(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】レーザ光源
(51)【国際特許分類】
H01S 5/14 20060101AFI20240216BHJP
H01S 5/0687 20060101ALI20240216BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20240216BHJP
【FI】
H01S5/14
H01S5/0687
H01S5/022
(21)【出願番号】P 2020045196
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅重
(72)【発明者】
【氏名】八坂 洋
(72)【発明者】
【氏名】横田 信英
(72)【発明者】
【氏名】北 智洋
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/056474(WO,A1)
【文献】特開2012-256667(JP,A)
【文献】国際公開第2013/021422(WO,A1)
【文献】特開2011-253930(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029647(WO,A1)
【文献】特開昭62-055983(JP,A)
【文献】特開2008-060445(JP,A)
【文献】特開2018-141821(JP,A)
【文献】特開2010-177539(JP,A)
【文献】特開2019-121691(JP,A)
【文献】特開2008-060326(JP,A)
【文献】特開2013-015728(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114577(WO,A1)
【文献】特開2019-087572(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115330(WO,A1)
【文献】特開平04-343283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0215043(US,A1)
【文献】YAMAMOTO, Y. et al.,Theory of a Negative Frequency Feedback Semiconductor Laser,IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS,米国,1985年12月,VOL.QE-21, NO.12,p.1919-p.1928
【文献】YASAKA, H. et al.,FM Noise and Spectral Linewidth Reduction by Incoherent Optical Negative Feedback,IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS,米国,1991年02月,VOL.27, NO.2,p.193-p.204
【文献】KOMLJENOVIC, T. et al.,Monolithically Integrated High-Q Rings for Narrow Linewidth Widely Tunable Lasers,IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS,米国,2015年11月,VOL.51, NO.11,p.0600610
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01S 3/00-3/30
IEEE Xplore
Scitation
AIP Journals
Optica
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力する発光部(11)を有し、前記発光部が出力した光を共振させて出射する共振部(10)と、
前記共振部から出射した光の一部を反射して前記発光部に入力することにより、前記共振部から出射する光の周波数を制御する光負帰還部(30)と、を備えるレーザ光源であって、
前記共振部は、
前記発光部に接続された第1導波路(12)と、
前記発光部が出力した光を反射して前記第1導波路に入力する第1反射部(13)と、
前記第1導波路から離された状態で配置された第2導波路(14)と、
前記第2導波路に接続された第2反射部(15)と、
前記第1導波路と前記第2導波路との間に配置されたリング共振器(16、22)と、を備え、
前記発光部から出力された光が、前記リング共振器によって前記第1反射部と前記第2反射部との間で共振し、前記第1反射部または前記第2反射部から出射して前記リング共振器から遮断された光の一部が、前記第1導波路のうち前記第1反射部および前記発光部とは反対側の端部と、前記第2導波路のうち前記第2反射部とは反対側の端部に透過する構成とされており、
前記光負帰還部は、
前記第1導波路の端部に接続され、前記リング共振器から遮断されて前記第1導波路の端部に透過した光が入射するように配置された第3導波路(31)と、
前記第3導波路に接続された第3反射部(32)と、を備え、
前記第3反射部によって反射した光が、前記第3導波路から出射し、前記第1導波路に入射する構成とされているレーザ光源。
【請求項2】
光を出力する発光部(11)を有し、前記発光部が出力した光を共振させて出射する共振部(10)と、
前記共振部から出射した光の一部を反射して前記発光部に入力することにより、前記共振部から出射する光の周波数を制御する光負帰還部(30)と、を備えるレーザ光源であって、
前記共振部は、
前記発光部に接続された第1導波路(12)と、
前記第1導波路を2つに分岐させる方向性結合器(24)と、
前記発光部が出力した光を反射して前記第1導波路に入力する第1反射部(13)と、
前記第1導波路から離された状態で配置された第2導波路(14)と、
前記第2導波路に接続された第2反射部(15)と、
前記第1導波路のうち前記方向性結合器によって分岐した一方の導波路と前記第2導波路との間に配置されたリング共振器(16、22)と、を備え、
前記発光部から出力された光が、前記リング共振器によって前記第1反射部と前記第2反射部との間で共振し、前記第1反射部または前記第2反射部から出射して前記リング共振器から遮断された光の一部が、該一方の導波路のうち前記第1反射部および前記発光部とは反対側の端部と、前記第2導波路のうち前記第2反射部とは反対側の端部から出射し、前記第1反射部から出射して前記第1導波路のうち前記方向性結合器によって分岐した他方の導波路に入射した光が、該他方の導波路の端部に透過する構成とされており、
前記光負帰還部は、
該他方の導波路の端部に接続され、該他方の導波路の端部に透過した光が入射するように配置された第3導波路(31)と、
前記第3導波路に接続された第3反射部(32)と、を備え、
前記第3反射部によって反射した光が、前記第3導波路から出射し、前記第1導波路に入射する構成とされているレーザ光源。
【請求項3】
前記リング共振器を第1リング共振器として、
前記光負帰還部は、前記第3導波路に接続された第2リング共振器(34)を備える請求項1または2に記載のレーザ光源。
【請求項4】
前記リング共振器を第1リング共振器として、
前記光負帰還部は、前記第3反射部に接続された第2リング共振器(36)を備える請求項1または2に記載のレーザ光源。
【請求項5】
前記光負帰還部は、前記第2リング共振器に接続された光検出器(39)を備える請求項3または4に記載のレーザ光源。
【請求項6】
前記第1導波路または前記第3導波路のうち、前記第1反射部と前記第2反射部とを結ぶ経路から離れた場所に、前記光負帰還部からの戻り光の位相を変調する光位相変調器(40)が配置されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載のレーザ光源。
【請求項7】
前記発光部と前記第3反射部とを結ぶ経路から離れた場所に、前記第2反射部から前記発光部に戻る光の周波数を変調する周波数変調器(25)が配置されている請求項1ないし6のいずれか1つに記載のレーザ光源。
【請求項8】
前記光負帰還部への入力光と、前記光負帰還部から前記発光部への戻り光との位相差が、-π/2以上π以下とされている請求項1ないし7のいずれか1つに記載のレーザ光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光負帰還を用いたレーザ光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光源のスペクトル線幅を狭線化する方法が様々に提案されている。例えば、発光部の外部に共振器が備えられた外部共振器構造のレーザ光源において、共振器長を伸ばすことで狭線化を図る方法が提案されている。しかしながら、共振器長を伸ばすと、狭線化に伴って発振周波数の調整が困難になり、また、周波数の変調範囲が狭くなる。また、電気フィードバック技術によって出力光の位相を調整し、揺らぎを打ち消して線幅係数を下げることで狭線化を図る方法が提案されている。しかしながら、線幅係数を下げるのみでは、狭線化の効果が限定的となる。
【0003】
これに対して、光で揺らぎを打ち消す光負帰還を用いたレーザ光源では、共振器長を伸ばすとともに、線幅係数を下げることが可能であり、上記のレーザ光源よりも狭線化の効果が大きくなる。例えば非特許文献1では、光を発生させる利得媒体と、利得媒体の外部に配置された共振器と、利得媒体および共振器を通る経路の両端部に配置された2つの反射部と、一方の反射部に接続された光負帰還部とを備えるレーザ光源が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Tin Komljenovic and John E. Bowers, "Monolithically Integrated High-Q Rings for Narrow Linewidth Widely Tunable Lasers”, IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS, VOL. 51, NO. 11, 0600610 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載のレーザ光源では、共振器を挟んで利得媒体とは反対側に配置された反射部の外側に、光負帰還部が接続されている。そのため、利得媒体と光負帰還部とを結ぶ経路が長く、光負帰還部からの戻り光のパワー損失が大きい。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、パワー損失を低減できるレーザ光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、光を出力する発光部(11)を有し、発光部が出力した光を共振させて出射する共振部(10)と、共振部から出射した光の一部を反射して発光部に入力することにより、共振部から出射する光の周波数を制御する光負帰還部(30)と、を備えるレーザ光源であって、共振部は、発光部に接続された第1導波路(12)と、発光部が出力した光を反射して第1導波路に入力する第1反射部(13)と、第1導波路から離された状態で配置された第2導波路(14)と、第2導波路に接続された第2反射部(15)と、第1導波路と第2導波路との間に配置されたリング共振器(16、22)と、を備え、発光部から出力された光が、リング共振器によって第1反射部と第2反射部との間で共振し、第1反射部または第2反射部から出射してリング共振器から遮断された光の一部が、第1導波路のうち第1反射部および発光部とは反対側の端部と、第2導波路のうち第2反射部とは反対側の端部に透過する構成とされており、光負帰還部は、第1導波路の端部に接続され、リング共振器から遮断されて第1導波路の端部に透過した光が入射するように配置された第3導波路(31)と、第3導波路に接続された第3反射部(32)と、を備え、第3反射部によって反射した光が、第3導波路から出射し、第1導波路に入射する構成とされている。
【0008】
これによれば、発光部に直接接続された第1導波路の端部に透過した光が光負帰還部に入射する構成とされているため、発光部と光負帰還部とを結ぶ経路が短くなり、パワー損失を低減することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、光を出力する発光部(11)を有し、発光部が出力した光を共振させて出射する共振部(10)と、共振部から出射した光の一部を反射して発光部に入力することにより、共振部から出射する光の周波数を制御する光負帰還部(30)と、を備えるレーザ光源であって、共振部は、発光部に接続された第1導波路(12)と、第1導波路を2つに分岐させる方向性結合器(24)と、発光部が出力した光を反射して第1導波路に入力する第1反射部(13)と、第1導波路から離された状態で配置された第2導波路(14)と、第2導波路に接続された第2反射部(15)と、第1導波路のうち方向性結合器によって分岐した一方の導波路と第2導波路との間に配置されたリング共振器(16、22)と、を備え、発光部から出力された光が、リング共振器によって第1反射部と第2反射部との間で共振し、第1反射部または第2反射部から出射してリング共振器から遮断された光の一部が、該一方の導波路のうち第1反射部および発光部とは反対側の端部と、第2導波路のうち第2反射部とは反対側の端部から出射し、第1反射部から出射して第1導波路のうち方向性結合器によって分岐した他方の導波路に入射した光が、該他方の導波路の端部に透過する構成とされており、光負帰還部は、該他方の導波路の端部に接続され、該他方の導波路の端部に透過した光が入射するように配置された第3導波路(31)と、第3導波路に接続された第3反射部(32)と、を備え、第3反射部によって反射した光が、第3導波路から出射し、第1導波路に入射する構成とされている。
【0010】
これによれば、発光部に直接接続された第1導波路が方向性結合器によって2つに分岐し、分岐した2つの導波路のうち、一方がリング共振器に接続されており、他方に分岐した光が光負帰還部に入射する構成とされている。そのため、発光部と光負帰還部とを結ぶ経路が短くなり、パワー損失を低減することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態にかかるレーザ光源の構成を示す図である。
【
図8】第2実施形態にかかるレーザ光源の構成を示す図である。
【
図9】第3実施形態にかかるレーザ光源の構成を示す図である。
【
図10】戻り光の周波数とパワーとの関係を示す図である。
【
図11】第4実施形態にかかるレーザ光源の構成を示す図である。
【
図12】第5実施形態にかかるレーザ光源の構成を示す図である。
【
図13】第6実施形態にかかるレーザ光源の構成を示す図である。
【
図14】第7実施形態にかかるレーザ光源の構成を示す図である。
【
図15】第8実施形態にかかるレーザ光源の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態のレーザ光源は、光負帰還を用いたレーザ光源であり、
図1に示すように、光を共振させて出射する共振部10と、共振部10から出射する光の周波数を制御する光負帰還部30とを備えている。共振部10と、光負帰還部30は、シリコンフォトニクスによってSOI(Silicon on Insulator)基板に形成された光集積回路で構成されている。
【0015】
共振部10は、光を出力する利得媒体である発光部11を備えている。発光部11は、例えば半導体光増幅器で構成されており、図示しない外部の制御回路から入力される電気信号に応じて作動する。共振部10は、発光部11の外部に配置された共振器によって、発光部11が出力した光を共振させて出射する外部共振器として構成されている。
【0016】
具体的には、共振部10は、発光部11に接続されたバス導波路である導波路12と、発光部11に隣接するように配置され、発光部11が出力した光を反射して導波路12に入力する反射部13とを備えている。導波路12、および、後述する導波路14、31は、エッチングによって線状に形成されたSOI基板のシリコン(Si)層の一部をコア層とし、コア層の下部に位置する犠牲層と、コア層を覆うように形成された絶縁層とをクラッド層として構成されている。反射部13、および、後述する反射部15、32としては、例えば、
図2に示すループミラー、
図3に示すカップラー、
図4、
図5に示すリング、
図6に示す分布ブラッグ反射器を用いることができる。導波路12は第1導波路に相当し、反射部13は第1反射部に相当する。
【0017】
また、
図1に示すように、共振部10は、導波路12から離された状態で配置された導波路14と、導波路14の一端に接続された反射部15と、導波路12と導波路14との間に配置されたリング共振器16とを備えている。導波路14は第2導波路に相当し、反射部15は第2反射部に相当し、リング共振器16は第1リング共振器に相当する。
【0018】
また、共振部10は、方向性結合器17を備えており、導波路12とリング共振器16は、方向性結合器17によって接続されている。また、共振部10は、方向性結合器18を備えており、リング共振器16と導波路14は、方向性結合器18によって接続されている。
【0019】
このような構成の共振部10では、発光部11から出力された光が、リング共振器16によって反射部13と反射部15との間で共振し、反射部13または反射部15から出射する。また、反射部13または反射部15から出射してリング共振器16から遮断された光の一部は、導波路12のうち反射部13および発光部11とは反対側の端部と、導波路14のうち反射部15とは反対側の端部に透過する。
【0020】
光負帰還部30は、共振部10から出射した光の一部を反射して発光部11に入力することにより、共振部10から出射する光の周波数を制御するものである。光負帰還部30は、リング共振器16から遮断されて導波路12の端部に透過した光が入射するように配置された導波路31と、導波路31に接続された反射部32とを備えている。そして、光負帰還部30は、反射部32によって反射した光が、導波路31から出射し、導波路12に入射する構成とされている。導波路31は第3導波路に相当し、反射部32は第3反射部に相当する。
【0021】
本実施形態のレーザ光源では、発光部11から出力された光が、導波路12から方向性結合器17を介してリング共振器16に入力される。前述したように、この光は、リング共振器16によって反射部13と反射部15との間で共振し、反射部13または反射部15から出射する。反射部15から出射してリング共振器16から遮断された光の一部は、導波路14のうち反射部15とは反対側の端部に透過し、レーザ光源の外部へ出射される。また、反射部13から出射してリング共振器16から遮断された光の一部は、導波路12のうち反射部13および発光部11とは反対側の端部に透過する。導波路12の端部に透過した光は、導波路31に入射し、反射部32によって反射して、導波路31、導波路12を伝搬して発光部11に入力される。これにより光負帰還が働き、発光部11から出力される光の周波数の揺らぎが打ち消されて、周波数が安定化される。
【0022】
図7に示す比較例では、反射部15に対して導波路14とは反対側に導波路19が形成されており、反射部15に入射した光の一部が反射部15を透過して導波路19に入射するようになっている。また、この比較例では、光負帰還部30が導波路19の先に配置されており、反射部15を透過した光が、導波路19から導波路31に入射する構成とされている。
【0023】
このような構成では、発光部11と光負帰還部30とを結ぶ光の経路が長くなるため、光負帰還部30からの戻り光のパワー損失が大きくなる。また、光負帰還部30に出力光の一部を分け与えることになるため、発光部11を駆動するための消費電力が大きくなる。
【0024】
これに対して、本実施形態では、発光部11に直接接続された導波路12の端部に透過した光が光負帰還部30に入射する構成とされているため、発光部11と光負帰還部30とを結ぶ光の経路が短くなり、パワー損失を低減することができる。また、導波路12から光負帰還部30に入射する光は、従来の外部共振器では捨てられていた光であるため、これを光負帰還に利用することで、消費電力の増加を抑制することができる。
【0025】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してリング共振器を追加したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0026】
図8に示すように、本実施形態では、共振部10において、導波路12と導波路14との間に2つのリング共振器が配置されており、この2つのリング共振器によって、反射部13と反射部15との間で光が共振する構成とされている。
【0027】
すなわち、共振部10は、方向性結合器18を介してリング共振器16に接続された導波路20と、導波路20の端部に配置された方向性結合器21とを備えている。また、共振部10は、方向性結合器21を介して導波路20に接続されたリング共振器22と、リング共振器22を導波路14に接続する方向性結合器23とを備えている。そして、発光部11から出力された光が、リング共振器16およびリング共振器22によって反射部13と反射部15との間で共振するようになっている。リング共振器22は、第1リング共振器に相当する。
【0028】
このように反射部13と反射部15との間に2つのリング共振器が配置された本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0029】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してリング共振器を追加したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0030】
図9に示すように、本実施形態では、光負帰還部30は、導波路31に方向性結合器33を介して接続されたリング共振器34を備えている。リング共振器34は、第2リング共振器に相当する。
【0031】
このようにすると、光負帰還部30からの戻り光のパワーが、
図10に示すように、ある周波数で落ち込むようになる。この周波数は、図示しないヒータ等で反射部32の温度を変化させることによって調整される。
【0032】
戻り光のパワーが落ち込む周波数を、発光部11から出力される光の所望の周波数に合わせると、所望の周波数で光が出力されているときには、戻り光のパワーが小さくなるため、光負帰還による周波数の変化が小さくなる。そして、発光部11から出力される光の周波数が所望の周波数から離れているときには、戻り光のパワーが大きくなるため、光負帰還による周波数の変化が大きくなる。これにより、周波数の制御が容易になり、レーザ光源の設計が容易になる。
【0033】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してリング共振器を追加したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0034】
図11に示すように、本実施形態では、光負帰還部30は、反射部32に方向性結合器35を介して接続されたリング共振器36を備えている。リング共振器36は、第2リング共振器に相当する。
【0035】
このようにすると、第3実施形態と同様に、光負帰還部30からの戻り光のパワーが落ち込むようになる。そして、パワーが落ち込む周波数を所望の周波数に合わせることで、周波数の制御が容易になり、レーザ光源の設計が容易になる。
【0036】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して導波路の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
図12に示すように、本実施形態では、導波路12が方向性結合器24によって2つの導波路12a、12bに分岐している。そして、導波路12aが、第1実施形態の導波路12と同様に、方向性結合器17によってリング共振器16に接続されている。反射部13から出射してリング共振器16から遮断された光の一部は、導波路12aのうち反射部13および発光部11とは反対側の端部から出射する。また、反射部13から出射して導波路12bに入射した光は、導波路12bの端部に透過し、導波路31に入射する。
【0038】
このような構成では、方向性結合器24の設計によって、光負帰還部30に割り当てる光のパワーを調整することができる。
【0039】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態に対して光検出器を追加したものであり、その他については第4実施形態と同様であるため、第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0040】
図13に示すように、本実施形態では、光負帰還部30は、リング共振器36に方向性結合器37を介して接続された導波路38と、導波路38に接続された光検出器39とを備えている。
【0041】
このような構成では、所望の周波数の光が出力されているときにのみリング共振器36から方向性結合器37、導波路38を介して光検出器39に光が入力されるように設計することで、発光部11から出力される光の周波数の制御が容易になる。
【0042】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して光位相変調器を追加したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
図14に示すように、本実施形態では、光負帰還部30の導波路31上に、光負帰還部30からの戻り光の位相を変調する光位相変調器40が配置されている。
【0044】
光負帰還を用いたレーザ光源では、光負帰還部30への入力光と、光負帰還部30から発光部11への戻り光との位相差が、-π/2以上π以下であるときに、光負帰還の効果が大きくなる。したがって、このように光位相変調器40を配置し、戻り光の位相を調整することによって、光負帰還の効果を大きくし、発光部11から出力される光の周波数の制御を容易にすることができる。
【0045】
なお、2つの光の位相差については、例えば
図14の点Pで示す位置、すなわち、発光部11と導波路12との接続点において測定すればよい。
【0046】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して周波数変調器を追加したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図15に示すように、本実施形態では、共振部10は、反射部15から発光部11に戻る光の周波数を変調する周波数変調器25を備えており、周波数変調器25は、導波路14上に配置されている。
【0048】
レーザ光源が周波数変調器25を備える場合には、発光部11と反射部32とを結ぶ経路とは離れた場所に周波数変調器25を配置することにより、この経路上に周波数変調器25を配置する場合に比べて、パワー損失を低減することができる。
【0049】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0050】
例えば、上記第3~第8実施形態において、共振部10がリング共振器22を備えていてもよい。また、共振部10が、反射部13と反射部15を結ぶ経路上に、リング共振器を3つ以上備えていてもよい。また、上記第4~第8実施形態において、光負帰還部30がリング共振器34を備えていてもよい。また、上記第5、第7、第8実施形態において、光負帰還部30がリング共振器36を備えていてもよい。また、上記第6~第8実施形態において、導波路12が分岐していてもよい。また、上記第7、第8実施形態において、光負帰還部30がリング共振器36および光検出器39を備えていてもよい。また、光検出器39がリング共振器34に接続されていてもよい。また、上記第8実施形態において、レーザ光源が光位相変調器40を備えていてもよい。
【0051】
また、上記第7実施形態では光負帰還部30上に光位相変調器40を配置したが、導波路12または導波路31のうち、反射部13と反射部15とを結ぶ経路から離れた場所であれば、他の場所に光位相変調器40を配置してもよい。例えば、共振部10において、導波路12のうち光負帰還部30に向かって光が出射する端部と、方向性結合器17との間に、光位相変調器40を配置してもよい。また、光位相変調器40を2つ以上配置してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 共振部
11 発光部
12 導波路
13 反射部
14 導波路
15 反射部
16 リング共振器
22 リング共振器
24 方向性結合器
30 光負帰還部
31 導波路
32 反射部
40 光位相変調器