(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
H02K15/02
(21)【出願番号】P 2020077350
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000229645
【氏名又は名称】日本パルスモーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596161341
【氏名又は名称】株式会社ジイエムシーヒルストン
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 謙輔
(72)【発明者】
【氏名】石割 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】阿部 充
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-180645(JP,A)
【文献】特許第6651142(JP,B2)
【文献】特開2009-115171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の永久磁石を、同磁極同士を対向させて繋ぎ合わ
せ固定してシャフトを構成してなるリニアシャフトモータ用の磁石部と、複数の筒状のコイルを中心軸方向に繋ぎ合わせてなり、前記シャフトを、ギャップを介して同心状に内包しつつ前記シャフトとの間でその軸方向に関して相対的移動可能に組み合わされたリニアシャフトモータ用のコイル部とを備えたリニアシャフトモータを、所定ピッチで複数組一列に配置して成る多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニットの製造方法であって、
前記複数組と同数の複数の前記コイル部を前記所定ピッチで一列に並べた状態で受入れ可能な受入れ部を持つコイル固定部材を用意する工程と、
前記コイル固定部材に、前記複数のコイル部を一列に並べて配
置する工程と、
前記一列に並べて配置された前記複数のコイル部の少なくとも隣接するコイル部間に対応する箇所に軸方向に沿って前記コイル部よりも長い
板状の磁気遮蔽板を配置する工程と、
前記受入れ部における前記複数のコイル部と前記磁気遮蔽板との間に硬化性の樹脂を流し込んで硬化させる工程と、
を含む多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニットの製造方法。
【請求項2】
前記シャフトは、前記複数の永久磁石を繋ぎ合わせたものを、非磁性材による筒体に収容してなり、
前記コイル部は、前記複数のコイルを一体化するように当該コイル部に挿通されたコイル一体化筒であって、前記筒体の外径より大きな内径と、当該コイル部の両端から突出した突出部を持つ長さとを持つ樹脂製のコイル一体化筒を有し、
前記コイル固定部材の前記受入れ部は、前記一列に並べて配置される前記複数のコイル部の受入れ空間の底面を規定する底壁と、前記受入れ空間を前記コイル部の軸方向と平行方向に関して規定するように互いに対向し合う一対の壁部材と、前記複数のコイル部から突出している前記突出部が挿入される複数の貫通孔を有して、前記複数のコイル部の両端側における前記一対の壁部材の間に設けられる一対のコイルエンドであって、少なくとも一方が前記底壁に取り外し可能にされたコイルエンドとを有する、請求項1に記載の多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニットの製造方法。
【請求項3】
前記磁気遮蔽板は、前記複数の永久磁石の可動範囲に亘る長さを有して、前記一対のコイルエンドのそれぞれに、前記受入れ空間の深さ方向に設けられた複数のスリットに装着され、
前記磁気遮蔽板の幅は前記受入れ空間の深さよりも大きく、かつ少なくとも前記受入れ空間領域の一部領域に対応する部分の幅を前記受入れ空間の深さと同程度とすることにより、前記受入れ空間領域の一部領域に対応する部分に回路基板を取付け可能な構成とした、請求項2に記載の多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニットの製造方法。
【請求項4】
複数の永久磁石を、同磁極同士を対向させて繋ぎ合わ
せ固定してシャフトを構成してなるリニアシャフトモータ用の磁石部と、複数の筒状のコイルを中心軸方向に繋ぎ合わせてなり、前記シャフトを、ギャップを介して同心状に内包しつつ前記シャフトとの間でその軸方向に関して相対的移動可能に組み合わされたリニアシャフトモータ用のコイル部とを備えたリニアシャフトモータを、所定ピッチで複数組一列に配置して成る多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニットであって、
前記複数組と同数の複数の前記コイル部と、
前記複数のコイル部が前記所定ピッチで一列に並べた状態で受入れ部に配
置されたコイル固定部材と、
前記一列に並べて配置された前記複数のコイル部の少なくとも隣接するコイル部間に対応する箇所に中心軸方向に沿って配
置され、前記コイル部よりも長い
板状の磁気遮蔽板と、
前記複数のコイル部と前記磁気遮蔽板とを同時に固定するために、前記受入れ部における前記複数のコイル部と前記磁気遮蔽板との間に流し込んで硬化される硬化性の樹脂と、
を含む多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニット。
【請求項5】
前記シャフトは、前記複数の永久磁石を繋ぎ合わせたものを、非磁性材による筒体に収容してなり、
前記コイル部は、前記複数のコイルを一体化するように当該コイル部に挿通されたコイル一体化筒であって、前記筒体の外径より大きな内径と、当該コイル部の両端から突出した突出部を持つ長さとを持つ樹脂製のコイル一体化筒を有し、
前記コイル固定部材の前記受入れ部は、前記一列に並べて配置される前記複数のコイル部の受入れ空間の底面を規定する底壁と、前記受入れ空間を前記コイル部の中心軸方向と平行方向に関して規定するように互いに対向し合う一対の壁部材と、前記複数のコイル部から突出している前記突出部が挿入される複数の貫通孔を有して、前記複数のコイル部の両端側における前記一対の壁部材の間に設けられる一対のコイルエンドであって、少なくとも一方が前記底壁に取り外し可能にされたコイルエンドとを有する、請求項4に記載の多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニット。
【請求項6】
前記磁気遮蔽板は、前記複数の永久磁石の可動範囲に亘る長さを有して、前記一対のコイルエンドのそれぞれに、前記受入れ空間の深さ方向に設けられた複数のスリットに装着され、
前記磁気遮蔽板の幅は前記受入れ空間の深さよりも大きく、かつ少なくとも前記受入れ空間領域の一部領域に対応する部分の幅を前記受入れ空間の深さと同程度とすることにより、前記受入れ空間領域の一部領域に対応する部分に回路基板を取付け可能な構成とした、請求項5に記載の多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニットの製造方法に関し、特に、多軸型の分注装置に適した多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータの一種に、リニアシャフトモータと呼ばれるものがある。リニアシャフトモータは、複数の筒状のコイルをその中心軸方向に積層してなるコイル部と、複数の永久磁石を、同磁極同士を対向させて直列に繋ぎ合わせ、繋ぎ合わせた複数の永久磁石よりも長い支持部材に固定してシャフトを構成してなる磁石部とを有し、コイル部の中心孔内に微小ギャップをおいてシャフトを挿通した構成となっている。そして、複数のコイルをU相、V相、W相の三相に分け、各相のコイルに120度ずつ位相のずれた交流電流を流し、永久磁石から発生される磁界と、コイルに流される電流との作用により、シャフトを中心軸方向に駆動する推力が得られるようにしている(特許文献1)。
【0003】
このようなリニアシャフトモータは、電子部品のハンドリング装置、少量液体の吸引、吐出を行う分注装置等、様々な分野に適用されている。ハンドリング装置や分注装置等のいずれにおいても、通常は、リニアシャフトモータのシャフトを第1シャフトとし、この第1シャフトに、その中心軸方向と平行に中空状の第2シャフトを第1シャフトと一体に上下移動するように組み合わせてリニアモータアクチュエータとして提供されている。そして、第2シャフトの中空空間がエアによるハンドリングや液体の吸引、吐出に利用できるように構成されている。
【0004】
例えば、ハンドリング装置の場合、第2シャフトの先端に真空吸着器のような治具を装着し、第1シャフトの上下移動に同期して電子部品のハンドリングを行うように構成されている(特許文献2)。一方、分注装置の場合、第2シャフトの先端にノズルを装着して分注ヘッドとし、第1シャフトの上下移動に同期してノズルの内部圧力を適宜増減させることにより、液体の吸引、吐出を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-139861号公報
【文献】特開2012-090492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、上記のような第1シャフトと第2シャフトの組み合わせによるリニアモータアクチュエータを複数組、一列に並べて配置構成し、一括して同じ作業動作を行わせることで作業効率を向上させるようにした、多軸型のリニアモータアクチュエータと呼ばれるものが提供されている。多軸型のリニアモータアクチュエータは、例えば、個別に製造された上記のような分注装置を複数組、一列に並べて配置構成し、医薬品、化粧品、バイオなどの分野で分注作業を行うための多軸型の分注装置として適用することが行われている。多軸型の分注装置によれば、複数組の分注装置に対して一括して同じ作業動作を行わせるので、人の手作業による分注作業に比べて大幅な省力化と、分注ミスの防止に有効である。
【0007】
これまでの多軸型の分注装置は、例えば臨床検査装置として、96(8サンプル×12列)検体用のマイクロプレートと組み合わされる場合、8組の分注装置が一列に並ぶように組み立てられて8軸同時制御型、すなわち多軸型の分注装置として構成されている。そして、多軸型の分注装置を搬送機構により液体(例えば試薬)の吸引場所と吐出場所(すなわちマイクロプレート)との間を往復移動させるように構成されている。よって、これまでの多軸型の分注装置は、個別に製造された複数組の分注装置の組み合わせにより製造されるのが一般的であり、同じ量の試薬を同じタイミングでマイクロプレートに吐出する分注作業のみ可能である。
【0008】
しかしながら、第1シャフト(リニアシャフトモータ)と第2シャフトの組み合わせによるリニアアクチュエータを個別に製造したうえで、これを複数組組み合わせるというこれまでの多軸型の分注装置は、組立工程数、つまり製造工程数が多く、製造コストを削減しにくいという問題点がある。
【0009】
一方、多軸型の分注装置に対し、複数組の分注装置のそれぞれを独立制御可能とする要求が高まっている。多軸独立制御型の分注装置によれば、同じ列であっても軸毎に個別の試薬量を個別のタイミングでマイクロプレートに吐出し、検体の反応をモニタリングすることができる。つまり、マイクロプレートに吐出する試薬量とタイミングをサンプル毎に設定することができ、試薬の吸引、吐出を自動化された制御形態で実行できることにより、客観的で信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0010】
上記のような問題点や要求に鑑みて、本発明の課題は、多軸リニアモータアクチュエータにおける複数組のコイル部を一括して製造するのに適したコイルユニットの製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の具体的な課題は、多軸独立制御型の分注装置における複数組のコイル部を一括して製造するのに適したコイルユニットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、複数の永久磁石を、同磁極同士を対向させて繋ぎ合わせ固定してシャフトを構成してなるリニアシャフトモータ用の磁石部と、複数の筒状のコイルを中心軸方向に繋ぎ合わせてなり、前記シャフトを、ギャップを介して同心状に内包しつつ前記シャフトとの間でその軸方向に関して相対的移動可能に組み合わされたリニアシャフトモータ用のコイル部とを備えたリニアシャフトモータを、所定ピッチで複数組一列に配置して成る多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニットの製造方法であって、
前記複数組と同数の複数の前記コイル部を前記所定ピッチで一列に並べた状態で受入れ可能な受入れ部を持つコイル固定部材を用意する工程と、
前記コイル固定部材に、前記複数のコイル部を一列に並べて配置する工程と、
前記一列に並べて配置された前記複数のコイル部の少なくとも隣接するコイル部間に対応する箇所に軸方向に沿って前記コイル部よりも長い板状の磁気遮蔽板を配置する工程と、
前記受入れ部における前記複数のコイル部と前記磁気遮蔽板との間に硬化性の樹脂を流し込んで硬化させる工程と、
を含む多軸リニアモータアクチュエータにおけるコイルユニットの製造方法が提供される。
【0013】
なお、前記シャフトは、前記複数の永久磁石を繋ぎ合わせたものを、非磁性材による筒体に収容してなり、
前記コイル部は、前記複数のコイルを一体化するように当該コイル部に挿通されたコイル一体化筒であって、前記筒体の外径より大きな内径と、当該コイル部の両端から突出した突出部を持つ長さとを持つ樹脂製のコイル一体化筒を有し、
前記コイル固定部材の前記受入れ部は、前記一列に並べて配置される前記複数のコイル部の受入れ空間の底面を規定する底壁と、前記受入れ空間を前記コイル部の軸方向と平行方向に関して規定するように互いに対向し合う一対の壁部材と、前記複数のコイル部から突出している前記突出部が挿入される複数の貫通孔を有して、前記複数のコイル部の両端側における前記一対の壁部材の間に設けられる一対のコイルエンドであって、少なくとも一方が前記底壁に取り外し可能にされたコイルエンドとを有する、ことが好ましい。
【0014】
また、前記磁気遮蔽板は、前記複数の永久磁石の可動範囲に亘る長さを有して、前記一対のコイルエンドのそれぞれに、前記受入れ空間の深さ方向に設けられた複数のスリットに装着され、
前記磁気遮蔽板の幅は前記受入れ空間の深さよりも大きく、かつ少なくとも前記受入れ空間領域の一部領域に対応する部分の幅を前記受入れ空間の深さと同程度とすることにより、前記受入れ空間領域の一部領域に対応する部分に回路基板を取付け可能な構成とする、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多軸リニアモータアクチュエータにおける複数組のコイル部を一括して製造することができるので、多軸リニモータアクチュエータの組立工程数、製造工程数を低減することができ、その結果、製造コストの削減に有効なコイルユニットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る製造方法により製造された8軸独立制御型の分注装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示された8軸独立制御型の分注装置から、複数のリニアシャフトモータと複数の分注ヘッド及びこれらの上下の連結部材を抽出して示した斜視図である。
【
図3】
図1に示された8軸独立制御型の分注装置から、図中左側の4組のリニアシャフトモータと分注ヘッドの組み合わせ(4軸独立制御型の分注装置)を抽出して示した斜視図である。
【
図5】
図1に示された8軸独立制御型の分注装置から、1組のリニアシャフトモータと分注ヘッドの組み合わせ及びこれらの上下の連結部材を抽出して示した側面図である。
【
図6】
図5に示されたリニアシャフトモータの一部の内部構造を示した断面図である。
【
図7】
図4に示されたリニアシャフトモータと分注ヘッド及びこれらの周辺部材の組み合わせから、磁気遮蔽板を取り外して示した部分断面側面図である。
【
図8】
図4に示された分注ヘッドの主要部の縦断面図である。
【
図9】
図1に示された8軸独立制御型の分注装置における一対のコイルユニット及びセンタープレートと、これらを側面で連結する連結板とを、分解して示した斜視図である。
【
図10】本発明を4軸独立制御型の分注装置に適用する場合のコイルユニットの製造過程を、順を追って説明するための斜視図である。
【
図11】
図10に示されたコイルユニットの構成要素であるコイル部の斜視図である。
【
図12】
図10に示されたコイルユニットを、その一部を分解して示した斜視図である。
【
図13】
図10に示されたコイルユニットに取付られる回路基板の一例を示した図である。
【
図14】
図9に示された一対のコイルユニットの左側のコイルユニットを別角度から見た斜視図である。
【
図15】
図1に示された8軸独立制御型の分注装置における上側連結部材の配置形態を示す上面図である。
【
図16】
図1に示された8軸独立制御型の分注装置における上側連結部材の上動位置を検出する検出手段を説明するための斜視図である。
【
図17】
図16に示された検出手段の設置形態の一例を説明するための図である。
【
図18】リニアシャフトモータにおける位置制御のために設置される一対のホールセンサの取付間隔について説明するための図である。
【
図19】リニアシャフトモータにおける第1シャフトのラジアル方向の外部磁界を計測した結果を示す図である。
【
図20】ホールセンサによるリニアシャフトモータの位置制御系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によるコイルユニットの製造方法の好ましい実施形態について説明する前に、
図1~
図9を参照して、本発明の実施形態を適用して製造された8軸独立制御型の分注装置について説明する。
【0018】
図1、
図2は、本発明が適用された8軸独立制御型の分注装置(以下、8軸分注装置と呼ぶことがある)を示し、
図3は、8軸独立制御型の分注装置の半分、すなわち4軸独立制御型の分注装置(以下、4軸分注装置と呼ぶことがある)を示す。
図4は、
図1のA-A´線による縦断面図である。
図5は、
図1に示された8軸独立制御型の分注装置から、1組のリニアシャフトモータと分注ヘッドの組み合わせ及びこれらの上下の連結部材を抽出して示した側面図である。また、
図6は、リニアシャフトモータの一部の内部構造を示した断面図である。
【0019】
はじめに、リニアシャフトモータの内部構造について説明するが、この種のリニアシャフトモータは良く知られているので、簡単な説明にとどめることとする。
【0020】
図6を参照して、リニアシャフトモータ10は、中心軸方向に着磁した複数の永久磁石12を、同磁極同士を対向させて直列に繋ぎ合わせた状態で、非磁性材料による筒体(支持部材)13に収容、固定したものを第1シャフト11として有する。筒体13は、複数の永久磁石12の全長以上の長さを持つ。永久磁石12を収容している筒体13部分は、リニアシャフトモータ10用の磁石部と呼ばれても良い。このような磁石部は、後述するように、同形、同磁力の永久磁石12を対向させることで、シャフト11(磁石部)の周辺には、軸方向にN極とS極が同ピッチで交互に現れ、その表面磁束密度を測定すると正弦波形となる。リニアシャフトモータ10はまた、第1シャフト11を、ギャップを介して同心状に内包するように複数の筒状のコイル14を直列に繋ぎ合わせてなるものを、コイル部15として有する。コイル部15は、樹脂製のコイル一体化筒16の外周側に複数の筒状のコイル14を
中心軸方向に直列に繋ぎ合わせて一体化しており、コイル一体化筒16は、筒体13の外径より大きな内径を有している。第1シャフト11とコイル部15は、中心軸方向に相対的移動可能に構成されるが、ここでは、第1シャフト11が可動部、コイル部15が固定部となるように構成されている。
【0021】
コイル部15は、三相リニアモータを構成するために、U相、V相、W相の少なくとも3個のコイル14からなる。そして、それぞれのコイル14には電気的に120度の位相差を持つ交流電流を流し、各コイル14への通電を制御することにより、永久磁石12から発生される磁界と、コイル14に流される電流との作用により、第1シャフト11を中心軸方向に駆動する推力が得られるように構成している。
【0022】
なお、本明細書において「永久磁石を繋ぎ合わせる」という意味は、
図6に示すように、永久磁石12同士を直接繋ぎ合わせるだけでなく、磁気特性や、反発力を抑制して組立て易くするという製造工程を考慮して、隣接する永久磁石12の間に軟鉄等の軟磁性体やラジアル方向に磁化した別の永久磁石をポールピースとして介在させて繋ぎ合わせることも含む。
【0023】
電源を含むリニアモータ駆動回路や、リニアモータ制御回路等は、良く知られており、本発明の要部ではないので、回路の図示、説明は省略し、位置制御系について後で簡単に説明する。
【0024】
図4、
図5を参照して、リニアシャフトモータ10は、第1シャフト11の下側、上側にそれぞれ、下側連結部材31、上側連結部材32が固定されている。それゆえ、固定部としてのコイル部15に対して第1シャフト11が上下動するのに伴って、下側連結部材31、上側連結部材32も一体的に上下動する。
【0025】
下側連結部材31及び上側連結部材32には、第1シャフト11の中心軸と平行に分注ヘッド40が取り付けられている。分注ヘッド40は、
図8をも参照して、下側連結部材31と上側連結部材32との間隔よりも長い長さを持つ中空の筒状体によるヘッド本体41を有し、ヘッド本体41の上端部には上側連結部材32からわずかに突出している突出部41-1を有する。一方、下側連結部材31から突出しているヘッド本体41の下部には、先端にチップ42を装着したノズル部43が取り付けられている。分注ヘッド40は、下側連結部材31、上側連結部材32を介して第1シャフト11と一体に上下動する。分注ヘッド40は、ノズル部43よりも上方の部分、すなわちヘッド本体41をスプライン軸として、その中心軸周りの回転を防止する構造となっている。すなわち、スプライン軸となるヘッド本体41の外周に、中心軸方向に延びるスプライン溝(又は突条)を設けている。一方、下側連結部材31の上方側の近くにボールスプライン44を固定部として設け、その内周側に中心軸方向に延びる突条(又は溝)を形成している。そして、スプライン溝(又は突条)が突条(又は溝)に嵌りこむようにヘッド本体41をボールスプライン44に装着している。上側連結部材32とボールスプライン44との間のヘッド本体41の周囲にはまた、分注作業のオフ時、すなわちリニアシャフトモータ10の電源オフ時に、分注ヘッド40の落下を防止して分注ヘッド40を所定の下限位置で保持するための圧縮バネ45が設けられている。
【0026】
第1シャフト11の上端部を上側連結部材32に固定するため、本実施形態では、
図1に示されるように、上側連結部材32に、第1シャフト11を挿通するための貫通孔32aを形成すると共に、貫通孔32aから上側連結部材32の一端に至るすり割り32bを形成している。更に、上側連結部材32の前記一端側に、一方の側面側からすり割り32bを横切って他方の側面側に向かう、六角穴付ネジ34をねじ込み可能にしている。このような構造により、貫通孔32aに挿入された第1シャフト11の上端部は六角穴付ネジ34の締付けにより貫通孔32a内に固定される。
【0027】
第1シャフト11の下端側についても上記と同様の固定構造が適用される。すなわち、
図2、
図5をも参照して、下側連結部材31に形成された貫通孔31aに挿通された第1シャフト11の下端部が、六角穴付ネジ35の締付けにより貫通孔31a内に固定される。
【0028】
ヘッド本体41の上端側及びノズル部43よりも少し上方のヘッド本体41の途中部分も、上記と同様の固定構造(貫通孔とすり割り及び六角穴付ネジの組合せ)が適用されることにより、六角穴付ネジ36及び37の締付けによって上側連結部材32の貫通孔32c内及び下側連結部材31の貫通孔31c内に固定される。
【0029】
コイル部15及びボールスプライン44を固定部として作用させるための構造については後述する。
【0030】
図3から理解できるように、4軸分注装置は、リニアシャフトモータ10と分注ヘッド40の組み合わせ4組からなり、4個のリニアシャフトモータ10と4個の分注ヘッド40がそれぞれ、互いに平行な異なる平面内で一列に並ぶように組み合わされてなる。
【0031】
図4、
図7をも参照して、4個のリニアシャフトモータ10を一列に並べて配置するためにコイル固定部材50が用いられる。一方、4個の分注ヘッド40を一列に並べて配置するためにセンタープレート60が用いられる。センタープレート60は、
図9をも参照して、8軸分注装置に適用する場合、一対の4軸分注装置で共用される。このため、センタープレート60は、対の一方の4軸分注装置の分注ヘッド40と、対の他方の4軸分注装置の分注ヘッド40を交互に並べて収容する8個の収容空間60aを有する。この収容空間60aには、ボールスプライン44が収容されると共に、圧縮バネ45を装着した分注ヘッド40の一部が収容される。ボールスプライン44は、センタープレート60の側壁からねじ込まれた複数(ここでは、2個)のネジ61により、収容空間60a内で中心軸周りに回転しないように固定される。
図7には、対の一方の4軸分注装置の分注ヘッド40用のボールスプライン44に適用されるネジ61を示しているが、
図9に示されるように、センタープレート60の反対側の側壁には、対の他方の4軸分注装置の分注ヘッド40用のボールスプラインを固定するためのネジ62がねじ込まれる。
【0032】
後述するので、ここでは簡単に説明するが、
図3に示すような4軸分注装置は以下のようにして組立てられる。但し、
図3に示す4軸分注装置は、説明をわかり易くするための、いわば一部省略図であり、
図3に示すような形態に製造されるものではない。これは、分注ヘッド40は、
図7、
図9で説明したセンタープレート60に収容された状態で8軸分注装置に組み込まれるからである。
【0033】
はじめに、コイル固定部材50内に4個のコイル部15を、一定間隔をおいて並べて配置、固定した後、各コイル部15に第1シャフト11を挿通する。続いて、各第1シャフト11の下端部及び上端部にそれぞれ、下側連結部材31及び上側連結部材32を固定する。次に、センターポール60の収容空間60aに1個おきで収容された4個の分注ヘッド40からチップ42及びノズル43を取外し、ヘッド本体41の下側部分を下側連結部材31に固定すると共に、ヘッド本体41の上端側を上側連結部材32に固定する。その後、ヘッド本体41にノズル43及びチップ42を装着する。以上のようにして、
図9に示すセンタープレート60の一方の側壁側に8軸分注装置の半分の4軸分注装置が組立てられ、同様にして、センタープレート60の他方の側壁側に8軸分注装置の残り半分の4軸分注装置が組立てられる。その結果、
図1に示されるような8軸分注装置が出来上がるが、この組立は。後でも説明される。
【0034】
次に、
図10~
図14をも参照して、本発明の要部である、コイルユニットの製造方法について説明する。
【0035】
図10は、本発明を4軸独立制御型の分注装置に適用する場合のコイルユニットの製造過程を、順を追って示した斜視図である。
【0036】
図10において、はじめに、4組のコイル部15を所定ピッチP1で一列に並べた状態で受入れ可能な受入れ部51を持つコイル固定部材50を用意する(
図10(a))。コイル部15は、
図11をも参照して、樹脂製のコイル一体化筒16の外周に複数のコイル14を直列につなぎ合わせて固着してなる。コイル一体化筒16は、第1シャフト11の外径よりわずかに大きな内径と、複数のコイルのうちの両端のコイル14から突出した突出部16-1を持つ長さとを持つ。前述したように、複数のコイル14は、U相-V相-W相の3個を1組として配列され、デルタあるいはスター結線が施される。
【0037】
次に、
図10(b)に示すように、コイル固定部材50の受入れ部51に、4組のコイル部15を所定ピッチP1で一列に並べて配置する。
【0038】
コイル固定部材50の受入れ部51は、
図12を参照して、一列に並べて配置される4組のコイル部15の受入れ空間の底面を規定する底壁51aと、受入れ空間をコイル部15の軸方向と平行方向に関して規定するように互いに対向し合う一対の壁部材51bと、4組のコイル部15の両端側における一対の壁部材51の間に設けられる一対のコイルエンド52とで形成される。コイル固定部材50の両端側は、後述する回路基板に実装される電気回路との接続空間を確保するために凹部とされている。コイルエンド52は、4組のコイル部15の両端から突出しているコイル一体化筒16の突出部16-1が挿入される4つの貫通孔52aを有し、底壁51aにネジ止めにより取外し可能に固定される。突出部16-1の突出長はコイルエンド52の板厚、すなわち貫通孔52aの長さより短い方が望ましい。
【0039】
コイルエンド52を底壁51aから取外し可能にしているのは、複数のコイル14の全長を、一対のコイルエンド52の間隔とほぼ同じにしているからである。つまり、
図12に示されるように、コイル受入れ部51の底壁51aに固定された一方のコイルエンド52の4つの貫通孔52aに4組のコイル部15の一方の突出部16-1を挿入して4組のコイル部15を受入れ部51に配置した後、他方のコイルエンド52を、その貫通孔52aに4組のコイル部15の他方の突出部16-1を挿入した状態で底壁51aにネジ止め固定する。
【0040】
コイルエンド52にはまた、受入れ部51に配置された4組のコイル部15の軸方向に平行な両側に、後述する磁気遮蔽板70(
図10(c))を設置するための5個のスリット(第2スリット)52bが形成されている。言い換えれば、スリット52bは、貫通孔52の両側で、受入れ空間の開口側から深さ方向に形成されている。なお、一対のコイルエンド52は、少なくとも一方が底壁51aに取外し可能にされていればよい。
【0041】
図10(b)のコイル部15の配置工程に続いて、
図10(c)を参照して、一列に並べて配置された4組のコイル部15の軸方向に沿った両側にそれぞれ、コイル部15よりも長い磁気遮蔽板70を配置する。つまり、一対のコイルエンド52のスリット52bに1枚ずつ、合計5枚の磁気遮蔽板70を装着する。磁気遮蔽板70は、隣り合うコイル部15及び第1シャフト11内の永久磁石12により隣り合うリニアシャフトモータが互いに干渉(例えばコギング)し合うのを防止するためのものであるので、高透磁率材料、例えばSPCC(冷間圧延鋼鈑)からなり、少なくとも第1シャフト11内の複数の永久磁石12の可動範囲に亘る長さを有する。また、磁気遮蔽板70の幅は受入れ部51の受入れ空間の深さよりも大きく、かつ少なくとも受入れ空間領域の一部領域に対応する部分の幅を受入れ空間の深さと同程度としている。これは、
図14を参照して後述されるように、受入れ空間領域の一部領域に対応する部分に回路基板80を取付け可能な構成とするためである。
【0042】
続いて、
図10(d)を参照して、受入れ部51におけるコイル部15と磁気遮蔽板70との間に硬化性の樹脂(接着剤)75を流し込んで硬化させる。
【0043】
なお、磁気遮蔽板70は、少なくとも隣り合うコイル部15の間に対応する箇所に設けられれば良く、最も外側の2枚は省略されても良い。
【0044】
図13は、
図10の製造方法により作られたコイルユニットにおける受入れ空間の開口側に設置される回路基板80の一例を示し、
図14は、回路基板80をネジ止めにより設置したコイルユニットの例を示す。回路基板80は、4組のコイル部15の一部を露出させるための切欠き81を有すると共に、磁気遮蔽板70の板幅の大きい幅広部の回路基板80からの突出を許容するための5個のスリット(第1スリット)82を有する。切欠き81は、その周縁に形成されたコイル結線用の導電パターン84と4組のコイル部15との電気接続(図示省略)を容易にするために形成される。一方、スリット82は、回路基板80の上側となる位置に形成されているので、運用時に、万一、磁気遮蔽板70が接着不良により受入れ部51から剥離したとしても、幅広部の下端部がスリット82の下端縁に引っかかることにより、磁気遮蔽板70がマイクロプレートまで落下することを防止する。
【0045】
図13及び
図14において、83は、第1シャフト11内の永久磁石12の位置を検出するための一対の磁気センサ、例えばアナログホールセンサ(以下、ホールセンサと略称する)であり、リニアシャフトモータ10における第1シャフト11の位置制御のために使用される。一対のホールセンサ83は、第1シャフト11に対応した位置であって磁気遮蔽板70の幅広部に隣接する位置に、第1シャフト11の移動方向に所定の取付間隔をおいて設置される。一対のホールセンサ83の取付間隔は、
図18に示すように、第1シャフト11(永久磁石12)の表面磁束密度の波形の電気角90度に設定される。これは、本発明者らが、リニアシャフトモータ10のラジアル方向の外部磁界を計測した結果、
図19に示すように、第1シャフト11(永久磁石12)の表面磁束密度は第1シャフト11の表面からある程度離れてゆくと正弦波に近い波形になってゆくという知見を得たことに基づいている。本実施形態では、
図19に示されるような計測データを参照しながら、正弦波により近いデータが得られる位置を、ホールセンサ83の設置場所として決定するようにしている。なお、本実施形態では、以下の理由により、一対のホールセンサ83を、回路基板80の表面側(受入れ部51側と反対側の面)であって、2枚の磁気遮蔽板70の板幅の大きい部分の間に設置するようにしている。つまり、回路基板80にスリット82を形成することで、磁気遮蔽板70の板幅の大きい部分をコイル固定部材50の受入れ部51内まで延ばしている。これは、2枚の磁気遮蔽板70の板幅の大きい部分の間に設置されている一対のホールセンサ83に対して隣接するリニアシャフトモータ10からの磁界の影響を受けないようにするためである。回路基板80に実装される電気回路は、主に、複数のコイル14と接続されて4個のリニアシャフトモータ10を駆動、制御するための回路であるが、回路については説明を省略し、
図20を参照して、リニアシャフトモータ10の位置制御系について説明する。
【0046】
図20は、リニアシャフトモータ10の位置制御系のブロック図であり、この位置制御系が各軸のリニアシャフトモータ10に設置される。ただし、マイコン88については、すべての軸のリニアシャフトモータ10に共通とすることができる。この位置制御系は、回路基板80上に設置されている2つのホールセンサ83と、2つのホールセンサ83からの検出信号を処理するオペアンプ85と、オペアンプ85からの信号をデジタル化するインターポレータ86と、インターポレータ86からのデジタル信号に基づいてリニアシャフトモータ10の第1シャフト11を駆動、制御するモータ駆動回路87と,モータ駆動回路87に対して、リニアシャフトモータ10の駆動に必要な移動量、移動速度、方向信号等の動作指令を出力するマイコン88とを含む。
【0047】
この位置制御系は、2つのホールセンサ83の検出信号から正の電圧信号に加えて負の電圧信号を生成する場合(信号反転ありの場合)と、2つのホールセンサ83の検出信号から正の電圧信号のみを生成する場合(信号反転なしの場合)とで2通りの制御形態がある。
図20は、信号反転なしの場合を示しているが、信号反転ありの場合には、オペアンプ85以降の出力信号線の本数が異なることになる。
【0048】
(信号反転なしの場合)
1.第1シャフト11の表面磁束密度をホールセンサ83で検出し、アナログ電圧信号として出力する。第1シャフト11の表面磁束密度は、軸方向に沿って正弦波となっており、永久磁石12の磁極ピッチ(以下、マグネットピッチと呼ぶ)の1/4で2つのホールセンサ83を配置し、検出を行うと、電気角で90度位相のずれた2つの正弦波電圧信号、つまり正弦波(以下、Sin波)電圧信号、余弦波(以下、Cos波)電圧信号を生成することができる。
【0049】
2.2つのホールセンサ83から出力されたアナログ電圧信号はオペアンプ85に入力される。オペアンプ85は、2つのホールセンサ83の出力電圧をドライバ入力に適合するように調整する。
【0050】
3.ドライバのインターポレータ86で、オペアンプ85から入力された2つのアナログ信号をデジタル化し、指定のビット数で分割する。この分割数は、分解能(マグネットピッチ / 分割数)を規定し、例えば、マグネットピッチ24mm、分割数214の場合、分解能は1.5μmである。これにより、2つのアナログ電圧信号(Sin波電圧信号、Cos波電圧信号)は電気角で90度位相のずれた2つの矩形波信号(位置信号)になる。
【0051】
4.モータ駆動回路87で、インターポレータ86から入力された2つの矩形波信号により第1シャフト11(分注ヘッド40)の現在位置、速度を検知し、リニアシャフトモータ11(コイル部15)に位置制御指令を出す。
【0052】
(信号反転ありの場合)
1.第1シャフト11の表面磁束密度を2つのホールセンサ83で検出し、アナログ電圧信号として出力する。第1シャフト11の表面磁束密度は、軸方向に沿って正弦波となっており、永久磁石12の磁極ピッチ(以下、マグネットピッチと呼ぶ)の1/4で2つのホールセンサ83を配置し、検出を行うと、電気角で90度位相のずれた2つのアナログ正弦波電圧信号、つまりSin波電圧信号と、Cos波電圧信号を生成することができる。
【0053】
2.2つのホールセンサ83から出力された2つのアナログ電圧信号はオペアンプ85に入力される。オペアンプ85は、入力された2つのアナログ電圧信号(Sin波電圧信号、Cos波電圧信号)のそれぞれについて反転信号を生成する。これにより、ホールセンサ83から入力されたSin波電圧信号、Cos波電圧信号の他に、-Sin波電圧信号、-Cos波電圧信号が生成されて4つのアナログ信号になる。また、オペアンプ85は、ホールセンサ83の出力電圧をドライバ入力に適合するように調整する。別の制御形態として上述したように、Sin波電圧信号、Cos波電圧信号の2つだけでも良いが、-Sin波電圧信号、-Cos波電圧信号を生成することでノイズに強くなる。
【0054】
3.ドライバのインターポレータ86で、オペアンプ85から入力された4つのアナログ信号をデジタル化し、指定のビット数で分割する。マグネットピッチ と分割数で表される分解能は、上述した通りである。これにより、4つのアナログ電圧信号は4つの矩形波信号(位置信号)になる。
【0055】
4.モータ駆動回路87で、インターポレータ86から入力された4つの矩形波信号(位置信号)により、第1シャフト11(分注ヘッド40)の現在位置、速度を検知し、リニアシャフトモータ11(コイル部15)に位置制御指令を出す。
【0056】
次に、
図9を参照して、8軸独立制御型の分注装置を組立て製造する手順について説明する。8軸独立制御型の分注装置は、上記の製造方法により製造されたコイルユニットを用いて
図3で説明した4軸独立制御型の分注装置を組立て製造した後、一対の4軸独立制御型の分注装置を、センタープレート60を介して回路基板80が対向し合うように配置した状態で、分注装置及びセンタープレート60の長手方向両端において連結板90により一体化するように組み合わせて構成される。
【0057】
連結板90は、コイル固定部材50の両端に形成された凹部に対応する凹部を両側に持つエの字形状を有し、一対のコイル固定部材50の長手方向の端面と、センタープレート60の長手方向の端面に対して、それぞれ2箇所で六角穴付ネジ91により取り付けられることにより、一対の4軸独立制御型の分注装置とセンタープレート60とが一体化される。
【0058】
図9においては、便宜上、
図5で説明した4軸独立制御型の分注装置におけるリニアシャフトモータ10と、分注ヘッド40と、下側連結部材31、及び上側連結部材32等は図示を省略しているが、前述したように,
図3に示された4軸独立制御型の分注装置における4個の分注ヘッド40をセンタープレート60の収容空間60aに収容した状態で、一対の4軸独立制御型の分注装置とセンタープレート60が、それらの両端側で2枚の連結板90により一体化されて、
図1に示されるような8軸独立制御型の分注装置となる。特に、リニアシャフトモータ10のピッチ(間隔)をP1とした時、
図15に示すように、一対の4軸独立制御型の分注装置の一方の分注装置における4個のリニアシャフトモータ10の配列と、他方の分注装置における4個のリニアシャフトモータ10の配列がP1/2ピッチだけずれるように設定されている。
【0059】
このために、一対の4軸独立制御型の分注装置のうち、一方の分注装置における4個の分注ヘッド40と、他方の分注装置における4個の分注ヘッド40が、センタープレート60の8個の収容空間60aに交互に収容された状態で一体化される。その結果、8軸独立制御型の分注装置として見た場合、8個の分注ヘッド40のピッチ(間隔)P2が小さくても、リニアシャフトモータ10のピッチ(間隔)P1を大きくとることができ、永久磁石12やコイル14のサイズ等を小さくしなくても隣り合うリニアシャフトモータ10相互の磁界の干渉による誤動作を防止することができる。
【0060】
なお、本実施形態に係る8軸独立制御型の分注装置は、液体の吸引位置と吐出位置の間を往復するための搬送機構(図示省略)に組付けられる。そこで、一対のコイル固定部材50とセンタープレート60を搬送機構の一部に固定することで連結板90を省略するようにしてもよい。
【0061】
次に、
図16、
図17を参照して、上側連結部材32の上動位置(上限位置)を検出することで分注ヘッド40による液体の吐出、吸引のための位置制御に必要な位置検出手段について説明する。
図16は、
図1に示された8軸独立制御型の分注装置における上側連結部材32の上動位置を検出する検出器100を説明するための斜視図である。また、
図17は、
図16に示された検出器100の設置形態の一例を説明するための図であり、(a)は8軸独立制御型の分注装置の側面図、(b)は8軸独立制御型の分注装置の斜視図である。
【0062】
本例では、一対のホールセンサ83からの位置検出信号によるリニアシャフトモータ10の位置制御とは別に、上側連結部材32の上動位置を上限位置として検出することで同じ組の分注ヘッド40の上動位置を検出するようにしている。このために、
図16に示すように、それぞれの上側連結部材32において、その中央に近い上端面に中空軸状の被検出突起101を設け、被検出突起101が所定の位置まで上動した時に光が遮断されるようにフォトセンサ102をリミットセンサとして設けている。フォトセンサ102は、
図17(a)、(b)に示されるように、上側連結部材32の上動位置よりも高い位置に、センタープレート60に固定された支持柱110を介してセンサ設置基板111を固定配置し、8軸独立制御型の8個の被検出突起101に対応するように8個のフォトセンサ102をセンサ設置基板111上に設置している。8軸独立制御型の分注装置において、リニアシャフトモータ10、分注ヘッド40、下側連結部材31及び上側連結部材32を可動部とした場合、センサ設置基板111(フォトセンサ102)は、一対のコイル固定部材50、センタープレート60と共に固定部となる。
【0063】
なお、検出器100は、液体の吸引、吐出の分注作業に伴う分注ヘッド40の上動位置を検出する手段だけでなく、分注作業を開始する際の原点位置決めを行う手段としても利用される。原点位置決めというのは以下のとおりである。
【0064】
分注動作開始時、被検出突起101がフォトセンサ102の光路を遮断し、フォトセンサ102から検出信号が出力されるまで各分注ヘッド40の上動動作を行う。この動作によりフォトセンサ102から出力された検出信号を基準としてオフセット動作を行う。オフセットされた位置は、各軸同じ高さになるため、この位置を、後述するリニアシャフトモータ10の位置決め制御の基準点として利用する。
【0065】
また、
図16、
図17では、フォトセンサ102の一端側から信号伝送用のケーブル103が延びているが、便宜上、一部のみを残して切断して示している。
【0066】
[実施形態の効果]
(1)上記の8軸独立制御型の分注装置について言えば、前述したように、8軸という多軸であってもリニアシャフトモータ10のピッチ(間隔)P1を小さくせずに済むので、その分、永久磁石12やコイル14のサイズを小さくせずに分注装置を構成することができる。これは、以下のような観点において有効である。
【0067】
多軸型の分注装置に対しては、分注ヘッド間のピッチ(間隔)を小さくすることが要求される。これは、分注ヘッド間のピッチを小さくすることで多軸型の分注装置全体をコンパクト化して移動可能範囲を増やすことができるからである。しかしながら、これまでの複数の分注ヘッドの一列配置による多軸型の分注装置の場合、分注ヘッド間のピッチを小さくするためにはリニアシャフトモータの直径を小さくしなければならず、そのためには、永久磁石の直径を小さくするか、あるいはコイルの直径、すなわちコイルの巻数を減らさなければならない。これは、各軸の推力(駆動トルク)が小さくなることを意味する。しかるに、分注ヘッドの上下動には、所定の推力が要求される。これは、例えば
図8を参照して、ノズル43の先端に取り付けられるチップ42の取外しを、液体の吸引、吐出場所とは別の場所において、チップ42とノズル43との間のくびれ部分をジグ(図示省略)で挟んだ状態にしてヘッド本体41を上動させることにより、自動化することが行われているからである。言い換えれば、分注ヘッドの上下動の推力が小さくなると、チップ42の自動取外しが困難になる。
【0068】
上記のような事情に対し、本実施形態に係る8軸独立制御型の分注装置によれば、分注ヘッド間のピッチを小さくしたうえで、リニアシャフトモータの直径を小さくせずに、分注ヘッドの上下動に際して所定の推力(駆動トルク)を得ることができるので、上記のような問題を生じることがない。
【0069】
(2)通常、リニアシャフトモータのコイル部は、コイル部毎にケーシングに収められている。これに対し、本実施形態では、複数の第1シャフト11を隣接させて配置する構造のため、複数組のコイル部15をまとめてユニット化しているので、コイルユニットにおける部品点数の削減、組立工数の削減、省スペース化を実現できる。
【0070】
(3)また、各コイル部15の軸方向の両側に磁気遮蔽板70を設置し、コイル部15の固定と磁気遮蔽板70の固定を、硬化性の樹脂75により同時に行うことができるようにしているので、この点からも、コイルユニットにおける部品点数の削減、組立工数の削減、省スペース化を実現できる。
【0071】
以上、本発明を8軸独立制御型の分注装置に適用した場合の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に制限されるものでないことは言うまでもない。すなわち、本発明は、2軸以上の多軸分注装置であれば独立制御型、同時制御型のいずれにも適用可能であり、更には、分注装置に限らず、多軸型のリニアモータアクチュエータ全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10:リニアシャフトモータ、11:第1シャフト、12:永久磁石、13: 筒体、14:コイル、16:コイル一体化筒、31:下側連結部材、32:上側連結部材、40:分注ヘッド、41:ヘッド本体、42:チップ、43:ノズル、50:コイル固定部材、51:受入れ部、52:コイルエンド、60:センタープレート、70:磁気遮蔽板、80:回路基板、83:ホールセンサ、90:連結板、100:検出器、102:フォトセンサ、111:センサ設置基板