IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヒラカワの特許一覧

特許7437746ボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置
<>
  • 特許-ボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/46 20060101AFI20240216BHJP
   F22B 37/42 20060101ALI20240216BHJP
   G01F 23/24 20060101ALN20240216BHJP
【FI】
F22B37/46
F22B37/42 Z
G01F23/24 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020055206
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156459
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000154668
【氏名又は名称】株式会社ヒラカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上梨 厚見
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】田口 裕介
(72)【発明者】
【氏名】木下 正成
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148460(JP,A)
【文献】特開2005-321146(JP,A)
【文献】実開平01-061507(JP,U)
【文献】特開平10-267209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/46
F22B 37/42
G01F 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラへの給水路に設けられた給水ポンプと、
前記給水ポンプが運転しているが、その運転状態が低レベルである状態が一定時間以上持続したときに、前記ボイラの缶内が異常低水位であると判断する制御装置と、
を有することを特徴とするボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置。
【請求項2】
制御装置は、一定時間内において、給水ポンプが作動しているが必要程度まで作動しなかった場合に、ボイラの缶内が異常低水位であると判断するものであることを特徴とする請求項1記載のボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置。
【請求項3】
制御装置は、ボイラの缶内が異常低水位であると判断したときに、ボイラへの燃料の供給を停止あるいはボイラへの燃料の供給状態を低下させること、および/または異常低水位である旨を告知することを行うものであることを特徴とする請求項1または2記載のボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置。
【請求項4】
ボイラへの給水路に設けられた給水ポンプと、
前記ボイラの運転中に前記給水ポンプが必要以上の長時間で作動しているときに、前記給水ポンプが不良であると判断する制御装置と、
を有することを特徴とするボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置。
【請求項5】
制御装置は、給水ポンプが不良であると判断したときに、ボイラへの燃料の供給状態を低下させること、および/または異常低水位である旨を告知することを行うものであることを特徴とする請求項4記載のボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置。
【請求項6】
ボイラの運転中に前記ボイラへの給水路に設けられた給水ポンプが必要以上の長時間で作動しているときに、前記給水ポンプが不良であると判断することを特徴とするボイラにおける給水ポンプの異常発見方法。
【請求項7】
給水ポンプが不良であると判断したときにそのことを告知することを特徴とする請求項6記載のボイラにおける給水ポンプの異常発見方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラの缶水は、燃焼熱を受けて蒸発することで、蒸気を作り出す。ボイラ内における缶水の水位が低下すると、缶体の側部に取り付けた水柱管の内部の水位検出電極が反応することでその状態を検出する(特許文献1)。そして、この水位検出電極による検出結果にもとづいて給水ポンプを作動させ、それにより缶水の水位を上昇させる。所定の水位まで上昇したことが水位検出電極によって検知されたなら、給水ポンプを停止させる。
【0003】
給水ポンプを制御するための水位検出電極に絶縁不良が生じたり、給水ポンプに差動不良が生じたり、給水ポンプの能力が低下したりするなどの不具合が生じた場合には、缶水の水位すなわちそれに連動した水柱管の水位が低下する。そのときには、水柱管に設置した異常低水位検出用の電極にてそのことを検出し、缶体が空焚き状態に至る前に、燃焼状態を遮断する。これによって、缶体の損傷や爆発の発生を防止するとともに、火災などの事故の発生を防止することができる。その結果、缶体が適切に保護されることになる。
【0004】
公知のボイラでは、水柱管内に異常低水位検出用の電極が2本設置されることで、異常低水位の発生を二重に検知できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭60-143203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、異常低水位検出用の電極が劣化したり、同電極に絶縁不良が生じたりすると、異常低水位の発生を検知することができなくなる。また、水柱管は、水側連絡管と蒸気側連絡管とによってボイラの缶体に連通されているのが一般的な構成であるが、これらの連絡管がスケールによって詰まることがあり、その場合には、電極が正常であっても、同様に異常低水位の発生を検知することができなくなる。
【0007】
そこで本発明は、このような問題点を解決し、ボイラの缶体の内部における異常低水位の状態を確実に検知することで、異常低水位での燃焼を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため本発明のボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置は、ボイラへの給水路に設けられた給水ポンプと、前記給水ポンプが運転しているが、その運転状態が低レベルである状態が一定時間以上持続したときに、ボイラの缶内が異常低水位であると判断する制御装置と、を有することを特徴とする。
【0009】
このような構成であると、給水ポンプの運転状態にもとづき制御装置によってボイラの缶内が異常低水位であると判断するものであるため、ボイラの缶体の内部における異常低水位の状態を確実に検知することができて、異常低水位での燃焼を確実に防止することができる。
【0011】
本発明によれば、上記のボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置において、制御装置は、一定時間内において、給水ポンプが作動しているが必要程度まで作動しなかった場合に、ボイラの缶内が異常低水位であると判断するものであることが好適である。
【0012】
本発明によれば、上記のボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置において、制御装置は、ボイラの缶内が異常低水位であると判断したときに、ボイラへの燃料の供給を停止あるいはボイラへの燃料の供給状態を低下させること、および/または異常低水位である旨を告知することを行うものであることが好適である。
【0013】
本発明の、別の、ボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置は、ボイラへの給水路に設けられた給水ポンプと、前記ボイラの運転中に前記給水ポンプが必要以上の長時間で作動しているときに、前記給水ポンプが不良であると判断する制御装置と、を有することを特徴とする。
【0014】
このような構成であると、ボイラの運転中に給水ポンプが必要以上の長時間で作動しているときに、制御装置によって給水ポンプが不良であると判断するものであるため、それにもとづいてボイラの缶体の内部における異常低水位の状態を確実に検知することができて、異常低水位での燃焼を確実に防止することができる。
【0015】
本発明によれば、上記した、別の、ボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置において、制御装置は、給水ポンプが不良であると判断したときに、ボイラへの燃料の供給状態を低下させること、および/または異常低水位である旨を告知することを行うものであることが好適である。
【0016】
本発明のボイラにおける給水ポンプの異常発見方法は、ボイラの運転中に給水ポンプが必要以上の長時間で作動しているときに、前記給水ポンプが不良であると判断することを特徴とする。
【0017】
このようにすると、外部からの観察だけではわかりにくいボイラにおける給水ポンプの異常を、簡単かつ容易に発見することができる。
【0018】
本発明のボイラにおける給水ポンプの異常発見方法によれば、給水ポンプが不良であると判断したときにそのことを告知することが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、制御装置によってボイラの缶内が異常低水位であると判断するものであるため、または、制御装置によって給水ポンプが不良であると判断するものであるため、ボイラの缶体の内部における異常低水位の状態を確実に検知することができて、異常低水位での燃焼を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態のボイラにおける異常低水位での燃焼の防止装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すボイラおいて、10は缶体であって、内部に缶水を貯留しているとともに、その上端に設けられたバーナ11によって燃料を燃焼させることで缶水を蒸発させて蒸気を得るものである。図示は省略するが、缶体10の内部における上側の部分は気相すなわち蒸気が充満しており、缶体10の内部における下側の部分は液相すなわち缶水が貯留されている。12はバーナ11への燃料供給路で、この燃料供給路12には、流量調節弁13と燃料遮断弁14とが設けられている。15は缶体10への給水路で、缶体10における上述の液相の部分すなわち下側の部分に接続されている。給水路15には、給水ポンプ16と逆止弁17とが設けられている。
【0022】
缶体10の外側には気水分離器18が設けられている。この気水分離器18は、缶体10から排出される沸騰状態の気水混合流体を受け入れ、この混合流体を蒸気と熱水とに分離し、分離された蒸気を系外に供給し、また熱水を缶体10の内部に戻すものである。
【0023】
缶体10の外側には、気水分離器18のほかに、水柱管19が設けられている。この水柱管19は、蒸気側連絡管20によって、缶体10の内部における上側の気相に連通されるとともに、水側連絡管21によって、缶体10の内部における下側の水相に連通されている。水柱管19には、水面計22が設けられている。また水柱管19には、水位検出用の複数の電極23、23、・・・・が設けられている。これらの電極23、23、・・・・として、詳細には、給水制御用の電極、異常低水位検出用の電極などが設けられている。24は高水位検出用の電極であり、この高水位検出用の電極24は、他の水位検出用の電極23、23、・・・・とは相違して、水柱管19ではなく、缶体10の上部に設置されている。
【0024】
25は、制御装置であって、マイクロコンピュータやその他の制御機器によって構成されている。26は、この制御装置25からの、またはこの制御装置25への、信号ラインである。信号ライン26は、流量調節弁13および燃料遮断弁14と、電極23、24と、給水ポンプ16とに接続されて、これらと制御装置25との間における信号の授受のために用いられる。
【0025】
このような構成において、缶体10には給水ポンプ16の作用によって給水路15から逆止弁17を経て缶水が供給される。また燃料供給路12から供給された燃料がバーナ11にて燃焼されることで、缶体10内の缶水が加熱され蒸気が発生される。バーナ11における燃焼量は、制御装置25からの制御信号にもとづき、流量調節弁13によってバーナ11へ供給される燃料の量が調節されることによって制御される。缶体10の運転時には、燃料遮断弁14は開状態とされる。発生した蒸気は、気水分離器18を経て系外へ排出され、需要先へ供給される。気水分離器18において蒸気から分離された熱水は、缶体10へ戻される。
【0026】
缶体10の運転中におけるこの缶体10の内部の水位は、水柱管19や缶体10に設けられた電極23、24によって、検知される。制御装置25は、水位の検知信号を受けて、缶体10の内部の缶水の水位が適正範囲となるように、缶体10における蒸発量に応じて給水ポンプ16の運転状態を制御する。
【0027】
しかしながら、電極23、24が劣化したり、缶体10と水柱管19とを連通させる蒸気側連絡管20や水側連絡管21に詰まりが発生したりした場合には、缶体10の内部における水位を正確に検出できなくなる。その結果、水位についての誤った検出結果が生じて、給水ポンプ16が運転されるべきときに運転されなくなって、問題が生じる。たとえば、水位が低くなっているにもかかわらず電極23がそのことを検出しないと、給水ポンプ16がまったく作動しなかったりする。すると、缶体10の内部の水位がさらに低下して、空焚き状態が発生する危険性がある。
【0028】
このような事態に対処するために、制御装置25は、給水ポンプ16の運転状態が低レベルである状態が一定時間以上持続したときに、たとえば一定時間内に全く運転されなかったときに、缶体10の内部が異常低水位であると判断する。そして、その場合には、制御装置25は、燃料供給路12における流量調節弁13の開度を低下させたり、燃料遮断弁14による遮断動作を行わせたりすることで、バーナ11の運転状態を低下あるいは停止させる。これによって、異常低水位の状態のままボイラの缶体10が運転し続けられることが防止される。また制御装置25は、缶体10の内部が異常低水位である場合に、そのことをディスプレイ表示したり、警告音を発したりすることで、ボイラの操作者などに対する告知を行うこともできる。場合によっては、告知のみを行うシステムとすることもできる。
【0029】
換言すると、制御装置25は、給水ポンプ16が能力に応じた作動状態となっていない状態の時間をカウントするなどして、その状態が一定時間以上持続した場合に、給水量が不足して缶体10の内部が異常低水位の状態にあると判断する。そして制御装置25は、それにもとづく適切な対処を行うことで、ボイラを安全に運転することに寄与することができる。
【0030】
制御装置25は、電極23、24が正常に動作しているときには、給水ポンプ16が正常に機能しているかどうかを判定することもできる。たとえば給水ポンプ16が正常に機能している場合には、この給水ポンプ16をある程度の時間だけ運転すれば、缶体10の内部の水位は所要のレベルに到達する。これに対し給水ポンプ16をある程度の時間以上運転しても缶体10の内部の水位が所要のレベルに到達しないときや、給水ポンプ16の運転状態に何らかの乱れが生じたりしたときには、制御装置25は、給水ポンプ16の能力が異常に低下した不良状態にあると判断する。これにより、給水ポンプ16の異常を発見することができる。
【0031】
そして制御装置25は、その場合においても、燃料供給路12における流量調節弁13の開度を低下させたり、燃料遮断弁14による遮断動作を行わせたりすることで、バーナ11の運転状態を低下あるいは停止させる。また制御装置25は、給水ポンプ16の能力が異常に低下したことをディスプレイ表示したり、警告音を発したりすることで、ボイラの操作者などに対する告知を行うこともできる。特にこの場合には、給水ポンプ16は能力が低下したとはいえ稼働状態を維持しているため、バーナ11の運転状態を低下あるいは停止させることなく、ボイラの操作者などへの告知を行うだけで十分なこともあり得る。
【符号の説明】
【0032】
10 缶体
11 バーナ
12 燃料供給路
13 流量調節弁
14 燃料遮断弁
15 給水路
16 給水ポンプ
25 制御装置
図1