IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ラスコジャパンの特許一覧 ▶ 中井工業株式会社の特許一覧

特許7437689接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法
<>
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図1
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図2
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図3
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図4
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図5
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図6
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図7
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図8
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図9
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図10
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図11
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図12
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図13
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図14
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図15
  • 特許-接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20240216BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E02D27/12 A
E02D27/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020100319
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021195732
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】508324008
【氏名又は名称】株式会社ラスコジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】591281862
【氏名又は名称】中井工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島谷 学
(72)【発明者】
【氏名】田中 周二
(72)【発明者】
【氏名】徳永 覚
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-196286(JP,A)
【文献】特開2018-035578(JP,A)
【文献】特開2015-106990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E02D 7/00-13/10
E02D 5/22-5/80
B25F 1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に打設される鋼管杭の杭頭と接合する接合部材であって、
下方端面が開放され、下方側から前記杭頭に被せられる被覆筒部と、
前記被覆筒部の上方端面から上向きに突出する突出部と、
を備え、
前記被覆筒部の外径は、杭打ち機の打ち込みアダプタの内径よりも大きく、
前記突出部の外径は、前記打ち込みアダプタの内径よりも小さく、
前記被覆筒部の上方端面の周縁部には、全周にわたって前記突出部が位置しない肩部が形成され、
前記突出部の内部には、ナットの収容部が形成され、
前記突出部の上方端面には、前記収容部と鉛直方向に連通し、前記ナットと締結するボルトが挿入される第1貫通孔が形成されている、
接合部材。
【請求項2】
前記被覆筒部の上方端面のうち前記第1貫通孔と対向する部分には、前記ボルトが挿入される第2貫通孔が形成されている、請求項1に記載の接合部材。
【請求項3】
前記被覆筒部および前記突出部は鋳造により一体形成されている、請求項1または請求項2に記載の接合部材。
【請求項4】
前記鋼管杭と、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の接合部材と、
前記接合部材の上方に支持される柱構造と、
を備え、
前記柱構造は、前記第1貫通孔に挿入されるボルトと、前記収容部に収容されるナットとにより前記接合部材に連結されている、
杭基礎。
【請求項5】
請求項4に記載の杭基礎の施工方法であって、
前記鋼管杭の杭頭に前記被覆筒部を被せる被覆工程と、
前記被覆工程の後、前記打ち込みアダプタを前記接合部材の上方に被せ、前記肩部を前記杭打ち機により下方へ打つことで、前記鋼管杭を地中に打設する打設工程と、
前記打設工程の後、前記ナットを前記収容部に収容する収容工程と、
前記収容工程の後、前記ボルトを前記第1貫通孔から前記収容部に挿入して、前記ナットと締結する締結工程と、
を備える、杭基礎の施工方法。
【請求項6】
複数の前記鋼管杭を鉛直方向にそれぞれ案内する複数のガイド筒部を有するガイドプレートを掘削した穴の底に設置する設置工程をさらに備え、
前記打設工程は、前記設置工程の後、複数の前記ガイド筒部により鉛直方向にそれぞれ案内されながら、複数の前記鋼管杭を地中に打設する、
請求項5に記載の杭基礎の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を地表に立設するための基礎の一つに、杭基礎がある。杭基礎は、地盤に杭を打ち込んで構造物を支える基礎である。杭基礎を用いた基礎工法では、例えば鋼管杭(単管杭)を打込み機により地中に打設し、当該鋼管杭の上方に柱構造を接続することで、当該柱構造を支持する。
【0003】
特許文献1には、上部架構柱と、地中に打設された鋼管杭の杭頭部とを連結する連結部材が開示されている。特許文献1の連結部材は、外鋼管と、充填コンクリートとを備え、当該外鋼管は、先行して打設された鋼管杭の杭頭部の内側に上方から挿入される。そして、外鋼管と杭頭部の上端部とを溶接により接合する。その後、外鋼管内にコンクリートを充填し、型抜き部材により上部架構柱を接続するためのアンカー打設領域が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-027037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、基礎の施工現場における作業の標準化や、作業時間の短縮が強く要求されている。標準化対策については、施工現場の人手不足等の問題から、未熟な作業員でも容易に施工できる基礎およびその施工方法が要求されている。
【0006】
特許文献1の基礎構造を施工するためには、鋼管杭の打込み、溶接およびコンクリートの充填・型抜きといった複数の技術が必要であり、当該基礎構造を施工する作業員には高い熟練度が要求される。また、鋼管杭は、打込み重機を用いて打設されるが、作業員の熟練度が低いと、この打設の際に鋼管杭の杭頭部が内側や外側へひしゃげる場合がある。鋼管杭の杭頭部が打設により変形すると、その後の連結部材の接合工程において、連結部材を鋼管杭に嵌め込むために余分な力が必要になったり、杭頭部と連結部材との間に隙間が生じて基礎構造の強度が弱くなったりするなどの悪影響が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、より容易に施工することができる接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の接合部材は、地中に打設される鋼管杭の杭頭と接合する接合部材であって、下方端面が開放され、下方側から前記杭頭に被せられる被覆筒部と、前記被覆筒部の上方端面から上向きに突出する突出部と、を備え、前記被覆筒部の外径は、杭打ち機の打ち込みアダプタの内径よりも大きく、前記突出部の外径は、前記打ち込みアダプタの内径よりも小さく、前記被覆筒部の上方端面の周縁部には、全周にわたって前記突出部が位置しない肩部が形成され、前記突出部の内部には、ナットの収容部が形成され、前記突出部の上方端面には、前記収容部と鉛直方向に連通し、前記ナットと締結するボルトが挿入される第1貫通孔が形成されている、接合部材である。
【0009】
接合部材には肩部が設けられているため、接合部材を鋼管杭の杭頭に被せている状態で、接合部材の肩部を杭打ち機により下方へ打つことで、鋼管杭を地中に打設することができる。このように、肩部が形成されていることにより、鋼管杭と接合部材とを連結した後に、接合部材を杭打ち機で打つことが可能となる。この結果、鋼管杭の杭頭を直接杭打ち機により打つ工程を省くことができ、杭頭の変形による接合部材との連結不良等を防止することができる。
【0010】
また、接合部材には、ナットの収容部と、ボルトが挿入される第1貫通孔とが設けられているため、柱構造と接合部材を連結する際の作業を容易に行うことができる。さらに、収容部及び第1貫通孔を形成している突出部の外径は打ち込みアダプタの内径よりも小さいため、杭打ち機により接合部材を打設する際、突出部は打ち込みアダプタの内部に収容される。この結果、突出部には打設の際に杭打ち機から力が負荷されないため、打設時における突出部の変形を防止することができる。これにより、収容部及び第1貫通孔の形状を維持することができ、ナット及びボルトを確実に収容及び挿入することができる。以上により、本実施形態に係る接合部材を用いることで、より容易に杭基礎を施工することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より容易に施工することができる接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る接合部材を斜め上から見下ろした斜視図である。
図2】第1実施形態に係る接合部材の正面図及び側面図を含む説明図である。
図3図2(b)の矢印IIIに示す切断線により切断した断面図である。
図4】第1実施形態に係る接合部材の平面図及び底面図を含む説明図である。
図5】杭打ち機TL1の説明図である。
図6】第1実施形態に係る第2接合部材の構成を説明する説明図である。
図7】第1実施形態に係る杭基礎の施工方法についての各工程の様子を示す説明図である。
図8】第2実施形態に係るガイドプレートを斜め上から見下ろした斜視図である。
図9】第2実施形態に係るガイドプレートの正面図及び平面図を含む説明図である。
図10】第2実施形態に係る杭基礎の適用例を示す説明図である。
図11】第2実施形態に係る杭基礎の正面図である。
図12】第2実施形態に係る杭基礎の側面図である。
図13】第2実施形態に係る杭基礎の施工方法についての各工程の様子を示す説明図である。
図14】第2実施形態に係る杭基礎の適用例を示す説明図である。
図15】第2実施形態に係る杭基礎の適用例を示す説明図である。
図16】第1実施形態に係る杭基礎の適用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る接合部材、杭基礎および杭基礎の施工方法について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
〔接合部材の構成〕
図1は、本実施形態に係る接合部材10を斜め上から見下ろした斜視図である。図2は、接合部材10の説明図であり、図2(a)に正面図を示し、図2(b)に側面図を示す。図3は、図2(b)の矢印IIIに示す切断線により切断した断面図である。図4は、接合部材10の説明図であり、図4(a)に平面図を示し、図4(b)に底面図を示す。
【0015】
図1を参照する。接合部材10は、地中に打設される鋼管杭11の杭頭11t(図3)と接合する部材である。図1から図3において、接合部材10との区別のため、鋼管杭11は二点鎖線により示している。接合部材10は、被覆筒部20と、突出部30とを備える。被覆筒部20および突出部30は、鋳造により一体形成されている鋳鉄である。
【0016】
図2を参照する。図2(a)、(b)の両方とも、図中の上方が鉛直方向上方であり、図中の下方が鉛直方向下方である。被覆筒部20は、周壁21と、上方端面22と、下方端面23とを有する中空状の円筒である。周壁21の内径は、鋼管杭11の外径よりも大きい。このため、被覆筒部20は、その下方側(下方端面23側)から鋼管杭11の杭頭11tに被せることができる。
【0017】
図3を参照する。周壁21には、それぞれ対向する2個の貫通孔21aが形成されている。貫通孔21aは、周壁21の外周面から周壁21の内部の中空空間まで貫通している。鋼管杭11には、杭頭11tに被覆筒部20が被せられている状態で、2個の貫通孔21aとそれぞれ連通する2個の貫通孔11aが形成されている。上方端面22の中央には、1個の貫通孔22a(本発明の第2貫通孔)が形成されている。下方端面23には、鋼管杭11の外径よりも大きい内径を有する開口23aが形成されている。本実施形態において開口23a内径は、周壁21の内周面と同じ内径を有する。
【0018】
突出部30は、上方端面22から上向きに突出する部材である。突出部30は、周壁31と、上方端面32とを有する。上方端面32のうち貫通孔22aと鉛直方向に対向する部分に、貫通孔32a(本発明の第1貫通孔)が形成されている。換言すれば、被覆筒部20の上方端面22と突出部30の上方端面32には、それぞれ対向する貫通孔22a、32aが形成されている。貫通孔32aは、後述の収容部33と鉛直方向に連通している。
【0019】
突出部30の内部には、収容部33が形成されている。収容部33は、後述のナットNT1を収容するための領域である。収容部33は、周壁31の内壁と、上方端面32の下面と、上方端面22の上面とにより形成される空間である。収容部33は、前後方向(図3の紙面手前方向および紙面奥行方向)において開放されており、左右方向(図3の左右方向)において周壁31により閉塞されている。
【0020】
収容部33は、ナットNT1を収容する中央部33bと、中央部33bの上側及び下側にそれぞれ位置し、中央部33bよりも幅の広い拡幅部33a、33cと、を有する。拡幅部33a、33cには、後述のワッシャーWS1、WS2が格納される。中央部33bの内径は、ナットNT1の外径よりも大きい。また、拡幅部33a、33cの内径は、ワッシャーWS1、WS2の外径よりも大きい。そして、貫通孔22a、32aの内径は、ワッシャーWS1、WS2の外径よりも小さい。このような構成により、収容部33の内部にナットNT1及びワッシャーWS1、WS2を静置することができる。
【0021】
図4を参照する。図4(a)に示すように、突出部30は平面視すると両端部を切り欠いた円形状を有する。当該円形状は、上方端面22の中央に配置されている。また、本実施形態において当該円形状の最大外径は被覆筒部20の外径よりも短い。
【0022】
突出部30の最大外径が被覆筒部20の外径よりも短く、かつ突出部30が上方端面22の中央に配置されているため、被覆筒部20の上方端面22の周縁部には全周にわたって突出部30が位置しない肩部22b(最小幅W1)が形成されている。
【0023】
〔杭打ち機の構成〕
図5は、杭打ち機TL1の説明図である。杭打ち機TL1は、接合部材10が接合されている鋼管杭11を地中へ打設するための工具である。図5(a)は、杭打ち機TL1の先端部分を部分的に断面図として示す模式図である。杭打ち機TL1は、本体TL2と、打ち込みアダプタAD1とを有する。本体TL2は、例えば電動ハンマである。打ち込みアダプタAD1は、電動ハンマの先端部分に装着されるアダプタであり、例えば株式会社清水製作所製の単管打ち込みアダプタである。本実施形態において、打ち込みアダプタAD1の内径D1は、突出部30の最大外径よりも大きい。
【0024】
図5(b)は、杭打ち機TL1により鋼管杭11を打設する際の様子を模式的に示す側面図である。図5(b)では、図2(b)と同じ方向から見た接合部材10及び鋼管杭11と、杭打ち機TL1とを示している。図5(b)において、接合部材10と鋼管杭11はボルトB2及びナットNT2により固定されている。また、図5(b)において、打ち込みアダプタAD1の内周面及び突出部30は隠れ線として示している。
【0025】
ここで、被覆筒部20の外径は、打ち込みアダプタAD1の内径D1よりも大きい。また、突出部30の最大外形は、打ち込みアダプタAD1の内径D1よりも小さい。このため、打ち込みアダプタAD1の下方端部が被覆筒部20の肩部22bに当接する状態で、接合部材10の上側を打ち込みアダプタAD1により覆うと、突出部30は打ち込みアダプタAD1の内部に収容される。
【0026】
〔第2接合部材の構成〕
図6は、第1実施形態に係る第2接合部材40の構成を説明する説明図である。第2接合部材40は、下方において接合部材10と連結し、上方において柱PL1を支持する部材である。第2接合部材40は、例えば鋳造により一体形成されている鋳鉄である。
【0027】
図6(a)は、第2接合部材40の側面図である。第2接合部材40は、上方部材41と、中間部材42と、円盤部43とを有する。上方部材41は、第2接合部材40の上方に位置する椀状の部材であり、上方に開放する開口と、下方に凹む凹部とを含む。上方部材41の周壁の内面は、後述の柱PL1の外形よりもわずかに大きい形状となっている。上方部材41の周壁には、それぞれ水平方向に対向する2個の貫通孔41aが設けられている。
【0028】
中間部材42は、上方部材41の下側に接続している円筒状の部材である。中間部材42の内部には、内部空間が形成されており、当該内部空間の上側は上方部材41により閉塞され、当該内部空間の下側は円盤部43により閉塞されている。中間部材42の周壁には、1個の貫通孔42aが設けられている。貫通孔42aは、後述のボルトB1及びワッシャーWS4を外部から中間部材42の内部空間へ導入するための孔である。
【0029】
円盤部43は、中間部材42の下側に接続している円盤状の部材である。円盤部43の外径は、接合部材10の周壁21の外径よりも大きい。円盤部43の中央には円盤部43の下方から中間部材42の内部空間まで貫通する貫通孔43aが設けられている。貫通孔43aの直径は、後述のワッシャーWS4の直径よりも小さく、接合部材10の貫通孔22a、32a及び後述のボルトB1のネジ頭の外径よりも大きい。
【0030】
〔杭基礎の構成〕
図6(b)を参照する。図6(b)は、本実施形態に係る杭基礎100の断面を模式的に示す図面である。杭基礎100は、鋼管杭11と、接合部材10と、第2接合部材40と、柱PL1と、を備える。鋼管杭11は、地中に打設されている。
【0031】
接合部材10は、鋼管杭11の杭頭11tと接合している。より具体的には、被覆筒部20を杭頭11tに被せている状態で、一方の貫通孔21aからボルトB2を挿入し、2個の貫通孔11aを経由して、他方の貫通孔21aからボルトB2のネジ部を突出させる。そして、突出したボルトB2のネジ部にナットNT2を締結する。これにより、鋼管杭11の杭頭11tに接合部材10が固定される。
【0032】
第2接合部材40は、接合部材10とワッシャーWS3を介して接合している。より具体的には、突出部30の上方端面32の上側にワッシャーWS3を静置し、ワッシャーWS3の上側に円盤部43が接するように第2接合部材40を静置する。このとき、貫通孔43aとワッシャーWS3の孔とが貫通孔32a、22aと連通するように、ワッシャーWS3及び第2接合部材40を静置する。そして、収容部33にワッシャーWS1、ナットNT1及びワッシャーWS2を収容した後、中間部材42の貫通孔42aからワッシャーWS4及びボルトB1を挿入する。ボルトB1は、ワッシャーWS4の孔、貫通孔43a、ワッシャーWS3の孔、貫通孔32a、ワッシャーWS1、ナットNT1、ワッシャーWS2、及び貫通孔22aの順に挿入される。ボルトB1がナットNT1と締結することで、接合部材10と第2接合部材40とが接合される。
【0033】
柱PL1は、第2接合部材40と接合している。より具体的には、柱PL1の下方端部が上方部材41内に収容されている状態で、一方の貫通孔41aからボルトB3を挿入し、柱PL1に形成されている孔(図示省略)を経由して、他方の貫通孔41aからボルトB3のネジ部を突出させる。そして、突出したボルトB3のネジ部にナットNT3を締結する。これにより、柱PL1は第2接合部材40に固定される。以下、第2接合部材40及び第2接合部材40と接合している柱PL1を、「柱構造」と称する。換言すれば、柱構造は、柱PL1と、第2接合部材40とを有する。
【0034】
本実施形態に係る柱PL1は、構造物の(例えば、街灯、カーポート又は太陽光パネルの)支柱である。なお、柱PL1は、構造物を支持する支柱に限られず、例えば車止めのポールであってもよい。また、柱PL1は、角柱であってもよいし、円柱であってもよい。
【0035】
杭基礎100において、鋼管杭11は上方に接合部材10を支持しており、接合部材10は上方に第2接合部材40を支持しており、第2接合部材40は上方に柱PL1を支持している。すなわち、柱構造は、ボルトB1及びナットNT1により接合部材10と連結されることで、接合部材10の上方に支持されている。
【0036】
〔杭基礎の施工方法〕
次に、以上に説明した杭基礎100の施工方法を説明する。杭基礎100は、以下に説明する施工方法を作業員が実行することにより、施工される。図7は、第1実施形態に係る杭基礎100の施工方法についての各工程の様子を示す説明図である。
【0037】
図7(a)を参照する。はじめに、作業員がシャベル等を用いて地面G1を掘削し、穴HL1を形成する。穴HL1は、例えば接合部材10及び第2接合部材40が収容できる程度の深さ及び幅であればよい。次に、鋼管杭11の杭頭11tが上方を向いている状態で、穴HL1の底に鋼管杭11を立て置く。
【0038】
図7(b)を参照する。次に、鋼管杭11の杭頭11tに被覆筒部20を被せ、ボルトB2及びナットNT2により固定する(被覆工程)。これにより、鋼管杭11と接合部材10とを接合する。なお、鋼管杭11と接合部材10は、穴HL1に鋼管杭11を立て置くよりも前に、接合されていてもよい。
【0039】
図7(c)を参照する。被覆工程の後、杭打ち機TL1の打ち込みアダプタAD1を接合部材10の上方に被せ、図5(b)に示すように肩部22bを杭打ち機TL1により下方へ打つことで、鋼管杭11を地中に打設する(打設工程)。
【0040】
図7(d)を参照する。打設工程の後、図6(b)に示すように、収容部33にナットNT1を収容し(収容工程)、突出部30の上側にワッシャーWS3及び第2接合部材40を静置する。そして、ボルトB1及びワッシャーWS4を貫通孔42aから導入した後、ボルトB1を貫通孔32aから収容部33に挿入して、ボルトB1とナットNT1とを締結する(締結工程)。これにより、接合部材10と第2接合部材40とが連結される。
【0041】
図7(e)を参照する。締結工程の後、図6(b)に示すように、上方部材41に柱PL1の下方端部を収容し、ボルトB3及びナットNT3により上方部材41と柱PL1とを固定する。これにより、鋼管杭11、接合部材10及び柱構造(第2接合部材40及び柱PL1)とを備える杭基礎100が構成される。
【0042】
図7(f)を参照する。最後に、作業員がシャベル等を用いて、穴HL1を埋める。これにより、鋼管杭11、接合部材10及び第2接合部材40は、地中に埋められる。地面G1からは、柱PL1が突出している。
【0043】
〔第1実施形態の作用と効果〕
以上のように、第1実施形態に係る接合部材10は、地中に打設される鋼管杭11の杭頭11tと接合する接合部材10であって、下方端面23が開放され、下方側から杭頭11tに被せられる被覆筒部20と、被覆筒部20の上方端面22から上向きに突出する突出部30と、を備える。また、被覆筒部20の外径は、杭打ち機TL1の打ち込みアダプタAD1の内径D1よりも大きく、突出部30の外径は、打ち込みアダプタAD1の内径D1よりも小さく、被覆筒部20の上方端面22の周縁部には、全周にわたって突出部30が位置しない肩部22bが形成されている。また、突出部30の内部には、ナットNT1の収容部33が形成され、突出部30の上方端面32には、収容部33と鉛直方向に連通し、ナットNT1と締結するボルトB1が挿入される貫通孔32aが形成されている。
【0044】
接合部材10には肩部22bが設けられているため、接合部材10を鋼管杭11の杭頭11tに被せている状態で、接合部材10の肩部22bを杭打ち機TL1により下方へ打つことで、鋼管杭11を地中に打設することができる。このように、肩部22bにより、鋼管杭11と接合部材10とを連結した後に、接合部材10を杭打ち機TL1で打つことが可能となる。この結果、鋼管杭11の杭頭11tを直接杭打ち機TL1により打つ工程を省くことができ、杭頭11tの変形による接合部材10との連結不良等を防止することができる。
【0045】
また、接合部材10には、ナットNT1の収容部33と、ボルトB1が挿入される貫通孔32aとが設けられているため、柱構造と接合部材10を連結する際の作業を容易に行うことができる。さらに、収容部33及び貫通孔32aを形成している突出部30の外径は打ち込みアダプタAD1の内径D1よりも小さいため、杭打ち機TL1により接合部材10を打設する際、突出部30は打ち込みアダプタAD1の内部に収容される。この結果、突出部30には打設の際に杭打ち機TL1から力が負荷されないため、打設時における突出部30の変形を防止することができる。これにより、収容部33及び貫通孔32aの形状を維持することができ、ナットNT1及びボルトB1を確実に収容及び挿入することができる。
【0046】
以上により、本実施形態に係る接合部材10を用いることで、より容易に杭基礎100を施工することができる。
【0047】
また、被覆筒部20の上方端面22のうち貫通孔32aと対向する部分には、ボルトB1が挿入される貫通孔22aが形成されている。このように構成することで、ナットNT1と締結しているボルトB1の下方端部を貫通孔22aから突出させることができる。これにより、より確実にボルトB1とナットNT1との締結状態を維持することができる。また、貫通孔22aが形成されていることにより、様々な長さのボルトB1に対応することができる。
【0048】
また、被覆筒部20および突出部30は鋳造により一体形成されている。このように構成することで、接合部材10の強度をより強くすることができる。
【0049】
第1実施形態に係る杭基礎100は、鋼管杭11と、接合部材10と、接合部材10の上方に支持される柱構造と、を備え、当該柱構造は、貫通孔32aに挿入されるボルトB1と、収容部33に収容されるナットNT1とにより接合部材10に連結されている。また、柱構造は、柱PL1と、第2接合部材40とを備える。第2接合部材40の貫通孔43aは、ワッシャーWS4の外径より小さく、貫通孔32aよりも大きい。
【0050】
ここで、鋼管杭11を地中に打設する際、水平位置の微妙な調整が困難である場合がある。このため、鋼管杭11を地中に打設した後、鋼管杭11の上方に設置する柱PL1の水平位置は、鋼管杭11と柱PL1とを接合する接合部材10又は第2接合部材40により調整されることが好ましい。本実施形態では、第2接合部材40により、水平位置の微調整を行うことができる。
【0051】
第2接合部材40の貫通孔43aは貫通孔32aよりも大きいため、貫通孔32aと貫通孔43aとが鉛直方向に連通する範囲内で、第2接合部材40の水平位置を調整することができる。このように、貫通孔43aを大きくすることで、貫通孔32aとの連通を維持できる位置範囲を広げることができる。一方で、貫通孔43aはボルトB1のネジ頭の外径よりも大きいため、そのままボルトB1を締結することができない。そこで、貫通孔43aよりも大きな外径を有するワッシャーWS4を介してボルトB1を貫通孔43aに挿入する。これにより、第2接合部材40の水平位置を調整可能とし、かつ第2接合部材40を接合部材10に連結することができる。
【0052】
第1実施形態に係る杭基礎100の施工方法は、鋼管杭11の杭頭11tに被覆筒部20を被せる被覆工程と、被覆工程の後、打ち込みアダプタAD1を接合部材10の上方に被せ、肩部22bを杭打ち機TL1により下方へ打つことで、鋼管杭11を地中に打設する打設工程と、打設工程の後、ナットNT1を収容部33に収容する収容工程と、収容工程の後、ボルトB1を貫通孔32aから収容部33に挿入して、ナットNT1と締結する締結工程と、を備える。
【0053】
このように構成することで、基本的には、杭打ち機TL1(例えば、手持ちの電動ハンマ)による打設技術のみを用いるにより、杭基礎100を施工することができる。このため、コンクリートの充填や、溶接といった技術を用いる必要がなく、作業者にコンクリートや溶接等の技術がなくても、容易に施工を行うことができる。また、コンクリートの乾燥時間等を要さないため、短時間での施工が可能となり、施工に係る人件費を削減することができる。
【0054】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。第2実施形態では、鋼管杭11の打設工程において、複数の鋼管杭11を鉛直方向にそれぞれ案内するガイドプレート50を用いる。
【0055】
〔ガイドプレートの構成〕
図8は、本実施形態に係るガイドプレート50を斜め上から見下ろした斜視図である。また、図9(a)は、ガイドプレート50の正面図であり、図9(b)は、ガイドプレート50の平面図である。
【0056】
図8を参照する。ガイドプレート50は、複数のガイド筒部51と、複数の連結部53とを有する。ガイド筒部51は、平面視すると、図9(b)に示すようにガイドプレート50の四隅にそれぞれ設けられている。また、連結部53は、隣接する隅に配置されている2個のガイド筒部51を連結する部分である。換言すれば、正方形の各頂点に、ガイド筒部51がそれぞれ配置され、当該正方形の各辺に連結部53がそれぞれ配置されている。複数のガイド筒部51と、複数の連結部53は、鋳造により一体形成されている鋳鉄である。
【0057】
ガイド筒部51は、鉛直方向に貫通する貫通孔52aを有する。貫通孔52aの内径は、鋼管杭11の外径よりも大きい。ガイド筒部51は、貫通孔52aに鋼管杭11を挿入することで、鋼管杭11を鉛直方向に案内することができる。隣接するガイド筒部51のそれぞれの中心は、連結部53により互いに離れて配置されている。
【0058】
連結部53は、隣接するガイド筒部51間を連結する方向に長尺である。連結部53は、突起部54を有する。突起部54は、隣接するガイド筒部51の中間において、ガイドプレート50の外側に向かう方向に突起している部分である。また、図9(a)に示すように、突起部54は連結部53の側面のうち上端部に設けられている。複数の連結部53のそれぞれに設けられている複数の突起部54は、所定の正方形の各頂点に配置されている。
【0059】
図9(b)を参照する。ガイド筒部51及び連結部53の上方端面52は、同じ水平面上に揃っている。上方端面52には、複数の貫通孔52aと、1個の貫通孔52bが形成されている。貫通孔52aは、上記したガイド筒部51に形成されている貫通孔である。貫通孔52bは、複数の連結部53によりガイドプレート50の中央部分に形成されている、鉛直方向に貫通する貫通孔である。
【0060】
〔杭基礎の構成〕
図10は、本実施形態に係る杭基礎101の適用例を示す説明図である。図10(a)は正面図であり、図10(b)は側面図である。図11は、本実施形態に係る杭基礎101の正面図である。図12は、本実施形態に係る杭基礎101の側面図である。
【0061】
図10を参照する。本実施形態の構造物は、カーポートCP1である。図10(a)に示すように、カーポートCP1は、2個の柱PL2と、1個の屋根RF1とを有する。2個の柱PL2は、それぞれ杭基礎101により支持されている。すなわち、本実施形態に係る構造物は、2個の杭基礎101により支持されている。杭基礎101は、地中に埋設され、地面G1からは柱PL1が立ち上がっている。
【0062】
図11を参照する。杭基礎101は、4個の鋼管杭11と、4個の接合部材10と、1個のガイドプレート50と、2個のアングル金具60と、1個の角鋼管70とを有する。接合部材10は、ボルトB2及びナットNT2により、鋼管杭11の杭頭11tと接合している。接合部材10の下方端面23は、ガイドプレート50の上方端面52と当接している。また、鋼管杭11のうち接合部材10の下方に突出している部分は、ガイドプレート50の貫通孔52aに挿入されている。換言すれば、ガイドプレート50と接合部材10は、溶接されたり、ボルトとナットにより締結されたりすることなく、互いに接触しているのみの状態である。
【0063】
鋼管杭11の外径はガイド筒部51の内径よりも大きいため、鋼管杭11がガイド筒部51の中心に挿入されている場合、鋼管杭11の周面はガイド筒部51の内周面に接しない。また、鋼管杭11がガイド筒部51の中心からずれて挿入され、鋼管杭11の周面がガイド筒部51の内周面と接している場合であっても、鋼管杭11の周面及びガイド筒部51の内周面はそれぞれ鉛直方向に延びる面であるため、鋼管杭11の周面はガイド筒部51と水平方向に接する。このため、ガイド筒部51には鋼管杭11から荷重は与えられていない。
【0064】
アングル金具60は、L字型の金具であり、平板状の第1部材61と、第1部材61と垂直に接続している平板状の第2部材62とを有する。第1部材61には、ボルトB1がそれぞれ挿入される2個の貫通孔が形成されている。第2部材62には、ボルトB4がそれぞれ挿入される4個の貫通孔が形成されている。
【0065】
図12を参照する。アングル金具60は、2個のボルトB1及び2個のナットNT1により、2個の接合部材10と接合している。より具体的には、隣接する2個の接合部材10のそれぞれの突出部30の上に、第1部材61を当接させている状態で、第1部材61の上面に、第1部材61の2個の貫通孔とそれぞれ連通するように2個のワッシャーWS5を静置する。そして、図11に示すように、収容部33にナットNT1を収容した後、第1部材61の貫通孔からボルトB1を挿入して、ボルトB1とナットNT1とを締結する。ボルトB1は、ワッシャーWS5の孔、第1部材61の貫通孔、貫通孔32a、ナットNT1及び貫通孔22aの順に挿入される。ボルトB1がナットNT1と締結することで、接合部材10とアングル金具60とが接合される。
【0066】
図11を参照する。接合部材10とアングル金具60とが接合されている状態において、第2部材62は鉛直方向に延びている。また、2個のアングル金具60のそれぞれの第2部材62は、水平方向に隙間を空けて対向している。
【0067】
角鋼管70は、2個の第2部材62の間に設けられている。角鋼管70の側壁には、それぞれ第2部材62の貫通孔と連通する複数の貫通孔が形成されている。ボルトB4を第2部材62の貫通孔と、角鋼管70の貫通孔とに挿入し、ナットと締結することで、角鋼管70とアングル金具60とが接合される。角鋼管70とアングル金具60とが接合されている状態において、角鋼管70の下方端面はガイドプレート50の上方端面52と当接している。柱PL2は、角鋼管70に鉛直方向に挿入されている。
【0068】
以下、2個のアングル金具60と、角鋼管70と、柱PL2とを、「柱構造」と称する。換言すれば、第2実施形態に係る柱構造は、2個のアングル金具60と、角鋼管70と、柱PL2とを有する。柱構造は、貫通孔32aに挿入されるボルトB1と、収容部33に収容されるナットNT1とにより接合部材10に連結されている。
【0069】
〔杭基礎の施工方法〕
次に、以上に説明した杭基礎101の施工方法を説明する。杭基礎101は、以下に説明する施工方法を作業員が実行することにより、施工される。図13は、第2実施形態に係る杭基礎101の施工方法についての各工程の様子を示す説明図である。
【0070】
図13(a)を参照する。はじめに、作業員がシャベル等を用いて地面G1を掘削し、穴HL2を形成する。穴HL2は、4個の接合部材10と、1個のガイドプレート50と、2個のアングル金具60と、1個の角鋼管70とが収容できる程度の深さ及び幅であればよい。次に、穴HL2の底にガイドプレート50を静置する(設置工程)。
【0071】
ここで、ガイドプレート50を静置する際、穴HL2の底に例えば糸等を用いて十字状の目印を施し、当該目印に複数の突起部54を位置合わせした状態で、ガイドプレート50を静置する。これにより、ガイドプレート50を所定の場所に正確に静置することができる。
【0072】
図13(b)を参照する。鋼管杭11の杭頭11tに接合部材10の被覆筒部20を被せ(被覆工程)、鋼管杭11と接合部材10とを、ボルトB2及びナットNT2により接合する。被覆工程及び設置工程の後、鋼管杭11のうち接合部材10と接合している側が上方を向いている状態で、ガイドプレート50のガイド筒部51に鋼管杭11を挿入して、穴HL2の底に鋼管杭11を立て置く。なお、鋼管杭11と接合部材10は、穴HL2に鋼管杭11を立て置いた後に接合されてもよい。
【0073】
図13(c)を参照する。被覆工程及び設置工程の後、杭打ち機TL1の打ち込みアダプタAD1を接合部材10の上方に被せ、図5(b)に示すように、肩部22bを杭打ち機TL1により下方へ打つことで、鋼管杭11を地中に打設する(打設工程)。鋼管杭11は、ガイド筒部51により鉛直方向に案内されながら、地中に打設される。4個の鋼管杭11は、1個ずつガイド筒部51に挿入され、順次、ガイド筒部51により鉛直方向にそれぞれ案内されながら、杭打ち機TL1により地中に打設される。以上により、打設工程が終了する。図13(d)は、打設工程の終了時における様子を示す模式図である。
【0074】
図13(e)を参照する。打設工程の後、図11に示すように、収容部33にナットNT1を収容し(収容工程)、隣接する2個の突出部30の上側に1個のアングル金具60を静置する。そして、ワッシャーWS5をアングル金具60の第1部材61の上面に静置し、ボルトB1をワッシャーWS5の穴、第1部材61の貫通孔及び貫通孔32aから収容部33に挿入して、ボルトB1とナットNT1とを締結する(締結工程)。これにより、2個の接合部材10と1個のアングル金具60とが連結される。2個のアングル金具60を、それぞれ2個の接合部材10に連結すると、締結工程が終了する。
【0075】
図13(f)を参照する。締結工程の後、2個のアングル金具60の間に、角鋼管70を挿入し、複数のボルトB4を締結することで、2個のアングル金具60と角鋼管70とを連結する。そして、角鋼管70に鉛直方向に柱PL2を挿入する。これにより、複数の鋼管杭11の上方にそれぞれ接合部材10を介して柱構造が設置され、柱構造は複数の鋼管杭11により支持される(支持工程)。以上により、杭基礎101が構成される。最後に、作業員がシャベル等を用いて、穴HL2を埋める。
【0076】
〔第2実施形態の作用と効果〕
以上のように、本実施形態に係る杭基礎101の施工方法は、複数の鋼管杭11を鉛直方向にそれぞれ案内する複数のガイド筒部51を有するガイドプレート50を、掘削した穴HL2の底に設置する設置工程と、設置工程の後、複数のガイド筒部51により鉛直方向にそれぞれ案内されながら、複数の鋼管杭11を地中に打設する打設工程と、打設工程の後、複数の鋼管杭11の上方に柱構造を設置し、柱構造を複数の鋼管杭11により支持する支持工程と、を備える。また、支持工程において、ガイドプレート50には、鋼管杭11からの荷重が負荷されない。
【0077】
本実施形態に係る杭基礎101は、ガイドプレート50を用いて複数の鋼管杭を鉛直方向にそれぞれ案内する。このように構成することで、複数の鋼管杭11を容易に所定の位置及び方向に打設することができる。
【0078】
また、ガイドプレート50は、鋼管杭11を鉛直方向に案内する機能さえ有していればよく、本実施形態においてガイドプレート50は地中に打設された後の鋼管杭11を支持しない。このため、ガイドプレート50は鋼管杭11を鉛直方向に案内できる程度の強度があればよく、鋼管杭11から伝わる柱構造の荷重を支持できる程度の強度は不要である。これにより、ガイドプレート50を小型化及び軽量化することができ、ガイドプレート50の製造コストを削減することができる。
【0079】
また、本実施形態において、柱PL2が挿入される角鋼管70は、2個のアングル金具60の間に設置される。このように構成することで、例えば鋼管杭11及び接合部材10の直上に柱PL2を設置する場合と比べて、柱PL2の水平位置を調整しやすくなる。
【0080】
図11では、アングル金具60の中央に角鋼管70及び柱PL2を配置しているが、例えば図11に示すアングル金具60の左端に、角鋼管70の左端を揃えている状態で、アングル金具60と角鋼管70とを連結することもできる。この場合、アングル金具60の第2部材62の貫通孔は、角鋼管70の貫通孔と連通する位置に形成する。このように、角鋼管70は、2個のアングル金具60の間において、様々な位置に固定することができる。このため、角鋼管70に挿入する柱PL2の水平位置を調整しやすくなる。
【0081】
〔変形例〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した形態以外にも種々の変更を行うことが可能である。以下、本発明の実施形態に係る変形例について説明する。以下の変形例において、実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0082】
〔第2実施形態に係る杭基礎の他の適用例〕
第2実施形態に係るアングル金具60の第2部材62に形成される貫通孔は、水平方向に長尺な長穴形状としてもよい。このように構成することで、角鋼管70を配置する位置に応じて第2部材62の異なる位置に貫通孔を設ける必要がない。このため、アングル金具60の汎用性が高くなり、同じ形状のアングル金具60を多数製造することで、製造コストを削減することができる。
【0083】
また、第2実施形態において、杭基礎101の適用例としてカーポートCP1を挙げて説明した。しかしながら、杭基礎101は、この他の構造物に対しても使用できる。
【0084】
図14及び図15は、杭基礎101の他の適用例を示す説明図である。構造物として、図14(a)は看板91の例を、図14(b)はソーラー街灯92の例を、図14(c)は標識93の例を、図15(a)は木道94の例を、図15(b)は四阿95の例を、図15(c)はパーゴラ96の例を、それぞれ示している。
【0085】
図14(a)を参照する。看板91は、2本の柱911と、看板の本体912とを有する。2本の柱911は、それぞれ杭基礎101により支持されている。杭基礎101は、地中に埋設され、地面G1からは柱911が立ち上がっている。看板91は、土地の境界線に近い位置(例えば、商業用地の道路に面する位置)に設置されることが多い。杭基礎101は、一般的なコンクリート基礎とくらべて水平方向の形状が小さいため、看板91を土地の境界線により近い位置へ設置することができ、土地をより有効に活用することができる。また、杭基礎101は鋼管杭11がガイドプレート50により鉛直方向により確実に案内されている状態で打設されるため、土地の境界線により近い位置へ設置する場合であっても、隣の土地(地中)へ鋼管杭11が進入することを防止することができる。
【0086】
図14(b)を参照する。ソーラー街灯92は、1本の柱921と、太陽電池パネル922と、太陽電池パネル922の発電電力により発光する照明部923とを有する。柱921は、杭基礎101により支持されている。図14(c)を参照する。標識93は、1本の柱931と、標識の本体932とを有する。柱931は、杭基礎101により支持されている。上記の第2実施形態では、複数の柱を有する構造物に杭基礎101を適用しているが、図14(b)、(c)に示すように、杭基礎101は、1本の柱を有する構造物に適用されてもよい。
【0087】
図15(a)を参照する。木道94は、複数の柱941と、木道の本体942とを有する。複数の柱941は、それぞれ杭基礎101により支持されている。杭基礎101のうち一部(本変形例では、角鋼管70の上部)は、地面G1から突出している。このように、杭基礎101は、その全体が地中に埋設されていなくてもよい。木道94は、例えば山地や水辺等に設置される。このため、設置箇所への重機の進入が困難な場合もある。本発明の杭基礎101を構成する各部材は、コンクリートを用いる基礎と比べて軽量であるため、重機の進入が困難な場所にも当該部材を容易に運搬することができる。
【0088】
図15(b)に示すように、四阿95は、複数(例えば、4本)の柱951と、屋根952とを有する。複数の柱951は、それぞれ杭基礎101により支持されている。また、図15(c)に示すように、パーゴラ96は、複数(例えば、4本)の柱961と、屋根962とを有する。複数の柱961は、それぞれ杭基礎101により支持されている。
【0089】
杭基礎101は、施工の際の掘削量及び埋戻し量がコンクリート基礎と比べて少なく、埋戻し後の転圧も不要であるため、杭基礎101の施工は、コンクリート基礎の施工と比べて短い工期により実施することができる。
【0090】
また、特に寒冷地では凍結深度が深くなり、コンクリート基礎の場合、より深くまで掘削する必要が生じる。これに対し、杭基礎101によれば、鋼管杭11の長さを長くすることで、より深い凍結深度に対応することができる。このため、本発明に係る杭基礎101は、重機の進入が困難な場所や、寒冷地等、様々な土地において好適に使用することができる。
【0091】
〔第1実施形態に係る杭基礎の他の適用例〕
また、第1実施形態において、杭基礎100の適用例として街灯等を挙げて説明した。しかしながら、杭基礎100は、この他の構造物に対しても使用できる。例えば、杭基礎100は、上記の図14、15にて説明した看板91、ソーラー街灯92、標識93、木道94、四阿95又はパーゴラ96に適用してもよい。
【0092】
図16は、杭基礎100の他の適用例を示す説明図である。図16では、構造物として、デッキ97の例を示している。図16(a)はデッキ97の立面図であり、図16(b)はデッキ97の杭基礎100を含む断面図である。デッキ97は、例えば公園、商業施設、その他の土地において設置される低床デッキである。デッキ97は、複数の柱971と、本体972とを有する。複数の柱971は、それぞれ杭基礎100により支持されている。
【0093】
図16に示すように、杭基礎100のうち一部(本変形例では、鋼管杭11の下方部分)のみが、地面G1に埋設され、その他の部分(本変形例では、杭頭11tを含む鋼管杭11の上方部分、接合部材10及び第2接合部材40)は地面G1から突出している。このように、杭基礎100は、その全体が地中に埋設されていなくてもよい。特に、本変形例において、接合部材10及び第2接合部材40は、その全体が地面G1から突出していてもよい。このように構成することで、杭基礎100を施工する際、地面G1を掘削する必要がない。すなわち、地面G1にそのまま鋼管杭11を打設し、地面G1から突出している鋼管杭11の杭頭11tに接合部材10を被せればよい。このため、掘削及び埋戻しに掛かる工数を削減することができ、より容易に杭基礎100を施工することができる。
【0094】
本発明に係る杭基礎100は、鋼管杭11を4本用いる杭基礎101と比べると、支持力が小さい。一方で、杭基礎100は、杭基礎101と比べると必要な部品点数や施工に掛かる工数が少ないため、低コストにより施工することができる。このため、適用先の地盤の強度や、構造物に掛かる荷重等に応じて、杭基礎100及び杭基礎101を使い分けることが好適である。具体的には、地盤の強度が弱い場合や、構造物に強い荷重が掛かる場合には、杭基礎101を適用し、地盤の強度が強く、構造物に掛かる荷重も弱い場合には杭基礎100を適用することが好適である。そして、接合部材10は、杭基礎100及び杭基礎101の両方に適用されるため、部材としての汎用性が高い。このため、接合部材10は、大量生産により生産コストを低減することができる。
【0095】
〔その他〕
なお、上述の実施形態及び変形例については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。また、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
10:接合部材、 11:鋼管杭、 11a:貫通孔、 11t:杭頭、
20:被覆筒部、 21:周壁、 21a:貫通孔、 22:上方端面、
22a:貫通孔、 22b:肩部、 23:下方端面、 23a:開口、
30:突出部、 31:周壁、 32:上方端面、 32a:貫通孔、
33:収容部、 33b:中央部、 33a:拡幅部、 33c:拡幅部、
40:第2接合部材、 41:上方部材、 41a:貫通孔、 42:中間部材、
42a:貫通孔、 43:円盤部、 43a:貫通孔、 50:ガイドプレート、
51:ガイド筒部、 52:上方端面、 52a:貫通孔、 52b:貫通孔、
53:連結部、 54:突起部、 60:アングル金具、 61:第1部材、
62:第2部材、 70:角鋼管、 91:看板、 92:ソーラー街灯、
93:標識、 94:木道、 95:四阿、 96:パーゴラ、97:デッキ、
100:杭基礎、 101:杭基礎、 B1:ボルト、 B2:ボルト、
B3:ボルト、 B4:ボルト、 NT1:ナット、 NT2:ナット、
NT3:ナット、 WS1:ワッシャー、 WS2:ワッシャー、
WS3:ワッシャー、 WS4:ワッシャー、 WS5:ワッシャー、 PL1:柱、
PL2:柱、 CP1:カーポート、 RF1:屋根、 G1:地面、 HL1:穴、
HL2:穴、 TL1:杭打ち機、 TL2:本体、 AD1:アダプタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16