(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240216BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240216BHJP
H01M 50/547 20210101ALI20240216BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/547
(21)【出願番号】P 2021532669
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2020006321
(87)【国際公開番号】W WO2021009959
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019130351
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 英一
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150354(WO,A1)
【文献】特開2010-108751(JP,A)
【文献】国際公開第2007/135790(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/025594(WO,A1)
【文献】特開2016-001602(JP,A)
【文献】特開2017-069036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 50/547
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固体電池セルと、
前記複数の固体電池セルの間に位置する接続層と、
を備え、
前記複数の固体電池セルは、それぞれ、正極集電体と、正極活物質層と、固体電解質を含む固体電解質層と、負極活物質層と、負極集電体とが、この順で積層された構造を有し、
前記複数の固体電池セルは、電気的に並列に接続されており、
前記複数の固体電池セルのうち隣り合う2つの固体電池セルの前記正極集電体同士又は前記負極集電体同士は、前記接続層を介して積層され
、
前記接続層は、固体電解質を含む、
電池。
【請求項2】
前記接続層のヤング率は、前記正極集電体及び前記負極集電体のヤング率よりも低い、
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記接続層は、樹脂を含む、
請求項1
又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記接続層は、導電性材料を含む、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記接続層は、固体電解質及び導電性材料から構成される、
請求項1又は2に記載の電池。
【請求項6】
前記接続層の端部の少なくとも一部は、屈曲している、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
前記複数の固体電池セルの側面に接し、前記複数の固体電池セルそれぞれの前記負極集電体又は前記正極集電体と接続される端子電極をさらに備え、
前記接続層の端部の少なくとも一部は、屈曲した状態で前記端子電極と接している、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記複数の固体電池セルの側面に接し、前記複数の固体電池セルそれぞれの前記負極集電体又は前記正極集電体と接続される端子電極をさらに備え、
前記接続層の端部の少なくとも一部は、屈曲した状態で前記端子電極に埋没している、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記複数の固体電池セルそれぞれの前記固体電解質層は、前記正極集電体、前記正極活物質層、前記負極集電体及び前記負極活物質層の側面の少なくとも一部に接して配置されている、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
前記複数の固体電池セルは、前記複数の固体電池セルのうち隣り合う2つの固体電池セルの前記固体電解質層同士が接するように積層されている、
請求項
9に記載の電池。
【請求項11】
前記複数の固体電池セルは、それぞれ、前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置される封止部材を有し、
前記封止部材は、平面視で前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外側に位置する、
請求項1から
10のいずれか一項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体電池セルを並列接続することによって電池容量を大きくした並列接続型の電池が知られている。このような並列接続に関連する技術として、例えば、特許文献1には、積層された固体電池セル同士の集電体の間からリード電極が引き出されている構造の電池が開示されている。また、特許文献2には、絶縁層を挟んで積層された固体電池セルが並列接続されている構造の電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-187944号公報
【文献】特開2004-158222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、高出力化に対応すると共に、信頼性の高い並列接続型の電池が望まれている。
【0005】
そこで、本開示では、高出力と高信頼性とを両立した並列接続型の電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様における電池は、複数の固体電池セルと、前記複数の固体電池セルの間に位置する接続層と、を備え、前記複数の固体電池セルは、それぞれ、正極集電体と、正極活物質層と、固体電解質を含む固体電解質層と、負極活物質層と、負極集電体とが、この順で積層された構造を有し、前記複数の固体電池セルは、電気的に並列に接続されており、前記複数の固体電池セルのうち隣り合う2つの固体電池セルの前記正極集電体同士又は前記負極集電体同士は、前記接続層を介して積層されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高出力と高信頼性とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る複数の固体電池セルが電気的に並列に接続されずに積層された状態を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る電池の概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態の変形例1に係る電池の概略構成を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態の変形例1の別の例に係る電池の概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態の変形例2に係る電池の概略構成を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の変形例3に係る電池の概略構成を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態の変形例4に係る電池の概略構成を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態の変形例5に係る電池の概略構成を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態の変形例6に係る電池の概略構成を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態の変形例7に係る電池の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
本発明者らは、並列接続型の電池を高出力化する場合に、以下の問題が発生することを見出した。
【0010】
電池を構成する固体電池セルの集電体を厚くすることにより、集電体の電流容量が増大し、電池の出力が高められる。しかしながら、集電体を厚くする場合、電池の使用時の温度変化によって生じる集電体の膨張量又は収縮量が大きくなる。そのため、集電体の膨張又は収縮によって生じる固体電池セル内部への応力が増大する。温度変化によって生じる応力の増大によって、固体電池セルが破損しやすくなるため、電池の信頼性が低下する。つまり、集電体を厚くすることによる電池の高出力化では、温度変化による電池の信頼性低下が発生しやすく、電池の高出力化と高信頼性との両立が困難である。
【0011】
そこで、本開示では、高出力と高信頼性とを両立した並列接続型の電池を提供する。
【0012】
(本開示の概要)
本開示の一形態の概要は、以下の通りである。
【0013】
本開示の一態様に係る電池は、複数の固体電池セルと、前記複数の固体電池セルの間に位置する接続層と、を備え、前記複数の固体電池セルは、それぞれ、正極集電体と、正極活物質層と、固体電解質を含む固体電解質層と、負極活物質層と、負極集電体とが、この順で積層された構造を有し、前記複数の固体電池セルは、電気的に並列に接続されており、前記複数の固体電池セルのうち隣り合う2つの固体電池セルの前記正極集電体同士又は前記負極集電体同士は、前記接続層を介して積層されている。
【0014】
これにより、複数の固体電池セルそれぞれの負極集電体同士又は正極集電体同士が、接続層を介して隣り合うことにより、隣り合って積層する2つの固体電池セルからの電流は、隣り合う2つの負極集電体又は2つの正極集電体を流れる。このため、隣り合う2つの固体電池セルで集電体が共通化され、電流が1つの集電体を流れる場合と比べ、集電体の厚みを増すこと無く、電流経路の断面積が2倍になるために集電体の抵抗値は半減される。また、電流経路の断面積が2倍になっても、集電体1つあたりの熱膨張量に変化は無く、集電体の温度変化によって生じる複数の固体電池セルへの応力は変わらない。その結果、接続層で分離された2つの集電体の温度変化によって生じる複数の固体電池セルへの応力は、分散される。そのため、集電体の厚みを増加させた場合と比較して、複数の固体電池セルが破損されにくくなる。これにより、集電体の電流容量を増大させると同時に、温度変化による複数の固体電池セルの破損が抑制される。よって、高出力と高信頼性とを両立した並列接続型の電池を実現できる。
【0015】
また、例えば、前記接続層のヤング率は、前記正極集電体及び前記負極集電体のヤング率よりも低くてもよい。
【0016】
これにより、接続層が集電体よりも柔らかいため、集電体の温度変化によって生じる複数の固体電池セルへの応力が、接続層の変形によって緩和される。さらに、接続層が、電池の製造における積層プロセスの加圧で変形し、接続層と集電体との接合性が向上する。よって、より電池の信頼性を高めることができる。
【0017】
また、例えば、前記接続層は、固体電解質を含んでもよい。
【0018】
固体電解質は、加圧によって変形しやすい。そのため、温度変化による集電体の膨張又は収縮によって生じる複数の固体電池セルへの応力をより緩和しやすくなる。よって、より電池の信頼性を高めることができる。
【0019】
また、例えば、前記接続層は、樹脂を含んでもよい。
【0020】
これにより、集電体よりも柔らかく、ヤング率の低い接続層を形成しやすくなる。また、樹脂は、比重が比較的小さいため、接続層に樹脂が含まれることにより、電池の重量エネルギー密度を高めることができる。
【0021】
また、例えば、前記接続層は、導電性材料を含んでもよい。
【0022】
これにより、集電体に加えて、接続層も導電体となって、固体電池セルから取り出される電流容量が増加するため、電池の出力を高めることができる。
【0023】
また、例えば、前記接続層は、固体電解質及び導電性材料から構成されてもよい。
【0024】
これにより、温度変化による集電体の膨張又は収縮によって生じる複数の固体電池セルへの応力を緩和しつつ、電流容量を増加させることができる。
【0025】
また、例えば、前記接続層の端部の少なくとも一部は、屈曲していてもよい。
【0026】
これにより、接続層が複数の固体電池セルに食い込むため、接続層が複数の固体電池セルと剥離しにくくなり、側面部からの接続層のデラミネーションの発生を抑制できる。よって、より電池の信頼性を高めることができる。
【0027】
また、例えば、前記複数の固体電池セルの側面に接し、前記複数の固体電池セルそれぞれの前記負極集電体又は前記正極集電体と接続される端子電極をさらに備え、前記接続層の端部の少なくとも一部は、屈曲した状態で前記端子電極と接していてもよい。
【0028】
これにより、接続層の端部が屈曲しない状態で端子電極と接している場合よりも、接続層と端子電極との接触面積を大きくできる。そのため、接続層を介して集電体の熱を端子電極へと放熱しやすくなり、電池の温度上昇が抑制される。よって、より電池の信頼性を高めることができる。
【0029】
また、例えば、前記複数の固体電池セルの側面に接し、前記複数の固体電池セルそれぞれの前記負極集電体又は前記正極集電体と接続される端子電極をさらに備え、前記接続層の端部の少なくとも一部は、屈曲した状態で前記端子電極に埋没していてもよい。
【0030】
これにより、接続層の端部が屈曲しない状態で端子電極と接している場合よりも、接続層と端子電極との接触面積を大きくできる。そのため、接続層を介して集電体の熱を端子電極へと放熱しやすくなり、電池の温度上昇が抑制される。さらに、端子電極が接続層の端部を覆うように被覆するため、端子電極と接続層との固着強度も高まる。よって、より電池の信頼性を高めることができる。
【0031】
また、例えば、前記複数の固体電池セルそれぞれの前記固体電解質層は、前記正極集電体、前記正極活物質層、前記負極集電体及び前記負極活物質層の側面の少なくとも一部に接して配置されていてもよい。
【0032】
これにより、電子導電性を有さない固体電解質層が、正極活物質層、負極活物質層、正極集電体及び負極集電体の側面の少なくとも一部に接して配置される。よって、正極活物質層、負極活物質層、正極集電体及び負極集電体が異なる極性の構成要素と接触して短絡することが抑制される。よって、より電池の信頼性を高めることができる。
【0033】
また、例えば、前記複数の固体電池セルは、前記複数の固体電池セルのうち隣り合う2つの固体電池セルの前記固体電解質層同士が接するように積層されていてもよい。
【0034】
これにより、接するように積層された固体電池セルそれぞれの固体電解質層に含まれる固体電解質同士が接着しやすいため、複数の固体電池セルの積層構造をより強固にすることができる。よって、より電池の信頼性を高めることができる。
【0035】
また、例えば、前記複数の固体電池セルは、それぞれ、前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置される封止部材を有し、前記封止部材は、平面視で前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外側に位置してもよい。
【0036】
これにより、正極活物質層及び負極活物質層の外側に封止部材が配置されるため、外部からの衝撃等による正極活物質層及び負極活物質層の破損を抑制できる。よって、より電池の信頼性を高めることができる。
【0037】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0038】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0039】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0040】
また、本明細書及び図面において、x軸、y軸及びz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、z軸方向を電池の厚み方向としている。また、本明細書において、「厚み方向」とは、各層が積層された面に垂直な方向のことである。
【0041】
また、本明細書において「平面視」とは、電池における積層方向に沿って電池を見た場合を意味し、本明細書における「厚み」とは、電池及び各層の積層方向の長さである。
【0042】
また、本明細書において「内側」及び「外側」などにおける「内」及び「外」とは、電池における積層方向に沿って電池を見た場合における内、外のことである。
【0043】
また、本明細書において、電池の構成における「上」及び「下」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0044】
(実施の形態)
[電池の構成]
まず、本実施の形態に係る電池の構成について説明する。
【0045】
図1は、本実施の形態に係る複数の固体電池セルが電気的に並列に接続されずに積層された状態を説明するための図である。
図1には、2つの固体電池セル1a及び1bが積層された電池100の概略構成が示されている。
図1の(a)は、電池100の上面図である。
図1の(a)では、電池100を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図1の(b)は、
図1の(a)のI-I線で示される位置での電池100の断面を示す断面図である。
図2は、本実施の形態に係る電池101の概略構成を示す図である。
図2の(a)は、電池101の上面図である。
図2の(a)では、電池101を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図2の(b)は、
図2の(a)のII-II線で示される位置での電池101の断面を示す断面図である。
【0046】
図1及び
図2に示されるように、電池100及び電池101は、2つの固体電池セル1a及び1bが積層された構造を有する。電池100及び電池101は、固体電池セル1a及び1bと、固体電池セル1a及び1bの間に位置する接続層16とを備える。
【0047】
固体電池セル1a及び1bは、それぞれ、正極集電体11と、正極集電体11に接して配置される正極活物質層12と、負極集電体13と、負極集電体13に接して配置される負極活物質層14と、正極活物質層12と負極活物質層14との間に配置され、固体電解質を含む固体電解質層15と、を有する。正極活物質層12及び負極活物質層14は、正極集電体11と負極集電体13との間に配置されている。言い換えると、固体電池セル1a及び1bは、それぞれ、正極集電体11と、正極活物質層12と、固体電解質層15と、負極活物質層14と、負極集電体13とが、この順で積層された構造を有する。
【0048】
正極集電体11、正極活物質層12、固体電解質層15、負極活物質層14及び負極集電体13は、それぞれ、平面視で矩形である。正極集電体11、正極活物質層12、固体電解質層15、負極活物質層14及び負極集電体13の平面視での形状は、特に制限されず、円形、楕円形又は多角形等の矩形以外の形状であってもよい。
【0049】
隣り合う2つの固体電池セル1a及び1bの負極集電体13同士は、接続層16を介して積層されている。つまり、固体電池セル1aと固体電池セル1bとは、上下の向きが反対になるように、接続層16を介して、積層されている。固体電池セル1a及び1bと、接続層16とは、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル1aと固体電池セル1bとは、接続層16を挟んで離間している。
【0050】
固体電池セル1a及び1bそれぞれの正極集電体11、負極集電体13及び固体電解質層15は、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル1a及び1bそれぞれの負極集電体13は、接続層16と接している。なお、本明細書において、正極集電体11及び負極集電体13を総称して、単に「集電体」と称する場合がある。
【0051】
集電体は、導電性を有する材料で形成されていればよく、特に限定されない。集電体は、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銅、パラジウム、金及び白金、又は、これらの2種以上の合金などからなる箔状体、板状体若しくは網目状体などが用いられてもよい。集電体の材料は、製造プロセス、使用温度、及び、使用圧力で溶融及び分解しないこと、並びに、集電体にかかる電池動作電位及に導電性を考慮して適宜選択されてよい。また、集電体の材料は、要求される引張強度及び耐熱性に応じても選択されうる。集電体は、高強度電解銅箔、又は、異種金属箔を積層したクラッド材であってもよい。
【0052】
集電体の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0053】
なお、集電体の接続層16と接する面は、接続層16との密着性が向上し、固体電池セル1a及び1bの積層構造を強固にする観点から、凹凸のある粗面に加工されてもよい。また、集電体の接続層16と接する面には、有機バインダ等の接着成分が塗布されていてもよい。これにより、集電体と接続層16との固着性を向上させることができる。
【0054】
正極活物質層12は、正極集電体11の一方の面に接して積層されている。正極活物質層12は、少なくとも正極活物質を含む。正極活物質層12は、主に、正極活物質などの正極材料から構成される層である。正極活物質は、負極よりも高い電位で結晶構造内にリチウム(Li)イオン又はマグネシウム(Mg)イオンなどの金属イオンが挿入又は離脱され、それに伴って酸化又は還元が行われる物質である。正極活物質の種類は、電池の種類に応じて適宜選択することができ、公知の正極活物質が用いられうる。
【0055】
正極活物質には、リチウムと遷移金属元素とを含む化合物が挙げられ、例えば、リチウムと遷移金属元素を含む酸化物、及び、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物などが挙げられる。リチウムと遷移金属元素を含む酸化物としては、例えば、LiNixM1-xO2(ここで、Mは、Co、Al、Mn、V、Cr、Mg、Ca、Ti、Zr、Nb、Mo及びW、のうち少なくとも1つの元素であり、xは、0<x≦1である)などのリチウムニッケル複合酸化物、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等の層状酸化物及びスピネル構造を持つマンガン酸リチウム(例えば、LiMn2O4、Li2MnO3、LiMO2)などが用いられる。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物としては、例えば、オリビン構造を持つリン酸鉄リチウム(LiFePO4)などが用いられる。また、正極活物質には、硫黄(S)、硫化リチウム(Li2S)などの硫化物を用いることもでき、その場合、正極活物質粒子に、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)などをコーティング、又は、添加したものを正極活物質として用いることができる。なお、正極活物質には、これらの材料の1種のみが用いられてもよいし、これらの材料のうちの2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0056】
上述のとおり、正極活物質層12は、少なくとも正極活物質を含んでいればよい。正極活物質層12は、正極活物質と他の添加材料との合剤から構成される合剤層であってもよい。他の添加材料としては、例えば、無機系固体電解質又は硫化物系固体電解質などの固体電解質、アセチレンブラックなどの導電助材、及び、ポリエチレンオキシド又はポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダなどが用いられうる。正極活物質層12は、正極活物質と固体電解質などの他の添加材料とを所定の割合で混合することにより、正極活物質層12内でのイオン導電性を向上させることができるとともに、電子伝導性をも向上させることができる。
【0057】
正極活物質層12の厚みは、例えば、5μm以上300μm以下である。
【0058】
負極活物質層14は、負極集電体13の一方の面に接して積層されている。負極活物質層14は、少なくとも負極活物質を含む。負極活物質層14は、主に、負極活物質などの負極材料から構成される層である。負極活物質は、正極よりも低い電位で結晶構造内にリチウム(Li)イオン又はマグネシウム(Mg)イオンなどの金属イオンが挿入又は離脱され、それに伴って酸化又は還元が行われる物質をいう。負極活物質の種類は、電池の種類に応じて適宜選択することができ、公知の負極活物質が用いられうる。
【0059】
負極活物質には、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維又は樹脂焼成炭素などの炭素材料、及び、固体電解質と合剤化される合金系材料などが用いられうる。合金系材料としては、例えば、LiAl、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sb、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C又はLiC6などのリチウム合金、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)などのリチウムと遷移金属元素との酸化物、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化ケイ素(SiOx)などの金属酸化物などが用いられうる。なお、負極活物質には、これらの材料の1種のみが用いられてもよいし、これらの材料のうちの2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0060】
上述のとおり、負極活物質層14は、少なくとも負極活物質を含んでいればよい。負極活物質層14は、負極活物質と他の添加材料との合剤から構成される合剤層であってもよい。他の添加材料としては、例えば、無機系固体電解質又は硫化物系固体電解質などの固体電解質、アセチレンブラックなどの導電助材、及び、ポリエチレンオキシド又はポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダなどが用いられうる。負極活物質層14は、負極活物質と固体電解質などの他の添加材料とを所定の割合で混合することにより、負極活物質層14内でのイオン導電性を向上させることができるとともに、電子伝導性をも向上させることできる。
【0061】
負極活物質層14の厚みは、例えば、5μm以上300μm以下である。
【0062】
固体電池セル1a及び1bそれぞれの正極活物質層12及び負極活物質層14は、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。また、正極活物質層12及び負極活物質層14は、平面視での大きさが、正極集電体11及び負極集電体13よりも小さく、平面視で正極集電体11及び負極集電体13の内側に位置している。
【0063】
固体電池セル1a及び1bそれぞれの固体電解質層15は、正極活物質層12と負極活物質層14との間に配置され、正極活物質層12及び負極活物質層14に接している。固体電解質層15は、平面視で、正極活物質層12及び負極活物質層14の外側にも配置されている。固体電解質層15は、正極活物質層12及び負極活物質層14の側面を覆っており、正極活物質層12及び負極活物質層14よりも外側の領域で、正極集電体11及び負極集電体13に接している。
【0064】
固体電解質層15は、少なくとも固体電解質を含む。固体電解質層15は、例えば、主成分として固体電解質を含む。固体電解質は、電子伝導性を有さず、イオン導電性を有する公知の電池用の固体電解質であればよい。固体電解質には、例えば、リチウムイオン又はマグネシウムイオンなどの金属イオンを伝導する固体電解質が用いられうる。固体電解質の種類は、伝導イオン種に応じて適宜選択すればよい。固体電解質には、例えば、硫化物系固体電解質又は酸化物系固体電解質などの無機系固体電解質が用いられうる。硫化物系固体電解質としては、例えば、Li2S-P2S5系、Li2S-SiS2系、Li2S-B2S3系、Li2S-GeS2系、Li2S-SiS2-LiI系、Li2S-SiS2-Li3PO4系、Li2S-Ge2S2系、Li2S-GeS2-P2S5系又はLi2S-GeS2-ZnS系などのリチウム含有硫化物が用いられうる。酸化物系固体電解質としては、例えば、Li2O-SiO2又はLi2O-SiO2-P2O5などのリチウム含有金属酸化物、LixPyO1-zNzなどのリチウム含有金属窒化物、リン酸リチウム(Li3PO4)、及び、リチウムチタン酸化物などのリチウム含有遷移金属酸化物などが用いられうる。固体電解質としては、これらの材料の1種のみが用いられてもよいし、これらの材料のうちの2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0065】
固体電解質層15は、上記固体電解質に加えて、ポリエチレンオキシド又はポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダなどを含んでいてもよい。
【0066】
なお、固体電解質層15の厚みは、例えば、5μm以上150μm以下である。
【0067】
なお、固体電解質の材料は、粒子の凝集体で構成されてもよい。また、固体電解質の材料は、焼結組織で構成されていてもよい。
【0068】
図1及び
図2に示されるように、固体電池セル1a及び1bそれぞれの負極集電体13と、接続層16とは、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル1a及び1bそれぞれの負極集電体13は、接続層16側の面が、全て接続層16と接している。
【0069】
接続層16は、集電体との積層圧着時の接合性、及び、温度変化による集電体の膨張又は収縮によって生じる、固体電池セル1a及び1bへの応力を緩和する観点から、例えば、集電体よりも柔らかい材料が使用される。例えば、接続層16のヤング率は、正極集電体11及び負極集電体13のヤング率よりも低い。これにより、集電体の温度変化によって生じる、固体電池セル1a及び1bへの応力が接続層16の変形によって緩和される。さらに、接続層16が、積層プロセスの加圧で変形し、接続層16と集電体との接合性が向上する。
【0070】
また、温度変化による固体電解質層15の膨張又は収縮によって生じる、固体電池セル1a及び1bへの応力を緩和し、電池の信頼性を向上させる観点から、接続層16のヤング率は、固体電解質層15のヤング率よりも低くてもよい。また、温度変化による正極活物質層12及び負極活物質層14の膨張又は収縮によって生じる、固体電池セル1a及び1bへの応力を緩和し、電池の信頼性向上の観点から、接続層16のヤング率は、正極活物質層12及び負極活物質層14のヤング率よりも低くてもよい。
【0071】
接続層16には、例えば、固体電解質材料、絶縁性を有する絶縁性材料、電子伝導性を有する導電性材料及び半導体材料など、並びに、これらの材料を混合した材料が用いられる。接続層16の材料は、製造プロセス上のつくりやすさ、及び、応力の緩和性能を鑑みて、材料の種類及び配合を調整して使用されてもよい。
【0072】
接続層16は、固体電解質を含んでいてもよい。接続層16は、主に、固体電解質で構成される層であってもよい。接続層16に用いられる固体電解質としては、上述の固体電解質層15に用いられる固体電解質が挙げられる。接続層16に用いられる固体電解質と、固体電解質層15に用いられる固体電解質とは、同じ種類であってもよく、異なる種類であってもよい。特に、硫化物系固体電解質などの柔らかい固体電解質は、加圧によって変形し、固体電解質の粒子間に接合界面を形成しやすいことが知られている。このような特性を有する固体電解質が接続層16に含まれることにより、温度変化による集電体の膨張又は収縮によって生じる、固体電池セル1a及び1bへの応力をより緩和しやすくなる。
【0073】
接続層16は、固体電解質層15と同じ材料で構成されてもよい。これにより、使用する材料の種類を減らすことができるため、電池を生産性よく簡易に製造することができる。
【0074】
接続層16は、導電性材料又は半導体材料を含んでいてもよい。接続層16に導電性材料又は半導体材料が含まれることにより、集電体に加えて、接続層16も導電体となって、固体電池セル1a及び1bから取り出される電流容量が増加するため、電池の出力を高めることができる。導電性材料としては、例えば、銀、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、パラジウム、金、プラチナ又はこれらの金属を組み合わせた合金が挙げられる。
【0075】
接続層16は、固体電解質に導電性材料の粒子又は半導体材料の粒子を含有させた材料から構成されていてもよい。また、接続層16は、固体電解質及び導電性材料を主成分として含んでいてもよい。例えば、接続層16は、固体電解質及び導電性材料から構成される。これにより、上述のように、温度変化による集電体の膨張又は収縮によって生じる応力を緩和しつつ、電流容量を増加させることができる。
【0076】
接続層16は、接続層16の熱膨張率及びヤング率を調整できる観点から、導電性樹脂ペーストに、固体電解質等を含有させた材料から構成されていてもよい。
【0077】
なお、接続層16が導電性を有する場合、正極集電体11と負極集電体13とが電気的に分離される構造で用いられる。例えば、接続層16と接する集電体とは反対の極の集電体、集電リード及び端子と、接続層16との間に電子導電性を有さない層が配置されればよい。
【0078】
また、接続層16は、樹脂を含んでいてもよい。これにより、集電体よりも柔らかく、ヤング率の低い接続層16を形成しやすくなる。また、樹脂は、比重が比較的小さいため、接続層16に樹脂が含まれることにより、電池の重量エネルギー密度を高めることができる。
【0079】
接続層16に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素化炭化水素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SEBS)、エチレン-プロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム及びアクリロニトリル-ブタジエンゴム等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、(i)尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等のアミノ樹脂、(ii)ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、脂環式等のエポキシ樹脂、(iii)オキセタン樹脂、(iv)レゾール型、ノボラック型等のフェノール樹脂、及び、(v)シリコーンエポキシ、シリコーンポリエステル等のシリコーン変性有機樹脂等が挙げられる。
【0080】
接続層16には、気孔又は気泡等を有する材料が用いられてもよい。これにより、温度変化による集電体の膨張又は収縮によって生じる、固体電池セル1a及び1bへの応力をより緩和することができる。
【0081】
また、接続層16は、金属、セラミックス又は固体電解質等の不燃性の材料を含んでいてもよい。接続層16に不燃性の材料が含まれる場合、電池が異常発熱したときに、類焼抑制する層壁としての作用効果も有する。
【0082】
接続層16は、接する集電体の面の全面に形成されていなくてもよく、接する集電体の面にパターン形成される等によって、部分的に形成されていてもよい。
【0083】
なお、接続層16は、複数の異なる材料の層で構成されていてもよい。
【0084】
接続層16の厚みは、特に限定されないが、電池の体積エネルギー密度の観点から薄い方が好ましい。接続層16の厚みは、体積エネルギー密度の観点から、集電体の厚みよりも薄くてもよい。接続層16の厚みは、例えば、1μm以上20μm以下であり、好ましくは2μm以上10μm以下である。接続層16の厚みが、上述の範囲であることにより、体積エネルギー密度の低下を抑制しつつ、温度変化による集電体の膨張又は収縮によって生じる応力を緩和しやすい。
【0085】
接続層16の比重は、特に限定されないが、重量エネルギー密度の観点から、小さい方が好ましい。接続層16の比重は、集電体の比重よりも小さくてもよい。これにより、重量エネルギー密度への影響を低減できるため、高エネルギー密度の電池が得られる。
【0086】
電池101は、電池100の固体電池セル1a及び1bが電気的に並列に接続された電池の一例である。つまり、電池101では、固体電池セル1a及び1bが電気的に並列に接続されている。具体的には、電池101では、固体電池セル1a及び1bそれぞれの、正極集電体11が正極集電リード17に接続されており、負極集電体13が負極集電リード18に接続されている。なお、本明細書において、正極集電リード17及び負極集電リード18を総称して、単に「集電リード」と称する場合がある。
【0087】
集電リードは、同極の集電体同士を接続し、充放電等に用いられる導線である。集電リードの材料としては、例えば、ニッケル、ステンレス、アルミニウム又は銅などの金属が用いられる。
【0088】
集電リードと集電体との接続方法は特に限定されるものではなく、例えば、接着又は溶接などの工法を用いることができる。集電リードは、導電性を有する接着剤又は接着テープを介して集電体に接続されてもよい。短絡抑制のため、集電リードのうち集電体に接続されない部分の表面は、絶縁処理されていてもよい。
【0089】
電池100の固体電池セル1a及び1bを電気的に並列に接続する方法は、特に制限されず、固体電池セル1a及び1bの正極集電体11同士及び負極集電体13同士が電気的に接続されれば、固体電池セル1a及び1bは集電リード以外によって電気的に接続されてもよい。例えば、正極集電体11及び負極集電体13からタブを引き延ばして集合させることで、固体電池セル1a及び1bが並列に接続されてもよい。
【0090】
以上の構成によれば、固体電池セル1a及び1bそれぞれの負極集電体13同士が、接続層16を介して隣り合うことにより、固体電池セル1a及び1bの負極活物質層14からの電流は、2つの負極集電体13を流れる。これによって、隣り合う2つの固体電池セルで集電体が共通化され、電流が1つの集電体を流れる場合と比べ、集電体の厚みを増すこと無く、電流経路の断面積が2倍になるために集電体の抵抗値は半減される。また、電流経路の断面積が2倍になっても、集電体1つあたりの熱膨張量に変化は無く、集電体の温度変化によって生じる固体電池セル2a及び2bへの応力は変わらない。このような構成により、接続層16で分離された2つの集電体の温度変化によって生じる固体電池セル2a及び2bへの応力は、分散されることとなる。そのため、集電体の厚みを増加させた場合と比較して、固体電池セル2a及び2bが破損されにくくなる。これにより、集電体の電流容量を増大させると同時に、温度変化による固体電池セル2a及び2bの破損が抑制される。よって、高出力と高信頼性とを両立した並列接続型の電池101を実現できる。
【0091】
なお、本実施の形態における構成と、特許文献1及び特許文献2に記載の構成と、を比較すると、下記の差異がある。
【0092】
特許文献1には、固体電池セルが並列接続された電池が開示されている。特許文献1に記載の電池は、隣接する固体電池セルの集電体の間に、電流取り出し用のリード電極を挟んだ構造で電気的に接触させて接続した電池であり、固体電池セル間には接続層を有していない。
【0093】
また、特許文献2には、固体電池セル間を絶縁層で分離して積層し、固体電池セルが並列接続された構造の電池が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の電池において、絶縁層を挟んだ上下の集電体は、それぞれ正極集電体及び負極集電体であり、本実施の形態の構成とは異なる。
【0094】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の構成では、接続層を介した積層構成、及び、接続層と隣接する集電体構成が本実施の形態における構成と異なるため、下記の問題が生じ得る。
【0095】
特許文献1に記載の構成では、電流容量の増大を目的として集電体の厚みを増加させた場合、上述したように、温度変化による固体電池セルの破損の問題が顕在化しやすい。また、電流取り出し用のリード電極を集電体で挟むため、集電体間の接続抵抗は、不安定である。そのため、充放電の速度が速い場合には、充放電過程で電流が局所的に集中し、発熱及び焼損を招く可能性がある。また、衝撃及び振動によって接続抵抗が変動し、接続抵抗の変動が充放電特性へ影響を与える可能性もある。このため、特許文献1の構成では、集電体の電流容量を増やしにくく、耐衝撃性などの信頼性に問題が生じやすい。
【0096】
特許文献2に記載の構成では、電池の体積エネルギー密度を増加させるために、上下に隣接した固体電池セル間の絶縁層を薄層化した場合に、絶縁層の上下の集電体は正極集電体及び負極集電体であるため、ボイド又はピンホール等の存在によって短絡してしまう可能性があり、高出力化と信頼性との両立に問題が生じやすい。
【0097】
これらに対して、本実施の形態における構成によれば、上述の特許文献1及び2のような問題が生じることはない。また、特許文献1及び2には、本実施の形態に記載の、高出力と高信頼性との両立に関する構成が開示も示唆もされていない。
【0098】
なお、上述の電池100及び電池101のそれぞれに記載の構成は、適宜、互いに、組み合わされてもよい。また、電池100及び電池101において、隣り合う2つの固体電池セル1a及び1bの負極集電体13同士は、接続層16を介して積層されていたが、隣り合う2つの固体電池セル1a及び1bの正極集電体11同士が、接続層16を介して積層されていてもよい。
【0099】
[変形例]
以下では、実施の形態の複数の変形例について説明する。なお、以下の複数の変形例の説明において、実施の形態との相違点又は変形例間での相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0100】
(1)変形例1
まず、実施の形態の変形例1について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態の変形例1に係る電池200の概略構成を示す図である。
図3の(a)は、電池200の上面図である。
図3の(a)では、電池200を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図3の(b)は、
図3の(a)のIII-III線で示される位置での電池200の断面を示す断面図である。
【0101】
図3に示されるように、実施の形態の変形例1に係る電池200は、実施の形態における電池101と比較して、固体電池セル1a及び1b、接続層16、正極集電リード17並びに負極集電リード18それぞれの代わりに、固体電池セル2a及び2b、接続層26、正極端子27並びに負極端子28を備える。
【0102】
電池200は、2つの固体電池セル2a及び2bが積層された構造を有する。電池200は、固体電池セル2a及び2bと、固体電池セル2a及び2bの間に位置する接続層26とを備える。固体電池セル2a及び2bは、それぞれ、正極集電体21と、正極活物質層12と、固体電解質層25と、負極活物質層14と、負極集電体23とが、この順で積層された構造を有する。
【0103】
隣り合う2つの固体電池セル2a及び2bの負極集電体23同士は、接続層26を介して積層されている。つまり、固体電池セル2aと固体電池セル2bとは、上下の向きが反対になるように、接続層26を介して、積層されている。固体電池セル2a及び2bの平面視での大きさは、接続層26よりも大きい。平面視において固体電池セル2a及び2bは、接続層26と接していない領域を有する。また、固体電池セル2a及び2bは、隣り合う2つの固体電池セル2a及び2bの固体電解質層25同士が接するように積層されている。
【0104】
固体電池セル2a及び2bは、正極端子27及び負極端子28により、電気的に並列に接続されている。正極端子27及び負極端子28は、端子電極の一例である。
【0105】
固体電池セル2a及び2bそれぞれの正極集電体21は、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル2a及び2bそれぞれの正極集電体21のx軸方向マイナス側の側面は、正極端子27と接続している。
【0106】
固体電池セル2a及び2bそれぞれの負極集電体23は、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル2a及び2bそれぞれの負極集電体23は、接続層26と接している。固体電池セル2a及び2bそれぞれの負極集電体23のx軸方向プラス側の側面は、負極端子28と接続している。
【0107】
固体電池セル2a及び2bそれぞれの正極活物質層12及び負極活物質層14は、平面視での大きさが、正極集電体21及び負極集電体23よりも小さく、平面視で正極集電体21及び負極集電体23の内側に位置している。
【0108】
固体電池セル2a及び2bそれぞれの固体電解質層25は、正極活物質層12と負極活物質層14との間に配置され、正極活物質層12及び負極活物質層14に接している。固体電解質層25は、平面視で、正極活物質層12及び負極活物質層14の外側にも配置されている。固体電解質層25は、正極活物質層12及び負極活物質層14の側面を覆っており、正極活物質層12及び負極活物質層14よりも外側の領域で、正極集電体21及び負極集電体23に接している。固体電解質層25は、正極集電体21と負極端子28との間にも配置されており、正極集電体21の側面と接している。固体電解質層25は、負極集電体23と正極端子27との間にも配置されており、負極集電体23の側面と接している。また、固体電解質層25は、負極集電体23の側面のうち、負極集電体23と負極端子28とが接する側面以外の側面を覆うようにも配置されている。
【0109】
このように、電池200には、電子導電性を有さない固体電解質層25が、正極活物質層12、負極活物質層14、正極集電体21及び負極集電体23の側面の少なくとも一部に接して配置される。よって、正極活物質層12、負極活物質層14、正極集電体21及び負極集電体23が異なる極の構成要素と接触して短絡することが抑制される。
【0110】
また、固体電池セル2a及び2bそれぞれの固体電解質層25同士は、負極集電体23及び接続層26と正極端子27との間で接している。これにより、固体電池セル2a及び2bそれぞれの固体電解質層25に含まれる固体電解質同士が接着しやすいため、固体電池セル2a及び2bの積層構造を強固にすることができる。また、固体電池セル2a及び2bそれぞれの固体電解質層25の接触部が接合され、一体化されている場合には、固体電池セル2a及び2bの積層構造をより強固にすることができる。
【0111】
また、固体電池セル2a及び2bそれぞれの負極集電体23と、接続層26とは、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル2a及び2bそれぞれの負極集電体23は、接続層26側の面が、全て接続層26と接している。
【0112】
接続層26には、上述の接続層16と同じ材料が用いられうる。接続層26に固体電解質が用いられる場合には、接続層26に用いられる固体電解質の粒子と固体電解質層25に含まれる固体電解質の粒子との間に接合界面が形成され、一体化されていてもよい。これにより、接続層26と固体電池セル2a及び2bとの積層構造をより強固にすることができる。
【0113】
電池200では、正極端子27と負極端子28とは、互いに対向している。正極端子27と負極端子28とは、x軸方向に並んで配置されている。平面視で、正極端子27と負極端子28との間に、積層された固体電池セル2a及び2b並びに接続層26が位置している。なお、本明細書では、正極端子27及び負極端子28を総称して「端子」と称する場合がある。
【0114】
正極端子27は、固体電池セル2a及び2bそれぞれの正極集電体21と電気的に接続されている。負極端子28は、固体電池セル2a及び2bそれぞれの負極集電体23と電気的に接続されている。これにより、電池200では、固体電池セル2a及び2bが電気的に並列に接続されている。
【0115】
正極端子27は、固体電池セル2a及び2bそれぞれの、正極集電体21及び固体電解質層25のx軸方向マイナス側の側面と接している。正極端子27は、固体電池セル2a及び2bそれぞれの負極集電体23のx軸方向マイナス側の側面とは、固体電解質層25を挟んで離間している。
【0116】
負極端子28は、固体電池セル2a及び2bそれぞれの、正極集電体21及び固体電解質層25並びに接続層26のx軸方向プラス側の側面と接している。負極端子28は、固体電池セル2a及び2bそれぞれの正極集電体21のx軸方向プラス側の側面とは、固体電解質層25を挟んで離間している。
【0117】
正極端子27と負極集電体23と、及び、負極端子28と正極集電体21とが固体電解質層25を挟んで離間することにより、異なる極性の端子と集電体が接触しにくくなり、短絡が抑制される。
【0118】
端子の形状は、固体電池セル2a及び2bを電気的に並列に接続できる形状であれば、特に制限されない。端子の形状は、例えば、板状又は半円柱状等である。
【0119】
端子の材料としては、例えば、導電性樹脂ペーストの硬化物が用いられる。また、端子の材料には、ニッケル、ステンレス、アルミニウム又は銅などの金属が用いられてもよい。端子に金属を用いる場合には、端子は、所望の形状に加工された金属を接着や溶接などにより集電体に接続されてもよく、導電性を有する接着剤又は接着テープを介して集電体に接続されてもよい。
【0120】
次に、本変形例の別の例に係る電池について説明する。
図4は、実施の形態の変形例1の別の例に係る電池201の概略構成を示す図である。
図4の(a)は、電池201の上面図である。
図4の(a)では、電池201を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図4の(b)は、
図4の(a)のIV-IV線で示される位置での電池201の断面を示す断面図である。
図4に示される電池201は、3つの固体電池セル2a、2b及び2cを並列接続した電池の例である。つまり、電池201は、
図3に示される電池200の下方に、さらに、接続層26a及び固体電池セル2cが積層された電池である。
【0121】
図4に示されるように、電池201は、3つの固体電池セル2a、2b及び2cが積層された構造を有する。電池200は、固体電池セル2a、2b及び2cと、固体電池セル2a及び2bの間、並びに、固体電池セル2b及び2cの間、それぞれに位置する2つの接続層26及び26aとを備える。固体電池セル2a、2b及び2cは、正極端子27a及び負極端子28aにより、電気的に並列に接続されている。
【0122】
隣り合う2つの固体電池セル2b及び2cそれぞれの正極集電体21同士は、接続層26aを介して積層されている。つまり、固体電池セル2bと固体電池セル2cとは、上下の向きが反対になるように、接続層26aを介して、積層されている。固体電池セル2b及び2cそれぞれの正極集電体21と、接続層26aとは、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル2b及び2cそれぞれの正極集電体21は、接続層26a側の面が、全て接続層26aと接している。
【0123】
正極端子27aは、固体電池セル2a、2b及び2cそれぞれの正極集電体21と電気的に接続されている。負極端子28aは、固体電池セル2a、2b及び2cそれぞれの負極集電体23と電気的に接続されている。これにより、電池201では、固体電池セル2a、2b及び2cが電気的に並列に接続されている。
【0124】
正極端子27aは、固体電池セル2a、2b及び2cそれぞれの、正極集電体21及び固体電解質層25のx軸方向マイナス側の側面と接して接続されている。正極端子27は、固体電池セル2a、2b及び2cそれぞれの負極集電体23のx軸方向マイナス側の側面とは、固体電解質層25を挟んで離間している。
【0125】
負極端子28aは、固体電池セル2a、2b及び2cそれぞれの、正極集電体21及び固体電解質層25並びに接続層26のx軸方向プラス側の側面と接している。負極端子28は、固体電池セル2a、2b及び2cそれぞれの正極集電体21のx軸方向プラス側の側面とは、固体電解質層25を挟んで離間している。
【0126】
このように、電池201のように、3つの固体電池セル2a、2b及び2cが積層された構造であっても、3つの固体電池セル2a、2b及び2cのうち隣り合う2つの固体電池セルの正極集電体21同士又は負極集電体23同士は、接続層26又は26aを介して積層される。これにより、集電体の厚みを厚くすることなく、集電体の電流容量を増やすことができるため、電池201の高出力化と高信頼性とを両立できる。
【0127】
このように、電池に積層される固体電池セルの数は、電池200のように2つであってもよく、電池201のように3つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0128】
(2)変形例2
次に、実施の形態の変形例2について、
図5を用いて説明する。
図5は、実施の形態の変形例2に係る電池300の概略構成を示す図である。
図5の(a)は、電池300の上面図である。
図5の(a)では、電池300を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図5の(b)は、
図5の(a)のV-V線で示される位置での電池300の断面を示す断面図である。
【0129】
図5に示されるように、実施の形態の変形例2に係る電池300は、実施の形態の変形例1における電池200と比較して、固体電池セル2a及び2b並びに接続層26それぞれの代わりに、固体電池セル3a及び3b並びに接続層36を備える。
【0130】
電池300は、2つの固体電池セル3a及び3bが積層された構造を有する。電池300は、固体電池セル3a及び3bと、固体電池セル3a及び3bの間に位置する接続層36とを備える。固体電池セル3a及び3bは、正極端子27及び負極端子28により、電気的に並列に接続されている。平面視で、正極端子27と負極端子28との間に、積層された固体電池セル3a及び3b並びに接続層36が位置している。
【0131】
固体電池セル3a及び3bは、それぞれ、正極集電体21と、正極活物質層12と、固体電解質層35と、負極活物質層14と、負極集電体23とが、この順で積層された構造を有する。
【0132】
隣り合う2つの固体電池セル3a及び3bの負極集電体23同士は、接続層36を介して積層されている。固体電池セル3a及び3bと、接続層36とは、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル3aと固体電池セル3bとは、接続層36を挟んで離間している。
【0133】
固体電池セル3a及び3bそれぞれの負極集電体23は、平面視で、接続層36の内側に配置されている。固体電池セル3a及び3bそれぞれの負極集電体23は、接続層26側の面が、全て接続層36と接している。
【0134】
接続層36は、対向する2つの側面がそれぞれ正極端子27及び負極端子28と接している。接続層36の平面視での大きさは、固体電池セル3a及び3bそれぞれの負極集電体23よりも大きい。
【0135】
接続層36が平面視で集電体よりも大きいことにより、集電体の温度変化によって生じる固体電池セル3a及び3bへの応力を広く分散させることができるため、より信頼性の高い電池300を実現できる。
【0136】
接続層36は、正極端子27と負極端子28とが短絡することを防止するため、例えば、電子導電性を有さない材料で形成される。また、接続層36が電子導電性を有する場合には、接続層36と正極端子27又は負極端子28との間に絶縁性の材料を配置する等によって、接続層36と正極端子27又は負極端子28とが絶縁されていればよい。
【0137】
(3)変形例3
次に、実施の形態の変形例3について、
図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態の変形例3に係る電池400の概略構成を示す図である。
図6の(a)は、電池400の上面図である。
図6の(a)では、電池400を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図6の(b)は、
図6の(a)のVI-VI線で示される位置での電池400の断面を示す断面図である。
【0138】
図6に示されるように、実施の形態の変形例3に係る電池400は、実施の形態の変形例1における電池200と比較して、固体電池セル2a及び2b並びに接続層26それぞれの代わりに、固体電池セル4a及び4b並びに接続層46を備える。
【0139】
電池400は、2つの固体電池セル4a及び4bが積層された構造を有する。電池400は、固体電池セル4a及び4bと、固体電池セル4a及び4bの間に位置する接続層46とを備える。固体電池セル4a及び4bは、正極端子27及び負極端子28により、電気的に並列に接続されている。平面視で、正極端子27と負極端子28との間に、積層された固体電池セル4a及び4b並びに接続層46が位置している。
【0140】
固体電池セル4a及び4bは、それぞれ、正極集電体21と、正極活物質層12と、固体電解質層45と、負極活物質層14と、負極集電体23とが、この順で積層された構造を有する。
【0141】
隣り合う2つの固体電池セル4a及び4bそれぞれの負極集電体23同士は、接続層46を介して積層されている。固体電池セル4a及び4bと、接続層46とは、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル4aと固体電池セル4bとは、接続層46を挟んで離間している。
【0142】
接続層46は、2つの端部がそれぞれ正極端子27及び負極端子28と接している。また、固体電池セル4aと固体電池セル4bの間において、接続層46の正極端子27側の端部が、下方に向かって屈曲している。また、接続層46の正極端子27側の端部は、屈曲した状態で正極端子27と接している。
【0143】
端部が屈曲した接続層46を形成する場合、接続層46の端部が屈曲するように各層の材料を配置してもよいし、接続層46の材料を多めに配置し、積層プレス時の圧力で各層の間からはみ出させることで接続層46の端部を屈曲させてもよい。
【0144】
接続層46は、正極端子27と負極端子28とが短絡することを防止するため、例えば、電子導電性を有さない材料で形成される。また、接続層46が電子導電性を有する場合には、接続層46と正極端子27又は負極端子28との間に絶縁性の材料を配置する等によって、接続層46と正極端子27又は負極端子28とが絶縁されていればよい。
【0145】
接続層46の端部が屈曲していることにより、接続層46が固体電池セル4bに食い込むため、側面部からの接続層46のデラミネーションの発生を抑制できる。また、接続層46は、屈曲した状態で正極端子27と接している。これにより、接続層46の端部が屈曲しない状態で正極端子27と接している場合よりも、接続層46と正極端子27との接触面積を大きくできる。そのため、接続層46を介して集電体の熱を正極端子27へと放熱しやすくなり、電池400の温度上昇が抑制される。よって、より信頼性の高い電池400を実現できる。
【0146】
なお、接続層46の端部は、下方に向かって直角に屈曲しているが、斜め方向に屈曲していてもよく、円弧を描くように屈曲していてもよい。
【0147】
(4)変形例4
次に、実施の形態の変形例4について、
図7を用いて説明する。
図7は、実施の形態の変形例4に係る電池500の概略構成を示す図である。
図7の(a)は、電池500の上面図である。
図7の(a)では、電池500を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図7の(b)は、
図7の(a)のVII-VII線で示される位置での電池500の断面を示す断面図である。
【0148】
図7に示されるように、実施の形態の変形例4に係る電池500は、実施の形態の変形例1における電池200と比較して、固体電池セル2a及び2b並びに接続層26それぞれの代わりに、固体電池セル5a及び5b並びに接続層56を備える。
【0149】
電池500は、2つの固体電池セル5a及び5bが積層された構造を有する。電池500は、固体電池セル5a及び5bと、固体電池セル5a及び5bの間に位置する接続層56とを備える。固体電池セル5a及び5bは、正極端子27及び負極端子28により、電気的に並列に接続されている。平面視で、正極端子27と負極端子28との間に、積層された固体電池セル5a及び5b並びに接続層56が位置している。
【0150】
固体電池セル5a及び5bは、それぞれ、正極集電体21と、正極活物質層12と、固体電解質層55と、負極活物質層14と、負極集電体23とが、この順で積層された構造を有する。
【0151】
隣り合う2つの固体電池セル5a及び5bの負極集電体23同士は、接続層56を介して積層されている。固体電池セル5a及び5bと、接続層56とは、平面視での形状、位置及び大きさが同じである。固体電池セル5aと固体電池セル5bとは、接続層56を挟んで離間している。
【0152】
接続層56は、2つの端部がそれぞれ正極端子27及び負極端子28と接している。固体電池セル5aと固体電池セル5bの間において、接続層56の正極端子27側の端部が、2つに分岐し、分岐した端部がそれぞれ上方及び下方に向かって屈曲している。また、接続層56の正極端子27側の端部は、屈曲した状態で正極端子27と接している。
【0153】
接続層56は、正極端子27と負極端子28とが短絡することを防止するため、例えば、電子導電性を有さない材料で形成される。また、接続層56が電子導電性を有する場合には、接続層56と正極端子27又は負極端子28との間に絶縁性の材料を配置する等によって、接続層56と正極端子27又は負極端子28とが絶縁されていればよい。
【0154】
接続層56の端部が屈曲していることにより、接続層56が固体電池セル5a及び5bに食い込むため、側面部からの接続層56のデラミネーションの発生を抑制できる。また、接続層56の端部が分岐し、屈曲した状態で正極端子27と接している。これにより、接続層56の端部が屈曲しない状態で正極端子27と接している場合、及び、接続層56が分岐せずに屈曲している場合よりも、接続層56と正極端子27との接触面積を大きくできる。そのため、接続層56を介して、集電体の熱を正極端子27へとさらに放熱しやすくなり、電池500の温度上昇がより抑制される。よって、より信頼性の高い電池500を実現できる。
【0155】
(5)変形例5
次に、実施の形態の変形例5について、
図8を用いて説明する。
図8は、実施の形態の変形例5に係る電池600の概略構成を示す図である。
図8の(a)は、電池600の上面図である。
図8の(a)では、電池600を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図8の(b)は、
図8の(a)のVIII-VIII線で示される位置での電池600の断面を示す断面図である。
【0156】
図8に示されるように、実施の形態の変形例5に係る電池600は、実施の形態の変形例1における電池200と比較して、固体電池セル2a及び2b、接続層26並びに正極端子27それぞれの代わりに、固体電池セル6a及び6b、接続層66並びに正極端子67を備える。
【0157】
電池600は、2つの固体電池セル6a及び6bが積層された構造を有する。電池600は、固体電池セル6a及び6bと、固体電池セル6a及び6bの間に位置する接続層66とを備える。固体電池セル6a及び6bは、正極端子67及び負極端子28により、電気的に並列に接続されている。平面視で、正極端子67と負極端子28との間に、積層された固体電池セル6a及び6b並びに接続層66が位置している。
【0158】
固体電池セル6a及び6bは、それぞれ、正極集電体21と、正極活物質層12と、固体電解質層65と、負極活物質層14と、負極集電体23とが、この順で積層された構造を有する。
【0159】
隣り合う2つの固体電池セル6a及び6bの負極集電体23同士は、接続層66を介して積層されている。固体電池セル6aと固体電池セル6bとは、接続層66を挟んで離間している。
【0160】
接続層66の平面視での大きさは、固体電池セル6a及び6bよりも大きい。接続層66の一部は、平面視で、固体電池セル6a及び6bとは重ならず、正極端子67と重なっている。接続層66の負極端子28側の端部は、負極端子28と接している。接続層66の正極端子67側の端部は、2つに分岐し、分岐した端部がそれぞれ上方及び下方に向かって屈曲している。また、接続層66の正極端子67側の端部は、屈曲した状態で正極端子67内に埋没している。
【0161】
接続層66は、正極端子67と負極端子28とが短絡することを防止するため、例えば、電子導電性を有さない材料で形成される。また、接続層66が電子導電性を有する場合には、接続層66と正極端子67又は負極端子28との間に絶縁性の材料を配置する等によって、接続層66と正極端子67又は負極端子28とが絶縁されていればよい。
【0162】
接続層66の端部が屈曲していることにより、接続層66の側面部からのデラミネーションの発生を抑制できる。また、接続層66の端部が分岐し、屈曲した状態で正極端子67に埋没している。これにより、接続層66の端部が屈曲しない状態で正極端子67と接している場合、及び、接続層66が分岐せずに屈曲している場合よりも、接続層66と正極端子67との接触面積を大きくできる。そのため、接続層66を介して集電体の熱を正極端子67へとさらに放熱しやすくなり、電池600の温度上昇がより抑制される。さらに、正極端子67が接続層66の端部を覆うように被覆するため、正極端子67と接続層66との固着強度も高まる。よって、より信頼性の高い電池600を実現できる。
【0163】
(6)変形例6
次に、実施の形態の変形例6について、
図9を用いて説明する。
図9は、実施の形態の変形例6に係る電池700の概略構成を示す図である。
図9の(a)は、電池700の上面図である。
図9の(a)では、電池700を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図9の(b)は、
図9の(a)のIX-IX線で示される位置での電池700の断面を示す断面図である。
【0164】
図9に示されるように、実施の形態の変形例6に係る電池700は、実施の形態における電池101と比較して、固体電池セル1a及び1bそれぞれの代わりに、固体電池セル7a及び7bを備える。固体電池セル7a及び7bは、それぞれ、封止部材79を有する点が、固体電池セル1a及び1bと相違する。
【0165】
電池700は、2つの固体電池セル7a及び7bが積層された構造を有する。電池700は、固体電池セル7a及び7bと、固体電池セル7a及び7bの間に位置する接続層16とを備える。固体電池セル7a及び7bは、正極集電リード17及び負極集電リード18により、電気的に並列に接続されている。
【0166】
固体電池セル7a及び7bは、それぞれ、正極集電体11と、正極活物質層12と、固体電解質層75と、負極活物質層14と、負極集電体13とが、この順で積層された構造を有する。固体電池セル7a及び7bは、それぞれ、正極集電体11と負極集電体13との間に配置される封止部材79をさらに有する。
【0167】
固体電池セル7a及び7bそれぞれの固体電解質層75は、正極活物質層12と負極活物質層14との間に配置され、正極活物質層12及び負極活物質層14に接している。固体電解質層75は、平面視で、正極活物質層12及び負極活物質層14の外側にも配置されている。固体電解質層75は、正極活物質層12及び負極活物質層14の側面を覆っており、正極集電体11及び負極集電体13に接している。固体電解質層75の側面は、封止部材79に覆われている。
【0168】
固体電池セル7a及び7bそれぞれの封止部材79は、平面視で、正極活物質層12、負極活物質層14及び固体電解質層75の外側に位置し、正極活物質層12、負極活物質層14及び固体電解質層75の外周を囲む矩形環状である。封止部材79は、正極活物質層12、負極活物質層14及び固体電解質層75の外側の領域で正極集電体11及び負極集電体13と接している。
【0169】
封止部材79は、例えば、絶縁性材料を用いて形成されている。封止部材79は、正極集電体11と負極集電体13との間隔を維持するスペーサとして機能する。
【0170】
例えば、封止部材79は、第1材料を含む部材である。封止部材79は、例えば、第1材料を主成分として含む部材であってもよい。封止部材79は、例えば、第1材料のみからなる部材であってもよい。
【0171】
第1材料としては、例えば封止剤などの一般に公知の電池の封止部材の材料が用いられうる。封止剤としては、セラミック系封止剤、樹脂系封止剤などが挙げられる。なお、第1材料は、絶縁性であり、かつ、イオン導電性を有さない材料を含んでもよい。第1材料は、例えば、樹脂を含んでもよい。また、例えば、第1材料は、熱硬化性樹脂、紫外線などの光硬化性樹脂及びホットメルト樹脂(熱可塑性樹脂)のいずれかを含んでもよい。例えば、第1材料は、熱硬化性、又は、光硬化性を有する、エポキシ系樹脂とアクリル系樹脂とポリイミド系樹脂とシルセスキオキサンとのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0172】
封止部材79が樹脂を含むことにより、樹脂の弾性により、封止部材79と接する集電体の温度変化によって生じる固体電池セル7a及び7bへの応力を緩和することができる。よって、電池700の信頼性を高めることができる。
【0173】
封止部材79は、粒子状の金属酸化物材料を含んでもよい。金属酸化物材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、ゼオライト、ガラスなどが用いられうる。例えば、封止部材79は、金属酸化物材料からなる複数の粒子が分散された樹脂材料を用いて形成されていてもよい。
【0174】
金属酸化物材料の粒子サイズは、正極集電体21と負極集電体23との間隔以下であればよい。金属酸化物材料の粒子形状は、正円状(球状)、楕円球状、棒状などであってもよい。
【0175】
以上のように、固体電池セル7a及び7bそれぞれが、正極活物質層12、負極活物質層14及び固体電解質層75の外側に位置する封止部材79を有することにより、外部からの衝撃等による正極活物質層12、負極活物質層14及び固体電解質層75の破損を抑制できる。よって、より信頼性の高い電池700を実現できる。
【0176】
(7)変形例7
次に、実施の形態の変形例7について、
図10を用いて説明する。
図10は、実施の形態の変形例7に係る電池800の概略構成を示す図である。
図10の(a)は、電池800の上面図である。
図10の(a)では、電池800を上方から見た場合における電池の各構成要素の平面視形状を実線又は破線で表している。
図10の(b)は、
図10の(a)のX-X線で示される位置での電池800の断面を示す断面図である。
【0177】
図10に示されるように、実施の形態の変形例7に係る電池800は、実施の形態の変形例1における電池200と比較して、固体電池セル2a及び2bそれぞれの代わりに、固体電池セル8a及び8bを備える。固体電池セル8a及び8bは、それぞれ、封止部材89を有する点が、固体電池セル2a及び2bと相違する。
【0178】
電池800は、2つの固体電池セル8a及び8bが積層された構造を有する。電池800は、固体電池セル8a及び8bと、固体電池セル8a及び8bの間に位置する接続層26とを備える。固体電池セル8a及び8bは、それぞれ、正極集電体21と、正極活物質層12と、固体電解質層85と、負極活物質層14と、負極集電体23とが、この順で積層された構造を有する。固体電池セル8a及び8bは、それぞれ、正極集電体21と負極集電体23との間に配置される封止部材89をさらに有する。
【0179】
固体電池セル8a及び8bは、正極端子27及び負極端子28により、電気的に並列に接続されている。
【0180】
固体電池セル8a及び8bそれぞれの固体電解質層85は、正極活物質層12と負極活物質層14との間に配置され、正極活物質層12及び負極活物質層14に接している。固体電解質層85は、平面視で、正極活物質層12及び負極活物質層14の外側にも配置されている。固体電解質層85は、正極活物質層12及び負極活物質層14の側面を覆っており、正極集電体21及び負極集電体23に接している。固体電解質層85の側面は、封止部材89に覆われている。
【0181】
固体電池セル8a及び8bそれぞれの封止部材89は、平面視で、正極活物質層12、負極活物質層14及び固体電解質層85の外側に位置し、正極活物質層12、負極活物質層14及び固体電解質層85の外周を囲む矩形環状である。封止部材89は、正極活物質層12、負極活物質層14及び固体電解質層85の外側の領域において、正極集電体21及び負極集電体23と接している。封止部材89は、正極集電体21と負極端子28との間、及び、負極集電体23と正極端子27との間にも配置されている。これにより、正極集電体21と負極端子28と、及び、負極集電体23と正極端子27とがより接触しにくくなり、短絡が抑制されるため、電池800の信頼性を高めることができる。
【0182】
固体電池セル8aの封止部材89と固体電池セル8bの封止部材89とは、負極集電体23及び接続層26と正極端子27側の間で接している。言い換えると、複数の固体電池セル8a及び8bは、隣り合う2つの固体電池セル8a及び8bの封止部材89同士が接するように積層されている。このように、封止部材89が接するように積層されることで、封止部材89が一体化されやすく、固体電池セル8a及び8bの積層構造をより強固にすることができる。また、固体電池セル8aの封止部材89と固体電池セル8bの封止部材89とがC字状になって、固体電池セル8a及び8bそれぞれの負極集電体23並びに接続層26を上下から挟み込んでいる。これにより、2つの負極集電体23と接続層26との剥離が抑制される。よって、電池800の信頼性をより高めることができる。
【0183】
[電池の製造方法]
続いて、実施の形態及び各変形例に係る電池の製造方法の一例を説明する。以下では、上述した実施の形態の変形例1に係る電池200の製造方法を説明する。他の電池101、201、300、400、500、600、700及び800についても同様である。
【0184】
まず、正極活物質層12及び負極活物質層14の印刷形成に用いる各ペーストを作成する。正極活物質層12及び負極活物質層14それぞれの合剤に用いる固体電解質原料として、例えば、平均粒子径が約10μmであり、三斜晶系結晶を主成分とするLi2S-P2S5系硫化物のガラス粉末が、準備される。このガラス粉末としては、例えば、2~3×10-3S/cm程度の高いイオン導電性を有するガラス粉末が、使用されうる。正極活物質として、例えば、平均粒子径が約5μmであり、層状構造のLi・Ni・Co・Al複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)の粉末が、用いられる。この正極活物質と上述のガラス粉末とを含有させた合剤を有機溶剤等に分散させた正極活物質層用ペーストが、作製される。また、負極活物質として、例えば、平均粒子径が約10μmである天然黒鉛の粉末が、用いられる。この負極活物質と上述のガラス粉末とを含有させた合剤を有機溶剤等に分散させた負極活物質層用ペーストが、同様に作製される。
【0185】
次いで、正極集電体21及び負極集電体23に用いられる材料として、例えば、約30μmの厚みの銅箔が、準備される。例えば、スクリーン印刷法により、正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストが、それぞれの銅箔の片方の表面上に、それぞれ所定形状、及び、約50μm~100μmの厚みで、印刷される。正極活物質層用ペースト及び負極活物質層用ペーストは、80℃~130℃で乾燥されることで、30μm~60μmの厚みになる。これにより、正極活物質層12及び負極活物質層14がそれぞれ形成された集電体(銅箔)が得られる。
【0186】
電池700及び800のように、固体電池セルが封止部材を有する場合には、正極活物質層12又は負極活物質層14の外周に沿って、集電体上に封止部材の材料を塗布する。
【0187】
次いで、上述のガラス粉末を含有させた合剤を有機溶剤等に分散させた固体電解質層用ペーストが、作製される。それぞれ集電体上に形成された正極活物質層12及び負極活物質層14の集電体と接していない面を覆うように、例えば、メタルマスクを用いて、上述の固体電解質層用ペーストが、約100μmの厚みで、印刷される。その後、これらは、80℃~130℃で、乾燥される。これにより、正極活物質層12及び負極活物質層14それぞれの層上に、固体電解質層25が形成される。
【0188】
そして、正極活物質層12及び負極活物質層14がそれぞれ形成された集電体のそれぞれの裏面に接続層26を形成するために、例えば、上述の固体電解質層用ペーストが、約10μmの厚みで、印刷され、80℃~130℃で乾燥される。これにより、接続層26が集電体の裏面に形成される。次いで、正極活物質層12上の固体電解質層25と負極活物質層14上の固体電解質層25とが、互いに接触するように対向し、且つ、負極集電体23同士が接続層26を介して隣り合うように積層され、矩形外形のダイス型に収められる。なお、不要な集電体部分は、積層前に予めレーザー切断等によって除去してもよい。次いで、加圧金型パンチと積層体との間に、厚み70μm、弾性率5×106Pa程度の弾性体シートが挿入される。この構成により、積層体は、弾性体シートを介して圧力が印加される。その後、積層体を圧力300MPaにて50℃に加温しながら、90秒間加圧することで、固体電池セル2a及び2b並びに接続層26の積層体が得られる。最後に、固体電池セル2a及び2b並びに接続層26の積層体の側面に導電性樹脂ペーストを塗布し、約150℃で熱硬化することにより、各固体電池セル2a及び2bを接続する端子が形成される。これにより電池200が得られる。
【0189】
なお、電池の形成の方法及び順序並びに各層に用いられる材料は、上述の例に限られない。
【0190】
例えば、上述の方法において、正極活物質層12及び負極活物質層14がそれぞれ形成された集電体の裏面に、接続層26を形成せずに、正極活物質層12上の固体電解質層25と負極活物質層14上の固体電解質層25とが、互いに対向するように積層することで、固体電池セル2a及び2bを形成する。このようにして形成された固体電池セル2a又は2bの負極集電体23の負極活物質層14とは反対側の面に接続層26を形成する。そして、負極集電体23同士が接続層26を介して隣り合うように積層することで、固体電池セル2a及び2b並びに接続層26の積層体を得てもよい。
【0191】
また、例えば、固体電池セル2a及び2bと接続層26とをそれぞれ個別に形成し、負極集電体23同士が接続層26を介して隣り合うように積層することで、固体電池セル2a及び2b並びに接続層26の積層体を得てもよい。固体電池セル2a及び2bと接続層26とは、接着剤又は接着テープによって接合して積層されてもよい。また、接続層26自体が、接着剤又は接着テープで構成されていてもよい。
【0192】
なお、上述の製造方法では、正極活物質層用ペースト、負極活物質層用ペースト、固体電解質層用ペースト及び導電性樹脂ペーストを印刷により塗布する例を示したが、これに限られない。印刷方法としては、例えば、ドクターブレード法、カレンダー法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、オフセット法、ダイコート法、スプレー法などを用いてもよい。
【0193】
端子等の形成に用いられる導電性樹脂ペーストは、例えば、金属粒子及び樹脂を主成分として含む、熱硬化性導電ペーストである。導電性樹脂ペーストには、高融点の高導電性金属粒子、低融点の金属粒子及び樹脂を含む熱硬化性導電ペーストが用いられてもよい。高融点の高導電性金属粒子の融点は、例えば、400℃以上である。高融点の高導電性金属粒子の材料としては、例えば、銀、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、パラジウム、金、プラチナ又はこれらの金属を組み合わせた合金が挙げられる。低融点の金属粒子の融点は、導電性樹脂ペーストの硬化温度以下であってもよく、例えば、300℃以下である。融点が300℃以下の低融点の金属粒子の材料としては、例えば、スズ、スズ-亜鉛合金、スズ-銀合金、スズ-銅合金、スズ-アルミニウム合金、スズ-鉛合金、インジウム、インジウム-銀合金、インジウム-亜鉛合金、インジウム-スズ合金、ビスマス、ビスマス-銀合金、ビスマス-ニッケル合金、ビスマス-スズ合金、ビスマス-亜鉛合金又はビスマス-鉛合金などが挙げられる。
【0194】
このような低融点の金属粒子を含有する導電性樹脂ペーストを使用することで、高融点の高導電性金属粒子の融点よりも低い熱硬化温度であっても、導電性樹脂ペースト中の金属粒子と、集電体を構成する金属との接触部位において固相及び液相反応が進行する。それにより、導電性樹脂ペーストと集電体との界面において、固相及び液相反応により合金化した拡散領域が上記接触部位周辺に形成される。そのため、導電性樹脂ペーストからなる端子と集電体との接続信頼性及び熱伝導性が向上する。形成される合金の例としては、高融点の高導電性金属粒子に銀又は銀合金を使用し、集電体に銅を使用した場合には、高導電性合金の銀-銅系合金が挙げられる。さらに、高融点の高導電性金属粒子と集電体との組み合わせにより、銀-ニッケル合金又は、銀-パラジウム合金なども形成されうる。
【0195】
なお、高導電性金属粒子及び低融点の金属粒子の形状は、球状、りん片状、針状等、どのような形状のものであってもよい。また、高融点の高導電性金属粒子及び低融点の金属粒子の粒子サイズは、特に限定されない。例えば、粒子サイズの小さい方が、低温度で合金反応や拡散が進行するため、プロセス設計及び電池特性への熱履歴の影響を考慮し、粒子サイズ及び形状が適宜選択される。
【0196】
また、熱硬化性の導電性樹脂ペーストに用いられる樹脂は、結着用バインダとして機能するものであればよく、さらには印刷性及び塗布性など、採用する製造プロセスによって適当な樹脂が選択される。例えば、導電性樹脂ペーストに用いられる樹脂は、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、(i)尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等のアミノ樹脂、(ii)ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、脂環式等のエポキシ樹脂、(iii)オキセタン樹脂、(iv)レゾール型、ノボラック型等のフェノール樹脂、及び、(v)シリコーンエポキシ、シリコーンポリエステル等のシリコーン変性有機樹脂等が挙げられる。樹脂には、これらの材料の1種のみが用いられてもよいし、これらの材料のうちの2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0197】
(他の実施の形態)
以上、本開示に係る電池について、実施の形態及び各変形例に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態及び各変形例に施したものや、実施の形態及び各変形例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0198】
また、上記の各実施の形態及び各変形例は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0199】
例えば、上記実施の形態及び各変形例では、固体電解質層は、正極活物質層及び負極活物質層の側面に接していたが、これに限らない。固体電解質層は、正極活物質層及び負極活物質層の側面に接しておらず、固体電解質層と、正極活物質層と、負極活物質層とが、平面視で完全に重なるように積層されていてもよい。
【0200】
また、例えば、上記実施の形態及び各変形例では、集電リード又は端子は、集電体の側面と接続されていたが、これに限らない。集電リード又は端子は、集電体の上面又は下面と接続されていてもよい。
【0201】
また、例えば、上記実施の形態及び各変形例では、集電リード又は端子のみによって、複数の固体電池セルが電気的に並列に接続されていたが、これに限らない。集電リード及び端子を組み合わせて、複数の固体電池セルが電気的に並列に接続されていてもよい。
【0202】
また、例えば、上記変形例3から5では、正極端子と接する側の接続層の端部のみが屈曲していたが、これに限らない。接続層は、複数の方向の端部が屈曲していてもよい。また、接続層の屈曲した端部が、端子と接触せず、固体電解質層内に埋没していてもよい。
【0203】
また、例えば、上記変形例6及び7では、封止部材は、正極活物質層、負極活物質層及び固体電解質層の外周を囲むように配置されていたが、これに限らない。封止部材は、正極活物質層、負極活物質層及び固体電解質層の側面の少なくとも一部の外側に配置されていればよい。封止部材は、例えば、平面視でx軸方向又はy軸方向に並んで、正極活物質層、負極活物質層及び固体電解質層を挟むように、対向して配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本開示に係る電池は、例えば、各種の電子機器又は自動車などに用いられる全固体リチウムイオン電池などの様々な二次電池として利用されうる。
【符号の説明】
【0205】
1a、1b、2a、2b、2c、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a、6b、7a、7b、8a、8b 固体電池セル
11、21 正極集電体
12 正極活物質層
13、23 負極集電体
14 負極活物質層
15、25、35、45、55、65、75、85 固体電解質層 16、26、26a、36、46、56、66 接続層
17 正極集電リード
18 負極集電リード
27、27a、67 正極端子
28、28a 負極端子
79、89 封止部材
100、101、200、201、300、400、500、600、700、800
電池