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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】軸受部材および空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/06 20060101AFI20240216BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20240216BHJP
【FI】
F16D1/06 200
F24F7/003
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020146936
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041620
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591269712
【氏名又は名称】アンデス電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504030772
【氏名又は名称】株式会社寿精工
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】是川 天一
(72)【発明者】
【氏名】木村 将司
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-032525(JP,U)
【文献】特開昭61-182493(JP,A)
【文献】特開2001-173597(JP,A)
【文献】特開2017-155602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/06
F24F 7/003
F04D 29/28,29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に駆動手段の回転軸を固定して回転させるための軸受部材において、
前記回転軸周りに一体に固定され、前記回転体の軸心周りの主壁に係合する第1部品と、
前記第1部品と前記回転体の主壁とが前記回転軸周りで互いに重なり合う範囲内に組み合わされる第2部品と、
前記第1部品と前記第2部品とが前記回転軸周りで互いに対向する箇所に設けた隙間に介装される第3部品と、を有し、
前記回転体の主壁には、前記第1部品に重なり合う範囲より小径の内側で、前記回転軸が貫通する中央に向かってテーパ状に縮径する円錐台状に窪んだ凹部が形成され、
前記第1部品は、前記回転体の主壁に対向する円盤状部と、該円盤状部の中央より円筒状に突出し前記回転軸が貫通した状態で前記回転体の凹部に収まるボス部と、を備え、
前記第2部品は、前記ボス部に外嵌した状態で、前記回転体の凹部のテーパ面に外周面が面接触する円錐台状に形成され、
前記第3部品は、前記第1部品からの押圧力を前記第2部品に弾発的に伝達し、該第2部品の外周面を前記回転体の凹部のテーパ面に圧接させる弾発力発生手段から成ることを特徴とする軸受部材。
【請求項2】
前記第1部品および前記第2部品は、金属材料で成形されたことを特徴とする請求項1に記載の軸受部材。
【請求項3】
前記弾発力発生手段は、波形ワッシャにより構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の軸受部材。
【請求項4】
前記回転軸の先端側は、ネジ状に構成され、該回転軸の先端側に、前記回転体の主壁の裏側からナットを締結したことを特徴とする請求項1,2または3に記載の軸受部材。
【請求項5】
前記第1部品における円盤状部の外周縁に沿って、その全周に亘り該円盤状部の基準面より突出して前記回転体の主壁に当接するフランジを設けたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の軸受部材。
【請求項6】
前記回転体は、風流を発生させるファンであり、前記主壁の裏側に円周方向に一定間隔で並ぶ複数の羽根を支持して構成されたことを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の軸受部材。
【請求項7】
前記請求項6に記載の軸受部材を備えた空気清浄装置であって、
前記回転体であるファンに対して前記駆動手段であるモータの回転軸を、前記軸受部材を介して固定したことを特徴とする空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体に駆動手段の回転軸を固定して回転させるための軸受部材、および該軸受部材を備えた空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の軸受部材は様々な分野で活用されており、例えば各種目的のために風流を発生させるファン(遠心ファン、軸流ファン等)の固定に用いられている。これら軸を中心に回転するファンは、モータの回転軸への取り付けで回転軸と接する構造やマウント部分の材質・強度等に影響され、軸に直交したバランスが乱れると、揺れながら回転する。この場合、軸と直交する状態での完全にバランスが安定した回転と比して、ファンの吸い込み、吐き出しといった作業に関する効率が低下し、また騒音の原因となる等の問題が発生し、ファンの稼働を前提とした製品のクオリティを下げるものとなっている。
【0003】
このようなファンは、空気清浄機にも用いられている(例えば特許文献1参照)。一般に空気清浄機におけるファンの取り付けは、単にモータの出力軸に止め輪を付けて、そこに止め輪より大きい径のワッシャを挟めて、ワッシャの上にファンを載置するような構成であった。かかる簡易な構成では、ファンの軸が傾きやすく、振動や騒音の原因となるため、このファンに対する振動や騒音を低減させるべく、ファンと回転軸との接合部の構造または材質等に関し、様々な対応が試みられてきた。具体的には例えば、軸受部材を硬質ゴム製としたり、または金属部材で形成したり、あるいはファンと軸受部材との接合部を補強する形式の円盤状のハウジングの設置等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-217580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したファンの取り付けに関して、硬質ゴム製の軸受部材を採用したものでは、常にファンが回転する接点にあり、摩擦による摩耗等で使用に伴い当初の保持性を有しなくなる。また、単純な筒状の金属部材の場合も同様であり、特に精度出しが困難であった。さらに、ファンの面に平面的に張り付くような円盤状のハウジングは、これも常に高速で回転するファンとの接点にあり、揺動するファンからの押圧力によって、ファンを構成する材質に食い込み、変形させる等の問題が生じて、当初の保持性を有しなくなる等の問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであり、空気清浄機等の各種装置において、ファン等の回転体に駆動手段の回転軸を固定するに際し、簡易な構成で精度良く容易に組み付けることが可能となり、強固な結合により高い保持性を持続させることも可能となり、回転時における振動や騒音の発生を確実に防止することができる軸受部材、および、この軸受部材を備えた空気清浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]回転体(30)に駆動手段(40)の回転軸(41)を固定して回転させるための軸受部材(100)において、
前記回転軸(41)周りに一体に固定され、前記回転体(30)の軸心周りの主壁(31)に係合する第1部品(110)と、
前記第1部品(110)と前記回転体(30)の主壁(31)とが前記回転軸(41)周りで互いに重なり合う範囲内に組み合わされる第2部品(120)と、
前記第1部品(110)と前記第2部品(120)とが前記回転軸(41)周りで互いに対向する箇所に設けた隙間に介装される第3部品(130)と、を有し、
前記回転体(30)の主壁(31)には、前記第1部品(110)に重なり合う範囲より小径の内側で、前記回転軸(41)が貫通する中央に向かってテーパ状に縮径する円錐台状に窪んだ凹部(31b)が形成され、
前記第1部品(110)は、前記回転体(30)の主壁(31)に対向する円盤状部(112)と、該円盤状部(112)の中央より円筒状に突出し前記回転軸(41)が貫通した状態で前記回転体(30)の凹部(31b)に収まるボス部(113)と、を備え、
前記第2部品(120)は、前記ボス部(113)に外嵌した状態で、前記回転体(30)の凹部(31b)のテーパ面に外周面(123)が面接触する円錐台状に形成され、
前記第3部品(130)は、前記第1部品(110)からの押圧力を前記第2部品(120)に弾発的に伝達し、該第2部品(120)の外周面(123)を前記回転体(30)の凹部(31b)のテーパ面に圧接させる弾発力発生手段から成ることを特徴とする軸受部材(100)。
【0008】
[2]前記第1部品(110)および前記第2部品(120)は、金属材料で成形されたことを特徴とする前記[1]に記載の軸受部材(100)。
【0009】
[3]前記弾発力発生手段は、波形ワッシャ(130)により構成されたことを特徴とする前記[1]または[2]に記載の軸受部材(100)。
【0010】
[4]前記回転軸(41)の先端側は、ネジ状に構成され、該回転軸(41)の先端側に、前記回転体(30)の主壁(31)の裏側からナット(44)を締結したことを特徴とする前記[1],[2]または[3]に記載の軸受部材(100)。
【0011】
[5]前記第1部品(110)における円盤状部(112)の外周縁に沿って、その全周に亘り該円盤状部(112)の基準面(112a)より突出して前記回転体(30)の主壁(31)に当接するフランジ(112b)を設けたことを特徴とする前記[1],[2],[3]または[4]に記載の軸受部材(100)。
【0012】
[6]前記回転体(30)は、風流を発生させるファン(30)であり、前記主壁(31)の裏側に円周方向に一定間隔で並ぶ複数の羽根(32)を支持して構成されたことを特徴とする前記[1],[2],[3],[4]または[5]に記載の軸受部材(100)。
【0013】
[7]前記[6]に記載の軸受部材(100)を備えた空気清浄装置(10)であって、
前記回転体(30)であるファン(30)に対して前記駆動手段(40)であるモータの回転軸(41)を、前記軸受部材(100)を介して固定したことを特徴とする空気清浄装置(10)。
【0014】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の軸受部材(100)は、従来のように一つの部品ではなく、基本的には第1部品(110)と第2部品(120)とに分割され、これらが重なり合う隙間に第3部品(130)が介装される。このような軸受部材(100)によれば、従来の軸受部材のように、一つの部品だけの精度出しに大きく影響されることはなく、回転体(30)に回転軸(41)を最適な状態で確実に係合させることが可能となる。
【0015】
第1部品(110)は、その円盤状部(112)の中央よりボス部(113)が突出しており、このボス部(113)に円錐台状の第2部品(120)を、同軸上に外嵌させて組み合わせる。ここで第1部品(110)と第2部品(120)とが互いに対向する箇所の隙間に、第3部品(130)を介装させる。このような軸受部材(100)を係合させる回転体(30)の主壁(31)には、第2部品(120)の外周面(123)の傾斜に合致する円錐台状に窪んだ凹部(31b)があるため、互いに容易に位置決めされて精度良く係合させることが可能となる。
【0016】
第2部品(120)の傾斜した外周面(123)は、回転体(30)にある凹部(31b)のテーパ面に面接触する。ここでの係合により、軸方向にかかる力は分圧され、回転体(30)と第2部品(120)との軸方向に直交する平面同士による強い圧接は回避される。これにより、回転軸(41)と一体の軸受部材(100)と回転体(30)との接合箇所における互いの強い圧接による変形や摩耗は低減され、耐久性も向上させることができる。また、回転軸(41)と回転体(30)の軸心との正確な芯出しにより、互いに傾くことなく揺動しにくい接続が可能となる。
【0017】
特に、軸受部材(100)では、第1部品(110)と第2部品(120)との隙間にある第3部品(130)により、回転軸(41)側の第1部品(110)からの押圧力は第2部品(120)に弾発的に伝達される。従って、軸受部材(100)と回転体(30)との接合箇所を成す第2部品(120)の外周面(123)を、回転体(30)の凹部(31b)のテーパ面に対して常に安定した状態で圧接させることが可能となる。これにより、軸受部材(100)を介して、回転軸(41)と回転体(30)との強固な一体的な接続が実現され、回転時における振動や騒音の発生を確実に防止することができる。
【0018】
前記[2]に記載の軸受部材(100)によれば、第1部品(110)および第2部品(120)を、金属材料で成形した。これにより、軸受部材(100)における強固な剛性を確保することができる。
【0019】
前記[3]に記載の軸受部材(100)によれば、弾発力発生手段は、波形ワッシャ(130)により構成した。このように、既製品である波形ワッシャ(130)をそのまま利用して、弾発力発生手段を簡易に構成することができ、波形ワッシャ(130)の有する弾発力が第2部品(120)に伝わり、ファン(30)に確実に密着させることができる。
【0020】
前記[4]に記載の軸受部材(100)によれば、回転軸(41)の先端側は、ネジ状に構成され、該回転軸(41)の先端側に、回転体(30)の主壁(31)の裏側からナット(44)を締結する。これにより、簡易な構成で回転軸(41)を回転体(30)に対して、いっそう強固に結合させることができる。
【0021】
前記[5]に記載の軸受部材(100)によれば、第1部品(110)における円盤状部(112)の外周縁に沿って、その全周に亘り該円盤状部(112)の基準面(112a)より突出するフランジ(112b)を設ける。従って、第1部品(110)の円盤状部(112)は、その基準面(112a)の広い範囲で回転体(30)の主壁(31)に面接触することはなく、基準面(112a)の外周縁に亘るフランジ(112b)の部分だけが局所的に接触する。
【0022】
このように、第2部品(120)の周囲を囲む第1部品(110)に関しては、回転体(30)と接する面積をなるべく縮小することで、回転体(30)の材質の変形を発生しにくくし、また仮に変形が発生したとしても、その影響を最小限にとどめることが可能となる。
【0023】
また、前記回転体(30)は、例えば前記[6]に記載したように、風流を発生させるファン(30)である。かかるファン(30)は、主壁(31)の裏側に円周方向に一定間隔で並ぶ複数の羽根(32)を支持して構成される。このようなファン(30)に対して、本軸受部材(100)は最適に適用することができる。
【0024】
さらに、軸受部材(100)を回転体(30)であるファン(30)に適用する場合、例えば[7]に記載した空気清浄装置(10)におけるファン(30)の取り付けに利用することができる。すなわち、回転体(30)であるファン(30)に対して駆動手段(40)であるモータの回転軸(41)を、前記軸受部材(100)を介して確実かつ容易に固定することができる。これにより、空気清浄装置(10)の作動に際し、ファン(30)の回転時における振動や騒音の発生を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る軸受部材によれば、フィルタ等の回転体に回転軸を固定するに際し、簡易な構成で精度良く容易に組み付けることが可能となり、強固な結合により高い保持性を持続させることも可能となり、回転時における振動や騒音の発生を確実に防止することができる。
【0026】
また、本発明に係る軸受部材を備えた空気清浄装置によれば、ファンにモータの回転軸を確実かつ容易に固定することができる。これにより、空気清浄装置の作動に際し、ファンの回転時における振動や騒音の発生を確実に防止することができ、製品のクオリティを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る軸受部材を介してファンにモータの回転軸を取り付けた状態を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る軸受部材を分解して上から見た状態を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る軸受部材を分解して上下逆にして見た状態を示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る空気清浄装置を示す縦断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
本実施形態に係る軸受部材100は、回転体に駆動手段の回転軸を固定して回転させるものであり、第1部品110と、第2部品120と、第3部品130と、を有して成る。かかる軸受部材100は、各種の装置に用いることができるが、本実施形態では、空気中の粉塵や微粒子等を捕集する空気清浄装置10に適用した場合を例にして説明する。
【0029】
<空気清浄装置10の概要>
先ず、空気清浄装置10の概要について説明する。
図4図5に示すように、空気清浄装置10は、縦型の四角柱状に形成されたケース11の内部に、フィルタ20やファン30等の関連部品を収納して構成されている。ケース11の底面側は開口しており、この底面側開口より、フィルタ20が外部から見える状態にある。フィルタ20は、回転式留具21によって着脱可能に保持されている。また、ケース11の上面部12は、後付けされている。なお、ケース11の材質は、上面部12も含めて、例えば硬質の合成樹脂である。
【0030】
ケース11の底面側開口は、そのまま外部から空気を吸い込む吸込部となっている。ケース11の底面側には、その4隅に脚部13が一体に立設されている。各脚部13によって、底面側開口である吸込部は床面から離隔して配置される。ケース11の各側面の上側には、それぞれ空気を外部に吹き出す吹出部14が設けられている。吹出部14は、所定区画に穿設された例えば網目状の小孔群から成る。また、上面部12には、空気清浄装置10を操作するスイッチや表示部が設けられている。なお、ケース11の適所には、図示省略したが電源コードの差込口が設けられている。
【0031】
フィルタ20は、定期的に交換されるものであり、ケース11を逆さにした状態でケース11の底面側開口より内部に収納される。図4に示すように、ケース11の内部中段には、フィルタ20の収納空間を仕切る仕切板16が設けられ、仕切板16に、円筒形の網目構造の取付筒17が下向きに固定されている。フィルタ20は、例えば不織布や樹脂製の網目状のシート等から円筒形に形成され、その内側に取付筒17に合致する中空部を有する。フィルタ20は、その中空部を取付筒17に嵌める状態で取り付けられ、取付筒17の下端面に設けられた回転式留具21によって抜け落ちないように保持される。
【0032】
フィルタ20は ケース11の底面側開口(吸込部)から吸い込まれた空気が外周側より内周側に向けて通過するときに空気中の粉塵等を捕集する。ここで粉塵とは、綿ゴミ、糸屑、その他、除去されるべき粒子を広く含むものである。フィルタ20の上端面にある中空部開口は、後述の連通部材18を介してファン30と連通する。一方、フィルタ20の下端面にある中央部開口は、回転式留具21によって塞がれた状態となる。回転式留具21の回転操作によって、フィルタ20は容易に着脱できるように保持される。
【0033】
図4に示すように、ケース11の内部において、フィルタ20の仕切板16の上側には略筒状の連通部材18が配設されている。連通部材18の下端開口は、仕切板16にある穴を間にしてフィルタ20の上端面にある中央開口と連通している。また、連通部材18の上側にはファン30が配設され、連通部材18の上端開口は、ファン30と連通している。ファン30は、モータ40によって回転駆動され、吸込部から外部の空気が吸い込まれて、吹出部14から清浄した空気を吹き出す空気の流れを発生させる。ここでファン30は、本発明の「回転体」に相当する。
【0034】
<<ファン30の構成>>
本実施形態に係るファン30は、主壁31の裏側に円周方向に一定間隔で並ぶ複数の羽根32を支持して構成された遠心式ファンである。かかるファン30は、遠心式ファンのうち複数の羽根32が、それぞれ回転方向と逆方向を向くように構成されており、静圧が高く大風量のターボファンに相当する。図1から図3に示すように、ファン30は、その軸心周りの一端面を成す主壁31と、軸心周りの他端面を成して主壁31と対向し、各羽根32の他端が周方向に支持された副壁33と、を有する。なお、ファン30の材質は、例えば合成樹脂である。
【0035】
主壁31は、その中央部分に向かって内側に凹むように傾斜する略漏斗状に形成されている。ここで主壁31の中央部分だけ、軸心と直交する略水平な平板状に形成されている。図3に示すように、副壁33は、その中央開口に向かって下方に傾斜する略漏斗状に形成されている。副壁33の中央開口はファン吸込口となり、前記連通部材18の上端開口と連通接続されている。なお、図4に示すように、ファン30の主壁31とモータ40との間には、主壁31と対向する形状を備え、モータ40を所定位置に保持するため支持部材19が配設されている。
【0036】
図2に示すように、主壁31の中央部分の中心側には、該中央部分の略水平な平板状の基準面31aより、さらにその中央側に向かってテーパ状に縮径する円錐台状に窪んだ凹部31bが形成されている。凹部31bにおいて、その傾斜したテーパ面の内側となる底面は、軸心と直交する略水平な底面を成しており、該底面の中央に、回転軸41を貫通させる取付孔31cが設けられている。
【0037】
また、主壁31の中央部分には、円周方向に並ぶ複数のネジ31dが取り付けられている。各ネジ31dは、ファン30の偏重心を修正するバランス調整用の重りである。各ネジ31dは、それぞれ頭部が主壁31の基準面31aと同一面上に連なっている。なお、ネジ31dの材質は特に限定されるものではないが、バランスの微調整を行う場合は、アルミニウム等の比重の小さな金属製のものを用いれば良く、逆に大きなバランス調整を行う場合には、鉄等の比重の大きな金属製のものを用いれば良い。
【0038】
ファン30の外周、すなわち主壁31および副壁33の外周の間で、かつ各羽根32の外側端縁同士の間がファン吹出口となっている。よって、ファン30が回転すると、副壁33の中央開口(ファン吸込口)より空気が吸い込まれ、ファン30の外周(ファン吹出口)より空気は遠心方向に吹き出される。ここでファン30の外周より遠心方向に吹き出された空気は、そのままケース11にある吹出部14(図5参照)から外部に吹き出される。
【0039】
<<モータ40の構成>>
モータ40は、給電された電力によって回転駆動する電動式であり、その回転軸41に固定されたファン30を回転させる。モータ40の回転軸41は、軸受部材100によってファン30の主壁31に固定される。ここでモータ40は、本発明の「駆動手段」に相当する。モータ40は、その回転数を調整できるものが適している。図4に示すように、モータ40は、ファン30の主壁31が漏斗状に窪んだ内側に収納された状態で、ファン30と組み合わされて一つのユニットとして構成されている。
【0040】
<軸受部材100の構成>
図1から図3に示すように、軸受部材100は、ファン30にモータ40の回転軸41を固定して回転させるためのものであり、第1部品110と、第2部品120と、第3部品130と、を有して成る。ここで第1部品110、第2部品120、第3部品130の材質は、いずれも金属製である。
【0041】
<<第1部品110>>
第1部品110は、軸受部材100の主要部を成し、モータ40の回転軸41周りに一体に固定され、ファン30の軸心周りの主壁31に係合するものである。第1部品110は、円筒状の本体部111の外周より円盤状に広がる円盤状部112と、該円盤状部112の下面より円筒状に突出するボス部113と、を備える。なお、ボス部113は、本体部111と同一の外径であり、本体部111の下端部と看做すことができる。
【0042】
円盤状部112は、ファン30の主壁31(の基準面31a)に対向する部位であり、円盤状部112の下面が、ファン30の主壁31に重なり合う範囲となる。円盤状部112の下面は、ボス部113を除き回転軸41と直交する環状の平面を成している。かかる環状の平面が、円盤状部112の基準面112aとなる。また、円盤状部112のうち前記下面の反対側となる上面側は、本体部111の外周より順次拡径するテーパ状に形成されている。
【0043】
図1に示すように、円盤状部112の外径は、ファン30の主壁31のうち中央部分の平板状の基準面31aの径より小さく、かつ基準面31aの中央にある凹部31bの径よりは一回り大きく設定されている。また、円盤状部112の下面より突出するボス部113の外径は、ファン30の主壁31の凹部31bにおける底面の径より一回り小さく設定されている。さらに、円盤状部112の外周縁に沿って、その全周に亘り基準面112aより下方へ突出するフランジ112bが設けられている。
【0044】
フランジ112bは、ファン30の主壁31に当接させる部位である。ここでフランジ112bは、主壁31の中央部分の基準面31aに当接することにより、円盤状部112の基準面112aと主壁31の基準面31aとが直接的に面接触することを避けるものである。詳しく言えば、図1に示すように、フランジ112bが当接する主壁31の基準面31a上には、ちょうど複数のネジ31dが基準面31aと同一面上に円周方向に並んでおり、各ネジ31dは、樹脂製のファン30の摩耗を防ぐ役割を担っている。
【0045】
<<第2部品120>>
第2部品120は、第1部品110とファン30の主壁31とが回転軸41周りで互いに重なり合う範囲内に組み合わされるものである。第2部品120は、第1部品110のボス部113に外嵌した状態で、ファン30の凹部31bのテーパ面に外周面123が面接触する円錐台状に形成されている。第2部品120も、第1部品110と同様に金属材料で一体的に成形されている。
【0046】
第2部品120では、その上側となる大径の一端面121は、回転軸41が貫通する中空部を除き回転軸41と直交する環状の平面を成している。一方、第2部品120の下側となる小径の他端面122も、前記中空部を除き回転軸41と直交する環状の平面を成している。第2部品120の外周面123は、一端面121の端縁より僅かな高さ分だけ軸方向と平行に延びた後、他端面122の端縁に向かって漸次縮径しており、回転軸41と約45度で交差するように傾斜している。
【0047】
第2部品120の外周面123の傾斜角は、ファン30の凹部31bのテーパ面における傾斜角と一致しており、両者は互いに軸方向と交差する同一の傾斜角同士で面接触している。よって、第1部品110から第2部品120に対して軸方向に伝わる力は、第2部品120からファン30に対しては、両者の軸方向のみならず凹部31bのテーパ面と直交する方向にも分圧される。
【0048】
また、第2部品120の外周面123が、ファン30の凹部31bのテーパ面と面接触したとき、第2部品120の一端面121と第1部品110の円盤状部112の基準面112aとの間には、隙間が設けられている。かかる隙間は、次述する第3部品130を介装させるためのものであり、隙間の高さは、第3部品130の厚さよりも若干小さく設定されている。
【0049】
<<第3部品130>>
第3部品130は、第1部品110と第2部品120とが回転軸41周りで互いに対向する箇所に設けた前述の隙間に介装されるものである。第3部品130は、第1部品110からの押圧力を第2部品120に弾発的に伝達し、該第2部品120の外周面123をファン30の凹部31bのテーパ面に圧接させる弾発力発生手段から成る。ここで弾発力発生手段は、特に限定されるものではないが、本実施形態では波形ワッシャ(以下、波形ワッシャ130と記す)により構成されている。
【0050】
波形ワッシャ130は、金属製の薄板を円環状に加工し、その周方向に波形の凹凸を繰り返し形成したものである。波形ワッシャ130は、その軸方向にかかる荷重(スラスト荷重)を円周で平均して受けて弾発力を発生させる。波形ワッシャ130によって、第2部品120の外周面123を、ファン30の凹部31bのテーパ面に対して弾発的に押し当てる状態に維持することができる。このような波形ワッシャ130は、寸法の合う既製品をそのまま用いれば良い。
【0051】
波形ワッシャ130は、第1部品110のボス部113に外嵌し、波形ワッシャ130より突出したボス部113の下端側に第2部品120が外嵌している。ここで波形ワッシャ130の内径は、第1部品110のボス部113の外径とほぼ一致している。また、波形ワッシャ130の外径は、第2部品120の外径とほぼ一致している。なお、前述したが波形ワッシャ130の厚さは、第2部品120の一端面121と第1部品110の基準面112aとの間の隙間より若干大きく設定されている。
【0052】
<<その他の構成>>
図1に示すように、モータ40の回転軸41の途中には止め輪42が固定されており、止め輪42より先の回転軸41に、軸受部材100の第1部品110が貫通した状態で固定されている。軸受部材100のボス部113には、波形ワッシャ130と第2部品120が外嵌した状態で組み合わされている。第2部品120がファン30の凹部31bに押し当てられた状態で、回転軸41の先端側は、凹部31bにある取付孔31cを貫通している。
【0053】
回転軸41の先端側41aは、ネジ状に構成されており、該先端側41aは、ファン30の主壁31の凹部31bの裏側に突出している。この回転軸41の先端側41aに、ファン30の主壁31の裏側よりナット44を締結している。すなわち、回転軸41の先端側41aには、ワッシャ43を介してナット44が締結され、ナット44は、凹部31bの底面裏側に押し付けられている。ここで凹部31bの底面裏側には、強度を高める金属製の動力伝達板45を介在させても良い。また、ワッシャ付きのナットを用いても良い。
【0054】
<軸受部材100の作用>
次に、軸受部材100の作用について説明する。
図1において、ファン30にモータ40の回転軸41を固定する場合、回転軸41の途中に止め輪42を固定し、止め輪42をストッパとして回転軸41に軸受部材100を取り付ける。すなわち、回転軸41には、最初に第1部品110を貫通させて固定する。そして、第1部品110にある円盤状部112の下面より突出するボス部113に、波形ワッシャ130を外嵌させてから、続けて第2部品120も外嵌させる。
【0055】
ここで第2部品120は、第1部品110とファン30の主壁31とが回転軸41周りで互いに重なり合う範囲内に組み合わされる。また、波形ワッシャ130は、第1部品110と第2部品120とが回転軸41周りで互いに対向する箇所に設けた隙間に介装される。このように軸受部材100は、従来のように一つの部品ではなく、基本的には第1部品110と第2部品120とに分割され、さらに波形ワッシャ130を備える。かかる軸受部材100によれば、従来の軸受部材のように一つの部品だけの精度出しに大きく影響されることはない。
【0056】
軸受部材100を係合させるファン30の主壁31には、第2部品120の外周面123の傾斜に合致する円錐台状に窪んだ凹部31bがある。ここで第2部品120の外周面123の傾斜角は、ファン30の凹部31bのテーパ面の傾斜角と一致している。これにより、軸受部材100をファン30に係合させるとき、ファン30の凹部31bのテーパ面は、第2部品120の外周面123を受け入れるガイドとして機能する。従って、軸受部材100とファン30とは、互いに容易に位置決めされて精度良く係合させることが可能となる。
【0057】
そして、軸受部材100をファン30に係合させると、第2部品120の傾斜した外周面123は、ファン30にある凹部31bのテーパ面に面接触する。ここでの係合により、軸方向にかかる力は分圧され、ファン30と第2部品120との軸方向に直交する平面同士による強い圧接は回避される。これにより、回転軸41と一体の軸受部材100とファン30との接合箇所における互いの強い圧接による変形や摩耗は低減され、耐久性も向上させることができる。また、回転軸41とファン30の軸心との正確な芯出しにより、互いに傾くことなく揺動しにくい接続が可能となる。
【0058】
図1に示すように、軸受部材100の固定に際し、最後はファン30の凹部31bの底面裏側から、該底面の中央より突出した回転軸41の先端側41aに、動力伝達板45やワッシャ43を介してナット44を締結する。ナット44の締結は所定のトルクで行われるが、このときの締結力によって波形ワッシャ130は所定量だけ厚み方向に弾性変形する。従って、波形ワッシャ130の反力によって、締結効果も高めることができる。このような簡易な構成により、回転軸41をファン30に対して、いっそう強固に結合させることができる。
【0059】
しかも、波形ワッシャ130によれば、回転軸41と一体の第1部品110からの押圧力は、波形ワッシャ130を介することで第2部品120に弾発的に伝達される。従って、軸受部材100とファン30との接合箇所を成す第2部品120の外周面123を、ファン30の凹部31bのテーパ面に対して常に安定した状態で圧接させることが可能となる。これにより、軸受部材100を介して、回転軸41とファン30との強固な一体的な接続が実現され、ファン30の回転時における振動や騒音の発生を確実に防止することができる。
【0060】
波形ワッシャ130から成る第3部品は、第1部品110からの押圧力を第2部品120に弾発的に伝達可能な弾発力発生手段であれば、必ずしも波形ワッシャ130に限定されることはない。本実施形態では、寸法の合う既製の波形ワッシャ130をそのまま利用したから簡易に校正することができる。波形ワッシャ130によれば、前述したように軸方向にかかる荷重(スラスト荷重)を円周で平均して受けて弾発力を発生させるから、より確実に第2部品120をファン30に密着させることができる。
【0061】
また、第1部品110および第2部品120は、金属材料で成形したから、軸受部材100における強固な剛性を確保することができる。その反面、第1部品110の円盤状部112の基準面112aが、その広い範囲でそのままファン30の基準面31aに面接触すると、ファン30の樹脂材質への食い込みが生じて変形や摩耗が生じる虞がある。そこで、本軸受部材100では、第1部品110における円盤状部112の外周縁に沿って、その全周に亘りの基準面112aより突出するフランジ112bを設けている。
【0062】
これにより、第1部品110の円盤状部112は、その基準面112aの全体がファン30の主壁31に面接触することはなく、基準面112aの外周縁に亘るフランジ112bの部分だけが局所的に接触する。このように、第2部品120の周囲を囲む第1部品110に関しては、ファン30と接する面積をなるべく縮小することで、ファン30の材質の変形を発生しにくくし、また仮に変形が発生したとしても、その影響を最小限にとどめることができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、図1に示すように、フランジ112bが当接する主壁31の基準面31a上に、バランス調整用のネジ31dを円周方向に並べて配置している。これにより、フランジ112bは、主壁31の樹脂材料だけでなく、金属製のネジ31dにも当接するから、よりいっそうファン30の摩耗を防ぐことが可能となる。なお、ネジ31dの本来の機能として、ファン30の全周に亘る重さのバランスを適宜調整することができる。
【0064】
以上のように、本実施形態の軸受部材100によれば、回転体であるファン30に対してモータ40の回転軸41を簡単に取り付けられるだけでなく、最適な状態で確実に固定することができる。特に、空気清浄装置10におけるファン30の取り付けに利用することにより、空気清浄装置10の作動に際し、ファン30の回転時における振動や騒音の発生を確実に防止することができ、空気清浄装置10の製品としてのクオリティを高めることができる。
【0065】
<空気清浄装置10の作用>
次に、空気清浄装置10の作用について説明する。
図4に示すように、空気清浄装置10において、モータ40の駆動によりファン30が回転すると、空気は遠心力によってファン30の外周からケース11にある吹出部14(図5参照)を経て外部に吹き出される。
【0066】
このとき、ケース11内は負圧となり、底面側開口である吸込部からケース11外部の空気が吸い込まれる。ケース11内に吸い込まれた空気は、フィルタ20を通過して粉塵が除去される。浄化された空気は、フィルタ20の内側から連通部材18を通って、再びファン30に引き込まれ、ファン30の外周より遠心方向へ吹き出される。なお、空気清浄装置10の具体的な運転は、ケース11の上面部12にあるスイッチ類を操作することで適宜設定することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、軸受部材100を適用する装置は、空気清浄装置10に限られることなく、他にも様々な装置に適用することができる。
【0068】
また、軸受部材100は、ファン30に限らず様々な回転体の取り付けに利用することができる。さらに、軸受部材100を構成する第1部品110と、第2部品120と、第3部品130に関しても、図示した形状に限定されるものではない。ここで第3部品130は、波形ワッシャに必ずしも限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る軸受部材は、ファンの取り付けに限られることなく、様々な回転体の取り付けに適用することができる。また、ファンないし回転体を備える装置も、空気清浄装置に限られることなく、様々な装置に適用することができる。ここで空気清浄装置は、一般家庭で用いられるものに限られず、例えばホテル等の様々な施設で利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10…空気清浄装置
11…ケース
20…フィルタ
30…ファン
31…主壁
31a…基準面
31b…凹部
31c…取付孔
31d…ネジ
32…羽根
33…副壁
40…モータ
41…回転軸
42…止め輪
43…ワッシャ
44…ナット
45…動力伝達板
100…軸受部材
110…第1部品
111…本体部
112…円盤状部
112a…基準面
112b…フランジ
113…ボス部
120…第2部品
121…一端面
122…他端面
123…外周面
130…波形ワッシャ(第3部品)
図1
図2
図3
図4
図5