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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】側枝治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/40 20170101AFI20240216BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61C5/40
A61C19/04 A
A61C19/04 B
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023067394
(22)【出願日】2023-04-17
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】591065697
【氏名又は名称】藤栄電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】山中 通三
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-515398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0049856(US,A1)
【文献】特表2005-527306(JP,A)
【文献】特表2001-514921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/40
A61C 19/04
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の根管内に挿入する根管内電極と、前記被験者の身体に直接または間接的に接続される対向電極と、を有し、前記根管内電極と前記対向電極との電極間に通電回路を接続して、前記根管内にある側枝を治療する側枝治療装置であって、
前記根管内電極には、当該根管内電極から根尖方向に流れる電流を阻止する根尖保護材料を前記根管内に注入するための根尖保護材料注入路を設けた、
側枝治療装置。
【請求項2】
前記根管内電極には、軸方向に移動可能に固定されて、歯牙に接触することで、前記根管内電極の移動を規制するストッパを設けた、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項3】
前記通電回路は、高周波電流発生回路を含む、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項4】
前記通電回路は、根管長測定回路を含む、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項5】
前記通電回路は、側枝位置検出回路を含む、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項6】
前記通電回路は、回路切換手段を備え、
前記回路切換手段は、複数の回路のうちの任意の一つの回路が前記電極間に接続されるように切り換える、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項7】
前記通電回路は、高周波電流発生回路と、根管長測定回路と、側枝位置検出回路と、回路切換手段と、を備え、
前記回路切換手段は、前記高周波電流発生回路と、前記根管長測定回路と、前記側枝位置検出回路とのうちの一つの回路が前記電極間に接続されるように切り換える、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項8】
前記根管内に注入された前記根尖保護材料の上層に、側枝開口部を満たすように通電液を注入するための通電液注入路が前記根管内電極の内部または外部に沿って設けられ、
前記根尖保護材料注入路及び前記通電液注入路の少なくともいずれかに液体を供給する注入手段をさらに設けた、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項9】
前記通電液注入路は、前記根尖保護材料注入路と一体に設けられている、
請求項8に記載の側枝治療装置。
【請求項10】
前記対向電極は、前記被験者を接地するようにアース接続された椅子に設けられ、
前記根管内電極は、当該根管内電極とアース間に前記通電回路を接続して、前記根管内にある側枝を治療する側枝治療装置である、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項11】
前記注入手段には、前記根管内に注入された液体を吸引可能な吸引路を、さらに設けた、
請求項8に記載の側枝治療装置。
【請求項12】
前記根尖保護材料注入路と、前記通電液注入路と、前記吸引路とは、いずれか2つ、または、いずれも同心円状に配置されている、
請求項11に記載の側枝治療装置。
【請求項13】
前記根管内電極は、導電性樹脂材料から成る棒材またはチューブ材、あるいは、樹脂製の棒材または樹脂製のチューブ材から成ると共に、当該根管内電極の外皮を導電メッキ、または、導電塗装して形成されている、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項14】
前記注入手段は、前記根尖保護材料を前記根尖保護材料注入路に注入するための根尖保護材料注入手段、および/または、前記通電液を前記通電液注入路に注入するための通電液注入手段を備え、
前記根尖保護材料注入手段と前記通電液注入手段との少なくとも1つは、前記根管内電極と一体構造になっている、
請求項8に記載の側枝治療装置。
【請求項15】
前記注入手段には、注入量の確認が可能な目盛がある、
請求項8に記載の側枝治療装置。
【請求項16】
前記通電液の比重は、同一温度において、前記根尖保護材料と比較して小さい、
請求項8に記載の側枝治療装置。
【請求項17】
前記通電液は、電解質溶液であり、
前記根尖保護材料は、非電解質溶液である、
請求項8に記載の側枝治療装置。
【請求項18】
前記根管内電極を、アングル形状のハンドピースの先端部に設けた、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項19】
前記根管内を洗浄するための洗浄液を、前記根尖保護材料注入路または通電液注入路に注入可能とした、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項20】
前記根尖保護材料の供給の制御と、前記根管内の上層に注入される通電液の供給の制御と、前記根管内を洗浄するための洗浄液の供給の制御と、前記回路切換手段の切り換えの制御と、口腔内の液体を吸引する吸引の制御の少なくとも一つの制御を行う側枝治療装置制御回路を有する、
請求項7に記載の側枝治療装置。
【請求項21】
前記根尖保護材料は、絶縁油である、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【請求項22】
前記根尖保護材料は、粘性を有する液体と、凝固化を促進する凝固成分と、を含有している液体である、
請求項1に記載の側枝治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙の根管内から歯根膜腔に延びる側枝を治療するための側枝治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯牙の根管治療を行う際には、診療過程において、術者が根管治療を施しても患者の痛みが治まらないときがしばしばある。病巣が根尖だけでなく、根管の側面に有る場合は、側枝を意識して治療を行わなければ症状の改善が期待できないケースがある。
【0003】
根管から歯根膜腔に伸びる側枝を治療するためには、側枝の有無を検出し、さらには、側枝の位置を検出することが必要である。このため、側枝の検出のためには、従来、複雑な作業を必要としていた。
【0004】
側枝の有無を検出する場合は、術者が長年積み重ねた技量により側枝位置を予測し、レントゲン映像において予測した位置付近の画像を見て側枝の有無を判断していた。
【0005】
近年、特許文献1に記載されているように、根管から歯根膜腔に伸びる側枝の位置を検出するための側枝検出装置が開発されている。しかし、側枝を治療するには、根管を治療するのと同様に、感染した歯髄を取り除かなければならない。炎症を起こした歯髄を取り除く治療を抜髄と呼ぶ(あるいは、歯の神経を抜くとも呼ぶ)。側枝を治療する場合は、側枝においても、抜髄を行う必要がある。
【0006】
抜髄を行う場合は、一般に、通常ファイルやリーマという器具を使って歯髄を除去して掃除をする。また、抜髄を行うための装置としては、根管に挿入した第1の電極と、患者の身体に取り付けた第2の電極との間に高周波電流を流して歯髄を焼灼する装置もある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
このように、歯髄を治療する場合は、感染した歯髄を取り除いたり、焼灼して抜髄したりした後、根管内を薬品で洗浄し、再感染しないように隙間無く詰め物をし、根管治療完了後に歯冠修復処置を行って治療を完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5058713号公報
【文献】特許第4041165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
側枝の歯髄を取り除く作業は、特許文献1に記載の側枝検出装置等によって側枝の位置が検出できても、側枝が根尖方向とは異なる根管の周囲側方に存在するので、ファイルを使って取り除くことは難しい。このため、先端が曲がったファイルを使っても、限られた根管径内で掻き出すことは困難であった。
【0010】
また、特許文献2に記載されているような高周波電流を使って側枝の歯髄を焼灼する装置は、根尖方向の抜髄を終えた後、側枝位置に電極を合わせて高周波電流を通電している。しかし、このような装置では、側枝方向だけではなく、根尖方向にも通電させるので、根尖部に炎症を起こす原因となるという問題点があった。
このため、根尖近傍は、臨床上熱損傷を与えたくない軟組織が存在するので、その部分に高周波電流を流さないようにする必要があった。
【0011】
そこで、本発明は、根管から根尖方向に流れる電流を阻止して、根尖に影響を与えずに側枝の位置の検出や、側枝の治療を行えるようにした側枝治療装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、被験者の根管内に挿入する根管内電極と、前記被験者の身体に直接または間接的に接続される対向電極と、を有し、前記根管内電極と前記対向電極との電極間に通電回路を接続して、前記根管内にある側枝を治療する側枝治療装置であって、前記根管内電極には、当該根管内電極から根尖方向に流れる電流を阻止する根尖保護材料を前記根管内に注入するための根尖保護材料注入路を設けた。
ここで、「被験者の身体に直接または間接的に接続」とは、歯肉、口唇、口腔表面に接触するクリップ、口角に配置された排唾管、被験者の手などが握るグリップ、皮膚に張り付ける対極板等が含まれる他、被験者が着座する座席(診察台)等にアース接続する場合も含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、根管から根尖方向に流れる電流を阻止して、根尖に影響を与えずに側枝の位置の検出や、側枝の治療を行えるようにした側枝治療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の一例を示す説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の根管内電極を示す図であり、(a)は、図1に示す根管内電極の要部拡大概略縦断面図、(b)は、外部に根尖保護材料注入路を有する根管内電極の第2変形例を示す縦断面図、(c)は、外部の一部に根尖保護材料注入路を有する根管内電極の第3変形例を示す縦断面図である。
図3A】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段を示す図であり、ストッパを設けた根管内電極を示す説明図である。
図3B】(a)は、図3AのIIIBa-IIIBa拡大断面図、(b)は、図3B(a)のIIIBb-IIIBb拡大断面図である。
図3C】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段の第1変形例を示す図であり、(a)は、外部に根尖保護材料注入路を有する根管内電極に設けたストッパの取り付け状態を示す要部拡大横断面図、(b)は、図3C(a)のIIICb-IIICb拡大断面図である。
図4A】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段の第2変形例を示す図であり、注入手段に根尖保護材料と通電液とを注入した状態を示す要部概略断面図である。
図4B】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段の第2変形例を示す図であり、注入手段によって根管内に根尖保護材料と通電液とを注入した状態を示す説明図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段の第3変形例を示す図であり、注入手段を示す要部概略断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段の第4変形例を示す図であり、注入手段を示す要部概略断面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段の第5変形例を示す図であり、注入手段を示す要部概略断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段の第6変形例を示す図であり、注入手段を示す要部概略断面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の第7変形例を示す図であり、注入手段によって根管内に注入される液体を示す要部概略断面図である。
図10A】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段の第8変形例を示す図であり、収容部を開閉する開閉蓋が閉弁状態の注入手段を示す要部概略断面図である。
図10B】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の注入手段の第8変形例を示す図であり、貯留部を開閉する開閉蓋が開弁状態の注入手段を示す要部概略断面図である。
図11】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の通電回路の第1変形例を示す図であり、通電回路を高周波電流発生回路とした場合の側枝治療装置の概略図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の通電回路の第2変形例を示す図であり、通電回路を根管長測定回路とした場合の側枝治療装置の概略図である。
図13】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の通電回路の第3変形例を示す図であり、通電回路を側枝位置検出回路とした場合の側枝治療装置の概略図である。
図14】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の通電回路の第4変形例を示す図であり、複数の通電回路のうちの任意の一つの回路に切り換える回路切換手段を備えた側枝治療装置を示す説明図である。
図15A】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の対向電極の第1変形例を示す図であり、対向電極を被験者の身体に張り付けた対極板とした場合の側枝治療装置の概略図である。
図15B】本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置の対向電極の第2変形例を示す図であり、対向電極をアース接続された椅子とした場合の側枝治療装置の概略図である。
図16】本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置の一例を示す説明図である。
図17図16のA部拡大概略断面図である。
図18図16のB部拡大概略断面図である。
図19図18のXVIII-XVIII拡大断面図である。
図20】本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置の変形例を示す図であり、接続部の要部拡大断面図である。
図21】本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置の変形例を示す図であり、根管内電極の要部拡大断面図である。
図22】本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置の変形例を示す図であり、チューブの要部拡大断面図である。
図23】本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置の変形例を示す図であり、側枝治療装置のブロック図である。
図24】本発明の第3実施形態に係る側枝治療装置の一例を示す説明図である。
図25】本発明の第4実施形態に係る側枝治療装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
まず、図1及び図2(a)を参照して、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1を説明する。
なお、第1実施形態では、図1に示す側枝治療装置1において、注入手段2側を前方向、通電回路4側を後方向、被検査歯a側を下方向として説明する。また、以下の説明において、同一の構成のものは、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0016】
≪側枝治療装置≫
図1は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の一例を示す説明図である。
図1に示すように、側枝治療装置1は、被検査歯a(歯牙)の根管bから歯根膜腔hに延びた側枝eを治療するための装置である。側枝治療装置1は、根尖保護材料APを根管b内に注入手段2によって注入する注入タイプの治療装置である。側枝治療装置1は、注入手段2と、根管内電極3と、通電回路4と、対向電極5と、を有している。
【0017】
≪根管内電極≫
図2(a)は、図1に示す根管内電極3の要部拡大概略縦断面図である。
図1に示すように、根管内電極3は、当該根管内電極3とアース間に通電回路4を接続して、根管b内にある側枝eを検出したり、側枝eを治療したりする際に使用される側枝治療機の電極である。根管内電極3は、被験者M(図15A参照)の根管b内に挿入される細長い略棒状の金属から成る。根管内電極3には、根管内電極3の軸線に沿って根管bの内部に、根尖保護材料APを注入するための管状の根尖保護材料注入路27(図2(a)参照)が設けられている。根管内電極3の先端直の径は、0.1mm~2mmであり、好ましくは、0.2mmである。根管内電極3の導電材料は、曲がった根管b内であっても柔軟に対応可能な柔軟性を有するものが好ましく、例えば、ステンレススチール、ニッケルチタン、タングステン等の導電性金属から成る。
【0018】
≪根尖保護材料≫
根尖保護材料APは、根管内電極3から根尖i方向に流れる電流を阻止して根尖iを電流から保護するための液体等である。根尖保護材料APは、高周波電流から根尖を保護する材料であれば液体に限らず、ゲル状の材料や、顆粒状の材料(例えば、セラミックの顆粒)でもよい。
【0019】
≪通電回路≫
図1に示すように、通電回路4は、根管内電極3に所定の電流を供給する装置である。第一実施形態では、通電回路4は、例えば、根管b内にある側枝eを検出するために、1つまたは複数の異なる周波数の測定用信号を出力する側枝位置検出回路の機能を備えている。なお、通電回路4の他の具体例については後に詳しく説明する。通電回路4は、根管内電極3と対向電極5との電極間に接続されている。
【0020】
≪対向電極≫
図1に示すように、対向電極5は、被験者M(図15A参照)の身体に直接または間接的に接続される電気接続用端子である。対向電極5は、例えば、歯肉dに取り付けられて通電回路4に接続された対極板から成る。
なお、対向電極5は、歯肉dに貼り付けて使用する対極板に限定されない。対向電極5は、例えば、口角クリップ等から成る電気接続用端子を歯肉dに掛けたり、ワニクリップを人体に着脱自在に接続したり、被験者M(図15A参照)が握り易い形状に形成した電極を被験者M(図15A参照)の手で握ってもらうことで、人体に接続してもよい。つまり、対向電極5の接触位置は、口腔内表面の歯肉dに限定されず、被験者M(図15A参照)の身体の一部であればよい。
【0021】
≪注入手段≫
図1に示すように、注入手段2は、根尖保護材料AP等の液体を被験者M(図15A参照)の根管b内に注入するための装置である。注入手段2は、例えば、根尖保護材料APを根管bに注入するピストン・シリンダ型のものから成る。注入手段2は、注入手段本体24と、貯留部25と、ピストン26と、根尖保護材料注入路27と、を備えて構成されている。このため、注入手段2は、ピストン26を貯留部25に対して押し込めば、貯留部25内の液体を押し出す供給装置の機能を果たす。また、注入手段2は、ピストン26を貯留部25に対して引き上げることで、貯留部25内の液体を吸い上げる吸入装置としての機能を果たす。
【0022】
注入手段本体24は、貯留部25を覆うように形成された略箱状のハウジングから成る。
貯留部25は、根尖保護材料APを貯留するためのシリンダ形状(中空円筒形状)の貯留槽である。
【0023】
ピストン26は、貯留部25内の根尖保護材料APを根尖保護材料注入路27内に押し出すための部材である。ピストン26は、貯留部25内に摺動自在に配置された円筒形状のピストン部26aと、ピストン部26aの上側に連結されたピストンロッド26bと、ピストンロッド26bの上端に設けられた把手26cと、を備えて成る。
【0024】
根尖保護材料注入路27は、貯留部25内に貯留された根尖保護材料APを被検査歯a内の根管b内に注入するための注入路である。根尖保護材料注入路27は、基端部(上端部)を貯留部25の底部に連結させた管から成る。根尖保護材料注入路27は、図2(a)に示すように、根管内電極3を構成する導電体から成る細い管によって構成されている。
【0025】
≪第1実施形態の作用≫
次に、図1を参照して本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の作用を作業工程順に沿って説明する。
【0026】
図1に示すように、まず、ファイル等の器具を使って根管b内の根尖孔cまでの感染した歯髄を除去する(抜髄工程)。
次に、根管拡大モータやリーマを使って根管b内を切削して拡大させ、根管b内に根尖保護材料APを充填し易くするために、根管bの形状を整える(根管拡大工程)。
続いて、根管b内に薬品を注入して根管b内を洗浄する(根管洗浄工程)。
【0027】
次に、根管b内に根尖保護材料APを注入する(根尖保護材料注入工程)。続いて、根管b内に根管内電極3を挿入して、通電回路4から根管内電極3に所定の周波数の測定用信号を出力する。通電回路4は、根管内電極3の先端部に流れる電流値のピークを検出したときの根管内電極3の先端部の位置から、側枝eの位置を検出することができる(側枝検出工程)。
【0028】
このとき、根管b内には、根尖保護材料APが注入されている。このため、根尖保護材料APは、側枝検出時に、根管bから根尖i方向に流れる電流を阻止して、根尖iに電流による影響を与えないようにすることができる。そして、根管b内に側枝eがある場合は、側枝eの治療を行う(側枝治療工程)。
【0029】
このように、本発明は、図1に示すように、被験者M(図15A参照)の根管b内に挿入する根管内電極3と、被験者M(図15A参照)の身体に直接または間接的に接続される対向電極5と、を有し、根管内電極3と対向電極5との電極間に通電回路4を接続して、根管b内にある側枝eを治療する側枝治療装置1であって、根管内電極3には、当該根管内電極3から根尖i方向に流れる電流を阻止する根尖保護材料APを前記根管b内に注入するための根尖保護材料注入路27を設けている。
【0030】
かかる構成によれば、側枝治療装置1は、根尖保護材料注入路27によって根尖保護材料APを根管b内に注入することで、根尖保護材料APが根管bから根尖i方向に流れる電流を阻止することができる。このため、側枝治療装置1は、根尖iに影響を与えずに、側枝eの位置の検出や、側枝eの治療を行うことができる。また、根尖保護材料注入路27は、根管b内に挿入される根管内電極3に沿って設けられているので、根尖保護材料APを根管b内の底部に注入し易い。また、根尖保護材料注入路27と根管内電極3とが別体である場合と比較して、器具の持ち替えなどの治療の手間を低減することができる。
【0031】
[第1実施形態の変形例]
次に、図2(a)~図15Bを参照して、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の変形例を、それぞれの構成要素の変形例を挙げながら説明する。
【0032】
<根管内電極の第1変形例>
また、図2(a)に示すように、中空タイプの根管内電極3は、フレキシブルなシリコン等の樹脂製チューブから成る根尖保護材料注入路27の外周部に、銅メッキや導電塗装を施すことで、チューブに根管内電極3を一体化した柔軟性を有する電極でもよい。
この他、根管内電極3は、導電性樹脂製の棒材、または、導電性樹脂製のチューブ材から成るものであってもよい。
【0033】
<根管内電極の第2変形例>
図2(b)は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の根管内電極3の第2変形例を示す図であり、外部に根尖保護材料注入路27Aを有する根管内電極3Aを示す縦断面図である。
【0034】
図2(b)に示すように、根管内電極3Aは、根管bを拡大したり、形成したりするための市販のファイル、リーマ等の切削具を使用してもよい。この場合は、ファイル、リーマ等から成る根管内電極3Aの外周面に、根尖保護材料APを根管内電極3Aの外部に沿って送るための根尖保護材料注入路27Aを根管内電極3Aの軸線に沿って設ける。ファイルやリーマは、柔軟性があるので、曲がった根管bに対して対応が可能である。
【0035】
リーマは、ねじる操作によって根管bの内壁を切削して歯の神経を取り除いたり、根管bを拡大したり、根管形成したりするのに使用される器具である。リーマの刃の部分は、螺旋状に形成されている。リーマの先端部分には、切れ刃は無い。
【0036】
ファイルは、根管治療及び抜髄する際に、根管b内で上下動させて掻き上げることで、神経を除去したり、根管b内が汚染されて壊死した歯組織を掻き出して除去したり、根管bを拡大したり、根管形成したりするのに使用される器具である。ファイルの刃の部分は、リーマよりもねじれがきつい螺旋状に形成されている。
【0037】
<根管内電極の第3変形例>
図2(c)は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の根管内電極3の第3変形例を変形例を示す図であり、外部の一部に根尖保護材料注入路27Bを有する根管内電極3Bを示す縦断面図である。
【0038】
図2(c)に示すように、根尖保護材料注入路27Bは、管である必要は無い。根尖保護材料注入路27Bは、ファイルやリーマから成る根管内電極3Bの外周面に、根管内電極3Bの上端から先端に亘って軸線に沿って根尖保護材料APを垂れ流すことを可能にしたものでもよい。
この場合、根管内電極3Bの上端部には、根尖保護材料APを注入して根管内電極3Bの上端部の外周面から根尖保護材料APを吐出するように導くための筒状の根尖保護材料注入路27Bを設けている。
【0039】
<注入手段の第1変形例>
図3Aは、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2を示す図であり、注入手段2Aにストッパ33を設けた根管内電極3Cを示す説明図である。図3Bは、(a)が、図3AのIIIBa-IIIBa拡大断面図であり、(b)が、図3B(a)のIIIBb-IIIBb拡大断面図である。
【0040】
また、図3A及び図3B(a)、(b)に示すように、注入手段2Aの根管内電極3Cには、軸方向(矢印k方向)に移動可能に固定したストッパ33を設けてもよい。ストッパ33は、根管b内に挿入する根管内電極3Cの挿入量L1を規制するための板状の部材から成る。ストッパ33の中央部には、根管内電極3Cの外周面に移動可能に固定される貫通孔から成る摺動部33aが形成されている。ストッパ33は、例えば、ラバー素材等から形成されて、根管内電極3Cの外周面に接しているストッパ33の摺動部33aの摩擦抵抗で所定位置に摺動可能に固定されている。
【0041】
ストッパ33を固定する場合は、通電回路4から根管内電極3Cに電流を流して側枝eを検出したときに、根管内電極3Cの先端を側枝開口部jの位置に合わせると共に、被検査歯aの測定基準点gに当接したときの根管内電極3Cの位置に固定する。根管内電極3Cの位置に固定されたストッパ33は、根管内電極3の先端を根管b内に挿入したときに、根管内電極3Cの先端が側枝開口部jよりも深い位置に移動するのを規制する。
「測定基準点g」とは、ストッパ33が当接する被検査歯aの最上端である。「挿入量L1」は、測定基準点gから根管内電極3Cの先端までの長さである。
【0042】
このように、ストッパ33は、根管内電極3Cの先端が側枝開口部jに到達したときに、被検査歯aの測定基準点gに当接するように、位置が調節されている。これにより、側枝eよりも根尖i側に根尖保護材料APを確実に注入することができる。なお、側枝eの位置の検出については後記する。
【0043】
また、ストッパ33を根管内電極3Cに固定した後、側枝検出用の根管内電極3Cの先端部からストッパ33までの距離を測定する場合は、ストッパ33を根管内電極3Cの先端が側枝開口部jに到達した位置に固定されているので、高い精度で測定することができる。
【0044】
なお、ストッパ33は、被検査歯aの測定基準点gに当接させることで、根管b内に挿入した根管内電極3Cの先端を所定位置に停止させることができるものであればよく、ストッパ33の大きさ、形状は特に限定されない。このため、ストッパ33は、被検査歯aよりも小さくてもよい。
また、根管内電極3Cには、ストッパ33の位置を設定し易くするために、根管内電極3Cの外周部や刃部に、目盛を付けてもよいし、また、目盛の代わりに目盛状に色分けしてもよい。
【0045】
図3Cは、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2Aの第1変形例を示す図であり、(a)は、外部に根尖保護材料注入路27Dを有する根管内電極3Dに設けたストッパ33の取り付け状態を示す要部拡大横断面図、(b)は、図3C(a)のIIICb-IIICb拡大断面図である。
【0046】
図3C(a)、(b)に示すように、ストッパ33は、根管内電極3Dの外周面と、根管内電極3Dの外周面に当接させて根管内電極3Dの軸線に沿って設けた根尖保護材料注入路27Dの外周面と、に移動可能に固定してもよい。
【0047】
このように図3A図3B(a)、(b)、図3C(a)、(c)に示す根管内電極3C,3Dには、軸方向に移動可能に固定されて、歯牙(被検査歯a)に接触することで、根管内電極3C,3Dの移動を規制するストッパ33を設けてもよい。
【0048】
かかる構成によれば、根管内電極3C,3Dは、根管bから抜き差ししても、ストッパ33の設置位置を測定基準点gに合わせることで、根管内電極3C,3Dの先端を常に側枝開口部jの位置に合わせることが可能となる。
【0049】
<注入手段の第2変形例>
図4Aは、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2の第2変形例を示す図であり、注入手段2Bに根尖保護材料APと通電液ELとを注入した状態を示す要部概略断面図である。図4Bは、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2の第2変形例を示す図であり、注入手段2Bによって根管b内に根尖保護材料APと通電液ELとを注入した状態を示す説明図である。
【0050】
また、図4A及び図4Bに示すように、通電液ELの比重は、同一温度において、根尖保護材料APと比較して小さくてもよい。
【0051】
かかる構成によれば、通電液ELは、比重を根尖保護材料APと比較して小さくしたことで、通電液ELと根尖保護材料APとを混ぜて根管b内に注入しても、根管b内で、根尖保護材料APが下層に、通電液ELが上層に分離される。このため、通電液ELを電気を通す液体、根尖保護材料APを電気を通さない液体とした場合は、側枝eの位置を検出したり、側枝eを治療したりする際に、側枝eの検出や、側枝eの治療に必要な電流を側枝eのみ流すことができる。
【0052】
通電液EL及び根尖保護材料APの一例を挙げると、通電液ELは、温度20℃で比重1.025の生理食塩水とする。根尖保護材料APは、温度20℃で比重1.22の砂糖水とし、その根尖保護材料APを混ぜて一体にして根管bに注入すると、砂糖水が下層に、生理食塩水が上層に分離される。この場合、通電液EL及び根尖保護材料APは、二種類の液体を混合して根管b内に入れて、時間が経過すると二つの液体に分離するものも含まれる。
【0053】
また、図4A及び図4Bに示すように、通電液ELは、電解質溶液であり、根尖保護材料APは、非電解質溶液であってもよい。
【0054】
この場合、一例を挙げると、通電液ELは、生理食塩水等の電解質溶液である。また、根尖保護材料APは、砂糖水等の非電解質溶液である。
【0055】
かかる構成によれば、通電液ELは、電解質溶液とし、根尖保護材料APは、非電解質溶液とした場合、砂糖水が下層に、砂糖水よりも比重の軽い生理食塩水を上層に分離することができる。また、生理食塩水は、電解質であるので、電気を通す。砂糖水は、電気を通さない非電解質である。このため、側枝eの位置を検出したり、側枝eを治療したりする際に、根管bの下層の根尖孔cに電気を通さず、根管bの上層部のみに電気を通すことができる。
【0056】
また、図4Aに示すように、根管b内に液体を注入する注入手段2Bは、根尖保護材料APが根管b内に注入された後、根管b内の上層に配置されるように注入してもよい。さらに、側枝開口部jを満たすように通電液ELを注入するための通電液注入路28は、根尖保護材料注入路27とは一体に設けたものであってもよい。
ここで、「一体に」とは、根尖保護材料注入路27を使って通電液ELも注入することを意味する。
【0057】
この場合、注入手段2Bは、図4Aに示すように、根尖保護材料APの比重を通電液ELより大きくしたり、根尖保護材料APに寒天状に固形化する凝固剤を入れる等したりして、通電液ELを根尖保護材料APの上に浮くようにする。また、注入手段2を一体の注入路にした場合は、比重の異なる根尖保護材料APと通電液ELとを、根尖保護材料AP、通電液ELの順番に注入、あるいは、混合して注入する。
【0058】
貯留部25内の根尖保護材料APと通電液ELとは、ピストン26を押し下げることによって、まず、下側の根尖保護材料APが貯留部25内から通電液注入路28と一体の根尖保護材料注入路27に送出される。さらにピストン26を押し下げると、貯留部25内の通電液ELが、貯留部25内から根尖保護材料注入路27と一体の通電液注入路28に送出される。
【0059】
このように図4Aに示す通電液注入路28は、根尖保護材料注入路27と一体に設けたものであってもよい。
【0060】
かかる構成によれば、図4Aに示すように、注入手段2Bは、通電液注入路28と根尖保護材料注入路27とが一体であることで、比重の重い根尖保護材料APを根管b内の下層に貯留し、通電液ELをその上層に注入することができる。このため、注入手段2Bは、根尖保護材料APを根管b内の下層に溜めて、通電液ELを側枝開口部jがある位置に溜まるようにできるので、側枝eを検出する通電時に、根尖iを高周波電流から保護することができる。また、注入路を2つ設ける場合に比較して、装置を小型化することができる。
【0061】
<注入手段の第3変形例>
図5は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2の第3変形例を示す要部概略断面図である。
【0062】
また、図5に示すように、根管b内に液体を注入する注入手段2Cは、根尖保護材料APが根管b内に注入された後、根管b内の上層に配置されるようにしてもよい。さらに、側枝開口部jを満たすように通電液ELを注入するための通電液注入路28は、根尖保護材料注入路27とは別々に設けたものであってもよい。
【0063】
この場合、注入手段2Cは、注入手段本体24Cと、根尖保護材料貯留部25C1と、通電液貯留部25C2と、根尖保護材料用ピストン26C1と、通電液用ピストン26C2と、根尖保護材料注入路27と、通電液注入路28と、を備えている。
注入手段本体24Cは、根尖保護材料APを貯留した根尖保護材料貯留部25C1と、通電液ELを貯留した通電液貯留部25C2と、を備えている。
【0064】
根尖保護材料貯留部25C1内の根尖保護材料APは、根尖保護材料用ピストン26C1を押し下げることによって、根尖保護材料貯留部25C1内から根尖保護材料注入路27に送出させることができる。
通電液貯留部25C2内の通電液ELは、通電液用ピストン26C2を押し下げることによって、通電液貯留部25C2内から通電液注入路28に送出させることができる。
【0065】
図4A図5に示すように、根管b内に注入された根尖保護材料APの上層に、側枝開口部jを満たすように通電液ELを注入するための通電液注入路28が根管内電極3の内部または外部に沿って設けられ、根尖保護材料注入路27及び通電液注入路28の少なくともいずれかに液体を供給する注入手段2B,2Cをさらに設けてもよい。
【0066】
かかる構成によれば、図5に示すように、注入手段2Cは、通電液注入路28を根尖保護材料注入路27とは別々に設けたことで、通電液ELを側枝開口部jに満たすことで、高周波電流をより側枝eに流し易くすることができる。
【0067】
<注入手段の第4変形例>
図6は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2の第4変形例を示す図であり、注入手段2Dを示す要部概略断面図である。
【0068】
また、図6に示すように、注入手段2Dは、注入量の確認が可能な目盛2aを有するものであってもよい。また、注入手段2Dは、透光材料で形成された注入手段本体24と、根尖保護材料AP、通電液EL等の液体を貯留する貯留部25と、注入手段本体24に付記された目盛2aと、ピストン26と、根尖保護材料注入路27または通電液注入路28と、を有するものであってもよい。
【0069】
また、側枝治療装置1は、根尖保護材料APを根尖保護材料注入路27に注入するための根尖保護材料注入手段21、および/または、通電液ELを通電液注入路28に注入するための通電液注入手段22を備えているものであってもよい。
この場合、注入手段2Dは、例えば、根尖保護材料注入手段21と、通電液注入手段22と、根管内電極3と、が一体の一体構造の注射器のようなシリンダ構造になっている。
【0070】
このように図6に示す注入手段2Dには、注入量の確認が可能な目盛2aがあってもよい。
【0071】
かかる構成によれば、注入手段2Dは、目盛2aを有していることで、注入に必要な液量を予め注入手段2Dに注入する際に、または、根管b(図1参照)内に液を注入する際に、目盛2aを用いて正確に液を注入することができる。
【0072】
<注入手段の第5変形例>
図7は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2の第5変形例を示す図であり、注入手段2Eを示す要部概略断面図である。
【0073】
また、図7に示すように、注入手段2Eは、根尖保護材料APを吸い上げて送出する根尖保護材料注入手段21と、通電液ELを吸い上げて送出する通電液注入手段22と、の機能を有するものであってもよい。
また、注入手段2Eは、チューブ状の根尖保護材料注入路27または通電液注入路28から吸入した液体を手動で押し圧を加えて押し出したり、自動的に液体を吸入したりするスポイト構造のものであってもよい。
【0074】
この場合、根尖保護材料注入手段21は、根尖保護材料APを吸い上げて根尖保護材料注入路27に送出するための貯留押出部2E1と、貯留押出部2E1の下端部及び根尖保護材料注入路27の上端部を支持する支持部材2E2と、を備えている。
貯留押出部2E1は、圧し潰しても元の形状に戻る弾性変形をする樹脂等によって容器状に形成されている。貯留押出部2E1は、下端部に根尖保護材料注入路27を連結して、スポイト状に形成されている。貯留押出部2E1は、手で圧し潰して元の形状に戻る際に、根尖保護材料注入路27の先端から根尖保護材料APを吸い上げて、貯留押出部2E1内に根尖保護材料APを貯留させることができる。その貯留押出部2E1は、手で圧し潰すようにすることで、貯留押出部2E1内の根尖保護材料APを根尖保護材料注入路27から送出させることができる。
【0075】
通電液注入手段22は、前記した根尖保護材料注入手段21と同じ構造であり、貯留押出部2E1で吸い上げて送出させる液を通電液ELにして、貯留押出部2E1から送り出す送出先を通電液注入路28にした装置である。つまり、通電液注入手段22は、通電液ELを吸い上げて通電液注入路28に送出するための貯留押出部2E1と、貯留押出部2E1の下端部及び通電液注入路28の上端部を支持する支持部材2E2と、を備えて成る。根尖保護材料注入手段21と通電液注入手段22とは、根管内電極3と一体構造になっている。
【0076】
<注入手段の第6変形例>
図8は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2の第6変形例を示す図であり、注入手段2Fを示す要部概略断面図である。
【0077】
また、図8に示すように、注入手段2Fは、根尖保護材料注入手段21と、通電液注入手段22と、の機能を備えた電動のローラポンプP(チューブポンプ)構造のものであってもよい。
【0078】
ローラポンプPは、貯留部P6に貯留した根尖保護材料APや通電液ELを、根尖保護材料注入路27及び通電液注入路28に注入するためのポンプである。ローラポンプPは、ポンプ本体P1と、回転軸P2と、回転アームP3と、ローラP4と、ポンプハウジングP5と、貯留部P6と、チューブP7と、を備えて構成されている。
【0079】
ポンプハウジングP5は、上部に貯留部P6を備え、中央部に回転軸P2、回転アームP3及びローラP4を回転自在に収容したポンプ本体P1を備え、下端部から根尖保護材料注入路27及び通電液注入路28を垂下するように備えている。さらに、ポンプハウジングP5には、貯留部P6の底部から中空状のポンプ本体P1の内壁面を通って根尖保護材料注入路27及び通電液注入路28に亘ってチューブP7が配置されている。
【0080】
貯留部P6は、ポンプハウジングP5の上部に形成されたタンクである。貯留部P6の内底部は、チューブP7によってポンプ本体P1に連通している。
ポンプ本体P1は、縦断面視して、円形の中空状に形成されている。ポンプ本体P1には、チューブP7が前部から内壁に引き込まれて、その内壁を一周して前側から引き出されるように配置されている。ポンプ本体P1の中央部には、回転軸P2が水平に回転自在に配置されている。
【0081】
回転軸P2には、回転軸P2から四方向に十字状に配置した回転アームP3が設けられている。四つの回転アームP3の先端には、ローラP4がそれぞれ回転自在に軸支されている。
回転アームP3及び回転軸P2は、ローラポンプPが駆動すると回転して、チューブP7に押し付けて配置されたローラP4を転動させる。
【0082】
ローラP4は、回転アームP3及び回転軸P2が時計回り方向に回転した場合、転動することで、チューブP7内の根尖保護材料APや通電液ELを、根尖保護材料注入路27及び通電液注入路28側に押し出すように配置されている。ローラP4は、回転アームP3及び回転軸P2が反時計回り方向に回転した場合、転動することによって、チューブP7内の根尖保護材料APや通電液ELを、貯留部P6側に押し出すように配置されている。
【0083】
このように、ローラポンプPは、回転アームP3及び回転軸P2が時計回り方向に回転した場合、貯留部P6の液体を根尖保護材料注入路27及び通電液注入路28から送出す。ローラポンプPは、回転アームP3及び回転軸P2が反時計回り方向に回転した場合、根尖保護材料注入路27及び通電液注入路28から液体を貯留部P6側に吸引するように構成されている。
【0084】
このように図6図8に示す注入手段2D,2E,2Fは、根尖保護材料APを根尖保護材料注入路27に注入するための根尖保護材料注入手段21、および/または、通電液ELを通電液注入路28に注入するための通電液注入手段22を備え、根尖保護材料注入手段21と通電液注入手段22との少なくとも1つは、根管内電極3と一体構造になっていてもよい。
ここで、「一体構造」とは、図6に示すような注射器のようなシリンダ構造や、図7に示すようなスポイト構造や、チューブP7に注入した液体を押圧して、手動、または、図8に示すような電動で押し出すローラポンプP(チューブポンプ)構造等でもよい。
【0085】
かかる構成によれば、注入手段2D,2E,2Fは、根尖保護材料注入手段21と通電液注入手段22との少なくとも1つを、根管内電極3と一体構造にしたことで、片手で側枝治療装置1Eを保持しながら注入操作を行うことができる。このため、側枝治療装置1Eの小型化を図ることができる。
また、根尖保護材料注入手段21及び通電液注入手段22は、根尖保護材料AP及び通電液ELを吸引したり、吸引した根尖保護材料AP及び通電液ELを送出したりすることが可能な吸引手段としても使用することができる。
また、根尖保護材料注入手段21及び通電液注入手段22は、根尖保護材料AP及び通電液ELに替えて洗浄液CSを吸引したり、吸引した洗浄液CSを送出して根管b(図1参照)内を洗浄したりする洗浄液注入手段としても使用することができる。
【0086】
<注入手段の第7変形例>
図9は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の第7変形例を示す図であり、注入手段2によって根管b内に注入される液体の状態を示す要部概略断面図である。
図9に示すように、注入手段2(図1参照)によって根管b内に注入する液体は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の洗浄液CS、または、次亜塩素酸ナトリウム水溶液NC等の殺菌液であってもよい。
【0087】
このように、注入手段2(図1参照)は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の洗浄液CSを使用することで、根管b内及び側枝e内を洗浄することができる。また、注入手段2(図1参照)は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液NC等の殺菌液を使用することで、根管b内及び側枝e内を殺菌することができる。
【0088】
<注入手段の第8変形例>
図10Aは、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2の第8変形例を示す図であり、収容部25Gを開閉する開閉蓋26Gが閉弁状態の注入手段2Gを示す要部概略断面図である。図10Bは、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の注入手段2の第8変形例を示す図であり、収容部25Gを開閉する開閉蓋26Gが開弁状態の注入手段2Gを示す要部概略断面図である。
【0089】
また、図10A及び図10Bに示すように、根尖保護材料APが顆粒状の場合、注入手段2Gは、漏斗形状の収容部25Gに収容された根尖保護材料APを、収容部25Gの下部開口部25Gaから根尖保護材料注入路27に落下させて供給するように構成してもよい。
【0090】
この場合、根尖保護材料APは、例えば、セラミック等の顆粒状の絶縁材料から成る。注入装置本体24Gは、根尖保護材料APを収容する収容部25Gと、収容部25Gの下部に形成された下部開口部25Gaを開弁、閉弁する開閉蓋26Gと、下部開口部25Gaに連通する根尖保護材料注入路27と、を有している。
なお、注入装置本体24Gは、バイブレータ等の振動源を設けて根尖保護材料APを下部開口部25Gaから落下し易くしてもよい。
【0091】
収容部25Gは、下端部に下部開口部25Gaを有し、下部開口部25Gaから上方に拡開するように漏斗状に形成されている。このため、収容部25Gに収容された根尖保護材料APは、漏斗状に傾斜した収容部25Gの内壁面にガイドされて、その内壁面を下部開口部25Gaに向けて落下し、下部開口部25Gaを介して根尖保護材料注入路27内に供給される。
【0092】
開閉蓋26Gは、下部開口部25Gaを開弁、閉弁する弁体部26Gaと、弁体部26Gaを回動自在に軸支するレバー回動軸26Gbと、弁体部26Gaをレバー回動軸26Gbを中心として回動させるためのレバー26Gcと、を有して成る。
根尖保護材料注入路27は、注入装置本体24Gの下部開口部25Gaに、根尖保護材料注入路27の上端部を連結している。
【0093】
このように構成された注入手段2Gは、図10Aに示すを閉弁方向の位置状態にあるレバー26Gcを開弁方向に傾倒操作すると、図10Bに示すように、開閉蓋26Gの弁体部26Gaが開弁状態になる。その開閉蓋26Gは、所定の落下量の根尖保護材料APが漏斗状の収容部25Gの内壁面を落下して根尖保護材料注入路27に流れ落ちるように制御可能に構成されている。
【0094】
<通電回路の第1変形例(高周波電流発生回路)>
図11は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の通電回路4の第1変形例を示す図であり、通電回路4を高周波電流発生回路41とした場合の側枝治療装置1の概略図である。
【0095】
図11に示すように、通電回路4は、被検査歯aの脈管神経束を破壊あるいは凝集させるための高周波電流を発生する高周波電流発生回路41であってもよい。高周波電流発生回路41は、一方が根管内電極3に接続され、他方が対向電極5に接続されている。高周波電流発生回路41は、切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯等の歯の種類に応じて、根管内電極3に送る高周波パルスを500KHz~1MHzの範囲で可変し、最大出力を25Wまでとし、50~70msecの断続波(50~70%Duty)で適宜調整することが望ましい。
【0096】
このように図11に示す通電回路4は、高周波電流発生回路41を含む。
【0097】
かかる構成によれば、通電回路4は、高周波電流発生回路41から成ることで、根管内電極3の先端を側枝開口部jの位置に合わせ高周波電流を流すことができる。この場合、根尖保護材料APによって、根尖iにダメージを与えることなく側枝eを焼灼することができる。
【0098】
<通電回路の第2変形例(根管長測定回路)>
図12は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の通電回路4の第2変形例を示す図であり、通電回路4を根管長測定回路42とした場合の側枝治療装置1の概略図である。
【0099】
図12に示すように、通電回路4は、被検査歯aの測定基準点gから根尖孔cまでの根管長L2を測定するための根管長測定回路42であってもよい。根管長測定回路42は、根管内電極3と対向電極5との電極間に弱い電流を流し、インピーダンス値を測定することによって根管bの長さを把握することが可能な装置である。根管長測定回路42は、一方が根管内電極3に接続され、他方が対向電極5に接続されている。
【0100】
このように図12に示す通電回路4は、根管長測定回路42を含む。
【0101】
かかる構成によれば、通電回路4は、根管長測定回路42から成ることで、根尖保護材料APで根尖i方向の測定電流を阻止することができる。このため、根管内電極3の先端が側枝e近傍のインピーダンス値の変化を捉えることで、側枝eの位置を検出することができる。このとき、ストッパ33の位置を測定基準点gに合わせれば、高周波電流による側枝eの焼灼時の位置を再現することが可能である。
【0102】
<通電回路の第3変形例(側枝位置検出回路)>
図13は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の通電回路4の第3変形例を示す図であり、通電回路4を側枝位置検出回路43とした場合の側枝治療装置1の概略図である。
【0103】
図13に示すように、通電回路4は、被検査歯aの根管b内にある側枝eの位置を検出するための側枝位置検出回路43であってもよい。側枝位置検出回路43は、一方が根管内電極3に接続され、他方が対向電極5に接続されている。側枝位置検出回路43は、根管内電極3(側枝位置検出用電極)を被検査歯aの根管bから根尖孔cの位置に向かって挿入して行く際に得られる測定データ(測定電流)から側枝eの有無と、歯根軸周りの位置と、を検出するための装置である。
【0104】
なお、側枝位置検出回路43は、被検査歯aの根管bを治療する際に、根管治療に先立って行われる根管長L2の測定と、側枝eの有無の検出と、側枝eの有る位置を表示部43hに示す表示と、を行う側枝検出機能付きの測定表示装置であってもよい。その一例を挙げると、側枝位置検出回路43は、報知表示部43aと、電源マーク43bと、側枝あり表示部43c(LC(Lateral Canal))と、被検査歯表示部43dと、横じま表示部43eと、距離表示目盛部43fと、側枝距離表示部43gと、を表示部43hのアイコンで報知するように構成されている。
【0105】
側枝位置検出回路43は、根管b内に挿入した根管内電極3の先端を根尖孔cに向けて移動しながら根尖位置を検出する際に、側枝eを検出すると、表示部43hの側枝あり表示部43cに側枝eがあることを示す「LC」の文字が表示される。根管内電極3は、このときの位置状態に保持して、ストッパ33を被検査歯aの測定基準点gに当接する位置に移動させて固定する。
【0106】
図13に示すように、前記した表示部43hは、側枝位置検出回路43の測定結果等の所定の情報を表示するモニタである。図13に示す表示部43hは、一例として、根管内電極3の先端が根尖位置から3mmの位置にある場合を表示している。このように、側枝位置検出回路43は、根管内電極3が根管b内に挿入されて行くときの根管内電極3の先端の位置を測定する機構を備えている。
【0107】
表示部43hは、例えば、液晶パネルから成る。術者は、表示部43hの表示を観察することにより、根管内電極3の先端の根尖位置に近づいて行く状況を正確に把握することができる。例えば、術者は、側枝eを有する被検査歯aを検査することにより、表示部43hの側枝あり表示部43cの「LC」表示によって、被検査歯表示部43dに側枝eが存在することを確認することができる。表示部43hは、根管長測定回路42の制御部(図示省略)の指示に従い、検出した直流電圧に基づいた測定結果を表示し、および/または警告音を発する。
【0108】
報知表示部43aは、報知手段を示すアイコンである。報知表示部43aは、根管内電極3の先端部が側枝eの付近になると、根管内電極3の先端が側枝eに近づいたことを、近づいて距離に応じて報知音の音量等を変えて報知する。
電源マーク43bは、電源の作動状態を示すアイコンである。
側枝あり表示部43cは、側枝eが有ることを示すアイコンである。側枝あり表示部43cは、側枝eがあった場合に、「LC」の文字を表示することによって側枝eがあったことを表示する。
【0109】
被検査歯表示部43dは、一般的な歯牙の根管bの形状を模式的に表示したアイコンである。被検査歯表示部43dには、根尖位置からの距離を表示するための距離表示目盛部43fを表すスケールが描かれている。被検査歯表示部43dの根管bの部分には、横じま表示部43eが描かれている。
【0110】
横じま表示部43eは、計測した根管bの計測した根尖孔cの位置からの距離を、所定間隔で表示するアイコンである。横じま表示部43eは、根管内電極3を根尖孔cの位置に向かって挿入して行くのに従って、横じま表示部43eの最下部が下降して、根管内電極3の先端位置を表示する。
【0111】
距離表示目盛部43fは、根尖孔cの位置からの距離を示すアイコンである。距離表示目盛部43fは、計測した根尖孔cの位置からの距離をミリ(mm)単位で表すための目盛である。
【0112】
側枝距離表示部43gは、根尖iから側枝eまでの距離をデジタル表示するアイコンである。側枝距離表示部43gの距離表示は、仮に根尖iの3mm手前に側枝eがあった場合、例えば、300と表示する。このため、根管内電極3は、根管b内に挿入して行き、横じま表示部43eが数値3.0を指す位置まで根管内電極3を挿入することにより、根管内電極3の先端を側枝開口部jの位置に配置することができる。
【0113】
このように図13に示す通電回路4は、側枝位置検出回路43を含む。
【0114】
かかる構成によれば、通電回路4は、側枝位置検出回路43から成ることで、側枝位置検出回路43によって側枝開口部jの位置を検出した後、スムーズに側枝eの治療を行うことができる。
【0115】
<その他の通電回路>
通電回路4は、前記した三種類の回路(高周波電流発生回路41、根管長測定回路42及び側枝位置検出回路43)に限定されるものではなく、回路の数、種類、構成等は適宜変更しても構わない。通電回路4は、被験者Mの根管b内に挿入する根管内電極3と、被験者Mの身体に直接または間接的に接続される対向電極5との間に通電する通電回路であれば何でもよい。例えば、通電回路4は、根管b内にイオン注入するための直流電源回路(図示省略)を含むものであってもよい。
この場合、直流電源回路(図示省略)は、直流電流を発生する装置である。
かかる構成によれば、通電回路4は、直流電源回路(図示省略)から成ることで、根管b内にイオン注入することができる。
【0116】
この他、通電回路4は、パルス電流を発生するパルス発生回路であってもよいし、低周波電流を発生する低周波発生回路であってもよい。
このように、通電回路4は、パルス発生回路、低周波発生回路等の種々の通電回路を接続することにより、側枝eの多様な治療を行うことが可能な通電回路であれば何でもよい。
【0117】
<通電回路の第4変形例(回路切換手段)>
図14は、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の通電回路4の第4変形例を示す図であり、複数の通電回路4のうちの任意の一つの回路に切り換える回路切換手段44を備えた側枝治療装置1を示す説明図である。
【0118】
図14に示すように、通電回路4は、高周波電流発生回路41と、根管長測定回路42と、側枝位置検出回路43と、回路切換手段44と、を備えていてもよい。
回路切換手段44は、複数の回路のうちの任意の一つの回路が電極間(根管内電極3と対向電極5との電極間)に接続されるように切り換える切換装置である。回路切換手段44は、ノブ(図示省略)と、このノブによって作動する第1開閉器441と、第1開閉器441に連動して開閉する第2開閉器442と、を備えて構成されている。回路切換手段44は、ノブ(図示省略)を操作することで、第1開閉器441の可動接点441aと、第2開閉器442の可動接点442aと、が作動する回動スイッチ、摺動スイッチ等から成る連動スイッチによって構成されている。
【0119】
第1開閉器441は、可動接点441aと、第1固定接点441bと、第2固定接点441cと、第3固定接点441dと、から成る。
可動接点441aは、根管内電極3に接続されている。可動接点441aは、ノブ(図示省略)を操作することで、第1固定接点441bと、第2固定接点441cと、第3固定接点441dと、に接触させて切り換えることが可能である。
第1固定接点441bは、高周波電流発生回路41に接続されている。
第2固定接点441cは、根管長測定回路42に接続されている。
第3固定接点441dは、側枝位置検出回路43に接続されている。
【0120】
第2開閉器442は、第1開閉器441と同様な構成で、可動接点441aに連動する可動接点442aと、第1固定接点442bと、第2固定接点442cと、第3固定接点442dと、を備えて構成されている。このため、第2開閉器442の可動接点442aは、第1開閉器441の可動接点441aに連動して接触する固定接点を切り換えるように構成されている。
可動接点442aは、対向電極5に接続されている。可動接点442aは、ノブ(図示省略)を操作することで、第1固定接点442bと、第2固定接点442cと、第3固定接点442dと、に接触させて切り換えることが可能である。
第1固定接点442bは、高周波電流発生回路41に接続されている。
第2固定接点442cは、根管長測定回路42に接続されている。
第3固定接点442dは、側枝位置検出回路43に接続されている。
【0121】
このように図14に示す通電回路4は、回路切換手段44を備え、回路切換手段44は、複数の回路のうちの任意の一つの回路が電極間に接続されるように切り換えてもよい。
【0122】
かかる構成によれば、通電回路4は、複数の回路のうちの任意の一つの回路が電極間に接続されるように切り換える回路切換手段44を有することで、持ち替え作業を極力減らしてスムーズに通電回路4を切り換えることができる。また、通電回路4は、回路切換手段44を有することで、複数の回路のうちの所望の回路を適宜使用することができるので便利である。
【0123】
このように図14に示す通電回路4は、高周波電流発生回路41と、根管長測定回路42と、側枝位置検出回路43と、回路切換手段44と、を備え、回路切換手段44は、高周波電流発生回路41と、根管長測定回路42と、側枝位置検出回路43とのうちの一つの回路が電極間に接続されるように切り換えるようにしてもよい。
【0124】
かかる構成によれば、通電回路4は、高周波電流発生回路41と、根管長測定回路42と、側枝位置検出回路43と、に切り換える回路切換手段44を有することで、持ち替え作業を極力減らしてスムーズに通電回路4を切り換えることができる。また、通電回路4は、回路切換手段44を有することで、高周波電流発生回路41と、根管長測定回路42と、側枝位置検出回路43と、の三つの回路のうちの所望の回路を適宜使用することができるので便利である。
【0125】
<対向電極の変形例>
図15Aは、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の対向電極5の第1変形例を示す図であり、対向電極5Aを被験者Mの身体に張り付けた対極板とした場合の側枝治療装置1の概略図である。
【0126】
図15Aに示すように、対向電極5Aは、被験者Mの人体や、被験者Mの衣服に貼り付けることが可能な対極板で形成してもよい。対向電極5Aは、被験者Mの背中等に貼り付けることによって、歯科診療椅子等の椅子6に着座した被験者Mの診療に支障を来さない位置に配置することが可能である。
【0127】
このように図15A及び15Bに示す対向電極5A,5Bは、被験者Mを接地するようにアース接続された椅子6に設けられ、根管内電極3は、当該根管内電極3とアース間に通電回路4を接続して、根管b内にある側枝eを治療する側枝治療装置であってもよい(図1参照)。
【0128】
かかる構成によれば、対向電極5A,5Bは、被験者Mを接地するように椅子6に設けたことで、治療する際に、被験者Mの身体に付設した対極板等の対向電極5A,5Bが邪魔にならないように配線することができる。
【0129】
図15Bは、本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の対向電極5の第2変形例を示す図であり、対向電極5Bをアース接続された椅子6とした場合の側枝治療装置1の概略図である。
【0130】
図15Bに示すように、対向電極5Bは、被験者Mの身体を接地するようにアース接続された椅子6であってもよい。この場合、椅子6は、診療台あるいは歯科診療椅子から成る。
このようにすることで、対向電極5Bは、椅子6自体がアース電極を構成しているので、特別な電極や接続配線を設ける必要が無いので、設置工数及びコストの低減を図ることができる。
【0131】
≪第1実施形態の変形例の作用≫
次に、図1図15Bを参照して本発明の第1実施形態に係る側枝治療装置1の変形例の作用を作業工程順に沿って説明する。
【0132】
図1に示すように、まず、ファイル等の器具を使って根管b内の根尖孔cまでの感染した歯髄を除去する(抜髄工程)。
次に、根管拡大モータやリーマを使って根管b内を切削して拡大させ、根管b内に液を充填し易くするために、根管bの形状を整える(根管拡大工程)。
続いて、根管b内に薬品を注入して根管b内を洗浄する(根管洗浄工程)。
【0133】
そして、根管b内に根管内電極3を挿入して通電し、側枝位置検出回路43(図13参照)によって側枝eがあるか検査する(側枝検出工程)。根管b内に側枝eがある場合は、側枝eの治療を行う(側枝治療工程)。
【0134】
次に、図12または図13に示すように、根管内電極3と対向電極5とに、側枝位置検出回路43または根管長測定回路42を接続する。続いて、側枝位置検出回路43または根管長測定回路42によって、被検査歯aの測定基準点gから側枝開口部jまでの距離(図3Aに示す挿入量L1)を測定する(側枝検出工程)。根管内電極3は、側枝eを検出した位置を保持した状態で、ストッパ33を被検査歯aの測定基準点gに当接させた状態に固定すれば、測定基準点gから側枝開口部jまでの距離を保ったまま、一定の挿入量L1(図3A参照)を常に再現可能となる(ストッパ固定工程)。
【0135】
次に、図12または図13に示すように、根尖孔cへの高周波電流による加熱を防止するために、根尖孔cを満たすように、また、側枝開口部jを満たさないように、根尖保護材料APを根管b内に注入する(根尖保護材料注入工程)。根尖孔cから3mmの範囲にある側枝eは、根尖分岐と称して、径が50μ程度で痛みが無く、特に、処置しなくとも問題視されていない。このため、根尖保護材料APは、根尖孔cから上方に3mm程度の注入することが望ましい。例えば、根尖保護材料APは、根尖孔c付近の根管半径が1mmである場合、3.14×1×1×1mm=0.00314cc注入する。
【0136】
続いて、図4A図4Bあるいは図5に示すように、側枝開口部jを満たすように通電液ELを注入手段2B,2Cによって根管b内に注入する(通電液注入工程)。
次に、根管内電極3の先端を側枝開口部jに合わせた状態(ストッパ33を被検査歯aの測定基準点gに合わせた状態)で、根管長測定回路42または側枝位置検出回路43を接続し、通電状態を確認する(通電状態確認工程)。この確認を行うことによって、側枝開口部jが通電液ELで満ちているかを確認することができる。なお、側枝開口部jが通電液ELで満ちていない場合(電極先端が空気層にある場合)は、通電している電流量が少ない。
【0137】
次に、図11に示すように、ストッパ33を測定基準点gに合わせた状態で高周波電流発生回路41を根管内電極3と対向電極5との間に接続し、所定時間、高周波電流を流す(高周波電流供給工程)。このとき、高周波電流量を測定し、通電状況を確認することによって、焼灼状態を把握することができる。電流が流れなくなることにより、焼灼状態にあることがわかる。また、根尖iに根尖保護材料APが注入されているので根尖方向に電流が流れることがない。そのため、高周波電流によって根尖iを痛めることがない。また、電極に沿って根尖保護材料注入路21が設けられているので電極を抜かずに根尖保護材料APを注入することができる。
【0138】
そして、図1図3A図4A図5図8に示すように、側枝eの焼灼が完了したら、注入手段2,2A~2Fを吸引手段として使用し(または、治療用の吸引装置を使用し)、根尖保護材料APや通電液ELを吸引する(残留液吸入工程)。
【0139】
続いて、注入手段2,2A~2Fに洗浄液CS(次亜塩素酸ナトリウム水溶液、エチレンジアミン四酢酸等)を入れて根管b内及び側枝e内を洗浄する(根管側枝洗浄工程)。
洗浄後、洗浄液CSを除去し、側枝eにペースト状のバイオセラミックス(MTA)、水酸化カルシウム等を充填する(側枝充填工程)。
【0140】
次に、根管b内が再感染したり、歯根が破折したりしないようにするために、洗浄した根管bの中に隙間無く詰め物をする(根管充填工程)。根管bを充填する場合は、通常、ペースト状のバイオセラミックス(MTA)や、糊の役目をするシーラと共に、ガッタパーチャと呼ばれる天然の樹液の主成分と、酸化亜鉛の混合物と、を使って充填する。
【0141】
根管b内は、再感染したり、歯根が破折したりしないようにするために、洗浄した根管bの中に隙間無く詰め物をする。根管bに充填する場合は、通常、ペースト状のバイオセラミックス(MTA)や、糊の役目をするシーラと共に、ガッタパーチャと呼ばれる天然の樹液の主成分と、酸化亜鉛の混合物と、を使って充填する。
根管充填が終わったら被せ物で修復させた被検査歯aの噛み合わせ調整を行う(歯冠修復工程)。
以上で、側枝治療装置1による側枝eの治療が終了する。
【0142】
[第2実施形態]
次に、図16図19を参照して、本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置1Aについて、第1実施形態に係る側枝治療装置1との相違点を中心に説明する。
【0143】
図16は、本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置1Aの一例を示す説明図である。図17は、図16のA部拡大概略断面図である。図18は、図16のB部拡大概略断面図である。図19は、図18のXVIII-XVIII拡大断面図である。
【0144】
図16図19に示すように、本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置1Aの注入手段2Aは、根尖保護材料注入路27と、通電液注入路28と、吸引路29と、根管内電極3Aと、チューブ20と、を備えたハンドピース10から成る。
【0145】
図16に示すように、根管内電極3Aは、アングル形状のハンドピース10の先端部に設けてもよい。
【0146】
かかる構成によれば、根管内電極3Aは、アングル形状のハンドピース10の先端部に設けたことによって、全体形状を歯科用切削ハンドピース形状にすることができるため、操作性を向上させることができる。
【0147】
この場合、図16に示すように、ハンドピース10の前端部には、根管内電極3Aと、チューブ20と、を隣接した状態に取り付けたハンドピースヘッド11を有している。根管内電極3Aは、例えば、外径が0.2mmのステンレス鋼等の導電性金属から成る。チューブ20は、シリコンゴム等の樹脂製の管状部材から成る。
なお、根管内電極3A及びチューブ20の外周面には、ストッパ33(図3C(a)、(b)参照)を摺動可能に取り付けてもよい。
【0148】
図16に示すように、ハンドピース10の後端部には、接続部12が設けられている。接続部12の前部には、通電液注入路28を接続した第1接続部12aと、根尖保護材料注入路27を接続した第2接続部12bと、吸引路29を接続した第3接続部12cと、を同心円上に配置している。接続部12の後部には、通電液注入路28に連通する第1筒状接続部12dと、根尖保護材料注入路27に連通する第2筒状接続部12eと、吸引路29に連通する第3筒状接続部12fと、を有する。第1筒状接続部12d、第2筒状接続部12e及び第3筒状接続部12fは、チューブ状の管状部材(図示省略)を介して不図示の歯科用ユニットの制御駆動装置に接続されている。ハンドピース10のハンドピースヘッド11と接続部12との間には、グリップ13が形成されている。
【0149】
また、図16図19に示すように、注入手段2Aには、根管b内に注入された液体Lを吸引可能な吸引路29を、さらに設けたものでもよい。
【0150】
かかる構成によれば、注入手段2Aは、吸引路29を備えていることで、側枝治療装置1Aを根管bに装着した状態で夫々の液体Lを吸引することが可能となる。
【0151】
また、図19に示すように、根尖保護材料注入路27と、通電液注入路28と、吸引路29とは、いずれか2つ、または、いずれも同心円状に配置してもよい。
【0152】
かかる構成によれば、根尖保護材料注入路27と、通電液注入路28と、吸引路29とは、同心円状に配置することで、根管b内に根管内電極3Aをスムーズに移動させることが可能となる。また、根尖保護材料注入路27と、通電液注入路28と、吸引路29とは、いずれか2つを同心円状に配置することで、狭い設置空間に効率よく配置して、チューブ20全体の太さを細くすることができる。
【0153】
この場合、図17及び図18に示すように、例えば、通電液注入路28は、チューブ20の中央部に配置された通電液注入路形成チューブ281によって形成されている。
通電液注入路28の外周部には、根尖保護材料注入路27が配置されている。根尖保護材料注入路27は、根尖保護材料注入路形成チューブ271と通電液注入路形成チューブ281との間に形成されている。
根尖保護材料注入路27の外周部には、吸引路29が配置されている。吸引路29は、吸引路形成チューブ291と根尖保護材料注入路形成チューブ271との間に形成されている。また、吸引路形成チューブ291は、根尖保護材料注入路形成チューブ271を覆うチューブ20を構成している。
【0154】
ハンドピースヘッド11に取り付けられたチューブ20内には、図18に示すように、吸引路29内に帯状部材を螺旋状に巻回された状態に配置された吸引用スペーサ15が設置されている。
吸引用スペーサ15は、同心円状に配置された根尖保護材料注入路形成チューブ271と、吸引路形成チューブ291との間に介在されている。このため、吸引用スペーサ15は、根尖保護材料注入路形成チューブ271と吸引路形成チューブ291とに間の距離を一定に保持することができる。
【0155】
≪根管内電極の変形例≫
前記第1及び第2実施形態では、根管内電極3,3A~3C(図2(a)、(b)、(c)及び図18参照)の一例として金属の場合を説明したが、根管内電極3,3A~3Cは、金属製のものに限定されるものではない。根管内電極3,3A~3Cは、導電性樹脂材料から成る棒材、樹脂製の棒材から成ると共に当該根管内電極3,3A~3Cの外皮を導電メッキ、または、導電塗装して形成されているものであってもよい。
【0156】
図20は、本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置1Aの変形例を示す図であり、接続部12の要部拡大断面図である。図21は、本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置1Aの変形例を示す図であり、根管内電極3Eの要部拡大断面図である。
【0157】
図20及び図21に示すように、根管内電極3Eは、金属または導電性樹脂材料から成るチューブ材、あるいは、樹脂製のチューブ材から成ると共に、当該根管内電極3Eの外皮3Eaを導電メッキ、または、導電塗装して形成されているものであってもよい。
【0158】
この場合、根管内電極3Eは、シリコンゴム等から成るチューブ20の外周面に、導電メッキ(例えば、銅メッキ)、または、導電塗装(例えば、銀、ニッケル銅等の導電性を有する塗料を塗装)することで、導電性の外皮3Eaを形成し、チューブ20と一体化させる。
また、図20に示すように、このようにして形成した根管内電極3Eの外皮3Eaには、通電回路4等に接続するための根管内電極用接点3Ebを設ける。
【0159】
かかる構成によれば、根管内電極3Eは、樹脂製の棒材、または、樹脂製のチューブ材から成ることで、柔軟に屈曲するようにすることができる。根管内電極3Eは、樹脂製のチューブ材で形成したことで、曲がった根管bであっても、根管内電極3Eを根管b内にスムーズに挿入することができるので、各種液体の注入や吸引を容易に行うことができる。
また、根管内電極3Eは、導電性樹脂、あるいは、外皮3Eaを導電メッキ、または、導電塗装したことで、チューブ20と一体化させることができるので、設置スペースを小さくすることができる。
【0160】
≪チューブの変形例≫
図22は、本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置1Aの変形例を示す図であり、チューブ20の要部拡大断面図である。
【0161】
図22に示す吸引路形成チューブ291(チューブ20)は、内径が0.5mm、外径が0.6mmのアズワンシリコンマイクロチューブ等から成る樹脂製絶縁チューブであってもよい。この場合は、根管内電極3は、例えば、吸引路形成チューブ291(チューブ20)の外周面に、チューブ20とは別体に設置する(図2(b)、(c)参照)。
根尖保護材料注入路形成チューブ271は、内径が0.4mm、外径が0.5mmのアズワンシリコンマイクロチューブ等から成る樹脂製絶縁チューブであってもよい。
通電液注入路形成チューブ281は、内径が0.2mm、外径が0.3mmのアズワンシリコンマイクロチューブ等から成る樹脂製絶縁チューブであってもよい。
チューブ20は、シリコンマイクロチューブ等を使用することで、細くてしなやかな電極構造にすることが可能である。
【0162】
≪側枝治療装置の変形例≫
図23は、本発明の第2実施形態に係る側枝治療装置1Aの変形例を示す図であり、側枝治療装置1Aのブロック図である。
【0163】
図23に示すように、側枝治療装置1Aは、根管b内を洗浄するための洗浄液CSを、根尖保護材料注入路27または通電液注入路28に注入可能としてもよい。
【0164】
かかる構成によれば、側枝治療装置1Aは、洗浄液CSを根尖保護材料注入路27または通電液注入路28に注入可能にしたことで、側枝治療装置1を根管bに装着した状態で根管b内を洗浄することができる。
【0165】
この場合、根管bの中に注入する洗浄液CSは、例えば、殺菌するのに使用される次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液等であり、タンクT3に貯留されている。タンクT3内の洗浄液CSは、切換手段46、開閉バルブV2及び通電液注入路28を介して注入手段2Aに接続されて、コンプレッサ7からの圧縮空気によって注入手段2Aに供給される。また、通電液注入路28に供給する洗浄液CSは、切換手段46を切り換えることで、タンクT2内の通電液ELに適宜切り換えることが可能である。
【0166】
切換手段46は、タンクT2に貯留した通電液ELと、タンクT3に貯留した洗浄液CSとを、切換手段46で切り換えるシーケンス制御を行う。このため、切換手段46は、通電液ELと洗浄液CSとのどちらか一方を選択して、開閉バルブV2及び通電液注入路28を介して注入手段2Aに供給することができる。
【0167】
また、切換手段46は、タンクT1に貯留した根尖保護材料APと、タンクT3に貯留した洗浄液CSとを、切換手段46で切り換えるシーケンス制御を行ってもよい。このようにすることで、切換手段46は、根尖保護材料APと洗浄液CSとのどちらか一方を選択して、その根尖保護材料APと洗浄液CSとの一方を開閉バルブV2及び通電液注入路28を介して注入手段2Aに供給することができる。
また、側枝治療装置1Aは、タンクT3内の洗浄液CSを注入手段2Aに供給する洗浄液注入路(図示省略)を、通電液注入路28とは別に独立して設けてもよい。
【0168】
また、図23に示すように、側枝治療装置1Aは、根尖保護材料APの供給の制御と、根管b内の上層に注入される通電液ELの供給の制御と、根管b内を洗浄するための洗浄液CSの供給の制御と、回路切換手段44の切り換えの制御と、口腔内の液体Lを吸引する吸引の制御の少なくとも一つの制御を行う側枝治療装置制御回路40を有するものであってもよい。
【0169】
この場合、側枝治療装置1Aは、根尖保護材料注入路27、通電液注入路28及び吸引路29を有する注入手段2Aと、対向電極5と、側枝治療装置制御回路40と、タンクT1,T2,T3に圧縮空気を供給するコンプレッサ7と、タンクT4内の液体Lを吸引する吸引装置8と、を備えて構成されている。
【0170】
かかる構成によれば、側枝治療装置1Aは、側枝治療装置制御回路40を有することで、根尖保護材料APの供給制御、通電液ELの供給制御、洗浄液CSの供給制御、回路切換手段44の制御、及び、口腔内の液体Lの吸引制御を行うことができる。このため、それらの制御を治療作業フローに沿って自動制御することも可能となる。また、それらの制御を電気的に制御が可能となるので、CPU45で治療フローに沿って自動制御することも可能となる。
【0171】
図23に示すように、注入手段2Aは、アングル形状のハンドピース10から成る。注入手段2Aは、注入手段2Aの外部に設けたコンプレッサ7の圧縮空気を利用してタンクT1内の根尖保護材料APと、タンクT2内の通電液ELと、タンクT3内の洗浄液CSとを、根尖保護材料注入路27または通電液注入路28から供給する装置である。
【0172】
ハンドピース10のハンドピースヘッド11に取り付けられたチューブ20は、図19に示すように、通電液注入路28と、根尖保護材料注入路27と、吸引路29と、を同心円状に配置している。
また、根管内電極3Aは、図2(a)に示すように、根管内電極3の内部に根尖保護材料注入路27を有する電極内注入路を形成するものであってもよい。
また、根管内電極3Aは、図2(b)、(c)に示すように、根管内電極3A,3Bの外部に根尖保護材料注入路27A,27Bを有する電極外注入路を形成するものであってもよい。
また、根管内電極3Aは、図2(b)、(c)に示すように、シリコンチューブ等から成るチューブ20の外周面を胴メッキすることで外皮3Eaを導電体にして電極として使用可能にしたものであってもよい。
【0173】
図23に示すように、側枝治療装置制御回路40は、高周波電流発生回路41と、根管長測定回路42と、側枝位置検出回路43と、回路切換手段44と、CPU45と、切換手段46と、開閉バルブV1~V4と、を備えて成る。
【0174】
回路切換手段44は、通電液注入路28から注入手段2Aに供給するものを、タンクT2の通電液ELと、タンクT3の洗浄液CSと、のいずれかに切り換えるための装置である。回路切換手段44は、高周波電流発生回路41、根管長測定回路42及び側枝位置検出回路43に電気的に接続されてそれぞれの回路のいずれかに切り換えるシーケンス制御を行う。回路切換手段44は、注入手段2Aの接続端子14と、対向電極5と、にそれぞれ電気的に接続されている。
【0175】
CPU45は、回路切換手段44と、切換手段46と、開閉バルブV1と、開閉バルブV2と、開閉バルブV3と、開閉バルブV4と、にそれぞれ電気的に接続されて、それらを制御する。
【0176】
なお、CPU45は、開閉バルブV1、開閉バルブV2、開閉バルブV3、開閉バルブV4の開閉時間を予め任意に設定することが可能なバルブ開閉時間制御部(図示省略)を設けてもよい。このようにすることにより、CPU45は、各バルブの吐出量を制御することが可能である。
例えば、開閉バルブV1を例に挙げると、コンプレッサの圧力を一定にし、開閉バルブV1の口径が定まっていれば、開閉バルブV1の開く時間を予めCPU45に入力することで、開閉バルブV1の吐出量を制御することが可能となる。即ち、根尖保護材料APの注入量を制御することができる。
【0177】
開閉バルブV1は、タンクT1に貯留された根尖保護材料APを根尖保護材料注入路27を介して注入手段2Aに供給するのを制御する電磁バルブから成る。
開閉バルブV2は、タンクT2に貯留されて根管b内の上層に注入される通電液ELと、タンクT3に貯留されて根管b内を洗浄するための洗浄液CSと、のいずれかを注入手段2Aに供給するのを制御する電磁バルブから成る。
開閉バルブV3は、吸引装置8によって吸引路29を介して吸引されてタンクT4に貯留された口腔内の液体Lの吸引の制御をする電磁バルブから成る。
開閉バルブV4は、タンクT4内に貯留された口腔内の液体LをタンクT4内から外部に排出するのを制御する電磁バルブから成る。
【0178】
吸引装置8は、口腔内の液体Lを、吸引路29を介して吸引してタンクT4に貯留するための装置である。吸引装置8は、側枝治療装置制御回路40の外部に配置されている。吸引装置8は、CPU45によって開閉バルブV3が開弁されることで作動する。タンクT4に貯留された液体Lは、CPU45によって開閉バルブV4が開弁されることで外部に排出される。
【0179】
≪注入手段の変形例≫
図23に示す注入手段2Aは、チューブ20内に液体Lを送出するポンプをハンドピース10内に設けてもよい。この場合は、根尖保護材料APを貯留するタンクT1、通電液ELを貯留するタンクT2、及び、洗浄液CSを貯留するタンクT3をコンプレッサ7の圧縮空気で加圧し、任意の開閉バルブを開弁することで、根尖保護材料AP、通電液ELあるいは洗浄液CSの供給が可能となる。
【0180】
また、ハンドピース10は、ローラポンプP(図8参照)をハンドピース10の外部に設けて、ローラポンプP(図8参照)によって根尖保護材料AP、通電液EL、及び、洗浄液CSをチューブ20から吐出するようにしてもよい。
【0181】
[第3実施形態]
図24は、本発明の第3実施形態に係る側枝治療装置1Bの一例を示す説明図である。
図24に示すように、根尖保護材料APは、絶縁油IOであってもよい。
【0182】
この場合、絶縁油IOは、根管b内の側枝eの開口よりも下側まで注入させる。このように、通電液ELを使用ぜずに、絶縁油IOを根管bの下部に注入したことで、側枝開口部jで気中放電することができる。この場合も、根尖保護材料APが根尖iへの気中放電するのを防ぐことができる。
【0183】
かかる構成によれば、根尖保護材料APを、絶縁油IOにすることによって、根管b内への浸透性をよくすることができると共に、絶縁性を高めることができる。
【0184】
[第4実施形態]
図25は、本発明の第4実施形態に係る側枝治療装置1Cの一例を示す説明図である。
図25に示すように、根尖保護材料APは、粘性を有する液体と、(時間や温度によって)凝固化を促進する凝固成分と、を含有している液体であってもよい。
【0185】
この場合、その液体は、例えば、絶縁油IOや、水に溶けても電気を通さない非電解質溶液等の根尖保護材料APから成る。液体は、根尖保護材料APに凝固剤を入れて根管b内の側枝開口部jよりも下側まで注入させる。根管b内の根尖保護材料APの上側には、根尖保護材料APが凝固した後、通電液ELが根尖保護材料APに上面から側枝開口部jの上方まで注入される。放電は、根管内電極3によって通電液ELの液中で行われる。
【0186】
凝固剤は、天然油脂系脂肪酸(固めるテンプル)、ゼラチン、紅藻類の粘液質(寒天など)、印象材(歯型を採るハイドロコロイド系印象材)等から成る。
また、最初から粘性のある液体を根管b内に注入してもよい。つまり、根尖保護材料APは、ゲル状やペースト状のものであってもよい。具体例を挙げると、根尖保護材料APは、シリコーンオイルコンパウンド電気絶縁・シール用 KS-650N(信越化学工業株式会社製)。
このように、根尖保護材料APは、粘性を有することで、通電液ELが根尖孔cまで流れ込まないようにすることができる。
【0187】
かかる構成によれば、根尖保護材料APは、根管b内でペースト状や固形化することによって、通電液ELが根尖孔c内に浸透するのを阻止することができる。このため、根尖保護材料APは、このような液体を使用することで、液体の比重に関係無く根尖iを保護することができる。
【0188】
なお、本発明は、前記第1~第4実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【符号の説明】
【0189】
1,1A,1B,1C,1D,1E 側枝治療装置
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G 注入手段
2a 目盛
3,3A,3B,3C,3D,3E 根管内電極
3Ea 外皮
4 通電回路
5,5A,5B 対向電極
6 椅子
10 ハンドピース
21 根尖保護材料注入手段
22 通電液注入手段
27,27A,27C,27D 根尖保護材料注入路
28 通電液注入路
29 吸引路
33 ストッパ
40 側枝治療装置制御回路
41 高周波電流発生回路
42 根管長測定回路
43 側枝位置検出回路
44 回路切換手段
AP 根尖保護材料
CS 洗浄液
EL 通電液
IO 絶縁油
L 液体
M 被験者
a 被検査歯(歯牙)
b 根管
c 根尖孔
e 側枝
g 測定基準点(測定基準の位置)
i 根尖
j 側枝開口部
【要約】
【課題】根管から根尖方向に流れる電流を阻止して、根尖に影響を与えずに側枝の位置の検出や、側枝の治療を行えるようにした側枝治療装置を提供すること。
【解決手段】側枝治療装置1は、被験者Mの根管b内に挿入する根管内電極3と、被験者Mの身体に直接または間接的に接続される対向電極5と、を有している。側枝治療装置1は、根管内電極3と対向電極5との電極間に通電回路4を接続して、根管b内にある側枝eを治療する装置である。根管内電極3には、当該根管内電極3から根尖i方向に流れる電流を阻止する根尖保護材料APを根管b内に注入するための根尖保護材料注入路27を設けている。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25