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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20240216BHJP
   F16C 35/073 20060101ALI20240216BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20240216BHJP
   F16J 15/3256 20160101ALI20240216BHJP
   F16J 15/3276 20160101ALI20240216BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C35/073
F16C19/18
F16J15/3256
F16J15/3276
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020092897
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021188653
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大松 佑汰
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187319(JP,A)
【文献】特開2010-031899(JP,A)
【文献】特開2017-211005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/78
F16C 35/073
F16C 19/18
F16J 15/3256
F16J 15/3276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に同軸回転する外側部材及び内側部材を備えた軸受装置であって、
前記内側部材は、ハブ輪と前記ハブ輪の軸方向一端部側に嵌合される内輪部材とで構成され、
前記ハブ輪は、前記軸方向一端部から径方向外方に延出して形成される鍔状の加締部を有し、
前記内輪部材の外周面には、前記内輪部材の前記外周面に嵌合される円筒嵌合部と、該円筒嵌合部の軸方向一端部から径方向外方に延びる円板部とを有するスリンガ部材が嵌合されており、
前記加締部は、前記内輪部材と前記円筒嵌合部との間を密封する弾性材料からなるシール部に弾接した状態で前記内輪部材を前記ハブ輪に一体的に固定するように設けられており、
前記シール部は、前記内輪部材及び前記スリンガ部材に密着するように設けられていることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記加締部は、前記円板部と前記軸方向に重なるように延出して形成され、
前記シール部は、前記円板部と前記加締部との間に設けられていることを特徴とする軸受装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記シール部は、前記円板部に固着された磁性ゴムからなる磁気エンコーダで構成されていることを特徴とする軸受装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
前記シール部は、前記円板部に固着された磁性ゴムからなる磁気エンコーダの径方向内側に別途設けられていることを特徴とする軸受装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項において、
前記スリンガ部材は、前記外側部材及び前記内側部材の間を密封するシールリップ部が摺接し、前記外側部材及び前記内側部材の間に設けられる密封装置の一部を構成することを特徴とする軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に同軸回転する外側部材及び内側部材と、前記外側部材及び前記内側部材の間を密封するシール部とを備えた軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1及び下記特許文献2に示すように、内側部材を構成するハブ輪の軸方向一端部を径方向外方に折り曲げて加締治具を揺動しながら回転させて加締め加工し、ハブ輪と内輪部材とを一体的に固定する軸受装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-68890号公報
【文献】特開2019-100505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこのような構成では、加締め加工により、ハブ輪と内輪部材とを一体的に固定できても、内側部材に嵌合されるスリンガ部材と内側部材との嵌合部位が、軸受内部への泥塩水等の浸入経路になってしまう場合がある。
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みなされたもので、内側部材に嵌合されるスリンガ部材との嵌合部位からの泥塩水等の浸入を防ぐことができる軸受装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の軸受装置は、相対的に同軸回転する外側部材及び内側部材を備えた軸受装置であって、前記内側部材は、ハブ輪と前記ハブ輪の軸方向一端部側に嵌合される内輪部材とで構成され、前記ハブ輪は、前記軸方向一端部から径方向外方に延出して形成される鍔状の加締部を有し、前記内輪部材の外周面には、前記内輪部材の前記外周面に嵌合される円筒嵌合部と、該円筒嵌合部の軸方向一端部から径方向外方に延びる円板部とを有するスリンガ部材が嵌合されており、前記加締部は、前記内輪部材と前記円筒嵌合部との間を密封する弾性材料からなるシール部に弾接した状態で前記内輪部材を前記ハブ輪に一体的に固定するように設けられており、前記シール部は、前記内輪部材及び前記スリンガ部材に密着するように設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、加締部は、内輪部材とスリンガ部材との間を密封する弾性材料からなるシール部に弾接した状態で内輪部材をハブ輪に一体的に固定するように設けられている。よって、内輪部材とスリンガ部材との嵌合部位の密封性が向上し、軸受装置内部への泥塩水等の浸入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軸受装置は上述した構成とされているため、内側部材に嵌合されるスリンガ部材との嵌合部位からの泥塩水等の浸入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】は、本発明の一実施形態に係る軸受装置の一例を示す模式的概略縦断面図である。
図2】は、図1のX部の部分拡大断面図であり、(a)は本発明の第1実施形態を説明するために模式的に示す概略断面図、(b)は(a)の変形例を説明するために模式的に示す概略断面図である。
図3】は、図1のX部の部分拡大断面図であり、(a)は本発明の第2実施形態を説明するために模式的に示す概略断面図、(b)は(a)の変形例を説明するために模式的に示す概略断面図である。
図4】は、図1のX部の部分拡大断面図であり、(a)は本発明の第3実施形態を説明するために模式的に示す概略断面図、(b)は(a)の変形例を説明するために模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図には、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
本実施形態に係る軸受装置1は、相対的に同軸回転する外側部材2及び内側部材5を備えている。内側部材5は、ハブ輪3とハブ輪3の軸方向一端部3c側に嵌合される内輪部材4とで構成されている。ハブ輪3は、軸方向一端部3cから径方向外方に延出して形成される鍔状の加締部34を有している。内輪部材4の外周面4bには、内輪部材4の外周面4bに嵌合される円筒嵌合部101と、円筒嵌合部101の軸方向一端部101aから径方向外方に延びる円板部102とを有するスリンガ部材10が嵌合されている。加締部34は、内輪部材4と円筒嵌合部101との間を密封する弾性材料からなるシール部13に弾接した状態で内輪部材4をハブ輪3に一体的に固定するように設けられている。
以下、詳しく説明する。
【0010】
<第1実施形態>
まずは第1実施形態について、図1図2を参照しながら説明する。
図1に示す軸受装置1は、自動車の車輪(不図示)を軸L回りに回転(軸回転)可能に支持する。この軸受装置1は、ハブベアリングであって、大略的に、外輪(外側部材)2と、ハブ輪3と、ハブ輪3の車体側に嵌合一体とされる内輪部材4と、外輪2とハブ輪3及び内輪部材4との間に介装される2列の転動体(ボール)6…とを含んで構成される。この例では、ハブ輪3及び内輪部材4が内輪(内側部材)5を構成する。外輪2は、自動車の車体(不図示)に固定される。内輪5は、外輪2に対して、軸L回りに回転(軸回転)可能とされ、外輪2と、内輪5との間に軸受空間(環状空間)Sが形成される。軸受空間S内には、2列の転動体6…が、リテーナ6aに保持された状態で、外輪2の軌道輪2a、ハブ輪3及び内輪部材4の軌道輪3a,4aを転動可能に介装されている。ハブ輪3は、円筒形状のハブ輪本体30と、ハブ輪本体30より立上基部31を介して径方向外側に延出するよう形成されたハブフランジ32を有し、ハブフランジ32にボルト33及び不図示のナットによって車輪が取付固定される。ハブ輪3は、軸方向一端部(車体側端部)3cから径方向外方に延出して形成される鍔状の加締部34を有している。この加締部34は、図1において二点鎖線で示している加締治具7によって加締め加工により形成される。加締治具7は、本体部70が円柱状に形成されており、本体部70の一方の端面70aから傾斜部71が形成されている。傾斜部71の径は、本体部70の径よりも小さく形成されている。そして、傾斜部71の先端から円柱状に突出した端部72が、ハブ輪3の軸孔35に挿入可能な大きさに形成されている。内輪部材4に後記する密封装置8を装着した後、このような加締治具7をハブ輪3の車体側からあてがい、図1に示すような角度αで加締治具7を揺動しながら軸L回りに回転させることにより、ハブ輪3の加締部34が形成される前の端部が、加締治具7の傾斜部71の傾斜面に沿って本体部70の端面70aに誘導されて径方向外方に折り曲げ加工される。このとき、内輪部材4と円筒嵌合部101との間には、弾性材料からなるシール部13(図2(a)参照)が介在し、加締部34は、シール部13に弾接した状態で内輪部材4をハブ輪3に一体的に固定するように設けられる。軸受空間Sの軸L方向に沿った両端部であって、外輪2とハブ輪3との間、及び、外輪2と内輪部材4との間には、密封装置8,9(ベアリングシール)が装着され、軸受空間Sの軸L方向に沿った両端部が密封される。これによって、軸受空間S内への泥塩水等の浸入や軸受空間S内に充填される潤滑剤(グリース等)の外部への漏出が防止される。
以下において、軸L方向に沿って車輪に向く側(図1において左側を向く側)を車輪側、車体に向く側(同右側を向く側)を車体側と言う。
【0011】
図2(a)は、図1のX部を拡大した部分拡大断面図であり、車体側に装着される密封装置8を示している。密封装置8は、スリンガ部材10と、芯体部材11と、芯体部材11に固着されスリンガ部材10に弾性的に摺接するシールリップ部12とを備えている。
【0012】
スリンガ部材10は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成され、片側の断面が略L字形状の円筒形とされる。スリンガ部材10は、内輪部材4の外周面4bに嵌合(外嵌)される円筒嵌合部101と、円筒嵌合部101の軸方向一端部(車体側端部)101aから径方向外方に延びる円板部102とを有している。スリンガ部材10の円板部102における外側面102bには、シール部13が設けられている。シール部13は、断面形状が矩形状の円環体とされ、ゴム材等の弾性材料からなり、加硫成型により、円板部102の外側面102bの径方向内側に固着一体とされる。
【0013】
芯体部材11は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成され、片側の断面が略L字形状の円筒形とされる。芯体部材11は、外輪2の内周面2bに嵌合(内嵌)される円筒嵌合部111と、円筒嵌合部111の軸方向他端部(車輪側端部)111aから径方向内方に延びる円板部112とを有している。
【0014】
シールリップ部12は、ゴム材等の弾性材料からなり、加硫成型により、シールリップ基部120を介して芯体部材11に固着一体とされる。シールリップ基部120は、芯体部材11の円板部112の軸方向の内側面112aの一部から径方向の内方端部112bを回り込み、円板部112の軸方向の外側面112cの全面を覆う。さらにシールリップ基部120は、円筒嵌合部111の径方向の内周面111bの全面を覆い、円筒嵌合部111の軸方向一端部(車体側端部)111cを回り込み、円筒嵌合部111の径方向の外周面111dに至り、芯体部材11に固着一体とされている。シールリップ部12には、芯体部材11の円筒嵌合部111の外周面111dに至る部分に径方向の外方に隆起する環状突部124が形成されている。この環状突部124は、芯体部材11が外輪2に内嵌された際、外輪2の車体側の内周面2bと円筒嵌合部111の外周面111dとの間に圧縮状態で介在するように形成されている。図2(a)において環状突部124の二点鎖線は圧縮前の原形状を示している。
【0015】
シールリップ基部120からは、複数のシールリップ121,122,123が延出して形成されている。シールリップ121は、最も径方向外方に位置し外方空間に近い位置に配されたシールリップである。シールリップ123は、最も径方向内方に位置し軸受空間Sに近い位置に配されたシールリップである。シールリップ122は、シールリップ121とシールリップ123との間に位置するシールリップである。これらのうち、シールリップ121,122は、軸方向の外側に向けて次第に拡径し延出して形成され、スリンガ部材10の円板部102の軸方向の内側面102aに摺接するアキシャルリップ(サイドリップ)である。シールリップ123は、径方向内方に向けて延出して形成され、スリンガ部材10の円筒嵌合部101の内周面101bに摺接するラジアルリップである。
【0016】
本実施形態におけるハブ輪3の加締部34は、スリンガ部材10の円板部102と軸方向に重なる部分があるように延出して形成されており、内輪部材4の外周面4bよりも、突出した突出部34bを有している。そして、ハブ輪3の加締部34における軸方向の内側面34aとスリンガ部材10の円板部102における軸方向の外側面102bとの間には、弾性材料である弾性ゴムからなるシール部13が弾接するように設けられている。またシール部13は、内輪部材4の外周面4bにも弾接するように設けられている。このように、シール部13は、突出部34bの内側面34a、円板部102の外側面102b、内輪部材4の外周面4bに囲まれた部位に、締め代を有するように設けられている。図2(a)において、シール部13の変形前の原形状は二点鎖線で示している。シール部13は、加締部34の突出部34bと、スリンガ部材10の円板部102と、内輪部材4の外周面4bとに挟まれることによって弾性変形し、加締部34の内側面34aと円板部102の外側面102bと内輪部材4の外周面4bとに密着する。
【0017】
本実施形態によれば、加締部34は、内輪部材4とスリンガ部材10との間を密封するシール部13に弾接した状態で内輪部材4をハブ輪3に一体的に固定するように設けられているので、内輪部材4とスリンガ部材10との嵌合部位ある内輪部材4の外周面4bとスリンガ部材10の円筒嵌合部101の外周面101cとの間の密封性が向上し、軸受装置1内部、すなわち軸受空間Sへの泥塩水等の浸入を防ぐことができる。よって、負圧環境下での腐食試験等、厳しい条件試験でも要求性能に応えることができる。またシール部13によって、加締部34の内側面34aと内輪部材4の外側面4cとの間も密封することができる。さらに、加締部34の突出部34bがスリンガ部材10の円板部102と軸方向に重なっているので、内輪部材4とスリンガ部材10との嵌合部位が加締部34で覆われる構成となり、泥塩水等の侵入がより一層効果的にブロックできる。
【0018】
次に第1実施形態の変形例である図2(b)の軸受装置1’について説明する。なお、上述した第1実施形態の軸受装置1と共通する部分には、同一の符号を付し、相違する点を主に説明する。
図2(b)に示す軸受装置1’は、第1実施形態の軸受装置1とシール部13の構成が異なる。この変形例においてシール部13は、図2(b)に示すように内輪部材4の外周面4bに非接触とし、外周面4bに弾接していないが、ハブ輪3の加締部34の内側面34aとスリンガ部材10の円板部102の外側面102bとの間に、弾接するように設けられている。このようにシール部13は外周面4bに弾接していなくても、上述の実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0019】
<第2実施形態>
次に、図3を参照しながら、第2実施形態に係る軸受装置1A及び軸受装置1A’について説明する。なお、上述した第1実施形態の軸受装置1と共通する部分には、同一の符号を付し、相違する点を主に説明する。
まず図3(a)には、第2実施形態に係る軸受装置1Aを示す。軸受装置1Aにおける加締部34は、スリンガ部材10の円板部102と軸方向に重なる部分があるように延出して形成されておらず、内輪部材4の外周面4bよりも、突出した突出部34bを有していない。また軸受装置1Aは、スリンガ部材10の円板部102の外側面102bに、回転検出用の磁気エンコーダ14が加硫成型により固着一体に設けられている点で第1実施形態と異なる。さらに軸受装置1Aのシール部13は、円板部102に固着された磁性ゴムからなる磁気エンコーダ14の径方向内側に別途設けられている。
【0020】
磁気エンコーダ14は、磁性粉を含む磁性ゴムからなり、多数のN極及びS極を周方向に交互且つ等間隔で着磁されている。よって、車体(不図示)には、磁気エンコーダ14の着磁面14aに対峙するよう磁気センサ(不図示)が設置され、この磁気センサと磁気エンコーダ14とにより、車輪の回転検出機構が構成される。
【0021】
シール部13は、磁気エンコーダ14の径方向内側に別途設けられ、その断面形状は径方向に延びる長方形状の円環体に形成されており、シール部13の上方端部となる外側端部13b側の一部が、スリンガ部材10の円板部102の軸方向の外側面102bに一体的に固着して設けられている。そして、スリンガ部材10の円筒嵌合部101よりも下方に突出したシール部13の突出部13cが、加締部34の内側面34aと内輪部材4の外側面4cとに弾接した状態とされる。また、シール部13は、内周面13aとハブ輪3の外周面3bとの間及び磁気エンコーダ14の内側端部14bとシール部13の外側端部13bとの間に若干の空隙が形成された状態で設けられている。加締部34は、上述のとおり、スリンガ部材10と軸方向に重ならない程度の長さとされ、ハブ輪3の軸方向一端部3cから径方向外方に延出し、シール部13に弾接した状態で内輪部材4をハブ輪3に一体的に固定するように設けられている。そして、内輪部材4の軸方向の外側面4cは、スリンガ部材10の円板部102の軸方向の外側面102bよりも軸方向の内側に位置するように設けられており、これにより形成される外側面4cと内側面34aとの間にシール部13が配されている。
【0022】
本実施形態によれば、加締部34は、内輪部材4とスリンガ部材10との間を密封する弾性材料からなるシール部13に弾接した状態で内輪部材4をハブ輪3に一体的に固定するように設けられており、シール部13が内輪部材4とスリンガ部材10との嵌合部位である外周面4bと円筒嵌合部101の外周面101cとの間を塞ぐように設けられているので、突出部34bがなくても、嵌合部位を密封でき、軸受装置1A内部への泥塩水等の浸入を防ぐことができる。また、本実施形態においても、ハブ輪3の外周面3bと、内輪部材4の外側面4cとの間もシール部13によって密封することができる。さらに磁気エンコーダ14の径方向内側にシール部13が別途設けられているので、内輪部材4とスリンガ部材10との嵌合部位に近い位置をシール部13で密封でき、密封性向上を図ることができる。また磁気エンコーダ14とは別途設けられることにより、シール部13の設計自由度を高めることができる。
【0023】
次に、第2実施形態の軸受装置1Aの変形例である図3(b)に示す軸受装置1A’について説明する。なお、上述した軸受装置1~1Aと共通する部分には、同一の符号を付し、相違する点を主に説明する。
図3(b)に示す軸受装置1A’は、軸受装置1Aとは加締部34とシール部13の構成が異なる。この変形例において加締部34は、スリンガ部材10の円板部102と磁気エンコーダ14とに軸方向に重なるように径方向外方に延出して形成され突出部34bを有している。加締部34は、図に示すように内側面34aが内輪部材4の軸方向の外側面4cと磁気エンコーダ14の着磁面14aの一部に接触するように加締め加工される。シール部13は、断面視において、円状の環状体に形成され、シール部13は、スリンガ部材10の円板部102の軸方向の外側面102bと、磁気エンコーダ14の内側端部14bと、内輪部材4の外周面4bとに囲まれ、それぞれに弾接した状態で設けられている。
【0024】
この変形例においては、泥塩水等が浸入する入口となる円板部102と加締部34との間に磁気エンコーダ14が介在し、さらにその内径側にシール部13が設けられているので、より一層、泥塩水等の浸入をより効果的にブロックでき、内輪部材4とスリンガ部材10との嵌合部位及び外側面4cと加締部34の加締部位への密封性向上を図ることができる。
【0025】
<第3実施形態>
次に図4(a)に示す第3実施形態の軸受装置1Bと、その変形例である図4(b)に示す軸受装置1B’について説明する。なお、上述した軸受装置1~1A’と共通する部分には、同一の符号を付し、相違する点を主に説明する。
図4(a)には、第3実施形態に係る軸受装置1Bを示す。軸受装置1Bにおけるシール部13が、円板部102に固着された磁性ゴムからなる磁気エンコーダ14で構成されている点で上記実施形態と異なる。また軸受装置1Bの内輪部材4は、上側の角部が切欠かれて凹所4dが形成されている。磁気エンコーダ14は、スリンガ部材10に固着一体とされており、磁気エンコーダ14の内側端部14bは、凹所4dの外周面4daと空隙が設けられた状態、且つ、スリンガ部材10の円筒嵌合部101よりも下方の内輪部材4の凹所4d内に位置している。すなわち、本実施形態における磁気エンコーダ14は、シール部13の機能も有しているため、加締部34の内側面34aと、内輪部材4の凹所4dの軸方向の外側面4dbと、スリンガ部材10の円板部102の外側面102bとに弾接するように延出して形成されている。また加締部34は、スリンガ部材10の円板部102と磁気エンコーダ14とに軸方向に重なるように径方向外方に延出して形成され突出部34bを有している。
【0026】
本実施形態によれば、磁気エンコーダ14の径方向内側部分、具体的には加締部34と軸方向に重なっている部分がシール部13として機能し、シール部13が内輪部材4とスリンガ部材10との嵌合部位である外周面4bと円筒嵌合部101の外周面101cとの間を塞ぐように設けられているので、嵌合部位の密封性が向上し、軸受装置1B内部への泥塩水等の浸入を防ぐことができる。また、本実施形態によれば、内輪部材4の外側面4cと加締部34の内側面34aとの間もシール部13によって密封することができる。さらにシール部13は、スリンガ部材10に固着された磁性ゴムからなる磁気エンコーダ14で構成されているので、シール部13を別途組み付ける必要がない。
【0027】
次に第3実施形態の軸受装置1Bの変形例である図3(b)に示す軸受装置1B’について説明する。なお、上述した軸受装置1~1Bと共通する部分には、同一の符号を付し、相違する点を主に説明する。
図4(b)に示す軸受装置1B’は、軸受装置1Bとは加締部34が、スリンガ部材10と軸方向に重ならない程度の長さとされている点で異なる。そしてシール部13を兼ねた磁気エンコーダ14は、スリンガ部材10の円筒嵌合部101よりも径方向内方に延びて形成され、弾性変形する前の磁気エンコーダ14は、内側端部14bが軸方向の外側に傾斜し、内側面34aに弾接するように設けられている。またこの変形例において内輪部材4の軸方向の外側面4cは、スリンガ部材10の円板部102の軸方向の外側面102bと軸方向において略同位置に位置するように設けられている。なお、図4(b)の内輪部材4には、図4(a)の内輪部材4が備える凹所4dは形成されていない。
【0028】
この変形例においては、泥塩水等が浸入する入口となる円板部102と加締部34との間に磁気エンコーダ14が介在し、シール部13の機能を有する内側端部14bが内側面34aにしっかりと弾接するように設けられているので、泥塩水等の浸入をより効果的にブロックでき、内輪部材4とスリンガ部材10との嵌合部位及び外側面4cと加締部34の加締部位への密封性向上を図ることができる。
【0029】
本実施形態に係る軸受装置1,1’,1A,1A’,1B,1B’は、上述した各実施形態や各変形例の特徴事項を組み合わせて軸受装置が構成されてもよい。例えば図4(a)に示す凹所4dを有した内輪部材4の場合、この凹所4dに図2(a)に示すようなシール部13を設けてもよい。また、軸受装置は、上述したものや図面に示しているものに限定されることはない。例えば、スリンガ部材10及び芯体部材11は、SPCC又はSUS等の鋼板ではなく、硬質な樹脂材料で形成されてもよい。またシールリップ部12の構成、形状も図例に限定されるものではなく、上述したような矩形状や円状に限定されることはなく、断面山形状等、種々の形状を採用できる。また、加締部34の構成も上述したものに限定されることはなく、適宜設計されればよい。ここで本実施形態に係る軸受装置1,1’,1A,1A’,1B,1B’の組立て手順については、加締部の加締め加工を行った後に密封装置を装着する一般的な組立て手順とは異なり、予め密封装置8を内輪部材4に装着した状態で加締め加工を行う。これにより、加締部34がシール部13に弾接した状態で内輪部材4をハブ輪3に一体的に固定することができる。また、上述した各実施形態では、軸受装置1,1’,1A,1A’,1B,1B’は、自動車に装着されているが、軸受装置1,1’,1A,1A’,1B,1B’が装着されるものは他の機械装置であってもよい。さらにここでは、密封装置8としてスリンガ部材10と、芯体部材11と、シールリップ部12とを有したいわゆるパックシールタイプの密封装置を示したが、これに限定されずスリンガ部材10のみ、またはスリンガ部材10と磁気エンコーダ14とが配された例にも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1,1’,1A,1A’,1B,1B’ 軸受装置
2 外側部材(外輪)
3 ハブ輪
3c 軸方向一端部
30 ハブ輪本体
34 加締部
4 内輪部材
5 内側部材(内輪)
8,9 密封装置
10 スリンガ部材
101 円筒嵌合部
101a 軸方向一端部
102 円板部
12 シールリップ部
13 シール部
14 磁気エンコーダ
図1
図2
図3
図4