(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用構造体、非水電解質二次電池用製造装置及び非水電解質二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0583 20100101AFI20240216BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/141 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/664 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/636 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/673 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/618 20210101ALI20240216BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240216BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240216BHJP
【FI】
H01M10/0583
H01M50/105
H01M50/178
H01M50/141
H01M50/664
H01M50/636
H01M50/673
H01M50/618
H01M10/0566
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2020019163
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】507317502
【氏名又は名称】エリーパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】葛島 勇介
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-537835(JP,A)
【文献】特開2011-253797(JP,A)
【文献】特開2011-100634(JP,A)
【文献】特開昭52-145741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
H01M 50/60-50/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極接合体と、
前記電極接合体を収容する外装部材と、
前記外装部材を内部から外部に貫通し、前記電極接合体と接続された外部電極端子と、
前記外装部材に設けられ当該外装部材の内部と外部とを連通させる少なくとも一つの開口部と、
を具備し、
前記開口部に直接、または、前記開口部を包囲するように、筒状部材を有しており、
前記筒状部材は少なくとも一部に雄または雌の継手構造を有しており、
前記開口部は封止部により封止されており、
前記電極接合体は、前記外装部材と前記開口部の前記封止部とにより密封されており、前記外装部材の中には、電解質が入っていな
く、
前記外装部材は、前記開口部と前記電極接合体を収容する収容室との間に接合及び切断可能な領域が設けられている、
ことを特徴とする非水電解質二次電池用構造体。
【請求項2】
前記開口部は開口維持部材を有し、前記開口維持部材は前記筒状部材より筒の径方向内側にあることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用構造体。
【請求項3】
前記封止部は前記開口維持部材に設けられていることを特徴とする請求項
2に記載の非水電解質二次電池用構造体。
【請求項4】
前記封止部は前記開口維持部材の端部が封止部材で覆われている構造であることを特徴とする請求項2
又は3に記載の非水電解質二次電池用構造体。
【請求項5】
前記封止部は前記筒状部材に設けられていることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載の非水電解質二次電池用構造体。
【請求項6】
前記封止部は前記筒状部材の端部が封止部材で覆われている構造であることを特徴とする請求項
5に記載の非水電解質二次電池用構造体。
【請求項7】
前記筒状部材には、前記筒状部材を覆うキャップが着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1~
6の何れか一項に記載の非水電解質二次電池用構造体。
【請求項8】
請求項1~
7の何れか一項に記載の非水電解質二次電池用構造体の前記筒状部材と結合する環境維持チューブを有する非水電解質二次電池用製造装置であって、
前記環境維持チューブは、前記筒状部材の継手構造に対になる継手構造を有していることを特徴とする非水電解質二次電池用製造装置。
【請求項9】
前記環境維持チューブは内部に電解質注入ノズルを有することを特徴とする請求項
8に記載の非水電解質二次電池用製造装置。
【請求項10】
電極接合体と、
前記電極接合体を収容する外装部材と、
前記外装部材を内部から外部に貫通し、前記電極接合体と接続された外部電極端子と、
前記外装部材に設けられ当該外装部材の内部と外部とを連通させる少なくとも一つの開口部と、
を具備し、
前記開口部に直接、または、前記開口部を包囲するように、筒状部材を有しており、
前記筒状部材は雄または雌の継手構造を有しており、
前記開口部は封止部により封止されており、
前記電極接合体は、前記外装部材と前記開口部の封止部とにより密封されており、
前記外装部材の中には、電解質が注入されていな
く、
前記外装部材は、前記開口部と前記電極接合体を収容する収容室との間に接合及び切断可能な領域が設けられている、
ことを特徴とする非水電解質二次電池用構造体、および、
前記筒状部材と結合するように設けられた環境維持チューブを有し、
前記環境維持チューブは、内部に電解質注入ノズルを有し、
前記環境維持チューブは、前記筒状部材の継手構造に対になる継手構造を有する非水電解質二次電池用製造装置を用いた非水電解質二次電池の製造方法であって、
前記非水電解質二次電池用構造体の前記筒状部材の前記継手構造に前記非水電解質二次電池用製造装置の前記環境維持チューブの対になる継手構造を接続し、前記環境維持チューブの内部空間を低湿度の不活性ガスもしくは乾燥空気を満たした状態、または、脱気した状態で、前記封止部の封止を解除し、前記開口部から前記外装部材の内部に電解質注入ノズルを挿入し、電解質を注入する注入工程
と、
前記注入工程の後、前記外装部材を前記接合及び切断可能な領域で接合し、前記領域の少なくとも一部が前記収容室側を塞いだ状態で、前記開口部側を切断する工程と、
を具備することを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項11】
電極接合体と、
前記電極接合体を収容する外装部材と、
前記外装部材を内部から外部に貫通し、前記電極接合体と接続された外部電極端子と、
前記外装部材に設けられ当該外装部材の内部と外部とを連通させる少なくとも一つの開口部と、
を具備し、
前記開口部に直接、または、前記開口部を包囲するように、筒状部材を有しており、
前記筒状部材は雄または雌の継手構造を有しており、
前記開口部は封止部により封止されており、
前記電極接合体は、前記外装部材と前記開口部の封止部とにより密封されており、
前記外装部材の中には、電解質が注入されていな
く、
前記外装部材は、前記開口部と前記電極接合体を収容する収容室との間に接合及び切断可能な領域が設けられている、
ことを特徴とする非水電解質二次電池用構造体、および、
前記筒状部材と結合するように設けられた環境維持チューブを有し、
前記環境維持チューブは、前記筒状部材の継手構造に対になる継手構造を有する非水電解質二次電池用製造装置を用いた非水電解質二次電池の製造方法であって、
前記環境維持チューブは、電解質が貯留された貯留タンクに接続されており、前記環境維持チューブ内に低湿度の不活性ガスもしくは乾燥空気を流した状態で、前記環境維持チューブを前記筒状部材に接続して前記封止部の封止状態を解除し、前記貯留タンクから前記環境維持チューブを介して前記収容室内に前記電解質を注入する注入工程
と、
前記注入工程の後、前記外装部材を前記接合及び切断可能な領域で接合し、前記領域の少なくとも一部が前記収容室側を塞いだ状態で、前記開口部側を切断する工程と、
を具備することを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質として非水電解質を用いた非水電解質二次電池に用いられる非水電解質二次電池用構造体、非水電解質用二次電池を製造する非水電解質二次電池用製造装置及び非水電解質二次電池用構造体を用いた非水電解質二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池としては、例えば、電極活物質としてリチウム金属酸化物を用い、非水電解質として有機溶媒等の電解液を用いたリチウムイオン二次電池が広く用いられている。リチウムイオン二次電池は、電極活物質層を有する電極接合体と、電極接合体を内部に収容する外装部材と、電極接合体に接続されて外装部材の内部から外部に導出された外部電極端子と、外装部材内に収容された電解液などの非水電解質と、を具備する。このようなリチウムイオン二次電池には、外装部材として円筒形の電池ケースあるいは四角柱形の角形の電池ケースに電極接合体を収容してなるケース収容型電池と、外装部材としてラミネートフィルムで電極接合体を包囲して封止してなるパウチ型電池とが知られている。なお、各電池は、二次電池の単位セル(電池セル)として単体、または、複数個直列に接続してパッケージ化された電池モジュールとして使用される。
【0003】
また、リチウムイオン二次電池に用いられる電極活物質層や非水電解質は、水分を取り込むことで所望の電池性能が得られなくなるという問題がある。例えば、電極接合体を外装部材内に収容して密閉する際に電極が水分を含んでいると、その水分が電解質に含まれてしまい、電池として充放電した際に電池が膨らんだりし、電池としての機能を損なわせることとなる。このため、リチウムイオン二次電池の製造、特に、注液・密閉するまでの工程では、外装部材内に電極接合体等の外部部材内に収容される部材と共に水分が持ち込まれないよう注意すると共に、外装部材の外部から水分が取り込まれないよう注意する必要がある。
【0004】
このため、ケース収容型電池では、外装ケース内に電極接合体と電解質とが収容された状態で密閉されて出荷されることとなる。
【0005】
また、パウチ型電池では、ラミネートフィルムで形成された容器内に電極接合体と電解質とが収容された状態で密閉されて出荷されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-69268号公報
【文献】特開2009-26490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のような構成で出荷されるリチウムイオン二次電池は、輸送安全性を確保すべく、輸送、特に、輸送量が制限される航空機を用いた空輸などにおいて注意が必要となる。これはリチウムイオン二次電池に含まれる電解液は可燃物であるためである。電解液は、消防法においては第4類(引火性液体)に分類されていることに起因する。このため、リチウムイオン二次電池自体の安全性を他の部材の効果でいくら高めても、可燃物である電解液を用いている限り輸送制限は変わらない。
【0008】
また、船舶を用いた海上輸送においても、リチウムイオン二次電池は空輸と同様に危険物輸送として取り扱う必要があり、梱包制限など輸送に関する制約があるため容易に輸送することができない。
【0009】
この結果、生産したリチウムイオン二次電池を遠隔地まで運ぶ必要がある場合には、運ぶ日数や、コストが増大してしまうという問題がある。
なお、同様な問題が、可燃物である電解質を用いたリチウムイオン二次電池以外の非水電解質電池にも存在する。
【0010】
また、リチウムイオン電池は外装内部に水分が混入すると、内部でのガス発生等の不具合を起こすことがあるので、製造工程において水分の混入には最大限の注意を払う必要がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、電池の製造上での電池性能の低下を抑制しながら輸送安全性を確保した非水電解質二次電池を実現するための非水電解質二次電池用構造体、非水電解質二次電用池製造装置及び非水電解質二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の態様は、電極接合体と、前記電極接合体を収容する外装部材と、前記外装部材を内部から外部に貫通し、前記電極接合体と接続された外部電極端子と、前記外装部材に設けられ当該外装部材の内部と外部とを連通させる少なくとも一つの開口部と、を具備し、前記開口部に直接、または、前記開口部を包囲するように、筒状部材を有しており、前記筒状部材は少なくとも一部に雄または雌の継手構造を有しており、前記開口部は封止部により封止されており、前記電極接合体は、前記外装部材と前記開口部の前記封止部とにより密封されており、前記外装部材の中には、電解質が入っていないことを特徴とする非水電解質二次電池用構造体にある。
【0013】
かかる態様では、電解質が入っていない非水電解質二次電池用構造体であるので、空輸等において電解質に起因する輸送制限がなく、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができ、安全に且つ短時間で輸送を行うことができる。また、非水電解質二次電池用構造体の外装部材の内部は密閉されているので、輸送中に水分が内部に入ることは無い。さらに、非水電解質二次電池用構造体の輸送後は、非水電解質二次電池用構造体の開口部の封止部を開口させて電解質を注入することで、容易に非水電解質二次電池を製造することができる。そして、筒状部材を有しているので、電解質注入時に外装部材の内部に水分が入るのを防ぎ、内部でのガス発生等を防止することができので、非水電解質二次電池を製造する際の水分に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
【0014】
ここで、前記開口部は開口維持部材を有し、前記開口維持部材は前記筒状部材より筒の径方向内側にあることが好ましい。これによれば、開口部がラミネートのような軟質部材であっても、開口の形状を一定に保つことができるので、電解質注入時に作業がしやするなる。また、開口維持部材を筒状部材よりも内側に配置することで、筒状部材により形成された空間内で電解質が注入できるので、水分の侵入を防ぐことができる。
【0015】
また、前記開口部は開口維持部材を有し、前記筒状部材と前記開口維持部材とは繋がっていることが好ましい。これによれば、一つの部材で開口維持部材と筒状部材とを構成することで、部品点数、製造時の工数を減少させてコストを低減することができる。
【0016】
また、前記筒状部材と前記開口維持部材の間は、筒の軸方向に貫通部を有していないことが好ましい。これによれば、筒状部材と開口維持部材との間に貫通部を有さないことで、筒状部材に装置が接続された際に密閉空間を容易に形成することができる。
【0017】
また、前記封止部は前記開口維持部材に設けられていることが好ましい。これによれば、開口部に設けられた開口維持部材に封止部を設けて封止することで、開口部を確実に封止することができる。
【0018】
また、前記封止部は前記開口維持部材の端部が封止部材で覆われている構造であることが好ましい。これによれば、封止部材の取り付ける位置を開口維持部材にすることで、封止部材を容易に取り付けることができる。
【0019】
また、前記筒状部材は前記開口部に取り付けられており、前記筒状部材の少なくとも一部が前記外装部材の外側に突出し、前記継手構造は前記筒状部材の前記外装部材よりも外側に突出した部分にあることが好ましい。これによれば、筒状部材とは別の開口維持部材を開口部に設けることなく、簡単な構造とすることができる。筒状部材は外装部材内部に挿入された部分で外装材に固定され、外装部材の外側に突出した部分に継手構造を設けることで、装置を筒状部材に容易に接続することができる。
【0020】
また、前記封止部は前記筒状部材に設けられていることが好ましい。これによれば、筒状部材の封止部を開口させることで、外装部材の内部に電解質を容易に注入することができる。
【0021】
また、前記封止部は前記筒状部材の端部が封止部材で覆われている構造であることが好ましい。これによれば、筒状部材の端部を封止部材で覆うことで外装部材を容易に密閉することができる。
【0022】
また、前記封止部材は、ガスバリア性フィルムまたはセプタムであることが好ましい。これによれば、封止部材によって外装部材の内部に水分が侵入するのを抑制することができる。また、封止部材を容易に貫通させて外装部材の内部に電解質を注入することができる。
【0023】
また、前記外装部材内部が脱気された状態で封止されていることが好ましい。これによれば、外装部材の内部を低湿度状態に保つことができる。したがって、外装部材の内部に収容された電極接合体に設けられた電極活物質層が水分と反応することや、外装部材の内部に電解質を注入した際に、注入した電解質が水分を含んだり、反応したりするのを防止することができ、非水電解質二次電池を製造した際の水分に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
【0024】
また、前記筒状部材には、前記筒状部材を覆うキャップが着脱可能に設けられていることが好ましい。これによれば、封止部をキャップによって保護することができるため、非水電解質二次電池用構造体のハンドリング時や搬送時などに密閉部材の破損等によって密閉状態が解除されるのを防止し、外装部材の内部環境を維持して、水分を含む気体が外装部材の内部に侵入するのを防止することができる。
【0025】
また、本発明の他の態様は、上記態様に記載の非水電解質二次電池用構造体の前記筒状部材と結合する環境維持チューブを有する非水電解質二次電池用製造装置であって、前記環境維持チューブは、前記筒状部材の継手構造に対になる継手構造を有していることを特徴とする非水電解質二次電池用製造装置にある。
【0026】
かかる態様では、環境維持チューブを非水電解質二次電池用構造体の筒状部材に接続することで、簡単に外れない密閉構造を作ることができる。環境維持チューブによって非水電解質二次電池用構造体の開口部を覆うことができ、開口部を開口した際に、開口部から水分を含む外気が侵入するのを抑制することができる。
【0027】
ここで、前記環境維持チューブは内部に電解質注入ノズルを有することが好ましい。これによれば、環境維持チューブによって開口部を覆った状態で、電解質注入ノズルによって開口部から電解質を注入することができる。したがって、開口部から水分を含む外気が侵入するのを抑制することができる。
【0028】
また、前記環境維持チューブは内部に低湿度の乾燥空気または不活性ガスを出す放出部を有することが好ましい。これによれば、環境維持チューブの内部を低湿度状態または不活性雰囲気下に保つことができ、開口部を開口した際に、開口部から水分を含む外気が侵入するのをさらに抑制することができる。
【0029】
また、前記環境維持チューブは内部を脱気する脱気部を有することが好ましい。これによれば、非水電解質二次電池を注入する際に、環境維持チューブ内に存在する水分を含んだ空気等の気体を取り除くことができ、水分が侵入することを抑制することができる。また、外装体内の気体等を取り除くこともでき、電解質注入時の内部の気体の排出、封止時の減圧も行うこともできる。さらに、製造する際の予備充電で外装部材の内部に発生したガスを脱気部から外装部材の外部に排出することができる。
【0030】
また、前記環境維持チューブは、封止部開放部をチューブの内部に有していることが好ましい。これによれば、環境維持チューブの内部で封止部を開放して開口部を開口させることができるため、開口部から外装部材の内部に水分を含む気体が侵入するのを抑制することができる。
【0031】
また、前記環境維持チューブは、封止部取付部をチューブの内部に有していることが好ましい。これによれば、電解質注入後の注液口の封止を環境維持チューブの内部で行うことができ、開口部から外装部材の内部に水分を含む気体が侵入するのを抑制することができる。
【0032】
さらに、本発明の他の態様は、電極接合体と、前記電極接合体を収容する外装部材と、前記外装部材を内部から外部に貫通し、前記電極接合体と接続された外部電極端子と、前記外装部材に設けられ当該外装部材の内部と外部とを連通させる少なくとも一つの開口部と、を具備し、前記開口部に直接、または、前記開口部を包囲するように、筒状部材を有しており、前記筒状部材は雄または雌の継手構造を有しており、前記開口部は封止部により封止されており、前記電極接合体は、前記外装部材と前記開口部の封止部とにより密封されており、前記外装部材の中には、電解質が注入されていないことを特徴とする非水電解質二次電池用構造体、および、前記筒状部材と結合するように設けられた環境維持チューブを有し、前記環境維持チューブは、内部に電解質注入ノズルを有し、前記環境維持チューブは、前記筒状部材の継手構造に対になる継手構造を有する非水電解質二次電池用製造装置を用いた非水電解質二次電池の製造方法であって、前記非水電解質二次電池用構造体の前記筒状部材の前記継手構造に前記非水電解質二次電池用製造装置の前記環境維持チューブの対になる継手構造を接続し、前記環境維持チューブの内部空間を低湿度の不活性ガスもしくは乾燥空気を満たした状態、または、脱気した状態で、前記封止部の封止を解除し、前記開口部から前記外装部材の内部に電解質注入ノズルを挿入し、電解質を注入する注入工程を有することを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法にある。
【0033】
かかる態様では、環境維持チューブと筒状部材を継手構造で結合し、環境維持チューブと筒状部材で形成される内部空間に低湿度の不活性ガスもしくは乾燥空気を充填した状態で電解質を注入させることで、外装部材の内部に開口部から水分を含む気体が侵入するのを防止することができる。したがって、水分に起因する電池性能の低下を抑制することができる。また、注入ノズルを外装体内に挿入した状態で注入工程を行うので、電解質を確実に外装部材内部に注入することができる。
【0034】
また、本発明の他の態様は、電極接合体と、前記電極接合体を収容する外装部材と、前記外装部材を内部から外部に貫通し、前記電極接合体と接続された外部電極端子と、前記外装部材に設けられ当該外装部材の内部と外部とを連通させる少なくとも一つの開口部と、を具備し、前記開口部に直接、または、前記開口部を包囲するように、筒状部材を有しており、前記筒状部材は雄または雌の継手構造を有しており、前記開口部は封止部により封止されており、前記電極接合体は、前記外装部材と前記開口部の封止部とにより密封されており、前記外装部材の中には、電解質が注入されていないことを特徴とする非水電解質二次電池用構造体、および、前記筒状部材と結合するように設けられた環境維持チューブを有し、前記環境維持チューブは、前記筒状部材の継手構造に対になる継手構造を有する非水電解質二次電池用製造装置を用いた非水電解質二次電池の製造方法であって、前記環境維持チューブは、電解質が貯留された貯留タンクに接続されており、前記環境維持チューブ内に低湿度の不活性ガスもしくは乾燥空気を流した状態で、前記環境維持チューブを前記筒状部材に接続して前記封止部の封止状態を解除し、前記貯留タンクから前記環境維持チューブを介して前記収容室内に前記電解質を注入する注入工程を具備することを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法にある。
【0035】
かかる態様では、筒状部材と貯留タンクとを接続する環境維持チューブ内を低湿度の不活性ガスもしくは乾燥空気を流しておくことで、環境維持チューブと筒状部材とを接続して開口部を開口させた際に、外装部材の内部に開口部から水分を含む気体が侵入するのを防止することができる。したがって、水分に起因する電池性能の低下を抑制することができる。また、環境維持チューブと筒状部材とを接続する前に、予め環境維持チューブ内を低湿度環境としておくことで、環境維持チューブを筒状部材に接続して封止部の封止状態を解除した際に、環境維持チューブ内の湿度コントロールされていない気体が収容室内に侵入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態1に係るリチウムイオン二次電池用構造体の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るリチウムイオン二次電池用構造体の要部断面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るリチウムイオン二次電池用構造体の要部断面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る電極接続体の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係るリチウムイオン二次電池用構造体の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る電解質注入装置を説明する図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係る電解質注入装置の要部断面図である。
【
図9】本発明の実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法を説明する要部断面図である。
【
図10】本発明の実施形態1に係る脱気装置を説明する図である。
【
図11】本発明の実施形態1に係る脱気装置の要部断面図である。
【
図12】本発明の実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法を説明する要部断面図である。
【
図13】本発明の実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造方法を説明する平面図である。
【
図14】本発明の実施形態1に係る電解質注入装置の変形例を示す要部断面図である。
【
図15】本発明の実施形態1に係るリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を説明する要部断面図である。
【
図16】本発明の実施形態2に係るリチウムイオン二次電池用構造体の平面図である。
【
図17】本発明の実施形態2に係る電解質注入装置を説明する図である。
【
図18】本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の要部断面図である。
【
図19】本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を説明する要部断面図である。
【
図20】本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を説明する要部断面図である。
【
図21】本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を説明する要部断面図である。
【
図22】本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を説明する要部断面図である。
【
図23】本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を説明する要部断面図である。
【
図24】本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を説明する要部断面図である。
【
図25】本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を説明する要部断面図である。
【
図26】本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を説明する要部断面図である。
【
図27】本発明の実施形態4に係るリチウムイオン二次電池用構造体の断面図である。
【
図28】本発明の実施形態4に係るリチウムイオン二次電池用構造体の断面図である。
【
図29】本発明の他の実施形態に係る電解質注入装置を説明する図である。
【
図30】本発明のリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を示す要部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0038】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る非水電解質二次電池用構造体の一例であるリチウムイオン二次電池用構造体の平面図である。
図2は、
図1のA-A′線断面図である。
図3は、
図2のB-B′線断面図である。
図4は、電極接合体及び外部電極端子の分解斜視図である。
【0039】
本実施形態の非水電解質二次電池用構造体は、リチウムイオン二次電池に用いられるリチウムイオン二次電池用構造体である。本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10は、
図1~
図3に示すように、電極接合体20と、電極接合体20にクリップ部30を介して接続された一対の外部電極端子であるタブリード40と、電極接合体20、クリップ部30及びタブリード40の一部が収容される外装部材であるラミネートフィルム50と、を備える。
【0040】
ここで、本実施形態の電極接合体20、クリップ部30及びタブリード40についてさらに
図4を参照して説明する。
【0041】
電極接合体20は、電極板として正極板21と負極板22とを具備する。正極板21及び負極板22のそれぞれは、金属箔に電極活物質層が形成されたものである。正極板21に用いられる金属箔としては、例えば、アルミニウム箔等が挙げられ、負極板22に用いられる金属箔としては、例えば、銅箔等が挙げられる。
【0042】
正極板21及び負極板22は、ジグザグ折りした絶縁体のセパレータ23を挟んで相対向するようにセパレータ23の各谷溝内に挿入され、上下方向から押圧することでスタック構造の電極接合体20に成型される。
【0043】
このような電極接合体20において幅方向であるX方向の一端部には、複数の正極板21の端部であって電極活物質層が形成されていない正極側接続部24が設けられている。
【0044】
また、電極接合体20の幅方向であるX方向の他端部には、複数の負極板22の端部であって電極活物質層が形成されていない負極側接続部25が設けられている。これら正極側接続部24と負極側接続部25とは、セパレータ23の幅方向であるX方向の両端部のそれぞれから突出して設けられている。
【0045】
正極側接続部24と負極側接続部25とには、それぞれクリップ部30が設けられ、接合されている。
【0046】
クリップ部30は、複数の正極側接続部24と複数の負極側接続部25とをそれぞれ纏めておくものであり、金属からなる長方形状の平板を折り曲げたものである。
【0047】
また、正極側接続部24に接続されたクリップ部30には、正極側の外部電極端子であるタブリード40が接続されている。また、負極側接続部25に接続されたクリップ部30には、負極側の外部電極端子であるタブリード40が接続されている。
【0048】
なお、本実施形態では、電極接合体20にクリップ部30を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、正極側接続部24に直接、正極側のタブリード40を接続するようにしてもよく、負極側接続部25に直接、負極側のタブリード40を接続するようにしてもよく、正極側接続部24及び負極側接続部25の何れか一方のみにクリップ部30を用いるようにしてもよい。
【0049】
また、
図1~
図3に示すように、リチウムイオン二次電池用構造体10の外装部材であるラミネートフィルム50は、複数の樹脂フィルムあるいは複数の樹脂フィルムと金属フィルムとを積層した複合フィルムからなり、その表裏面は絶縁材からなっている。ラミネートフィルム50は電極接合体20を両側から挟み込むように配置し、ラミネートフィルム50の外周を周方向に亘ってシールし、ラミネートパウチ構造にすることで、内部に電極接合体20が収容される内部空間51が設けられている。
【0050】
また、ラミネートフィルム50に覆われた電極接合体20に接続された一対のタブリード40の一部が、ラミネートパウチの内部空間51から外部に貫通して設けられている。すなわち、タブリード40は、ラミネートパウチの内部空間51から外部に導出されている。このタブリード40をラミネートパウチの内部空間51から外部に導出するための開口部(図示なし)の開口周囲とこの開口部から一部が突出するタブリード40との間は、例えば、加圧圧着に用いられるシーラントフィルムにより封止され、この開口部で内部空間51と外部とが連通しないようになっている。このため、ラミネートパウチは内部空間51内の電極接合体20の三方を取り囲んでおり、内部空間51は、ラミネートパウチに設けられた開口部61及び脱気用の開口部91以外の部分では外部と連通しない。
【0051】
また、リチウムイオン二次電池用構造体10の状態では、内部空間51内には電解質が入っていない。すなわち、リチウムイオン二次電池用構造体10の内部空間51に電解質を注入することで、リチウムイオン二次電池が製造される。なお、内部空間51内に注入される電解質としては、例えば、液体状の電解液、ゲル状電解質、ゾル状電解質、イオン液体、固体電解質等が挙げられる。本実施形態では、内部空間51内に注入される電解質として電解液を用いている。
【0052】
ラミネートフィルム50は、電極接合体20を収容する領域からX方向と直交するY方向の一方側に向かって延設されており、延設された端部には、内部空間51と外部とを連通する少なくとも一つの開口部が設けられている。本実施形態では、ラミネートパウチには、開口部61と脱気用の開口部91との2つの開口部が設けられている。
【0053】
また、ラミネートパウチの開口部61、91のそれぞれには、筒状部材62、92が設けられている。本実施形態では、開口部61には、筒状部材62が設けられ、脱気用の開口部91には、脱気用の筒状部材92が設けられており、ラミネートフィルム50のY方向の端部であってX方向の両端部にそれぞれ設けられている。
【0054】
筒状部材62は、筒形状を有し、その一部が開口部61に挿入されており、開口部61に挿入された部分で外装部材であるラミネートフィルム50に固定されている。筒状部材62は、本実施形態では、端部の開口、すなわち、横断面が円形を有する円筒形状を有する。なお、筒状部材62の形状は、円筒形状に限定されず、端部の開口、すなわち、横断面が四角形等の多角形状(
図28)であってもよい。
【0055】
筒状部材62は、軸方向において開口部61側に設けられた大径部62aと、開口部61とは反対側に設けられて大径部62aよりも外径が小さな小径部62bと、を具備する。筒状部材62の大径部62aが、開口部61内に挿入されて大径部62aの外周でラミネートフィルム50と固定されている。また、筒状部材62には、大径部62aと小径部62bとの外径差によって段差62cが設けられている。詳しくは後述するキャップ80を筒状部材62の小径部62bの外周に装着した際に、キャップ80が筒状部材62の段差62cに当接して、キャップ80がフィルム70に接触するのを防ぐことで、キャップ80の接触によってフィルム70が破損するのを防止することができる。もちろん、筒状部材62は、軸方向に亘って外径が同一の外周に段差が設けられていない真っ直ぐな筒でもよく、折れ曲がっていてもよい。
【0056】
筒状部材62は、開口部61からラミネートパウチの外側に出た部分において、雄または雌の継手構造を有する。本実施形態では、筒状部材62の継手構造として、筒状部材62の小径部62bの外周面に雄ねじからなるねじ加工部63を設けるようにした。なお、筒状部材62の継手構造は、特にこれに限定されず、例えば、フランジ継手、カップリング、クイックディスコネクト(quick disconnect)、クイックカップリング(quick coupling)、迅速継手などが挙げられる。また、本実施形態では、筒状部材62の外周面に継手構造を設けるようにしたが、筒状部材62の内周面に継手構造が設けられていてもよい。このような筒状部材62の継手構造は、詳しくは後述するキャップ80の着脱や、非水電解質二次電池用製造装置を接続するためのものである。
【0057】
また、リチウムイオン二次電池用構造体10には、開口部61を封止する封止部として封止部材であるフィルム70が設けられている。本実施形態では、フィルム70は、筒状部材62のラミネートパウチ側とは反対側の端部に、筒状部材62の開口を塞いで設けられている。これにより、開口部61は、フィルム70によって封止されている。フィルム70が開口部61を封止するとは、開口部61を直接封止することも、また、開口部61に連通する筒状部材62の開口を封止することも含むものである。このようなフィルム70は、水蒸気透過率の低い材料で、且つ内部空間51内に電解質を注入する非水電解質二次電池用製造装置を接続した後で封止状態を解除できるものである。本実施形態では破りやすいまたは貫通しやすい材料であるフィルム70で製造されている。
【0058】
なお、水蒸気透過率の低い材料のフィルムとは、内部空間51内の低湿度状態、例えば、露点温度が-20℃以下を維持することができる程度に水蒸気の透過率、所謂、透湿度が低い材料、例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール(PVB)、アルミ箔ラミネートなどからなるフィルムやオレフィン系フィルム、アルミ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムなど、JIS Z0208において10g・mm/m2・d 以下、特に1g・mm/m2・d 以下が特に望ましい。このようにフィルム70として水蒸気透過率の低い材料を用いることで、高湿度環境下であっても、フィルム70を介して内部空間51内に水蒸気が侵入するのを抑制して、内部空間51内を低湿度状態に保つことができる。本実施形態では、アルミニウム箔とポリエチレン(PE)やポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムとを積層したアルミラミネート材を用いた。
【0059】
また、開口部61を封止する封止部として、フィルムの他に、筒状部材62の外周のねじ加工部63と強固に螺合する雌ねじを有する蓋、非水電解質二次電池用製造装置を接続することで開口するバルブ、封栓、セプタム(医療用バイアル瓶のゴム封止)を設けるようにしてもよい。また、開口部61を封止する封止部は、クリップ、溶着、接着、などで封止するものであってもよい。ただし、開口部61を蓋、バルブ、クリップ、溶着、接着、封栓、セプタム等で封止するよりも、フィルムを貼り付けて開口部61を封止する方が安価で簡単であるので好ましい。また、注入ノズル等に針状のものを使用する際は、セプタムが貫通しやすく気密も保ちやすいので好ましい。
【0060】
また、フィルム70は、酸素及び窒素等のガス透過率の低い材料を用いるのが好ましい。特に内部空間51内に窒素や希ガス等の不活性ガスを充填して密封した場合には、フィルム70としてガス透過率の低い材料を用いることで、内部空間51内の不活性ガスがフィルム70を介して外部に漏れ出るのを抑制することができる。さらに、ガス透過率を低くしておく方が、リチウムイオン二次電池用構造体10内を減圧した際に減圧度合が減少することや、内部空間51内に入るガスによりリチウムイオン二次電池用構造体10が膨らんで封止状態が破れてしまうことも抑制することができる。
【0061】
また、筒状部材62のラミネートフィルム50の外部に出ている端部には、筒状部材62を覆うキャップ80が着脱可能に設けられている。本実施形態では、筒状部材62の外周にねじ加工部63が設けられているため、キャップ80としては、内周面に筒状部材62のねじ加工部63に螺合する雌ねじが設けられたものを用いるようにした。このキャップ80は前述する開口部61を封止するための蓋ほど強固に雄ねじと雌ねじが螺合(例えば、雄ねじと雌ねじとを螺合時の回転数を多くするなど)するものでなくてよく、電解質の注入前に容易に取り外せるようにしている。これにより、キャップ80は筒状部材62の外周に着脱可能となっている。このように筒状部材62の開口部61をキャップ80によって覆うことで、開口部61を封止するフィルム70がリチウムイオン二次電池用構造体10の輸送時やハンドリング時などに不意のタイミングで破れるのを防ぐことができ、フィルム70の破れによって内部空間51内に水分が侵入するのを抑制して、内部空間51内を低湿度状態に保つことができる。また、キャップ80を筒状部材62から取り外しても、開口部61はフィルム70によって封止されているため、内部空間51内に外気が侵入するのを防止することができる。さらに、筒状部材62に装着されたキャップ80を取り外すだけで、開口部61を封止するフィルム70を外部に露出させて、露出されたフィルム70を破くことで、開口部61から内部空間51内に電解質を容易に注入することが可能となり、煩雑な工程が不要となる。なお、筒状部材62の軸方向において、キャップ80の深さは、小径部62bの長さよりも長い方が好ましい。このようにキャップ80の深さを小径部62bの長さよりも長くすることで、キャップ80を段差62cに当接するまで締め込んでも、キャップ80がフィルム70に接触するのを防止して、キャップ80のフィルム70への接触によるフィルム70の破損を防止することができる。
【0062】
さらに、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10は、内部空間51と外部とを連通する開口部である脱気用の開口部91に設けられた脱気用の筒状部材92と、脱気用の開口部91を封止する封止部であるフィルム100と、脱気用の筒状部材92に着脱可能なキャップ110と、を具備する。脱気用の筒状部材92(大径部92a、小径部92b、段差c等)と周辺の構成は、上述した筒状部材62と同様の構造を用いることができる。
【0063】
また、筒状部材62に装着されるキャップ80と、脱気用の筒状部材92に装着される脱気用のキャップ110とは、互いに色が異なるものを用いるようにしてもよい。例えば、キャップ80を赤色とし、脱気用のキャップ110を黒色とする。これにより、電解質を注入する開口部61と脱気を行う脱気用の開口部91とを区別しておく必要がある場合は、開口部61と脱気用の開口部91との識別を容易に行うことができ、作業効率を向上することができる。
【0064】
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10の製造方法について
図5を参照して説明する。なお、
図5は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体の製造方法を説明するフローチャートである。
【0065】
図5に示すステップS1の混練工程によって、正極及び負極となる電極を形成するための複数の材料を混ぜ合わせて電極スラリーを作成する。電極スラリーは正極用と負極用とがそれぞれ作成される。
【0066】
次いでステップS2の塗布工程において、ステップS1の混練工程で作成した正極用スラリーと負極用スラリーとは、それぞれ金属箔シート上に塗布される。金属箔シートはアルミニウムや銅などからできている。一般的には、金属箔シートは長尺状で、この金属箔シートの表面あるいは表裏面の両面に所望の電極スラリーが塗布される。
【0067】
次いで、ステップS3の乾燥工程において、ステップS2の塗布工程において金属箔シートに塗布された電極スラリーを乾燥し、電極活物質層が形成される。
【0068】
次いで、ステップS4のプレス工程において、電極活物質層と金属箔シートとを押圧(プレス)処理する。このプレス工程によって電極活物質層と金属箔シートとの密着力を高めることができる。
【0069】
次いで、ステップS5の切断工程において、プレス工程によって押圧処理した電極活物質層と金属箔シートとを所望の大きさに切断することで金属箔シートの上に電極活物質層が形成された電極板を製造する。
【0070】
次いでステップS6の積層工程では、セパレータ23を間に介在させながら正極板21と負極板22とを交互に複数積層して束ねる。あるいは、それぞれ所定の長さに切断された長尺状の正極板21と負極板22とを、長尺状のセパレータ23を間に介在させた状態で重ね合わせて券回する。この結果、正極板21、セパレータ23、負極板22を重ね合わせて構成された電極接合体20が製造される。
【0071】
次いで、ステップS7の電極組立工程で、積層工程で製造された電極接合体20にクリップ部30及びタブリード40を取り付ける。なお、本実施形態では、電極接合体20とクリップ部30及びタブリード40とは、例えば、レーザー溶接、スポット溶接、超音波溶接等の種々の溶接方法によって接合される。
【0072】
次いで、ステップS8のラミネート内収容工程で、電極接合体20及びタブリード40との接続部分を含むクリップ部30をラミネートフィルム50で包み込むようにして覆い、ラミネートフィルム50の外周の開口を溶着することでラミネートパウチ構造を形成し、密閉された内部空間51ができる。また、ステップS8のラミネート内収容工程は、低湿度環境下で行うことで、内部空間51内を低湿度状態として密閉することができる。
【0073】
ラミネートフィルム50は、予めフィルム70が設けられた筒状部材62及びフィルム100が設けられた脱気用の筒状部材92が固定されたものを使った。もちろん、電極接合体20及びタブリード40との接続部分を含むクリップ部30をラミネートフィルム50で覆った後、ラミネートフィルム50に筒状部材62及び脱気用の筒状部材92を固定するようにしてもよい。電極接合体20及びタブリード40との接続部分を含むクリップ部30をラミネートフィルム50で覆った後に筒状部材62及び脱気用の筒状部材62を固定する場合、ラミネートフィルム50の開口を溶着した後に筒状部材62及び脱気用の筒状部材92を固定するようにしてもよく、ラミネートフィルム50の開口を溶着する前に筒状部材62及び脱気用の筒状部材92を固定するようにしてもよい。
【0074】
また、予め筒状部材62、92の開口はフィルム70、100で封止されていなくてもよい。筒状部材62、92の開口をフィルム70、100で封止していない場合には、ラミネートフィルム50の開口の溶着を行った後、筒状部材62、92をフィルム70、100により封止する。何れの場合であっても、低湿度環境下で行うことで、最終的に、内部空間51内を低湿度環境とすることができる。
【0075】
なお、本実施形態では、ラミネート内収容工程を低湿度環境下で行うようにしたが、少なくともステップS3の乾燥工程を経た後、好ましくは、
図5に示すリチウムイオン二次電池用構造体10の製造工程の全てを低湿度環境下で行うようにし、さらに、低湿度環境下で行う工程は同じドライルーム内で行うようにするのがより好適である。
【0076】
また、内部空間51内に不活性ガスを充填する場合、内部空間51内に窒素等の不活性ガスを充填する方法は上述した封止の方法に応じて最適な方法で行えばよい。例えば、ラミネート内収容工程を低湿度環境下でかつ不活性ガス雰囲気中で行うようにすればよい。さらに、内部空間51内を減圧状態とするには、筒状部材62、92の開口部をフィルム70、100によって封止を行う際に、開口部61か脱気用の開口部91のいずれか一方をフィルムで封止した後に、内部空間51内を減圧状態にしてから残る開口をフィルムで封止することや、減圧環境下でラミネート内収容工程を行うようにすればよい。
【0077】
なお、低湿度環境下で行うラミネート内収容工程(ステップS8)より前の工程で、ドライルーム外など低湿度環境下でない環境で行われる工程に対しては、その工程後に乾燥工程をいれておくとよい。例えば、切断工程(ステップS5)がドライルーム外で行われるとすれば、積層工程(ステップS6)の前に乾燥工程を入れるようにする。このようにすれば、切断工程時に電極が吸着した水分を除去することができる。また、低湿度環境下でない環境で行われる工程が続くようであれば、低湿度環境下でない環境で行われる工程のうちの最後の工程の後に乾燥工程を入れればよい。この場合、乾燥処理を行う設備を多く準備する必要がないものの、吸着した水分が多くなることから乾燥時間も長くなる可能性があり、過乾燥など電極への負担も考えられるため、これを避ける方を優先する場合は、低湿度環境下でない環境で行われる工程が続く場合であっても、低湿度環境下でない環境で行われる工程それぞれの後に乾燥工程を入れておく方がよい。
【0078】
ここで、上述したリチウムイオン二次電池用構造体10を用いた非水電解質二次電池であるリチウムイオン二次電池の製造方法について
図6を参照して説明する。なお、
図6は、リチウムイオン二次電池の製造方法を説明する図である。
【0079】
図6に示すように、工場Aにおいて上述した
図5のステップS1からステップS8によってリチウムイオン二次電池用構造体10を製造する。上述のようにリチウムイオン二次電池用構造体10は、内部空間51内に電解質Tが未注入であって、内部空間51内が低湿度状態で密閉されたものである。
【0080】
工場Aで製造したリチウムイオン二次電池用構造体10は、工場Aから離れた場所にある工場Bに輸送される。工場A及び工場Bは、両方が同一国内にある場合や、工場Aが日本、工場Bが中国やアメリカ合衆国などのそれぞれが別の国にある場合などが挙げられる。
【0081】
工場Aで製造されたリチウムイオン二次電池用構造体10は、電解質Tが未注入であることから、電解質Tに起因する輸送制限がされることがないため、空輸を含めたあらゆる輸送手段での輸送を行うことができる。
【0082】
工場Bへ輸送されたリチウムイオン二次電池用構造体10は、工場Bで内部空間51内に電解質Tが注入されることでリチウムイオン二次電池が製造される。
【0083】
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10を用いて工場Bで行われるリチウムイオン二次電池の製造方法ついてさらに
図7~
図13を参照して説明する。なお、
図7は、非水電解質二次電池用製造装置の概略構成を説明する図である。
図8は、非水電解質二次電池用製造装置の要部断面図である。
図9及び
図12は、リチウムイオン二次電池の製造方法を説明する要部断面図である。
図10は、脱気装置の概略構成を説明する図である。
図11は、脱気装置の要部断面図である。
図13は、リチウムイオン二次電池の製造方法を説明する平面図である。
【0084】
リチウムイオン二次電池用構造体10への電解質である電解質Tの注液は、
図7及び
図8に示す非水電解質二次電池用製造装置300を用いて行われる。
【0085】
ここで非水電解質二次電池用製造装置300は、電解質注入ノズル311と、電解質注入ノズル311を覆うように設けられた環境維持チューブ321と、を具備する。
また、非水電解質二次電池用製造装置300は、貯留タンク310と環境維持装置320と接続チューブ322と保持部材330とを具備する。
【0086】
保持部材330は、電解質注入ノズル311と環境維持チューブ321とを保持するものであり、内部に空間部331を有する円筒形状又は多角筒形状を有し、空間部331の一端側の開口は、上面部332によって覆われている。
【0087】
上面部332の空間部331とは反対側の面には、空間部331と連通する接続路333の一端が開口して設けられており、この接続路333の一端には、接続チューブ322を介して環境維持装置320が接続されている。
【0088】
また、保持部材330の上面部332とは反対の他端部側、すなわち、空間部331が開口する端部には、空間部331と内部空間321aが連通する環境維持チューブ321の基端部が接続されている。環境維持チューブ321は、先端が筒状部材62の継手構造に対となる継手構造を有し、筒状部材62に着脱可能となっている。この構造により、環境維持チューブ321の先端と、筒状部材62の雄または雌の継手構造に対となる継手構造を有する接続部材を接続することで、電解注入を行っている際に、外部や内部の圧力変化などにより、環境維持チューブが外れるのを防止できる。
【0089】
また、環境維持チューブ321としてゴムやエラストマー等の弾性変形可能な材料や、ポリプロピレンやポリ塩化ビニルなどの硬質プラスチックや、ステンレス鋼(SUS)やアルミなどの金属を用いることができる。
【0090】
ここで環境維持装置320は、接続チューブ322及び保持部材330の空間部331を介して接続された環境維持チューブ321の内部空間321aの環境を、内部空間51内と同じ環境に維持するための装置であり、低湿度状態、すなわち、低湿度のガス雰囲気(乾燥空気)、真空状態、又は、不活性ガス雰囲気等の環境に維持するものである。すなわち、保持部材330が、環境維持チューブ321の内部に低湿度の乾燥空気、又は、不活性ガスを放出する放出部としても機能させることができると共に、保持部材330が、環境維持チューブ321内を脱気する脱気部としても機能させることができる。
【0091】
例えば、環境維持チューブ321の内部空間321aを低湿度状態にするためには、環境維持装置320として、例えば、低湿度ガス雰囲気に維持するための乾燥空気を供給する乾燥空気供給装置(ドライエア供給装置)や、環境維持チューブ321の内部空間321a内の水分を除湿する除湿装置などが用いられる。また、例えば、環境維持チューブ321の内部空間321aを減圧するには、環境維持装置320として、例えば、真空ポンプなどが用いられる。さらに、環境維持チューブ321の内部空間321aを不活性ガス雰囲気とするには、環境維持装置320として、不活性ガスが貯留されたボンベと、このボンベからの不活性ガスの圧力を調整して供給する圧力調整器などで構成される不活性ガス供給装置や、不活性ガスを生成して供給する不活性ガス供給装置などが用いられる。なお、ここで、環境維持チューブ321の内部空間321aの低湿度状態とは、例えば、露点温度が-50℃以下、水分量が約39ppm以下のことを言う。環境維持装置320は、上記したガス供給装置、除湿装置、減圧装置などの機能を一つの装置が持っていてもよく、それぞれの装置を一つ以上有していてもよい。
【0092】
また、保持部材330には、電解質注入ノズル311が保持されている。電解質注入ノズル311は、先端を筒状部材62の内部に挿入し、電解質注入ノズル311の先端から電解質を放出することで、ラミネートフィルム50の内部空間51内に電解質を注入するものである。このような電解質注入ノズル311は、金属又は樹脂等の材料で形成されており、円筒形状又は多角筒形状を有する。また、電解質注入ノズル311は、先端が尖って設けられた注射針状のものである。これは、本実施形態の電解質注入ノズル311の先端がフィルム70を突き破ってフィルム70を開放する封止部開放部としても機能するからである。つまり、環境維持チューブ321の内部空間321a内には、封止部開放部としても機能する電解質注入ノズル311が設けられている。もちろん、電解質注入ノズル311と、フィルム70を開放する封止部開放部とは、別部材としてもよく、保持部材330の空間部331や環境維持チューブ321の内部空間321a内にカッター、ドリル等の封止部開放手段を有していてもよい。
【0093】
このような電解質注入ノズル311は、基端部側が空間部331内に配置され、先端部側が環境維持チューブ321の内部空間321a内に配置されるように保持部材330に保持されている。なお、環境維持チューブ321の内部空間321aに保持された電解質注入ノズル311の先端は、環境維持チューブ321の先端よりも内側に位置する。これにより、環境維持チューブ321の先端を筒状部材62に接続させた後で、電解質注入ノズル311の先端を筒状部材62の内部に挿入することができ、環境維持チューブ321によってフィルム70の外部の環境を整えた後で、電解質注入ノズル311により、フィルム70を突き破ることができる。
【0094】
非水電解質二次電池用製造装置300は、保持部材330の空間部331や環境維持チューブ321の内部空間321a内に、開口部61を封止する封止部を取り付けるための封止部取付部(図示なし)を有してもよい。このように環境維持チューブ321内に封止部取付部を設けることで、開口部61の封止を環境維持チューブ321の内部で行うことができ、開口部61からラミネートパウチの内部に水分を含む気体が侵入するのを抑制することができる。また、封止部取付部は、開口部61を再封止する再封止手段としても機能させることができる。リチウムイオン二次電池用構造体10である非水電解質二次電池用構造体は電解質を注入すれば電池として機能するので、後述するラミネートパウチを塞ぐ工程を行わず、開口部を再封止してもよい。また、電解質注入後の非水電解質二次電池のハンドリングを簡便にするために、仮封止してもよい。
【0095】
また、保持部材330には、電解質注入ノズル311の内部空間311aに電解質Tを注入するための連通路334が設けられている。連通路334の一端は、電解質注入ノズル311の内部空間311aと接続されている。また、連通路334の他端は、上面部332の空間部331とは反対側の面に開口して設けられており、この連通路334の他端に、注液チューブ312を介して貯留タンク310が接続されている。
【0096】
貯留タンク310には、電解液の電解質Tが貯留されており、注液チューブ312の途中に設けられた図示しない送液ポンプなどの送液手段によって、貯留タンク310からの電解質Tは電解質注入ノズル311に送液される。なお、送液手段は、送液ポンプに限定されず、例えば、貯留タンク310を電解質注入ノズル311よりも鉛直方向上側に配置し、貯留タンク310と電解質注入ノズル311との水頭圧差を利用して貯留タンク310の電解質Tを電解質注入ノズル311に送液するようにしてもよい。また、特に図示していないが、注液チューブ312の途中には、開閉弁が設けられており、貯留タンク310から電解質注入ノズル311への電解質Tの送液は開閉弁の開閉によって所望のタイミングで行われる。
【0097】
このような非水電解質二次電池用製造装置300によってリチウムイオン二次電池用構造体10の内部空間51内に電解質Tを注入する注入工程を行う。
【0098】
具体的には、
図9(a)に示すように、リチウムイオン二次電池用構造体10の筒状部材62からキャップ80を取り外し、筒状部材62に環境維持チューブ321を接続する。
【0099】
このとき、予め環境維持装置320によって環境維持チューブ321の内部空間321aは、内部空間51内と同じ環境、すなわち、低湿度状態にしておくのが好ましい。もちろん、筒状部材62に環境維持チューブ321を接続してから、環境維持装置320によって環境維持チューブ321の内部空間321aを、低湿度の乾燥空気もしくは不活性ガスで満たした状態、または、脱気した状態としてもよい。ただし、環境維持装置320として、乾燥空気供給装置や不活性ガス供給装置を用いる場合には、環境維持チューブ321の内部空間321a内の余分な気体を排出する方が好ましく、環境維持チューブ321を筒状部材62に接続する前に、予め環境維持装置320によって環境維持チューブ321の内部空間321aの環境を整えておく方が好適である。
【0100】
このように環境維持チューブ321を筒状部材62に接続することで筒状部材62内の開口部61の外側を環境維持チューブ321の内部空間321a内に配置して、開口部61の外側を内部空間51と同じ低湿度状態とすることができる。
【0101】
次に、
図9(b)に示すように、環境維持チューブ321及び電解質注入ノズル311をさらに筒状部材62側に移動させて、電解質注入ノズル311の先端をフィルム70に当接させて、電解質注入ノズル311によってフィルム70を破き、電解質注入ノズル311の先端を開口部61の内部に挿入する。この状態で電解質注入ノズル311の先端から内部空間51内に電解質Tを注入する。このような注入工程では、電解質注入ノズル311の先端によってフィルム70が破かれても、筒状部材62内の開口部61の外側は、環境維持チューブ321の内部空間321a内に配置されているため、破れたフィルム70の開口から内部空間51内に水分を含む気体が入り込むのを防止することができ、電池性能が低下するのを抑制することができる。もし、筒状部材62に環境維持チューブ321が接続されていないと、開口部61の外側は外気となるため、電解質注入ノズル311によって破かれたフィルム70の開口から内部空間51内に外気(湿度コントロールされていない気体)が侵入してしまう。内部空間51内に外気が侵入すると、侵入した外気に含まれる水分(水蒸気)によって、電池性能が低下してしまう。
【0102】
また、リチウムイオン二次電池用構造体10全体や電解質Tを注入する電解質注入装置全体を低湿度雰囲気下に配置する場合に比べて、小型化することができる。環境維持チューブ321によって、筒状部材62内の開口部61の外側のみを内部空間51と同じ低湿度状態とすればよく、リチウムイオン二次電池用構造体10全体や電解質注入装置全体を低湿度雰囲気下に配置する場合に比べて、低湿度雰囲気にしなければならない領域を小さくすることができる。
【0103】
ここで、脱気用の筒状部材92を介して内部空間51内の脱気を行う本実施形態の脱気装置の一例について
図10及び
図11を参照して説明する。
【0104】
図10及び
図11に示すように、脱気装置400は、脱気ノズル411と、脱気ノズル411を覆うように設けられた環境維持チューブ421と、を具備する。また、脱気装置400は、真空ポンプ410と環境維持装置420と接続チューブ422と保持部材430とを具備する。
【0105】
保持部材430は、非水電解質二次電池用製造装置300と同様に、脱気ノズル411と環境維持チューブ421とを保持するものであり、内部に空間部431を有する円筒形状又は多角筒形状を有し、空間部431の一端側の開口は、上面部432によって覆われている。
【0106】
上面部432の空間部431とは反対側の面には、空間部431と連通する接続路433の一端が開口して設けられており、この接続路433の一端には、接続チューブ422を介して環境維持装置420が接続されている。
【0107】
また、保持部材430の上面部432とは反対の他端部側、すなわち、空間部431が開口する端部には、空間部431と内部空間421aが連通する環境維持チューブ421の基端部が接続されている。環境維持チューブ421は、先端が脱気用の筒状部材92の継手構造と対となる継手構造を有し、脱気用の筒状部材92に着脱可能なものであり、非水電解質二次電池用製造装置300の環境維持チューブ321と同様のものを用いることができる。
【0108】
また、環境維持装置420は、非水電解質二次電池用製造装置300の環境維持装置320と同様のものを用いることができる。このため、非水電解質二次電池用製造装置300の環境維持装置320と脱気装置400の環境維持装置420とは、1つの環境維持装置を共通して使用することができる。このように非水電解質二次電池用製造装置300と脱気装置400とで、共通する1つの環境維持装置を用いることで、コストを低減することができる。
【0109】
また、保持部材430には、脱気ノズル411が保持されている。脱気ノズル411は、先端を脱気用の筒状部材92の内部に挿入し、脱気ノズル411の先端から気体を吸引することで、内部空間51内の気体を外部に排出するためのものである。このような脱気ノズル411は、電解質注入ノズル311と同様の構成を有する。
【0110】
このような脱気ノズル411は、基端部側が空間部431内に配置され、先端側は、環境維持チューブ421の内部空間421a内に配置されている。また、脱気ノズル411の先端は、環境維持チューブ421の先端よりも内側に位置する。これにより、環境維持チューブ421の先端を脱気用の筒状部材92に接続させた後で、脱気ノズル411の先端を脱気用の筒状部材92の内部に配置することができ、環境維持チューブ421によってフィルム100の外部の環境を整えた後で、脱気ノズル411により、フィルム100を突き破ることができる。
【0111】
また、保持部材430には、連通路434が設けられており、連通路434の一端が脱気ノズル411の内部空間と接続され、連通路434の他端は、保持部材430の上面部432の空間部431とは反対側の面に開口して設けられている。この連通路434の他端に脱気チューブ412を介して真空ポンプ410が接続されている。
【0112】
真空ポンプ410は、脱気ノズル411の内部空間411aの気体を、連通路434及び脱気チューブ412を介して吸引するものである。
【0113】
このような脱気装置400を用いて内部空間51の脱気を行うには、まず、
図12(a)に示すように、脱気用の筒状部材92から脱気用のキャップ110を取り外し、脱気用の筒状部材92に脱気装置400の環境維持チューブ421を接続する。
【0114】
このとき、非水電解質二次電池用製造装置300と同様に、予め環境維持装置420によって環境維持チューブ421の内部空間421aは、内部空間51内と同じ環境、すなわち、低湿度状態または脱気しておくのが好ましい。もちろん、筒状部材92に環境維持チューブ421を接続してから、環境維持装置420によって環境維持チューブ421の内部空間421aを、低湿度状態または脱気してもよい。
【0115】
このように環境維持チューブ421を脱気用の筒状部材92に接続することで、脱気用の開口部91の周囲のみを内部空間51と同じ低湿度状態とすることができる。
【0116】
環境維持チューブ421は、
図12(b)に示すように、環境維持チューブ421をリチウムイオン二次電池用構造体10に繋げたまま併用して使うこともできる。注液時に内部空間51に気体が封入されている場合や、予備充電時に内部空間51内にガスが発生した場合に、真空ポンプ410及び脱気ノズル411を介して外部に排出、すなわち、脱気を行う。このとき、脱気ノズル411の先端によってフィルム100が破かれても、脱気用の開口部91の外側は、環境維持チューブ421の内部空間421a内に配置されているため、破れたフィルム100の開口から内部空間51内に水分を含む気体が入り込むのを防止することができる。
【0117】
なお、このような脱気工程では、非水電解質二次電池用製造装置300側では、環境維持チューブ321を筒状部材62に接続して、環境維持チューブ321の内部空間321aを内部空間51と同じ環境に維持されていればよい。このとき、電解質注入ノズル311は、開口部61内に差し込んだままの状態であっても、また、電解質注入ノズル311を開口部61から引き抜いた状態であってもよい。
【0118】
上記例は、両方を併用した方法であるが、片方ずつ繋げて単体で使用することもできる。その際は、環境維持チューブ321を繋げて電解質を注入後、筒状部材62側を封止し、そのあとで、環境維持チューブ421を繋げて使用するのが良い。
【0119】
次に、ラミネートパウチを塞ぐ工程を例示する。ラミネートパウチを塞いで最終的な非水電解質二次電池形状とするためには、内部空間51の何れかの部分を封止して、開口部61、91を電極接合体20の入っている空間と隔離するのがよい。
図13(a)に一例を表示する。内部空間51は、内部に電極接合体20が収容された部分である収容室51Aと、収容室51Aと開口部61、91との間にあり、収容室51Aと筒状部材62とを繋いでおり、最終的に捨てる部分である電解質導入部51Bと分けることができる。リチウムイオン二次電池を製造する際に筒状部材62を介して開口部61から注入された電解質は、電解質導入部51Bを介して収容室51A内に注入される。電解質注入後、電解質導入部51Bの一部を溶着等で塞いで接合領域53を形成し、収容室51Aを密閉する。接合領域53により収容室51A内に密閉されている電極接合体20は開口部61、91と隔離される。なお、本実施形態のラミネートフィルム50の接合領域53は、超音波溶接によって溶着して塞ぐようにした。
【0120】
ラミネートパウチを塞ぐ工程は、非水電解質二次電池用製造装置300の環境維持チューブ321、及び、脱気装置400の環境維持チューブ421を取り外すことなく領域52を溶着して接合領域53を形成してもよい。接合領域53を形成する際に、内部空間51内に水分を含む気体が侵入するのを防止して、内部空間51内に収容された電極接合体20の電極活物質層や、注入した電解質Tが、水分によって劣化するのを防止することができる。
【0121】
また、非水電解質二次電池用製造装置300の環境維持チューブ321、及び、脱気装置400の環境維持チューブ421を取り外した後で、ラミネートパウチを塞ぐ工程を行ってもよい。その場合は、ラミネートパウチを塞ぐ工程は、電解質注入後、開口部61、91を再封止して行うことが好ましい。このような工程とすることで、注液装置の使用頻度を上げることができるので、生産効率向上が可能となる。
【0122】
その後は、
図13(b)に示すように、収容室51Aが密封された状態で電解質導入部51Bを切断する切断工程を行う。これにより、電極接合体20が収容された収容室51A側をリチウムイオン二次電池とすることができる。本実施形態の切断工程では、接合領域53を分断するように切断して、収容室51Aが密封された状態が維持されるようにした。すなわち、接合領域53の少なくとも一部が、収容室51A側を塞いだ状態、つまり、電極接合体20側に接合領域53の一部が残った状態で、その他の部分を切り離すように切断する。なお、本実施形態では、接合領域53を分断するように切断したが、特にこれに限定されず、接合領域53の全てが、電極接合体20側に残るように、領域52の接合領域53以外の部分を切断するようにしてもよい。また、電解質導入部51Bの領域52以外の部分で切断するようにしてもよい。また、本実施形態では、切断工程を行うことで、筒状部材62及び脱気用の筒状部材92を切り捨てるようにしたが、特にこれに限定されず、切断工程を行わずに、ラミネートフィルム50に筒状部材62及び脱気用の筒状部材92が設けられた状態でリチウムイオン二次電池としてもよい。また、接合領域53は、本実施形態ではラミネートフィルム50のX方向において一端から他端まで連続的に形成しているが、特にこれに限定されず、接合領域53は開口部61、91の周辺のみに設けてもよい。
【0123】
なお、上述した非水電解質二次電池用製造装置300では、環境維持チューブ321の内部空間321a内に保持された電解質注入ノズル311の先端は、環境維持チューブ321の先端よりも内側に位置することで、電解質注入ノズル311がフィルム70に当接するより前に、環境維持チューブ321を筒状部材62に接続させるようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、変形例を
図14に示す。なお、
図14は、本発明の電解質注入装置の変形例を示す断面図である。
【0124】
図14に示すように、環境維持チューブ321は、伸縮可能となるように途中に蛇腹状に折り曲げられた蛇腹部321bが設けられている。これにより、電解質注入ノズル311の先端が環境維持チューブ321の先端よりも外側に突出していたとしても、環境維持チューブ321の蛇腹部321bを伸長することで、電解質注入ノズル311の先端がフィルム70に当接する前に、環境維持チューブ321を筒状部材62に容易に接続することが可能となる。
【0125】
もちろん、環境維持チューブ321に蛇腹部321bを設けなくても、環境維持チューブ321を伸縮可能な材料で製造した場合には、環境維持チューブ321と電解質注入ノズル311とを、筒状部材62との接続方向に向かって相対移動させることが可能である。
【0126】
また、脱気装置400においても同様に、環境維持チューブ421を伸縮可能とすれば、環境維持チューブ421の脱気用の筒状部材92への装着を容易に行うことができる。
【0127】
なお、本実施形態の筒状部材62は開口部61の中に挿入されている場合だけでなく、筒状部材62は開口部61を外側から覆っており、筒状部材62の内側にラミネートフィルム50が接続されていてもよい。このような例を
図15に示す。なお、
図15は、リチウムイオン二次電池用構造体の変形例を示す断面図である。
図15に示すように、ラミネートフィルム50の開口部61が設けられた部分は、筒状部材62の内部に挿入されて筒状部材62の内周面と固定されている。
【0128】
(実施形態2)
図16は、本発明の実施形態2に係るリチウムイオン二次電池用構造体の平面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0129】
図16に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aは、脱気用の開口部91、筒状部材92、フィルム100が設けられておらず、開口部61、筒状部材62、封止部であるフィルム70のみが設けられている。
【0130】
すなわち、リチウムイオン二次電池用構造体10Aは、電極接合体20と、クリップ部30と、タブリード40と、外装部材であるラミネートフィルム50と、ラミネートパウチに設けられた開口部61と、筒状部材62と、筒状部材62に設けられた封止部として封止部材であるフィルム70と、キャップ80とを具備する。
【0131】
このように脱気用の筒状部材92が設けられていない本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10Aでは、筒状部材62を介して開口部61からラミネートパウチの内部空間51内に電解質Tが注入される。電解質Tを注入後は開口部61またはラミネートパウチの適宜部分を溶着するなどして、リチウムイオン二次電池が形成される。また、必要であれば環境維持チューブ321と筒状部材62を繋いだままにしておくことで、開口部61から内部空間51内に溜まったガスや、予備充電で内部空間51内に発生したガスが脱気される。
【0132】
ここで、本実施形態の非水電解質二次電池用製造装置300について
図17を参照して説明する。なお、
図17は、本実施形態の電解質注入装置を説明する図である。
【0133】
図17に示すように、非水電解質二次電池用製造装置300は、電解質注入ノズル311と、電解質注入ノズル311を覆うように設けられた環境維持チューブ321と、を具備する。
また、非水電解質二次電池用製造装置300は、貯留タンク310と環境維持装置320と環境維持チューブ321と保持部材330と真空ポンプ410と切替チューブ350とを具備する。
【0134】
貯留タンク310と電解質注入ノズル311と環境維持装置320と環境維持チューブ321と保持部材330とは、上述した実施形態1と同様であるため重複する説明は省略する。
【0135】
また、保持部材330の一端が電解質注入ノズル311の内部空間311aに連通する連通路334(
図8参照)の他端には、切替チューブ350が設けられている。
【0136】
切替チューブ350の一端は、保持部材330の連通路334に接続されている。また、切替チューブ350は、途中で三方コック351によって2つに分岐されており、分岐された2つの端部は、それぞれ貯留タンク310と真空ポンプ410とに接続されている。
【0137】
このような非水電解質二次電池用製造装置300では、リチウムイオン二次電池用構造体10の内部空間51内に電解質Tを注入する注入工程では、三方コック351によって貯留タンク310と電解質注入ノズル311の内部空間311aとを連通させて注液を行う。また、内部空間51内に溜まったガスを外部に排出するには、三方コック351によって真空ポンプ410と電解質注入ノズル311の内部空間311aとを連通させて、内部空間51内に溜まったガスの脱気を行う。
【0138】
すなわち、注入工程と脱気工程とは、電解質注入ノズル311と貯留タンク310及び真空ポンプ410との接続を三方コック351によって切り替えるだけで行うことができる。したがって、脱気用の筒状部材92が設けられていなくても、1つの筒状部材62に環境維持チューブ321を接続した状態で、環境維持チューブ321を筒状部材62から取り外すことなく、注入工程及び脱気工程の両方を行うことが可能となり、ラミネートフィルム50の内部空間51内に水分を含む気体が侵入するのを防止することができる。また、脱気装置400が不要となるため、装置全体の小型化及びコストの低減を図ることができる。
【0139】
なお、本実施形態では、非水電解質二次電池用製造装置300に三方コック351を設け、電解質注入ノズル311と貯留タンク310及び真空ポンプ410との接続を切り替えるようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、環境維持装置320として、真空ポンプを用いた場合には、非水電解質二次電池用製造装置300に三方コック351及び脱気用の真空ポンプ410を設けなくてもよい。すなわち、注入工程で内部空間51内に電解質Tを注入した後、脱気工程では、電解質注入ノズル311を筒状部材62から引き抜くだけで、電解質注入ノズル311によって破かれたフィルム70の開口を介して内部空間51と環境維持チューブ321の内部空間321aとが連通する。このため、環境維持装置320によって環境維持チューブ321の内部空間321aを吸引するだけで、予備充電によって内部空間51内に発生したガスを吸引して外部に排出することができる。これにより、さらに脱気用の真空ポンプ410が不要となり小型化及びコストの低減を図ることができる。
【0140】
(実施形態3)
図18は、本発明の実施形態3に係るリチウムイオン二次電池用構造体の要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0141】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10は、上述した実施形態と同様に、電極接合体20と、電極接合体20にクリップ部30を介して接続された一対の外部電極端子であるタブリード40と、電極接合体20、クリップ部30及びタブリード40の一部が収容される外装部材であるラミネートフィルム50と、を備える。
【0142】
また、
図18に示すように、ラミネートパウチには、少なくとも一つの開口部61が設けられており、開口部61には、開口維持部材60が設けられている。また、開口維持部材60の開口部61と接続された端部とは反対側の端部には、開口部61を封止する封止部として封止部材であるフィルム70が設けられている。開口部61がラミネートフィルム50のような軟質部材である場合、ラミネートパウチの内部空間51を減圧すると、開口部61がピッタリと閉じてしまい、次に開口部61を開けるときに作業性が悪くなることがある。そこで、開口維持部材60を開口部61に設けることで、開口部61の開口形状を一定に保つことができるので、電解質注入時に作業がしやすくなる。また、開口維持部材60は開口の形状が維持できる程度の固さを有していればよく、開口部61の内側に取り付けられていても、外側に取り付けられていてもよい。また、形状はリング上でも、円弧状でも、多角形状でもよく、複数の部品で構成されている場合でもよい。
【0143】
筒状部材62は、開口部61を包囲するように、すなわち、開口維持部材60を包囲するように設けられている。具体的には、開口維持部材60に対して外側にある筒状部材62は、筒状部621と、固定部622とを具備する。固定部622は、筒状部621の一端部と開口維持部材60の外周面とを周方向に亘って接続する。
【0144】
また、筒状部621は、開口維持部材60と固定された一端部とは反対側の他端部が、開口維持部材60のフィルム70が設けられた端部よりも外側に突出した長さを有する。
また、筒状部621は、非水電解質二次電池用製造装置300が着脱可能な雄または雌の継手構造を有する。本実施形態では、筒状部621の継手構造として、筒状部621の外周面に雄ねじからなるねじ加工部63を設けるようにした。
【0145】
また、筒状部621の内部の一方の端部は、固定部622によって塞がれており、内部は、他方の端部のみ開放されている。すなわち、筒状部材62と開口維持部材60とは固定部622によって繋がっており、筒状部材62と開口維持部材60との間は、筒の軸方向に貫通部が設けられていない。これにより、筒状部材62に非水電解質二次電池用製造装置300を接続した際に、筒状部材62の内部に密閉空間を容易に形成することができる。なお、固定部622と開口維持部材60とは、溶着又は接着剤を用いた接着で固定することができる。また、開口維持部材60と筒状部材62とは、一体成形された部品を用いるようにしてもよい。
【0146】
もちろん、筒状部材62と開口維持部材60とは固定部622によって繋がっており、固定部622に貫通孔が設けられることで、筒状部材62と開口維持部材60との間には筒の軸方向に貫通部が設けられていてもよい。このように固定部622に貫通孔が設けられている場合には、非水電解質二次電池用製造装置300によって環境維持チューブ321と筒状部材62とを接続した際に、筒状部材62の内部に低湿度ガスを流し続けることで、筒状部材62の内部を低湿度な状態に保つことができる。
【0147】
電解質を注入する際には、開口部61には、非水電解質二次電池用製造装置300の電解質注入ノズル311が挿入される。また、筒状部材62の筒状部621の外周には、環境維持チューブ321が接続される。このため、開口維持部材60の開口は、電解質注入ノズル311が挿入可能な程度の開口面積を有していればよく、開口維持部材60の開口面積を比較的小さくし、フィルム70の面積を比較的小さくすることが好ましい。
【0148】
なお、脱気用の開口維持部材90、筒状部材92についても開口維持部材60、筒状部材62と同様の構成を採用することが可能である。
【0149】
ここで、本実施形態の筒状部材62の変形例を
図19~
図26に示す。なお、
図19~
図26は、実施形態3のリチウムイオン二次電池用構造体の変形例を示す要部断面図である。
【0150】
図19に示すように、筒状部621は、開口維持部材60に固定部622によって固定された一端部とは反対側の他端部が、開口維持部材60のフィルム70が設けられた端部よりも外側に突出しない長さを有するものであってもよい。つまり、開口維持部材60のフィルム70が設けられた端部の一端部が、筒状部621の他端よりも外側まで延設されている。
【0151】
また、
図20に示すように、固定部622は、筒状部621の内周面の中央部と開口維持部材60の外周面とを接続してもよい。すなわち、筒状部621の両端部が開口維持部材60の両端部に向かって延設されていてもよい。なお、
図20に示す例では、筒状部621は、その両端部が開口維持部材60の両端部よりも外側に突出しない長さを有する。もちろん、筒状部621の長さは特にこれに限定されず、筒状部621は、その両端部のうち少なくとも一方が、開口維持部材60の端部よりの外側まで突出する長さで設けられていてもよい。
【0152】
また、
図21に示すように、固定部622は、筒状部621のフィルム70側の一端部と開口維持部材60の外周面とを固定し、筒状部621の他端は、開口維持部材60のフィルム70が設けられた一端部とは反対側の他端部側に配置されていてもよい。なお、
図21に示す例では、筒状部621は、開口維持部材60と固定された端部とは反対側の端部が、開口維持部材60の他端部よりも外側に突出しない長さで設けられている。もちろん、筒状部621の長さは、これに限定されず、筒状部621は、その端部が開口維持部材60の端部よりも外側に突出する長さで設けられていてもよい。
【0153】
また、
図22に示すように、筒状部621の内周面に継手構造を有するものであってもよい。つまり、筒状部621の内周面にねじ加工部63が設けられていてもよい。また、これに合わせて、キャップ80の外周面がねじ加工部63に螺号する形状を有していればよい。
【0154】
また、本実施形態では、開口維持部材60の開口端部に封止部材であるフィルム70を設けるようにしたが、特にこれに限定されるものではなく、フィルム70によって開口部61が封止できれば、封止部材であるフィルム70は、開口維持部材60の何れの位置であってもよい。
【0155】
例えば、
図23に示すように、フィルム70は、開口維持部材60の軸方向の中央部に設けられていてもよい。
【0156】
また、
図24に示すように、フィルム70は、筒状部材62の筒状部621に設けられていてもよい。
また、
図25に示すようにフィルム70は、開口維持部材60と、筒状部材62の両方に設けられていてもよい。
さらに、筒状部材62は、開口部の開口を維持する開口維持部材60を包囲していれば良いため、
図26に示すように、筒状部材62と開口維持部材60とは、互いに固定されていなくてもよい。つまり、筒状部材62と開口維持部材60とは、それぞれ外装部材に固定されている。
【0157】
(実施形態4)
図27及び
図28は、本発明の実施形態4に係るリチウムイオン二次電池用構造体の断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0158】
図27及び
図28に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10は、正極板21及び負極板22を備える電極接合体20と、正極板21又は負極板22にそれぞれ接続される集電部材31と、電極接合体20及び集電部材31で構成される電極接続体が収容される外装部材である電池ケース55及び蓋部材56とを具備する。
【0159】
複数の正極板21の端部には、電極活物質層が形成されていない部分同士が束ねられた正極結束部26が設けられており、この正極結束部26に集電部材31が接続されている。
【0160】
また、複数の負極板22の端部には、電極活物質層が形成されていない部分同士が束ねられた負極結束部27が設けられており、この負極結束部27に集電部材31が接続されている。
【0161】
正極結束部26及び負極結束部27のそれぞれに接続された集電部材31の各々には、蓋部材56の貫通孔57から外部に突出する端子部32が設けられている。すなわち、本実施形態では、集電部材31の端子部32が、外部電極端子に相当する。
【0162】
このような電極接合体20と集電部材31の電極接合体20に接続された側の一部とは、電池ケース55内に収容されている。
【0163】
電池ケース55は、金属材料、樹脂材料等で製造され、内部に電極接合体20及び集電部材31の電極接合体20に接続された側の一部が収容される中空の箱形状を有し、上部が開口して設けられている。
【0164】
蓋部材56は、電池ケース55の空間の上部開口に蓋をするものであり、金属材料、樹脂材料等で製造されている。
【0165】
このような蓋部材56は、端部を電池ケース55の上端とレーザー溶接することで蓋部材56が電池ケース55に固定されている。なお、電池ケース55と蓋部材56との固定方法は特にこれに限定されず、内部が密閉された状態を保てるのであれば、接着剤を用いた接着であってもよくカシメ構造、ネジやボルト、クリップ等を用いて固定するようにしてもよい。ただし、電池ケース55と蓋部材56とは、容易に両者の固定が解除できず、内部の気密が維持できる固定方法が好ましく、溶接等が好適に用いられる。
【0166】
また、外装部材には、内部と外部とを連通する開口部61が設けられ、開口部61に筒状部材62が設けられている。
【0167】
蓋部材56には、上方に筒状に突出する突出部59が設けられており、突出部59の先端に開口部61が設けられている。この突出部59の先端の開口部61に、筒状部材62が固定されている。筒状部材62は、雄又は雌の継手構造を有する。本実施形態では、上述した実施形態1と同様の筒状部材62、すなわち、筒状部材62は、大径部62a及び小径部62bを有し、小径部62bの外周に雄ねじとなるねじ加工部63が設けられている。
【0168】
また、リチウムイオン二次電池用構造体10には、開口部61を封止する封止部として封止部材であるフィルム70が設けられている。本実施形態では、上述した実施形態1と同様に、フィルム70は、筒状部材62の開口部61とは反対側の端部に、筒状部材62の開口を塞いで設けられている。これにより、開口部61は、フィルム70によって封止されている。なお、フィルム70の詳細については、上述した実施形態1と同様のため重複する説明は省略する。
【0169】
このような突出部59が設けられた電池ケース55及び蓋部材56で構成される外装部材の内部空間51は、収容室51Aと電解質導入部51Bとを有する。
収容室51Aは、電極接合体20が収容される部分であり、電池ケース55の内部に設けられている。
電解質導入部51Bは、収容室51Aと筒状部材62との間にあり、収容室51Aと筒状部材62とをつなぐものであり、本実施形態では、突出部59の内部に設けられている。そしてリチウムイオン二次電池を製造する際に筒状部材62の開口から注入された電解質は、電解質導入部51Bを介して収容室51A内に注入される。
【0170】
また、電解質導入部51Bとなる突出部59には、内部空間51内に電解質を注入してリチウムイオン二次電池を製造した場合に溶着等により塞ぐことができる領域52が設けられている。
【0171】
本実施形態では、突出部59の塞ぐための領域52には、電極接合体20が収容された収容室51Aよりも凹んだ凹部54が設けられている。この凹部54の底面を溶着等で接合して接合領域53が形成される。
【0172】
このようなリチウムイオン二次電池用構造体10では、非水電解質二次電池用製造装置300によって筒状部材62を介して開口部61から内部空間51内に電解質Tを注入し、領域52を溶着等で塞ぐことで、リチウムイオン二次電池が製造される。
【0173】
また、領域52の一部を塞いで接合領域53を形成した後、電解質導入部51Bを切断して筒状部材62を切り離してリチウムイオン二次電池としてもよく、電解質導入部51Bを切断することなく、リチウムイオン二次電池としてもよい。
【0174】
なお、領域52の接合領域53を切断する場合には、領域52は、他の部分に比べて厚みを薄くするのが好ましい。これにより、領域52を切断し易くすることができる。
【0175】
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10にも、上述した実施形態1と同様に、脱気用の筒状部材92を設けるようにしてもよい。
【0176】
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用構造体10は、突出部59の先端の開口部61に、筒状部材62を固定して作成したが、突出部59を延長した構造にしてもよい。蓋部材56を成型するときに、一体に形成することができ、部品点数を減らすことができる。
【0177】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0178】
例えば、上述した各実施形態では、非水電解質二次電池用製造装置300として、電解質注入ノズル311と環境維持チューブ321とを設けた構成を例示したが、特にこれに限定されない。このような例を
図29に示す。なお、
図29は、電解質注入装置の変形例を説明する図である。
【0179】
図29に示すように、非水電解質二次電池用製造装置300は、貯留タンク310と環境維持装置320と環境維持チューブ321とを具備する。
【0180】
環境維持チューブ321は、筒状部材62に結合するように設けられている。
図29に示す例では、環境維持チューブ321は、その先端に筒状部材62に着脱可能に接続される流体用の接続継手である接続部材323を具備する。すなわち、筒状部材62に雄又は雌の継手構造を設け、環境維持チューブ321に筒状部材62に対となる継手構造の接続部材323を設けることで、両者の間から流体が漏れ出ることがなく、且つ両者を容易に取り外すことができる。そして、接続部材323を筒状部材62に接続することで、筒状部材62のフィルム70が破れるようになっている。本実施形態では、接続部材323と筒状部材62とは、筒状部材62の内周面に設けられた雌ねじに、接続部材323の外周面に設けられた雄ねじを螺合させることで接続される。このため、筒状部材62に接続部材323を挿入することで、筒状部材62の開口を封止するフィルム70は破けるようになっている。つまり、環境維持チューブ321が、封止部であるフィルム70の封止状態を解除する封止部開放部としても機能する。もちろん、筒状部材62と接続部材323との継手構造は、特にこれに限定されず、例えば、フランジ継手、カップリング、クイックディスコネクト(quick disconnect)、クイックカップリング(quick coupling)、迅速継手などが挙げられる。
【0181】
また、環境維持チューブ321は、接続部材323が設けられた端部とは反対側の端部側が三方コック324によって2つに分岐されており、分岐された2つの端部は、それぞれ貯留タンク310と環境維持装置320とに接続されている。すなわち、環境維持チューブ321は、電解質が貯留された貯留タンク310に接続されている。
【0182】
このような非水電解質二次電池用製造装置300では、リチウムイオン二次電池用構造体10の内部空間51内に電解質Tを注入する注入工程では、予め三方コック324によって環境維持装置320と環境維持チューブ321とを接続して、環境維持チューブ321の内部を内部空間51内と同じ低湿度状態にしてから、環境維持チューブ321の接続部材323を筒状部材62に接続する。このように環境維持チューブ321を筒状部材62に接続することによってフィルム70が破れた際に、開口部61から内部空間51内に外部からの気体、すなわち、水分を含む気体が侵入するのを防止することができる。また、環境維持チューブ321を筒状部材62に接続する前に、予め環境維持チューブ321内を低湿度状態としておくことで、環境維持チューブ321を筒状部材62に接続した際に、環境維持チューブ321内の湿度コントロールされていない気体が内部空間51内に侵入するのを抑制することができる。
【0183】
その後、三方コック324によって環境維持チューブ321と貯留タンク310とを接続して、内部空間51内に電解質Tを注入する。これにより、内部空間51内には水分を含む気体が侵入することなく、電解質Tを注入することができる。そして、内部空間51内に電解質Tを注液した後は、開口部61を再び塞いでもよく、また、ラミネートパウチの他の部分を塞ぐようにしてもよい。また、上述した実施形態と同様に領域52を塞ぐことでリチウムイオン二次電池を製造することができる。
【0184】
このように
図29に示す非水電解質二次電池用製造装置300では、環境維持チューブ321が不要となるため、部品点数を減らしてコストを低減することができる。
【0185】
また、上述した各実施形態では、筒状部材62は、開口が円形となる筒形状を例示したが、特にこれに限定されず、
図30に示すように、筒状部材62は、開口が四角形となる形状を有していてもよい。もちろん、筒状部材の筒状部は、開口形状が円形、四角形に限定されず、楕円形や四角形以外の多角形であってもよい。
【符号の説明】
【0186】
10…リチウムイオン二次電池用構造体、20…電極接合体、21…正極板、22…負極板、23…セパレータ、24…正極側接続部、25…負極側接続部、26…正極結束部、27…負極結束部、30…クリップ部、31…集電部材、32…端子部(外部電極端子)、40…タブリード(外部電極端子)、50…ラミネートフィルム、51…収容室、51A…第1収容室、51B…第2収容室、52…領域、53…接合領域、54…凹部、55…電池ケース、56…蓋部材、57…貫通孔、58…接続部、59…突出部、60、90…開口維持部材、61,91…開口部、62、92…筒状部材、62a、92a…大径部、62b、92b…小径部、62c、92c…段差、63、93…ねじ加工部、70、100…フィルム(封止部材)、80、110…キャップ、621…筒状部、622…固定部、300…非水電解質二次電池用製造装置、310…貯留タンク、311…電解質注入ノズル、311a…内部空間、312…注液チューブ、320…環境維持装置、321…環境維持チューブ、321a…内部空間、321b…蛇腹部、322…接続チューブ、323…接続部材、324…三方コック、330…保持部材、331…空間部、332…上面部、333…接続路、334…連通路、400…脱気装置、410…真空ポンプ、411…脱気ノズル、411a…内部空間、412…脱気チューブ、420…環境維持装置、421…環境維持チューブ、421a…内部空間、422…接続チューブ、430…保持部材、431…空間部、432…上面部、433…接続路、434…連通路、A、B…工場、T…電解質