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特許7437721送風装置及びこれを利用した扇風機及び送風システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】送風装置及びこれを利用した扇風機及び送風システム
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20240216BHJP
   F04D 29/52 20060101ALI20240216BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240216BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20240216BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20240216BHJP
   F04D 25/08 20060101ALI20240216BHJP
   F04D 25/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F04D27/00 101B
F04D29/52 C
F04D27/00 101J
F24F7/007 101
F24F7/10 101B
F24F3/044
F04D25/08 307E
F04D25/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020102752
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021195900
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】516163578
【氏名又は名称】畠山 昭弘
(74)【代理人】
【識別番号】100190230
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 良吉
(72)【発明者】
【氏名】畠山 昭弘
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-228220(JP,A)
【文献】特開平01-097579(JP,A)
【文献】特開2012-202558(JP,A)
【文献】特開2019-143631(JP,A)
【文献】中国実用新案第205412558(CN,U)
【文献】特開2008-256269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/08
F04D 25/02
F04D 29/52
F04D 27/00
F24F 7/007
F24F 7/10
F24F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に吹出前の空気を収容する圧力室と、前記圧力室の一面に配置され前記空気を外部へ吹出すための複数の吹出孔を有する平面または曲面からなる多孔板と、前記多孔板の内側と外側との間に差圧を発生させる差圧発生手段と、を含む送風装置であって、
前記多孔板の内側と外側との間の差圧を測定する差圧計と、前記差圧計の測定値に基づいて、前記差圧発生手段の出力を調整する制御部と、をさらに有し、各前記吹出孔の孔径は、0.5mm~5mmであり、パスカルの原理によって前記複数の吹出孔から同様な圧力で空気を吹出すように構成されたことを特徴とする送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送風装置を含む、卓上型、床置き型又は壁固定型の扇風機であって、前記差圧発生手段として外部から空気を取り入れて前記圧力室に供給するコンプレッサーまたは送風ファンを含むことを特徴とする扇風機。
【請求項3】
請求項1に記載の送風装置を含む送風システムであって、前記圧力室及び前記多孔板は半閉空間の天井部に設置され、前記差圧発生手段として、前記半閉空間の外部から空気を取り入れて前記圧力室に供給するコンプレッサーまたは送風ファンを含み、前記多孔板から前記空気を吹出すことにより前記半閉空間に空気の均一な下降流を発生させ、前記半閉空間の床面付近に下降した空気が前記半閉空間の外部へ排気されるように構成されたことを特徴とする送風システム。
【請求項4】
請求項1に記載の送風装置を含む送風システムであって、前記圧力室及び前記多孔板は閉空間の天井部の全面に配置され、前記閉空間の床面付近と前記圧力室とを連通するダクトを含むとともに、前記差圧発生手段として、前記ダクトから空気を前記圧力室に供給するコンプレッサーまたは送風ファンと、を含み、前記多孔板から前記空気を吹出すことにより、前記閉空間内に空気の均一な下降流を発生させ、前記閉空間の床面付近に下降した空気を、前記ダクトを経由して前記圧力室に循環させる、ことを特徴とする送風システム。
【請求項5】
請求項1に記載の送風装置を含む送風システムであって、前記圧力室及び前記多孔板は半球状の曲面を有し閉空間の天井部の1または複数箇所に配置され、前記閉空間の床面付近と前記圧力室とを連通するダクトを含むとともに、前記差圧発生手段として、前記ダクトから空気を前記圧力室に供給するコンプレッサーまたは送風ファンと、を含み、前記多孔板から前記空気を吹出すことにより、前記閉空間内に空気の均一な下降流を発生させ、前記閉空間の床面付近に下降した空気を、前記ダクトを経由して前記圧力室に循環させる、ことを特徴とする送風システム
【請求項6】
前記ダクトの途中に設けられた、空気清浄機、空気乾燥機、冷暖房装置、除湿器、または加湿器からなる空調装置をさらに含み、前記空調装置で調整された空気を、前記圧力室に循環させるようにしたことを特徴とする、請求項に記載の送風システム。
【請求項7】
請求項1に記載の送風装置を含む送風システムであって、前記圧力室及び前記多孔板は閉空間の天井部に設置され、該圧力室の内部は前記閉空間の外部に開放され、前記差圧発生手段として排気装置を含み、該排気装置は、前記閉空間の床面付近の空気を外部に排気することにより前記閉空間を負圧にし、前記多孔板から前記空気を吹出して前記閉空間に空気の均一な下降流を発生させるように構成されたことを特徴とする送風システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置及びこれを利用した扇風機及び送風システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、換気、空調、涼風生成などを目的とする様々な送風装置が用いられてきた。これらの送風装置は、プロペラファンやシロッコファン、ターボファン等のファンを回転させ、空気を機械的に押し出すことにより風を生成するものが主流である。また、特許文献1や特許文献2では、複数のファンを所望の平面または曲面に配置して構成するファンアレイを用いて、場所による偏りの少ない一様な風を生成する為の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-060151
【文献】特開2020-085433
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなファンを回転させて風を生成する送風装置を用いて換気、空調を行う場合、生成される風の流れの幅が限られ、場所によって風速の強弱が生じたり、風が及ばない場所が生じたり、乱流、滞留、逆流等が発生するので、ムラのない換気や空調を行うことが困難であった。
【0005】
図10は、従来の送風機を使って室内を空調する場合の空気の流れの例を示す。
空調装置14(空気清浄機、空気乾燥機、冷暖房装置、除湿機、または加湿器等)の送風口15から風を吹出し、室内を循環させて、吸気口16に還流させる場合の例である。吹出風17は、一様な流れではないため、乱流や滞留や逆流を生じて、部屋全体に十分に行き渡らないまま、吸引流18となって還流する。このため、天井付近19-1や遠い領域19-2など風が及ばない領域が生じ、室内の換気や空調のムラが生ずるという問題がある。
【0006】
このような問題に対し、特許文献1や特許文献2では、場所による偏りの少ない一様な風を生成するとともに、エリア毎の細かい風の流れの制御を実現しているが、複数のファンを配置するため、装置構成が複雑で大規模化してしまうという懸念がある。
【0007】
また、従来のプロペラファンを用いた扇風機の場合も、吹出される風が一様な流れではないため、自然な風のような快適さが感じられないという問題もある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決し、簡易な構造で自然の風のような快適な風を実現でき、ムラのない均一な室内の換気や空調が実現できる送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の送風装置は、内部に吹出前の空気を収容する圧力室と、前記圧力室の一面に配置され前記空気を外部へ吹出すための複数の吹出孔を有する平面または曲面からなる多孔板と、前記多孔板の内側と外側との間に差圧を発生させる差圧発生手段と、を含む送風装置であって、パスカルの原理によって前記複数の吹出孔から同様な圧力で空気を吹出すように構成されたことを特徴とする。
【0010】
前記送風装置は、前記多孔板の内側と外側との間の差圧を測定する差圧計と、
前記差圧計の測定値に基づいて、前記差圧発生手段の出力を調整する制御部と、をさらに有するものであってもよい。
【0011】
前記送風装置において、各前記吹出孔の孔径は、0.5mm~5mmであることが好ましい。
【0012】
本発明の扇風機は、卓上型、床置き型又は壁固定型の扇風機であって、上記いずれかの送風装置を含み、前記差圧発生手段として外部から空気を取り入れて前記圧力室に供給するコンプレッサーまたは送風ファンを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の送風システムの一態様は、前記いずれかの送風装置を含む送風システムであって、前記圧力室及び前記多孔板は半閉空間の天井部に設置され、前記差圧発生手段として、前記半閉空間の外部から空気を取り入れて前記圧力室に供給するコンプレッサーまたは送風ファンを含み、前記多孔板から前記空気を吹出すことにより前記半閉空間に空気の均一な下降流を発生させ、前記半閉空間の床面付近に下降した空気が前記半閉空間の外部へ排気されるように構成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の送風システムの他の一態様は、前記いずれかの送風装置を含む送風システムであって、前記圧力室及び前記多孔板は閉空間の天井部の全面に配置され、前記閉空間の床面付近と前記圧力室とを連通するダクトを含むとともに、前記差圧発生手段として、前記ダクトから空気を前記圧力室に供給するコンプレッサーまたは送風ファンと、を含み、前記多孔板から前記空気を吹出すことにより、前記閉空間内に空気の均一な下降流を発生させ、前記閉空間の床面付近に下降した空気を、前記ダクトを経由して前記圧力室に循環させる、ことを特徴とする。
【0015】
前記送風システムは、前記多孔板を、 半球状の曲面として、前記閉空間の天井に1または複数箇所に配置したものであってもよい。
【0016】
前記送風システムは、前記ダクトの途中に設けられた、空気清浄機、空気乾燥機、冷暖房装置、除湿器、または加湿器からなる空調装置をさらに含み、前記空調装置で調整された空気を、前記圧力室に循環させるものであってもよい。
【0017】
本発明の送風システムのさらに他の一態様は、前記いずれかの送風装置を含む送風システムであって、前記圧力室及び前記多孔板は閉空間の天井部に設置され、該圧力室の内部は前記閉空間の外部に開放され、前記差圧発生手段として排気装置を含み、該排気装置は、前記閉空間の床面付近の空気を外部に排気することにより前記閉空間を負圧にし、前記多孔板から前記空気を吹出して前記閉空間に空気の均一な下降流を発生させるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の送風装置やこれを用いた扇風機によれば、前記圧力室の一面に複数の吹出孔を有する平面または曲面からなる多孔板を設け、パスカルの原理によって前記複数の吹出孔から同様な圧力で空気を吹き出すようにしたので、各吹出孔から吹き出された空気が合成されて均一な風を生成し、自然の風のような快適な風を実現できる。
また、本発明の送風システムでは、上記送風装置の圧力室と多孔板を天井に配置することにより、天井からの均一な下降気流が実現するので、空気の淀み等が発生せず、ムラのない均一な室内の換気や空調が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の送風装置の第1の実施形態を示す概略図である。
図2】本発明の送風装置の第2の実施形態を示す概略図である。
図3】本発明の送風装置を用いた扇風機の一例を示す外観斜視図である。
図4】本発明の送風装置を用いた扇風機の他の一例を示す外観斜視図である。
図5】本発明の送風システムの第1の実施形態を示す説明図である。
図6】本発明の送風システムの第2の実施形態を示す説明図である。
図7】本発明の送風システムの第2の実施形態の変形例を示す説明図である。
図8】本発明の送風システムの第2の実施形態の他の変形例を示す説明図である。
図9】本発明の送風システムの第3の実施形態を示す説明図である。
図10】従来の送風機を使った部屋の空気の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図に基づいて説明する。
図1は、本発明の送風装置の第1の実施形態を示す概略図である。
送風装置10は、圧力室1と、多孔板2と、差圧発生手段としての送風ファン3と、を含み、パスカルの原理によって複数の吹出孔2aから略均一な圧力で空気を吹出すように構成されている。
【0021】
圧力室1は、内部に吹出前の空気を収容するもので、例えば金属板等で形成された、箱状、円筒状、球状等の容器で、一面が多孔板2で閉止されている。この多孔板2の通過抵抗が大きいため、圧力室1は略密閉性を有し、内面の各部分における空気の圧力が一定であるという「パスカルの原理」が略成り立つようになっている。
【0022】
多孔板2は、前記圧力室の一面に配置され、前記空気を外部へ吹出すための複数の吹出孔2aを有する平面状の板である。吹出孔2aの孔径は、小さいほど「パスカルの原理」がよく成り立って、各孔の吹出圧力が一定になるが風量が小さくなる。一方、孔径が大きいほど風量が大きくなるが、「パスカルの原理」が成り立ちにくくなり、各孔の吹出圧力のばらつきが大きくなる。孔径は例えば、0.5mm~5mmであることが好ましい。吹出孔2aの孔径や間隔は、必要とする風の強さを考慮して設計する。
【0023】
送風ファン3は、外部から空気を取り入れて圧力室1に供給するもので、これにより圧力室1の静圧を高くし、多孔板2の内側と外側との間の差圧(例えば、数hPa~200hPa)を発生させる差圧発生手段である。尚、この差圧発生手段としては、送風ファンに限らず、コンプレッサーでもよく、それによりさらに高い静圧が実現できる。
【0024】
本実施形態の送風装置10は、さらに多孔板2の内側と外側との間の差圧を測定する差圧計4と、この差圧計4の測定値に基づいて、送風ファン3(差圧発生手段)の出力を調整する制御部5と、をさらに有する。
差圧計4は、例えば、静電容量型圧力センサや半導体ピエゾ抵抗拡散圧力センサを用い、0~200hPa程度の測定範囲を有するとともに、測定値信号を外部出力可能な市販の差圧計が利用できる。
制御部5は、例えば、差圧計4の信号入力インターフェース、目標差圧の入力手段(操作パネルや外部のコントローラなど)からの入力インターフェース、比較回路、及びコンプレッサーや送風ファンのモータの駆動回路、さらに制御マイコン等からなる。この構成により、差圧計4で測定された多孔板2の内側と外側との間の差圧が目標差圧になるように、送風ファン3の出力を制御することができる。
【0025】
次に、このように構成された本実施形態の送風装置10の動作について説明する。
制御部5が送風ファン3を駆動すると、外部から空気を取り込んで(矢印f1)加圧された空気が圧力室1に送られ(矢印f2)、収容される。
圧力室1の一面には、多孔板2が配置されているが、その吹出孔2aの通過抵抗が大きいため、圧力室1の内面の各部分における空気の圧力が一定であるという「パスカルの原理」が略成り立つ。
したがって、多孔板2の複数の吹出孔2aには略均一な圧力が加わる。本実施形態の多孔板2は平面板であり、各吹出孔2aの孔軸方向は同一で、孔径も一定であるため、平面状に分布した各吹出孔2aから空気が同一方向に同一速度で吹出され(矢印f3)、その結果、各吹出孔2aから吹出された空気は合成されて、平面的な風が形成される。このため、均一な風が生成され、自然の風のような快適な風を実現できる。
【0026】
なお、本実施形態の送風装置10は、多孔板2の内側と外側との間の差圧を測定する差圧計4と、この差圧計4の測定値に基づいて、送風ファン3の出力を調整する制御部5と、を設けている。この構成により、多孔板2の内側と外側との間の差圧は目標差圧に維持され、多孔板2から吹出される風速も所定値に維持される。
このため、送風装置10は、風切り音が抑えられパスカルの原理も適切に働くような、最適な風量の風を発生させることができる。
【0027】
図2は、本発明の送風装置の第2の実施形態を示す概略図である。
本実施形態の送風装置20は、多孔板2として半球面状のものを用いている点で第1の実施形態と異なるが、それ以外の構成は第1の実施形態と同様である。
このように構成された本実施形態の送風装置20の動作も、第1の実施形態の送風装置10の動作と同様である。但し、本実施形態の多孔板2は半球面状であり、各吹出孔2aの孔径は一定で、孔軸方向は半球面の各部の法線方向を向いている。「パスカルの原理」により、各吹出孔2aには略均一な圧力が加わるので、空気は半球面の法線方向に同一速度で吹出され(矢印f3)、合成されて、半球面的に広がる風が形成される。このため、図2の送風装置20では、プロペラファン等では困難な、広い角度方向に均一な風を送風できるという特徴がある。
【0028】
尚、図2では、多孔板2を半球状に形成したが、この形状に限らず、球状や円筒状、凸型の半円筒状、凹型の円半筒状など、必要に応じた曲面に形成できる。
【0029】
図3は、本発明の送風装置を用いた扇風機の一例を示す外観斜視図である。
この扇風機30は、卓上型の扇風機であって、本発明の送風装置の各構成要素を含み、差圧発生手段として外部から空気を取り入れて圧力室1に供給する送風ファン3を含む。
具体的には、扇風機30は、吹出ヘッド31と、支柱32と、ベース部分33とを含む。吹出ヘッド31の内部には、圧力室1が形成され、正面には半円筒状の多孔板2が設けられている。支柱32の内部には、送風ファン3が設けられ、外部から取り入れた空気を圧力室1に送風している。吹出ヘッド31の圧力室1から多孔板2の各吹出孔2aを通して吹出された風は、円筒面の法線方向、すなわち180度の角度方向に広がって吹出される。したがって、扇風機30は、首振りを行わなくても広い角度範囲に送風できる。但し、さらに首振りを行う構成にしてもよい。
尚、ベース部分33には、操作スイッチ等を含む操作パネル33aが設けられている。
【0030】
図4は、本発明の送風装置を用いた扇風機の他の一例を示す外観斜視図である。
この扇風機40は、壁固定型の扇風機であって、本発明の送風装置の各構成要素を含み、前記差圧発生手段として外部から空気を取り入れて前記圧力室に供給する送風ファン3を含む。
具体的には、扇風機40は、平板状の吹出ヘッド41を含む。吹出ヘッド41の内部には、圧力室1が形成され、正面には平板状の多孔板2が設けられている。吹き出しヘッドの背面には、送風ファン3(図示省略)が設けられ、外部から取り入れた空気を圧力室1に送風している。吹出ヘッド41の圧力室1から多孔板2の各吹出孔2aを通して空気が一方向に一様に吹出される。
【0031】
本発明の扇風機では、内面の圧力がどこでも一定という「パスカルの原理」を利用しているので、内部に圧力室を形成する吹き出しヘッドを自由な形状に形成でき、例えば、キャラクターの形にした扇風機もデザインできる。また、球状の全方向に風を吹き出す扇風機も形成できる。
なお、本発明の扇風機でも、多孔板2の内側と外側との間の差圧を測定する差圧計4(図1又は2参照)と、この差圧計4の測定値に基づいて、送風ファン3の出力を調整する制御部5(図1又は2参照)と、を備え、差圧計4で測定された差圧が目標差圧になるように、送風ファン3の出力を制御するようにしてもよい。
また、本発明の扇風機では、差圧発生手段として、送風ファン3の代わりにコンプレッサーを用いて、外部からの空気を圧力室1に供給してもよい。
また、本発明の扇風機は、卓上型、壁固定型のみならず、床置き型に構成してもよい。
【0032】
次に、本発明の送風装置を用いた送風システムについて説明する。
以下に説明する各送風システムは、前記いずれかの送風装置の各構成要素を含み、建物の室内や車両の車内などの閉空間や半閉空間の換気や空調を行うための送風システムである。
【0033】
図5は、本発明の送風システムの第1の実施形態を示す説明図である。
本実施形態の送風システム100は、建物の室内や車両の車内など、壁109で囲まれた半閉空間110の天井部に設けられた圧力室101及び多孔板102と、差圧発生手段としての送風ファン103とを含む。
【0034】
圧力室101は、半閉空間110の上部を多孔板102で完全に区画して形成されている。但し、図1の送風装置のように、一面に平面状の多孔板102を設けた金属板等からなる箱状体に形成して、複数のこのような箱状体を半閉空間110の天井に敷き詰めてもよく、天井を一体的に覆う大きな箱状体を形成して天井に配置してもよい。
このように形成された圧力室101に、送風ファン103により外部から空気を取り入れるようになっている。
また、送風システム100は、さらに多孔板102の内側と外側との間の差圧を測定する差圧計104と、この差圧計104の測定値に基づいて、送風ファン103の出力を調整する制御部105と、をさらに有する。これらの差圧計104及び制御部105の構成及び機能は、前記した送風装置10の差圧計4及び制御部5と同様である。
【0035】
次に、このように構成された本実施形態の送風システム100の動作について説明する。
送風ファン103は、半閉空間110の外部から空気を取り入れて(矢印f1)圧力室101に供給する(矢印f2)。制御部105は、差圧計104の測定値が所定値になるように、送風ファン103の出力を調整する。
このとき、多孔板102の通過抵抗は大きいので、圧力室101内部は「パスカルの原理」によって、内面の各部の圧力が略均一になり、平板状の多孔板102の各吹出孔102aから略均一な圧力で空気が吹出される(矢印f3)。
その結果、半閉空間110に空気の均一な下降流(矢印f4)を発生させ、半閉空間110の床面付近に下降した空気(矢印f5)が、床面付近の吹き出し口や隙間から半閉空間110の外部へ自然に排気される(矢印f6)ように構成されている。
【0036】
このような構成によれば、天井からの均一な下降気流(矢印f4)が実現するので、空気の淀み等が発生せず、ムラのない室内の換気や空調が実現できる。
【0037】
図6は、本発明の送風システムの第2の実施形態を示す説明図である。
この送風システム200は、閉空間210に設けられ、還流用のダクト206とその途中に設けられた空調装置207を有する点で、図5の送風システム100と異なる。
本実施形態の送風システム200は、建物の室内や車両の車内など、壁209に囲まれた閉空間210の天井部に設けられた圧力室201及び多孔板202と、ダクト206と、このダクト206の途中に設けられた空調装置207と、差圧発生手段としての送風ファン203と、を含む。
この空調装置207とは、例えば、空気清浄機、空気乾燥機、冷暖房装置、除湿器、または加湿器が挙げられる。
また、送風システム200は、送風システム100と同様に、多孔板202の内側と外側との間の差圧を測定する差圧計204と、この差圧計204の測定値に基づいて、送風ファン203の出力を調整する制御部205と、をさらに有する。
【0038】
この送風システム200の動作も、送風ファン203が圧力室201へ空気を送風し(矢印f2)、「パスカルの原理」を利用して平面状の多孔板202の各吹出孔202aから略均一な圧力で空気を吹出し(矢印f3)、均一な下降流(矢印f4)を発生させる点で図5の送風システム100と同様である。しかし、閉空間210の床面付近に下降した空気(矢印f5)を外部に流出させずに、ダクト206に取り込んで(矢印f6)空調装置207で空調を行った後、圧力室201に還流させる(矢印f1)点で異なる。
【0039】
この構成により、図5の送風システム100と同様に、天井からの均一な下降気流が実現するので、室内のムラのない換気が実現できるほか、空調装置と組み合わせて室内の効率的な空調を実現することができる。
【0040】
尚、この送風システム200において、空調装置207は必須ではなく、換気のみを行うか、別の装置で空調を行ってもよい。また、本送風システム200は、完全に閉空間でない半閉空間に適用してもよい。これらの場合も、ある程度効率的な換気や空調が実現できる。
【0041】
図7は、本発明の送風システムの第2の実施形態の変形例を示す説明図である。
この送風システム220は、図6の送風システム200において、平面状の多孔板202を半球面状の多孔板202に置き換えたものである。図2の送風装置について前記したように、半球面状の多孔板202では、各吹出孔202aから吹出された空気(矢印f3)は合成されて、半球面的に広がる風が形成されるので、プロペラファン等では困難な、広い角度方向に均一な風を送風できる。
このため、送風システム220では、天井の全面に平面的な多孔板202を敷き詰めなくても、天井の中央に1つの半球面状の多孔板202を配置するだけで、水平方向に吹き出した風が天井の略全面に広がり、空気の均一な下降流(矢印f4)を発生させることができる。
【0042】
この構成にすると、例えば、既設の部屋に本発明の送風システム220を追加する場合の工事が簡略化されるというメリットが期待できる。また、部屋の状態により必要であれば、半球面状の多孔板202を複数配置してもよい。
【0043】
図8は、本発明の送風システムの第2の実施形態の他の変形例を示す説明図である。
この送風システム240は、図6の送風システム200において、送風ファン203をダクト206の最初の部分、すなわち、閉空間210からの吸気口側に設けたものである。ダクト206は、その後、空調装置207を経て圧力室201に接続されている。
【0044】
この構成によっても、図6の送風システム200と同様に、天井からの均一な下降気流(矢印f4)が実現するので、効率的な室内の換気や空調が実現できる。
【0045】
図9は、本発明の送風システムの第3の実施形態を示す説明図である。
この送風システム300は、差圧発生手段として閉空間310の排気装置303を用いる点で、第1及び第2の実施形態の送風システム100及び200等と異なる。
本実施形態の送風システム300は、建物の室内や車両の車内など、壁309で囲まれた閉空間310の天井部に設けられた圧力室301及び多孔板302と、差圧発生手段としての排気装置303と、を含む。
圧力室301の内部は、閉空間310の外部に開放されている。一方、排気装置303は、例えば、排気ファンや排気ポンプであり、閉空間310の床面付近の空気を外部に排気するよう構成されている。
また、送風システム300は、多孔板202の内側と外側との間の差圧を測定する差圧計304と、この差圧計304の測定値に基づいて、排気装置303の出力を調整する制御部305と、をさらに有する。尚、図9の例では、制御部305は右側の排気装置303のみに取り付けられているが、左右両方の排気装置303の出力を制御する。
【0046】
この送風システム300の動作について説明する。
圧力室301の内部は、外部に開放されて(矢印f2)大気圧になっている一方、閉空間310は、排気装置303により床面付近の空気が外部に排気される(矢印f6)ので、負圧になる。その結果、多孔板302の内側と外側との間に差圧が発生する。制御部305は、差圧計304の測定値が所定値になるように、排気装置303の出力を調整する。
このとき、多孔板302の通過抵抗は大きいので、圧力室301内部は「パスカルの原理」によって、内面の各部の圧力が大気圧で略均一になり、平板状の多孔板302の各吹出孔302aから略均一な差圧で、閉空間310に空気が吹出される(矢印f3)。
これにより、均一な下降流(矢印f4)が発生し、閉空間310の床面付近に下降した空気(矢印f5)は、排気装置303により、外部に排気される(矢印f6)。
【0047】
この構成により、図5の送風システム100と同様に、天井からの均一な下降気流(矢印f4)が実現するので、室内のムラのない換気が実現できるほか、空調装置と組み合わせて室内の効率的な空調を実現することができる。
【0048】
尚、図9に示す送風システム300では、2台の排気装置303を用いたが、この台数は1台でもよく3台以上でもよい。
また、本送風システム300の場合、閉空間である部屋のドアや窓が開けられた場合は、空間内の負圧が失われて、空気の流れが破綻する事になる。しかし建物等の条件によっては、本送風システム300も選択肢として有効となる。
【0049】
尚、図5図9に示す各実施形態の送風システム100,200,220,240では、差圧発生手段として、送風ファン103,203を用いたが、代わりにコンプレッサーを用いてもよく、それによりさらに高い静圧が実現できる。
また、上記各実施形態の送風システムでは、上述の効果以外にも風の強さが強ければ床に溜まる埃などを部屋の排気口に集めることができ、従来とは全く別の概念の掃除機としての機能も実現することができる。
【符号の説明】
【0050】
1,101,201,301 :圧力室
2,102,202,302 :多孔板
2a,102a,202a,302a :吹出孔
3,103,203 :送風ファン
4,104,204,304 :差圧計
5,105,205,305 :制御部
10,20 :送風装置
14 :空調装置
15 :送風口
16 :吸気口
17 :吹出風
18 :吸引流
19-1:天井付近
19-2:遠い領域
30 :扇風機
31 :吹出ヘッド
32 :支柱
33 :ベース部分
33a:操作パネル
40 :扇風機
41 :吹出ヘッド
100,200,220,240,300:送風システム
109,209,309 :壁
110 :半閉空間
206 :ダクト
207 :空調装置
210 :閉空間
303 :排気装置
310 :閉空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10