(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】毛切断装置
(51)【国際特許分類】
A45D 26/00 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
A45D26/00 G
(21)【出願番号】P 2020105677
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春日井 秀紀
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527091(JP,A)
【文献】特表2016-514491(JP,A)
【文献】特表2005-511196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0244912(US,A1)
【文献】特開2009-240395(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051219(WO,A1)
【文献】特表2017-518816(JP,A)
【文献】特表2019-512340(JP,A)
【文献】登録実用新案第3036232(JP,U)
【文献】特開2008-289812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップに相当する装置本体と、
前記装置本体に装着されるヘッドに相当する毛切断部材と、
を備え、
前記毛切断部材は、
コア部を含む光導波路を有し、皮膚から突出する毛に光を放出することで前記毛の切断を行う光放出モジュールと、
前記光放出モジュールを覆うように構成されるカバーと、
前記カバー内に配置されて、前記光導波路内を伝達する光に起因した対象光が通る検知領域と、
前記検知領域内の前記対象光を検知する検知部と、
を備える、
毛切断装置。
【請求項2】
前記検知領域は、前記カバー内における、前記光導波路内を伝達する光の伝達方向の伝達先となる一端側の空間に配置される、
請求項1に記載の毛切断装置。
【請求項3】
前記対象光は、前記光導波路内を伝達して前記検知領域に向かう光のうちの一部の光である、
請求項1又は2に記載の毛切断装置。
【請求項4】
前記対象光は、全反射せずに前記光導波路から漏れ出た漏れ光を含む、
請求項3に記載の毛切断装置。
【請求項5】
前記検知領域内に配置され、前記光導波路内を伝達して前記検知領域に進入した光を拡散反射又は拡散透過させる拡散部を更に備え、
前記対象光は、前記拡散部で拡散された拡散光を含む、
請求項3又は4に記載の毛切断装置。
【請求項6】
前記検知領域内に配置され、前記光導波路内を伝達して前記検知領域に進入した光により励起を引き起こして光を発生する蛍光体粒子を含む変換部を更に備え、
前記対象光は、前記変換部で発生した光を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の毛切断装置。
【請求項7】
前記検知領域内に配置され、前記光導波路内を伝達して前記検知領域に進入した光を反射する反射部を更に備え、
前記対象光は、前記反射部で反射された反射光を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の毛切断装置。
【請求項8】
前記検知部による前記対象光に関する検知結果に基づき、前記毛切断装置の光出力に関する状態が特定状態にあるか否かを判定する判定部を更に備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載の毛切断装置。
【請求項9】
さらに前記判定部は、前記対象光の光強度に関する変化の態様に基づき、前記特定状態の種類を特定する、
請求項8に記載の毛切断装置。
【請求項10】
前記判定部において、少なくとも前記特定状態の種類が所定の種類であることが特定された場合、前記光放出モジュールからの光出力を制限する制限部を更に備える、
請求項9に記載の毛切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、毛切断装置に関し、より詳細には、毛に光を作用させることで毛を切断する毛切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ光を利用して毛を切断するように構成された装置が記載されている。特許文献1に記載の装置は、レーザ光源と、ファイバ光学系と、を含んでいる。レーザ光源は、毛を効果的に切断するために所定の発色団を標的とするように選択された波長を有するレーザ光を、発生させるように構成されている。ファイバ光学系は、近位端と遠位端と外壁と、遠位端に向かって配置されて側壁の一部に沿って延在する切断領域と、を有する。ファイバ光学系は、近位端においてレーザ光源からレーザ光を受け取り、そのレーザ光を近位端から遠位端に向かって導光し、切断領域が毛に接触すると毛に向かって切断領域から光を放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成においては、例えばレーザ光源又はファイバ光学系等に起こり得る経年劣化、異常又は汚れ等によって光出力が低下してしまう可能性がある。したがって、光を利用した毛切断装置の実用化にあたり、光出力に関する信頼性の向上が求められる。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の毛切断装置は、グリップに相当する装置本体と、前記装置本体に装着されるヘッドに相当する毛切断部材と、を備える。前記毛切断部材は、光放出モジュールと、カバーと、検知領域と、検知部と、を備える。前記光放出モジュールは、コア部を含む光導波路を有し、皮膚から突出する毛に光を放出することで前記毛の切断を行う。前記カバーは、前記光放出モジュールを覆うように構成される。前記検知領域は、前記カバー内に配置されて、前記光導波路内を伝達する光に起因した対象光が通る。前記検知部は、前記検知領域内の前記対象光を検知する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置を提供できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る毛切断装置の、一部破断した正面図である。
【
図2】
図2は、同上の毛切断装置の断面図であり、毛切断部材が装置本体に取り付けられた状態の図である。
【
図3】
図3は、同上の毛切断装置の断面図であり、同上の毛切断部材が同上の装置本体に対して分離した状態の図である。
【
図4】
図4は、同上の毛切断装置の要部の背面図であり、特に同上の毛切断部材及び同上の装置本体におけるレセプタクル部を示す図である。
【
図5】
図5Aは、同上の毛切断部材の模式的な断面図である。
図5Bは、一部破断した同上の毛切断部材の模式的な正面図である。
【
図6】
図6Aは、同上の毛切断装置における要部の構成を示す概略断面図である。
図6Bは、
図6Aの要部の拡大図である。
【
図7】
図7Aは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を放出する前のシーンを示す概略断面図である。
図7Bは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を放出するシーンを示す概略断面図である。
図7Cは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛の切断後のシーンを示す概略断面図である。
【
図8】
図8Aは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を放出する前のシーンを示す概略断面図である。
図8Bは、同上の毛切断装置における毛の切断時の動作、特に毛に光を放出するシーンを示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、同上の毛切断装置の制御回路の概略構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10Aは、同上の毛切断装置における皮膚の接触状態、及び非接触状態に対する光出力に関するグラフである。
図10Bは、同上の毛切断装置の正常時及び異常時における検知部の電圧変化に関するグラフである。
【
図11】
図11は、同上の毛切断装置の動作例1を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、同上の毛切断装置の動作例2を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、同上の毛切断装置の第1変形例の模式的な外観図である。
【
図14】
図14A~14Dは、同上の毛切断装置の第2変形例の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)概要
以下、本実施形態に係る毛切断装置1の概要について、
図1~
図5Bを参照して説明する。毛切断装置1は、毛91(
図6A参照)に光を作用させることで毛91を切断する装置である。毛切断装置1での切断対象となる毛91は、一例として人の「ひげ」等であるが、特に限定されず、人等の皮膚92から突出する様々な毛(例えば腕又は脚の体毛等)を含む。
図6Aでは、毛91及び皮膚92を想像線(二点鎖線)で示す。
【0010】
要するに、毛切断装置1は、物理的な「刃」にて毛91を切断する一般的な「かみそり」又は「はさみ」等とは異なり、「刃」の代わりに光エネルギを毛91に与えることで、毛91の切断を行う。そのため、毛切断装置1では、一般的な、「かみそり」又は「はさみ」等に比較して、毛91の周囲の皮膚92等にダメージを与えにくく、さらに、刃こぼれ等の物理的な劣化も生じにくい。
【0011】
本実施形態に係る毛切断装置1は、
図1~
図3に示すように、毛切断部材3と、装置本体2とを備えている。ここでは一例として、毛切断部材3は、毛切断装置1のヘッドに相当し、装置本体2がグリップに相当する。また一例として、毛切断部材3は、装置本体2に対して着脱可能に取り付け可能となっている。ただし、本開示の毛切断装置1において、毛切断部材3が装置本体2に対して着脱可能であることは必須の構成ではなく、毛切断部材3と装置本体2とが一体的に組み付けられていて取り外しできなくてもよい。
【0012】
本実施形態に係る毛切断装置1は、
図1~
図3、及び
図5Bに示すように、光放出モジュールM1と、カバー30と、検知領域D2と、検知部D1と、を備えている。ここでは一例として、光放出モジュールM1、検知部D1、及び検知領域D2は、毛切断装置1のヘッドである毛切断部材3に設けられている。
【0013】
光放出モジュールM1は、
図3に示すように、コア部41を含む光導波路4を有している。光放出モジュールM1は、皮膚92から突出する毛91に光を放出することで毛91の切断を行う。
【0014】
カバー30は、光放出モジュールM1を覆うように構成される。検知領域D2は、カバー30内に配置されて、光導波路4内を伝達する光に起因した対象光OB1(
図5B参照)が通る。検知部D1は、検知領域D2内の対象光OB1を検知する。
【0015】
毛切断部材3が装置本体2に取り付けられた状態において、装置本体2内に設けられている光源21(
図2参照)で発生した光が、光導波路4の先端面(受光面40A:
図2参照)に入力されることにより、光導波路4内を光が伝達する。本実施形態では一例として、光源21はレーザ光源であって、光導波路4内を伝達する光はレーザ光である。
【0016】
本実施形態では、上述の通り、毛切断装置1が検知部D1及び検知領域D2を備えていることで、例えば検知部D1の検知結果を利用することができる。例えば、光源21、光放出モジュールM1、又は光学系22(
図2参照)等に起こり得る異常、経年劣化、又は汚れ等によって、毛切断装置1の光出力(光放出モジュールM1から放出される光)が低下してしまう可能性がある。検知部D1の検知結果を利用することで、そのような光出力の低下に関する対処(光源21の自動停止や光出力補正といったフィードバック制御、及びユーザ通知等)を行える。結果的に、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置1を提供できる、という利点がある。
【0017】
また本実施形態に係る毛切断方法は、光放出ステップと、検知ステップと、を含む。光放出ステップでは、光放出モジュールM1から、皮膚92から突出する毛91に光を放出させることで、毛91の切断を行う。検知ステップでは、カバー30内に配置されて光導波路4内を伝達する光に起因した対象光OB1が通る検知領域D2内の対象光OB1を検知する。ここでは、上記の光放出ステップ及び検知ステップを含む毛切断方法は、毛切断装置1上で用いられる。
【0018】
この構成においても、毛切断方法が検知ステップを含むことで、検知部D1の検知結果を利用することができる。結果的に、光出力に関する信頼性が向上された毛切断方法を提供できる、という利点がある。
【0019】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る毛切断装置1の詳細について、
図1~
図12を参照して説明する。
【0020】
以下では一例として、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸を設定し、特に、光導波路4の長さに沿った軸を「X軸」、毛切断部材3のカバー30の開口部31と皮膚92とが対向したときの対向方向に沿った軸を「Y軸」とする。X軸、Y軸、及びZ軸は、いずれも仮想的な軸であり、図面中の「X」、「Y」、「Z」を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、いずれも実体を伴わない。また、これらの方向は毛切断装置1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。光導波路4の光軸C1(
図2参照)の方向は、X軸に沿った方向である。
【0021】
(2.1)定義
本開示でいう「毛」は、皮膚92から突出する様々な毛91、つまり皮膚92から延びる様々な毛を含み、例えば、人(人間)の髪の毛、ひげ、眉毛、すね毛、鼻毛又は耳毛等の種々の体毛を含む。さらに、例えば、犬又は猫等のほ乳類、その他の動物においても、その皮膚92から突出する様々な毛91が、本開示でいう「毛」に含まれる。すなわち、本実施形態に係る毛切断装置1は、これらの毛91を切断対象とする装置である。また、本開示でいう「皮膚」には、人工皮膚等も含む。本実施形態では一例として、毛切断装置1の切断対象となる毛91が、人の皮膚92から突出する毛、特に成人男性の「ひげ」である場合について説明する。つまり、毛切断装置1の切断対象となる毛91は、人の顔の皮膚92から生えた毛である。顔の皮膚92等を含む人の皮膚92を「肌」ともいう。
【0022】
また、本開示でいう毛91の「切断」は、毛91を切断すること全般を含み、例えば、毛91を根元で切る(つまり、毛をそる)こと、適当な長さで毛91を切り揃えること、及び毛先のみを切ること等を含む。そのため、本開示でいう「毛切断装置」には、例えば、毛91をそるための装置である「シェーバ」又は「てい毛装置」、及び適当な長さで毛を切るための装置である「トリマ」、「バリカン」又は「はさみ」等が含まれる。さらには、本開示でいう毛91の「切断」は、毛91を略平面状の切断面にて2つに切断することだけでなく、毛91の切断部に損傷を与えて毛91を切断部にて破断すること等も含む。本実施形態では一例として、毛切断装置1が、切断対象となる毛91(ひげ)を根元で切る(つまり、毛をそる)ことに適した装置(シェーバ)である場合について説明する。
【0023】
また、本開示でいう「レーザ光」は、誘導放出によって発生する光(Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)を意味する。レーザ光を発生する光源21としては、例えば、半導体の再結合発光を利用した半導体レーザ(LD:Laser Diode)等がある。レーザ光は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が発生する光に比較して、干渉性(coherence)が高く、出力(パワー密度)が高く、単色性(単一波長)が高く、かつ指向性が高い、という特性を持つ。
【0024】
また、本開示でいう「光導波路」は、光を通すことで光を所望の経路に沿って導く光学部材を意味する。光導波路の具体例としては、互いに屈折率の異なるコア及びクラッドを有し、コアをクラッドで覆った光ファイバ等がある。光ファイバは、コアとクラッドとの界面での光の全反射を利用して、コアの内部に光を通すことで所望の経路に沿って光を導くことが可能である。ここで、光導波路は、特に、通信用の信号(光信号)を通す伝送路に限らず、光を所望の経路に沿って導く光学部材全般を意味する。
【0025】
また、本開示でいう「保持」は、2つの物体同士が互いの位置関係を保ち続けるように、一方の物体が他方の物体を支持することを意味する。ここで、2つの物体同士の相対的な位置関係は、多少、変化してもよく、一方の物体と他方の物体とが堅牢に固定されていなくてもよい。つまり、保持部材5は、光導波路4と保持部材5との位置関係が多少変化する態様で、光導波路4を保持していてもよい。
【0026】
また、本開示でいう「屈折率」は、真空中の光速度を媒質中の光速度(より正確には位相速度)で除した値である。屈折率は、基本的に、物質に依存して決まっており、例えば、空気の屈折率は「1.0003」であって、水の屈折率は「1.3334」である。同じ物質であっても、屈折率は入射する光の波長によって異なることがあるが、本開示では、特に断りがない限り、屈折率は波長404.7nmの光(水銀のh線)について示すこととする。
【0027】
また、本開示でいう「パワー密度」は、単位面積(1cm2)あたりの光強度を意味する。パワー密度の単位は「kW/cm2」又は「J/(s・cm2)」である。光導波路4の断面において光強度の分布にばらつきがある場合でも、光導波路4を通る光強度を光導波路4のコア部41の断面積で除することにより、コア部41の断面全域において平均化された平均的なパワー密度が求まる。本開示では、特に断りがない限り、このように求まる平均的なパワー密度を「パワー密度」とする。
【0028】
(2.2)全体構成
ここではまず、本実施形態に係る毛切断装置1の全体構成について、
図1~
図3、
図6A、及び
図6Bを参照して説明する。
【0029】
毛切断装置1は、上述したように、毛切断部材3と、装置本体2とを備えている。
【0030】
毛切断部材3は、光放出モジュールM1と、接続部材としてフェルール71と、ホルダ部H1と、センサ部S1と、検知部D1と、検知領域D2と、を備えている。ホルダ部H1には、光放出モジュールM1及びフェルール71の各々の一部がそれぞれ挿入される。
【0031】
また毛切断部材3は、固定部材F1、接着部材G1、カバー30、及び、固定キャップ34を更に備えている。光放出モジュールM1は、光導波路4と保持部材5とを有している。保持部材5は、光導波路4の後述するコア部41の一部を露出した形態で光導波路4を保持する。また光放出モジュールM1は、固定ブロック32を更に有している。
【0032】
装置本体2は、毛切断部材3のフェルール71が機械的に接続される(接続対象部として)レセプタクル部81と、光源21と、光学系22と、ケース20と、を備えている。光源21は、コア部41に導入される光を発生する。光学系22は、光源21とレセプタクル部81との間に配置される。ケース20は、光源21及び光学系22を収容する。
【0033】
光導波路4は、光放出部40(
図6A及び
図6B参照)を有しており、光源21で発生した光が入力されることによって、光放出部40から光を出力する。毛切断装置1は、光源21で発生した光を、光導波路4に入力し、光導波路4の光放出部40から毛91に放出することで、毛91の切断を行う。
【0034】
より詳細には、毛切断装置1は、光放出部40の屈折率として、切断対象である毛91の屈折率に近い値を採用している。これにより、光放出部40に毛91が接触した状態では、光放出部40から毛91に光が漏れ出し、この光のエネルギで毛91が切断される。一方で、光放出部40に毛91が接触しておらず、光放出部40に空気(屈折率:1.0)のみが接するような状態では、光放出部40と空気との屈折率の差によって、光放出部40からの光の漏れ量が小さく抑えられる。
【0035】
ところで、本実施形態では、毛切断部材3が毛切断装置1のヘッドに相当し、装置本体2がグリップに相当する。装置本体2のケース20は、一例として、X軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。
【0036】
毛切断部材3は、長尺である。毛切断部材3は、X軸に沿って長さを有する。毛切断部材3のカバー30は、
図5Aに示すように、その内部に光放出モジュールM1を収容している。またカバー30は、開口部31を有している。カバー30は、光放出モジュールM1を覆うように構成される。開口部31は、コア部41の少なくとも一部を外部に露出させる。ただし、本開示の毛切断装置1において、カバー30が開口部31を有していることは必須ではなく、開口部31は適宜に省略されてもよい。
【0037】
本実施形態の検知領域D2は、カバー30内に配置されている。特にここでは一例として、検知領域D2は、カバー30内における、光導波路4内を伝達する光の伝達方向A2(
図2及び
図3参照)の伝達先となる一端側の空間に配置される。言い換えると、カバー30内部の、X軸の正の側の隅には、検知領域D2用の空間が形成されている。ここでは一例として検知領域D2は、開口部31よりもX軸の正の側の、カバー30内部にある。また検知部D1も、カバー30内に配置されている。ここでは一例として検知部D1は、検知領域D2内に配置されている。
【0038】
カバー30は、一例として、X軸に沿って長さを有する細長い角筒状に形成されている。本実施形態では、毛切断部材3のフェルール71と、ケース20のレセプタクル部81と、が接続されることにより、毛切断装置1は、Z軸の一方側から見て、全体として略I字状の外観を構成している。
【0039】
言い換えると、毛切断部材3及びケース20は、それぞれ長尺である。毛切断装置1は、使用形態として、スティック状の形態を有している。スティック状の形態とは、フェルール71がレセプタクル部81に結合された状態において、毛切断部材3の長手方向とケース20の長手方向とが一方向に沿った形態である。
【0040】
本実施形態では一例として、ケース20及びカバー30は、いずれも合成樹脂製である。
【0041】
このように、全体として略I字状の外観を有する毛切断装置1は、「直刃かみそり」と同じように使用される。つまり、ユーザは、切断対象となる毛91(ここでは「ひげ」)を切断する(ここでは「そる」)際に、毛切断装置1のグリップ、つまりケース20を片手で握ることで、毛切断装置1を把持する。この状態で、ユーザは、毛切断装置1のヘッド、つまり毛切断部材3のY軸方向の一面をユーザの皮膚92に接触させ、毛切断部材3を皮膚92に沿わせてZ軸方向に移動させることにより、毛切断部材3の光放出部40にて毛91を切断する。このとき、ユーザは、毛切断部材3のうちのY軸の負の向きを向いた面を皮膚92に接触させ、かつ毛切断部材3をZ軸の正の向きに移動させることによって、毛切断部材3(ヘッド)の進行方向の前方(つまりZ軸の正の向き)に位置する毛91を切断する。
【0042】
毛切断装置1は、使用形態として、スティック状の形態(略I字状の形態)に加えて、別の形態を有してもよい。例えば、装置本体2は、レセプタクル部81の近傍に、所定の角度範囲内で回転可能な軸部を有して、毛切断部材3とケース20とが、略I字状の形態から、略L字状の形態となるように変形可能でもよい。この場合、ユーザは、毛切断装置1の使用形態を、スティック状の形態とL字状の形態とから択一的に変更できる。
【0043】
装置本体2は、レセプタクル部81、光源21、光学系22、及びケース20に加えて、制御回路6、電池23、ファン24、ヒートシンク25、操作部26、及び通知部27(
図9参照)を更に有している。
【0044】
制御回路6、光学系22、電池23、ファン24及びヒートシンク25は、いずれもケース20内に収容されている。操作部26は、ケース20の一面(Y軸の負の向きを向いた面)に設けられている。通知部27は、例えば、LED等の表示灯(光源)と、当該表示灯を覆うランプカバーとを含み、例えばケース20の一面に設けられている。毛切断部材3に含まれる光導波路4は、フェルール71と共に、受光面40A(
図2参照)側の一端部が、レセプタクル部81に接続されることで、ケース20内の光学系22と対向するように配置される。
【0045】
光源21は、電気エネルギを光エネルギに変換することで、光導波路4に入力される光を発生する。本実施形態では、光源21は、レーザ光源である。つまり、光源21で発生する光は、誘導放出によって発生するレーザ光である。ここでは、光源21は、半導体の再結合発光を利用した半導体レーザからなる。
【0046】
また、光源21で発生する光の波長は、400nm以上である。つまり、光源21は、400nmよりも長波長側にピーク波長又はドミナント波長を有するレーザ光を発生する。本実施形態では、光源21で発生する光の波長は、700nm以下である。例えば波長が400nm以上450nm以下の範囲にある光であれば、皮膚92に存在するアクネ菌等に対する殺菌作用が期待できる。また、波長が450nm以上700nm以下の範囲にある光であれば、皮膚92の活性化作用が期待できる。
【0047】
制御回路6は、少なくとも光源21を制御する回路である。制御回路6は、光源21に電力を供給することで光源21を発光(点灯)させる。さらに、制御回路6は、光源21の点灯/消灯の切り替え、及び光源21の出力(明るさ又は波長等)の調節等を行う。制御回路6は、プリント配線板(基板)と、プリント配線板に実装された複数の電子部品と、を含んでいる。制御回路6は、光源21の他、ファン24及び操作部26等の制御も行う。制御回路6について詳しくは、「(2.6)制御回路」の欄で説明する。
【0048】
光学系22は、光源21とレセプタクル部81との間に配置されており、光源21からの光を光導波路4へと導く。光学系22は、複数のレンズを含んでいる。
図2の例では、光学系22は、第1レンズ221、第2レンズ222、第3レンズ223及び第4レンズ224を含んでいる。ただし、
図2は、個々のレンズの形状及び配置を厳密には示しておらず、光学系22を模式的に示しているに過ぎない。
【0049】
電池23は、制御回路6、光源21及びファン24等の駆動用の電力を供給する電源として機能する。本実施形態では一例として、電池23は、充電及び放電が可能な、リチウムイオン電池(LIB:Lithium Ion Battery)等の二次電池である。
【0050】
ファン24は、光源21の冷却用の冷却ファンである。具体的には、ファン24は、ケース20内においてヒートシンク25を通る気流を発生することにより、ヒートシンク25の放熱を促進する。
【0051】
ヒートシンク25は、熱伝導率が比較的に高い材質、例えば、アルミニウム等で構成されている。ヒートシンク25は、光源21と熱的に結合されており、主として光源21の放熱を行う。
【0052】
操作部26は、ユーザの操作を受け付けて、ユーザの操作に応じた電気信号を制御回路6に出力する。本実施形態では一例として、操作部26は、プッシュスイッチ又はスライドスイッチ等のメカニカルスイッチを少なくとも1つ有している。
【0053】
通知部27は、制御回路6からの制御下で、表示灯(光源)の発光色の切り替え、又は点灯状態を連続点灯から点滅点灯への切り替え等を行うことにより、検知部D1の検知結果に対応した情報をユーザに通知する。
【0054】
開口部31(
図1参照)は、カバー30のうち、ユーザの皮膚92に接触する面(つまりY軸の負の側を向いた面)に配置される。開口部31は、X軸に沿って長さを有する長方形状に形成されている。この開口部31を通して、カバー30の内側の空間(収容空間SP1:
図5A参照)と外側の空間とがつながることになる。
【0055】
光導波路4の一部、保持部材5及び固定ブロック32は、カバー30内に収容されている。毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、光導波路4の受光面40Aは、装置本体2のケース20内において、光学系22の第4レンズ224と近接して対向する。要するに、毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、光導波路4は、光学系22を介して、光源21と光学的に結合される。その結果、光源21からの光は、光導波路4(コア部41)を通って伝播される。本実施形態ではコア部41に加えて、保持部材5及び固定ブロック32も、開口部31を通してカバー30の外部に露出する。
【0056】
光導波路4は、光源21で発生した光を通すことで、光源21からの光を所望の経路に沿って導く光学部材である。本実施形態では一例として、光導波路4は光ファイバである。この光導波路4は、コア部41及びクラッド部42を有しており、クラッド部42は、コア部41の少なくとも一部(ここでは一部)を覆っている。またコア部41は、クラッド部42の外周の側に偏芯して配置される。ここでは一例として、コア部41は、クラッド部42の外周部に配置されて、コア部41の一部が外周部から露出する。具体的には
図6Bに示すように、コア部41の、周方向における一部の領域が、クラッド部42の外周面420よりも外側に突出するように偏芯して配置される。
【0057】
光導波路4は、X軸方向における一端面(受光面40A)から、他端面(終端面40B)にわたって、コア部41の周方向における一部の領域が、クラッド部42の外周面420よりも外側に突出するように偏芯して配置されている。
【0058】
光導波路4は、クラッド部42の外周を保護する保護シース(樹脂製の被覆部材)を更に有してもよい。つまり、本実施形態の光導波路4として用いられる光ファイバは、コア部41とクラッド部42との二重構造であるが、クラッド部42の外側に位置する保護シースを加えて、三重構造を有してもよい。ただし、光導波路4の、少なくとも開口部31から露出される部位は、保護シースが除去されてコア部41及びクラッド部42が露出されることが好ましい。
【0059】
保持部材5は、光導波路4を保持する部材である。ここでは保持部材5は、光導波路4のうち、長手方向における一部と接触して保持する。以下、
図3に示すように、光導波路4を、X軸方向に沿って3つの領域(第1領域401、第2領域402、第3領域403)に分割して説明する。
【0060】
光導波路4の第1領域401は、
図3に示すように、保持部材5と接触して保持される領域である。光放出部40は、第1領域401の範囲内にある。
【0061】
光導波路4の第2領域402及び第3領域403は、保持部材5からX軸の負の方向にはみ出た領域である。第3領域403は、フェルール71内で接着部材G1によって接着されて固定される領域である。第3領域403は、フェルール71によって位置決めされる領域となる。
【0062】
第2領域402は、第1領域401と第3領域403との間の領域であり、保持部材5とフェルール71との間に介在する。第2領域402は、湾曲した部位である。第2領域402は、ホルダ部H1内で固定部材F1によって固定されている。すなわち、光導波路4は、第1領域401と第3領域403とがY軸方向において「ずれた」形態で配置されている。したがって、コア部41の光軸に関して、第1領域401における光軸C1(
図2参照)と、第3領域403における光軸とは、互いに非同軸である。
【0063】
保持部材5は、固定ブロック32に固定されている。保持部材5は、固定ブロック32に対して、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されている。これにより、光導波路4(第1領域401)は、保持部材5を介して固定ブロック32に間接的に固定されることになる。
【0064】
固定ブロック32は、カバー30に固定されている。固定ブロック32は、合成樹脂製であって(金属製でもよい)、X軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。固定ブロック32は、カバー30に対して、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されている。固定ブロック32には、上述したように保持部材5が固定されている。そのため、光導波路4(第1領域401)は、保持部材5及び固定ブロック32を介してカバー30に間接的に固定されることになる。
【0065】
ここで、毛切断部材3は、光導波路4の光放出部40、保持部材5及び固定ブロック32の全てが、開口部31を通してカバー30の外部に露出する。具体的には、固定ブロック32は、カバー30における開口部31の長さ(X軸)に沿って配置されている。そして、保持部材5は、固定ブロック32における毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面に固定されている。しかも、固定ブロック32及び保持部材5は、開口部31の短手方向(Z軸方向)において、毛切断装置1(毛切断部材3)の進行方向の前方側に隙間を確保するように、毛切断装置1の進行方向の後方側(つまりZ軸の負の側)に寄せて配置されている。
【0066】
また、固定ブロック32及び保持部材5は、Y軸の負の向きを向いた面が、カバー30におけるY軸の負の向きを向いた面と面一になるように、配置されている。さらに、光導波路4(光放出部40)は、
図6Aに示すように、保持部材5における毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面に固定されている。
【0067】
また
図2及び
図3では図示を省略しているが、毛切断装置1は、例えば、電池23用の充電回路、又は、毛切断装置1の動作状態を表示するための表示部等の構成要素を更に備えていてもよい。
【0068】
(2.3)毛切断部材
(2.3.1)毛切断部材の構成
次に、毛切断部材3のより詳細な構成について、
図1~
図6Bを参照して説明する。
【0069】
図1は、毛切断装置1の、Y軸方向の負の側から正の向きに見た図(正面図)である。
図4は、毛切断部材3が、装置本体2のレセプタクル部81から分離した状態の、Y軸方向の正の側から負の向きに見た図(背面図)である。
【0070】
図5Aは、光放出モジュールM1を収容するカバー30をその長手方向における略中央でY-Z平面に沿って切った断面図(
図5BのA-A線断面図)である。
図5Bは、光放出モジュールM1を収容するカバー30を、Y軸方向の負の側から正の向きに見た図(正面図)である。
図6Aは、毛切断部材3における光導波路4及び保持部材5周辺の構成を示す概略断面図である。
図6Bは、
図6Aの要部の拡大図である。
【0071】
本実施形態では、毛切断部材3は、上述の通り、光放出モジュールM1と、フェルール71と、ホルダ部H1と、固定部材F1と、接着部材G1と、カバー30と、固定キャップ34と、センサ部S1と、検知部D1と、検知領域D2と、を備えている。
【0072】
光放出モジュールM1は、光導波路4と保持部材5と固定ブロック32とを有している。特に光導波路4は、皮膚92から突出する毛91に光を放出することで毛91の切断を行うように配置される。
【0073】
(2.3.2)光導波路
光放出モジュールM1の光導波路4は、上述したように、毛91に光を放出することで毛91の切断を行う光放出部40を有している。本実施形態では、光導波路4は、コア部41と、クラッド部42と、を有する光ファイバである。
【0074】
クラッド部42は、受光面40Aから終端面40Bにわたって、一部を除くコア部41の周囲を覆っている。ここで、コア部41及びクラッド部42は、いずれも比較的に高い光透過性を有している。ただし、コア部41とクラッド部42とでは屈折率が異なっており、コア部41の屈折率は、クラッド部42の屈折率よりも大きい。この構成により、受光面40Aからコア部41に入射した光は、コア部41とクラッド部42との界面での全反射又は屈折により、極力、コア部41のみを通るようにして光導波路4の先端部(受光面40Aとは反対側にある終端面40Bを含む端部)まで到達する。
【0075】
光導波路4は、例えば、コア部41及びクラッド部42のいずれもが合成石英からなる。例えば、コア部41は合成石英製であって、クラッド部42は、コア部41とは屈折率が異なる、不純物を添加した合成石英製である。本実施形態では一例として、ファイバ入射NA(Numerical Aperture)が「0.1」の場合、コア部41の屈折率は「1.4698」であって、クラッド部42の屈折率は「1.4309」である。また、ファイバ入射NAが「0.2」の場合、コア部41の屈折率は「1.4698」であって、クラッド部42の屈折率は「1.309」である。ここで挙げるNA及び屈折率は、あくまで一例に過ぎず、コア部41の屈折率とクラッド部42の屈折率との差等を規定する趣旨ではない。
【0076】
コア部41は、
図3に示すように、クラッド部42の外周の側に偏芯して配置される。受光面40Aから見て、コア部41及びクラッド部42は、それぞれ円形状である。ただし、受光面40Aから見て、コア部41は、その外周部がカットされてD字状に形成されていてもよい。受光面40Aは、フェルール71の端面710と面一である。
【0077】
本実施形態では一例として、コア部41の径は、約10μmであり、クラッド部42の径は、約50μm~125μmであるとするが、これらの数値に限定されない。
【0078】
コア部41は、クラッド部42の外周部に配置されて、コア部41の一部が外周部から露出する。したがって、光導波路4を通る光が、その露出する一部を通じて外部に漏れやすくなる。
【0079】
光導波路4のうち、保持部材5にて覆われる部位は、毛91に光を漏らすことができないため、毛91に光を放出する光放出部40として機能しない。本実施形態ではコア部41のうち、クラッド部42に覆われずに露出し、さらにホルダ部H1及びフェルール71にも覆われずに露出した部位が、光放出部40となる。
図6A及び
図6B等においては、光放出部40を含む光導波路4、及び保持部材5を、Y-Z平面で切った断面を示す。
【0080】
光放出部40の屈折率は、皮膚92の表面921(
図6A参照)の屈折率よりも小さい。ここで、人の皮膚92(肌)は、表皮、真皮及び皮下組織等を含んでいる。ここでいう皮膚92の表面921は、これら皮膚92を構成する複数の要素のうち最も外側に位置する表皮、又は表皮の表面を意味する。
【0081】
すなわち、光放出部40は、コア部41及びクラッド部42を有する光導波路4(光ファイバ)のうちのコア部41からなるので、コア部41の屈折率は皮膚92の表面921の屈折率よりも小さくなるように設定される。一例として、人の皮膚92の表面921の屈折率は「1.4770」であると仮定する。そうすると、光放出部40であるコア部41の屈折率が上述したように「1.4698」であれば、光放出部40の屈折率が皮膚92の表面921の屈折率より小さい、という条件は満足する。
【0082】
より詳細には、本実施形態では、光放出部40の屈折率は、1.47以下である。要するに、光放出部40の屈折率が皮膚92の表面921の屈折率よりも小さくなるように、光放出部40の屈折率は「1.4700」以下の範囲に設定されている。これにより、皮膚92の表面921の屈折率に多少のばらつきがあっても、光放出部40の屈折率は、皮膚92の表面921の屈折率よりも小さくなる。つまり、皮膚92の表面921の屈折率が「1.4770」よりもわずかに小さい場合でも、光放出部40の屈折率が皮膚92の表面921の屈折率よりも小さい、という条件は満足できる。
【0083】
さらに、ここでいう皮膚92の表面921の屈折率は、毛91の屈折率よりも小さい。つまり、皮膚92の表面921と、皮膚92から突出する切断対象である毛91と、光放出部40(コア部41)と、の三者で屈折率を比較すると、毛91の屈折率が最も大きく、次に皮膚92の表面921の屈折率が大きく、光放出部40の屈折率が最も小さい。一例として、毛切断装置1での切断対象である人の毛91(ここでは「ひげ」)の屈折率は「1.5432」であると仮定する。そうすると、人の皮膚92の表面921の屈折率が「1.4770」であれば、皮膚92の表面921の屈折率が毛91の屈折率よりも小さい、という条件は満足する。
【0084】
要するに、本実施形態では、屈折率の関係としては「光放出部<皮膚<毛」のように、光放出部40(コア部41)よりも皮膚92の表面921の方が屈折率は大きく、皮膚92の表面921よりも毛91の方が更に屈折率は大きくなる。つまり、光放出部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率よりも小さく、かつ皮膚92の表面921の屈折率よりも小さい。
【0085】
このように毛切断装置1においては、光放出部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率よりも小さいので、光放出部40に毛91が接触した状態では、光放出部40から毛91に光が漏れ出すことになる。したがって、光放出部40から毛91に漏れ出した光のエネルギで、毛91が切断されることになる。毛91が切断される原理(メカニズム)については「(2.4)使用例」の欄で詳しく説明する。一方で、光放出部40に毛91が接触しておらず、光放出部40に空気(屈折率:1.0)のみが接するような状態では、光放出部40と空気との屈折率の差によって、光放出部40からの光の漏れ量が小さく抑えられる。
【0086】
さらに、屈折率の関係として、より好ましくは、光放出部40の屈折率と、切断対象である毛91の屈折率との差は、極力小さい方がよい。つまり、皮膚92の表面921と、毛91と、光放出部40と、の三者では、屈折率が上述したような大小関係を満たしつつも、その差は極力小さいことが好ましい。これにより、光放出部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率に近い値となり、光放出部40に毛91が接触した状態では、光放出部40から毛91に光が漏れ出しやすくなる。
【0087】
ここでは一例として、光放出部40(コア部41)の屈折率は「1.4698」、皮膚92の表面921の屈折率は「1.4770」、毛91の屈折率は「1.5432」であり、光放出部40の屈折率と皮膚92の表面921の屈折率とは同程度であると言える。ここで、「屈折率が同程度」とは、互いに異なる2つの屈折率があった場合において、大きい方の屈折率の±5%の範囲内に、小さい方の屈折率が含まれる程度に、両者が近しい値をとることをいう。この場合、例えば、光の入射角(皮膚92の表面921の法線との間の角度)を80度(入射NAは約0.17)とすると、毛91の屈折率の-5%の屈折率をもつ物体と毛91の屈折率をもつ物体との界面での反射率(s偏光)が13.2%、光放出部40と毛91との界面での反射率(s偏光)が12.5%、皮膚92と毛91との界面での反射率(s偏光)が11.3%となる。このように、屈折率が-5%変化しても、反射率は2%しか変化しない。つまり、本実施形態では、光放出部40の屈折率(1.4698)及び皮膚92の表面921の屈折率は、毛91の屈折率(1.5432)の±5%の範囲にあるため、同程度にあると言える。
【0088】
ちなみに、「(2.1)定義」の欄で説明したように、同じ物質であっても屈折率は波長によって異なるが、上述した屈折率の関係は、少なくとも光源21から出力される光の波長の範囲においては不変である。すなわち、少なくとも光源21から出力される光の波長の範囲(例えば、400nm以上700nm以下の範囲)においては、屈折率は「光放出部<皮膚<毛」との関係を満たす。
【0089】
さらに、クラッド部42の屈折率は光放出部40であるコア部41の屈折率よりも小さいので、上述した条件を満たす場合には、コア部41、クラッド部42、皮膚92の表面921、及び毛91の四者の中では、クラッド部42の屈折率が最小となる。つまり、四者の屈折率の関係は「クラッド部<コア部<皮膚<毛」となる。
【0090】
ところで、本実施形態に係る毛切断装置1では、少なくとも毛91の切断時において、光導波路4を通る光のパワー密度は50kW/cm2以上である。すなわち、コア部41及びクラッド部42を有する光導波路4においては、コア部41の内部を光が通ることになるため、コア部41の断面における単位面積(1cm2)あたりの光強度が、50kW以上となる。ここで、光導波路4を通る光のパワー密度は、常に、50kW/cm2以上である必要はなく、少なくとも毛91の切断を行う際(毛91の切断時)において、50kW/cm2以上であればよい。
【0091】
本実施形態では一例として、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、50kW/cm2以上300kW/cm2以下である。また、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、毛91を切断可能な70kW/cm2以上であることが好ましく、75kW/cm2以上であることがより好ましい。さらに、毛91を素早く(例えば0.1s程度で)切断可能とするならば、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、100kW/cm2以上であることがより好ましい。さらに、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、民生品として応用可能なレーザの光出力、及びファイバ径等を考慮すると200kW/cm2以下であることが好ましい。本実施形態では一例として、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、初期値が100kW/cm2であると仮定する。
【0092】
詳しくは「(2.4)使用例」の欄及び「(3)作用」の欄で説明するが、この程度のパワー密度であれば、毛切断装置1は、光放出部40から毛91に放出する光で毛91を効率的に切断しやすい。
【0093】
また、本実施形態では、光導波路4を通る光のパワー密度は可変である。すなわち、本実施形態に係る毛切断装置1は、光導波路4を通る光のパワー密度が初期値に固定されているわけではなく、光導波路4を通る光のパワー密度が変更可能に構成されている。ここでは特に、毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度が、初期値(100kW/cm2)に固定されるのでなく、初期値から変更可能である。毛91の切断時における光導波路4を通る光のパワー密度は、50kW/cm2以上の範囲で可変であることが好ましい。光導波路4を通る光のパワー密度は、連続的に変化してもよいし、段階的(非連続的)に変化してもよい。
【0094】
また、本実施形態では、光導波路4を通る光のパワー密度は、光源21からの出力を調整することによって、調整されている。ここでいうパワー密度の「調整」は、規定値にパワー密度を設定する態様と、上述したようにパワー密度を変化させる態様と、の両方の態様を含んでいる。要するに、光導波路4を通る光のパワー密度が初期値に固定される場合には、パワー密度が初期値(100kW/cm2)となるように、光源21からの出力の大きさが決定される。一方、光導波路4を通る光のパワー密度が初期値から所望の値に変化させられる場合には、パワー密度が変化後の所望の値となるように、光源21からの出力の大きさが決定される。光源21からの出力の大きさを決定するための構成について詳しくは、「(2.6)制御回路」の欄で説明する。
【0095】
(2.3.3)保持部材
次に、光放出モジュールM1の保持部材5の詳細について、
図6A及び
図6Bを参照して説明する。
【0096】
保持部材5は、光導波路4を保持する部位である。特に保持部材5は、光導波路4のコア部41の一部を露出した形態で光導波路4を保持する。つまり、光導波路4は、コア部41の一部が保持部材5によって遮光されて光の漏れが阻害されないように保持される。
【0097】
光導波路4は、保持部材5における毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面に、少なくとも光放出部40を露出させる態様で、保持部材5に保持されている。このように保持された光導波路4のコア部41は、毛91に光を放出することで毛91の切断を行う、光放出部40として機能する。
【0098】
保持部材5は、固定ブロック32に固定されているので、光導波路4(光放出部40)は、保持部材5及び固定ブロック32を介してカバー30に間接的に固定されることになる。
【0099】
ここで、光導波路4の光放出部40、保持部材5及び固定ブロック32の全てが、開口部31を通してカバー30の外部に露出している。しかも、開口部31内では、固定ブロック32及び保持部材5は、開口部31の短手方向(Z軸方向)において、毛切断装置1の進行方向の後方側(つまりZ軸の負の側)に偏って配置されている(
図5A参照)。そのため、保持部材5から見て、毛切断装置1の進行方向の前方側(つまりZ軸の正の側)には、開口部31の周縁との間に隙間が確保され、この隙間を通して、開口部31内に切断対象である毛91を取り込むことが可能である。言い換えれば、保持部材5のうちの光放出部40が露出するように光導波路4が保持された面、つまり毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面と、開口部31の周縁との間には、
図6Aに示すように、切断対象の毛91を導入可能である。
【0100】
切断対象である毛91は、
図6Aに示すように、保持部材5で保持された光放出部40と対向する位置に、開口部31からカバー30内に導入される。この状態では、保持部材5にて保持されている光導波路4は、光放出部40を、切断対象である毛91に突き合わせる格好になる。これにより、光導波路4は、切断対象である毛91に光放出部40を接触させることが可能である。
【0101】
保持部材5は、基台51と、接着部材52と、を有している。接着部材52は、基台51に対して光導波路4を接着する。基台51及び接着部材52は、いずれも光透過性を有する合成樹脂製である。特に、基台51は金型を用いて成形される樹脂成形品である。これに対して、接着部材52は、接着剤であるペースト状の樹脂が硬化した硬化物である。つまり、接着部材52は、基台51と光導波路4とを接合するための接着剤の硬化物である。
【0102】
基台51は、X軸に沿って長さを有する角柱状に形成されている。基台51は、固定ブロック32における毛切断装置1の進行方向の前方(Z軸の正の向き)を向いた面に、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されている。本実施形態では、基台51の屈折率は、コア部41(光放出部40)の屈折率以上である。
【0103】
また基台51は、
図6Bに示すように、対向面511と、側面512と、背面513と、裏面514と、の4面を有している。基台51の長さ(X軸)に直交する断面は、これら4面を四辺とする略矩形状となる。対向面511は、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対向する面である。側面512は、毛91の切断時に皮膚92の表面921に対して交差する面であって、対向面511と隣接する面である。背面513は、対向面511とは反対側を向いた面であって、側面512と隣接する面である。裏面514は、側面512とは反対側を向いた面であって、背面513と隣接する面である。ここでは光導波路4が、側面512に保持されている。
【0104】
接着部材52は、基台51に対して光導波路4を接着する。本実施形態では、基台51の側面512に光導波路4が保持されるように、接着部材52は、基台51の側面512に設けられ、基台51と光導波路4との接合を行う。ここで、接着部材52は、基台51の長手方向(X軸方向)の全長にわたって配置されている。そのため、光導波路4は、基台51の長手方向の全長にわたって、接着部材52にて基台51に接着されることになる。
【0105】
本実施形態では、接着部材52は、光放出部40のうち、クラッド部42と直接的に接触する。そのため、接着部材52は、その屈折率に関する制限を受けにくく、材質の選択肢が広くなる。つまり、光放出部40(コア部41)の屈折率が「1.4698」であるとすれば、接着部材52の屈折率は「1.4698」よりも大きくてもよい。光放出部40と接着部材52との間に、光放出部40の屈折率より小さいクラッド部42が介在する。そのため、たとえ接着部材52の屈折率が、光放出部40より大きくても、クラッド部42が光の漏れ量を適度に制限することができ、必要以上にコア部41から光が漏れ出すことによる光のパワー密度の低下を抑制できる。もちろん、接着部材52の屈折率は、光放出部40の屈折率と同等、又は、光放出部40の屈折率以下でもよい。
【0106】
また基台51のうち、光導波路4が保持される側面512に、光導波路4の位置決めを行う位置決め部53(溝)が形成されている。位置決め部53は、基台51の長手方向(X軸方向)の全長にわたって形成されている。光導波路4は、クラッド部42が、位置決め部53としての溝内に収容されるようにして、基台51の側面512に保持される。
【0107】
毛切断部材3は、光導波路4の周囲にあり、毛91の切断時に皮膚92に接触する接触面(モジュール側接触面501、及びカバー側接触面301:
図5A参照)を有している。光導波路4は、モジュール側接触面501からの高さL0(
図6B参照)が100μm以下となるように、保持部材5に保持されている。ここではモジュール側接触面501は、基台51の対向面511、及び、固定ブロック32におけるY軸の負の向きを向いた面に相当する。カバー側接触面301は、カバー30におけるY軸の負の向きを向いた面に相当する。本実施形態では、光導波路4は、カバー側接触面301からの高さも、モジュール側接触面501からの高さと略同じである。
【0108】
このような接触面(501,301)からの光導波路4の高さL0は、毛91の切断時における皮膚92の表面921からの光導波路4の高さに等しい。すなわち、本実施形態では、高さL0が、100μm以下に設定されることで、毛91の切断時における皮膚92の表面921から光導波路4までの距離(高さ)は100μm以下となる。ただし、ここでは高さL0は1μm以上であり、ゼロ(0)ではない。そのため、毛91の切断時において、皮膚92の表面921から光導波路4を離すことができる。したがって、例えば、皮膚92の表面921にニキビ等の隆起物があっても、隆起物による光導波路4の引っ掛かりが生じにくい。
【0109】
(2.3.4)カバーと固定キャップ
カバー30は、上述の通り、合成樹脂製であり、全体としてX軸に沿って長尺の角柱状に形成されている。カバー30は、中空であり、開口部31を有している。カバー30は、その内部に、開口部31を介して、光導波路4の光放出部40を露出する形態で、光放出モジュールM1を収容している。ここでは、カバー30は、光放出モジュールM1全体を収容しているのではなく、光放出モジュールM1のうち、ホルダ部H1よりもX軸の正の向きに突出した部位を収容している。光放出モジュールM1の固定ブロック32は、カバー30に固定されている。
【0110】
カバー30は、X軸の負の向きにおける一端面に挿入口300(
図3参照)を有している。光放出モジュールM1は、カバー30の挿入口300から挿入されて収容される。またカバー30は、挿入口300の周縁において、フランジ部320を有している。
【0111】
固定キャップ34は、例えば金属製であるが、特に限定されず、合成樹脂製でもよい。固定キャップ34は、X軸に沿った軸を有する筒状である。固定キャップ34は、X軸の負の向きを向いた一端面が開放され、当該一端面とは反対側の端面(X軸の正の向きを向いた面)に、カバー30を挿通可能な孔部340(
図1参照)を有している。固定キャップ34は、その内周面に、レセプタクル部81にあるねじ部810(ねじ山)が螺合可能なねじ溝341を有している。
【0112】
カバー30は、フランジ部320を介して、ホルダ部H1と固定される。ここでは、ホルダ部H1内の固定部材F1がフランジ部320に接着することで、カバー30は、光放出モジュールM1を収容した形態で、ホルダ部H1に固定される。
【0113】
固定キャップ34は、孔部340にカバー30を通すように、X軸の負の向きに移動させてカバー30に被せられ、さらにホルダ部H1の、周方向における全体を概ね覆うように配置される。固定キャップ34は、孔部340の内周部がカバー30のフランジ部320に接触して、更なるX軸の負の向きへの移動が規制される。固定キャップ34は、
図3に示す状態において、カバー30及びホルダ部H1に対して回転可能である。
【0114】
本実施形態では、固定キャップ34が、レセプタクル部81からのフェルール71の抜けを規制する規制構造(ここではねじ溝341)を有している。固定キャップ34のねじ溝341に、装置本体2のレセプタクル部81にあるねじ部810が螺合されることで、レセプタクル部81からのフェルール71の抜けが規制される。したがって、意図せずにフェルール71が抜けることを抑制しやすい。結果的に、フェルール71を含む毛切断部材3の全体が、装置本体2から脱落しにくくなる。
【0115】
(2.3.5)フェルール
フェルール71は、光導波路4の受光面40A側の端部を保持する形態で光放出モジュールM1と一体的に結合され、かつ光導波路4に導入される光に対するコア部41の位置を一意に決める接続部材である。フェルール71は、レセプタクル部81に対して機械的に接続可能である。フェルール71がレセプタクル部81に対して接続されることで、コア部41には、レセプタクル部81の側から光が導入される。
【0116】
フェルール71は、例えば、X軸に沿って長尺な円筒状の部材であり、X軸方向における両端面が開放されている。フェルール71は、例えば、ジルコニア等のセラミック焼結体によって形成されている。フェルール71は、X軸に沿って見て、円環状である。フェルール71の外径は、例えば、2.5mmであるが、この数値に限定されない。
【0117】
フェルール71は、光導波路4の受光面40A側の端部に装着される。フェルール71の内径は、光導波路4の外径よりも大きく、フェルール71は、接着部材G1を介して、光放出モジュールM1と一体的に結合される。
【0118】
接着部材G1は、光導波路4及びフェルール71を接着する。接着部材G1は、接着剤であるペースト状の樹脂が硬化した硬化物である。つまり、接着部材G1は、フェルール71の内周面と、光導波路4の外周面とを接合するための接着剤の硬化物である。クラッド部42は、その外周面の一部が、フェルール71の内周面と接触するように配置される。接着部材G1の屈折率は、コア部41の屈折率よりも小さい。そのため、コア部41から接着部材G1への必要以上の光の漏れを抑制しやすい。
【0119】
次に、フェルール71の結合先となる装置本体2のレセプタクル部81について
図3及び
図4を参照して説明する。レセプタクル部81は、例えば、樹脂製の部位であり、ここでは装置本体2のケース20と一体となって形成されている。ただし、レセプタクル部81は、金属製の部位でもよい。またレセプタクル部81は、ケース20と別体であって、ケース20に対して、接着、溶着、貼り付け又は締結部材(ねじ等)を用いた結合等の適宜の手段にて、固定されてもよい。
【0120】
レセプタクル部81は、全体として略円筒形状である。レセプタクル部81は、
図3に示すように、第1部位801と、第2部位802とから構成される。第1部位801は、ケース20のX軸の正の側の一端部と連続する部位である。第2部位802は、第1部位801よりもその外径が小さい部位であり、第1部位801のX軸の正の側の端部と連続する部位である。
【0121】
レセプタクル部81は、その軸方向に沿って円形状に貫通した貫通孔811を有している。貫通孔811は、ケース20における光源21及び光学系22等を収容している収容空間と連通している。ただし、レセプタクル部81における、貫通孔811の奥にある開口を塞ぐように、光学系22の第4レンズ224が配置される。言い換えると、フェルール71がレセプタクル部81に接続されていない状態では、光学系22の第4レンズ224の一面は、貫通孔811を介して、外部に露出する。
【0122】
貫通孔811は、
図3に示すように、円形状の小径孔812と、小径孔812の内径よりも大きい内径を有した円形状の大径孔813とを含む。小径孔812の内径は、フェルール71が小径孔812内にほぼ隙間なく収まる程度に、フェルール71の外径と略同一に設定されている。大径孔813の内径は、ホルダ部H1が大径孔813内に収まる程度に、ホルダ部H1の外径と略同一に設定されている。なお、小径孔812の内径は、小径孔812に隣接して配置されている第4レンズ224の外径よりも小さい。
【0123】
フェルール71がレセプタクル部81に接続された状態で、ホルダ部H1が小径孔812の開口の周縁部815(
図3参照)に接触する。結果的に、フェルール71が、更に奥へ進入してしまうことが抑制される。
【0124】
ここでは、ホルダ部H1が周縁部815(
図3参照)に接触した状態で、光導波路4の受光面40Aが、第4レンズ224の一面と僅かに隙間を空けて近接して対向した状態に配置される。特に、フェルール71によって位置が一意に決められたコア部41の光軸が、光源21及び光学系22の光軸CX1(
図2参照)と一致することになる。
【0125】
ここで、第2部位802の外周面にあるねじ部810(ねじ山)(
図3参照)が、固定キャップ34のねじ溝341に螺合可能である。
【0126】
また第2部位802は、その外周面におけるY軸の正を向く領域に、スリット状の溝部814を有している。溝部814は、第2部位802の上記領域を貫通している。溝部814は、大径孔813と連通している。溝部814は、X軸方向における第2部位802の両端部にわたって形成されている。溝部814は、ホルダ部H1の凸部H11が挿入可能となっている。ホルダ部H1が周縁部815(
図3参照)に接触した状態で、凸部H11は、溝部814のX軸方向における奥まで進入した位置となる。
【0127】
(2.3.6)ホルダ部
ホルダ部H1は、光放出モジュールM1の一部、及びフェルール71の一部が挿入されてこれらを互いに一体的に結合する部位である。
【0128】
ホルダ部H1は、例えば、X軸に沿って長尺な円筒状の部材であり、X軸方向における両端面が開放されている。ホルダ部H1は、例えば、金属製(又は合成樹脂製でもよい)の部位である。ホルダ部H1は、X軸に沿って見て円環状である。
【0129】
ホルダ部H1の内径は、光放出モジュールM1の外径よりも大きい。またホルダ部H1の内径は、フェルール71の外径よりも大きい。ホルダ部H1は、その外周面において、Y軸の正の向きに突出した凸部H11(
図4参照)を有している。凸部H11は、溝部814内をX軸の負の向きに挿入されることで、レセプタクル部81に対する、毛切断部材3の軸周りの方向における毛切断部材3の位置を一意に決める。ここでは一例として、凸部H11は、円柱状に形成されているが、その形状は、特に限定されない。
【0130】
また本実施形態では、光放出モジュールM1のX軸の負の側の一端部が、ホルダ部H1におけるX軸の正の側の開口から奥へ進入した状態で、固定部材F1を介して固定される。またフェルール71のX軸の正の側の一端部は、光導波路4の受光面40A側の端部がフェルール71に装着された状態で、かつ、ホルダ部H1におけるX軸の負の側の開口から奥に進入した状態で、固定部材F1を介して固定される。ここでは固定部材F1の屈折率は、コア部41の屈折率よりも小さい。そのため、コア部41から固定部材F1への必要以上の光の漏れを抑制しやすい。
【0131】
固定部材F1は、例えば、接着剤であるペースト状の樹脂が硬化した硬化物である。固定部材F1は、フェルール71内の接着部材G1と同じ種類の接着剤でもよいし、異なる種類の接着剤でもよい。固定部材F1は、光放出モジュールM1の一部と、フェルール71の一部とを接着する。固定部材F1は、光放出モジュールM1の中心軸とフェルール71の中心軸とをホルダ部H1の中心軸に一致させ、かつ、光導波路4の第2領域402が湾曲した状態で、固定する。なお、光導波路4の第2領域402の曲率はできるだけ小さいことが望ましく、それによって第2領域402における光の漏れを抑制できる。
【0132】
ところで、センサ部S1(S11,S12)及び検知部D1からそれぞれ導出されている複数の第1接続線101(
図2及び
図9参照)は、ホルダ部H1の内部を通るように配置される。複数の第1接続線101は、固定部材F1を介してホルダ部H1内で保持されながら、各第1接続線101の先端にある導体部101A(
図9参照:例えば接続ピン)が、ホルダ部H1のX軸の負の側の一端部から露出されている。
【0133】
一方、レセプタクル部81には、制御回路6と電気的に接続されている複数の第2接続線102(
図2及び
図9参照)が埋め込まれている。各第2接続線102の先端にある導体部102A(
図9参照:例えばピン受け部)が、レセプタクル部81のX軸の正の側の一端部(周縁部815)から露出されている。凸部H11が溝部814内をX軸の負の向きに奥まで挿入されることで、ホルダ部H1から露出する各第1接続線101の導体部101Aが、対応する第2接続線102の導体部102Aと接続される。要するに、毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、光導波路4が光学系22を介して光源21と光学的に結合されるだけでなく、センサ部S1及び検知部D1が、接続線(101,102)を介して制御回路6と電気的に接続されることになる。
【0134】
(2.3.7)センサ部
センサ部S1(
図1、
図5A、
図5B、及び
図9参照)は、皮膚92の接触状態を検知するための部位である。センサ部S1は、光導波路4の周囲の領域に配置される。毛切断装置1は、センサ部S1を2つ備えている。2つのセンサ部S1は、カバー30に固定されている。2つのセンサ部S1は、カバー30の幅方向W1(
図5B参照)における両側にそれぞれ配置される。幅方向W1は、Z軸に平行である。センサ部S1の数は、特に限定されない。センサ部S1の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0135】
2つのセンサ部S1は、
図1に示すように、Z軸の方向において、カバー30の開口部31を間に挟み込むように配置されている。以下、開口部31よりもZ軸の正の側のセンサ部S1を「第1センサ部S11」と呼び、開口部31よりもZ軸の負の側のセンサ部S1を「第2センサ部S12」と呼ぶことがある。
【0136】
各センサ部S1は、例えば、静電容量式のタッチセンサ(タッチスイッチ)を構成する。各センサ部S1は、感度を高めることで物体の近接を検出する静電容量式の近接センサでもよく、この場合、センサ部S1は、皮膚92の近接状態を検知するための部位となり得る。また各センサ部S1は、静電容量式のセンサに限定されず、光学式のセンサ、誘導式のセンサ、又は磁気式のセンサ等でもよい。
【0137】
各センサ部S1は、単一の電極S2(導電体部)を有し、電極S2と接触体(皮膚92)との間における静電容量の変化を検知する、自己容量式のセンサである。また各センサ部S1は、例えば保護カバーS3を更に有している。各保護カバーS3は、対応する電極S2の表面を覆うように配置される。各保護カバーS3は、例えば電気絶縁性を有する樹脂材料により形成される。センサ部S1の検知方式によっては、保護カバーS3は省略されてもよい。
【0138】
各センサ部S1は、例えば、インサート成形等によってカバー30に埋め込むように固定されている。各センサ部S1は、概ねその表面(接触面S10)が、カバー30の表面(Y軸の負の側の一面)から露出する。接触面S10は、保護カバーS3の表面(Y軸の負の側の一面)に相当する。接触面S10は、カバー30の表面と概ね面一である。ここでは一例として、接触面S10とカバー30の表面(Y軸の負の側の一面)とによって、カバー側接触面301が構成されるものとする。
【0139】
各電極S2は、複数の第1接続線101のうちのセンサ部S1用の線と電気的に接続されている。毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、各電極S2は、接続線(101,102)を介して制御回路6と電気的に接続されることになる。
【0140】
皮膚92が、各センサ部S1の接触面S10に接触することで、電極S2と人体とによって構成される(擬似的な)コンデンサの静電容量の変化を含む電気信号が、接続線(101,102)を介して制御回路6に出力される。制御回路6は、各センサ部S1から受信する電気信号(検知信号)に応じて、接触面S10に皮膚92が接触したこと、又は接触面S10から皮膚92が離れたことを判断する。
【0141】
(2.3.8)検知部及び検知領域
検知領域D2は、
図5Bに示すように、光導波路4内を伝達する光に起因した対象光OB1が通る領域である。検知領域D2は、カバー30の内部の、X軸の正の側の隅に配置された空間領域である。対象光OB1は、光導波路4内を伝達して検知領域D2に向かう光のうちの一部の光である。
【0142】
ここで本実施形態の毛切断装置1は、
図5Bに示すように、拡散部Y1を更に備えている。拡散部Y1は、検知領域D2内に配置され、光導波路4内を伝達して検知領域D2に進入した光を拡散反射させる。そして、ここでは対象光OB1は、拡散部Y1で拡散された拡散光を含む。言い換えると、光導波路4内を伝達する光が一次光とすれば、対象光OB1は二次光である。拡散部Y1は、カバー30に対して適宜の固定手段で固定されている。
【0143】
拡散部Y1は、光(入射光)を様々な方向へ乱反射させる反射面Y10(
図5B参照)を有した部材から構成される。拡散部Y1は、
図5Bの例では、その厚み方向がX軸に平行となるように配置された板状の部材から構成されるが、拡散部Y1の形状は特に限定されない。反射面Y10は、拡散部Y1の母材の表面に例えば微細な凹凸構造を設けることで形成され得る。反射面Y10の形成方法は特に限定されない。
【0144】
光放出モジュールM1におけるX軸の正の側の先端部、具体的には、光導波路4の先端部の終端面40Bは、
図5Bに示すように、検知領域D2内の拡散部Y1の反射面Y10と対向するように配置される。つまり、光導波路4内を伝達方向A2に沿って伝達する光のうち、毛91を切断するために光放出部40から漏れ出た光以外の光が、終端面40Bから導出される。したがって、光導波路4内を伝達して終端面40Bから導出された直接的な光が反射面Y10に入射する。光導波路4の光軸C1は、反射面Y10と直交する。
【0145】
検知領域D2は、収容空間SP1と連通している。検知領域D2と収容空間SP1との間には仕切り壁があってもよい。仕切り壁が設けられている場合、仕切り壁には、光導波路4を通す孔部が設けられていることが好ましい。
【0146】
検知部D1は、
図5Bに示すように、検知領域D2内の対象光OB1(ここでは拡散部Y1による拡散光)を検知する。検知部D1は、検知領域D2に配置される。
【0147】
検知部D1は、半導体素子として、例えばフォトダイオード等の受光素子を有している。検知部D1は、複数のフォトダイオードから構成されるフォトダイオードアレイを有してもよい。
【0148】
検知部D1は、対象光OB1を受光可能な位置に配置される。検知部D1は、例えば集光レンズからなる受光面D10を有している。受光面D10は、拡散部Y1の反射面Y10の側を向くように配置されている。
【0149】
検知部D1は、反射面Y10よりもX軸の負の側に配置される。具体的には、検知部D1は、X軸の方向において、反射面Y10と終端面40Bとの間に配置される。ここでは一例として、検知部D1は、光導波路4よりもZ軸の負の側に配置される。ただし、検知部D1は、対象光OB1を受光出来て、かつ、終端面40Bから導出されて反射面Y10に入射する光を遮らないように配置されていれば、その配置場所は、特に限定されない。また図示例では、検知部D1は、模式的に矩形状に形成されているが、形状も特に限定されない。
【0150】
また
図5Bでは図示を省略しているが、検知部D1は、実装基板に実装されて、その実装基板が、カバー30に対して適宜の固定手段によって固定されていることが望ましい。
【0151】
検知部D1の受光素子は、複数の第1接続線101のうちの検知部D1用の線と電気的に接続されている。毛切断部材3が装置本体2に取り付けられることで、検知部D1の受光素子は、接続線(101,102)を介して制御回路6と電気的に接続されることになる。検知部D1は、受光面D10から入射した光強度に応じた電気信号(検知信号)を、接続線(101,102)を介して制御回路6に出力する。
【0152】
ユーザが毛切断装置1を使用中において、光源21から出力された光は、検知領域D2にて対象光OB1となって、その光強度が検知部D1で検知される。本実施形態の毛切断装置1は、検知部D1による光強度の検知結果を、毛切断装置1の異常状態、及び劣化状態(それらの予兆も含む)について判定(推定)するための判定材料の1つとし、光源21の光出力に関する制御を行う。
【0153】
(2.4)使用例
次に、本実施形態に係る毛切断装置1の使用例について、
図7A~
図8Bを参照して説明する。
【0154】
すなわち、本実施形態では、上述した構成の毛切断装置1は、毛91(ここでは「ひげ」)の切断(ここでは「そる」)に用いられる。その際、ユーザは、毛切断装置1の装置本体2(グリップ)を片手で握って毛切断装置1を把持した状態で、毛切断部材3(ヘッド)、つまりカバー30のY軸の負の向きを向いた面をユーザの皮膚92に接触させる。これにより、
図7Aに示すように、切断対象である毛91は、保持部材5で保持された光放出部40と対向する位置に、開口部31からカバー30内に導入される。
【0155】
図7Aに示すように、光放出部40が毛91に接触していない状態では、光放出部40には空気が接することになるため、光放出部40と空気との屈折率の差によって、光放出部40からの光の漏れはほとんど生じない。この状態で、ユーザは、毛切断装置1としての毛切断部材3を、皮膚92の表面921に沿って
図7Aにおける矢印A1の向きに移動させる。
【0156】
毛切断部材3の移動に伴って、
図7Bに示すように、光放出部40は、毛切断部材3の進行方向の前方(つまりZ軸の正の向き)に位置する毛91に接触する。このとき、光放出部40と毛91との屈折率の差によって、光放出部40からの光が毛91に漏れ出すようにして毛91に放出する。すなわち、光放出部40の屈折率は、切断対象である毛91の屈折率よりも小さいので、光放出部40に毛91が接触した状態では、光放出部40から毛91に光が漏れ出すことになり、光放出部40から毛91に光が放出される。
【0157】
さらに、
図7Bに示す状態において、光放出部40から毛91に放出される光の一部が散乱することで、光放出部40からの光は、毛91の周辺の皮膚92にも放出することになる。具体的には、光放出部40における毛91との接触部位から漏れ出た光の一部は、毛91にて散乱して皮膚92に放出する。ここで、
図7Bに示すように、主として毛91に放出する光を第1放出光Op1、主として皮膚92に放出する光を第2放出光Op2とする。すなわち、光放出部40に毛91が接触した状態においては、光放出部40からは、第1放出光Op1が毛91に放出されるとともに、第2放出光Op2が皮膚92に放出する。
【0158】
特に、光放出部40から毛91に第1放出光Op1が放出すると、光放出部40から毛91に放出する光(第1放出光Op1)のエネルギにて、毛91が切断される。要するに、本実施形態では、光源21から出力されて光導波路4を通る光の波長(例えば400nm以上700nm以下)は、毛91の中の発色団(分子にその色を提供する分子の一部)によって吸収される光の波長を含む。したがって、第1放出光Op1は、毛91の発色団によって吸収されることで熱に変換され、この熱をもって、毛91の分子の結合を破壊、又は毛91を溶融若しくは燃焼させる。光放出部40から毛91に放出する光(第1放出光Op1)の標的となり得る発色団は、例えば、ケラチン及び水等の発色団を含む。
【0159】
上述のように、ユーザが、毛切断装置1としての毛切断部材3を、皮膚92に沿って矢印A1(
図7A参照)の向きに移動させることで、皮膚92から突出した毛91を切断することができる。したがって、光導波路4が通過した後は、
図7Cに示すように、皮膚92には、切り残しとなる毛91の根元部分のみが残ることになる。
【0160】
ただし、毛切断装置1では、
図7Bに示すように、光放出部40が毛91に接触しなくても、例えば、光放出部40と空気との界面からの空気側への光(エバネッセント波)の染み出し等により、光が毛91に放出することもある。そのため、光放出部40が毛91に接触した場合のみならず、光放出部40と毛91とが接触寸前まで接近した場合等にも、毛切断装置1において、光放出部40から毛91に第1放出光Op1が放出して毛91を切断できることがある。
【0161】
ところで、皮膚92の状態によっては、
図8A及び
図8Bに示すように、毛切断装置1を使用して毛91(ここでは「ひげ」)の切断(ここでは「そる」)を行う際に、光放出部40が皮膚92の一部に接触する場合もある。
図8A及び
図8Bは、皮膚92における毛91の周辺(毛根周辺)に、一例としてニキビ等の隆起部922が存在する場合の、毛切断装置1の使用例を示す。隆起部922は、皮膚92のうち、隆起部922の周辺の皮膚92の表面921に比較して盛り上がった(隆起した)部位である。
【0162】
すなわち、
図8Aに示すように、光放出部40が毛91に接触していない状態では、光放出部40には空気が接することになるため、光放出部40と空気との屈折率の差によって、光放出部40からの光の漏れはほとんど生じない。この状態で、ユーザは、毛切断部材3を、皮膚92の表面921に沿って
図8Aにおける矢印A1の向きに移動させる。
【0163】
毛切断部材3の移動に伴って、
図8Bに示すように、光放出部40は、毛切断部材3の進行方向の前方(つまりZ軸の正の向き)に位置する毛91に接触する。このとき、光放出部40と毛91との屈折率の差によって、光放出部40からの光(第1放出光Op1)が毛91に漏れ出すようにして毛91に放出する。光放出部40から毛91に第1放出光Op1が放出すると、光放出部40から毛91に放出する光(第1放出光Op1)のエネルギにて、毛91が切断される。
【0164】
さらに、
図8Bに示す状態において、光放出部40は、皮膚92における毛91の周辺の隆起部922にも接触する。このとき、光放出部40と皮膚92の表面921(隆起部922)との屈折率の差によって、光放出部40からの光が皮膚92に漏れ出すようにして皮膚92に放出する。すなわち、光放出部40の屈折率は、皮膚92の表面921の屈折率よりも小さいので、光放出部40に皮膚92が接触した状態では、光放出部40から皮膚92に光が漏れ出すことになり、光放出部40から皮膚92に光(第2放出光Op2)が放出される。このとき、光放出部40から皮膚92には第2放出光Op2が直接的に放出され、第2放出光Op2は、主として隆起部922に放出される。特に本実施形態では、光導波路4のうち、隆起部922に直接接触する部位は、クラッド部42となる可能性が高く、第2放出光Op2のエネルギは、第1放出光Op1に比べて低い。
【0165】
(2.5)毛切断部材の交換
ところで、本実施形態では、フェルール71がレセプタクル部81から取り外し可能であることから、毛切断部材3の取り替え(交換)が容易である。以下、毛切断部材3の交換作業について説明する。
【0166】
毛切断部材3は、経年劣化によって、交換時期が到来する可能性がある。具体的には、光導波路4の光放出部40が、皮膚92及び毛91等と繰り返し接触することによってダメージを受け、光の放出量が低減し、毛91を切断しきれない状況になる可能性がある。
【0167】
まずユーザは、装置本体2に装着中にある古くなった毛切断部材3を装置本体2から取り外す作業を行う。具体的には、ユーザは、毛切断部材3の固定キャップ34を緩める方向に指で回転させる。その結果、レセプタクル部81のねじ部810に締結されていたねじ溝341が緩まりながら、固定キャップ34は、X軸の正の方向に移動し、最終的にレセプタクル部81から抜け出す。この状態で、ユーザは、カバー30の外側を手で把持しながらX軸の正の方向へ引っ張ることで、フェルール71、及びホルダ部H1を介してフェルール71と一体的に結合されている光放出モジュールM1を、X軸の正の方向へ引き抜くことができる。その際に、溝部814内に嵌っていた凸部H11も、溝部814に沿ってX軸の正の方向へ移動し、最終的に溝部814から抜け出る(
図3参照)。
【0168】
続いて、ユーザは、例えば新品の毛切断部材3を装置本体2に取り付ける作業を行う。具体的には、ユーザは、そのカバー30の外側を手で把持しながら、先端側にあるフェルール71がレセプタクル部81内に挿入されるように、X軸の負の方向へ押し込む。その際に、ユーザは、ホルダ部H1の凸部H11を目印にしながら、毛切断部材3の周方向の向きを調整する。つまり、ユーザは、凸部H11が、X軸方向において溝部814と対向するように、毛切断部材3の周方向の向きを調整する。そして、凸部H11が溝部814に向かって挿入されるように、そのカバー30をX軸の負の方向へ押し込む。
【0169】
結果として、フェルール71は、レセプタクル部81内の小径孔812に嵌り込み、ホルダ部H1は、レセプタクル部81内の大径孔813に嵌り込む。この時点で、装置本体2に対する毛切断部材3の周方向に沿った回転が規制されることになる。そして、受光面40Aは、光学系22(第4レンズ224)と近接して対向し、更にコア部41の光軸C1が、光学系22の光軸CX1と、(ユーザが意識しなくても自動的に)合致することになる。要するに、光放出モジュールM1に関する位置決めが容易となっていて、組立性が改善される。
【0170】
最後にユーザは、固定キャップ34をレセプタクル部81に取り付けることで、毛切断部材3が装置本体2から抜けにくくなる。なお、毛切断部材3のうち、固定キャップ34は、使いまわしでもよいし、新しいものと交換されてもよい。
【0171】
このように毛切断部材3は、装置本体2のレセプタクル部81から取り外し可能に装着されるため、結果的に、組立性が改善されていて、また光学調整が容易である。
【0172】
上記の例では、ユーザの交換作業を想定して説明したが、この組立性の改善は、ユーザの交換作業のみに作用するものではなく、例えば、毛切断装置1の製造時における作業者の組立作業にも作用し得る。
【0173】
ところで、毛切断装置1の制御回路6は、検知部D1の検知結果に基づき、毛切断装置1が特定状態にあると判定する場合がある。ここでいう「特定状態」とは、例えば、異常、汚れ、又は経年劣化等が発生している状態であり、それらの予兆も含み得る。毛切断装置1は、通知部27から、特定状態にある旨をユーザに通知する。ユーザは、通知部27を通じて、例えば毛切断部材3の光導波路4が経年劣化を起こしていることを知れば、毛切断部材3を交換する。
【0174】
(2.6)制御回路
次に、制御回路6の構成について、
図9~
図11を参照して説明する。
【0175】
制御回路6は、
図9に示すように、光源21、電池23、ファン24、操作部26及び通知部27等に電気的に接続されている。また制御回路6は、毛切断部材3が装置本体2に取り付けられた状態において、複数の接続線(101,102)を介して、検知部D1、第1センサ部S11、及び第2センサ部S12の各々と電気的に接続される。
【0176】
制御回路6は、入力部61と、モード切替部62と、出力調整部63と、駆動部64と、判定部65と、を有している。
【0177】
制御回路6は、例えば、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含んでいる。マイクロコントローラは、1以上のメモリに記録されているプログラムを1以上のプロセッサで実行することにより、制御回路6としての機能を実現する。プログラムは、予めメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような非一時的記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。言い換えれば、上記プログラムは、1以上のプロセッサを、制御回路6として機能させるためのプログラムである。
【0178】
入力部61には、ユーザの操作に応じた電気信号が、操作部26から入力される。例えば、操作部26が、主電源のオン/オフの切り替え、又は、動作モードの切り替え等の操作を受け付けた場合に、その操作に応じた電気信号が入力部61に入力される。
【0179】
モード切替部62は、光源21の動作モードの切り替えを行う。本実施形態では、光源21の動作モードとしては、後述する第1モード及び第2モードの2種類のモードを有している。モード切替部62は、例えば、入力部61からの電気信号に従って、これら第1モードと第2モードとの切り替えを行う。
【0180】
駆動部64は、光源21に電力を供給することで光源21を駆動する。つまり、駆動部64は、半導体レーザからなる光源21に駆動電流I1を供給することで、光源21を発光(点灯)させる。ここで、駆動部64は、光源21を駆動する際には、
図9に示すように、発光期間T1と消灯期間T2とを交互に繰り返す矩形波状の駆動電流I1を光源21に供給することで、光源21を発光させる。つまり、駆動部64は、パルス電流からなる駆動電流I1を光源21に供給し、これを受けて、光源21は間欠的に光を発生(点滅)する。
【0181】
すなわち、駆動電流I1の発光期間T1に光源21は発光し、駆動電流I1の消灯期間T2に光源21は消灯するので、光源21は駆動電流I1の周波数に合わせて間欠的に光を発生(点滅)する。要するに、光源21は、発光期間T1及び消灯期間T2を繰り返すことにより間欠的に光を発生する。本実施形態では一例として、駆動電流I1のデューティ(1周期に占める発光期間T1の割合)は50%であると仮定する。つまり、発光期間T1の時間長さと消灯期間T2の時間長さとは等しい。
【0182】
ところで、本実施形態では、光源21の動作モードとしては、第1モード及び第2モードの2種類のモードを有している。
【0183】
第1モードは、皮膚92への作用を優先するモードであって、発光期間T1の時間長さが1万分の1秒以下となるモードである。つまり、光源21の動作モードが第1モードであれば、光源21の発光期間T1の時間長さは、1万分の1秒以下である。言い換えれば、第1モードにおいては、駆動部64は、周波数が5kHz以上の駆動電流I1にて光源21を駆動する。これにより、光源21が連続的に光を発生する最大時間は、10000分の1秒(1/10000s)以下となる。本実施形態では一例として、光源21の動作モードが第1モードである場合における、光源21の発光期間T1の時間長さは15000分の1秒である。
【0184】
第2モードは、毛91の切断を優先するモードであって、発光期間T1の時間長さが百分の1秒以上となるモードである。つまり、光源21の動作モードが第2モードであれば、光源21の発光期間T1の時間長さは、百分の1秒以上である。言い換えれば、第2モードにおいては、駆動部64は、周波数が50Hz以下の駆動電流I1にて光源21を駆動する。これにより、光源21が連続的に光を発生する最小時間は、100分の1秒(1/100s)以上となる。本実施形態では一例として、光源21の動作モードが第2モードである場合における、光源21の発光期間T1の時間長さは80分の1秒である。
【0185】
ここで、制御回路6は、これら第1モードと第2モードとの切り替えを行うモード切替部62を有している。すなわち、本実施形態では、光源21の動作モードは、発光期間T1の時間長さが1万分の1秒以下である第1モードと、発光期間T1の時間長さが百分の1秒以上である第2モードと、の切り替えが可能である。
【0186】
出力調整部63は、駆動部64を制御することで光源21の出力を調整する。出力調整部63での調整対象となる光源21の出力は、光源21が発生する光強度(明るさ)及び光の波長等を含む。出力調整部63は、例えば、入力部61からの電気信号に従って、光源21の出力の調整を行う。
【0187】
特に、本実施形態では、上述したように、光導波路4を通る光のパワー密度は、光源21からの出力にて調整されている。そのため、出力調整部63は、光源21の出力の大きさ(パワー密度)を調整することによって、光導波路4を通る光のパワー密度を調整する。具体的には、出力調整部63は、駆動部64から光源21に供給される駆動電流I1の大きさを変化させることで、光源21から光導波路4に出力される光のパワー密度を調整する。
【0188】
さらに、上述したように、光導波路4を通る光のパワー密度が可変である場合、パワー密度の変化は、出力調整部63にて実現される。すなわち、出力調整部63は、光源21の出力の大きさ(パワー密度)を変化させることで、光導波路4を通る光のパワー密度を変化させる。出力調整部63は、例えば、入力部61からの電気信号に従って、これら光源21の出力の大きさ(パワー密度)を変化させる。
【0189】
なお、出力調整部63は、後述する判定部65からの制御を受けて、光源21の出力を調整することもある。
【0190】
次に、制御回路6における皮膚92の接触状態に関する判定処理について説明する。
【0191】
制御回路6の判定部65は、接触面(モジュール側接触面501及びカバー側接触面301)に対する皮膚92の接触状態を判定する(判定処理の実行)。具体的には、判定部65は、皮膚92が非接触状態から接触状態に切り替わったこと、及び、皮膚92が接触状態から非接触状態に切り替わったことを判定(推定)する。
【0192】
本実施形態では、判定部65は、センサ部S1(第1センサ部S11、第2センサ部S12)から受信する電気信号に基づいて、接触状態を判定する。そして、判定部65は、判定結果に基づいて、駆動部64(又は出力調整部63)を制御して、光源21の駆動を開始して光出力を実行させたり、光源21の駆動を停止(光出力の低下でもよい)したりする。
【0193】
判定部65は、例えば、操作部26を通じて主電源をオフからオンに切り替える操作を受け付けると、接触判定処理の実行を開始する。言い換えると、本実施形態では一例として、操作部26を通じて主電源がオンになると、制御回路6は、光源21の駆動を開始可能なスタンバイ状態となる。したがって、駆動部64は、主電源がオンに切り替わっても直ちに光源21の駆動を開始しない。
【0194】
判定部65は、センサ部S1からの検知信号に基づき、皮膚92が非接触状態から接触状態に切り替わったと判定すると、光放出モジュールM1からの光出力を実行する。つまり、判定部65は、駆動部64に光源21の駆動を開始させる。例えば人体のようにグランド電位の物体が、センサ部S1に接触(タッチ)することで、電極S2と人体とによって擬似的なコンデンサが形成される。その結果、人の皮膚92の接触が、各センサ部S1(コンデンサ)の静電容量の変化として現れる。判定部65は、受信する検知信号を通じて、例えば静電容量の変化に対応する電圧の変化を監視する。
【0195】
判定部65は、第1センサ部S11の電圧レベルと第2センサ部S12の電圧レベルの両方(いずれか一方でもよい)が閾値を超えた場合に、皮膚92が非接触状態から接触状態に切り替わったと判定する。
【0196】
また判定部65は、センサ部S1からの検知信号に基づき、皮膚92が接触状態から非接触状態に切り替わったと判定すると、光放出モジュールM1からの光出力を制限する。つまり、判定部65は、駆動部64に光源21の駆動を停止させる(光出力を低下させてもよい)。判定部65は、第1センサ部S11の電圧レベルと第2センサ部S12の電圧レベルの両方(いずれか一方でもよい)が閾値未満となった場合に、皮膚92が非接触状態から接触状態に切り替わったと判定する。
【0197】
図10Aは、一例として、時刻t1で皮膚92が接触状態から非接触状態に切り替わり、時刻t2で皮膚92が非接触状態から再び接触状態に切り替わった場合における、光出力の変化(オン/オフ)を示すグラフである。つまり、
図10Aの例では、判定部65は、時刻t1に、皮膚92が離れたと判定して、駆動中にあった光源21を停止させている。また
図10Aの例では、判定部65は、時刻t2に、皮膚92が接触したと判定して、光源21の駆動を開始させている。
【0198】
ここで本実施形態の毛切断装置1は、検知部D1を用いて、検知領域D2内の対象光OB1を検知する(検知ステップ)。具体的には、判定部65は、検知部D1から受信する検知信号に基づき、毛切断装置1の光出力に関する診断処理を行う。すなわち、判定部65は、検知部D1による対象光OB1に関する検知結果に基づき、毛切断装置1の光出力に関する状態が特定状態にあるか否かを判定する。
【0199】
上述の通り、毛切断装置1が、特定状態(ここでは光源21、光学系22、及び光導波路4等のいずれかに異常、経年劣化、又は汚れが発生した状態)になると、正常状態の場合に比べて、検知部D1が受光する光強度は低下することになる。フォトダイオードには光強度に比例した電流が流れるため、判定部65は、検知部D1から、フォトダイオードに流れる電流が電圧に変換された検知信号を受信する。つまり、判定部65は、受信する検知信号を通じて、例えば電圧の変化を監視する。言い換えると、判定部65は、光強度に関する情報を検知部D1から取得する。電流電圧変換は、制御回路6で行われてもよい。
【0200】
判定部65は、検知部D1が受光する光強度が所定値未満となった場合に、つまり検知部D1から受信する検知信号の信号レベル(例えば電圧)が基準値Rf1(
図10B参照)未満となった場合に、特定状態にあると判定する。
図10Bでは、電圧値V2は、正常状態における電圧値である。また電圧値V1は、特定状態における電圧値である。基準値Rf1は、例えば、電圧値V1と電圧値V2との間に設定されている。
図10Bの例では、時刻t3に正常状態から異常状態(特定状態)となった場合の、検知部D1から受信する検知信号の信号レベル(電圧)の変化を模式的に示している。つまり、
図10Bは、光源21や光源21を駆動する駆動部64の故障、又は光導波路4の破損等の「異常」が発生して、急激に電圧が低下した一例を示す。
【0201】
ところで、時間経過に伴う検知信号の信号レベル(電圧)の変化の態様は、特定状態の種類によって異なり得る。例えば、特定状態の種類が、故障又は破損等の「異常」であれば、その「変化の態様」は、
図10Bのように急激な低下を示す可能性が高い。一方で、特定状態の種類が、光導波路4等の「汚れ」であれば、その「変化の態様」は「異常」に比べると緩やかではあるが、例えば数週間又は数か月の期間にわたって一定の低下を示す可能性が高い。さらに特定状態の種類が、経年劣化であれば、使用開始から(想定される)光導波路4等の寿命までにわたって、「汚れ」よりも更に緩やかな低下を示す可能性が高い。つまり、時間経過に対する低下率は、「経年劣化」、「汚れ」、及び「異常」の順で大きくなっていく可能性がある。
【0202】
そこで本実施形態の判定部65は、更に、対象光OB1の光強度に関する変化の態様に基づき、特定状態の種類を特定するように構成される。また制御回路6は、判定部65において、少なくとも特定状態の種類が所定の種類であることが特定された場合、光放出モジュールM1からの光出力を制限する制限部66(
図9参照)を更に備えている。ここでは一例として、「特定の種類」とは、上述した「異常」であるとする。
【0203】
制御回路6は、累積使用時間(光源21の累積駆動時間)をメモリに記憶する。また制御回路6は、その使用累積時間において検知部D1から受信した検知信号の信号レベル(電圧)をメモリに記憶する。要するに、制御回路6は、使用時間及び信号レベルに関する実績データをメモリに記憶する。
【0204】
さらに制御回路6は、例えば「異常」に対応する基準値Rf1に加えて、基準値Rf1より高い基準値Rf2(
図10B参照)をメモリに記憶する。判定部65は、現在の信号レベル(電圧)が、どの範囲に位置するかに基づいて、特定状態の種類を特定する。
【0205】
一例としては、判定部65は、現在の電圧が、0(ゼロ)以上、基準値Rf1未満であれば「異常」と判定する。また判定部65は、現在の電圧及び実績データが、所定の期間継続して、基準値Rf1以上、基準値Rf2未満であれば、「汚れ」と判定する。さらに判定部65は、実績データに基づき、現在の電圧及び実績データが、長期間にわたって、基準値Rf2に向かって緩やかに低下していれば、「経年劣化」と判定する。このような特定状態の種類の特定方法は、単なる一例であり、特に限定されない。制御回路6は、メモリに、特定状態の複数の種類の「変化の態様」にそれぞれ対応する変化パターンを予め記憶して、実績データと類似するメモリ内の変化パターンを見つけ出して、特定状態の種類を特定してもよい。
【0206】
判定部65は、毛切断装置1が特定状態にあると判定すると、制御回路6は、例えば特定状態の種類を問わずに、通知部27よりユーザに通知する。ただし、制御回路6は、特定された特定状態の種類がユーザに区別できるように、発光色又は点灯状態を変化させることが好ましい。一例として、通知部27は、「異常」であれば赤色で連続点灯し、「汚れ」であれば橙色で点滅点灯し、「経年劣化」であれば、橙色で間欠点灯する。なお、通知部27は、正常時には、緑色で連続点灯する。通知部27は、表示灯により特定状態に関する通知を行うことに限定されない。通知部27は、表示灯の代わりに又は加えて、例えば、スピーカを備えていれば、音声出力により通知されてもよいし、液晶ディスプレイを備えていれば、画像表示により通知されてもよい。
【0207】
ただし、本実施形態の判定部65は、毛切断装置1が「異常」(所定の種類)状態にあると判定すると、上述した通知部27からのユーザ通知だけでなく、制限部66が、光出力を制限する。制限部66は、例えば光源21が駆動中に突然「異常」が発生した場合には、自動的に光源21の駆動を停止させる。つまり、制限部66は、駆動部64に対して、光源21への電力供給を自動的に停止させる。
【0208】
また一度「異常」が発生した場合には、「異常」が解消されない限り、制限部66は、光源21の駆動を開始させない。つまり、「異常」が発生した場合には、毛切断装置1は、ユーザにこれ以上毛切断装置1の使用を許可させないようにする。
【0209】
「光出力の制限」は、光源21の駆動の停止に限定されず、制限部66は、「異常」が発生した場合には、例えば出力調整部63に光源21の出力の大きさ(パワー密度)を下げさせてもよい。また「光出力の制限」は、「異常」だけでなく、「汚れ」又は「経年劣化」にも適用されてもよい。
【0210】
[動作例1]
次に、上述した制御回路6を備えた毛切断装置1の動作例1について、
図11を参照して説明する。
図11は、毛切断装置1の動作モード(第1モード及び第2モード)の切り替えに関する動作例を示すフローチャートである。
【0211】
毛切断装置1は、まず、光源21の動作モードが第1モードであるか否かの判定を行う(ST1)。このとき、動作モードが第1モードであれば(ST1:Yes)、毛切断装置1は、発光期間T1の時間長さを1万分の1秒以下に設定して、駆動部64にて光源21を駆動する(ST2)。一方、動作モードが第1モードでなければ(ST1:No)、毛切断装置1は、処理ST2をスキップして処理ST3に移行する。
【0212】
処理ST3では、毛切断装置1は、光源21の動作モードが第2モードであるか否かの判定を行う。このとき、動作モードが第2モードであれば(ST3:Yes)、毛切断装置1は、発光期間T1の時間長さを100分の1秒以上に設定して、駆動部64にて光源21を駆動する(ST4)。一方、動作モードが第2モードでなければ(ST3:No)、毛切断装置1は、処理ST4をスキップして処理を終了する。
【0213】
毛切断装置1は、上記処理ST1~ST4を繰り返し実行する。
図11に示すフローチャートは、毛切断装置1の動作の一例に過ぎず、例えば、処理の順序が適宜入れ替わってもよいし、適宜、処理が追加又は省略されてもよい。
【0214】
[動作例2]
次に、上述した制御回路6を備えた毛切断装置1の動作例2について、
図12を参照して説明する。
図12は、毛切断装置1の診断処理に関する動作例を示すフローチャートである。ここでは一例として、ユーザが毛切断装置1の使用中に「異常」が発生した場合について説明する。
【0215】
毛切断装置1は、まず、操作部26を通じて主電源をオンにする操作を受け付ける(ST11)。毛切断装置1は、スタンバイ状態となり、判定処理を実行して、センサ部S1からの検知信号を監視する(ST12)。
【0216】
毛切断装置1は、センサ部S1からの検知信号に基づき、皮膚92が接触状態となったと判定すると(ST13:Yes)、光源21の駆動を開始する(ST14:光放出ステップ)。なお、毛切断装置1は、皮膚92が接触状態となるまで(ST13:No)、光源21の駆動を開始することなくスタンバイ状態を継続する。
【0217】
毛切断装置1は、光源21の駆動が開始されると、診断処理を実行して、検知部D1からの検知信号を監視する(ST15:検知ステップ)。毛切断装置1は、センサ部S1からの検知信号に基づき、皮膚92が非接触状態となると(ST16:Yes)、光源21の駆動を停止して(ST17)、診断処理を終える。
【0218】
毛切断装置1は、皮膚92が接触状態にある場合に(ST16:No)、検知部D1からの検知信号に基づき、「異常」が発生したと判定すると(ST18:Yes)、光源21の駆動を緊急停止する(ST19)。さらに毛切断装置1は、通知部27を通じて「異常」の発生に関するユーザ通知を実行し(ST20)、診断処理を終える。以降、毛切断装置1は、「異常」が解消されるまで、光源21の駆動開始を禁止する。なお、「異常」が発生していなければ(ST18:No)、皮膚92が非接触状態となるまで、診断処理を継続する。
【0219】
図12に示すフローチャートは、毛切断装置1の動作の一例に過ぎず、例えば、処理の順序が適宜入れ替わってもよいし、適宜、処理が追加又は省略されてもよい。特にセンサ部S1を利用した接触状態の判定処理は、本開示の毛切断装置1にとって必須ではなく、省略されてもよい。
【0220】
(3)作用
次に、本実施形態に係る毛切断装置1にて期待し得る作用について説明する。
【0221】
まず、毛切断装置1の基本的な機能である毛91の切断については、「(2.4)使用例」の欄で説明したようなメカニズムにより実現される。
【0222】
本実施形態では、光放出部40の第1放出光Op1は、400nm以上700nm以下の波長を持つので、例えば、ケラチン及び水等の毛91に含まれる発色団に吸収されやすい。また少なくとも毛91の切断時において、光導波路4を通る光のパワー密度は50kW/cm2以上である。そのため、光放出部40から毛91に放出する第1放出光Op1においても、毛91を切断するのに十分なパワー密度(50kW/cm2以上)を持ち得る。
【0223】
次に毛切断装置1の副次的な機能である皮膚92への作用について説明する。本実施形態では、光放出部40の第2放出光Op2は、400nm以上700nm以下の波長を持つので、殺菌又は活性化等の皮膚92への作用も期待できるようになる。つまり、皮膚92に放出する第2放出光Op2が、例えば、400nm以上450nm以下の波長を持つ場合、皮膚92に存在するアクネ菌等に対する殺菌作用が期待できる。特に、
図8A及び
図8Bに例示したように、皮膚92における毛91の周辺に、ニキビ等の隆起部922が存在する場合には、隆起部922に第2放出光Op2が直接的に放出し、より効果的な殺菌作用等を期待できる。さらに、第2放出光Op2が、例えば、450nm以上700nm以下の波長を持つ場合、皮膚92の活性化作用が期待できる。つまり、第2放出光Op2が皮膚92に放出されることによって、皮膚92が活性化され、肌質の改善等のいわゆる「美肌効果」といった作用が期待できる。
【0224】
また本実施形態では、「(2.3.8)検知部及び検知領域」の欄で説明したように検知部D1及び検知領域D2が設けられているため、例えば検知部D1の検知結果を利用することができる。例えば、「(2.6)制御回路」の欄で説明したように、異常、経年劣化、又は汚れ等の発生を判定して、光源21の自動停止、及びユーザ通知等を行える。結果的に、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置1を提供できる、という利点がある。
【0225】
また検知領域D2は、カバー30内における、光導波路4内を伝達する光の伝達方向A2の伝達先となる一端側の空間に配置されるため、検知領域D2が、毛91を切断する光の放出に影響を与えてしまう可能性を低減できる。
【0226】
また対象光OB1は、光導波路4内を伝達して検知領域D2に向かう光のうちの一部の光であるため、例えば、検知領域D2に向かう光を直接検知する場合に比べて、対象光OB1の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。つまり、検知部D1にとっては、光導波路4の終端面40Bから導出される光強度は強すぎる可能性があり、制御回路6は、汚れや経年劣化等の特定状態の種類によっては、特定状態に伴う光強度の変化を見逃す可能性がある。この点で、対象光OB1が、光導波路4内を伝達して検知領域D2に向かう光のうちの一部の光であるため、輝度飽和の抑制を図れる。
【0227】
また本実施形態では、判定部65が、特定状態の種類の特定も行えるため、光出力に関する信頼性が更に向上さ得る。特に制限部66が設けられていることで、所定の種類に応じた光出力の制限を行えるようになり、光出力に関する信頼性が更に向上さ得る。
【0228】
(4)変形例
本実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。本実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0229】
また上記実施形態に係る毛切断装置1(特に制御回路6)と同様の機能は、毛切断方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0230】
本開示における毛切断装置1(特に制御回路6)は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御回路6としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0231】
また、毛切断装置1における複数の機能が、1つのハウジング内に集約されていることは必須の構成ではない。例えば、毛切断装置1の構成要素は、複数のハウジングに分散して設けられていてもよい。反対に、毛切断装置1における複数の機能が、1つのハウジング内に集約されてもよい。さらに、毛切断装置1の少なくとも一部の機能、例えば、毛切断装置1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0232】
(4.1)第1変形例
本実施形態の第1変形例に係る毛切断装置1Aについて、
図13を参照して説明する。ただし、以下の第1変形例について、毛切断装置1と実質的に共通する構成要素については同じ参照符号を付して、その説明を適宜省略する場合がある。
【0233】
図13に示すように、毛切断装置1Aは、全体としての外観が電気シェーバに近い形状である。毛切断装置1Aの装置本体2は、細長い筒状であり、装置本体2の先端に毛切断部材3(ヘッド)が装着されている。特に毛切断装置1Aは、毛切断部材3(ヘッド)の長手方向、及び光導波路4の光軸C1が、装置本体2の長手方向と直交する点で、毛切断装置1と相違する。
【0234】
毛切断装置1Aは、装置本体2のケース20内の光学系22から出射される光を、フェルール71内の受光面40Aまで導くように反射する1又は複数のミラーを、毛切断部材3又は装置本体2の内部に備えることが好ましい。
【0235】
このように構成された毛切断装置1Aにおいても、検知部D1、検知領域D2、及び拡散部Y1を備えている。したがって、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置1Aを提供できる。
【0236】
なお、本開示における「毛切断装置」の外観形状は、毛切断装置1、及び毛切断装置1Aの形状に限定されず、他にも毛切断部材3(ヘッド)の長手方向の長さが、装置本体2の幅よりも大きいT字形状の外観でもよい。また「毛切断装置」の外観形状は、Y字形状、L字形状、又はカード型形状の外観でもよい。
【0237】
(4.2)第2変形例
本実施形態の第2変形例に係る毛切断装置1B~1Eについて、
図14A~
図14Dを参照して説明する。ただし、以下の第2変形例について、毛切断装置1と実質的に共通する構成要素については同じ参照符号を付して、その説明を適宜省略する場合がある。
図14A~
図14Dは、いずれも検知領域D2の要部拡大図である。
【0238】
毛切断装置1Bは、
図14Aに示すように、対象光OB1が全反射せずに光導波路4から漏れ出た漏れ光を含む点で、毛切断装置1と相違する。
【0239】
具体的には、毛切断装置1Bは、毛切断装置1と同様に、検知部D1、及び検知領域D2を備えている。ただし、毛切断装置1Bは、毛切断装置1の拡散部Y1の代わりにビームダンプ(Beam Dump)D3を備えている点、並びに、光導波路4の先端部付近が検知領域D2内で湾曲している点で、毛切断装置1と相違する。
【0240】
光導波路4は、先端部付近に、伝達方向A2に対して、例えばZ軸の正方向に湾曲する湾曲部45を有している。湾曲部45は、検知領域D2内に配置される。光導波路4のコア部41内を伝達方向A2に沿って進む光が湾曲部45にてクラッド部42に入射する入射角度が、臨界角より小さくなって全反射できなくなるように、湾曲部45の曲率半径が設定されている。
【0241】
ビームダンプD3は、湾曲部45より先にある光導波路4の終端面40Bから導出される光を吸収/冷却するように構成される。光導波路4の先端部は、ビームダンプD3に接続されている。ビームダンプD3は、検知領域D2内に配置される。ビームダンプD3は、検知領域D2内において、例えば、光導波路4の中心軸よりもZ軸の正の側に配置される。
【0242】
検知部D1は、検知領域D2内において、対象光OB1を受光可能な位置に配置される。すなわち、検知部D1は、湾曲部45から全反射せずに光導波路4から漏れ出た漏れ光を含む対象光OB1を受光するように配置される。検知部D1は、検知領域D2内において、例えば、光導波路4の中心軸よりもZ軸の負の側に配置される。
【0243】
上述した毛切断装置1Bの構成においても、検知部D1及び検知領域D2が設けられているため、例えば検知部D1の検知結果を利用することができる。したがって、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置1Bを提供できる。特に毛切断装置1Bでは、漏れ光を利用するため、比較的簡素な構成で、対象光OB1の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。
【0244】
なお、毛切断装置1Bの別の例として、湾曲部45の代わりに、コア部41やクラッド部42の屈折率よりも屈折率の大きい透光性を有する部材を、検知領域D2内において、光導波路4の外周面に接触するように配置させることで、漏れ光を発生させてもよい。
【0245】
毛切断装置1Cは、
図14Bに示すように、対象光OB1が拡散部Y2で拡散された拡散光を含む点で、毛切断装置1と相違する。
【0246】
具体的には、毛切断装置1Cは、毛切断装置1と同様に、検知部D1、及び検知領域D2を備えている。ただし、毛切断装置1Cは、毛切断装置1の、光導波路4内を伝達して検知領域D2に進入した光を「拡散反射」させる拡散部Y1の代わりに、光導波路4内を伝達して検知領域D2に進入した光を「拡散透過」させる拡散部Y2を備えている点で、毛切断装置1と相違する。
【0247】
拡散部Y2は、光(入射光)が様々な方向へ出射させる拡散面Y20を有した部材から構成される。拡散部Y2は、検知領域D2内に配置される。拡散部Y2は、
図14Bの例では、その厚み方向がX軸に平行となるように配置された板状の部材から構成されるが、拡散部Y2の形状は特に限定されない。拡散面Y20は、拡散部Y2の母材の表面に例えば微細な凹凸構造を設けることで形成され得る。拡散面Y20の形成方法は特に限定されない。拡散部Y2は、例えば、磨りガラスから構成されてもよい。
【0248】
拡散面Y20は、X軸の正の側を向くように配置される。拡散部Y2の拡散面Y20の反対側の面(入射面Y21)は、光導波路4の先端部の終端面40Bと対向する。光導波路4の光軸C1の方向は、入射面Y21と直交する。光導波路4内を伝達して終端面40Bから導出された直接的な光が、拡散部Y2の入射面Y21に入射し、さらに拡散部Y2内を透過する光は、拡散面Y20から拡散される。
【0249】
検知部D1は、検知領域D2内において、対象光OB1を受光可能な位置に配置される。すなわち、検知部D1は、拡散面Y20から拡散される光を受光するように配置される。検知部D1は、検知領域D2内において、例えば、その厚み方向がX軸に平行となるように、拡散面Y20と対向して配置される。つまり、光導波路4から見て、検知部D1は、拡散部Y2の裏側に配置される。
【0250】
上述した毛切断装置1Cの構成においても、検知部D1及び検知領域D2が設けられているため、例えば検知部D1の検知結果を利用することができる。したがって、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置1Cを提供できる。特に毛切断装置1Cでは、拡散透過された光を利用するため、比較的簡素な構成で、対象光OB1の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。
【0251】
毛切断装置1Dは、
図14Cに示すように、鏡面反射させる反射部Y3を備える点で、毛切断装置1と相違する。
【0252】
具体的には、毛切断装置1Dは、毛切断装置1と同様に、検知部D1、及び検知領域D2を備えている。ただし、毛切断装置1Dは、毛切断装置1の拡散部Y1の代わりに、反射部Y3を備えている点で、毛切断装置1と相違する。
【0253】
反射部Y3は、光(入射光)を鏡面反射するミラーから構成される。反射部Y3は、検知領域D2内に配置される。反射部Y3は、光導波路4内を伝達して検知領域D2に進入した光を反射する。対象光OB1は、反射部Y3で反射された反射光を含む。
【0254】
反射部Y3は、反射面Y30を有している。反射部Y3は、反射面Y30が光導波路4の終端面40Bと対向するように配置される。ただし、反射部Y3は、反射面Y30が光軸C1の方向に対して傾斜するように配置される。詳細には、反射面Y30は、反射面Y30の直交方向が光軸C1の方向に対して角度θ1を成すように傾斜している。したがって、反射部Y3は、光導波路4内を伝達して終端面40Bから導出された直接的な光を、反射面Y30で鏡面反射させる。すなわち、反射面Y30で反射した反射光は、その光軸C2の方向が反射面Y30の直交方向と角度θ2を成すように反射する。この角度θ2は、角度θ1と等しい。
【0255】
検知部D1は、検知領域D2内において、対象光OB1を受光可能な位置に配置される。すなわち、検知部D1は、反射面Y30で反射した反射光を受光するように配置される。検知部D1は、検知領域D2内において、例えば、反射面Y30と対向するように、光導波路4の中心軸よりもZ軸の負の側に配置される。
【0256】
上述した毛切断装置1Dの構成においても、検知部D1及び検知領域D2が設けられているため、例えば検知部D1の検知結果を利用することができる。したがって、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置1Dを提供できる。また対象光OB1の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。
【0257】
毛切断装置1Dでは、検知部D1は、受光面D10が、反射面Y30で反射した反射光の光軸C2の方向からずれて配置されることが好ましい。特に受光面D10は、反射光の光軸C2の方向と交差しないことが好ましい。この場合、反射面Y30で反射した反射光を利用する一方で、光軸C2に沿った光強度の大きい反射光が対象光OB1に含まれにくくなり、対象光OB1の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を更に低減できる。
【0258】
毛切断装置1Dの別の例として、反射部Y3は、ハーフミラーから構成されてもよい。この場合、検知部D1は、上述した拡散部Y2と同様に、光導波路4から見て、反射部Y3の裏側に配置されてもよい。
【0259】
毛切断装置1Eは、
図14Dに示すように、変換部Y4を備える点で、毛切断装置1と相違する。
【0260】
具体的には、毛切断装置1Eは、毛切断装置1と同様に、検知部D1、及び検知領域D2を備えている。ただし、毛切断装置1Eは、毛切断装置1の拡散部Y1の代わりに、変換部Y4を備えている点で、毛切断装置1と相違する。
【0261】
変換部Y4は、検知領域D2内に配置される。変換部Y4は、光導波路4内を伝達して検知領域D2に進入した光(励起光)により励起を引き起こして光を発生する蛍光体粒子Y40を含む。対象光OB1は、変換部Y4で発生した光を含む。
【0262】
具体的には、変換部Y4は、例えば、複数の蛍光体粒子Y40と、複数の蛍光体粒子Y40を封止する透光性を有した封止層とを含む、板状の波長変換部材から構成される。変換部Y4は、その厚み方向における両端面に、入射面Y41と出射面Y42とを有している。入射面Y41は、光導波路4の終端面40Bと対向する。光導波路4の光軸C1の方向は、入射面Y41及び出射面Y42の各々と直交する。
【0263】
光導波路4内を伝達して終端面40Bから導出された直接的な光は、変換部Y4の入射面Y41に入射すると、蛍光体粒子Y40が、励起光を吸収して励起光の波長と異なる波長(例えば長波長)の光を発生させる。そして、その光は、変換部Y4の出射面Y42から出射する。また入射光のうち蛍光体粒子Y40に吸収されなかった光は、波長変換されずにそのまま変換部Y4の出射面Y42から出射する。
【0264】
検知部D1は、検知領域D2内において、対象光OB1を受光可能な位置に配置される。すなわち、検知部D1は、変換部Y4の出射面Y42から出射した光を受光するように配置される。検知部D1は、検知領域D2内において、例えば、受光面D10が、出射面Y42と対向するように配置される。ここでは受光面D10は、光導波路4の光軸C1の方向と直交する。
【0265】
上述した毛切断装置1Eの構成においても、検知部D1及び検知領域D2が設けられているため、例えば検知部D1の検知結果を利用することができる。したがって、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置1Eを提供できる。特に毛切断装置1Eでは、変換部Y4で発生した光を利用するため、比較的簡素な構成で、対象光OB1の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。
【0266】
(4.3)その他の変形例
上述した毛切断装置1の制御回路6は、現在の光強度だけでなく、累積使用時間等の実績データ(履歴)を用いて、時間経過に伴う光強度の「変化の態様」から、特定状態の種類(異常、汚れ、及び経年劣化)を判定している。しかし、例えば、特定状態について「異常」の判定のみに着目する場合には、制御回路6は、実績データを用いずに、現在の光強度と閾値との比較だけで「異常」の有無を判定してもよい。
【0267】
上述した毛切断装置1の検知部D1は、二次光(拡散光)の対象光OB1を受光しているが、例えば、一次光、つまり光導波路4内を進行して導出された光を直接受光してもよい。ただし、二次光を利用する方が、上述の通り、対象光OB1の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。また検知部D1の長寿命化も図れる。
【0268】
制御回路6は、検知部D1からの検知信号に基づき、製造出荷時の光出力に比べて、光導波路4の「経年劣化」によって光出力が低下したことを検知すると、その低下した「ずれ」をオフセットする補正を行ってもよい。つまり、制御回路6は、光導波路4の「経年劣化」の発生を検知すると、光源21の光強度を増加させる補正を行ってもよい。
【0269】
毛切断装置1は、操作部26を通じて主電源のオン/オフの切り替えを受け付けていることを説明した。しかし、毛切断装置1は、更に光源21の駆動の開始、すなわち光源21からの光出力の開始も、操作部26を通じて受け付け可能に構成されてもよい。この場合、制御回路6における、センサ部S1からの検知信号に基づいて光源21の駆動を自動的に開始したり、自動的に光出力に制限したりする機能は省略されてもよい。
【0270】
また毛切断装置1は、センサ部S1からの検知信号に基づいて、主電源のオン/オフの切り替えも自動的に行うように構成されてもよい。この場合、例えばセンサ部S1は、接点を開閉するスイッチを含んでもよい。この場合、毛切断装置1は、皮膚92から受ける押圧によってセンサ部S1が接点を閉じることで、主電源がオンに切り替わり、更に光源21の駆動も自動的に開始する。この場合、ユーザは操作部26を操作する手間が省けて、使い勝手が更に改善される。
【0271】
センサ部S1は、通電方式のセンサを構成してもよい。例えば、一対のセンサ部S1の電極(第1センサ部S11の電極S2と、第2センサ部S12の電極S2と)が、陽極と陰極とをそれぞれ構成してもよい。制御回路6は、これらの電極間に電圧を印加し、皮膚92がこれらの電極に接触した場合に人体を介して電極間に流れる電流を検知することで、皮膚92の接触状態を判定してもよい。
【0272】
またセンサ部S1は、皮膚92の接触状態ではなく、皮膚92の近接状態を検知するための近接センサでもよい。この場合、センサ部S1は、皮膚92までの距離を検知する距離センサを構成してもよい。
【0273】
またセンサ部S1は、皮膚92からの押圧(圧力)を受けることで抵抗値が変化する感圧センサを構成してもよい。
【0274】
センサ部S1が2つ以上設けられている場合、2つ以上のセンサ部S1は、互いに検知方式が異なるセンサを構成してもよい。
【0275】
例えば、光源21等を収容する装置本体2(ケース20)は、グリップに相当することを想定したが、ケース20とは別体にグリップ部が設けられていて、ケース20とグリップ部とが連結されてもよい。そして、ケース20内の収容物は、ケース20とグリップ部とに分散的に収容されてもよい。
【0276】
また、操作部26は、メカニカルスイッチに限らず、タッチスイッチ、光学式若しくは静電容量式の非接触スイッチ、又はジェスチャセンサ等であってもよい。さらに、操作部26は、例えば、スマートフォン等の外部端末からの操作信号を受け付ける通信部、又はユーザの音声操作を受け付ける音声入力部等であってもよい。
【0277】
また、毛切断装置1は、物理的な「刃」にて毛91を切断するシェーバ(刃が駆動される電気シェーバを含む)等と組み合わされてもよい。この場合、毛切断装置1は、光放出部40に加えて、物理的な「刃」を有することで、光放出部40から放出される光と物理的な「刃」との両方で、毛91を切断できる。
【0278】
また、光導波路4は、コア部41及びクラッド部42が合成石英製である光ファイバに限らず、例えば、石英(SiO2)製又はプラスチック製の光ファイバであってもよい。プラスチック製の光ファイバの例としては、クラッド部42がフッ素系ポリマ等からなり、コア部41が完全フッ素化ポリマ、ポリメタクリル酸メチル系又はポリカーボネート等からなる光ファイバがある。さらに、光導波路4は、スラブ導波路、矩形光導波路又はフォトニック結晶ファイバ等であってもよい。
【0279】
また、光導波路4は、最小限の構成としてコア部41を有していればよく、クラッド部42は適宜省略されていてもよい。
【0280】
また、保持部材5における接着部材52の屈折率が光放出部40(コア部41)の屈折率よりも小さいことは、毛切断装置1に必須の構成ではない。つまり、接着部材52の屈折率は、コア部41の屈折率以上であってもよい。
【0281】
またホルダ部H1内における固定部材F1の屈折率がコア部41の屈折率よりも小さいことは、毛切断部材3、及び毛切断装置1に必須の構成ではない。つまり、固定部材F1の屈折率は、コア部41の屈折率以上であってもよい。同様に、フェルール71内における接着部材G1の屈折率がコア部41の屈折率よりも小さいことは、毛切断部材3、及び毛切断装置1に必須の構成ではない。つまり、接着部材G1の屈折率は、コア部41の屈折率以上であってもよい。
【0282】
また光源21は、単一波長の光に限らず、例えば、複数の波長の光を発生してもよい。この場合、光源21は、複数の波長の光を、同時に発生してもよいし、順次切り替えながら発生してもよい。この構成では、光放出部40から毛91に放出する光(第1放出光Op1)は、複数の波長に対応する複数の発色団を標的とし得るので、複数種類の分子の結合を破壊することができ、毛91の切断効率の向上を図ることができる。
【0283】
また毛切断部材3は、光導波路4を複数備えていてもよい。この場合、毛切断部材3は、複数の光導波路4の各々の光放出部40にて毛91に光を放出して毛91を切断することが可能になる。ここで、複数の光導波路4は、同一の波長の光を通してもよいし、互いに異なる複数の波長の光を通してもよい。この場合、フェルール71内においては、複数の光導波路4が中心寄りに集まって配置されてもよい。あるいは光導波路4と一対一で対応するようにフェルール71が複数設けられてもよい。
【0284】
また光源21の動作モードについて、第1モードと第2モードとの切替えが手動で行われているが、この例に限らず、第1モードと第2モードとの切替えが自動的に行われてもよい。例えば、判定部65が、皮膚92の接触状態に応じて、第1モードと第2モードとの切替えを自動的に行ってもよい。
【0285】
電池23は、二次電池に限らず、一次電池であってもよい。さらに、毛切断装置1は、電池駆動式に限らず、例えば、系統電源(商用電源)等の外部電源からの電力供給を受けて動作してもよい。この場合、毛切断装置1としての電池23は省略可能である。
【0286】
また、光導波路4を通る光のパワー密度は、光源21からの出力以外で調整されていてもよい。例えば、光学系22又は光導波路4に含まれる光学フィルタにて、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されてもよい。あるいは、光導波路4の曲率半径を変えることによって、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されてもよい。光導波路4の一部からコア部41を露出させ、コア部41から光の一部を漏洩させることで、光導波路4を通る光のパワー密度が調整されてもよい。
【0287】
また、光導波路4における受光面40Aと反対側の終端面40Bにミラーが配置され、光導波路4の先端部まで到達する光がミラーにて光導波路4内に反射されるように構成されていてもよい。
【0288】
また、皮膚92への作用という機能は、あくまで毛切断装置1の副次的な機能であって、適宜省略可能である。つまり、毛切断装置1は、基本的な機能である毛91の切断の機能を有していればよい。
【0289】
また、二値間の比較において、「以上」としているところは、二値が等しい場合、及び二値の一方が他方を超えている場合との両方を含む。ただし、これに限らず、ここでいう「以上」は、二値の一方が他方を超えている場合のみを含む「より大きい」と同義であってもよい。つまり、二値が等しい場合を含むか否かは、閾値等の設定次第で任意に変更できるので、「以上」か「より大きい」かに技術上の差異はない。同様に、「未満」においても「以下」と同義であってもよい。
【0290】
毛切断装置1は、毛切断部材3のカバー30に取外し可能に取り付けられたアタッチメントを備えてもよい。アタッチメントによって、皮膚92の表面921からの光放出部40の高さを増加させてもよい。
【0291】
(5)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)は、光放出モジュール(M1)と、カバー(30)と、検知領域(D2)と、検知部(D1)と、を備える。光放出モジュール(M1)は、コア部(41)を含む光導波路(4)を有し、皮膚(92)から突出する毛(91)に光を放出することで毛(91)の切断を行う。カバー(30)は、光放出モジュール(M1)を覆うように構成される。検知領域(D2)は、カバー(30)内に配置されて、光導波路(4)内を伝達する光に起因した対象光(OB1)が通る。検知部(D1)は、検知領域(D2)内の対象光(OB1)を検知する。第1の態様によれば、毛切断装置(1,1A~1E)が、検知領域(D2)内の対象光(OB1)を検知する検知部(D1)を備えていることで、検知部(D1)の検知結果を利用することができる。したがって、光出力に関する信頼性が向上された毛切断装置(1,1A~1E)を提供できる。
【0292】
第2の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)に関して、第1の態様において、検知領域(D2)は、カバー(30)内における、光導波路(4)内を伝達する光の伝達方向(A2)の伝達先となる一端側の空間に配置される。第2の態様によれば、検知領域(D2)が、毛(91)を切断する光の放出に影響を与えてしまう可能性を低減できる。
【0293】
第3の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)に関して、第1又は第2の態様において、対象光(OB1)は、光導波路(4)内を伝達して検知領域(D2)に向かう光のうちの一部の光である。第3の態様によれば、例えば、検知領域(D2)に向かう光を直接検知する場合に比べて、対象光(OB1)の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。
【0294】
第4の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)に関して、第3の態様において、対象光(OB1)は、全反射せずに光導波路(4)から漏れ出た漏れ光を含む。第4の態様によれば、比較的簡素な構成で、対象光(OB1)の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。
【0295】
第5の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)は、第3又は第4の態様において、拡散部(Y1,Y2)を更に備える。拡散部(Y1,Y2)は、検知領域(D2)内に配置され、光導波路(4)内を伝達して検知領域(D2)に進入した光を拡散反射又は拡散透過させる。対象光(OB1)は、拡散部(Y1,Y2)で拡散された拡散光を含む。第5の態様によれば、比較的簡素な構成で、対象光(OB1)の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。
【0296】
第6の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、変換部(Y4)を更に備える。変換部(Y4)は、検知領域(D2)内に配置され、光導波路(4)内を伝達して検知領域(D2)に進入した光(励起光)により励起を引き起こして光を発生する蛍光体粒子(Y40)を含む。対象光(OB1)は、変換部(Y4)で発生した光を含む。第6の態様によれば、比較的簡素な構成で、対象光(OB1)の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。
【0297】
第7の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、検知領域(D2)内に配置され、光導波路(4)内を伝達して検知領域(D2)に進入した光を反射する反射部(Y3)を更に備える。対象光(OB1)は、反射部(Y3)で反射された反射光を含む。第7の態様によれば、比較的簡素な構成で、対象光(OB1)の輝度飽和によって検知精度が低下してしまう可能性を低減できる。
【0298】
第8の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、判定部(65)を更に備える。判定部(65)は、検知部(D1)による対象光(OB1)に関する検知結果に基づき、毛切断装置(1,1A~1E)の光出力に関する状態が特定状態にあるか否かを判定する。第8の態様によれば、検知部(D1)の検知結果を利用して特定状態の判定を行えるため、光出力に関する信頼性が更に向上さ得る。
【0299】
第9の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)に関して、第8の態様において、さらに判定部(65)は、対象光(OB1)の光強度に関する変化の態様に基づき、特定状態の種類を特定する。第9の態様によれば、特定状態の種類の特定も行えるため、光出力に関する信頼性が更に向上さ得る。
【0300】
第10の態様に係る毛切断装置(1,1A~1E)は、第9の態様において、判定部において、少なくとも特定状態の種類が所定の種類であることが特定された場合、光放出モジュール(M1)からの光出力を制限する制限部(66)を更に備える。第10の態様によれば、所定の種類に応じた光出力の制限を行えるようになり、光出力に関する信頼性が更に向上さ得る。
【0301】
第11の態様に係る毛切断方法は、光放出ステップと、検知ステップと、を含む。光放出ステップでは、コア部(41)を含む光導波路(4)を有する光放出モジュール(M1)から、皮膚(92)から突出する毛(91)に光を放出させることで、毛(91)の切断を行う。検知ステップでは、光放出モジュール(M1)を覆うように構成されるカバー(30)内に配置されて光導波路(4)内を伝達する光に起因した対象光(OB1)が通る検知領域(D2)内の対象光(OB1)を検知する。第11の態様によれば、毛切断方法が、検知領域(D2)内の対象光(OB1)を検知する検知ステップを含むことで、検知部(D1)の検知結果を利用することができる。したがって、光出力に関する信頼性が向上された毛切断方法を提供できる。
【0302】
第2~10の態様に係る構成については、毛切断装置(1,1A~1E)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【産業上の利用可能性】
【0303】
毛切断装置は、家庭用、又は美容、医療若しくは介護等の様々な分野において、人又は人以外の動物の様々な毛の切断に適用することができる。
【符号の説明】
【0304】
1,1A~1E 毛切断装置
11 制限部
30 カバー
4 光導波路
41 コア部
65 判定部
66 制限部
91 毛
92 皮膚
A2 伝達方向
D1 検知部
D2 検知領域
M1 光放出モジュール
OB1 対象光
Y1,Y2 拡散部
Y3 反射部
Y4 変換部
Y40 蛍光体粒子