(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 51/22 20060101AFI20240216BHJP
B65D 47/36 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B65D51/22 110
B65D47/36 300
(21)【出願番号】P 2020104925
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 由弘
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-189759(JP,A)
【文献】特開2016-8081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0184182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着するキャップ本体部と、キャップ本体部にヒンジを介して連結した上蓋部と、上蓋部をキャップ本体部から切り離し可能に保持するヒンジ弱化部と、中栓弱化部を介してキャップ本体へ切り離し可能に保持された中栓と、中栓弱化部が破断した中栓を保持する上蓋部の中栓保持部と、中栓に設けた開栓部と、中栓保持部に設けた開栓具を備え、
開栓部と開栓具は、ヒンジ支点廻りの上蓋部の揺動方向において開栓具が開栓部に侵入可能で、かつ口部の軸心廻りに回転する上蓋部の開栓操作において開栓部と開栓具が係合して一体に回転する構造をなし、
上蓋部と中栓が一体に回転して中栓弱化部とヒンジ弱化部が破断することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
開栓部は、中栓上に設けた二枚の板状体を有し、開栓具は開栓部の二枚の板状体の間に挿入する一枚の板状体を有することを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
開栓部は、中栓上に設けた一枚の板状体を有し、開栓具は開栓部の一枚の板状体を挿入可能に離隔した二枚の板状体を有することを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項4】
ヒンジは、支点回りの揺動方向にのみ上蓋部の可動を許容することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に装着するキャップに関し、開封操作を一動作で行える技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、封止された栓体を開封する技術としては、たとえば特許文献1に記載するものがある。
【0003】
これは、最初に開栓する際に、蓋体の回動操作によって開封と開栓を同時に行うものである。最初の開栓時に、蓋体を閉方向へ回動操作することで、蓋体と共にキャップ本体の有底筒状部が回動して弱化部が切断される。このため、有底筒状部が注出孔から離脱して注出孔が開放される。
【0004】
また、特許文献2に開示されたキャップ構造は、容器本体側に装着するキャップ基部体と、キャップ基部体の開口部を塞ぐ中蓋と、外蓋とを具備している。キャップ基部体と中蓋とは、薄肉部を介して一体的に構成されている。キャップ基部体と外蓋とは、薄肉の連結部によって繋がっている。外蓋と中蓋には、互いに嵌合する凹凸部を設けており、外蓋にはキャップ基部体に弾接する立設壁を設けている。
【0005】
外蓋を周方向に回動することにより、キャップ基部体と外蓋との薄肉の連結部が切断されると共に、キャップ基部体と中蓋との連結部である薄肉部も切断され、互いに嵌合する凹凸部によって中蓋を外蓋に結合させた状態でキャップ基部体から離間させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-184741
【文献】特許第3030824号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成は、蓋体とキャップ本体をそれぞれ別体の二つの部材に成型した後に、組み合わせる必要があり、二種類の金型とセット工程が必要である。また、最初の開栓においては、蓋体を一旦閉方向に回動操作した後に、反対の開放方向に蓋体を回動操作する必要があり、最初の開栓操作においては、二つの動作が必須であった。
【0008】
また、特許文献2の構成では、キャップ基部体と外蓋が薄肉の連結部によって繋がっており、外蓋と中蓋には互いに嵌合する凹凸部を設けている。このため、凹凸部において中蓋と外蓋を結合させるためには、中蓋に対して外蓋をキャップの軸心方向に移動させて凹凸部を嵌合させる必要がある。
【0009】
この中蓋に対して外蓋がキャップの軸心方向へ移動することを許容するために、ヒンジをなす連結部は冗長な長さを必要とする。すなわち、連結部は、外蓋がヒンジの支点回りに揺動することを許容するとともに、外蓋が上下方向に移動することを許容できるように、曲線状をなして伸縮可能な比較的長い形状とすることが必須である。
【0010】
このため、開封操作において破断した連結部が外蓋の外側面から長く突出することになり、その後の開栓、閉栓操作において使用者の手に異物感を与える要因となり、場合によっては手指を痛める要因となる。
【0011】
本発明は上記した課題を解決するものであり、一つの金型、一度の成型工程で製造することができ、開封操作と開栓操作を同時に一つの動作で行うことができ、ヒンジを必要最小限に小さくすることができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明に係るキャップは、容器の口部に装着するキャップ本体部と、キャップ本体部にヒンジを介して連結した上蓋部と、上蓋部をキャップ本体部から切り離し可能に保持するヒンジ弱化部と、中栓弱化部を介してキャップ本体へ切り離し可能に保持された中栓と、中栓弱化部が破断した中栓を保持する上蓋部の中栓保持部と、中栓に設けた開栓部と、中栓保持部に設けた開栓具を備え、開栓部と開栓具は、ヒンジ支点廻りの上蓋部の揺動方向において開栓具が開栓部に侵入可能で、かつ口部の軸心廻りに回転する上蓋部の開栓操作において開栓部と開栓具が係合して一体に回転する構造をなし、上蓋部と中栓が一体に回転して中栓弱化部とヒンジ弱化部が破断することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るキャップにおいて、開栓部は、中栓上に設けた二枚の板状体を有し、開栓具は開栓部の二枚の板状体の間に挿入する一枚の板状体を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るキャップにおいて、開栓部は、中栓上に設けた一枚の板状体を有し、開栓具は開栓部の一枚の板状体を挿入可能に離隔した二枚の板状体を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るキャップにおいて、ヒンジは、支点回りの揺動方向にのみ上蓋部の可動を許容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成において、最初の開封操作において、上蓋部が口部の軸心廻りに回転すると、開栓部と開栓具が係合することで、上蓋部と中栓が一体に回転して中栓弱化部とヒンジ弱化部が破断し、中栓弱化部の破断によりキャップ本体部から切り離された中栓が中栓保持部に保持されて上蓋部と一体に開栓される。
【0017】
したがって、一動作によって、開封操作と開栓操作を同時に行うことができる。ヒンジ弱化部が破断することで、不正な開封操作に対して不正開封の有無を示すTE(tamper evident)を確保できる。
【0018】
しかも、キャップ本体と上蓋部はヒンジにおいて連結する構造をなすので、一つの金型で、一度の成型工程でキャップ本体と上蓋部を同時に成型することができる。
【0019】
また、開栓部と開栓具は、ヒンジ支点廻りの上蓋部の揺動方向において開栓具が開栓部に侵入可能な構造をなす。具体的には、開栓部が中栓上に設けた二枚の板状体からなり、開栓具が開栓部の二枚の板状体の間に挿入する一枚の板状体からなる。または、開栓部が中栓上に設けた一枚の板状体からなり、開栓具が開栓部の一枚の板状体を挿入可能に離隔した二枚の板状体からなる。
【0020】
このため、ヒンジは、支点回りの揺動方向にのみ上蓋部の可動を許容する構造であればよいので、必要最小限の長さとすることができ、開封時にヒンジ弱化部の破断により上蓋部をキャップ本体部から切り離した後の開栓操作において使用者の手に異物感を与えない構造を実現できる。なお、開栓部は上蓋部のヒンジ支点廻りの揺動を阻害しない形状を有するものであり、形状、寸法は適宜に設定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態におけるキャップを示し、折り畳み前の平面図
【
図2】同実施の形態におけるキャップを示し、折り畳み前の断面図
【
図3】同実施の形態におけるキャップを示し、折り畳み途中を示す断面図
【
図4】同実施の形態におけるキャップを示し、折り畳み途中を示す断面図
【
図5】同実施の形態におけるキャップを示し、折り畳み後の平面図
【
図6】同実施の形態におけるキャップを示し、容器に打栓した状態の断面図
【
図7】同実施の形態におけるキャップを示し、開封後の上蓋部の断面図
【
図8】同実施の形態におけるキャップを示し、開封後に開栓した状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2は成型後の折り畳み前のキャップを示し、
図3、
図4は折り畳み途中のキャップを示し、
図5はキャップの折り畳み後の平面図を示し、
図6は容器に打栓した状態のキャップを示し、
図7、
図8は開封後のキャップを示す。
【0023】
図1から
図8において、キャップ1は、容器2の口部21に装着するキャップ本体部3と、キャップ本体部3にヒンジ4を介して連結した上蓋部5からなる。ヒンジ4は、上蓋部をキャップ本体部から切り離し可能に保持するヒンジ弱化部41を有し、ヒンジ支点廻りの揺動方向にのみ上蓋部5の可動を許容する必要最小限の長さを有する構造をなす。
【0024】
容器2は、キャップ1を装着する口部21の外側面に、周状に形成した環状凹部22を有し、環状凹部22に続く下方に、キャップ本体部3を受け止める円形座部23を有している。
【0025】
キャップ本体部3は、容器2の軸心方向の一側に注ぎ口31を有し、他側に容器2の口部21に被せるベース部32を有している。ベース部32は容器2の開口縁に嵌合する環状の嵌合溝33を有しており、嵌合溝33の内側面に口部21の環状凹部22に係合する環状凸部34を有している。
【0026】
キャップ本体部3の一側には、注ぎ口31を囲んで円筒状に立ち上がるシール壁35があり、シール壁35よりも径方向外側の位置に上蓋部5に螺合する雄ネジ部36を有している。
【0027】
キャップ本体部3は、中栓37を有しており、中栓37の外周縁と注ぎ口31の内周縁の間に形成する中栓弱化部38が中栓37をキャップ本体部3から切り離し可能に保持している。
【0028】
上蓋部5は、中栓弱化部38が破断した中栓37を保持する円筒状の中栓保持部51を有し、中栓保持部51の下端内周縁に環状凸部52を有している。中栓37は中栓保持部51に圧接する一対の円弧状の中栓係合部39を有し、中栓係合部39の外側に中栓保持部の環状凸部52に係合する円弧状凹部60を有している。
【0029】
中栓37は上面に開栓部61を有し、中栓保持部51が内側に開栓部61に係合する開栓具53を備えている。ここでは、開栓部61が中栓37の上に設けた二枚の板状体61aを有し、開栓具53が開栓部61の二枚の板状体61aの間に挿入する一枚の板状体53aを有している。しかし、開栓部61を中栓37の上に設けた一枚の板状体61aとし、開栓具53を開栓部61の一枚の板状体61aを挿入可能に離隔した二枚の板状体53aとすることも可能である。なお、開栓部61の板状体61aは上蓋部5のヒンジ支点廻りの揺動を阻害しない形状を有するものであり、形状、寸法は適宜に設定可能である。ここでは、板状体61aの角部に相当する部位に傾斜辺61bを設けている。傾斜辺61bは必須のものではなく、高さ寸法、幅寸法によっては板状体61aを矩形状とすることも可能である。
【0030】
開栓部61と開栓具53は、ヒンジ支点廻りの上蓋部5の揺動方向において開栓具53が開栓部61に侵入可能で、かつ口部21の軸心廻りに回転する上蓋部5の開栓操作において開栓部61と開栓具53が係合して一体に回転する構造をなす。
【0031】
開栓部61の双方の板状体61aの外側にはそれぞれ一対の補強部材62を配置しており、補強部材62が板状体61aを補強する構造材をなす。開栓具53の板状体53aは両側が中栓保持部51の内側面に保持されている。
【0032】
上蓋部5は、キャップ本体部3のシール壁35の上端縁に圧接する環状座部54を内側底面に有し、筒状壁部55の下端内側面にキャップ本体部3の雄ネジ部36に螺合する雌ネジ部56を有している。
【0033】
上記した構成における作用を説明する。
(製造および折り畳み前)
キャップ本体3と上蓋部5はヒンジ4において連結する構造をなすので、一つの金型で、一度の成型工程でキャップ本体3と上蓋部5を同時に成型することができる。
(セット)
製造した折り畳み前のキャップ本体3及び上蓋部5をヒンジ4において中折れさせて折り畳み、上蓋部5をヒンジ4のヒンジ支点廻りに揺動させる。上蓋部5がヒンジ支点廻りに揺動すると、開栓具53の一枚の板状体53aが開栓部61の二枚の板状体61aの間に侵入する。
【0034】
折り畳みにより、上蓋部5をキャップ本体部3に装着すると、上蓋部5の中栓保持部51が中栓37の中栓係合部39に圧接し、中栓保持部51の環状凸部52が中栓係合部39の円弧状凹部60に係合する。また、キャップ本体部3のシール壁35の上端縁が上蓋部5の環状座部54に圧接する。さらに、上蓋部5の筒状壁部55の雌ネジ部56がキャップ本体部3の雄ネジ部36に重なる。
【0035】
このように、上蓋部5をヒンジ4のヒンジ支点廻りに揺動させて揺動方向に折るだけで、開栓具53を開栓部61にスムーズに挿入してセット工程が完了する。
(打栓)
折り畳み後のセットされたキャップ1を容器2に打栓する。キャップ本体部3のベース部32を口部21に被せ、ベース部32の嵌合溝33を容器2の開口縁に嵌合させ、嵌合溝33の環状凸部34を口部21の環状凹部22に係合させて、容器2にキャップ1を装着する。
(開封、開栓)
最初の開封、開栓操作において、上蓋部5が口部21の軸心廻りに回転すると、開栓部61と開栓具53が係合して一体に回転することで、上蓋部5と中栓37が一体に回転して中栓弱化部38とヒンジ弱化部41が破断し、中栓弱化部38の破断によりキャップ本体部3から切り離された中栓37が中栓保持部51に保持されて上蓋部5と一体に開栓される。
【0036】
したがって、一動作によって、開封操作と開栓操作を同時に行うことができる。ヒンジ弱化部41が破断することで、不正な開封操作に対して不正開封の有無を示すTE(tamper evident)を確保できる。
【0037】
また、開栓部61と開栓具53は、ヒンジ4のヒンジ支点廻りに上蓋部5が揺動する方向において開栓具53が開栓部61に侵入可能な構造をなす。このため、ヒンジ4は、支点回りの揺動方向にのみ上蓋部5の可動を許容する構造であればよいので、必要最小限の長さとすることができる。この結果、開封時にヒンジ弱化部41の破断により上蓋部5をキャップ本体部3から切り離した後の開栓操作において、ヒンジ4が使用者の手に異物感を与えない構造を実現できる。
【符号の説明】
【0038】
1 キャップ
2 容器
3 キャップ本体部
4 ヒンジ
5 上蓋部
21 口部
22 環状凹部
23 円形座部
31 注ぎ口
32 ベース部
33 嵌合溝
34 環状凸部
35 シール壁
36 雄ネジ部
37 中栓
38 中栓弱化部
39 中栓係合部
41 ヒンジ弱化部
51 中栓保持部
52 環状凸部
53 開栓具
53a 板状体
54 環状座部
55 筒状壁部
56 雌ネジ部
60 円弧状凹部
61 開栓部
61a 板状体
61b 傾斜辺
62 補強部材