階層以上(考慮対象情報を抽象化した第1階層の着眼点、第1階層の着眼点を抽象化した第2階層の着眼点等)を示すことが可能である。この場合、抽象化の階層が進むごとに、指標の数(カテゴリ数)を減少させて示すこととなる。
これにより、薬剤師の思考過程をより適切な段階に区切って着眼点を示すことが可能となる。
【0056】
また、上述の実施形態において、着眼点特定部152は、着眼点特定テーブルを用いて着眼点の関連性を特定するものとしたが、これに限られない。即ち、着眼点特定部152は、着眼点特定テーブルを用いて着眼点の関連性を特定することの他、着眼点特定テーブルの機能に相当する関数や論理演算等を用いることで、考慮対象情報に対する着眼点の関連性を特定することとしてもよい。
【0057】
[変形例1]
上述の実施形態において、
図6に示す支援情報表示画面が表示された後、表示された着眼点のいずれかを選択する操作が行われた場合に、選択された着眼点に関する具体的な情報をさらに表示することとしてもよい。
図13は、着眼点として副作用が選択された場合に表示される遷移画面の一例を示す模式図である。
図13に示す遷移画面例では、人体のイメージを表す模式図と、人体の模式図の周囲に配置された身体の要素(臓器)の名称とが表示されている。ここで表示される身体の要素の名称は、副作用が表れる可能性のある身体の要素であり、薬剤師が患者に対して指導を行う際の補助的な情報となり得るものである。
【0058】
また、
図13に示す遷移画面例では、副作用に関連する可能性がある薬剤及びその副作用の一覧表が表示されている。この一覧表には、患者に対する指導が初回の場合には、一般的な判断基準から指導することが推奨される副作用が表示される。また、この一覧表の各副作用の欄には、薬剤師が説明を行ったか否かを入力するためのスライドボタンがそれぞれ表示されている。薬剤師は、一覧表示された副作用の中で、患者に対する説明が必要と判断した副作用について患者に説明し、スライドボタンを「説明済み」であることを表す位置(
図13においては右側)に設定する。そして、薬剤師が「上記の副作用を指導」ボタンを操作すると、副作用の指導内容を表す表示画面(
図16参照)に移行する。
このとき「説明済み」に設定された副作用については、薬歴において、薬剤師が患者に対して指導を行ったものとして記憶される。
図13に示す一覧表には、表示された副作用について前回の指導時に患者に対して指導を行ったか否かを表す前回指導欄が含まれている。
【0059】
さらに、
図13に示す一覧表には、患者に対する指導が2回目以降の場合には、前回の指導内容に基づいて指導することが推奨される副作用が表示される。即ち、患者に対して行われた前回の指導時に、薬剤師が次回指導を行うべき副作用(着眼点)を記録していた場合、記録されていた副作用が
図13における一覧表に含めて表示される。これにより、前回の指導を行った薬剤師と異なる薬剤師が今回の指導を行う場合等でも、重要な指導内容を確実に引き継ぐことができる。
【0060】
図14は、副作用の推論機能を呼び出す操作が行われた場合に表示される遷移画面の一例を示す模式図である。
図14に示す遷移画面例では、副作用の要素となる身体の部位(実線で示す六角形)及び症状(破線で示す六角形)が一覧表示されており、これらの副作用の要素の1つまたは複数が選択可能となっている。
そして、
図14に示す遷移画面例において、患者の問診結果に応じて薬剤師が1つまたは複数の副作用の要素を選択し、副作用の推論を実行するための「副作用を回答」ボタンを操作すると、患者に処方された薬剤が有する副作用のうち、患者の問診結果から関連すると推論された副作用が特定される。
【0061】
このとき用いられる推論の方法としては、副作用の要素の全ての組み合わせに対して関連する副作用をテーブル形式等で対応付けしておき、薬剤師が選択した1つまたは複数の副作用の要素に対応する副作用を推論結果として特定することが可能である。また、患者の問診結果に対応する1つまたは複数の副作用の要素を入力とし、それに対応する副作用が出力とされた教師データを用いて機械学習を行い、AI(Artificial Inteligence)による推論を行うことも可能である。この場合、実際の患者の問診結果に応じて薬剤師が選択した1つまたは複数の副作用の要素に対応する副作用を、機械学習の結果に基づいてAIが推論する。
【0062】
図15は、副作用の推論結果表示画面の一例を示す模式図である。
図15に示す推論結果表示画面例では、薬剤師が選択した「だるい」という副作用の要素に対して、関連すると推定された薬剤A錠及びB錠の副作用が一覧表示されている。
薬剤師は、一覧表示された各薬剤の副作用を参照して、患者の問診結果に基づく副作用を判断することができる。
また、これら副作用の一覧表示において、各副作用の欄には、薬剤師が説明を行ったか否かを入力するためのスライドボタンがそれぞれ表示されている。薬剤師は、一覧表示された副作用の中で、患者に対する説明が必要と判断した副作用について患者に説明し、スライドボタンを「説明済み」であることを表す位置(
図15においては右側)に設定する。
【0063】
図15においてスライドボタンを「説明済み」に設定し、「次へ」ボタンを操作すると、「説明済み」に設定した副作用について患者に指導(説明)を行ったことが、薬歴として記憶される。
なお、
図15に示す推論結果表示画面例では、疑義照会を行うための「疑義照会」ボタンが表示されている。薬剤師は、推論結果表示画面に表示された副作用の一覧表示を参照し、医師に対して疑義照会を行う必要があると判断した場合、「疑義照会」ボタンを操作することができる。すると、疑義照会の内容を入力するための入力画面が表示され、薬剤師は疑義照会の内容を入力することが可能となる。この入力画面に入力された疑義照会の内容は、薬歴として記憶される。
【0064】
図16は、副作用の指導内容を表す表示画面の一例を示す模式図である。
上述したように、
図15において患者に対する指導を行った薬剤A及び薬剤Bの副作用のスライドボタンを「説明済み」に設定し、「次へ」ボタンを操作すると、
図16に示すように、薬剤と、その薬剤における説明済みの副作用の指導内容とが対応付けて表示される。また、
図16において、薬剤師がこの表示内容(指導内容)を薬歴に記憶させるボタン(「薬歴へ送信」ボタン)を操作すると、患者に対する指導内容が薬歴に記憶される。
なお、
図16の表示画面では、薬剤師が次回指導を行うべき副作用を入力するための操作(次回指導内容の入力操作)を行うことが可能であり、薬剤師による確定操作(「薬歴へ送信」ボタンの操作等)によって、入力された内容を薬歴に記録しておくことができる。
【0065】
このような表示形態とすることにより、薬剤師が
図13の遷移画面に一覧表示された副作用以外を参照したいと考えた場合等には、「副作用を推論」ボタンを操作することで、
図14の遷移画面を表示することができる。そして、
図14の遷移画面において表示される副作用の要素を選択し、「副作用を回答」ボタンを操作すると、
図15に示すように、患者に処方された薬剤が有する副作用のうち、患者の問診結果から関連すると推論された副作用を表示することができる。これにより、薬剤師は、患者が提示する情報を基に、患者に処方された薬剤が関連する可能性がある副作用を適切に把握することができる。
そして、薬剤師は、
図15に示す推論結果表示画面を参照し、患者に対して指導を行うことが適切であると判断される副作用について説明を行うことができる。このとき、薬剤師は、説明を行った副作用について、スライドボタンを「説明済み」に設定し、「薬歴へ送信」ボタンを操作することで、患者に対して行った指導内容を薬歴に記憶することができる。これにより、薬剤師が患者に対して行った指導内容を薬歴に記録する作業負担を軽減することができる。
【0066】
[変形例2]
上述の実施形態においては、クライアント-サーバ型の支援情報提供システム1を構築し、端末装置10から薬局用コンピュータ20に支援情報の提供依頼を行って、支援情報を取得するものとした。
これに対し、薬局用コンピュータ20の機能を端末装置10に備えることにより、支援情報提供システム1の機能を単体の情報処理装置で実現(即ち、スタンドアローン型のシステムとして実現)することとしてもよい。
この場合、薬局用コンピュータ20の着眼点特定部152、提示情報評価部153及び支援情報生成部154の機能を端末装置10に備えることとすればよい。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る支援情報提供システム1は、端末装置10と、薬局用コンピュータ20とを備えている。
端末装置10と薬局用コンピュータ20とは、ネットワークを介して通信可能に構成されている。
端末装置10は、UI表示制御部51と、対象情報取得部52と、支援依頼部53と、を備え、薬局用コンピュータ20は、着眼点特定部152と、支援情報生成部154と、支援情報提供部155と、を備えている。
端末装置10において、対象情報取得部52は、患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となる対象情報を取得する。
支援依頼部53は、対象情報に基づいて、薬学的な指導のための支援情報の生成を薬局用コンピュータ20に依頼する。
UI表示制御部51は、支援依頼部53による依頼に応じて、薬局用コンピュータ20から送信された薬学的な指導のための支援情報を表示する。
薬局用コンピュータ20において、
着眼点特定部152は、支援依頼部53の依頼に応じて、対象情報に基づいて支援情報を生成する過程で特定される情報であって、異なる分類を表す着眼点情報を取得する。
支援情報生成部154は、着眼点情報に基づいて、支援情報を生成する。
支援情報提供部155は、支援情報生成部154によって生成された支援情報を端末装置10に送信する。
これにより、薬剤師が薬学的な指導を行う上で考慮すべき情報に対応する薬学的な指導の支援情報を提供することができる。
したがって、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
【0068】
支援情報生成部154によって生成される支援情報には、対象情報に対応する着眼点情報が含まれる。
これにより、薬剤師は、どのような観点に注意して薬学的な指導を行うことが適切であるかを容易に認識することができる。
【0069】
対象情報取得部52は、調剤の対象となる患者に対する問診結果を含む対象情報を取得する。
着眼点特定部152は、薬剤の服用における異なる指導の観点を複数の着眼点情報として取得する。
支援情報生成部154は、取得された複数の着眼点情報に応じて、複数の服薬指導に関する情報から支援情報を生成する。
これにより、薬剤師は、問診に回答した患者について、どのような観点に注意して服薬指導を行うことが適切であるかを容易に認識することができる。
【0070】
着眼点特定部152は、対象情報の組み合わせと、複数の着眼点情報の特定内容とが予め対応付けられた着眼点特定情報を参照することにより、対象情報取得部52によって取得された対象情報に対応する着眼点情報を取得する。
これにより、対象情報の各種組み合わせに対して、着眼点情報を確実に取得することができる。また、着眼点特定情報における定義を変更することで、取得される着眼点情報の内容を調整することができる。
【0071】
着眼点特定部152は、対象情報を抽象化した複数の第1の着眼点情報と、第1の着眼点情報を抽象化した第2の着眼点情報とを含む複数階層の着眼点情報を生成する。
これにより、対象情報から薬学的な指導内容を思考する際に行われる抽象化の過程をより適切な段階に区切って、着眼点を示すことが可能となる。
【0072】
また、本実施形態に係る端末装置10及び薬局用コンピュータ20は、着眼点特定部152と、支援情報生成部154と、UI表示制御部51または支援情報提供部155と、を備えている。
着眼点特定部152は、患者に対する薬学的な指導において考慮の対象となる対象情報に基づいて、薬学的な指導のための支援情報を生成する過程で特定される情報であって、異なる分類を表す着眼点情報を取得する。
支援情報生成部154は、着眼点情報に基づいて、前記支援情報を生成する。
UI表示制御部51または支援情報提供部155は、支援情報生成部154によって生成された薬学的な指導のための支援情報を出力する。
これにより、薬剤師が薬学的な指導を行う上で考慮すべき情報に対応する薬学的な指導の支援情報を提供することができる。
したがって、薬剤師の業務をより適切に支援することが可能となる。
【0073】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態においては、提示対象情報として服薬指導文のリストを提示する場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。即ち、本発明において支援情報として提示する対象には、各種医療情報が含まれる。
【0074】
また、上述の実施形態において、患者に対して問診を行った後、薬剤師が調剤を行っている間、患者は待ち時間となるため、この待ち時間の間に、問診結果から特定される簡易な生活指導の情報等を患者に提示(例えば、患者のスマートフォン等に表示)することとしてもよい。
さらに、上述の実施形態において、患者に対する問診を行うための問診表示画面や、薬剤師によって内容が確定された後の服薬指導文の一覧(患者用の推奨服薬指導文一覧及び一般服薬指導文一覧)の表示画面を患者自身が所持する装置(例えば、患者のスマートフォン等)に表示することとしてもよい。さらに、薬剤師によって内容が確定された後の各着眼点についても、患者用の着眼点の情報として、患者自身が所持する装置(例えば、患者のスマートフォン等)に表示することとしてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態において、
図6に示すように、各着眼点を円環状のグラフとして示すものとして説明したが、各着眼点の出力形態は、これに限られない。例えば、各着眼点の関連性を表す数値をレーダーチャートとして出力することが可能である。この場合、過去の服薬指導時における各着眼点との変化を表示すること等が容易となる。
【0076】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、上述の実施形態における機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が支援情報提供システム1を構成するいずれかのコンピュータに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に示した例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0077】
また、上述した一連の処理を実行するためのプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0079】
1 支援情報提供システム、10 端末装置、20 薬局用コンピュータ、51 ユーザインターフェース表示制御部(UI表示制御部)、52 対象情報取得部、53 支援依頼部、54 支援情報取得部、151 支援依頼受付部、152 着眼点特定部、153 提示情報評価部、154 支援情報生成部、155 支援情報提供部、171 患者属性データベース(患者属性DB)、172 薬歴データベース(薬歴DB)、173 問診結果データベース(問診結果DB)、174 薬剤データベース(薬剤DB)、800 情報処理装置、811 CPU、812 ROM、813 RAM、814 バス、815 入力部、816 出力部、817 記憶部、818 通信部、819 ドライブ、820 撮像部、831 リムーバブルメディア