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  • 特許-誘導発熱ローラ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】誘導発熱ローラ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/42 20060101AFI20240216BHJP
   H05B 6/14 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H05B6/42
H05B6/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020115647
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013229
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】北野 孝次
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-055881(JP,A)
【文献】実公昭24-010805(JP,Y1)
【文献】特開2009-104975(JP,A)
【文献】米国特許第05362945(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/42
H05B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持されたローラ本体と、
前記ローラ本体の内部に設けられた円筒状鉄心と、
前記円筒状鉄心の外側周面に巻回された誘導コイルと、
前記円筒状鉄心の内側周面に溶接された冷却管とを備え、
前記冷却管は、前記円筒状鉄心の内側周面に沿って互いに同じ巻方向で螺旋状に巻かれた往路管部及び復路管部を有し、前記往路管部及び前記復路管部は一端側で連通しており、前記往路管部の他端部に冷却媒体入口が形成され、前記復路管部の他端部に冷却媒体出口が形成されており、
前記往路管部の螺旋要素及び前記復路管部の螺旋要素は、互いに接触している、誘導発熱ローラ装置。
【請求項2】
前記ローラ本体は、有底円筒状のものであり、
前記誘導発熱ローラ装置は、前記ローラ本体の底部中央部に接続され、前記ローラ本体の内部において前記ローラ本体の回転中心軸上に沿って設けられた回転軸をさらに備え、
前記円筒状鉄心は、前記回転軸が内部に挿入されるとともに、前記ローラ本体及び前記回転軸の間の中空内に配置されるものである、請求項1に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項3】
前記円筒状鉄心の内側周面と前記回転軸の外側周面との距離は、前記冷却管の1本分以上、かつ、2本分未満である、請求項2に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項4】
前記往路管部及び前記復路管部は、互いに同じピッチで巻かれている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導発熱ローラ装置には、特許文献1に示すように、回転可能な円筒状ローラと、円筒状鉄心とを備え、円筒状鉄心に誘導コイルを巻装して円筒状ローラの内部に配置したものがある。この誘導発熱ローラ装置には、円筒状鉄心又は誘導コイルを冷却するための冷却構造が設けられている。
【0003】
この冷却構造は、円筒状鉄心の内周面に、中空帯体を螺旋状にして設け、円筒状ローラの一端側に冷却媒体の入出口を設けて構成されている。具体的には、中空帯体の一端部に導入配管を接続し、中空帯体の他端部に導出配管を接続し、導入配管から冷却媒体を供給するとともに、導出配管から冷却媒体を排出する構成である。
【0004】
しかしながら、中空帯体の他端部に接続される導出配管は、中空帯体を貫くことが出来ないため、中空帯体に対して内周寄り又は外周寄り(例えば鉄心内)にシフトして配置する必要があり、配管構造が複雑化したり、周囲構造との関係で配置できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3756261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、円筒状鉄心を冷却する冷却管の配管構造を簡単にすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る誘導発熱ローラ装置は、回転自在に支持されたローラ本体と、前記ローラ本体の内部に設けられた円筒状鉄心と、前記円筒状鉄心の外側周面に巻回された誘導コイルと、前記円筒状鉄心の内側周面に溶接された冷却管とを備え、前記冷却管は、前記円筒状鉄心の内側周面に沿って互いに同じ巻方向で螺旋状に巻かれた往路管部及び復路管部を有し、前記往路管部及び前記復路管部は一端側で連通しており、前記往路管部の他端部に冷却媒体入口が形成され、前記復路管部の他端部に冷却媒体出口が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような誘導発熱ローラ装置であれば、冷却管に対して冷却媒体入口から冷却媒体を導入すると、往路管部を冷却媒体が流れた後に、往路管部に接続された復路管部を流れて冷却媒体出口から導出されることになる。ここで、往路管部及び復路管部はともに円筒状鉄心の内側周面に沿って互いに同じ巻方向で螺旋状に巻かれているので、冷却管を冷却媒体入口から冷却媒体出口に亘って円筒状鉄心の内側周面に沿わせて配置することができる。その結果、円筒状鉄心を冷却する冷却管の配管構造を簡単にすることができる。また、円筒状鉄心の内側周面に冷却管を沿わせる構成において冷却媒体の導入及び導出ができるので、冷却管の占有空間を小さくすることができる。さらに、冷却管の往路管部及び復路管部を鉄心の肉厚内に設ける構成でないので、鉄心の断面積の低下を防ぐこともできる。
【0009】
誘導発熱ローラ装置には、片持ち型のものがある。具体的には、前記ローラ本体は、有底円筒状のものであり、前記誘導発熱ローラ装置は、前記ローラ本体の底部中央部に接続され、前記ローラ本体の内部において前記ローラ本体の回転中心軸上に沿って設けられた回転軸をさらに備え、前記円筒状鉄心は、前記回転軸が内部に挿入されるとともに、前記ローラ本体及び前記回転軸の間の中空内に配置される構成になる。
このような片持ち型の誘導発熱ローラ装置では、ローラ本体の内部に回転軸が配置されることに加えて、ローラ本体の小径化等から、円筒状鉄心が配置されるローラ本体及び回転軸の間の空間が狭くなってしまう。このような狭い空間に配置される円筒状鉄心を好適に冷却するためには、本発明のように、円筒状鉄心の内側周面に沿って互いに同じ巻方向で螺旋状に巻かれた往路管部及び復路管部を有する構成とすることが望ましい。
【0010】
具体的には、前記円筒状鉄心の内側周面と前記回転軸の外側周面との距離は、前記冷却管の1本分以上、かつ、2本分未満である場合に、本発明の冷却管の構成とすることの効果が顕著となる。
【0011】
円筒状鉄心を軸方向に亘って全体的に均一に冷却するためには、前記往路管部及び前記復路管部は、互いに同じピッチで巻かれていることが望ましい。
【0012】
具体的には、互いに隣り合う前記往路管部の螺旋要素及び前記復路管部の螺旋要素は、互いに等距離であることが考えられる。また、前記往路管部の螺旋要素及び前記復路管部の螺旋要素は、互いに接触していることが考えられる。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、冷却管が円筒状鉄心の内側周面に沿って互いに同じ巻方向で螺旋状に巻かれた往路管部及び復路管部を有するので、円筒状鉄心を冷却する冷却管の配管構造を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2】同実施形態の冷却パイプの斜視図である。
図3】冷却パイプの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係る誘導発熱ローラ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
<1.装置構成>
本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100は、いわゆる片持ち型のものであり、図1に示すように、ローラ本体2と、ローラ本体2の内部に設けられた磁束発生機構3とを備えている。
【0017】
ローラ本体2は、有底円筒状のものであり、その底部中央部には、回転軸4が接続されている。この回転軸4は、ローラ本体2の内部においてローラ本体2の回転中心軸上に沿って設けられており、ローラ本体2の外部において転がり軸受等の軸受5を介して機台(不図示)に回転自在に支持されている。この回転軸4が回転自在に支持されることによって、ローラ本体2も回転自在に支持されることになる。なお、回転軸4は、図示しないモータにより回転される。
【0018】
磁束発生機構3は、円筒状鉄心31と、円筒状鉄心31の外側周面に巻回された誘導コイル32とを備えている。円筒状鉄心31は、湾曲部を有する鉄心鋼板を放射状に配列積層して構成されたものである。なお、湾曲部は、例えばインボリュート形状を有するものである。この円筒状鉄心31は、回転軸4が内部に挿入されるとともに、ローラ本体2及び回転軸4の間の中空内に配置される。また、誘導コイル32のリード線L1には、図示しない交流電源が接続される。また、磁束発生機構3は、機台に固定されるフランジ部材6に支持されている。
【0019】
このような磁束発生機構3により、誘導コイル32に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体2の円筒部(シェル部)を通過する。この通過によりシェル部に誘導電流が発生し、その誘導電流でシェル部はジュール発熱する。なお、シェル部での均温性を向上させるために、シェル部には、気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室を形成しても良い。
【0020】
そして、本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、ローラ本体2の内部に設けられ、円筒状鉄心31及び誘導コイル32を冷却するための冷却管7を備えている。なお、冷却管7には、図示しない冷却媒体供給源から例えば冷却水等の冷却媒体が供給される。
【0021】
具体的に冷却管7は、円筒状鉄心31の内側周面に溶接されており、円筒状鉄心31の内側周面に沿って互いに同じ巻方向で螺旋状に巻かれた往路管部71及び復路管部72を有している。本実施形態の冷却管7は、円管を用いて構成されており、1条の往路管部71と1条の復路管部72を有している。なお、冷却管7は、耐熱性を有し、かつ、非磁性体であることが望ましく、例えばステンレス鋼等を用いることができる。
【0022】
そして、特に図2に示すように、往路管部71及び復路管部72は一端側で連通しており、往路管部71の他端部に冷却媒体入口P1が形成され、復路管部72の他端部に冷却媒体出口P2が形成されている。なお、冷却媒体入口P1及び冷却媒体出口P2は、ローラ本体2の開口部側に設けられており、ここでは、フランジ部材6を貫通して機台側に位置している。
【0023】
また、往路管部71及び復路管部72は、互いに同じピッチで巻かれており、互いに隣り合う往路管部71の螺旋要素及び復路管部72の螺旋要素は、互いに等距離となるように構成されている。また、往路管部71の螺旋要素と復路管部72の螺旋要素とは、ローラ本体2の軸方向に沿って交互となるように配置される。
【0024】
なお、本実施形態の冷却管7は1本の管をU字状に折り曲げた後に、螺旋状に折り曲げることにより、一端側で連通する1条の往路管部71及び1条の復路管部72が構成される。このように構成した冷却管7を円筒状鉄心31の内側周面に溶接する方法としては、円筒状鉄心31と円管状の冷却管7との隙間に線状の溶加材を入れて溶接することで、円筒状鉄心31と冷却管7との溶接を強固にできるとともに伝熱面積を大きくすることができる。
【0025】
本実施形態の誘導発熱ローラ装置100においては、円筒状鉄心31の内側周面と回転軸4の外側周面との距離W(図1参照)が、冷却管7の1本分以上、かつ、2本分未満となるように構成されており、上述した2条構成の冷却管7とすることで、円筒状鉄心31の内側周面と回転軸4の外側周面との間に無理なく冷却管7を設けることができる。また、冷却管7と回転軸4との距離が近いため、ローラ本体2からの熱により加熱される回転軸4を冷却することもでき、当該回転軸4を回転可能に支持する軸受5が高温になることを防ぎ、軸受5の熱劣化を防ぐことができる。
【0026】
<2.本実施形態の効果>
このように構成された本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100によれば、冷却管7に対して冷却媒体入口P1から冷却媒体を導入すると、往路管部71を冷却媒体が流れた後に、往路管部71に接続された復路管部72を流れて冷却媒体出口P2から導出されることになる。ここで、往路管部71及び復路管部72はともに円筒状鉄心31の内側周面に沿って互いに同じ巻方向で螺旋状に巻かれているので、冷却管7を冷却媒体入口P1から冷却媒体出口P2に亘って円筒状鉄心31の内側周面に沿わせて配置することができる。その結果、円筒状鉄心31を冷却する冷却管7の配管構造を簡単にすることができる。また、円筒状鉄心31の内側周面に冷却管7を沿わせる構成において冷却媒体の導入及び導出ができるので、冷却管7の占有空間を小さくすることができる。さらに、冷却管7の往路管部71及び復路管部72を鉄心31の肉厚内に設ける構成でないので、鉄心31の断面積の低下を防ぐこともできる。
【0027】
<3.その他の本実施形態の効果>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0028】
例えば、前記実施形態の冷却管7は、1条の往路管部71と1条の復路管部72とを有する構成であったが、2条以上の往路管部と2条以上の復路管部とを有する構成であっても良い。この場合、2条以上の往路管部の冷却媒体入口を往路管部それぞれに独立して設けても良いし、1つの冷却媒体入口から分岐させて2条以上の往路管部に冷却媒体を導入しても良い。同様に、2条以上の復路管部の冷却媒体出口を復路管部それぞれに独立して設けても良いし、2条以上の復路管部を合流させて1つの冷却媒体出口から導出しても良い。
【0029】
また、図3に示すように、往路管部71の螺旋要素及び復路管部72の螺旋要素は、互いに接触するように構成しても良い。
【0030】
さらに、前記実施形態では、1本の管を変形させることにより、往路管部71及び復路管部72を一体に構成していたが、往路管部71となる螺旋状の管と復路管部72となる螺旋状の管とをそれらの一端部で接続管などを用いて接続することにより、往路管部71と復路管部72とを連通させるようにしても良い。
【0031】
その上、前記実施形態の冷却管は、断面円形の円管であったが、断面楕円形の楕円管であっても良いし、断面矩形の矩形管であっても良い。
【0032】
また、誘導コイル32の外周に断熱材を配置しても良い。この断熱材は、ローラ本体2から誘導コイル32への熱輻射、空気熱伝導等の熱流を遮断し、誘導コイル32の低温化に寄与するものである。
【0033】
さらに、円筒状鉄心31、誘導コイル32及び冷却管7を耐熱性樹脂でモールド化しても良い。具体的には、円筒状鉄心31、誘導コイル32及び冷却管7の隙間に耐熱性樹脂を含浸させてモールド化し、各部位に存在する空気層を耐熱性樹脂の充填で無くし総括伝熱係数を大きくすると、磁束発生機構3の空隙部がなくなり、熱抵抗が更に小さく、円筒状鉄心31及び誘導コイル32の熱は効果的に冷却管7を流れる冷却媒体に伝達することができる。
【0034】
加えて、前記実施形態では片持ち型の誘導発熱ローラ装置に適用した例を説明したが、両持ち型の誘導発熱ローラ装置に適用しても良い。この場合、ローラ本体は、円筒状をなすシェル部と、当該シェル部の両端部に設けられた一対のジャーナル部とを有している。また、ジャーナル部は、シェル部の端部開口を覆うフランジ部と、当該フランジ部に一体形成された中空の駆動軸とを有している。駆動軸は、転がり軸受等の軸受を介して機台に回転自在に支持されており、例えばモータ等により外部から与えられる駆動力によって回転されるように構成されている。このローラ本体の内部に前記実施形態の磁束発生機構が配置される。
【0035】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
100・・・誘導発熱ローラ装置
2 ・・・ローラ本体
31 ・・・円筒状鉄心
32 ・・・誘導コイル
4 ・・・回転軸
7 ・・・冷却管
71 ・・・往路管部
72 ・・・復路管部
P1 ・・・冷却媒体入口
P2 ・・・冷却媒体出口
図1
図2
図3