(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ガス化装置
(51)【国際特許分類】
C10J 3/30 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
C10J3/30
(21)【出願番号】P 2020002124
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(73)【特許権者】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】松本 秀行
(72)【発明者】
【氏名】猪塚 武志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂雄
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-342588(JP,A)
【文献】特開平01-108297(JP,A)
【文献】特開2011-127843(JP,A)
【文献】米国特許第04987115(US,A)
【文献】特開昭60-092393(JP,A)
【文献】米国特許第05026403(US,A)
【文献】特開2013-224810(JP,A)
【文献】特開昭58-148312(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101576252(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105296010(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/30
C10B 53/00
C10J 3/00
F23G 5/027
B09B 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半炭化処理された木質チップを投入する投入機構と、前記木質チップをガス化する反応塔とで構成された、前記木質チップをガス化するガス化装置であって、
前記投入機構は、
前記反応塔の底部から内部に前記木質チップを搬送する、垂直方向に沿った管状の縦方向搬送路を備え、
前記反応塔には、
前記木質チップからガス化された気体を放出する放出管が上方に設けられ、
前記縦方向搬送路は、
上下方向に沿って立設するとともに、前記反応塔の底部に設けられた挿通孔と連結された管状の縦方向搬送管と、
前記縦方向搬送管に内装され、垂直方向に沿って螺旋状に形成されるとともに、垂直方向に沿った軸を回転軸として回転可能な縦方向スクリュー羽根
とが備えられ、
前記縦方向スクリュー羽根が、
ガス化されずに前記反応塔の底部に落下した前記木質チップを循環するように、前記縦方向搬送管よりも
上方に向けて突出するとともに、前記反応塔の底部よりも上方に露出した
ガス化装置。
【請求項2】
前記投入機構は、
一端側に前記木質チップが投入される投入口が設けられるとともに、他端側に前記縦方向搬送路に対して交差する交差方向に連結する管状の上流側搬送路が備えられ、
前記上流側搬送路は、
管内に、螺旋状に形成されるとともに、回転により前記縦方向搬送路に向けて前記木質チップを搬送する上流側スクリュー羽根が備えられた
請求項1に記載のガス化装置。
【請求項3】
前記反応塔には、ガス化剤を注入する注入部が設けられた
請求項1または請求項2に記載のガス化装置。
【請求項4】
前記縦方向スクリュー羽根の回転速度を制御し、前記反応塔に搬送する前記木質チップの搬送量を調整する搬送量制御部が備えられた
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載のガス化装置。
【請求項5】
前記反応塔は、
前記反応塔の内部に蓄積された前記木質チップの量を検知する蓄積量検知部が備えられ、
前記搬送量制御部は、
前記蓄積量検知部で検知された前記木質チップの量に基づいて、前記縦方向スクリュー羽根の回転速度を制御する
請求項4に記載のガス化装置。
【請求項6】
前記反応塔は、
内部の温度を検知する温度検知部が備えられ、
前記搬送量制御部は、
前記温度検知部で検知された温度に基づいて、前記縦方向スクリュー羽根の回転速度を制御する
請求項4または請求項5に記載のガス化装置。
【請求項7】
前記気体の成分を分析する分析部が備えられ、
搬送量制御部は、
前記気体の成分に基づいて、前記縦方向スクリュー羽根の回転速度を制御する
請求項4乃至請求項6のうちのいずれかに記載のガス化装置。
【請求項8】
前記放出管は、先端側が負圧となるように構成された
請求項1乃至請求項7のうちのいずれかに記載のガス化装置。
【請求項9】
前記放出管は、基端側に比べて先端が細径となる細径部が設けられた
請求項1乃至請求項8のうちのいずれかに記載のガス化装置。
【請求項10】
前記反応塔の底部には、前記底部に蓄積した前記木質チップを排出するアッシュ排出部が設けられた
請求項1乃至請求項9のうちのいずれかに記載のガス化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木質チップをガス化するガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題が大きく取り上げられる中、石油や石炭といった化石燃料を用いた発電の代わりに、例えば、自然由来の木質チップや半炭化処理された木質チップなどのバイオマス燃料から発生した燃焼物質を用いた発電装置などの研究が進められている。
【0003】
このような燃焼物質をバイオマス燃料から発生させるガス化装置の一例として、反応塔の底部に備えられたガス化剤供給口から空気や水蒸気などのガス化剤を供給しながら、反応塔の上部に設けた投入口からバイオマス燃料を投入して加熱し、バイオマス燃料をガス化させるガス化装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
このガス化装置は、反応塔の上方側部に、バイオマス燃料から発生する生成ガスを放出する放出口が設けられた、いわゆるアップドラフト式のガス化装置であり、底部にはガス化されなかったバイオマスの灰などを除去するアッシュ排出部が備えられている。
【0005】
この特許文献1に開示されているガス化装置によると、上部から投入させたバイオマス燃料を反応塔内部でガス化させるとともに、完全にガス化されずに落下したバイオマス燃料(燃焼残渣)を安定して排除できるとされている。
【0006】
しかしながら、反応塔に投入されるバイオマスの大きさは様々であり、十分にガス化されずに落下してきた燃焼残渣は排除される。このため、これらの燃焼残渣を有効活用できずに、バイオマスに対するガス化の効率が低減するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の問題を鑑み、半炭化処理された木質チップを効率よくガス化させることができるガス化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、半炭化処理された木質チップを投入する投入機構と、前記木質チップをガス化する反応塔とで構成された、前記木質チップをガス化するガス化装置であって、前記投入機構は、前記反応塔の底部から内部に前記木質チップを搬送する、垂直方向に沿った管状の縦方向搬送路を備え、前記反応塔には、前記木質チップからガス化された気体を放出する放出管が上方に設けられ、前記縦方向搬送路は、上下方向に沿って立設するとともに、前記反応塔の底部に設けられた挿通孔と連結された管状の縦方向搬送管と、前記縦方向搬送管に内装され、垂直方向に沿って螺旋状に形成されるとともに、垂直方向に沿った軸を回転軸として回転可能な縦方向スクリュー羽根とが備えられ、前記縦方向スクリュー羽根が、ガス化されずに前記反応塔の底部に落下した前記木質チップを循環するように、前記縦方向搬送管よりも上方に向けて突出するとともに、前記反応塔の底部よりも上方に露出したことを特徴とする。
【0010】
前記半炭化処理とは、酸素の供給量を制限し、または遮断した状態において、所定の温度(約200~350度)で加熱して木質チップなどを炭素成分の多い物質にする炭化物生成処理をさす。これにより、エネルギー密度の高い固形燃料を得ることができる。
前記縦方向搬送路は、必ずしも垂直方向に完全一致する必要はなく、例えば垂直方向に対して45度より小さい角度で交差する方向であればよい。
【0011】
この発明によると、半炭化処理された木質チップを効率よくガス化させることができる。
詳述すると、反応塔における高温層に半炭化処理された木質チップを下方から上方に向けて搬送できるとともに、縦方向スクリュー羽根の上端部分で高温層においてガス化されずに落下した木質チップを、反応塔に新たに投入される木質チップとともに反応塔における高温層に再度搬送することができる。
【0012】
これにより、十分にガス化されなかった木質チップを、新たな木質チップとともにガス化させることができる。すなわち、反応塔の内部においてガス化されなかった木質チップを循環させて再利用することができ、エネルギー密度の高い木質チップを効率よくガス化させることができる。
【0013】
また、底部に落下してきた木質チップを縦方向スクリュー羽根により再度上方に搬送できるため、上方から落下して積み重なった木質チップ層を崩すことができる。これにより、積み重ねられた木質チップが崩れ、木質チップが形成するブリッジを解消できる。したがって、高温層において木質チップを安定してガス化させることができる。
【0014】
この発明の態様として、前記投入機構は、一端側に前記木質チップが投入される投入口が設けられるとともに、他端側に前記縦方向搬送路に対して交差する交差方向に連結する管状の上流側搬送路が備えられ、前記上流側搬送路は、管内に、螺旋状に形成されるとともに、回転により前記縦方向搬送路に向けて前記木質チップを搬送する上流側スクリュー羽根が備えられてもよい。
【0015】
この発明により、上流側搬送路から縦方向搬送路に木質チップを搬送する際に、木質チップを細分化することができる。これにより、所望の大きさに細分化された木質チップを反応塔に搬送することができるため、効率よく木質チップをガス化することができる。
【0016】
詳述すると、上流側搬送路から上流側スクリュー羽根で搬出された木質チップは、縦方向スクリュー羽根で縦方向搬送路に取り込まれて搬送されるが、上流側スクリュー羽根の搬送量と縦方向スクリュー羽根の搬送量とを調整することで縦方向搬送路と上流側搬送路との間で木質チップを圧密させて細分化し、所望の大きさとすることができる。このように、木質チップが所望の大きさで細分化されることで、反応塔に搬送された木質チップがブリッジを形成することを防止できるとともに、細分化された木質チップは表面積が拡大し、効率よくガス化させることができる。
【0017】
また、上流側スクリュー羽根と縦方向スクリュー羽根の回転速度を個別に調整することにより、搬送する新たな木質チップの細分化サイズを調整、新たな木質チップの搬送量を制限して反応塔の底部に貯まった木質チップの再利用、あるいは新たな木質チップの搬送量を増加させることができる。すなわち、反応塔の状況に合わせてより効率よく木質チップをガス化させることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記反応塔には、ガス化剤を注入する注入部が設けられてもよい。
この発明により、ガス化剤により木質チップのガス化が促進されるため、より効率よく半炭化処理された木質チップをガス化させることができる。
【0019】
ここで、前記ガス化剤とは、木質チップのガス化を促進する促進剤であり、例えば、空気、酸素、水蒸気などである。なお、ガス化剤は前述の気体などに限定されず、木質チップのガス化を促進できれば、前述の気体の以外の気体や、紛体、液体などであってもよい。
【0020】
またこの発明の態様として、前記縦方向スクリュー羽根の回転速度を制御し、前記反応塔に搬送する前記木質チップの搬送量を調整する搬送量制御部が備えられてもよい。
【0021】
前記搬送量制御部は、例えば、反応塔の内部に投入された木質チップの蓄積量や密度、反応塔内部の温度や放出されるガスの成分などに基づいて、またはこれらの組み合わせにより半炭化処理された木質チップの搬送量を制御してもよい。
【0022】
この発明により、反応塔の内部状況に応じて半炭化処理された木質チップの搬送量を調整でき、エネルギー密度の高い木質チップをより効率よくガス化させることができる。
例えば、反応塔の内部に搬送された半炭化処理された木質チップが過多である場合には、反応塔の内部への木質チップの搬送量を減少させ、内部に蓄積されている木質チップが熱分解などするように調整し、ガス化させることができる。これに対して、反応塔の内部に半炭化処理された木質チップが過少である場合には、反応塔の内部への半炭化処理された木質チップの搬送量を増大させて、ガス化の材料を増加させ、ガス化を促進させることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記反応塔は、前記反応塔の内部に蓄積された前記木質チップの量を検知する蓄積量検知部が備えられ、前記搬送量制御部は、前記蓄積量検知部で検知された前記木質チップの量に基づいて、前記縦方向スクリュー羽根の回転速度を制御してもよい。
【0024】
この発明により、前記蓄積量検知部の検知結果に基づき、半炭化処理された木質チップの搬送量を調整できる。すなわち、反応塔の内部に蓄積された木質チップの量に応じて、木質チップを反応塔に搬送し、反応塔の内部に適量の木質チップを蓄積させることができる。これにより、より効率よく木質チップをガス化させることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記反応塔は、内部の温度を検知する温度検知部が備えられ、前記搬送量制御部は、前記温度検知部で検知された温度に基づいて、前記縦方向スクリュー羽根の回転速度を制御してもよい。
【0026】
この発明により、前記温度検知部の検知結果に基づき、半炭化処理された木質チップの搬送量を調整できる。すなわち、反応塔の内部の温度に応じて、木質チップを反応塔に搬送し、反応塔の内部に適量の木質チップを蓄積させることができる。これにより、より効率よく木質チップをガス化させることができる。
【0027】
例えば、所望の温度と比べて反応塔の内部温度が上昇していると検知した場合には、縦方向スクリュー羽根の回転速度を上げ、反応塔の内部に多くの木質チップを搬送することができる。一方で、所望の温度と比べて反応塔の内部温度が下降していると検知した場合には、縦方向スクリュー羽根の回転速度を下げ、反応塔の内部に搬送する木質チップの量を減少させ、内部に蓄積した木質チップをガス化させることができる。このため、より効率よく木質チップをガス化させることができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記気体の成分を分析する分析部が備えられ、搬送量制御部は、前記気体の成分に基づいて、前記縦方向スクリュー羽根の回転速度を制御してもよい。
この発明により、前記分析部の検知結果に基づき、半炭化処理された木質チップの搬送量を調整し、より効率よく木質チップをガス化させることができる。
【0029】
詳述すると、反応塔から放出される気体の成分は、反応塔の内部温度や、ガス化剤の比率などによって変化する。このことから、放出される気体の成分に基づいて、半炭化処理された木質チップの搬送量を調整することで、反応塔の内部温度や、ガス化剤の比率を調整でき、安定した気体の供給を図ることができる。これにより、反応塔の内部におけるガス化の状態に応じで、木質チップの搬送量を調整でき、適量の木質チップを反応塔の内部に蓄積させ、より効率よく木質チップをガス化させることができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記放出管は、先端側が負圧となるように構成されてもよい。
この発明により、反応塔の内部でガス化された気体を放出管に吸引することができるため、ガス化された気体を放出管から確実に放出することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記放出管は、基端側に比べて先端が細径となる細径部が設けられてもよい。
この発明によると、放出管の先端側が細径となるため、細径部を流れる生成ガスや木質チップなどの流速が放出管の基端側と比べて速くなる。これにより、流速が速くなった箇所の温度が上昇するため、完全にガス化されていない木質チップの残渣を放出管内でガス化させることができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記反応塔の底部には、前記底部に蓄積した前記木質チップを排出するアッシュ排出部が設けられてもよい。
この発明により、反応塔の底部に蓄積し、縦方向スクリュー羽根によって再度上方に搬送されない位置に蓄積した木質チップなどを底部から排出することができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明によれば、半炭化処理された木質チップを効率よくガス化させることができるガス化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図5】反応塔の内部における木質チップの動き概略図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施態を以下図面とともに説明する。
図1はガス化システム1の概略図を示し、
図2はガス化反応装置10及び搬送装置20の概略図を示し、
図3はガス化システム1によるガス化のフローチャートを示し、
図4はサージ槽30に貯蓄した半炭化木質チップSの搬送を表す概略図を示し、
図5は反応塔11の内部での半炭化木質チップSの動きを表した概念図である。
【0036】
ガス化システム1は、半炭化処理された木質チップ(以下、『半炭化木質チップS』とする。)を熱分解・燃焼・還元させてガス化し、発生した生成ガスGを上方から回収するアップドラフト方式のガス化システムである。
【0037】
詳しくは、ガス化システム1は、半炭化木質チップSを略円筒の縦型容器である反応塔11の底部から上方に向けて搬送した後に、内部温度を上げた反応塔11で半炭化木質チップSをガス化する。このようにガス化されて発生した生成ガスG(一酸化炭素及び水素)は、反応塔11の上方に設けられた放出管12から放出されてガス貯蓄部60に貯蓄されている。
【0038】
以下、ガス化システム1の構造及びガス化システム1を用いた半炭化木質チップSのガス化について説明する。
ガス化システム1は、
図1に示すように、半炭化木質チップSをガス化させるガス化反応装置10と、ガス化の原料である半炭化木質チップSをガス化反応装置10に搬送する搬送装置20と、ガス化反応装置10で発生した生成ガスGを貯蓄するガス貯蓄部60とで構成されている。
【0039】
ガス化反応装置10は、半炭化木質チップSをガス化させる反応塔11と、反応塔11で発生した生成ガスGを放出する放出管12と、反応塔11に底部からガス化剤Hを供給するガス化剤供給管13とで構成されている。また、反応塔11の内部には、反応塔11の内部温度を上昇させるヒータ14と、反応塔11の内部温度を検知する温度センサー15と、反応塔11の内部に貯蓄された半炭化木質チップSの貯蓄量を検知する貯蓄量検知センサー16とが備えられている。
【0040】
反応塔11は、略円筒状の縦型容器であり、底面部分は下方に向かって先細りする円錐形状で構成されている。この円錐の頂点部分には、後述する縦方向搬送管51と連結するための挿通孔が設けられている。また、反応塔11の底部には、半炭化木質チップSが完全にガス化されずに残った残渣を外部に掻き出すためのアッシュ排出部17が設けられている。
【0041】
なお、半炭化木質チップSをガス化させる際に、この反応塔11の内部には、
図1に示すように、半炭化木質チップSを熱分解させる熱分解帯T1と、熱分解された半炭化木質チップSを燃焼させる燃焼帯T2と、生成ガスG(一酸化炭素や水素)が発生する還元帯T3の3つの層が下方から上方に向かってこの順に形成される。
【0042】
放出管12は、反応塔11の内部で発生した生成ガスGを外部に放出するための管であり、反応塔11の上部に設けられている。この放出管12は、
図2に示すように、反応塔11の側壁と連結している基端側放出管12aと、先端側に向かうにつれて内径が小さくなる縮径部12bと、縮径部12bと連結する先端側放出管12cとで一体構成されている。なお、先端側放出管12cは基端側放出管12aと比べて縮径している。
【0043】
先端側放出管12cの先端には、生成ガスGを貯蓄するガス貯蓄部60と生成ガスGを吸引するための吸引器71が備えられている。また先端側放出管12cの一部は分岐され、生成ガスGの成分を分析するためのガス分析器72が取り付けられている。
【0044】
この吸引器71により、放出管12は負圧となり、生成ガスGをガス貯蓄部60に導くことができる。
【0045】
ガス貯蓄部60の手前に設けられたガス分析器72は、反応塔11で生成された生成ガスGの成分分析結果を収集し、その分析結果を回転制御部73に送信している。
回転制御部73は、後述するロータリ弁33、上流側スクリュー羽根43、縦方向スクリュー羽根52の回転速度をそれぞれ制御し、反応塔11に搬送される半炭化木質チップSの搬送量を制御している。
【0046】
ガス化剤供給管13は、基端側に接続されたガス化剤供給装置18から供給されるガス化剤H(空気及び水蒸気)を反応塔11の内部に供給する。このガス化剤供給管13は、反応塔11の底部に連結する第一供給管13aと、反応塔11の中央部分の側方と連結する第二供給管13bとで構成されている。
【0047】
第一供給管13aは、後述する縦方向搬送管51に内装された縦方向スクリュー羽根52の回転軸の中央部分に設けられており、縦方向搬送管51の長手方向に沿って上方にガス化剤Hを供給することができる。
【0048】
なお、第一供給管13aは反応塔11の底部から上方に向けてガス化剤Hを供給できればよく、その位置や個数は限定されない。例えば、縦方向搬送管51の外周面に沿って配置されていてもよいし、反応塔11の底部の他の箇所に配置されていてもよい。
【0049】
第二供給管13bは、反応塔11の中央部分の側面に連結され、反応塔11の側方から内部にガス化剤Hを供給することができる。より具体的には、反応塔11の還元帯T3に対応する位置に配置されている。
【0050】
ヒータ14は、半炭化木質チップSをガス化する初期状態において、反応塔11の内部を高温状態とするための加熱装置である。また、温度センサー15による温度検知結果に基づいて、生成ガスGを生成する際の反応塔11の内部温度を上げるために使用されることもある。
【0051】
温度センサー15は、反応塔11の内部温度を検知する。なお、温度センサー15で検知した検知結果は、回転制御部73に送信される。
【0052】
貯蓄量検知センサー16は、反応塔11の内部に蓄積された半炭化木質チップSの量を検知する。具体的には、反応塔11の内部において、蓄積された半炭化木質チップSが所望の高さよりも低いまたは高いかを検出している。この貯蓄量検知センサー16で検知した温度検知結果は、回転制御部73に送信される。回転制御部73は、送信された結果情報に基づいて、ロータリ弁33、上流側スクリュー羽根43、縦方向スクリュー羽根52の回転速度をそれぞれ制御する。
【0053】
搬送装置20は、ガス化反応装置10に搬送する半炭化木質チップSを貯留するサージ槽30と、サージ槽30から半炭化木質チップSをガス化反応装置10に搬送する上流側搬送路40と、反応塔11に半炭化木質チップSを搬送する縦方向搬送路50とで構成され、上端に回転用モータが取り付けられた外付スクリューフィダーFが備えられている。
【0054】
サージ槽30は、半炭化木質チップSを貯留するサージ槽本体31と、サージ槽本体31の下端に接続されている供給管32と、サージ槽本体31と供給管32との間に取り付けられているロータリ弁33とで構成されている。
【0055】
供給管32は、管状の搬送路であり、一端側がロータリ弁33を介して先細りしたサージ槽本体31の下端に設けられた燃料投入口31aと連結し、他端が上流側搬送路40と連結している。
ロータリ弁33は、ロータリ弁用モータ34により回転自在に構成され、サージ槽本体31に貯留された半炭化木質チップSを供給管32に投入することができる。なお、ロータリ弁用モータ34は上述のように回転制御部73により制御されている。また、外付スクリューフィダーFを備えることにより、サージ槽本体31の内での半炭化木質チップSのブリッジ現象を防止でき、より確実に供給管32に半炭化木質チップSを供給することができる。
【0056】
なお、サージ槽本体31に貯留されている半炭化木質チップSは、木質チップなどの木質バイオマスを無酸素条件下で200度~350度の高温により熱分解して得られた、炭素成分の多い炭化物である。この半炭化木質チップSは、重量当たりのエネルギー密度が高く、粉砕性能が良好である。
【0057】
上流側搬送路40は、
図1及び
図2に示すように、管状に構成された上流側搬送管41と、上流側搬送管41の下端からガス化反応装置10側に湾曲した中間搬送管42と、上流側搬送管41の内装された上流側スクリュー羽根43と、上流側スクリュー羽根43を回転駆動させる回転モータ44とで構成されている。
【0058】
上流側搬送管41は、上下方向に沿って立設する管状体であり、側方には、供給管32の先端が連結する投入口が設けられている。また、上流側搬送管41の上端には上流側スクリュー羽根43を回転駆動させる回転モータ44が設けられている。
【0059】
中間搬送管42は、中心軸に対して直交する直交断面の形状が、上流側搬送管41における直交断面と同形状で構成された管状体であり、
図2に示すように、円弧状に曲がっている。また、この中間搬送管42の基端が上流側搬送管41と、先端が縦方向搬送路50を構成する縦方向搬送管51と連結している。
【0060】
上流側スクリュー羽根43は、螺旋状に形成されるとともに、曲がりながら回転可能な、いわゆるバネコンベアに用いる羽根であり、上流側搬送管41及び中間搬送管42に沿って、上流側搬送管41の上端から中間搬送管42の先端まで伸びている。
【0061】
この上流側スクリュー羽根43は、上端が回転モータ44と連結しており、上流側搬送管41及び中間搬送管42の内部で自在に回転することができる。これにより、投入口より投入された半炭化木質チップSを中間搬送管42の先端まで搬送することができる。
なお、回転モータ44は回転制御部73と連結され、回転制御部73によって上流側スクリュー羽根43の回転速度を制御している。
【0062】
縦方向搬送路50は、管状の縦方向搬送管51と、縦方向搬送管51の内装された縦方向スクリュー羽根52と、縦方向スクリュー羽根52を回転駆動させる回転モータ53とで構成されている。
縦方向搬送管51は、上下方向に沿って立設する管状体であり、反応塔11の下方に配置されている。この縦方向搬送管51は中央部分の側方には、上流側搬送管41の下端から連結している中間搬送管42と直交するように連結される連結部が設けられている。
【0063】
縦方向搬送管51に内装された縦方向スクリュー羽根52は、上下方向に沿って螺旋状に形成されるとともに、上下方向に沿った軸を回転軸として回転可能な、いわゆるスクリューフィダーである。この縦方向スクリュー羽根52の下端は、縦方向搬送管51の下端に設けられた回転モータ53と連結されており、縦方向搬送管51の内部で自在に回転することができる。
【0064】
また、縦方向スクリュー羽根52は縦方向搬送管51よりも長く構成されている。このため、縦方向スクリュー羽根52の上方部分には、縦方向搬送管51の上端よりも突出した露出部52aが形成されている。
なお、回転モータ53は回転制御部73に連結されており、回転制御部73により縦方向スクリュー羽根52の回転速度を制御している。
【0065】
このように構成された縦方向搬送路50は、反応塔11の下方に配置され、縦方向搬送管51の上端が挿通孔と連結している。このため、縦方向スクリュー羽根52の上端部分である露出部52aは、挿通孔、すなわち、反応塔11の底部よりも上方に突出している。
【0066】
次に、搬送装置20を用いて半炭化木質チップSを反応塔11に搬送する方法及び反応塔11でのガス化について、
図3に基づいて簡単に説明する。
ガス化システム1を稼働させる前段階として、原料となる半炭化木質チップSをサージ槽本体31に貯留させておく(ステップs0)。このサージ槽本体31に貯留する段階での半炭化木質チップSは半炭化処理がされているため、その質量は半炭化処理する前の木質チップの質量と比べ、約45~68%まで減少している。
【0067】
まず、半炭化木質チップSを反応塔11に搬送するため、ロータリ弁33、中間搬送管42、縦方向スクリュー羽根52をそれぞれ回転させる(ステップs1)。これにより、サージ槽本体31に貯留されている半炭化木質チップSはロータリ弁33で粉砕されながら供給管32に搬送され、そのまま上流側搬送管41に投入される。また、上流側搬送管41に投入された半炭化木質チップSは、上流側スクリュー羽根43の回転により、上流側搬送管41及び中間搬送管42に沿って下方に搬送される。
【0068】
ここで、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を上流側スクリュー羽根43の回転速度よりも遅く設定することで、半炭化木質チップSは中間搬送管42で圧密される。中間搬送管42において圧密された半炭化木質チップSは、縦方向搬送管51に投入される際に、縦方向搬送管51の内部で回転する縦方向スクリュー羽根52で細分化されながら縦方向搬送管51に投入されることとなる。
このように縦方向搬送管51に投入された半炭化木質チップSは、縦方向スクリュー羽根52の回転により縦方向搬送管51に沿って反応塔11の内部に搬送される。
【0069】
このようにして反応塔11の内部に投入された半炭化木質チップSは、サージ槽本体31に貯留された半炭化木質チップSの2分の1から3分の1程度の大きさにまで細分化されている。このため、半炭化木質チップSは反応塔11の内部において、ブリッジを形成することなく蓄積される(
図4参照)。
【0070】
このように反応塔11に搬送される半炭化木質チップSは、
図5に示すように、縦方向スクリュー羽根52による半炭化木質チップSの搬送によって中央部分が重力に打ち勝って盛り上がってくる。一方で、反応塔11の径方向外側部分は、中心部分の盛り上がりによって下方側に押し付けられることとなるため、下方側に移動した半炭化木質チップSは、上方の積み重なる半炭化木質チップSによって圧密されて、粉砕される。
【0071】
また、反応塔11の底部が円錐状に構成されていることにより、下方に押し付けられた半炭化木質チップSは、円錐形状に沿って中央部分に集まることとなる。このように中央部分に集まった半炭化木質チップSは、縦方向スクリュー羽根52に巻き込まれ、再度上方に持ち上げられることとなる。したがって、完全にガス化されなかった半炭化木質チップS(半炭化木質チップSの燃焼残渣)が、反応塔11の底部に蓄積することを防止できる。
【0072】
また、半炭化木質チップSが内部に蓄積される反応塔11は、ガス化システム1の起動開始時に半炭化木質チップSのガス化に好適な温度となるようにヒータ14で高温化させる。そして、半炭化木質チップSのガス化(熱分解、燃焼、還元)が開始されるとヒータ14を停止させる。以後は、基本的に半炭化木質チップSのガス化の燃焼により、反応塔11の内部温度は管理される。
【0073】
半炭化木質チップSのガス化が開始されると、反応塔11の内部で生成ガスG(一酸化炭素・水素)が発生し、この生成ガスGは上部に設け、先端側が負圧とした放出管12に引き込まれる。これにより、ガス貯蓄部60に生成ガスGを貯めることができる。
【0074】
また、放出管12の先端側が負圧となっているため、縦方向スクリュー羽根52の回転軸の中央部分に設けられた第一供給管13a及び第二供給管13bにより、反応塔11の内部にガス化剤Hが供給される。このように、反応塔11に供給されたガス化剤Hは放出管12により上昇気流となるため、反応塔11の内部での半炭化木質チップSのガス化を促進できるとともに、細分化された半炭化木質チップSを上昇させることができる。
【0075】
これにより、細分化された半炭化木質チップSのガス化の促進に合わせて、完全にガス化されなかった半炭化木質チップSが反応塔11の底部に蓄積することをより防止できる。さらには、完全にガス化されなかった半炭化木質チップSの燃焼残渣を放出管12に引き込ませることを手助けすることができる。
【0076】
ここで、放出管12は、基端側放出管12aと先端側放出管12cが縮径部12bにより連結されているため、放出管12の内部を流れる半炭化木質チップSの流速が縮径部12b及び先端側放出管12cの箇所で速くなる。これにより、完全にガス化されなかった半炭化木質チップSの燃焼残渣の温度が上昇するため、半炭化木質チップSの燃焼残渣を完全にガス化させることができる。
これにより、反応塔11の底部に半炭化木質チップSの燃焼残渣が残ることを防止することができる。
【0077】
反応塔11の内部には、温度センサー15を備えられており、反応塔11の内部温度を検知している(ステップs2)。この温度センサー15で検出された温度検知結果は、回転制御部73に送信され、回転制御部73は、送信された検知結果情報に基づいて、ロータリ弁33、上流側スクリュー羽根43、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を制御し、半炭化木質チップSの搬送量を調整している(ステップs6)。
【0078】
同様に、貯蓄量検知センサー16による反応塔11の内部に蓄積された半炭化木質チップSの蓄積量も検知しており(ステップs3)、その検知結果を回転制御部73に送信されている。そして、回転制御部73は送信された検知結果情報に基づいてロータリ弁33、上流側スクリュー羽根43、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を制御し、半炭化木質チップSの搬送量を調整している(ステップs6)。
【0079】
さらにまた、ガス貯蓄部60の手前に取り付けられているガス分析器72により、反応塔11から発生する生成ガスGの成分を分析されている(ステップs4)。この分析結果も、回転制御部73に送信されており、回転制御部73は送信された分析結果情報に基づいてロータリ弁33、上流側スクリュー羽根43、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を制御し、半炭化木質チップSの搬送量を調整している(ステップs6)。
【0080】
例えば、反応塔11の内部温度が適温と比べて低いと温度センサー15で検知した場合には(ステップs2:No)、反応塔11に搬送されている半炭化木質チップSは効率よくガス化できない。この場合、温度検知結果を受信した回転制御部73により、ロータリ弁用モータ34を制御し、ロータリ弁33の回転速度を早くして、供給管32に搬送される半炭化木質チップSを多くすることができる。
【0081】
また、回転制御部73により、回転モータ44と回転モータ53を制御し、上流側スクリュー羽根43と縦方向スクリュー羽根52の回転数を調整することで、中間搬送管42における半炭化木質チップSをより圧密させて、半炭化木質チップSを細分化することができる。具体的には、上流側スクリュー羽根43の回転速度を縦方向スクリュー羽根52の回転速度よりも早くすることで(ステップs6)、サージ槽30から多く搬送された半炭化木質チップSが中間搬送管42で多く詰まることとなり、より圧密される。このようにより圧密された半炭化木質チップSを縦方向スクリュー羽根52によって反応塔11に搬送することとなるため、半炭化木質チップSをより細分化することができる。
これにより、反応塔11に搬送される半炭化木質チップSが効率よくガス化され、反応塔11の内部温度を上昇させることができる。
【0082】
同様に、反応塔11の内部の半炭化木質チップSの量が低下している場合には、貯蓄量検知センサー16が半炭化木質チップSの低下を検知して(ステップs3:No)、その情報を回転制御部73に送信する。この情報に基づいて、回転制御部73が回転モータ44を制御して上流側スクリュー羽根43の回転速度を増加させるとともに、回転制御部73が回転モータ53を制御して縦方向スクリュー羽根52の回転速度を増加させ(ステップs6)、反応塔11に搬送される半炭化木質チップSの搬送量を増加させ、半炭化木質チップSのガス化を促進できる。
【0083】
逆に、反応塔11の内部に蓄積された半炭化木質チップSの量が増加している場合には、貯蓄量検知センサー16が半炭化木質チップSの増加を検知し(ステップs3:No)、その情報を回転制御部73に送信する。この情報に基づいて、回転制御部73が縦方向スクリュー羽根52の回転速度を低下させ(ステップs6)、中間搬送管42において半炭化木質チップSをより圧密させる。これにより、縦方向スクリュー羽根52によって、より細分化された半炭化木質チップSが反応塔11に搬送することができる。
したがって、半炭化木質チップSの搬送量を低下させながらも、半炭化木質チップSを細分化できるため、半炭化木質チップSの表面積が拡大し、効率よくガス化させることができる。
【0084】
同様に、ガス分析器72により検出される生成ガスGの成分が、所望の割合でない場合には(ステップs4:No)、この情報に基づいて、回転制御部73がロータリ弁用モータ34、回転モータ44、回転モータ53を制御して、それぞれの回転速度を調整する(ステップs6)。これにより、反応塔11への半炭化木質チップSの搬送量及びサイズ、密度が調整され、生成ガスGの成分が適正な割合となる。
【0085】
このように、所定量の生成ガスGが得られまで(ステップs5)、反応塔11の内部状況に応じて、ロータリ弁33、上流側スクリュー羽根43、縦方向スクリュー羽根52の回転速度の調整を繰り返し、所望の状態で半炭化木質チップSのガス化が行われる。そして所定量の生成ガスGを得られたのちに、ロータリ弁33、上流側スクリュー羽根43、縦方向スクリュー羽根52の回転を停止し、ガス化を終了する。
【0086】
なお、回転制御部73でガス化剤供給装置18を制御することにより、第一供給管13a及び第二供給管13bから供給されるガス化剤Hの供給量を制御し、反応塔11の内部でのガス化を調整することもできる。
【0087】
このように構成されたガス化システム1は、半炭化木質チップSを投入する搬送装置20と、半炭化木質チップSをガス化する反応塔11とで構成されており、搬送装置20は、反応塔11の底部から内部に半炭化木質チップSを垂直方向(上下方向)に沿って搬送する縦方向搬送路50を備え、反応塔11には、半炭化木質チップSからガス化された生成ガスGを放出する放出管12が上方に設けられ、縦方向搬送路50は、垂直方向に沿って管状に構成され、管内に、垂直方向に沿って螺旋状に形成されるとともに、垂直方向に沿った軸を回転軸として回転可能な縦方向スクリュー羽根52が備えられ、縦方向スクリュー羽根52の上端部分(露出部52a)が、反応塔11の底部よりも上方において露出されている。
【0088】
これにより、反応塔11における高温層に半炭化木質チップSを下方から上方に向けて搬送できるとともに、露出部52aで還元帯T3においてガス化されずに落下した半炭化木質チップSを、反応塔11に新たに投入される半炭化木質チップSとともに反応塔11における還元帯T3に再度搬送することができる。
【0089】
これにより、十分にガス化されなかった半炭化木質チップSを、新たな半炭化木質チップSとともにガス化させることができる。すなわち、反応塔11の内部においてガス化されなかった半炭化木質チップSを循環させて再利用することができ、エネルギー密度の高い半炭化木質チップSを効率よくガス化させることができる。
【0090】
また、底部に落下してきた半炭化木質チップSを露出部52aで再度上方に搬送できるため、上方から落下して積み重なった半炭化木質チップSを崩すことができる。これにより、積み重ねられた半炭化木質チップSが崩れ、半炭化木質チップSが形成するブリッジを解消できる。したがって、高温層において半炭化木質チップSを安定してガス化させることができる。
【0091】
また、搬送装置20は、一端側に半炭化木質チップSが投入される投入口が設けられるとともに、他端側に縦方向搬送路50に対して交差する交差方向に連結する管状の上流側搬送路40が備えられ、上流側搬送路40は、管内に、螺旋状に形成されるとともに、回転により縦方向搬送路50に向けて半炭化木質チップSを搬送する上流側スクリュー羽根43が備えられている。
【0092】
これにより、上流側搬送路40から縦方向搬送路50に半炭化木質チップSを搬送する際に、半炭化木質チップSを細分化することができる。これにより、所望の大きさの半炭化木質チップSを反応塔11に搬送することができるため、エネルギー密度の高い半炭化木質チップSを効率よくガス化することができる。
【0093】
詳述すると、上流側搬送路40から上流側スクリュー羽根43で搬出された半炭化木質チップSは、縦方向スクリュー羽根52で縦方向搬送路50に取り込まれて搬送されるが、上流側スクリュー羽根43の搬送量と縦方向スクリュー羽根52の搬送量とを調整することで縦方向搬送路50と上流側搬送路40との間で半炭化木質チップSを圧密させて細分化し、所望の大きさとすることができる。このように、半炭化木質チップSが細分化されることで、反応塔11に搬送された半炭化木質チップSがブリッジを形成することを確実に防止できるとともに、細分化された半炭化木質チップSは表面積が拡大し、効率よくガス化させることができる。
【0094】
また、上流側スクリュー羽根43と縦方向スクリュー羽根52の回転速度を個別に調整することにより、搬送する新たな半炭化木質チップSの細分化サイズを調整、新たな半炭化木質チップSの搬送量を制限して反応塔11の底部に貯まった半炭化木質チップSの再利用、あるいは新たな半炭化木質チップSの搬送量を増加させることができる。すなわち、反応塔11の状況に合わせてより効率よく半炭化木質チップSをガス化させることができる。
【0095】
さらにまた、反応塔11には、ガス化剤Hを注入するガス化剤供給管13が設けられているため、ガス化剤Hにより半炭化木質チップSのガス化が促進され、エネルギー密度の高い半炭化木質チップSをより効率よくガス化させることができる。
【0096】
また、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を制御し、反応塔11に搬送する半炭化木質チップSの搬送量を調整する回転制御部73が備えられていることにより、反応塔11の内部状況に応じて半炭化木質チップSの搬送量を調整でき、半炭化木質チップSをより効率よくガス化させることができる。
【0097】
例えば、反応塔11の内部に搬送された半炭化木質チップSが過多である場合には、反応塔11の内部への半炭化木質チップSの搬送量を減少させ、内部に蓄積されている半炭化木質チップSが熱分解などするように調整し、ガス化させることができる。これに対して、反応塔11の内部に半炭化木質チップSが過少である場合には、反応塔11の内部への半炭化木質チップSの搬送量を増大させて、ガス化の材料を増加させ、ガス化を促進させることができる。
【0098】
また、反応塔11は、反応塔11の内部に蓄積された半炭化木質チップSの量を検知する貯蓄量検知センサー16が備えられ、回転制御部73は、貯蓄量検知センサー16で検知された半炭化木質チップSの量に基づいて、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を制御していることにより、貯蓄量検知センサー16の検知結果に基づき半炭化木質チップSの搬送量を調整できる。
【0099】
すなわち、反応塔11の内部に蓄積された半炭化木質チップSの量に応じて、半炭化木質チップSを反応塔11に搬送し、反応塔11の内部に適量の半炭化木質チップSを蓄積させることができる。このため、より効率よく半炭化木質チップSをガス化させることができる。
【0100】
また、反応塔11は、内部の温度を検知する温度センサー15が備えられ、回転制御部73は、温度センサー15で検知された温度に基づいて、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を制御していることにより、温度センサー15の検知結果に基づき、半炭化木質チップSの搬送量を調整できる。
【0101】
すなわち、反応塔11の内部の温度に応じて、半炭化木質チップSを反応塔11に搬送し、反応塔11の内部に適量の半炭化木質チップSを蓄積させることができる。このため、より効率よく半炭化木質チップSをガス化させることができる。
【0102】
例えば、所望の温度と比べて反応塔11の内部温度が上昇していると検知した場合には、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を上げ、反応塔11の内部に多くの半炭化木質チップSを搬送し、反応塔11の内部温度を下げることができる。一方で、所望の温度と比べて反応塔11の内部温度が下降していると検知した場合には、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を下げ、反応塔11の内部に搬送する半炭化木質チップSの量を減少させることで、内部に蓄積した半炭化木質チップSの反応効率を上げ、より効率よく半炭化木質チップSをガス化させることができる。
【0103】
さらにまた、気体の成分を分析するガス分析器72が備えられ、回転制御部73は、気体の成分に基づいて、縦方向スクリュー羽根52の回転速度を制御していることにより、ガス分析器72の検知結果に基づき、半炭化木質チップSの搬送量を調整し、より効率よく半炭化木質チップSをガス化させることができる。
【0104】
詳述すると、反応塔11から放出される気体の成分は、反応塔11の内部温度や、ガス化剤Hの比率などによって変化する。このことから、放出される気体の成分に基づいて、半炭化木質チップSの搬送量を調整することで、反応塔11の内部温度や、ガス化剤Hの比率を調整でき、安定した気体の供給を図ることができる。これにより、反応塔11の内部におけるガス化の状態に応じで、半炭化木質チップSの搬送量を調整でき、適量の半炭化木質チップSを反応塔11の内部に蓄積させ、より効率よく半炭化木質チップSをガス化させることができる。
【0105】
また、放出管12は、先端側が負圧となるように構成されていることにより、反応塔11の内部でガス化された気体を放出管12に吸引することができるため、ガス化された気体を放出管12から確実に放出することができる。
【0106】
さらに、ガス化剤供給管13から供給されるガス化剤Hを反応塔11の内部に引き込み上昇気流を起こすことができるため、縦方向スクリュー羽根52により搬送される半炭化木質チップSを、還元帯T3ができている上方に持ち上げやすくなる。さらには、完全にガス化しきっていない半炭化木質チップSを放出管12に引き込むことができる。
【0107】
さらにまた、放出管12は、基端側に比べて先端が細径となる先端側放出管12cが設けられていることにより、放出管12の先端側を細径となる。これにより、縮径部12b及び先端側放出管12cを流れる生成ガスGや半炭化木質チップSなどの流速が速くなり、流速が速くなった箇所の温度が上昇し、完全にガス化されていない半炭化木質チップSの燃焼残渣を放出管12内でガス化させることができる。
【0108】
また、反応塔11の底部には、底部に蓄積した半炭化木質チップSを排出するアッシュ排出部17が設けられていることにより、反応塔11の底部に蓄積し、縦方向スクリュー羽根52によって再度上方に搬送されないような位置に蓄積した半炭化木質チップSなどを底部から排出することができる。
【0109】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
木質チップは、半炭化木質チップSに対応し、同様に、
投入機構は、搬送装置20に対応し、
反応塔は、反応塔11に対応し、
ガス化装置は、ガス化システム1に対応し、
縦方向搬送路は、縦方向搬送路50に対応し、
放出管は、放出管12に対応し、
縦方向スクリュー羽根は、縦方向スクリュー羽根52に対応し、
上流側搬送路は、上流側搬送管41に対応し、
上流側スクリュー羽根は、上流側スクリュー羽根43に対応し、
注入部は、ガス化剤供給管13に対応し、
搬送量制御部は、回転制御部73に対応し、
蓄積量検知部は、貯蓄量検知センサー16に対応し、
温度検知部は、温度センサー15に対応し、
分析部は、ガス分析器72に対応し、
細径部は、先端側放出管12cに対応し、
アッシュ排出部は、アッシュ排出部17に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0110】
例えば、本実施形態において、縦方向搬送路50は、反応塔11に対して垂直方向(上下方向)に立設させているが、垂直方向に完全一致する必要はない。例えば、縦方向搬送路50は垂直方向に対して±30度程度傾いていてもよい。
【0111】
また、本実施形態において、中間搬送管42と縦方向搬送管51とが連結部分において直交しているが、必ずしも直交する必要はなく、中間搬送管42と縦方向搬送管51とが交差していればよい。また、上流側搬送管41が上下方向と交差する方向、例えば水平方向に沿って配置してもよく、さらには上流側搬送管41と縦方向搬送管51とが直接連結する構成としてもよい。
【0112】
また、反応塔11の下方に蓄積された半炭化木質チップSを縦方向スクリュー羽根52が上方に搬送できれば、縦方向搬送路50はどのような構成でもよい。例えば、縦方向搬送路50は、反応塔11の内部において、上方に延びる縦方向搬送管51に部分的な開口が形成され、この開口部分から縦方向スクリュー羽根52が部分的に露出されていてもよい。
【0113】
また、ガス化剤として、本実施形態では、空気及び水蒸気を用いているが、ガス化剤は半炭化木質チップSのガス化を促進すれば、特に限定はされない。そのため、例えば、酸素などの気体の他、別の気体や、紛体、液体などであってもよい。
【0114】
さらにまた、回転制御部73は、例えば、反応塔11の内部に投入された半炭化木質チップSの蓄積量や密度、反応塔11内部の温度や放出されるガスの成分などに基づいて、またはこれらの組み合わせにより半炭化木質チップSの搬送量を制御してもよい。
【0115】
さらにまた、上流側スクリュー羽根43を上流側搬送管41及び中間搬送管42に沿って、上流側搬送管41の上端から中間搬送管42の先端まで伸びた構成としている。しかしながら、この構成に限定されず、例えば、上流側搬送管41の内部には、上下方向に沿った軸を回転軸として回転可能な、いわゆるスクリューフィダーとし、湾曲した中間搬送管42の内部には、上流側搬送管41の内部に設けたスクリューフィダーの回転を伝達できる、上流側スクリュー羽根43のようないわゆるバネコンベア羽根としてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 ガス化システム
11 反応塔
12 放出管
12c 先端側放出管
13 ガス化剤供給管
15 温度センサー
16 貯蓄量検知センサー
17 アッシュ排出部
20 搬送装置
40 上流側搬送路
43 上流側スクリュー羽根
50 縦方向搬送路
52 縦方向スクリュー羽根
72 ガス分析器
73 回転制御部
S 半炭化木質チップ