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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】巻付器
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20240216BHJP
   H02G 7/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020101595
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021072767
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019193919
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221409
【氏名又は名称】東神電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高崎 弘司
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-071308(JP,A)
【文献】特許第6427252(JP,B1)
【文献】特開2018-148652(JP,A)
【文献】米国特許第06648279(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の螺旋脚部を備えた巻き付けグリップを、電線に巻き付けて固定するための巻付器であって、
前記電線及び前記二本の螺旋脚部を挿通させる挿通孔を有し、前記電線の周囲を当該電線の軸周りに回動する回動部と、
前記挿通孔に挿通させた前記二本の螺旋脚部の一部に当接して回転可能なローラーと、
前記挿通孔に挿通させた前記二本の螺旋脚部を両側から挟むように配置される巻付ガイドと、を備え、
前記ローラーは、前記回動部の挿通孔の両側に固定されると共に、前記巻き付けグリップの螺旋脚部の巻き始めの先端側に向けて配置され、
前記巻付ガイドは、前記回動部の挿通孔の両側に固定されると共に、前記巻き付けグリップの螺旋脚部の巻き終わりの末端側に向けて配置され、
前記回動部が前記電線の軸周りに回動すると、前記ローラー及び前記巻付ガイドも前記電線の軸周りに回動しながら、前記螺旋脚部を前記電線に巻き付けていくものであり、
前記ローラーは、前記巻き付けグリップの螺旋脚部の巻き始めの先端側から、前記螺旋脚部の巻き終わりの末端側へ向けて回転できるように構成されている、ことを特徴とする巻付器。
【請求項2】
二本の螺旋脚部を備えた巻き付けグリップを、電線に巻き付けて固定するための巻付器であって、
前記電線及び前記二本の螺旋脚部を挿通させる挿通孔を有し、前記電線の周囲を当該電線の軸周りに回動する回動部と、
前記挿通孔に挿通させた前記二本の螺旋脚部の一部に当接して回転可能なローラーと、
前記挿通孔に挿通させた前記二本の螺旋脚部を両側から挟むように配置される巻付ガイドと、を備え、
前記ローラーは、前記回動部の挿通孔の両側に固定されると共に、前記巻き付けグリップの螺旋脚部の巻き始めの先端側に向けて配置され、
前記巻付ガイドは、前記回動部の挿通孔の両側に固定されると共に、前記巻き付けグリップの螺旋脚部の巻き終わりの末端側に向けて配置され、
前記回動部が前記電線の軸周りに回動すると、前記ローラー及び前記巻付ガイドも前記電線の軸周りに回動しながら、前記螺旋脚部を前記電線に巻き付けていくものであり、
前記回動部は、前記挿通孔の両側に配置され、前記螺旋脚部の一部に当接する当接部を備えており、
前記当接部は、前記回動部の回転方向へ前記ローラーよりも突出すると共に、前記ローラーの後方側に配置されている、ことを特徴とする巻付器。
【請求項3】
前記ローラーと前記巻付ガイドは、前記回動部の一方側と他方側にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の巻付器。
【請求項4】
前記当接部の少なくとも一方は、前記挿通孔に向けて近づく、及び前記挿通孔から離れるように、スライド可能に構成されていることを特徴とする請求項に記載の巻付器。
【請求項5】
前記当接部は、前記螺旋脚部の端面の内側において、少なくとも一端側と他端側の離れた二カ所で当接するように構成されていることを特徴とする請求項2又は4に記載の巻付器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば電柱間等に架設する電線を、電柱やその他の構造物に引き込むための巻き付けグリップを、前記電線に巻き付ける巻付器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すような巻付器が利用されており、この巻付器は、巻き付けグリップの螺旋脚部と電線とを挿通させる挿通孔を有する回動部が設けられている。また、この回動部は、電線の周囲を電線の軸周りに回動するもので、巻き付けグリップの螺旋脚部の端部を係止させる切欠部を備えている。そして、この切欠部に螺旋脚部の端部を引っ掛けたまま、回動部が電線の軸周りに回動することで、螺旋脚部が電線に巻き付けられてゆき、巻き付けグリップが電線に巻き付けられて固定されるのである。
【0003】
ただ、金属製の巻き付けグリップの螺旋脚部を電線に巻き付ける際は、比較的大きな力が必要となるため、巻き付けグリップの螺旋脚部の端部と、回動部の切欠部との接触部分には大きな摩擦力が働き、巻き付けグリップの螺旋脚部に傷がつくという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願昭39-15760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本願発明は、上記問題に鑑み、巻き付けグリップを電線に巻き付ける際に、巻き付けグリップの螺旋脚部に傷が付きにくい巻付器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明の巻付器は、二本の螺旋脚部を備えた巻き付けグリップを、電線に巻き付けて固定するための巻付器であって、前記電線及び前記二本の螺旋脚部を挿通させる挿通孔を有し、前記電線の周囲を当該電線の軸周りに回動する回動部と、前記挿通孔に挿通させた前記二本の螺旋脚部の一部に当接して回転可能なローラーと、前記挿通孔に挿通させた前記二本の螺旋脚部を両側から挟むように配置される巻付ガイドと、を備え、前記ローラーは、前記回動部の挿通孔の両側に固定されると共に、前記巻き付けグリップの螺旋脚部の巻き始めの先端側に向けて配置され、前記巻付ガイドは、前記回動部の挿通孔の両側に固定されると共に、前記巻き付けグリップの螺旋脚部の巻き終わりの末端側に向けて配置され、前記回動部が前記電線の軸周りに回動すると、前記ローラー及び前記巻付ガイドも前記電線の軸周りに回動しながら、前記螺旋脚部を前記電線に巻き付けていくことを特徴とする。
【0007】
上記特徴によれば、巻付器が、巻き付けグリップの螺旋脚部を電線に巻き付ける際に、ローラーが回転するため、螺旋脚部との間に強い摩擦が生じず、螺旋脚部に傷が付きにくいのである。
【0008】
さらに、本願発明の巻付器は、前記ローラーと前記巻付ガイドは、前記回動部の一方側と他方側にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記特徴によれば、ローラーと巻付ガイドが、回動部を挟んで両側に配置されるので、ローラーと巻付ガイドとで螺旋脚部を巻き付ける際に、バランスを取りやすく、作業性が向上するのである。
【0010】
さらに、本願発明の巻付器は、前記ローラーは、前記巻き付けグリップの螺旋脚部の巻き始めの先端側から、前記螺旋脚部の巻き終わりの末端側へ向けて回転できるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記特徴によれば、ローラーは、巻き付けグリップの螺旋脚部の先端側から末端側へ向けて、螺旋脚部の一部の上を滑走するように回転していくため、巻付器には、末端側へ向かう推進力が発生する。そのため、巻付器は、螺旋脚部の先端側から末端側へ向けて容易に移動しながら、螺旋脚部を電線に巻き付けてゆくことが出来るのである。
【0012】
さらに、本願発明の巻付器は、前記回動部は、前記挿通孔の両側に配置され、前記螺旋脚部の一部に当接する当接部を備えており、前記当接部は、前記回動部の回転方向へ前記ローラーよりも突出すると共に、前記ローラーの後方側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
上記特徴によれば、当接部が、回動部の回転方向へローラーよりも突出しているので、巻き付けグリップが末端側まで巻き付けられて巻き終わりに差し掛かかかった際に、ローラーが螺旋脚部に当接できなくても、当接部が螺旋脚部の一部に当接することができる。これにより、螺旋脚部が、巻き終わりの末端側まで確実に、電線に螺旋状に巻き付けられて固定されるのである。また、当接部はローラーの後方に位置するため、巻き付けグリップの巻き始めには、螺旋脚部に当接していない状態となっている。そのため、当接部は、巻き付けグリップの巻き始めにおいて、ローラーによる巻き付け動作を邪魔することはない。
【0014】
さらに、本願発明の巻付器は、前記当接部の少なくとも一方は、前記挿通孔に向けて近づく、及び前記挿通孔から離れるようにスライド可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
上記特徴によれば、巻き付けグリップを電線に巻き付ける際は、電線及び巻き付けグリップを挿通孔に挿通させ易くするために、当接部を挿通孔から離れるようにスライドさせ、その後、巻き付け作業時には、当接部を挿通孔に近づくようにスライドさせることが出来る。
【0016】
さらに、本願発明の巻付器は、前記当接部は、前記螺旋脚部の端面の内側において、少なくとも一端側と他端側の離れた二カ所で当接するように構成されていることを特徴とする。
【0017】
上記特徴によれば、螺旋脚部の端面の姿勢がズレないように維持されるので、螺旋脚部の端面が電線を乗り越えるようにして、螺旋脚部の端面の内側が電線の表面に上手く巻き付けられるのである。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の巻付器によれば、巻き付けグリップを電線に巻き付ける際に、巻き付けグリップの螺旋脚部に傷が付きにくい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は、本願発明の巻付器の正面図、(b)は巻付器の背面図である。
図2】(a)は、本願発明の巻付器の側面図、(b)は巻付器の回動部周辺を拡大して示した正面図である。
図3】(a)は、電線及び巻き付けグリップの平面図、(b)は、A―A断面図である。
図4】(a)は、巻付器の側面図、(b)は、回動部周辺を拡大して示した正面図である。
図5図4(b)のB―B断面図である。
図6】(a)は、当接部を取り付けた巻付器の回動部周辺を拡大して示した正面図、(b)は、回動部周辺を拡大して示した側面図である。
図7】(a)は、回動部周辺を拡大して示した正面図であって、当接部を挿通孔側にスライドさせた正面図、(b)は、回動部周辺を拡大して示した側面図であって、当接部を挿通孔側にスライドさせた正面図である。
図8】巻き付けグリップの巻き始めにおける、巻付器の回動部周辺を拡大して示した正面図である。
図9】巻き付けグリップの巻き終わりにおける、巻付器の回動部周辺を拡大して示した正面図である。
図10図9における当接部周辺を拡大した正面図である。
【符号の説明】
【0020】
300 回動部
310 挿通孔
410 ローラー
500 巻付ガイド
600 巻付器
700 巻き付けグリップ
720 螺旋脚部
721 先端
722 末端
W 電線

【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本願発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0022】
図1及び図2は、本願発明の巻付器600を示したものである。なお、図1(a)は巻付器600の正面図、図1(b)は巻付器600の背面図、図2(a)は巻付器600の側面図、図2(b)は巻付器600の回動部周辺を拡大して示した正面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、巻付器600の本体部100は、所定の厚さの板材に各歯車収容部(歯車収容部110から歯車収容部140)、及びハンドル部150を形成したものである。この歯車収容部110は、円形の回動部歯車210を収容できるように、円形に窪んだ形状をしている。そして、回動部歯車210は、歯車収容部110内で回動できるように構成されている。同様に、歯車収容部120は円形の中間歯車220を、歯車収容部130は円形の中間歯車230をそれぞれ収容できるように、円形に窪んだ形状をしている。そして、中間歯車220及び中間歯車230は、それぞれ歯車収容部120及び歯車収容部130内で回動できるように構成されている。また、歯車収容部140も円形の中間歯車240を収容できるように、円形に窪んだ形状をしており、中間歯車240は歯車収容部140内で回動できるように構成されている。
【0024】
また、図2に示すように、中間歯車240には第一傘歯車250が連結されており、中間歯車240の回転軸と第一傘歯車250の回転軸は一致している。さらに、第一傘歯車250には、当該第一傘歯車250に直交するように第二傘歯車260が噛み合わせられている。この第二傘歯車260は、図示しない下方の電動又は手動の正逆転可能な外部動力と連結され、その外部動力からの駆動力を回動部歯車210へと伝達するものである。具体的には、第二傘歯車260は、外部動力と連結される連結軸261を備えており、収容部262内で連結軸261を中心に回動できるように構成されている。そして、連結軸261に電動ドリル等の外部動力を接続すれば、第二傘歯車260が連結軸261を中心に回動し、第二傘歯車260に噛み合っている第一傘歯車250へと、動力が伝達されるのである。
【0025】
さらに、第一傘歯車250が回動すると、第一傘歯車250と同軸に固定されている中間歯車240も回動する。そして、中間歯車240が回動すると、中間歯車220及び中間歯車230を介して、回動部歯車210も回転することになる。具体的には、図1(a)に示すように、中間歯車240が反時計回りに回転すると、中間歯車240と噛み合っている中間歯車220は時計回りに回転する。それと同時に、中間歯車240と噛み合っている中間歯車230も時計回りに回転する。そして、回動部歯車210は、中間歯車220及び中間歯車230に噛み合っているので、中間歯車220、及び中間歯車230の回転に同期して反時計回りに回転するのである。
【0026】
また、回動部歯車210は略円盤状の回動部300の周囲に設けられ、回動部300は回動部歯車210と共に回動するように構成されている。そして、図2(b)に示すように、回動部300は、開口部311から中心Oに向けて延びる挿通孔310を備えており、後述するように、開口部311から挿通孔310内に電線や巻き付けグリップの螺旋脚部を挿通できるようになっている。
【0027】
さらに、回動部300の正面には、挿通孔310の両側に、挿通孔310を挟んで相対する様に2つの金属製のローラー410が設けられている。ローラー410は、回動部300の正面側に突出するように設けられており、回動部300の正面側に固定された基部320に、回転軸411を中心に回転できるように軸支されている。そして、回動部300は中心Oを中心に回動するので、回動部300の正面側に固定されたローラー410も中心Oを中心に回転(公転)する。このように、ローラー410は、回動部300によって中心Oを中心に回転(公転)しながら、回転軸411を中心に回転(自転)できるように構成されている。
【0028】
なお、中心Oと回転軸411は直角に交差している。また、ローラー410は、後述するように、巻き付けグリップの螺旋脚部の一部に当接することで、受動的に回転するようになっている。さらに、両側のローラー410aとローラー410bは、中心Oを挟んで互い違いに配置されている。
【0029】
また、回動部300の背面には、挿通孔310の両側に、挿通孔310を挟んで相対する様に2つの巻付ガイド500が設けられている。巻付ガイド500は、回動部300の背面側に突出するように設けられており、全体が薄板状に形成されている。また、巻付ガイド500は、互いに平行に配置されており、挿通孔310に挿通された巻き付けグリップの螺旋脚部を、両側から挟むように構成されている。
【0030】
では次に、図3を参照して、本願の巻付器600が電線Wに巻き付ける対象である巻き付けグリップ700について説明する。なお、図3(a)は、電線W及び巻き付けグリップ700の平面図、図3(b)は、A―A断面図である。また、電線Wは、電柱間等に架設されたものである。
【0031】
図3(a)に示すように、巻き付けグリップ700は金属製の線状体であり、環状に曲げられた頭部710と、当該頭部710の両端のそれぞれから延出する、二本の螺旋脚部720aと螺旋脚部720bとを備える。頭部710は、電柱やその他の構造物に固定する部分となる。また、螺旋脚部720a、及び螺旋脚部720bは、図3に示すように、線状体を螺旋状に捻って形成されたものであり、螺旋脚部720a及び螺旋脚部720bの各端面730は電線Wの表面に沿って湾曲した形状をしている。そして、二本の螺旋脚部720aと螺旋脚部720bは、交互に電線Wに巻き付けることができるように、螺旋部分が互い違いに構成されている。
【0032】
例えば、図3(b)に示すように、螺旋脚部720aの端部731a側を反時計回りに押し込んで、螺旋脚部720aの端面730aを電線Wに巻き付ける。一方の螺旋脚部720bの端部731b側を反時計回りに押し込んで、螺旋脚部720aが電線Wに巻き付けられた側とは反対側に、螺旋脚部720bの端面730bを電線Wに巻き付けてゆく。このように、二本の螺旋脚部720aと螺旋脚部720bを交互に電線Wに巻き付ける動作を、螺旋脚部720の巻き始めの先端721から、螺旋脚部720の巻き終わりの末端722まで繰り返すことで、巻き付けグリップ700は電線Wに強固に固定されることになる。なお、図3(b)では、螺旋脚部720を電線Wに巻き始める前なので、螺旋脚部720と電線Wとは離れているが、螺旋脚部720を電線Wに実際に巻き付けると、電線Wの周りに螺旋脚部720が密着するようになる。
【0033】
では次に、図4及び図5を参照して、本願発明の巻付器600によって、巻き付けグリップ700の螺旋脚部720を電線Wに巻き付ける様子について説明する。なお、図4(a)は、巻付器600の側面図、図4(b)は、回動部300周辺を拡大して示した正面図、図5は、図4(b)のB―B断面図である。
【0034】
まず、図3に示すように、作業者は、電線Wに巻き付けグリップ700の螺旋脚部720の先端721を交差させた状態とし、その電線Wと螺旋脚部720の先端721付近を、巻付器600の挿通孔310の開口部311から挿通孔310内部へと挿入する。そして、図4に示すように、回動部300の中心Oに電線Wが位置するように調節する。さらに、一方のローラー410aが、巻き付けグリップ700の一方の螺旋脚部720aの端部731aに当接し、反対側の他方のローラー410bが、巻き付けグリップ700の他方の螺旋脚部720bの端部731bに当接するように調節する。
【0035】
また、図4(a)に示すように、回動部300の一方側に固定されているローラー410は、巻き付けグリップ700の螺旋脚部720の巻き始めの先端721側に向けて配置されており、回動部300の他方側に固定された巻付ガイド500は、巻き付けグリップ700の螺旋脚部720の巻き終わりの末端722側に向けて配置されている。そして、回動部300の挿通孔310を通って背面側へ延出している螺旋脚部720の末端722側は、両側から巻付ガイド500によって挟まれている。
【0036】
次に、作業者は、ハンドル部150を把持して巻付器600を支えた状態で、連結軸261に電動ドリル等の回転動力源を連結する。そして、回転動力源から回転動力が連結軸261に伝達されると、図4(b)に示すように、回動部300が、中心Oで電線Wの軸周りを反時計回りに回動する。すると、回動部300に固定されたローラー410aも、回動部300と共に、中心Oで電線Wの軸周りを反時計回りに回動する。その際、一方のローラー410aは、螺旋脚部720aの端部731aに当接しているので、ローラー410aは螺旋脚部720aを反時計回りに押し出すことになる。さらに、ローラー410aの背面側では、巻付ガイド500aが螺旋脚部720aに当接している。そして、回動部300に固定された巻付ガイド500aも、回動部300と共に、中心Oで電線Wの軸周りを反時計回りに回動するので、巻付ガイド500aは螺旋脚部720aを反時計回りに押し出すことになる。したがって、回動部300の正面側では、ローラー410aによって、螺旋脚部720aを電線Wに巻き付くように押し込み、回動部300の背面側でも、巻付ガイド500aによって螺旋脚部720aを電線Wに巻き付くように押し出すのである。
【0037】
同様に、回動部300に固定された他方のローラー410bも、回動部300と共に、中心Oで電線Wの軸周りを反時計回りに回動し、螺旋脚部720bの端部731bに当接しながら、螺旋脚部720bを電線Wに巻き付くように押し出している。さらに、回動部300の背面側では、巻付ガイド500bによって螺旋脚部720bを電線Wに巻き付くように押し出している。
【0038】
このように、ローラー410と巻付ガイド500が回動することによって、2本の螺旋脚部720が電線Wの周りに交互に巻き付けられて固定されるのである。特に、ローラー410によって螺旋脚部720を電線Wに巻き付け始めると、ローラー410の反対側では、巻付ガイド500が、ローラー410と同じ方向に向けて、螺旋脚部720を押し出して電線Wに巻き付けている。そして、巻付ガイド500は、螺旋脚部720の巻き始め側のローラー410から離間しているため、巻付ガイド500が螺旋脚部720を巻き付ける力、つまりモーメント(トルク)は、ローラー410が螺旋脚部720を巻き付ける力よりも強くなる。そのため、螺旋脚部720を容易に電線Wに巻き付けることが出来るのである。
【0039】
また、図5に示すように、ローラー410aは螺旋脚部720aを電線Wに巻き付ける際に、螺旋脚部720aの端部731aに当接している。そのため、図4(b)に示すように、ローラー410aが回動部300と共に中心O周りに反時計回りに回転すると、図5に示すように、ローラー410aは螺旋脚部720aの端部731aに当接しながら、回転軸411a周りに回転する。そして、ローラー410aは、螺旋脚部720aの先端721側から末端722へ向けて、螺旋脚部720aの端部731aに常に当接しながら回転していくのである。したがって、巻付器600が螺旋脚部720aを電線Wに巻き付ける際に、ローラー410aが回転するため、螺旋脚部720aとの間に強い摩擦が生じず、螺旋脚部720aに傷が付きにくいのである。
【0040】
さらに、図4及び図5に示すように、巻付器600は、螺旋脚部720の先端721側から末端722側へ向けて移動しながら、螺旋脚部720を電線Wに連続して巻き付けてゆく。そして、図5に示すように、ローラー410aは、螺旋脚部720aの先端721側から末端722側へ向けて、螺旋脚部720aの端部731aに当接しながら、端部731a上を滑走するように回転していくため、巻付器600には、末端722側へ向かう推進力Fが発生する。したがって、巻付器600は、螺旋脚部720の先端721側から末端722側へ向けて容易に移動しながら、螺旋脚部720を電線Wに巻き付けてゆくことが出来るのである。なお、図5では、図面上見やすいように、端部731aが灰色で示されている。また、図5では、ローラー410aの動作について説明したが、ローラー410aと同じ構成のローラー410bも、ローラー410aと同じ動作をする。
【0041】
また、図4に示すように、ローラー410は回動部300の一方側(図4では、螺旋脚部720の先端721側)に配置され、巻付ガイド500は回動部300の他方側(図4では、螺旋脚部720の末端722側)に配置されている。このように、ローラー410と巻付ガイド500が、回動部300を挟んで両側に配置されることで、ローラー410と巻付ガイド500とで螺旋脚部720を巻き付ける際に、バランスを取りやすく、作業性が向上するのである。
【0042】
では以下では、本願発明の巻付器600の回動部300に当接部800を取り付けた態様について、図6から図10を参照して説明する。
【0043】
まず、図6(a)は、回動部300周辺を拡大して示した正面図、図6(b)は、回動部300周辺を拡大して示した側面図である。また、図7(a)は、回動部300周辺を拡大して示した正面図であって、当接部800bを挿通孔310側にスライドさせた正面図、図7(b)は、回動部300周辺を拡大して示した側面図であって、当接部800bを挿通孔310側にスライドさせた正面図である。
【0044】
図6に示すように、回動部300の正面には、挿通孔310の両側に、挿通孔310を挟んで相対する様に板状の当接部800が設けられている。当接部800は、回動部300の正面側に突出したローラー410の後方側に配置されている。すなわち、当接部800は、ローラー410の背面側において、挿通孔310に隣接するように配置されており、ローラー410と挿通孔310の間に位置している。そして、回動部300は中心O周りに回動するので、回動部300に取り付けられた当接部800も中心O周りに回転(公転)する。さらに、両側の当接部800aと当接部800bは、中心Oを挟んで互い違いに配置されている。なお、当接部800は金属製の板材により爪状に構成されているが、これに限定されず、巻き付け時の力に耐えることができ、螺旋脚部720に当接できるのであれば、任意の素材で任意の形状に構成してもよい。また、螺旋脚部720に傷がつかないように、当接部800の一部にローラー等を取り付けてもよい。
【0045】
また、巻き付けグリップ700の螺旋脚部720を電線Wに巻き付ける際に、回動部300は中心O周りに回動(図6では、反時計回りRに回転する)するが、当接部800は、その回動方向へローラー410よりも突出するように配置されている。また、当接部800の先端側(挿通孔310に面する側)には、挿通孔310の内側の中心O側に向けて突出する内側当接部830と、挿通孔310の外側へ向けて突出する外側当接部840が設けられている。この内側当接部830と外側当接部840の2つは、互いに離間している。
【0046】
さらに、当接部800bは、基部320にスライド可能に取り付けられており、操作部810bを手で持ってスライドさせることで、当接部800b全体を挿通孔310に近づく、及び、挿通孔310から離れるように移動させることができる。そして、ボルトで構成される固定部820bを締め付けることで、当接部800bをスライドさせた位置で移動しないように固定できる。例えば、巻き付けグリップ700を電線Wに巻き付ける際は、電線W及び巻き付けグリップ700を挿通孔310に挿通させ易くするために、図6に示すように、当接部800b全体を挿通孔310から離れるようにスライドさせる。そして、電線W及び巻き付けグリップ700を挿通孔310に挿通させた後、巻き付け作業時には、図7に示すように、当接部800b全体を挿通孔310に近づくようにスライドさせるのである。
【0047】
なお、図6及び図7では、挿通孔310の両側の当接部800a及び当接部800bのうち一方の当接部800bのみをスライド可能に構成したが、これに限定されず、当接部800a及び当接部800bの両方をスライド可能に構成してもよい。
【0048】
では次に、図8から図10を参照して、本願発明の巻付器600によって、巻き付けグリップ700の螺旋脚部720を電線Wに巻き付ける様子について説明する。なお、図8は、巻き付けグリップ700の巻き始めにおける、巻付器600の回動部300周辺を拡大して示した正面図、図9は、巻き付けグリップ700の巻き終わりにおける、巻付器600の回動部300周辺を拡大して示した正面図、図10は、図9における当接部800周辺を拡大した正面図である。なお、図8から図10で説明する、巻き付けグリップ700の螺旋脚部720を電線Wに巻き付ける手順は、巻き終わりの際に当接部800を利用する点を除いては、図3及び図4で説明した、巻き付けグリップ700を巻き付ける手順と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0049】
まず、巻付器600によって、巻き付けグリップ700を電線Wに巻き始める際は、図4で説明したのと同じ手順によって、電線Wに巻き付けグリップ700の螺旋脚部720の先端721を交差させた状態とし、その電線Wと螺旋脚部720の先端721付近を、巻付器600の挿通孔310の開口部311から挿通孔310内部へと挿入する。なお、挿入の際は、先に説明したように、当接部800b全体を挿通孔310から離れるようにスライドさせておき、挿入後は、図8に示すように、当接部800b全体を挿通孔310に近づくようにスライドさせる。そして、回動部300の中心Oに電線Wが位置するように調節すれば、両側のローラー410が電線Wを挟んで中心Oで略点対称の位置に配置され、同様に、両側の当接部800が電線Wを挟んで中心Oで略点対称の位置に配置されることになる。
【0050】
また、図8に示すように、巻き付けグリップ700を電線Wに巻き始める際は、両側の螺旋脚部720aと螺旋脚部720bの大部分は、電線Wに未だ巻き付けられておらず、互いに離間した状態となっている。そのため、ローラー410aが、巻き付けグリップ700の螺旋脚部720aの端部731aにしっかりと当接しており、ローラー410aの後方に位置する当接部800aは、螺旋脚部720aに当接していない状態となっている。同様に、反対側の他方のローラー410bも、巻き付けグリップ700の反対側の螺旋脚部720bの端部731bにしっかりと当接しており、ローラー410bの後方に位置する当接部800bは、螺旋脚部720bに当接していない状態となっている。そのため、当接部800は、ローラー410による巻き付け動作を邪魔することはない。
【0051】
そして、作業者が電動ドリル等の回転動力源によって、図8に示すように、回動部300を中心Oで電線Wの軸周りを反時計回りに回動させる。すると、図4(b)で説明したのと同様に、回動部300の正面側では、ローラー410aが、螺旋脚部720aを電線Wに巻き付くように押し込み、他方のローラー410bも、螺旋脚部720bを電線Wに巻き付くように押し出している。なお、回動部300の背面側では、巻付ガイド500によって螺旋脚部720を電線Wに巻き付くように押し出している。
【0052】
なお、図8に示すように、巻き付けグリップ700を電線Wに巻き始める際は、両側の螺旋脚部720aと螺旋脚部720bの大部分は、電線Wに未だ巻き付けられておらず、螺旋状に捻じれる力が弱い。そのため、電線Wの表面に沿って湾曲した形状の端面730a及び端面730bは、中心Oに向けて相対するように向いているため、螺旋脚部720を電線Wの表面に沿うように容易に巻き付けることができるのである。
【0053】
このように、ローラー410と巻付ガイド500が回動することによって、2本の螺旋脚部720が電線Wの周りに交互に螺旋状に巻き付けられて固定されるのである。
【0054】
そして、2本の螺旋脚部720が末端722側まで巻き付けられて巻き終わりに差し掛かると、図9に示すように、両側の螺旋脚部720aと螺旋脚部720bの大部分は、電線Wに巻き付けられて互いに近接するようになり、電線Wに向けて締め付けるように巻き付く力が強くなる。さらに、螺旋状に捻じれる力が強くなっているため、湾曲した形状の端面730a及び端面730bは、中心Oから外れた方向に向いている。そのため、ローラー410が螺旋脚部720に上手く当接できず、ローラー410によって、螺旋脚部720を電線Wの表面に容易に巻き付けることができなくなってしまう。
【0055】
しかしながら、図9に示すように、当接部800が、回動部300の回転方向へローラー410よりも突出しているので、ローラー410が螺旋脚部720に当接できなくても、当接部800が螺旋脚部720の一部に当接することができる。そして、回動部300が中心Oで電線Wの軸周りを反時計回りに回動するのに伴い、当接部800aが、螺旋脚部720aを電線Wに巻き付くように押し込み、他方の当接部800bも、螺旋脚部720bを電線Wに巻き付くように押し出すことができる。これにより、2本の螺旋脚部720が、巻き終わりの末端722側まで確実に、電線Wに螺旋状に巻き付けられて固定されるのである。
【0056】
さらに、図10に示すように、当接部800aの内側当接部830aは、螺旋脚部720aの端面730aの内側において一端732a側に当接し、当接部800aの外側当接部840aは、螺旋脚部720aの端面730aの内側において他端733a側に当接している。つまり、当接部800aは、螺旋脚部720aの端面730aの内側において、一端732aと他端733aの離れた二カ所において当接しているのである。
【0057】
これにより、当接部800aが、螺旋脚部720aを電線Wに巻き付くように押し込む際に、螺旋脚部720aの端面730aの姿勢がズレないように維持されるので、螺旋脚部720aの端面730aが電線Wを乗り越えるようにして、螺旋脚部720aの端面730aの内側が電線Wの表面に上手く巻き付けられるのである。特に、巻き付け終わりの際は、螺旋脚部720aの螺旋状に捻じれる力が強くなっているため、螺旋脚部720aが捻じれて、螺旋脚部720aの端面730aの内側が電線Wの反対側に向けてカールしてしまい、電線Wの表面に上手く巻き付けることが困難な場合がある。そこで、螺旋脚部720aの端面730aがカールしないよう、当接部800aが、螺旋脚部720aの端面730aの内側において、一端732aと他端733aの離れた二カ所において当接するように構成したのである。
【0058】
同様に、他方の当接部800bは、他方の螺旋脚部720bの端面730bの内側において、一端732bと他端733bの離れた二カ所において当接しているため、当接部800bが、螺旋脚部720bを電線Wに巻き付くように押し込む際に、螺旋脚部720bの端面730bの姿勢が維持される。そのため、螺旋脚部720bの端面730bが電線Wを乗り越えるようにして、螺旋脚部720bの端面730bの内側が電線Wの表面に上手く巻き付けられるのである。
【0059】
なお、当接部800は、螺旋脚部720の端面730の内側(内側とは、電線Wの表面に巻き付いて接触する側)において、一端732と他端733の離れた二カ所において当接するように、内側当接部830と外側当接部840とを備えているが、これに限定されず、当接部800が、螺旋脚部720の端面730の内側において、一端732側と他端733側の離れた任意の二カ所において当接できるのであれば、その他の構成であってもよい。さらに、当接部800は、螺旋脚部720の端面730の内側において、離れた二カ所において当接しているが、これに限定されず、当接部800は、螺旋脚部720の端面730の内側の任意の一カ所、又は、当接部800は、螺旋脚部720の端面730の内側の任意の三カ所以上に当接するように構成されていてもよい。
【0060】
なお、本願発明の巻付器は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
図1
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図10