(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ペレット製造システム、押出機及びペレット製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/92 20190101AFI20240216BHJP
B29B 9/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B29C48/92
B29B9/06
(21)【出願番号】P 2020027970
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】391046078
【氏名又は名称】株式会社タナカ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】戸田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 貴紀
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-278027(JP,A)
【文献】特開平05-269735(JP,A)
【文献】特開2001-334527(JP,A)
【文献】特開平10-180756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B29B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイからストランドを吐出する押出機と、
前記押出機に原料を供給するフィーダーと、
前記ストランドを引き取って加工するとともに、引き取った前記ストランドの径を測定する測定手段を有するストランドカッターと、
前記ダイから吐出されたストランドを前記ストランドカッターへと誘導するストランド誘導装置と、
前記測定手段が測定したストランド径に基づいて、前記ストランドカッターの前記ストランドの引き取り速度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測定手段が測定したストランド径に基づいて前記ストランドカッターに指示した新たなストランドの引き取り速度が許容範囲に収まっていない場合、アラームを発信
し、
前記制御部は、前記測定手段が測定したストランド径に基づいて前記ストランドカッターに指示した新たなストランドの引き取り速度が許容範囲に収まっている場合において、前記測定手段が測定したストランド径が許容範囲に収まっていない場合、アラームを発信し、
前記ストランドカッターは、前記引き取ったストランドを切断したペレットの排出先を決定する切替弁を備え、
前記制御部は、前記アラームの有無に応じて前記切替弁を操作し、前記ペレットの排出先を変更する、
ペレット製造システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記アラームが発信される状態において、前記押出機、前記フィーダー、前記ストランドカッター及び前記ストランド誘導装置の運転を停止する、
請求項
1に記載のペレット製造システム。
【請求項3】
フィーダーから原料が供給されてダイからストランドを吐出するストランド吐出機構と、
前記ダイから吐出されてからストランド誘導装置を通じて誘導された前記ストランドを引き取って加工するとともに、引き取った前記ストランドの径を測定する測定手段を有するストランドカッターの前記ストランドの引き取り速度を、前記測定手段が測定したストランド径に基づいて制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記測定手段が測定したストランド径に基づいて前記ストランドカッターに指示した新たなストランドの引き取り速度が許容範囲に収まっていない場合、アラームを発信
し、
前記制御部は、前記測定手段が測定したストランド径に基づいて前記ストランドカッターに指示した新たなストランドの引き取り速度が許容範囲に収まっている場合において、前記測定手段が測定したストランド径が許容範囲に収まっていない場合、アラームを発信し、
前記ストランドカッターは、前記引き取ったストランドを切断したペレットの排出先を決定する切替弁を備え、
前記制御部は、前記アラームの有無に応じて前記切替弁を操作し、前記ペレットの排出先を変更する、
押出機。
【請求項4】
ダイが設けられた押出機に原料を供給し、
前記ダイからストランドを吐出し、
前記ダイから吐出されたストランドをストランドカッターへと誘導し、
前記ストランドカッターにより前記ストランドを引き取って加工するとともに、引き取った前記ストランドの径を測定し、
測定したストランド径に基づいて、前記ストランドカッターの前記ストランドの引き取り速度を制御し、
前記測定したストランド径に基づいて前記ストランドカッターに指示した新たなストランドの引き取り速度が許容範囲に収まっていない場合、アラームを発信する、
前記測定したストランド径に基づいて前記ストランドカッターに指示した新たなストランドの引き取り速度が許容範囲に収まっている場合において、前記測定したストランド径が許容範囲に収まっていない場合、アラームを発信し、
前記ストランドカッターは、前記引き取ったストランドを切断したペレットの排出先を決定する切替弁を備え、
前記アラームの有無に応じて前記切替弁を操作し、前記ペレットの排出先を変更する、
ペレット製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット製造システム、押出機及びペレット製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機から押し出された溶融樹脂をダイに形成された流出孔から紐状に吐出させてストランドを生成し、さらにストランドを冷却固化した後、当該ストランドをストランドカッターにより一定の長さのペレットに切断するペレット製造技術が知られている。
【0003】
ペレットの製造では、押出機から押し出された溶融樹脂が、コンベアで搬送された後に、ストランドカッターで切断されてペレット化される。このとき、ペレット径(すなわち、切断前のストランド径)は、押出機から押し出されたストランドがストランドカッターに設けられたローラによって引き取られることで調整されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、環境要因などにより、押出機から押し出された溶融樹脂の温度の変動、押出機へ供給される原料の変動やダイ穴の閉塞など影響によって、ストランドの径が許容範囲から逸脱することがある。この場合、そのままペレットの製造が継続すると不良品が増えることとなる。そのため、不良品を防止する技術が求められる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ストランド径の測定結果に基づいたストランド径制御の異常を検知することを目的とする。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様であるペレット製造システムは、ダイからストランドを吐出する押出機と、前記押出機に原料を供給するフィーダーと、前記ストランドを引き取って加工するとともに、引き取った前記ストランドの径を測定する測定手段を有するストランドカッターと、前記ダイから吐出されたストランドを前記ストランドカッターへと誘導するストランド誘導装置と、前記測定手段が測定したストランド径に基づいて、前記ストランドカッターの前記ストランドの引き取り速度を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記測定手段が測定したストランド径に基づいて前記ストランドカッターに指示した新たなストランドの引き取り速度が許容範囲に収まっていない場合、アラームを発信するものである。
【0009】
本発明の一態様である押出機は、フィーダーから原料が供給されてダイからストランドを吐出するストランド吐出機構と、前記ダイから吐出されてからストランド誘導装置を通じて誘導された前記ストランドを引き取って加工するとともに、引き取った前記ストランドの径を測定する測定手段を有するストランドカッターの前記ストランドの引き取り速度を、前記測定手段が測定したストランド径に基づいて制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記測定手段が測定したストランド径に基づいて前記ストランドカッターに指示した新たなストランドの引き取り速度が許容範囲に収まっていない場合、アラームを発信するものである。
【0010】
本発明の一態様であるペレット製造方法は、ダイが設けられた押出機に原料を供給し、前記ダイからストランドを吐出し、前記ダイから吐出されたストランドをストランドカッターへと誘導し、前記ストランドカッターにより前記ストランドを引き取って加工するとともに、引き取った前記ストランドの径を測定し、測定したストランド径に基づいて、前記ストランドカッターの前記ストランドの引き取り速度を制御し、前記測定したストランド径に基づいて前記ストランドカッターに指示した新たなストランドの引き取り速度が許容範囲に収まっていない場合、アラームを発信するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ストランド径の測定結果に基づいたストランド径制御の異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかるペレット製造システムの全体構成を模式的に示す側面図である。
【
図2】ダイ及びダイホルダの構成の詳細を示す斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】ストランドカッターの内部構成を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態1にかかるペレット製造システムの制御動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1にかかるペレット製造システムの制御動作の変形例を示すフローチャートである。
【
図7】ストランドカッターの切替弁の切り替えを示す図である。
【
図8】実施の形態2にかかるペレット製造システムの全体構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクション又は実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。なお、以下の図に示した右手系xyz座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、xy平面が水平面であって、z軸プラス向きが鉛直上向きとなる。
【0016】
実施の形態1
実施の形態1にかかる押出機を含むペレット製造システムの全体構成について説明する。
図1は、ペレット製造システム100の全体構成を模式的に示す側面図である。
図1に示すように、ペレット製造システム100は、本実施の形態にかかる押出機10、フィーダー20、ストランドカッター30及びストランド誘導装置40を有する。
【0017】
押出機10は、樹脂原料を溶融、混錬して紐状のストランドとして押し出す装置である。樹脂原料は、単体樹脂から多成分のコンパウンドなど種々の樹脂あるいはその他の原料が含まれ、例えばポリプロピレンである。押出機10は、単軸押出機であっても、二軸などの多軸押出機であってもよい。
図1に示すように、押出機10は、スクリュ11を内蔵するシリンダ12、スクリュ11を回転駆動するモータ13、樹脂原料の受口であるホッパー14、及び、溶融した樹脂原料(以下、溶融樹脂と呼ぶ)を紐状のストランドとして吐出させるダイ15を有する。押出機10のシリンダ12とダイ15との間には、ダイ15を保持するダイホルダ16が設けられる。ダイ15及びダイホルダ16の構成の詳細については後述する。
【0018】
シリンダ12には、シリンダ12の温度を監視及び制御するための温度計17が複数箇所に設置されている。また、ダイホルダ16には、溶融樹脂の温度を監視するための温度計18及び溶融樹脂の圧力を監視するための圧力計19が設置されている。
【0019】
フィーダー20は、押出機10のホッパー14に樹脂原料を定量供給するものである。ストランドカッター30は、ストランド誘導装置40を介して誘導されたストランドを所望の長さで切断して、ペレットを生成するものである。
【0020】
ストランド誘導装置40は、ストランドをストランドカッター30に誘導するためのメッシュベルト式コンベヤなどの誘導経路41を有する。
【0021】
次に、ダイ及びダイホルダの構成の詳細について説明する。
図2は、ダイ15及びダイホルダ16の構成の詳細を示す斜視図である。
図2に示すように、ダイ15には、複数の流出孔15aがY軸の方向に並んで形成されている。この流出孔15aから溶融樹脂を流吐出させることで紐状のストランドが生成される。
【0022】
ダイホルダ16は、押出機10のシリンダ12から溶融樹脂が流入する流入部16aと、ダイ15へと溶融樹脂が流出する流出部16bからなる。ダイホルダ16には切断機構51を取り付けても良い。切断機構51は、直動式のアクチュエータ51aの先端に刃物51bが取り付けられたものである。アクチュエータ51aを駆動し、流出孔15aから吐出されたストランドを切断する。ストランドは、切断前は樹脂受けプレート42によってオフ品側へ導かれ、カット後は樹脂受けプレート42が移動または回転することにより、ストランドがコンベヤに乗り自動でストランドカッターへ導かれる。
【0023】
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図である。
図3に示すように、ダイホルダ16の流入部16a及び流出部16bの内部には、ダイ15の流出孔15aと連通する流路16aA、16bAがそれぞれ形成されている。流路16aAと流路16bAの境界にはフィルタ52が配置されている。フィルタ52を設置することにより、溶融樹脂に混入した異物や混練が十分でない場合にできる未溶融樹脂などがストランドに混入するのを防止することができる。
【0024】
流入部16aに設置された圧力計19は、圧力を検出する部分が流路16aAに晒されており、溶融樹脂の圧力を検出する。すなわち、圧力計19により、実質的に、溶融樹脂のダイ15から吐出させるときの圧力(以下、「溶融樹脂の吐出圧力」と呼ぶ)が検出される。流出部16bに設置された温度計18は、温度を検出する部分が流路16bAに晒されており、溶融樹脂の温度を検出する。すなわち、温度計18により、実質的に、溶融樹脂のダイ15から吐出させるときの温度(以下、「溶融樹脂の吐出温度」と呼ぶ)を検出する。
【0025】
ストランドカッター30について説明する。
図4に、ストランドカッター30の内部構成を模式的に示す。ストランドカッター30は、引き取りローラ31及びカッター35を有する。
【0026】
引き取りローラ31は、ストランドを所望の径に調整するものであり、水平な固定回転軸32Aを中心として回転する駆動ローラ32と、垂直方向に変位可能であり、水平な可動回転軸33Aを中心として回転するピンチローラ33と、で構成される。ストランドは、駆動ローラ32とピンチローラ33との間に挟持される。
【0027】
駆動ローラ32は、ストランドがスリップしない加工が施した円筒形状の外周面に施された、金属などで構成される剛性部材であり、モータ駆動によって回転する。ピンチローラ33も、ストランドがスリップしない加工が施した円筒形状の外周面に施された、金属などで構成される剛性部材である。ピンチローラ33は、モータによって自転するものであってもよいし、駆動ローラ32の回転に応じて従動するものであってもよい。ピンチローラ33が従動する場合には、駆動ローラ32の回転数を調整することで、ピンチローラ33の回転数を調整できる。ピンチローラ33が自転する場合には、駆動ローラ32とピンチローラ33とを歯車を通じて連動させるなどして、両者の外周面の接触部における回転速度を同期させることが望ましい。
【0028】
カッター35は、回転刃36及び固定刃37で構成される。回転刃36は、水平な回転刃回転軸36Aを中心として回転可能なドラム型カッターとして構成され、ドラムの円周方向に一定間隔で複数の回転刃刃先36Bが設けられている。固定刃37は、引き取りローラ31から押し出されるストランドをガイドする。回転刃36の回転刃刃先36Bがストランドの直上からストランドに当たることで、ストランドが回転刃刃先36Bと固定刃37とに挟まれてせん断される。これにより、ストランドが切断されてペレットが形成される。
【0029】
切断されたペレットは、切替弁39にガイドされて、開口部OPを介して、経路P1を通って製品用ボックスB1へ排出される。なお、切替弁39は、水平方向に延在する切替弁回転軸39Aを中心として回転可能であり、ペレットの排出先を製品用ボックスB1又は不良品用ボックスB2に切り替え可能に構成される。
【0030】
カッター35で切断されるストランドの径は、引き取りローラ31からカッター35に向かって押し出されるストランドの径とほぼ同じであり、ストランドの径は駆動ローラ32とピンチローラ33の外周面間の距離として測定できる。本構成では、ピンチローラ33の可動回転軸33Aの変位量を、可動回転軸33Aを軸支するアーム33Bの変位量として間接的に測定することで、駆動ローラ32とピンチローラ33の外周面間の距離の変動を測定している。アーム33Bの端部33Cに対向する位置には、変位量検出センサ34が設けられている。変位量検出センサ34としては、光学式の非接触センサなどの任意のセンサを用いてもよい。
【0031】
アーム33Bはバネ38によって付勢されている。これにより、ピンチローラ33はストランド径が変動してもストランドに当接することができる。また、駆動ローラ32とピンチローラ33とがストランドを挟持していない場合には、両者の外周面が当接することとなる。
【0032】
押出機10から押し出されてストランドカッター30に到達した時点でのストランドの径を最適値にするには、樹脂材料の比重、ダイの孔の径、長さ及び数、スクリュ11の回転数、樹脂温度などのパラメータに基づいた制御によって実現される。しかし、環境要因による樹脂温度の変動、押出機へ供給される原料の変動やダイ穴の閉塞など影響によって、ダイから押し出されるストランドの径にはばらつきが生じ得るので、その結果、ストランドカッター30に到達したストランドの径も変動し得る。
【0033】
そこで、ストランドカッター30に到達したストランドの径を、変位量検出センサ34によって検出し、検出結果に応じて駆動ローラ32及びピンチローラ33の回転数をフィードバック制御して、引き取り速度を調整する。
【0034】
次に、
図1を参照してペレット製造の流れの概略について説明する。まず、フィーダー20から樹脂原料をホッパー14に供給する。ホッパー14からシリンダ12内に供給された樹脂原料をスクリュ11で混練するとともに、図示しないヒータからの熱とスクリュ11の回転に伴う作用により樹脂原料を溶融させる。そして、溶融樹脂をスクリュ11の回転によってダイ15に押し出す。これにより、溶融樹脂はストランドとしてダイ15から吐出される。ストランドカッター30では、送られてきたストランドを所望の寸法、形状に切断する。これによりペレットが生成される。
【0035】
次に、制御部60による処理の詳細について説明する。なお、以下の説明では、
図1についても適宜参照する。
図5は、ペレット製造システム100の制御動作を示すフローチャートである。
【0036】
ストランド径は、関係するパラメータから、その理論値を求めることができる。例えば、スクリュの回転速度、樹脂原料の供給量、溶融樹脂の吐出圧力(ダイスピード)、溶融樹脂の温度、樹脂ペレットの比重、ダイ孔の数、ストランドカッター引き取り速度などが、ストランド径を決定するパラメータとして用いられる。つまり、ストランド引き取り速度を調整することで所望のストランド径を実現することができる。よって、本構成では、ストランドカッター30に設けられた変位量検出センサ34によってストランド径を継続的に監視して、ストランド引き取り速度をフィードバック制御している。
【0037】
ステップS1
制御部60は、ペレット製造処理を開始するため、押出機10、フィーダー20、ストランドカッター30及びストランド誘導装置40の動作を開始させる。これにより、フィーダー20は押出機10への原料供給を開始し、溶融樹脂が押出機10から押し出されてストランドが生成される。ストランド誘導装置40はストランドをストランドカッター30へ搬送する。このとき、センサの位置におけるストランド径が許容範囲内の値になるように、自動または手動により、溶融樹脂の温度、押出圧力(ダイスピード)及びストランドカッター引き取り速度などの製造パラメータが調整される。
【0038】
ステップS2
その後、ペレット製造中において、制御部60は、ストランド径の監視情報に基づいてストランド引き取り速度をフィードバック制御するため、変位量検出センサ34を通じてストランド径RSを継続的に監視する。
【0039】
ステップS3
制御部60は、測定したストランド径RSが許容範囲内であるかを判定する。
【0040】
ステップS4
制御部60が測定したストランド径RSが許容範囲外であると判定した場合、ストランド径RSを許容範囲内に収めるためにストランド引き取り速度Vが制御される。ストランド引き取り速度Vの制御は、自動又は手動で行われる。
【0041】
ストランド引き取り速度Vの制御を自動で行う場合、制御部60は、ストランドカッター30に引き取られるストランド径RSを許容範囲内の値にするために必要なストランド引き取り速度Vを算出する。そして、制御部60は、算出した新たなストランド引き取り速度Vをストランドカッター30に指示する。
【0042】
ストランド引き取り速度Vの制御を自動で行う場合、例えば、ペレット製造システム100のユーザは、例えば制御部60に設けられたつまみ、ボタン、タッチパネルなどの入力手段を操作することで、新たなストランド引き取り速度Vをストランドカッター30に指示する。
【0043】
ステップS5
制御部60は、新たなストランド引き取り速度Vが予め定められた許容範囲内であるかを判定する。なお、ストランド引き取り速度Vの制御を自動で行う場合には、この判定については新たなストランド引き取り速度Vの算出に続いて行われることが望ましい。
【0044】
ステップS6
新たなストランド引き取り速度Vが許容範囲外である場合には、制御部60は、新たなストランド引き取り速度Vが異常値であるとして、アラームを発信する。
【0045】
ステップS7
新たなストランド引き取り速度Vが許容範囲内である場合には、制御部60は、変位量検出センサ34を通じてストランド径RSを監視する。ステップS6までの処理で、ストランド引き取り速度Vを制御したとしても、例えば押出機10などの異常により、ストランド径RSが許容範囲から外れるおそれがある。そこで、ここでは、ストランド径RSを監視することで、このような異常の検出を図っている。
【0046】
ステップS8
制御部60は、測定したストランド径RSが許容範囲内であるかを判定する。測定したストランド径RSが許容範囲内である場合には、ストランド径RS継続監視(ステップS2)に復帰する。
【0047】
ステップS9
測定したストランド径RSが許容範囲外である場合には、制御部60は、測定したストランド径RSが異常値であるとして、アラームを発信する。
【0048】
以上、本構成によれば、ストランド径の測定結果に基づいてストランド引き取り速度を制御するにあたり、制御対象となるストランド引き取り速度及びストランド径が許容範囲から逸脱した場合に、アラームを発信して異常を報知することができる。
【0049】
これにより、ペレット製造システム100は、ストランド引き取り速度及びストランド径の制御状態の異常発生を早期に認知し、必要な措置を執ることが可能となる。
【0050】
また、ステップS6又はステップS9の後又はこれらのステップと同時に、更なる対応措置を行ってもよい。
図6は、ペレット製造システム100の制御動作の変形例を示すフローチャートである。
【0051】
図6に示すように、ストランドカッター30の切替弁39を操作して、ペレットの排出先を変更してもよい(
図6のステップS10)。
図7に、ストランドカッター30の切替弁39の切り替えを示す。
図7に示すように、制御部60が、ストランドカッター30に切替弁39の操作を指示することで切替弁39を回転させて、ペレットの排出経路をP1からP2変更することで、ペレットの排出先が製品用ボックスB1から不良品用ボックスB2に切り替わる。これにより、製品ペレットに不良品ペレットが混入することを防止できる。
【0052】
また、不良品の混入を避けるため、
図2に示すダイ15の流出孔15aから吐出されたストランドを切断機構51によって切断してもよい。この場合、切断されたストランドは
図1に示す樹脂受けプレート42によって、排出ボックス(付図示)へ排出される。これにより、径が許容範囲から外れたストランドが、ストランドカッター30へ搬送されることを防止できる。
【0053】
また、制御部60は、ペレット製造システム100の各部、すなわち、押出機10、フィーダー20、ストランドカッター30及びストランド誘導装置40の運転を停止してもよい(
図6のステップS11)。これにより、異常が生じた状態でペレットの製造を停止でき、不良品の発生を防止することができる。
【0054】
さらに、押出機10、フィーダー20、ストランドカッター30及びストランド誘導装置40のそれぞれの状態を参照し、これらのうちで異常が発生しているものが有るならば、例えば表示装置に異常が生じている部位を表示してもよい。これにより、ペレット製造システム100のユーザは、いずれの箇所に異常が生じているかを容易に把握し、必要な措置を執ることができる。
【0055】
実施の形態2
実施の形態2にかかるペレット製造システムの全体構成について説明する。
図8は、ペレット製造システム200の全体構成を模式的に示す側面図である。
図8に示すように、ペレット製造システム200は、実施の形態1にかかるペレット製造システム200のストランド誘導装置40をストランド誘導装置70に置換した構成を有する。
【0056】
ストランド誘導装置40はメッシュベルト式コンベヤなどの誘導経路41を有するものとして説明したのに対し、ストランド誘導装置70は、冷却液によってストランドを冷却する構成を有する。
【0057】
ストランド誘導装置70は、架台72に支持された水槽71を有し、水槽71にはストランドSTを冷却するための冷却液73が保持されている。冷却液73の液中では、ストランドSTをガイドするガイドローラ74及び75が設けられている。ガイドローラ74は押出機10の側に設けられ、ガイドローラ75はストランドカッター30の側に設けられる。ダイ15から吐出されたストランドSTは、冷却液73に入ってからガイドローラ74にガイドされてガイドローラ75へ向けて搬送され、ガイドローラ75にガイドされてストランドカッター30へ向けて搬送される。ストランドSTは、冷却液73の液中を通ることで冷却されてから、ストランドカッター30に到達することとなる。
【0058】
本構成においても、ストランドカッター30におけるストランド径の測定結果に基づいてストランド引き取り速度を制御できるので、ストランド誘導装置の構成が変更された場合でも、実施の形態1にかかるペレット製造システム100と同様の動作を行うことが可能である。
【0059】
換言すれば、ストランドをカットする直前でストランド径を測定し、その測定結果に基づいてストランド径の制御を行っているので、ストランドカッターよりも手前の工程の変動の影響を受けない、ないしは影響を軽減できるペレット製造システムを構築することができる。
【0060】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。例えば、
図6のステップS10及びS11は、逆順で行ってもよいし、並行して行ってもよい。
【0061】
制御部60は、押出機10、フィーダー20、ストランドカッター30及びストランド誘導装置40と分離して設けられていてもよいし、これらのいずれかに組み込まれていてもよい。例えば、制御部60は、押出機10に組み込まれてもよい。
【0062】
上述の実施の形態でいう、監視対象パラメータが許容範囲内であるとは、下限値及び上限値で定義された許容範囲に対して、監視対象パラメータが下限値よりも大きく、かつ、上限値よりも小さいことを意味する。また、監視対象パラメータが許容範囲外であるとは、監視対象パラメータが下限値よりも小さい、又は、上限値よりも大きいことを意味する。なお、監視対象パラメータが下限値又は上限値に一致する場合については、必要に応じて、許容範囲内及び許容範囲外のいずれであると判定してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 押出機
11 スクリュ
12 シリンダ
13 モータ
14 ホッパー
15 ダイ
15a 流出孔
16 ダイホルダ
16a 流入部
16aA、16bA 流路
16b 流出部
17、18 温度計
19 圧力計
20 フィーダー
30 ストランドカッター
31 ローラ
32 駆動ローラ
32A 固定回転軸
33 ピンチローラ
33A 可動回転軸
33B アーム
33C 端部
34 変位量検出センサ
35 カッター
36 回転刃
36A 回転刃回転軸
36B 回転刃刃先
37 固定刃
38 バネ
39 切替弁
39A 切替弁回転軸
40、70 ストランド誘導装置
41 誘導経路
42 樹脂受けプレート
51 切断機構
51a アクチュエータ
51b 刃物
52 フィルタ
60 制御部
71 水槽
72 架台
73 冷却液
74、75 ガイドローラ
100、200 ペレット製造システム
B1 製品用ボックス
B2 不良品用ボックス
OP 開口部
P1、P2 排出経路
ST ストランド