(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびそれを成形して得られる管状成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20240216BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240216BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240216BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240216BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20240216BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20240216BHJP
A47G 21/18 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L67/02
C08K5/10
C08K3/34
C08K5/20
C08J5/00 CFD
A47G21/18
(21)【出願番号】P 2020002213
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019010397
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】國領 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】上田 一恵
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/162046(WO,A1)
【文献】特開2016-084383(JP,A)
【文献】特開2011-052149(JP,A)
【文献】特開2014-156539(JP,A)
【文献】特開2006-136657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)40~75質量%、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(B)15~45質量%、
アジピン酸エステル系可塑剤(C)
1.5~
4.5質量%、タルク(D)3~20質量%およびカルボン酸アミド系離型剤(E)0.1~1質量%を含有し、(A)~(E)の合計が100質量%である樹脂組成物。
【請求項2】
脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(B)としてポリブチレンアジペートテレフタレートを用い、かつ、
アジピン酸エステル系可塑剤(C)としてアジピン酸エステルを用い、かつ、カルボン酸アミド系離型剤(E)としてエルカ酸アミドを用いる請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
試験温度190℃、試験荷重2.16kgfの条件で測定したメルトフローレートが、5~20g/10分である請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
平均粒子径0.5~25μmであるタルクを用いる請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる管状成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状成形体に適したポリ乳酸樹脂樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
管状成形体の一例としては、ストローが挙げられる。ストローなどの管状成形体は通常、ポリエチレン系、ポリスチレン系またはポリプロピレンなどの合成樹脂から構成されているが、近年環境への観点から、このような合成樹脂製のストローに替えて、生分解性の樹脂から構成されたストローの要望が多くなっている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリ乳酸樹脂はバイオマス由来であること、生分解性を有することなど環境対応性において優れているが、その一方で硬く脆い性質があり、ストロー等の管状成形体とした場合、製造時のカッティングや使用時の折り曲げなどにより、ひび割れや破損を生じやすいことが問題となっている。
【0005】
このため、特許文献1ではポリ乳酸に対し、柔軟性を有する他ポリエステル樹脂を含有させ用いることで、ポリ乳酸樹脂の脆さを改善している。しかしながら、このような方法によってもストロー等管状成形体の実用面では問題が残った。
【0006】
すなわち、飲料用ストローとして蓋材を貫通させ、飲料容器にストローを差し込む場合、ポリ乳酸樹脂の柔軟化によってストロー先端が折れ曲がり、差し込みができない等の不具合を生じた。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決し、溶融加工時に切断することなく、連続成形性に優れ、また管状成形体としてカッティングを行った場合割れを生じることを抑制、さらには管状成形体をストローとして用いた場合には、突き刺し性が良好である樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂に対し、特定のポリエステル系樹脂、可塑剤、離型剤、特定のフィラーを所定量含有させることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明に達した。
本発明の要旨は以下の通りである。
【0009】
(1)ポリ乳酸樹脂(A)40~75質量%、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(B)15~45質量%、脂肪族系可塑剤(C)1~5質量%、タルク(D)3~20質量%およびカルボン酸アミド系離型剤(E)0.1~1質量%を含有し、(A)~(E)の合計が100質量%である樹脂組成物。
【0010】
(2)脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(B)としてポリブチレンアジペートテレフタレートを用い、かつ、脂肪族系可塑剤(C)としてアジピン酸エステルを用い、かつ、カルボン酸アミド系離型剤(E)としてエルカ酸アミドを用いる(1)の樹脂組成物。
【0011】
(3)試験温度190℃、試験荷重2.16kgfの条件で測定したメルトフローレートが、5~20g/10分である(1)または(2)の樹脂組成物。
【0012】
(4)平均粒子径0.5~25μmであるタルクを用いる(1)~(3)のの樹脂組成物。
【0013】
(5)(1)から(4)の樹脂組成物を成形してなる管状成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溶融加工時に切断することなく、連続成形性に優れ、また管状成形体としてカッティングを行った場合割れを生じることを抑制した樹脂組成物を提供できる。
【0015】
このような樹脂組成物から得られる管状成形体は、例えばストローとして供する場合、適度な剛性も有するため飲料容器への差し込み時の先端折れ曲がりの問題も解消するものである。
【0016】
なお、本発明の管状成形体を、例えば飲料容器でのストローとして用い、お茶、ジュース等を飲む場合、従来のポリエチレン系、ポリスチレン系またはポリプロピレン等の樹脂で製造されたストローで飲む場合よりも、香味が強く、よりおいしさを味わえることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)を40~75質量%と、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(B)を15~45質量%、タルク(D)を3~20質量%、脂肪族系可塑剤(C)を1~5質量%カルボン酸アミド系離型剤(E)を0.1~1質量%含有するものである。
【0019】
本発明で用いるポリ乳酸樹脂(A)としては、特に限定はされないが、耐熱性、成形性の面からポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体を用いることができる。生分解性、コスト、および、成形加工性の観点からは、ポリ(L-乳酸)を主体とすることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)におけるD体含有量は0~7.0モル%であることが好ましく、0.1~6.0モル%であることがより好ましく、1.0~5.0モル%であることがさらに好ましい。D体含有量が7.0モル%より多い場合、樹脂組成物の成形性が劣ったり、管状成形体(ストロー)とした場合の突き刺し性が低下することがある。
【0020】
ポリ乳酸樹脂(A)として、各種ポリ乳酸を用いることができるが、加工性や性能の点から、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレートが0.3~30g/10分のものを用いることが好ましい。
【0021】
樹脂組成物におけるポリ乳酸樹脂(A)の含有量は60~40質量%である。40質量%未満であると、成形性が劣ったり、突き刺し性が劣ったものとなる。一方、60質量%を超えると、ポリ乳酸樹脂(A)以外の組成の割合が少なくなり、得られる樹脂組成物は、成形性が劣ったり、管状成形体を切断する際に割れを生じることがある。
【0022】
本発明の樹脂組成物には、柔軟性の付与を目的として、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(B)が含有される。脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(B)としては、特に限定はされないが、中でも、ポリブチレンアジペートテレフタレートを用いることが好ましい。ポリブチレンアジペートテレフタレートの市販の具体的な商品を挙げると例えば、BASF社製「エコフレックス」が挙げられる。
【0023】
脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(B)の含有量は15~45質量%であり、20~40質量%であることが好ましく、20~35質量%であることがより好ましい。25質量%未満であると、得られる管状成形体を切断する際に割れを生じることがある。一方、45質量%を超えると、得られる樹脂組成物の成形性が劣ったり、管状成形体(ストロー)とした場合の突き刺し性が低下することがある。
【0024】
本発明で用いる脂肪族系可塑剤(C)としては、特に限定されず、ベンジル[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジn-オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、ジn-ブチルセバケート等のセバシン酸エステル類;ビス(2-エチルヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸エステル類等が挙げられる。脂肪族系可塑剤(C)は、樹脂組成物の結晶化速度を高め、樹脂組成物を用いて管状成形体を得る場合成形性を高めることができる。例えば押出成形時の溶融樹脂に対し適度な粘性を付与し、溶融樹脂が途中で切断することなく連続して引き取ることが可能となる。前記脂肪族系可塑剤(C)の中でも、特に成形性向上効果の高い点で、アジピン酸エステル系可塑剤を用いることが好ましい。アジピン酸エステル系可塑剤は、特にポリ乳酸樹脂(A)との相溶性に優れる可塑剤である。そのため、アジピン酸エステル系可塑剤を用いた場合には、他の可塑剤を用いた場合と比較して、樹脂組成物の成形性を効率よく向上し、優れた管状成形体を得ることができる。アジピン酸エステル系可塑剤としては、ベンジル[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アジペート(商品例、大八化学社製「DAIFATTY-101」)を挙げることができる。
【0025】
樹脂組成物における脂肪族系可塑剤(C)の含有量は、1~5質量%であり、1.5~4.5質量%であることが好ましく、2~4質量%であることがより好ましい。脂肪族系可塑剤(C)の含有量が1質量%未満であると樹脂組成物の成形性が劣ったものとなるばかりか、管状成形体を切断する際に割れを生じたり、突き刺し性が劣ったものとなる。一方5質量%を超えると樹脂組成物としての剛性が不足し、管状成形体の突き刺し性が劣ったものとなる。
【0026】
本発明で用いるタルク(D)は、特に限定はされないが、成形体の外観や成形性向上効果の点から、平均粒子径(以下、粒子径と言うことがある)が0.5~25μmであることが好ましく、1.0~20μmであることがより好ましく、2.0~15μmであることがさらに好ましい。
【0027】
また、本発明の樹脂組成物を管状成形体として用いる場合に、切断する際の割れの抑制と、突き刺し性のバランスを高める観点からは、タルク(D)の平均粒子径は、1.0~5.0μmであることが好ましく、2.0~4.0μmであることがより好ましく、2.5~3.5μmであることがさらに好ましい。
【0028】
市販品を用いる場合には、例えば竹原化学社製「ハイミクロンHE-5」(粒子径1.6μm)、林化成社製「MW-HST」(粒子径4.75μm)、「KHP-125B」(粒子径8.00μm)、「KHP-400B」(粒子径19.50μm)等が挙げられる。
【0029】
なお、タルク(D)の平均粒子径とは、レーザー法粒度分布測定機を用いて、JIS R1629に準拠して測定した粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値から求められる。レーザー法粒度分布測定機としては、例えば、株式会社堀場製作所製「LA920」、株式会社島津製作所製「SALD-2000J」等により測定することができる。
【0030】
樹脂組成物におけるタルク(D)の含有量は、3~20質量%であり、3~18質量%であることが好ましく、4~15質量%であることがより好ましく、4~12質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
タルク(D)の含有量が5質量%未満では樹脂組成物の成形性が劣ったり、管状成形体の突き刺し性が劣ったものとなる。一方20質量%を超えると、得られる樹脂組成物は流動性や成形性が劣るとともに、管状成形体を切断する際に割れを生じる。
【0032】
本発明で用いるカルボン酸アミド系離型剤(E)は、その性状は特に限定はされず、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド等が挙げられるが、タルク(D)と併用することにより成形性向上効果をより優れたものとすることができるため、エルカ酸アミドを用いることが好ましい。エルカ酸アミドの市販の具体的な商品としては、例えば、日本油脂社製「アルフローP-10」が挙げられる。
【0033】
樹脂組成物におけるカルボン酸アミド系離型剤(E)の含有量は、0.1~1質量%であり、0.2~0.8質量%であることが好ましく、0.3~0.6質量%であることがより好ましい。カルボン酸アミド系離型剤(E)の含有量が0.1質量%未満では金型からの離型性を向上させることができず、成形性に優れた樹脂組成物を得ることができない。一方、1質量%を超えて含有すると、得られる管状成形体を切断する際に割れを生じる。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、JIS K7210に準拠して、試験温度190℃、試験荷重2.16kgfの条件で測定したメルトフローレートが、5~20g/10分であることが好ましい。樹脂組成物のメルトフローレートは、8~18g/10分であることがより好ましく、10~16g/10分であることがさらに好ましい。樹脂組成物のメルトフローレートが5g/10分未満であると管状成形体等を成形する際に溶融樹脂の流動性が不足し、加工性が低下することがある。一方20g/10分を超えると管状成形体等を成形する際に溶融樹脂の粘性が不足し、特に押出加工においては成形体が垂れ下がる、薄肉になりすぎ引きちぎられる等の加工不良が生じることがある。
【0035】
本発明の樹脂組成物には必要に応じて、各種添加剤、あるいは、各種樹脂を加えることができる。添加剤としては例えば、滑剤、可塑剤、結晶核剤、ガラス繊維、高強度繊維、酸化防止剤、加水分解防止剤、熱安定剤、耐候材、帯電防止剤、タルク(D)以外の無機充填材、有機充填材、顔料、染料、などが挙げられる。樹脂としては、ポリ乳酸樹脂(A)あるいは脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂(B)のいずれにも該当しない各種ポリエステル系樹脂、ポリグリコール酸系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、などが挙げられる。
【0036】
本発明の樹脂組成物の作製方法としては、特に限定されないが、上記樹脂、添加材を従来よりく知られている一軸押出機、二軸押出機、二軸以上の多軸押出機、ロール混練機、部ラベンダーなどで溶融混練するとよい。スタティックミキサーやダイナミックミキサーを併用することも効果的である。さらに各添加剤をあらかじめマスターバッチとして作製し、ドライブレンドにてストロー作製用成形機に供しても良い。また、ポリ乳酸樹脂(A)の重合時に添加する方法でも良い。
【0037】
管状成形体の作製方法としては、押出機により管状に押し出す一般的な方法を用いることができる。ストローにする場合は、押出後に冷却部分を設け、その後、所定の長さにカットする。
【0038】
本発明の樹脂組成物より得られる管状成形体は、ストローとして要求される、押出成形における連続加工性、すなわち押出樹脂が途中で切断することなく、長時間連続して押出成形ができること、また押出された溶融樹脂を冷却した後、ストロー長さに切断する際、切断面の割れが生じることがない。また、得られた管状成形体は、飲料用ストローとして蓋材を貫通させ、飲料容器にストローを差し込む場合、ストロー先端が折れ曲がり、差し込みができない等の問題を生じることがない。
【0039】
本発明の樹脂組成物より得られる管状成形体は、飲料用のストローとして使用できる以外に、例えば、短く切断して、各種枕、クッションの充填材としても使用ができる。その場合においても切断時の割れを抑制し、管状形状が維持されるため、クッション性を損ねることがない。また、脂肪族系可塑剤とタルクをバランスよく充填することで、適度な剛性と反発性を兼ね備えるため、クッション材として好適に使用が可能である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例および比較例の樹脂組成物の評価に用いた各種特性値の測定方法は次のとおりである。
1.評価方法
(1)メルトフローレート
得られた樹脂組成物の樹脂ペレットを用いた。JIS K7210に準拠して、2.16kg荷重下、温度190℃で測定した(附属書A、表1のD条件)。
(2)成形性
実施例での管状成形体(ストロー)の製造において、冷却装置を備えた押出機を使用して12時間の連続成形を行った。その間、押出機から出て、冷却装置に入るまでの管状溶融樹脂が切れた回数を測定した。切断回数は作業性向上の観点から5回未満出ることが好ましく、3回未満であることがより好ましい。
(3)ストローの割れ性
実施例での管状成形体(ストロー)の製造において、カッターを用い、長さ20cmにカットしたものについて、切断断面を観察し、割れ等が生じていないかを観察した。試験は10回行い、例えば10回中1回割れが生じた場合、表中で「1/10」と表記し、10回中10回割れが生じた場合、「10/10」とし、下記基準にて割れ性の判断をした。
【0041】
〇:割れを全く生じない。
【0042】
△:割れ回数が「1/10」または「2/10」である。実用的には大きな問題とはならない。
【0043】
×:割れ回数が「2/10」よりも多い。実用に値しない。
(4)ストローの突き刺し性
密度0.958g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ60μmの無延伸フィルムを用意し、このフィルムを2枚の円盤の間に挟み込み、しっかりと固定した。2枚の円盤には、径30mmの孔が形成され、この孔にフィルムが露出するようになっている。この状態のフィルムに対して、先端面の角度が60°に形成された管状成形体(ストロー)を垂直に突き刺し、貫通を試みた。管状成形体を突き刺す際の速度(貫通速度)は10m/分、押し込み深さは50mmとした。試験は10本の管状成形体に対して行い、例えば10本中、10本が貫通した場合、表中で「10/10」と表記し、10本中1本が貫通した場合、「1/10」と表記し、下記基準にて割れ性の判断をした。
【0044】
〇:突き刺し貫通本数が「10/10」である。
【0045】
△:突き刺し貫通本数が「9/10」または「8/10」である。実用的には大きな問題とはならない。
【0046】
×:突き刺し貫通本数が「8/10」よりも少ない。実用に値しない。
2.原料
実施例及び比較例に用いた原料は次のとおりである。
(1)ポリ乳酸樹脂
(a):ポリ乳酸(重量平均分子量12万、L体98.6%、D体1.4%)
(b):ポリ乳酸(重量平均分子量18万、L体98.6%、D体1.4%)
(c):ポリ乳酸(重量平均分子量18万、L体88%、D体12%)
(2)脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂
BASF社製ポリブチレンアジペートテレフタレート「エコフレックス」
(3)脂肪族系可塑剤
大八化学社製アジピン酸エステル系可塑剤「DAIFATTY-101」
(4)タルク
TALK1:林化成社製「MW-HST」(平均粒径4.75μm)
TALK2:林化成社製「KHP-125B(平均粒径8.00μm)
TALK3:林化成社製「KHP-400B(平均粒子径19.50μm)
TALK4:竹原化学社製「ハイミクロンHE-5」(平均粒子径1.6μm)
(5)カルボン酸アミド系離型剤
日本油脂社製エルカ酸アミド「アルフローP-10」
実施例1
表1に示した樹脂組成となるよう樹脂原料、添加剤を混合し、二軸の押出機を用い、温度190℃で溶融混練して樹脂組成物ペレットを作製した。得られた樹脂組成物ペレットを乾燥後、一軸押し出し機にチューブ状サーキュラーのダイを備えた管状押出機にて、直径5mm、肉厚0.18mmの管状に押出成形し、冷却装置を通過させた後、カッターを用い、長さ20cmに連続カットして、管状成形体(ストロー)を得て、各種評価を行った。
【0047】
【0048】
実施例2~12、比較例1~8
組成比率を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に試験を行い、各種評価を行った。
【0049】
実施例1~12で得られた樹脂組成物は、本願所定の樹脂組成としたため、成形性に優れ、また得られた管状成形体も切断時に割れることはなく、突き刺し時に先端が折れ曲がることもなかった。
【0050】
比較例1では、ポリ乳酸樹脂の含有量が下限値未満であったため、成形性が劣り、またストロー突き刺し性も劣った。
【0051】
比較例2では、ポリ乳酸樹脂の含有量が上限値を超えたため、成形性が劣り、またストロー割れが多発した。
【0052】
比較例3では、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂の含有量が下限値未満であったため、成形性が劣り、またストロー割れが多発した。
【0053】
比較例4では、脂肪族系可塑剤の含有量が下限値未満であったため、成形性が劣り、ストロー割れが多発した。またストロー突き刺し性も劣った。
【0054】
比較例5では、脂肪族系可塑剤の含有量が上限値を超えたため、成形性が劣り、またストロー突き刺し性も劣った。
【0055】
比較例6では、タルクの含有量が下限値未満であったため、成形性が劣り、またストロー突き刺し性も劣った。
【0056】
比較例7では、タルクの含有量が上限値を超えたため、成形性が劣り、ストロー割れが多発した。
【0057】
比較例8では、カルボン酸アミド系離型剤を含有しなかったため、成形性が劣った。