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特許7437678ナノホールが形成されたナノ粒子、並びに、ナノ粒子およびナノ粒子アレイの作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ナノホールが形成されたナノ粒子、並びに、ナノ粒子およびナノ粒子アレイの作製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/02 20060101AFI20240216BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
C30B29/06 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019235317
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102544
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】杉本 泰
(72)【発明者】
【氏名】藤井 稔
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-072475(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131795(WO,A1)
【文献】特開2020-059632(JP,A)
【文献】美濃部晋吾ら,第15回光物性研究会論文集,2004年,pp.349-352
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B82
B01J
C23
JSTPlus/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコンナノ粒子から成り、
粒子表面にナノホールが形成された誘電体ナノ粒子であって、
前記ナノ粒子の粒径が100nm以上1μm未満であり、
前記ナノホールの平均径が、前記ナノ粒子の粒径の1/10~1/2であり、
前記ナノホールが、少なくとも粒子の中心部まで通した孔であることを特徴とするナノ粒子。
【請求項2】
前記ナノホールが、通孔であることを特徴とする請求項に記載のナノ粒子。
【請求項3】
磁場分布シミュレーションによる磁場強度は、前記ナノホールの形成前に比べて、中心部の最大磁場増強度の低下が50%以内に抑制されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記ナノホールの内部空間は、ミー共鳴による磁場増強効果で、光化学反応場として用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ粒子。
【請求項5】
請求項1のナノ粒子の作製方法であって、
結晶シリコンナノ粒子を溶媒に分散させたナノ粒子分散溶液を作製するステップと、
前記ナノ粒子分散溶液に、前記ナノ粒子より小径の金属ナノ粒子を混合するステップと、
前記ナノ粒子の表面に前記金属ナノ粒子を担持させて、前記ナノ粒子の表面に酸化シリコンを形成させるステップと、
前記酸化シリコンをフッ化水素酸によりエッチングさせて除去し、少なくとも前記ナノ粒子の中心部まで通したナノホールを形成させるステップ、
を備えたことを特徴とするナノホールを有するナノ粒子の作製方法。
【請求項6】
請求項1のナノ粒子の作製方法であって、
結晶シリコンナノ粒子を基板上に形成するステップと、
前記ナノ粒子の表面に、前記ナノ粒子より小径の金属ナノ粒子を担持させて、前記金属ナノ粒子により前記ナノ粒子の表面に酸化シリコンを形成させるステップと、
前記酸化シリコンをフッ化水素酸によりエッチングさせて除去し、少なくとも前記ナノ粒子の中心部まで通したナノホールを形成させるステップ、
を備えたことを特徴とするナノホールを有するナノ粒子の作製方法。
【請求項7】
請求項1のナノ粒子の作製方法であって、
コロイダルリソグラフィー法を用いて基板上に配列した微粒子をエッチングマスクとして結晶シリコンナノ粒子アレイを形成するステップと、
再びコロイダルリソグラフィー法を用いて前記ナノ粒子アレイ上に配列した微粒子をエッチングマスクとしてスパッタエッチングを行い、前記ナノ粒子アレイの表面に、少なくとも前記ナノ粒子の中心部まで通したナノホールを形成させるステップ、
を備えたことを特徴とするナノホールを有するナノ粒子アレイの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子表面にナノホールが形成されたナノ粒子、並びに、ナノホールが形成されたナノ粒子、ナノ構造体およびナノ構造体アレイの作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複素誘電率の実数部が正のナノ粒子は、電気的および磁気的双極子共鳴であるミー(Mie)共鳴を示すことが知られている。ミー共鳴とは、波長λ(nm)の光が物質(屈折率n)に入射した場合、物質中では実効波長λ/n(nm)となり、光の実効波長λ/n(nm)が粒子の直径に等しくなるときに定在波が形成され、磁気的双極子共鳴が光学領域に出現する現象である。そして、高屈折率の誘電体ナノ構造は、光(紫外線~近赤外線)によって、ナノ構造内部に増強磁場を誘起することが知られている。しかしながら、ナノ構造の外部から磁場増強部位にアクセスできないため、実際には増強磁場を活用できないといった問題がある。
【0003】
上記問題に鑑み、誘電体ナノ構造に対して、アクセシブルな磁場増強部位を設ける方法が知られている。例えば、電子ビームリソグラフィー(例えば、特許文献1を参照)、収束イオンビーム(FIB;Focused Ion Beam)などの微細加工技術を駆使して、アクセシブルな磁場増強部位を設けることが可能である。ここで本明細書において、アクセシブルというのは、アクセスやアプローチが可能であることの意味に加え、利用できるとの意味で用いている。
また、レーザ微細加工プロセスを用い、焦点に局所的ミクロ爆発を誘導して微細な空洞構造を形成する技術も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
しかしながら、そのような微細加工技術を駆使するアプローチは、非常に小さい面積にしか構造を形成することができず、また非常に高価なプロセスであるため、研究段階における原理検証は可能であっても、実用段階におけるプラットフォームとして採用することは困難であるといった問題がある。
なお、本発明者らは、既に、結晶シリコンナノ粒子のコロイド分散液に関する技術を確立しており(例えば、非特許文献1を参照)、かかる技術を用いて、個々の結晶シリコンナノ粒子にアクセシブルな磁場増強部位を形成する方法について鋭意研究を行ってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-216369号公報
【文献】国際公開パンフレットWO2005/101103
【非特許文献】
【0005】
【文献】H. Sugimoto et al., “Colloidal Dispersion of Sub-Quarter Micron Silicon Spheres for Low-Loss Antenna in Visible Regime”,Advanced Optical Materials,11 July 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如く、従来知られた微細加工技術を駆使するアプローチは、非常に小さい面積にしか構造を形成することができず、また非常に高価なプロセスであるため、実用面で問題がある。
上記状況に鑑みて、本発明は、アクセシブルな磁場増強部位を有する誘電体ナノ構造、特に、結晶シリコンナノ粒子を提供することを目的とする。また、アクセシブルな磁場増強部位を有するナノ粒子、ナノ構造体およびナノ構造体アレイの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、溶液中に分散した高屈折率の誘電体ナノ粒子に対して、溶液中における分散状態を維持したままで、粒子表面にナノホールを形成させる作製方法を見出し、発明の完成に至った。本発明の誘電体ナノ粒子では、粒子表面にナノホールを形成し、増強磁場を誘起できるナノホール内の空間に、外部から分子や物質を導入することが可能であり、磁場増強部位を光化学反応場として活用できる。
【0008】
本発明の誘電体ナノ粒子は、屈折率が3以上である無機材料から成り、粒子表面にナノホールが形成されたことを特徴とする。かかる構成の誘電体ナノ粒子において、ナノホール内の空間は、ミー共鳴による磁場増強効果で、光化学反応場として用いられる。
ここで、屈折率は、可視光域での屈折率である。屈折率が3以上である無機材料としては、シリコン(屈折率4.32)、GaAs(屈折率4.27)、GaP(屈折率3.6)、InP(屈折率3.0)が挙げることができる。特にこれらに限定されないが、屈折率nが3以上の誘電体のナノ結晶を用いて、本発明のナノ粒子が構成される。本発明において、誘電体ナノ粒子としては、特に、結晶シリコンナノ粒子が好適に用いられ、シリコンナノ粒子表面にナノホールが形成される。シリコンは、可視光域で屈折率が4以上と非常に高く、また屈折率の虚数部が小さいことから、磁場増強を実現できるからである。但し、結晶でないアモルファスシリコンによるナノ粒子は本発明の範疇ではない。
【0009】
本発明のナノ粒子、すなわち誘電体ナノ粒子又は結晶シリコンナノ粒子は、平均粒径が、100nm以上1μm未満であることが好ましく、さらに好ましくは、100~250nmである。光(紫外~近赤外線)の周波数領域において、ナノ構造内部に増強磁場を誘起するためである。
【0010】
本発明のナノ粒子において、ナノホールの平均径は、ナノ粒子の平均粒径の1/10~1/2であることが好ましい。磁場増強効果を十分に得るためには、ナノホールの平均径は、ナノ粒子の平均粒径の1/2以下であることが必要であり、また、ナノホール内の空間を利用するためには、ナノ粒子の粒径の1/10以上は確保すべきだからである。
【0011】
本発明のナノ粒子において、ナノホールは、貫通していない孔であっても貫通孔であってもよい。後述するように、磁場双極子共鳴による増強磁場は、粒子中心付近に誘起させることから、少なくとも中心部まで貫通させることが好ましい。
【0012】
本発明のナノ粒子において、磁場強度は、ナノホールの形成前に比べて、中心部の最大磁場増強度の低下が50%以内に抑制されていることが好ましい。後述するように、ナノホールの径は大きくなり、磁場増強空間の体積が大きくなると、磁場増強効果が小さくなる。そのため、ナノホールの径は、ナノ粒子の粒径の一定範囲の割合に制御し、中心部の最大磁場増強度の低下を50%以内に抑制する。
【0013】
次に、本発明のナノホールを有するナノ粒子の作製方法について説明する。
本発明の第1の観点のナノホールを有するナノ粒子の作製方法は、下記のステップ11~14を備える。屈折率が3以上である無機材料から成る誘電体ナノ粒子を溶媒に分散させたナノ粒子分散溶液を作製する(ステップ11)。次に、ナノ粒子分散溶液に、ナノ粒子より小径の金属ナノ粒子を混合する(ステップ12)。そして、誘電体ナノ粒子の表面に金属ナノ粒子を担持させて、金属ナノ粒子により誘電体ナノ粒子の表面に酸化物を形成させる(ステップ13)。最後に、酸化物をエッチングにより除去しナノホールを形成させる(ステップ14)。
ここで、誘電体ナノ粒子の表面に担持させる金属ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)などイオン化傾向の小さい貴金属が用いる。
【0014】
本発明の第2の観点のナノホールを有するナノ粒子の作製方法は、下記のステップ21~24を備える。まず、結晶シリコンナノ粒子を溶媒に分散させたナノ粒子分散溶液を作製する(ステップ21)。次に、ナノ粒子分散溶液に、ナノ粒子より小径の金属ナノ粒子を混合する(ステップ22)。そして、シリコンナノ粒子の表面に金属ナノ粒子を担持させて、金属ナノ粒子によりシリコンナノ粒子の表面に酸化シリコンを形成させる(ステップ23)。最後に、酸化シリコンをフッ化水素酸によりエッチングさせて除去しナノホールを形成する(ステップ24)。
【0015】
本発明のナノホールを有するナノ構造体の作製方法は、屈折率が3以上である無機材料から成る誘電体ナノ構造体を基板上に形成し、次に、誘電体ナノ構造体の表面に、ナノ構造体より小径の金属ナノ粒子を担持させて、金属ナノ粒子により誘電体ナノ構造体の表面に酸化物を形成し、そして、酸化物をエッチングにより除去し誘電体ナノ構造体の表面にナノホールを形成する。
【0016】
次に、本発明のナノホールを有するナノ構造体アレイの作製方法について説明する。
本発明のナノホールを有するナノ構造体アレイの作製方法は、2段階のコロイダルリソグラフィー法を用いる。コロイダルリソグラフィー法とは、自己組織化により規則正しく配列した微粒子を表面にコーティングし、それをマスクとして利用する微細加工法である。まず、コロイダルリソグラフィー法(1段階目)を用いて基板上に配列した微粒子をエッチングマスクとして屈折率が3以上である無機材料から成る誘電体ナノ構造体アレイを形成する。そして、再びコロイダルリソグラフィー法(2段階目)を用いてナノ構造体アレイ上に配列した微粒子をエッチングマスクとしてナノ構造体アレイの表面にナノホールを形成させる。
【0017】
上記の作製方法は、ナノ構造体アレイとして、シリコンナノ構造体アレイが用いることができる。例えば、ガラス基板にシリコン薄膜を積層し、コロイダルリソグラフィー法(1段階目)を用いて、シリコン薄膜上に自己組織化により規則正しく配列した微粒子をエッチングマスクとして反応性イオンエッチングもしくはスパッタエッチングを行うことにより、シリコンナノ構造体アレイを形成する。その後、再び、コロイダルリソグラフィー法(2段階目)を用いて、シリコンナノ構造体アレイ上に配列した微粒子をエッチングマスクとしてエッチングを行い、Siナノ構造体アレイの個々の突起体の上面をエッチングして、突起体の上面中央部にナノホールを形成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のナノ粒子、ナノ構造体およびナノ構造体アレイによれば、従来、不可能であった増強磁場を活用できるといった効果がある。すなわち、増強磁場を誘起できるナノホールにアクセスすることが可能であり、新たな光化学反応場として磁場増強部位を活用できるといった効果がある。
本発明のナノ粒子、ナノ構造体およびナノ構造体アレイを用いることで、例えば、光による一重項酸素の生成の高効率化、分子の励起三重項状態を活用した光化学反応を実現できるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】誘電体ナノ粒子の光学応答スペクトルを示す図
図2】誘電体ナノ粒子内部の電場分布および磁場分布を示す図
図3】本発明のナノホールを有する誘電体ナノ粒子の説明図
図4】本発明のナノホールを有する誘電体ナノ粒子の利用の仕方の概念図
図5】ナノホールを有するSiナノ粒子の光学応答スペクトルを示す図
図6】ナノホールを有するSiナノ粒子の磁場分布シミュレーション結果を示す図
図7】Siナノ粒子にナノホールを形成する方法の概念図
図8】Siナノ粒子にナノホールを形成するための処理フロー図
図9】塩化金酸の濃度とAuナノ粒子の粒径の相関を示すグラフ
図10】Siナノ粒子の分散液に塩化金酸を混合した溶液のTEM像
図11】Siナノ粒子にナノホールを形成する過程におけるTEM・SEM像
図12】Siナノ粒子の粒径と磁気双極子共鳴との相関を示すグラフ
図13】ナノホールの孔径と磁場増強効果との相関を示す図
図14】ナノホールの個数と磁場増強についての説明図
図15】誘電体ナノ粒子(屈折率4)の高次ミー共鳴の活用可能性についての説明図
図16】磁場増強効果による一重項と三重項の状態間の光励起についての説明図
図17】酸素分子の基底状態と励起一重項状態のスピン状態とエネルギーを示す図
図18】Siナノ構造体アレイの作製方法の概念図
図19】Siナノ構造体アレイの作製処理フロー図
図20】作製したSiナノディスクにおける(1)SEM像、(2)3次元模式図、(3)磁場強度分布図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0021】
本発明のナノホールが形成された誘電体ナノ粒子の一実施形態について説明する。屈折率が3以上である無機材料として、シリコン(屈折率n=4.2、以下では屈折率4と簡略化する)を用い、粒子表面にナノホールが形成された結晶シリコンナノ粒子について説明する。
結晶Siナノ粒子(以下、Siナノ粒子ともいう)は、誘電率が正のナノ粒子であり、前述したとおり、誘電率が正のナノ粒子は、ミー共鳴を示す。すなわち、波長λ(nm)の光が屈折率nの物質のナノ粒子に入射すると、物質中では実効波長(λ/n)となり、この実効波長がナノ粒子の直径に等しくなるときに定在波が形成され、磁気双極子共鳴が現われる。
【0022】
図1は、屈折率4の誘電体ナノ粒子A(粒径150nm)と、屈折率2の誘電体のナノ粒子B(粒径300nm)との光学応答スペクトル(散乱断面積)を示している。ここで屈折率2の誘電体としては、例えばZnOなどが挙げられる。ナノ粒子Aでは、可視光域で2つのピークが確認できる。その内、620nm付近のピークは、磁気双極子共鳴によるピークである。一方、ナノ粒子Bでは、620nm付近にピークが見られるが、ナノ粒子Aの場合と比べるとピーク強度は弱い。それぞれのピークは、ミー共鳴によるものであり、ピーク強度が散乱効率に対応する。
図1から、屈折率4のナノ粒子Aが、屈折率2のナノ粒子Bよりも、磁気双極子共鳴が顕著に現れることがわかる。屈折率3以上の高屈折率の誘電体ナノ粒子では、ミー共鳴により光の周波数域(可視~近赤外領域)で、金属ナノ構造とは異なるユニークな光学特性、すなわち、磁気双極子共鳴が顕著に現れるといった光学特性を示す。
【0023】
図2は、誘電体ナノ粒子内部の電場分布(図2(1))と磁場分布(図2(2)(3))を示すものであり、粒子断面における色の濃淡で磁場増強度を示している。電場分布の場合、図2(1)に示すように、粒子表面付近に電場増強度が高い部位があり、中心に向かって電場増強度は小さくなる。一方、磁場分布の場合、図2(2)(3)に示すように、粒子表面から中心に向かって磁場増強度が大きくなる。例えば、屈折率4のナノ粒子A(粒径150nm)の場合では、有限差分時間領域(FDTD;Finite Difference Time Domain)法を用いたシミュレーション結果から、磁気双極子共鳴の励起により、構造の中心部分に大きな磁場増強が観測されることが確認できている。光吸収断面積は磁場強度の2乗(|H/H)に比例するため、粒子の中心部分は、表面部分の600倍以上の光吸収の増強が可能になる。しかしながら、誘電体ナノ粒子の外部から中心付近の磁場増強部位にアクセスできないため、実際には活用できないという問題がある。
【0024】
そこで、図3に示すように、誘電体ナノ粒子1に貫通孔2を設ける、或は、誘電体ナノ粒子1の表面に孔3を設けることにより、ナノ粒子1の外部から内部の磁場増強部位4にアクセスできるようにする。誘電体ナノ粒子に設けた貫通孔2および表面の孔3をナノホールと呼ぶ。図3(1)では、貫通孔であるが、図3(2)では、表面の孔3は、貫通しておらず、孔は、誘電体ナノ粒子1の内部の途中で止まっている。
ナノホール内の空間は、電場増強度は小さくなる一方で、粒子表面の磁場より増強された磁場が存在するため、図4に示すように、ナノホール5内に酸素などの分子7を導入して、ナノ粒子に対して光6を入射すると、増強磁場4が光化学反応場として利用でき、一重項酸素の生成の高効率化、励起三重項状態を活用した光化学反応を実現できる。これについては後述する。
【0025】
図5は、ナノホール(貫通孔)を有するSiナノ粒子と、ナノホールを有しないSiナノ粒子との光学応答スペクトル(散乱断面積)を示している。ナノホールを有するSiナノ粒子と有しないSiナノ粒子とを比較すると、両者の間で光学応答スペクトル(散乱断面積)に大きな差異は無いことがわかる。
また、図6に示すナノホールを有するSiナノ粒子の磁場分布シミュレーションの結果から、ナノホールを有しないSiナノ粒子の磁場分布と大きな差異は無く、粒子内の中心付近に同様に磁場増強部位が存在することがわかる。すなわち、Siナノ粒子にナノホールを設けることにより、ナノホール内の空間がアクセシブルな磁場増強スポットになるのである。例えば、粒径150nmのSiナノ粒子に設けられた孔径20nmのナノホール(中心付近を通る貫通孔)の場合、中心付近のナノホール空間は、粒子表面近傍の磁場の約18倍の増強磁場が形成されることが、FDTD法を用いたシミュレーションによってわかっている。すなわち、Siナノ粒子の中心付近のナノホール空間に、ターゲットとなる分子を配置すると330(=約18)倍以上の顕著な光吸収の増強が期待できる。
【0026】
次に、Siナノ粒子にナノホールを形成する方法について説明する。電子ビームリソグラフィー等の微細加工技術を用いて、Siナノ粒子にナノホールを形成することも可能かもしれないが、前述のごとく実用的ではない。
そこで、本発明者らは、以下に説明する方法を用いて、Siナノ粒子にナノホールを形成させた。まず、Siナノ粒子を溶媒に分散させたSiナノ粒子分散溶液を作製し、作製したSiナノ粒子分散溶液に、Siナノ粒子より小径の金属ナノ粒子を混合する。次に、Siナノ粒子の表面に金属ナノ粒子を担持させて、金属ナノ粒子により水や過酸化水素などの酸化剤への電子移動を促進し、Siナノ粒子の表面に酸化物を形成させる。Siナノ粒子と金属ナノ粒子との界面部分に正孔(ホール)が供給されて酸化反応が生じることになる。そして、粒子表面に形成させた酸化物をエッチングにより除去しナノホールを形成させる。Siナノ粒子と金属ナノ粒子との界面のみ酸化され、酸化物は局所的にしか生じないため、形成された酸化物がエッチングにより除去され、また界面で酸化物が形成され、またエッチングにより除去され、これらが繰り返されることで、ナノホールが形成されていく。
なお、形成されるナノホールは、真っ直ぐとは限らず、屈曲したりする場合もある。金属ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)などイオン化傾向の小さい貴金属が用いることができる。
【0027】
図7は、Siナノ粒子1の表面に金属ナノ粒子を担持させてナノホールを形成する方法の概念図を示している。Siナノ粒子1の表面に金属ナノ粒子8を担持させて、メタルアシストエッチング法を用いて、粒子表面にナノホール5を形成させる。メタルアシストエッチング法では、Siナノ粒子1の表面に付着した金属ナノ粒子8が触媒として機能する。金属ナノ粒子8を担持したSiナノ粒子1が、例えば、過酸化水素とフッ化水素酸の混合溶液に浸漬されると、触媒としての金属ナノ粒子8の直下のSiが選択的にエッチングされ、Siナノ粒子1にナノホール5が形成される。
【0028】
図8は、Siナノ粒子にナノホールを形成するための処理フローを示す。図8に示すように、Siナノ粒子を溶媒に分散させたSiナノ粒子分散液を作製する(ステップS11)。Siナノ粒子分散液に、Siナノ粒子より小径のAuナノ粒子を混合する(ステップS12)。Siナノ粒子の表面にAuナノ粒子を担持させ、Auナノ粒子によりSiナノ粒子の表面に酸化シリコン(SiO)を形成させる(ステップS13)。SiOをフッ化水素酸によりエッチングさせて除去しナノホールを形成させる(ステップS14)。形成されるナノホールの孔径は、担持するAuナノ粒子の粒径に依存することになる。
【0029】
Siナノ粒子の表面にAuナノ粒子を担持させるには、Siナノ粒子を溶媒に分散させたSiナノ粒子分散液に、Auナノ粒子の前駆体溶液を混合することにより行う。金(Au)ナノ粒子を担持させるには、例えば、塩化金酸(HAuCl)をSiナノ粒子分散液に混ぜる。担持させる金属ナノ粒子は、Au以外では、例えば、銀(Ag)を用いることが可能である。銀(Ag)ナノ粒子を担持させるには、例えば、硝酸銀(AgNO)をナノ粒子分散液に混ぜればよい。
ここで、Siナノ粒子の表面に担持させるAuナノ粒子の粒径は制御することができる。図9は、塩化金酸(HAuCl)の濃度と、Auナノ粒子の粒径の相関を示すグラフである。図から塩化金酸(HAuCl)の濃度を調整することにより、Auナノ粒子の粒径が制御できることがわかる。
【0030】
図10(1)~(3)は、Siナノ粒子(粒径100~250mm程度)の分散液に、塩化金酸(HAuCl)を混合した溶液の透過電子顕微鏡(TEM)像を示している。Siナノ粒子1個に対して、1~2個の金(Au)ナノ粒子が表面に付着している様子が確認できる。
図11(1)は、実際に、Siナノ粒子表面に金ナノ粒子を担持させてナノホールを形成する過程におけるTEM像である。シリコン粒子表面に付いた金ナノ粒子が、粒子内部に入り込んでいきナノホールが形成されていく様子が確認できる。図11(2)(3)は、Siナノ粒子表面に金ナノ粒子を担持させてナノホールを形成する過程における走査型電子顕微鏡(SEM)像である。同様に、Siナノ粒子表面にナノホールが形成されている様子が確認できる。図7の概念図では、粒子表面から中心を通る真っ直ぐなナノホールを示したが、図11(1)に示すように、屈曲したナノホールが形成される場合もある。
【0031】
次に、Siナノ粒子の粒径と磁気双極子共鳴の相関について、図12を参照して説明する。図12は、Siナノ粒子の粒径と磁気双極子共鳴の相関を示すグラフである。横軸はSiナノ粒子に入射する光の波長(nm)、縦軸はSiナノ粒子の粒径(nm)を示している。グラフ中の塗りつぶし領域は、磁気双極子共鳴が現れる範囲、すなわち、磁場増強が最も顕著に現れる範囲を示している。Siナノ粒子の粒径制御によって、磁気双極子共鳴が現れる波長は変化する。入射光を前提とした場合には、その入射光の波長によって磁気双極子共鳴が生じるように、シリコン粒子の粒径を制御することにより、Siナノ粒子のナノホール内の空間に生じる磁場増強効果を利用して、当該入射光による光化学反応を実現できるのである。このように、磁場双極子共鳴の波長は、Siナノ粒子のサイズによって任意に制御可能である。
【0032】
また、ナノホールの孔径と磁場増強効果の相関について、図13を参照して説明する。図13(1)は、屈折率4の誘電体ナノ粒子(Siに相当)のナノホール径(半径)と磁場増強効果の相関を説明するグラフである。横軸は誘電体ナノ粒子に入射する光の波長(nm)、縦軸は誘電体ナノ粒子表面に形成されたナノホールの半径(nm)を示している。誘電体ナノ粒子の粒径は150nmである。グラフにおいて、波長650nmから左上に延びている濃淡が淡い領域が最も磁場増強度が高い領域である。ナノホールの半径が10nm(誘電体ナノ粒子の粒径の2/15)の場合(図13(1-a))と30nm(誘電体ナノ粒子の粒径の2/5)の場合(図13(1-b))を比較すると、増強磁場の体積は30nmの場合が大きくなっているが、磁場強度は小さくなっていることが確認できる。磁場増強効果を十分に得るためには、ナノホールの径は、ナノ粒子の粒径の1/2以下であることが必要である。また、ナノホール内の空間を利用するためには、ナノ粒子の粒径の1/10以上は確保すべきである。
また、ナノホールの個数と磁場増強について、図14を参照して説明する。図14(1)(2)は、粒径200nmの誘電体ナノ粒子に半径5nmのナノホールを19個形成した場合の粒子断面の磁場増強度を2方向(Z方向とX方向の2方向)から観察したものである。濃淡が濃い中央領域が最も磁場増強度が高い領域である。19個のナノホールの総体積は、誘電体ナノ粒子の体積の約5%になる。ナノホールが19個形成された場合でも、大きな磁場増強が維持されており、ナノホール数を増加させることで、アクセシブルな増強磁場の総体積を大きくすることができる。
【0033】
図15は、屈折率4の誘電体ナノ粒子(Siに相当)のミー共鳴の高次モードの活用可能性を説明する図である。ここまで、ミー共鳴の磁気双極子共鳴について説明したが、図15(1)に示すとおり、誘電体ナノ粒子(粒径150nm)の散乱特性スペクトルには、波長430nm付近に磁気四重極子共鳴のピークが存在する。この磁気四重極子共鳴のピークは、磁気双極子共鳴のピークに比べると、半値幅が狭く、また、増強磁場は、図15(1-a)に示すとおり、磁気四重極子共鳴の場合、増強磁場は誘電体ナノ粒子の中心からズレていることがわかる。ナノホールが粒子中心付近を貫通するものではなく、屈曲して粒子中心からズレた部位を貫通する場合には、磁気四重極子共鳴を活用することができる。磁気四重極子共鳴による磁場増強度の最大値は、磁気双極子共鳴による磁場増強度の最大値よりも更に2倍以上強度が向上できる。
【0034】
次に、Siナノ粒子のナノホール内の空間に生じる磁場増強効果を利用した光化学反応について説明する。図15は、磁場増強効果による一重項と三重項の状態間の光励起の説明図である。図16(1)に示すように、通常、分子の光励起は、基底一重項状態から励起一重項状態への遷移(S->S遷移)によって行われ、一方、基底一重項状態から励起三重項状態への遷移(S->T遷移)は、スピンの反転を伴う禁制遷移(以下、スピン禁制遷移ともいう)である。そのため、励起三重項状態は間接励起によってのみ生成され、励起三重項状態を用いた光化学反応の効率は、励起一重項状態を用いた効率よりも大幅に低い。
上記のシリコン粒子のナノホール内の空間に生じる磁場増強効果を利用することにより、上記の光励起の制約から脱却して、スピン禁制遷移を光により直接励起することが可能になる。通常、光の周波数領域において発生する磁場は物質に影響を与えないことから、電場に依存する電気双極子による遷移による光励起が支配的であり、磁気双極子による遷移の効果は無視されている。しかしながら、厳密には、基底一重項状態から励起三重項状態へのスピン禁制遷移においても、磁場強度に依存する磁気双極子による遷移は許容されており、基底一重項と励起三重項の状態間の遷移のエネルギーに相当する光の周波数で、大きな磁場増強を実現できれば、スピン禁制遷移の実効吸収断面積を増大することができる。そこで、図16(2)に示すように、スピン禁制遷移の光による直接励起によって、従来に無い新たな光化学反応ルートを構築し、有用化学品の創成を図る。
【0035】
物質(単純な分子を想定)の光の実効吸収断面積は、フェルミの黄金律より、基底状態と励起状態とのエネルギー準位間の相互作用ハミルトンで決定され、簡易的に下記の多項式で与えられる。ここで、pは電気双極子モーメント、Eは電場、mは磁気双極子モーメント、Bは磁場、qは電気四重極子モーメントである。
【0036】
【数1】
【0037】
通常の光と物質の相互作用では、真空中の平面波のE/B比が非常に大きいため(100以上)、上記多項式の第1項の電気双極子による遷移のみが支配的であり、例えば、人工的に電場強度を増大する構造体を導入することにより、分子の実効的な光吸収増大が実現できる。
一方、基底一重項状態から励起三重項状態への遷移(S->T遷移)では、スピン禁制のため、上記多項式の第1項の電気双極子および第3項の多重極子は含まず、磁場に依存する第2項のみが存在する。このため、ナノホールが形成されたSiナノ粒子を用いて、ナノホール内の空間にS->T遷移のエネルギーに相当する周波数領域でアクセシブルな増強磁場を生成し、光化学反応場を実現することにより、分子の実効的な光吸収を増大するのである。
【0038】
図17は、酸素分子の基底状態(三重項酸素)と、励起一重項状態のスピン状態とエネルギーを示す。一重項酸素には同一軌道で逆向きのデルタ型(Δ)と、異なった軌道で逆向きのシグマ型(Σ)の2種類があり、エネルギー差はそれぞれ0.98eV(1269nm)、1.63eV(760nm)である。ナノホールが形成されたSiナノ粒子に、760nmの波長の光を照射することのみによって、磁気双極子効果により、三重項酸素の基底状態(Σ)から一重項酸素の基底状態の一方のシグマ型(Σ)への直接遷移を実現する。このような一重項-三重項直接励起という観点から、より広い範囲の化学物質への適用、すなわち、新たな化学反応ルートを構築し、より付加価値の高い化学品を製造できる環境を提供できる。
【実施例2】
【0039】
実施例1のナノホールを有するSiナノ粒子と同様の性能を示す固体基板型のSiナノ構造体アレイについて説明する。図18は、本実施例のSiナノ構造体アレイの作製方法の概念図を示している。また、図19は、本実施例のSiナノ構造体アレイの作製処理フローを示している。本実施例のナノホールを有するSiナノ構造体アレイは、2段階のコロイダルリソグラフィー法により作製する。コロイダルリソグラフィー法とは、ポリスチレン(PS)などの微小ビーズを1層だけ表面にコーティングして、自己組織化により規則正しく配列した微小ビーズをマスクとして利用する加工法である。まず、1段階目のコロイダルリソグラフィー法を用いて、ガラス基板11に積層したSi薄膜12の上に自己組織化により規則正しく配列した微粒子(PSビーズ13)をエッチングマスクとして、スパッタエッチングを行い、Si薄膜をエッチングし、Siナノ構造体アレイを形成する(ステップS21)。
【0040】
その後、2段階目のコロイダルリソグラフィー法を用いて、Siナノ構造体アレイ上に配列した微粒子(PSビーズ14)をエッチングマスクとして、スパッタエッチング(RIE)を行い、Siナノ構造体アレイの個々の突起体10(以後、Siナノディスクという)の一部のSiをエッチングし、Siナノディスク10の上面中央部にナノホール15を形成する(ステップS22)。ステップS22では、Siナノ構造体アレイに対して半周期分ずらしたエッチングマスクを形成し、Siナノ構造体アレイの各々のSiナノディスク10の上面中央部に三角形のナノホール15を形成する。このようにして、三角形のナノホール15を有するSiナノディスク10の配列構造を形成する。
この作製方法により、構造を大面積に安定して形成することが可能になる。Siナノ構造体アレイの表面に形成するナノホールの孔径と深さを制御することにより、磁気双極子共鳴の共鳴波長を制御して、光化学反応の波長選択性を図ることができる。
【0041】
図20は、作製したSiナノディスクについて、(1)SEM像、(2)その形状の3次元模式図、及び(3)磁場強度分布図を示している。磁場強度分布は、実施例1と同様に、FDTDシミュレーション結果を示しているが、実施例1のSiナノ粒子と同等の磁場増強が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、光による一重項酸素の生成プロセス、励起三重項状態を活用した光化学反応プロセスに利用できる可能性がある。
【0043】
1 Siナノ粒子
2 貫通孔
3 孔
4 増強磁場
5 ナノホール
6 入射光
7 分子
8 金属ナノ粒子
10 Siナノディスク(突起体)
11 ガラス基板
12 Si薄膜
13、14 PSビーズ
15 ナノホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20