(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】酸化染料含有組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20240216BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240216BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240216BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240216BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20240216BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/41
A61K8/34
A61K8/39
A61Q5/10
A61K8/06
(21)【出願番号】P 2019086834
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】勅使川原 拓
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 美幸
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-178104(JP,A)
【文献】特開2018-104327(JP,A)
【文献】特開2017-210431(JP,A)
【文献】特開2014-088359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)成分を含有し、前記(E)成分の含有量に対する前記(C)成分の含有量の比(C/E比)は、2以上であり、乳化状であることを特徴とする、酸化染料含有組成物。
(A)塩が付加された酸化染料
(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
(C)カチオン性界面活性剤
(D)高級アルコール
(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
【請求項2】
下記(A)~(E)成分を含有し、前記成分(B)は、不飽和炭化水素基を有し、乳化状であることを特徴とする、酸化染料含有組成物。
(A)塩が付加された酸化染料
(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
(C)カチオン性界面活性剤
(D)高級アルコール
(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
【請求項3】
エステル油及び炭化水素油の含有量の和は、2.5質量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酸化染料含有組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の含有量は、2質量%以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に酸化染料含有組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の酸化染料含有組成物からなる第1剤と、酸化剤を含有する第2剤と、を備えることを特徴とする、酸化染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物に関する。また、毛髪等を染毛するための酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化染毛剤は、酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤を備え、毛髪へ適用する際に第1剤と第2剤を混合して使用するものである。毛髪へ適用された酸化染毛剤は、酸化染料が毛髪内部に浸透し、毛髪内部で酸化重合することにより発色する。酸化染料は、酸化重合することにより酸化染料重合体を形成し、毛髪内部に留まり、染毛料や一時着色料に比べて長期間染毛状態が維持される。
【0003】
酸化染料としては、染料中間体やカプラー、それらの硫酸塩及び塩酸塩等が知られており、例えば、特許文献1には、塩が付加された酸化染料、カチオン性界面活性剤、HLBが17~20であるノニオン性界面活性剤、及び、HLBが11以下であるノニオン性界面活性剤を含有する、酸化染毛剤組成物が開示されている。
また、特許文献2、3には、塩が付加された酸化染料、ポリオキシエチレン鎖長が50以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、前記のポリオキシエチレンアルキルエーテルのポリオキシエチレン鎖長より短いポリオキシエチレン鎖長を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルを備える2剤式毛髪化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-210431号公報
【文献】特開2012-240943号公報
【文献】特開2014-88359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳化状態の酸化染料含有組成物において、塩が付加された酸化染料を含有すると、製剤の乳化安定性が悪くなるため、様々な温度(常温、高温、低温)において乳化状態を維持することができないという問題がある。
そこで、本発明の課題は、塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物において、様々な温度においても優れた乳化安定性を有する酸化染料含有組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、上記課題に対して鋭意検討した結果、塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物において、付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤、カチオン性界面活性剤、高級アルコール、及び、付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を含有することにより、様々な温度においても優れた乳化安定性を有する酸化染料含有組成物が得られることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の酸化染料含有組成物および酸化染毛剤である。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の酸化染料含有組成物は、下記(A)~(E)成分を含有し、乳化状の酸化染料含有組成物であることを特徴とする。
(A)塩が付加された酸化染料
(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
(C)カチオン性界面活性剤
(D)高級アルコール
(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
この酸化染料含有組成物によれば、塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物において、様々な温度においても乳化安定性に優れるという効果がある。
【0008】
また、本発明の酸化染料含有組成物の一実施態様としては、(E)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の比(C/E比)は、0.5以上であることを特徴とする。
この特徴によれば、製造時及び製造終了直後では粘度が低く、製造後24時間後では粘度が上昇して安定化するという作用がある。製造時や製造直後の粘度が低いと、乳化機の撹拌効率が良くなり、均一混合性に優れるという効果や、乳化機用のタンクから保管用のタンクへの移送速度が速くなり、作業効率が向上するという効果や、洗浄水で洗い流しやすく、洗浄操作性に優れるという効果がある。また、チューブ等に充填する際には、粘度が高い場合には、充填機に空気の噛み込みが生じやすく充填量が不安定になるが、粘度が低い場合には、このような問題もなく、充填性に優れるという効果もある。一方で、粘度が低い場合には、原料の分散安定性の観点では良くないため、充填後に粘度が上昇して安定化することが望ましい。上記特徴によれば、製造時及び製造直後の粘度より製造後24時間後の粘度が高くなるため、上記の製造時と保存時において求められる粘度を両立することができる。
【0009】
また、本発明の酸化染料含有組成物の一実施態様としては、エステル油及び炭化水素油の含有量の和は、2.5質量%以下であることを特徴とする。
この特徴によれば、高温及び低温における乳化安定性が一層高まるという効果を奏する。
【0010】
また、本発明の酸化染料含有組成物の一実施態様としては、成分(B)は、不飽和炭化水素基を有することを特徴とする。
この特徴によれば、低温環境下における乳化粒子の粗大化を抑制することができるため、低温における乳化安定性が一層高まるという効果を奏する。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の酸化染毛剤は、上記の本発明の酸化染料含有組成物からなる第1剤と、酸化剤を含有する第2剤と、を備えることを特徴とする。
この酸化染毛剤によれば、第1剤として、塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物において、様々な温度においても乳化安定性に優れるため、様々な環境下での保存が可能な酸化染毛剤を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塩が付加された酸化染料を含有する酸化染料含有組成物において、さまざまな温度においても優れた乳化安定性を有する酸化染料含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を含めて説明する。
[酸化染料含有組成物]
本発明の酸化染料含有組成物は、下記(A)~(E)成分を含有する、乳化状の酸化染料含有組成物であることを特徴とする。
(A)塩が付加された酸化染料
(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
(C)カチオン性界面活性剤
(D)高級アルコール
(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤
【0014】
本発明の酸化染料含有組成物は、乳化状の酸化染料含有組成物である。本発明の乳化状とは、水中油型乳化物であり、水溶性の液体中に、脂溶性の物質の乳化粒子が分散した状態である。なお、本発明の乳化状の酸化染料含有組成物は、水中油型乳化物を形成すればよく、例えば、O/W/O乳化物、W/O/W乳化物などの多重乳化物でもよい。好ましくは、水中油型乳化物である。また、本発明の酸化染料含有組成物は、乳液状、クリーム状又はゲル状であってもよい。本発明の酸化染料含有組成物は、乳化安定性に優れるという観点から、粘度の高いクリーム状又はゲル状であることが好ましく、特にクリーム状であることが好ましい。
【0015】
また、酸化染料含有組成物の25℃における粘度は、特に制限されないが、好ましくは1000mPa・s以上100000mPa・s以下である。下限として、より好ましくは3000mPa・s以上であり、更に好ましくは5000mPa・s以上であり、特に好ましくは8000mPa・s以上である。上限として、より好ましくは70000mPa・s以下であり、更に好ましくは50000mPa・s以下である。粘度を高めることにより、分散安定性に優れるという効果を奏する。
なお、粘度の測定方法は、B型粘度計(東機産業社製 TV-10型)を用いて行う。測定条件は、25℃、1分間とし、粘度が5000mPa・s未満の場合には、3号ローターで回転速度12rpmの条件で測定し、粘度が5000~50000mPa・sの場合には、4号ローターで回転速度12rpmの条件で測定し、粘度が50000mPa・sを超える場合には、4号ローターで回転速度6rpmの条件で測定する。ここで、前記の粘度範囲ごとの各測定条件において測定結果が異なる場合には、粘度が高い方の測定結果を採用する。また、製造後に経時的に粘度が変化する場合には、酸化染料含有組成物の25℃における粘度とは、製造後24時間以後の粘度である。
【0016】
製造直後の粘度は、特に制限されないが、好ましくは2000mPa・s以上、10000mPa・s以下であり、より好ましくは3000mPa・s以上、8000mPa・s以下である。製造時や製造直後の粘度が低いと、乳化機の撹拌効率が良くなり、均一混合性に優れるという効果や、乳化機用のタンクから保管用のタンクへの移送速度が速くなり、作業効率が向上するという効果や、洗浄水で洗い流しやすく、洗浄操作性に優れるという効果がある。また、チューブ等に充填する際には、粘度が高い場合には、充填機に空気の噛み込みが生じやすく充填量が不安定になるが、粘度が低い場合には、このような問題もなく、充填性に優れるという効果もある。
【0017】
次に、本発明の酸化染料含有組成物に使用する各成分について、詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「ポリオキシエチレン」、「ポリオキシプロピレン」等に続くカッコ内の数字は、その付加モル数を示している。また、「アルキル」に続くカッコ内の数字は、脂肪酸鎖の炭素数を示している。
【0018】
<(A)塩が付加された酸化染料>
酸化染料は、酸化剤により酸化重合して発色する染料である。酸化染料には、染料中間体とカプラーがあり、染料中間体は、自身の酸化により発色する物質であり、カプラーは、染料中間体との組み合わせにより種々の色調となる物質である。
【0019】
染料中間体は、主としてo-又はp-のフェニレンジアミン類あるいはアミノフェノール類である染料先駆物質であり、通常、それ自体は無色か又は弱く着色した化合物である。
具体的には、p-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン(p-トルイレンジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール、2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノール等が例示される。染料中間体は、所望する毛髪の色調に応じて1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0020】
カプラーは、主としてm-のジアミン類、アミノフェノール類、ジフェノール類の塩が挙げられる。具体的には、m-アミノフェノール、5-アミノ-o-クレゾール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾール、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸、ハイドロキノン、α-ナフトール、フェニルメチルピラゾロン、3,3’-イミノジフェニール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、タンニン酸等が例示される。カプラーは、所望する毛髪の色調に応じて1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0021】
塩が付加された酸化染料には、塩が付加された染料中間体及び塩が付加されたカプラーが含まれる。酸化染料に付加される塩としては、有機酸の付加塩、無機酸の付加塩が挙げられる。より具体的には、例えば、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩等が挙げられる。これらの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、染毛力に優れるという観点から、好ましくは硫酸塩、塩酸塩であり、特に好ましくは硫酸塩である。また、硫酸塩は、様々な温度(常温、高温、低温)において乳化安定性を低下しやすいため、本発明の効果をより一層発揮することができる。
【0022】
酸化染料含有組成物中における塩が付加された酸化染料の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.01~20質量%である。下限値としては、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは0.7質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上である。上限値としては、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
(A)成分の含有量を0.01質量%以上とすることにより、優れた染毛性を得ることができる。また、乳化安定性を向上するという本発明の効果をより一層発揮することができる。一方、(A)成分の含有量を20質量%以下とすることにより、乳化安定性を向上することができる。
【0023】
なお、本発明の酸化染料含有組成物は、(A)塩が付加された酸化染料以外の酸化染料を含有してもよい。
酸化染料含有組成物中における(A)塩が付加された酸化染料以外の染料中間体の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.02~10質量%である。下限値としては、より好ましくは0.1質量%以上であり、特に好ましくは0.2質量%以上である。上限値としては、より好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは4質量%以下である。
【0024】
酸化染料含有組成物中における(A)塩が付加された酸化染料以外のカプラーの含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.02~10質量%である。下限値としては、より好ましくは0.1質量%以上であり、特に好ましくは0.2質量%以上である。上限値としては、より好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは4質量%以下である。
【0025】
酸化染料含有組成物中における酸化染料の総含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.5~40質量%である。下限値としては、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは2質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上である。上限値としては、より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。なお、酸化染料の総含有量とは、染料中間体、カプラー及びその塩のすべての総含有量である。
【0026】
また、酸化染料の総含有量に対する(A)成分の含有量の比((A)成分の含有量/酸化染料の総含有量)は、特に制限されないが、例えば、0.005~1である。下限値としては、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.05以上であり、更に好ましくは0.1以上であり、特に好ましくは0.15以上である。(A)成分を多く含有する場合、乳化安定性を向上するという本発明の効果がより一層発揮される。
【0027】
<(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤>
付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤は、親水基としてポリオキシエチレン鎖を有し、疎水基として炭化水素基を有する界面活性剤であり、ポリオキシエチレンの付加モル数が60以上のものである。ポリオキシエチレンの付加モル数は、好ましくは70以上であり、より好ましくは80以上であり、更に好ましくは90以上であり、特に好ましくは100以上である。
この界面活性剤(B)は、一分子中に複数のポリオキシエチレン鎖を有していてもよい。なお、一分子中に複数のポリオキシエチレン鎖を有する場合には、ポリオキシエチレンの付加モル数とは、単一のポリオキシエチレン鎖における付加モル数を意味する。
また、疎水基は、ポリオキシエチレン鎖の両末端又は片末端のいずれに結合してもよい。
【0028】
付加モル数が60以上であると、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が向上するという効果がある。これは、乳化粒子の周囲に付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖の層が形成され、塩が付加された酸化染料の乳化を破壊する作用を抑制していると推察される。
【0029】
なお、親水基としては、上記付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖以外の親水基を有していてもよい。例えば、カチオン性又はアニオン性のイオン性の親水基、付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖以外のノニオン性の置換基が挙げられる。好ましくは、ノニオン性の置換基のみを有するノニオン性界面活性剤である。また、乳化粒子の周囲に良好なポリオキシエチレン鎖の層を形成するという観点から、付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖のみを有するノニオン性界面活性剤であることが特に好ましい。
【0030】
疎水基は、炭化水素基である。炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、例えば、6~40である。下限値としては、好ましくは8以上であり、より好ましくは12以上であり、更に好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。上限値としては、好ましくは30以下であり、より好ましくは24以下であり、更に好ましくは22以下であり、特に好ましくは20以下である。
【0031】
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、環式炭化水素基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基又はアルキレン基であり、より好ましくは、アルキル基である。アルキル基を有する場合、乳化粒子の周囲にポリオキシエチレン鎖が密に配置されるため、乳化安定性を高める効果がある。
【0032】
また、炭化水素基は、不飽和炭化水素基であることが好ましい。不飽和炭化水素基の不飽和結合は、二重結合でも、三重結合でもよいが、酸化安定性に優れるという観点から、二重結合であることが好ましい。疎水基に不飽和炭化水素基を含有することにより、低温環境下で保存した際に、疎水基の結晶化が抑制されるため、乳化粒子の粗大化を抑制するという効果がある。
【0033】
(B)成分の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン(100)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油などが挙げられる。特に好ましくは、ポリオキシエチレン(100)オレイルエーテルである。
【0034】
なお、炭化水素基は、複数の置換基を有するものでもよい。また、炭化水素基は、炭素以外の原子を含むものでもよい。炭素以外の原子としては、例えば、窒素、硫黄、ケイ素などが挙げられる。
【0035】
また、疎水基として、炭化水素基以外の疎水基を有していてもよい。その他の疎水基としては、例えば、シロキサン基などが挙げられる。
【0036】
(B)成分のHLB(hydrophile-lipophile balance)は、特に制限されないが、好ましくは12以上である。下限値としては、より好ましくは14以上であり、更に好ましくは16以上であり、特に好ましくは18以上である。
【0037】
なお、HLBは、W.C.Griffinによって考えられ、非イオン性界面活性剤に対して与えられた数値であり、非イオン性界面活性剤の親油基(アルキル基)と親水基(酸化エチレン鎖)との強さのバランスを数字で表したものである。HLB値は、乳化法から算出した実測値が用いられる(「ハンドブック-化粧品・製剤原料-」日光ケミカルズ株式会社(昭和52年2月1日改訂版発行)参照)。実測HLB値の測定には、界面活性剤の標準物質としてモノステアリン酸ソルビタン(例えば日光ケミカルズ社製のNIKKOL SS-10、HLB値4.7)とモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(例えば日光ケミカルズ社製のNIKKOL TS-10、HLB値14.9)を組み合わせて使用する。被乳化物には流動パラフィンを使用する。なお、流動パラフィンは種類による又はロットによる変動が考えられる場合は、その都度測定する。流動パラフィンを上記2種類の界面活性剤で乳化し、最適な界面活性剤の割合を求め、流動パラフィンの所要HLB値(乳化されるHLB値)を求める。計算式は数式(1)に示される。
【0038】
【0039】
通常流動パラフィンの所要HLB値は、種類及びロットにもよるが10.1~10.3程度である。次に未知の界面活性剤のHLBの測定は、所要HLB値を求めた流動パラフィンを用いて測定する。未知の界面活性剤が親水性であればモノステアリン酸ソルビタンと組み合わせ、未知の界面活性剤が疎水性であればモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと組み合わせて、上記流動パラフィンを乳化し、安定性のあるところの最適割合を求め、未知の界面活性剤のHLB値をxとして上記数式(1)に当てはめて算出する。
【0040】
酸化染料含有組成物中における(B)成分の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.01~20質量%である。下限値としては、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは0.7質量%以上であり、特に好ましくは1.0質量%以上である。上限値としては、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
(B)成分の含有量が、0.01~20質量%であると、乳化粒子の周囲にポリオキシエチレン鎖の層を形成して、乳化安定性を向上することができる。
【0041】
<(C)カチオン性界面活性剤>
カチオン性界面活性剤は、水に溶解してイオン解離をする親水基が陽イオンとなる界面活性剤である。
例えば、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩類、アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩、アーコベル型3級アミン塩等のアミン塩類、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリウム塩等の環式4級アンモニウム塩類、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0042】
好ましくは、アルキル4級アンモニウム塩類であり、更に好ましくは、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩であり、特に好ましくは、モノアルキル型4級アンモニウム塩である。
【0043】
モノアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(28)トリメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレン(2)オレイルメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレンステアリルメチルアンモニウム、塩化ポリオキシエチレン(1)ポリオキシプロピレン(25)ジエチルメチルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム等が挙げられる。好ましくは、塩化アンモニウム塩であり、より好ましくは塩化ステアリルトリメチルアンモニウムである。
【0044】
モノアルキル型4級アンモニウム塩のアルキル基は、特に制限されないが、例えば、炭素数6~40のアルキル基である。下限値としては、好ましくは8以上であり、より好ましくは12以上であり、更に好ましくは16以上であり、特に好ましくは18以上である。上限値としては、好ましくは35以下であり、より好ましくは30以下であり、更に好ましくは28以下であり、特に好ましくは24以下である。この範囲とすることにより、常温における乳化安定性を向上するという本発明の効果を一層発揮することができる。さらに、炭素数20以上とすることにより、低温における乳化粒子の粗大化を抑制するという効果を高めることができる。
【0045】
ジアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ジアルキル(12~15)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(14~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0046】
酸化染料含有組成物中におけるカチオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.001~10質量%である。下限値として、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、特に好ましくは0.8質量%以上である。上限値として、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以下である。カチオン性界面活性剤の含有量を、上記範囲に調整することにより、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が一層高まるという効果を奏する。
【0047】
酸化染料含有組成物中において、(C)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の比((B)成分の含有量/(C)成分の含有量)は、特に制限されないが、例えば、0.5~5である。下限値として、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.9以上であり、更に好ましくは1.1以上であり、特に好ましくは1.2以上である。上限値としては、好ましくは4.5以下であり、特に好ましくは4以下である。
含有量比(B)/(C)が0.5~5の範囲であると、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が一層高まるという効果を奏する。
【0048】
<(D)高級アルコール>
高級アルコールは、炭化水素に置換基として水酸基を有する化合物である。水酸基の数は、特に制限されず、複数の水酸基を有する多価アルコールでもよいが、好ましくは一価アルコールである。また、水酸基以外の他の置換基を有していてもよい。
また、炭化水素は、飽和炭化水素および不飽和炭化水素のいずれでもよい。
【0049】
炭化水素の炭素数は、特に制限されないが、例えば、8~40である。下限値としては、好ましくは10以上であり、より好ましくは12以上であり、更に好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。上限値としては、好ましくは35以下であり、より好ましくは30以下であり、更に好ましくは28以下であり、特に好ましくは24以下である。この範囲とすることにより、常温における乳化安定性を向上するという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0050】
高級アルコールの具体例としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、フィトステロール、コレステロール等が挙げられる。
【0051】
酸化染料含有組成物中における高級アルコールの含有量は、特に制限されないが、例えば、1~20質量%である。下限値として、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは6質量%以上であり、特に好ましくは7質量%以上である。上限値として、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは16質量%以下であり、更に好ましくは14質量%以下であり、特に好ましくは12質量%以下である。この範囲とすることにより、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性を向上するという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0052】
酸化染料含有組成物において、(D)成分として、(d1)炭素数18以上の高級アルコールを含有することが好ましく、更には、(d1)炭素数18以上の高級アルコール及び(d2)炭素数16以下の高級アルコールの両方を含有することが好ましい。
炭素数18以上の高級アルコールとしては、例えば、好ましくはステアリルアルコール、アラキルアルコール及びベヘニルアルコール等であり、特に好ましくはステアリルアルコールである。炭素数16以下の高級アルコールとしては、好ましくは、セチルアルコールである。
(d1)炭素数18以上の高級アルコールを含有すると、高温における乳化安定性が向上するという効果がある。また、(d1)炭素数18以上の高級アルコールと、(d2)炭素数16以下の高級アルコールを併用すると、高温及び低温における乳化安定性が向上するという効果がある。
【0053】
前記(d1)成分の含有量に対する前記(d2)成分の含有量の比((d2)の含有量/(d1)の含有量)は、特に制限されないが、例えば、0.1~10である。下限値としては、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上であり、更に好ましくは0.35以上であり、特に好ましくは0.4以上である。上限値としては、好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下であり、更に好ましくは4以下であり、特に好ましくは3以下である。この範囲であると、高温及び低温における乳化安定性が特に優れるという効果がある。
【0054】
<(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤>
付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤は、親水基としてポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤であり、ポリオキシエチレンの付加モル数が15以下のものである。ポリオキシエチレンの付加モル数の下限値は、好ましくは4以上であり、上限値は、好ましくは12以下であり、より好ましくは10以下であり、更に好ましくは8以下であり、特に好ましくは6以下である。
この界面活性剤(E)は、一分子中に複数のポリオキシエチレン鎖を有していてもよい。なお、一分子中に複数のポリオキシエチレン鎖を有する場合には、ポリオキシエチレンの付加モル数とは、単一のポリオキシエチレン鎖における付加モル数を意味する。
また、疎水基は、ポリオキシエチレン鎖の両末端又は片末端のいずれに結合してもよい。
【0055】
付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を含有すると、様々な温度(常温、高温、低温)における乳化安定性が向上するという効果がある。特に、ポリオキシエチレン鎖の付加モル数が10以下の場合には、高温と低温の乳化安定性がさらに向上するという効果を奏する。これは、乳化粒子の周囲に形成された付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖の層が、(E)成分によって補強され、塩が付加された酸化染料の乳化を破壊する作用を抑制していると推察される。
【0056】
なお、親水基としては、上記付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖以外の親水基を有していてもよい。例えば、カチオン性又はアニオン性のイオン性の親水基、付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖以外のノニオン性の置換基が挙げられる。好ましくは、ノニオン性の置換基のみを有するノニオン性界面活性剤である。また、乳化粒子の周囲に良好なポリオキシエチレン鎖の層を形成するという観点から、付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖のみを有するノニオン性界面活性剤であることが特に好ましい。
【0057】
疎水基としては、乳化粒子の表面にポリオキシエチレン鎖を配置するための作用を有するものであれば、その構造は特に制限されないが、例えば、炭化水素基、シロキサン基などが挙げられる。また、疎水基における置換基の数は、特に制限されず、例えば、アルキル基、アルキレン基などが挙げられる。好ましくは、アルキル基である。アルキル基を有する場合、乳化粒子の周囲にポリオキシエチレン鎖が密に配置されるため、乳化安定性を高める効果がある。
【0058】
炭化水素基の構造は、特に制限されず、鎖式炭化水素基でも、環式炭化水素基でもよい。また、炭素以外の原子を含むものでもよい。炭素以外の原子としては、例えば、窒素、硫黄、ケイ素などが挙げられる。また、炭化水素基は、どのような置換基を有していてもよい。
【0059】
炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、例えば、6~40である。下限値としては、好ましくは8以上であり、より好ましくは12以上であり、更に好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。上限値としては、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、更に好ましくは24以下であり、特に好ましくは22以下である。
【0060】
また、炭化水素基は、不飽和炭化水素基でもよい。不飽和炭化水素基の不飽和結合は、二重結合でも、三重結合でもよいが、酸化安定性に優れるという観点から、二重結合であることが好ましい。
【0061】
(E)成分のHLB(hydrophile-lipophile balance)は、特に制限されないが、好ましくは16以下である。また、下限値としては、好ましくは3以上である。なお、HLB値は、上述した乳化法から算出した実測値である。
【0062】
(E)成分の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン(5.5)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(15)セチルエーテルなどが挙げられる。
【0063】
酸化染料含有組成物中における(E)成分の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.001~20質量%である。下限値としては、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。上限値としては、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。
(E)成分の含有量が、0.001~20質量%であると、乳化粒子の周囲に形成されたポリオキシエチレン鎖の層を強化して、乳化安定性を向上することができる。
【0064】
(B)成分と(E)成分は、併用することにより相乗的に乳化を安定化することが可能である。(B)成分と(E)成分の合計の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.01~40質量%である。下限値としては、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上である。上限値としては、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは4質量%以下である。
【0065】
また、(E)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の比((B)成分の含有量/(E)成分の含有量)は、特に制限されないが、例えば、0.01~100である。下限値としては、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.05以上であり、更に好ましくは0.1以上であり、特に好ましくは0.15以上である。上限値としては、好ましくは50以下であり、より好ましくは30以下であり、更に好ましくは20以下であり、特に好ましくは15以下である。この範囲であると、乳化安定性が特に優れるという効果がある。
【0066】
また、(C)成分と(E)成分の含有量を調整することにより、酸化染料含有組成物の粘度を制御することができる。具体的には、(E)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の比((C)成分の含有量/(E)成分の含有量)を0.5以上とすることにより、製造後24時間後の粘度が上昇して安定化するため、製造時や製造直後において、撹拌の均一混合性、移送などの操作性、充填性、洗浄容易性に優れ、かつ、保存時における分散安定性の両方の効果を得ることができる。(E)成分の含有量に対する(C)成分の含有量の比の下限値は、好ましくは2以上であり、更に好ましくは4以上である。また、上限値は、好ましくは10以下であり、更に好ましくは9以下であり、特に好ましくは8以下である。
【0067】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル>
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンを脱水縮合して得られたポリグリセリン鎖に対して、脂肪酸をエステル結合した化合物であり、ノニオン性界面活性剤に分類される。本発明の酸化染料含有組成物において、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することにより、低温環境下における乳化粒子の粗大化を抑制することができるため、低温環境下においても優れた乳化安定性を有するという効果を奏する。
【0068】
ポリグリセリン鎖の平均モル数は、特に制限されないが、例えば、1~40である。下限として、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、特に好ましくは7以上である。上限として、好ましくは30以下であり、より好ましくは20以下であり、更に好ましくは15以下であり、特に好ましくは13以下である。
【0069】
ポリグリセリンにエステル結合する脂肪酸は、炭化水素に置換基としてカルボキシル基を有する化合物である。なお、カルボキシル基以外の他の置換基を有していてもよい。例えば、水酸基を有するヒドロキシカルボン酸でもよい。
また、炭化水素は、飽和炭化水素および不飽和炭化水素のいずれでもよい。
【0070】
炭化水素の炭素数は、特に制限されないが、例えば、8~40である。下限値としては、好ましくは10以上であり、より好ましくは12以上であり、更に好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。上限値としては、好ましくは35以下であり、より好ましくは30以下であり、更に好ましくは24以下であり、特に好ましくは22以下である。
【0071】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化度(ポリグリセリンの有する水酸基に対して脂肪酸がエステル結合している割合(%))は、特に制限されないが、例えば、10~70%である。下限値としては、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上である。上限値としては、好ましくは60%以下であり、より好ましくは50%以下である。
【0072】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、特に制限されないが、例えば、10以下であり、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。なお、HLB値は、上述した乳化法から算出した実測値である。
【0073】
酸化染料含有組成物中におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、特に制限されないが、例えば、0.001~20質量%である。下限値としては、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。上限値としては、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。
(B)成分とポリグリセリン脂肪酸エステルを併用すると、低温環境下においても優れた乳化安定性を有するという効果をより一層発揮することができる。また、染毛力を高め、毛髪を濃く染めることができるという効果(濃染効果)も得ることができる。
【0074】
<その他のノニオン性界面活性剤>
本発明の酸化染料含有組成物は、その他のノニオン性界面活性剤として、上記(B)成分、(E)成分、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外のノニオン性界面活性剤を含有してもよい。その他のノニオン性界面活性剤を含有することにより、乳化粒子の周囲に形成されたポリオキシエチレン鎖の層を強化することができる。
【0075】
その他のノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、モノグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、アルキルポリグルコシド類等が挙げられる。
【0076】
酸化染料含有組成物中におけるノニオン性界面活性剤としては、異なるHLB値を有する2種以上のものを含有することが好ましい。
異なるHLB値を有するノニオン性界面活性剤としては、親水性のノニオン性界面活性剤と、親油性のノニオン性界面活性剤からなる組み合わせが好ましく、HLB値として、14未満のノニオン性界面活性剤と、14~20のノニオン性界面活性剤とからなる組み合わせがより好ましい。
なお、HLB値は、上述した乳化法から算出した実測値である。
【0077】
酸化染料含有組成物中におけるノニオン性界面活性剤の総含有量は、特に制限されないが、例えば、0.01~40質量%である。下限値としては、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上である。上限値としては、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは4質量%以下である。
【0078】
エステル油は、脂肪酸とアルコールとの脱水反応によって得られる化合物である。例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルへキシル、エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、脂肪酸(C10-30)(コレステリル/ラノステリル)、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ラノリン誘導体等が挙げられる。
【0079】
<炭化水素油>
炭化水素油は、炭素と水素よりなる化合物である。例えば、流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、イソパラフィン類、オゾケライト、セレシン、ポリエチレン、α-オレフィンオリゴマー、ポリブテン、合成スクワラン、スクワレン、水添スクワラン、リモネン、テレビン油等が挙げられる。
【0080】
酸化染料含有組成物中におけるエステル油及び炭化水素油の含有量の和は、2.5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは2.0質量%以下であり、更に好ましくは1.5質量%以下であり、特に好ましくは1.0質量%以下である。
エステル油及び炭化水素油の含有量の和を2.5質量%以下とすることにより、高温及び低温における乳化安定性が一層高まるという効果を奏する。
【0081】
<その他の油性成分>
本発明の酸化染料含有組成物は、その他の油性成分として、(D)成分、エステル油、炭化水素油以外の油性成分を含有してもよい。その他の油性成分は、例えば、油脂、ロウ類、高級脂肪酸、シリコーン油、フッ素油等が例示される。これらの油性成分から、1種又は2種以上を選んで用いることができる。油性成分を含有することにより、染毛性を向上することができる。
【0082】
油脂は、トリグリセリドすなわち脂肪酸とグリセリンとのトリエステルである。例えば、オリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0083】
ロウ類は、高級脂肪酸と高級アルコールのエステルであって、天然物から得られるものである。例えば、ミツロウ(蜜蝋)、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン、鯨ロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ、モンタンロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、カポックロウ、セラックロウ等が挙げられる。
【0084】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0085】
シリコーン油は、有機基のついたケイ素と酸素が化学結合により交互に連なった合成高分子である。例えば、ジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(INCI名:ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650~10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0086】
上記のうち、アミノ変性シリコーンとしては、例えば、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(INCI名:トリメチルシリルアモジメチコン)等が挙げられる。
【0087】
酸化染料含有組成物中における油性成分の総含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.2~60質量%である。下限値としては、より好ましくは1質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上である。上限値としては、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。
【0088】
<その他の成分>
本発明の酸化染料含有組成物は、上記成分以外にも、必要に応じて以下の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、アルカリ剤、直接染料、油性成分、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、無水亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム等の防腐剤、エタノール等の有機溶剤、ソルビトール、マルトース等の糖類、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子、ポリ塩化ジメチルジメチレンピペリジニウム液、塩化ジアリルジメチルアンモニウム・ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン性ポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、並びにアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル等の共重合体等のアニオン性ポリマー、アクリルアミド・アクリル酸塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体等の両性ポリマー、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の上記(D)成分以外の多価アルコール、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウム二水塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム液等のキレート剤、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩、育毛成分、植物抽出物、生薬抽出物、アミノ酸・ペプチド、尿素、ビタミン類、香料、及び紫外線吸収剤が挙げられる。
【0089】
<アルカリ剤>
アルカリ剤は、毛髪を膨張させて、染料や酸化剤の浸透を促進する作用を有するものである。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、アンモニウム塩、アルカノールアミン、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、リン酸塩、塩基性アミノ酸、水酸化物等が例示される。具体的には、アンモニウム塩としては塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等が例示され、アルカノールアミンとしてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、イソプロピルアミン等が例示され、ケイ酸塩としてはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が例示され、炭酸塩としては炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸グアニジン等が例示され、炭酸水素塩としては炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が例示され、メタケイ酸塩としてはメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が例示され、リン酸塩としてはリン酸二アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が例示され、塩基性アミノ酸としてはアルギニン、リジン及びそれらの塩等が例示され、水酸化物としては水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が例示される。これらの中でも、アンモニア及びアルカノールアミンが好ましい。
【0090】
酸化染料含有組成物中におけるアルカリ剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.02~40質量%である。下限値としては、より好ましくは0.2質量%以上であり、上限値としては、好ましくは30質量%以下である。
【0091】
<直接染料>
直接染料は、色を有する化合物であり、毛髪に付着又は浸透して染毛する染料である。例えば、酸性染料、塩基性染料、天然染料、ニトロ染料、HC染料、分散染料等がある。これら直接染料は単独で配合しても良く、組み合わせて配合しても良い。
【0092】
上記酸性染料としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色227号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色401号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、かっ色201号、黒色401号等を例示できる。
【0093】
上記塩基性染料としては、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 47、Basic Blue 75、Basic Blue 99、Basic Blue 124、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Orange 31、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Basic Yellow 87等を例示できる。
【0094】
上記天然染料としては、クチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素、ヘナ等を例示できる。
【0095】
上記ニトロ染料としては、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩等を例示できる。
【0096】
上記HC染料としては、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等を例示できる。
【0097】
上記分散染料としては、Disperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等を例示できる。
【0098】
酸化染料含有組成物中における直接染料の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.002~20質量%である。下限値としては、より好ましくは0.02質量%以上であり、上限値としては、より好ましくは6質量%以下である。
【0099】
<アニオン性界面活性剤>
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが例示される。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンは、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンのいずれであってもよい。
【0100】
より具体的には、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸及びその塩、N-ラウロイルグルタミン酸塩類(ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等)、N-ラウロイルメチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、高級脂肪酸であるラウリン酸、ミリスチン酸及びこれらの高級脂肪酸の塩が例示され、1又は2種以上を使用することができる。
【0101】
酸化染料含有組成物中におけるアニオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.002~20質量%である。下限値としては、より好ましくは0.02質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。上限値としては、より好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは6質量%以下である。
【0102】
<両性界面活性剤>
両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム(ラウロアンホ酢酸Na)、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシエトキシエチル-N’-カルボキシエチルエチレンジアミン二ナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N’-カルボキシメトキシエチル-N’-カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、パーム油脂肪酸アシル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムなどのグリシン型両性界面活性剤;ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミンなどのアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;などが挙げられる。
ベタイン型両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;ラウリルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0103】
酸化染料含有組成物における両性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.002~20質量%である。下限値としては、より好ましくは0.02質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。上限値としては、より好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは6質量%以下である。
【0104】
酸化染料含有組成物のpHは、特に制限されないが、好ましくは7.0~13.0である。下限値としては、より好ましくは7.5以上であり、特に好ましくは8.0以上である。上限値としては、より好ましくは12.0以下であり、特に好ましくは11.0以下である。第1剤のpHをアルカリ性とすることにより、強い中和反応を実施することができる。また、染毛性を高めることができる。
pHの測定方法としては、HORIBA社製 pH-METER F-22等のpHメータ等を用いて測定することができ、測定値は溶液の1%水溶液における値である。
【0105】
[酸化染毛剤の第2剤]
本発明の酸化染料含有組成物は、酸化染毛剤の第1剤として利用することができる。酸化染毛剤は、第1剤として本発明の酸化染料含有組成物と、酸化剤を含有する第2剤を備えることを特徴としている。
酸化染毛剤の第2剤とは、酸化染料を酸化して発色させる作用や、毛髪の内部のメラニンを分解する作用等を有する剤である。
【0106】
<酸化剤>
酸化剤は、酸化染料を酸化して発色させる作用や、毛髪の内部のメラニンを分解する作用を有する主成分である。酸化剤は、酸化力を有する物質であればよく、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物、過酢酸及びその塩、過ギ酸及びその塩、過マンガン酸塩、臭素酸塩等が例示される。これらの中でも、過酸化水素が好ましい。また、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を酸化助剤として含有してもよい。
【0107】
第2剤における酸化剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.2~30質量%である。下限値としては、より好ましくは2質量%以上であり、上限値としては、より好ましくは18質量%以下である。酸化剤として過酸化水素を含有する場合、その安定性を向上させる安定化剤として、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸、スズ酸ナトリウム、リン酸、クエン酸等を配合することが好ましい。
【0108】
<その他の成分>
第2剤は、上記酸化剤以外にも、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。第2剤のその他の成分としては、上記酸化染料含有組成物に用いられるすべての成分((A)~(E)成分、ポリグリセリン脂肪酸エステル、その他のノニオン性界面活性剤、エステル油、炭化水素油、その他の油性成分、その他の成分等)と同等のものを使用することができる。
【0109】
第2剤のpHは、特に制限されないが、好ましくは1.0~6.5である。下限値としては、より好ましくは1.5以上であり、特に好ましくは2.0以上である。上限値としては、より好ましくは6.0以下であり、特に好ましくは5.5以下である。第2剤のpHを酸性とすることにより、強い中和反応を実施することができる。
測定値は溶液の1%水溶液における値である。
【0110】
[酸化染毛剤]
酸化染毛剤は、第1剤として酸化染料含有組成物と、酸化剤を含む第2剤を備えてなるものである。酸化染毛剤は、第1剤と第2剤からなる2剤式のものが代表的であるが、3剤以上からなる多剤式であってもよい。3剤式としては、アルカリ剤や染料を第1剤や第2剤と異なる剤に含有させてもよく、毛髪美容液等の剤や、増粘剤等の剤を追加してもよい。
【0111】
各剤を混合後の酸化染毛剤のpHは、特に制限されないが、好ましくは5.0~11.
0である。下限値としては、より好ましくは6.0以上であり、更に好ましくは7.0以上である。上限値としては、より好ましくは10.0以下であり、更に好ましくは9.5以下である。
測定値は、酸化染料含有組成物及び第2剤の混合物の1%水溶液における値である。
【0112】
第1剤と第2剤は、それぞれ各容器に充填され、毛髪等に適用する際に混合して使用する。容器は、液状、乳液状の場合は、プラスチック容器を使用することができ、クリーム状やゲル状の場合には、アルミチューブやエアゾールフォーマ等の容器を使用することができる。エアゾールフォーマから吐出することにより、各剤に気泡を含ませることができるため、粘度が低下し、毛髪等への塗布性を向上することができる。また、毛髪等への適用前に、ノンエアゾールフォーマやシェイカーにより起泡させて、泡状の酸化染毛剤として毛髪等へ塗布してもよい。
【実施例】
【0113】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。
[酸化染料含有組成物の調製]
表1~3に示す組成の乳化状の酸化染料含有組成物を下記の方法で調製し、「乳化安定性」を以下に示す評価方法で評価した。評価結果は表の下段に示した。
【0114】
<酸化染料含有組成物の調製方法>
恒温槽で80℃に保たれた状態の容器に、油性成分及び界面活性剤を加え、3連式乳化試験機(型番ET-3A;日光ケミカルズ社製;H7製)により200rpmの回転速度で乳化を行った。乳化後、50rpmの回転速度で室温(25℃)まで冷却した後、アルカリ剤、酸化染料及びその他の成分を加え、上記と同様の3連式乳化試験機により50rpmの回転速度で撹拌、混合を行い、乳化状の酸化染料含有組成物を調製した。
【0115】
<常温における乳化安定性の評価方法>
上記で調製した酸化染料含有組成物を、4号規格瓶に30グラム量り取り、中蓋及び蓋をして常温(25℃)にて、2ヶ月静置し、以下の基準で評価を行った。
(評価基準)
○:分離なし。
×:規格瓶の底から3mm以上分離している。
【0116】
<高温における乳化安定性の評価方法>
上記で調製した酸化染料含有組成物を、4号規格瓶に30グラム量り取り、中蓋及び蓋をして60℃にて、1週間静置し、以下の基準で評価を行った。
なお、乳化粒子径は、システム偏光顕微鏡「OLYMPUS BX51-33P-O型」(対物レンズ20倍、接眼レンズ10倍)を使用して観察し、無作為に選出した20個の乳化粒子について最長径を測定した。そして、20個の乳化粒子の最長径の平均値を算出し、乳化粒子径とした。
(評価基準)
4:乳化状態が特に良好である(分離状態が、規定瓶の底から5mm未満であり、かつ、乳化粒子径3μm未満)。
3:乳化状態が良好である(分離状態が、規定瓶の底から5mm未満であり、かつ、乳化粒子径3μm以上4μm未満)。
2:乳化状態が普通である(分離状態が、規定瓶の底から5mm未満であり、かつ、乳化粒子径4μm以上5μm未満)。
1:乳化状態が不良である(分離状態が、規定瓶の底から5mm以上であり、もしくは、乳化粒子径5μm以上)。
【0117】
<低温における乳化安定性の評価方法>
上記で調製した酸化染料含有組成物を、4号規格瓶に30グラム量り取り、中蓋及び蓋をして-10℃にて、24時間静置し、上記の「高温における乳化安定性の評価方法」と同様に、乳化安定性を評価した。
【0118】
<粘度上昇の評価方法>
各例の酸化染料含有組成物について、調製直後の粘度と、調製後24時間後の粘度を測定し、製造後24時間後の粘度上昇(調製後24時間後の粘度-調製直後の粘度)を算出した。なお、粘度の測定方法は、B型粘度計(東機産業社製 TV-10型)を用いて行った。測定条件は、25℃、1分間とし、粘度が5000mPa・s未満の場合には、3号ローターで回転速度12rpmの条件で測定し、粘度が5000~50000mPa・sの場合には、4号ローターで回転速度12rpmの条件で測定し、粘度が50000mPa・sを超える場合には、4号ローターで回転速度6rpmの条件で測定した。製造後24時間後の粘度上昇は、以下の評価基準で評価した。
また、常温における乳化安定性の評価において、「×」の評価の場合には、粘度上昇の評価は行わなかった(評価結果には、「-」を付した。)。
(評価基準)
5:10000mPa・s以上
4:8000mPa・s以上10000mPa・s未満
3:5000mPa・s以上8000mPa・s未満
2:3000mPa・s以上、5000mPa・s未満
1:3000mPa・s未満
【0119】
【0120】
表1から、実施例1、2と比較例1~3を対比すると、(B)付加モル数が60以上であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤、(C)カチオン性界面活性剤、及び、(E)付加モル数が15以下であるポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を含有する場合に、常温(25℃)、高温(60℃)、低温(-10℃)における乳化安定性が向上することがわかった。また、実施例1と実施例2を対比すると、(B)成分において、ポリオキシエチレンの付加モル数が大きい場合、又は、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を有する場合に低温における乳化安定性が一層高まることがわかった。また、実施例1と実施例3~5を対比すると、(E)成分の付加モル数が10以下の場合に、高温及び低温における乳化安定性が一層高まることがわかった。
【0121】
【0122】
表2の実施例6~9を見ると、(C)の含有量/(E)の含有量の値を0.5以上に調整することにより、製造後24時間後の粘度が上昇することがわかる。粘度上昇の評価が向上することにより、製造時には粘度が低いため充填性や洗浄性に優れつつ、製品化時には粘度が上昇して分散安定性に優れるという効果がある。
【0123】
【0124】
表3の実施例1、10~13を対比すると、エステル油及び炭化水素油の含有量の和が2.5質量%以下の場合に、高温及び低温における乳化安定性が一層高まることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の酸化染料含有組成物は、酸化染毛剤の第1剤として利用することができる。この酸化染毛剤は、ヒトの頭髪、髭、眉毛、すね毛等の体毛を染色するための染毛剤として利用することができる。その他、ペット等の動物の体毛を染色するために利用してもよい。
また、本発明の酸化染料含有組成物は、美容室、理容室等におけるカラーリング用又はセルフカラーリング用の酸化染毛剤の第1剤として利用することができる。
また、本発明の酸化染料含有組成物は、美容室や理容室等における毛髪の染毛処理方法に利用することができる。