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  • 特許-撮像装置を用いた吐出制御 図1
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  • 特許-撮像装置を用いた吐出制御 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】撮像装置を用いた吐出制御
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20240216BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240216BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B41J2/01 303
B41J2/01 307
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022075047
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2021531345の分割
【原出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2022115935
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】62/775,955
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/682,389
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513317345
【氏名又は名称】カティーバ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140833
【弁理士】
【氏名又は名称】岡東 保
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー アール. ハウフ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィド ダロー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィド ドノバン
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-025736(JP,A)
【文献】特開2004-066771(JP,A)
【文献】特開2013-237005(JP,A)
【文献】特開2015-229314(JP,A)
【文献】特開2007-313717(JP,A)
【文献】特開2008-068537(JP,A)
【文献】特表2020-510517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00-21/00
B41J2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷システムであって、前記印刷システムは
基板を支持し、前記基板を走査方向に移動させる基板支持部と、
前記基板支持部に対向して配置され、走査交差方向に移動可能なプリントヘッドアセンブリとを備え、
前記プリントヘッドアセンブリは、
前記基板支持部に向かって吐出方向に延びる複数の吐出ノズルと、
複数のマークとを備え、
前記印刷システムは、さらに、
前記複数のマークを含む画像を取得するために、前記吐出方向とは反対の方向に配向された撮像装置と、を備え、
前記プリントヘッドアセンブリは、前記プリントヘッドアセンブリと前記撮像装置とが相対運動している間に前記画像を取得することができるように、前記ノズルと前記マークとを前記撮像装置の撮像視野内に配置するように移動可能であり、かつ、
前記撮像装置は、前記走査方向に沿って直線状に配置された複数の画像センサを有するライン走査撮像装置である印刷システム。
【請求項2】
さらに、制御部を備え、前記制御部は、
前記プリントヘッドアセンブリの前記ノズルのそれぞれの位置を、前記印刷システムの基準フレーム内の対応する位置にマッピングするステップと、
前記印刷システムの前記基準フレームにおける前記ノズルのマッピングされた位置に基づいて、前記ノズルからの印刷材の吐出を制御するステップとを有する、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記撮像装置によって取得した前記画像から、
前記複数のマークと、
前記複数の吐出ノズルの中のノズルとを検出するステップと、
前記プリントヘッドアセンブリにおける前記ノズルのそれぞれの位置を、
前記検出されたマークと、
前記検出されたノズルとに基づいて決定するステップとを有する、請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記マークのそれぞれは、前記複数の吐出ノズルに対して所定の位置を有し、
前記印刷システムは、制御部をさらに備え、前記制御部は、
前記撮像装置によって取得された前記画像から前記マークを検出するステップと、
前記検出されたマークと、
前記マークの前記所定の位置とに基づいて、
前記プリントヘッドアセンブリ内の前記ノズルのそれぞれの位置を決定するステップと、を有する請求項1に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記撮像装置は、前記基板支持部に対して静止している、請求項1に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記ノズルは、前記走査交差方向に沿って少なくとも一列に配置されている、請求項5に記載の印刷システム。
【請求項7】
制御部をさらに備え、前記制御部は、
前記撮像装置による前記プリントヘッドアセンブリの前記走査交差方向の1回の通過により、前記ノズルの全てを含む画像を取得するように前記撮像装置を制御するステップを有する、請求項6に記載の印刷システム。
【請求項8】
印刷システムであって、前記印刷システムは
基板を支持し、前記基板を走査方向に移動させる基板支持部と、
前記基板支持部に対向して配置され、走査交差方向に移動可能なプリントヘッドアセンブリとを備え、
前記プリントヘッドアセンブリは、
前記基板支持部に向かって吐出方向に延びる複数の吐出ノズルと、
複数のマークとを備え、
前記印刷システムは、さらに、
前記複数のマークを含む画像を取得するために、前記吐出方向とは反対の方向に配向された撮像装置と、
前記画像に基づいて前記ノズルのそれぞれの位置を決定し、前記画像に基づいて前記吐出ノズルからの印刷材の吐出を制御する制御部とを備え、
前記プリントヘッドアセンブリは、前記プリントヘッドアセンブリと前記撮像装置とが相対運動している間に前記画像を取得することができるように、前記ノズルと前記マークとを前記撮像装置の撮像視野内に配置するように移動可能であり、かつ 、
前記撮像装置は、前記走査方向に沿って直線状に配置された複数の画像センサを有するライン走査撮像装置である印刷システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記撮像装置によって取得した前記画像から、
前記マークと、
前記複数の吐出ノズルの中のノズルとを検出するステップと、
前記ノズルのそれぞれの位置を、
前記検出されたマークと、
前記検出されたノズルとに基づいて、決定するステップとを有する、請求項8に記載の印刷システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記ノズルのそれぞれの位置を前記印刷システムの基準フレームにマッピングするステップを有する、請求項9に記載の印刷システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記撮像装置による前記プリントヘッドアセンブリの前記走査交差方向の1回の通過により、前記ノズルの全てを含む画像を取得するように前記撮像装置を制御するステップを有する、請求項9に記載の印刷システム。
【請求項12】
前記ノズルは、前記走査交差方向に沿って少なくとも一列に配置されている、請求項11に記載の印刷システム。
【請求項13】
前記撮像装置は第1の撮像装置であり、前記画像は第1の画像であり、前記複数のマークは第1の複数のマークであり、さらに、
前記基板支持部に対して移動可能であり、前記基板支持部に向かう方向に配向され、前記基板支持部上の前記基板の第2の画像を撮像する第2の撮像装置を備え、
前記制御部は、
前記第2の画像から、前記基板上の複数の第2のマークを検出するステップと、
検出された前記第2のマークに基づいて、前記基板の印刷領域の位置を、前記印刷システムの基準フレームにマッピングするステップと、
前記ノズルのそれぞれの位置を前記印刷システムの前記基準フレームにマッピングするステップと、
前記マッピングされた前記ノズルの位置と前記印刷領域とに基づいて、前記ノズルからの前記印刷材の吐出を制御するステップとを有する、請求項12の印刷システム。
【請求項14】
印刷システムであって、前記印刷システムは、
基板を支持し、前記基板を走査方向に移動させる基板支持部と、
前記基板支持部に対向して配置され、走査交差方向に移動可能なプリントヘッドアセンブリとを備え、
前記プリントヘッドアセンブリは、
前記基板支持部に向かって吐出方向に延びる複数の吐出ノズルと、
複数のマークと、を備え、
前記印刷システムは、さらに、
前記複数のマークを含む画像を取得するために、前記吐出方向とは反対の方向に配向された撮像装置と、
前記画像に基づいて前記吐出ノズルからの印刷材の吐出を制御する制御部と、を備え、
前記プリントヘッドアセンブリは、前記撮像装置および前記基板支持部に対して前記走査交差方向に移動可能であり、前記ノズルと前記マークを前記撮像装置の撮像視野内に配置するように位置決め可能であり、
前記撮像装置は、前記プリントヘッドアセンブリを前記撮像装置の撮像視野内を横切る前記走査交差方向の1回の通過により前記ノズルの全てを撮像できるように、前記走査方向に沿って配置された複数の画像センサを備える印刷システム。
【請求項15】
前記撮像装置は第1の撮像装置であり、前記画像は第1の画像であり、前記複数のマークは第1の複数のマークであり、さらに、
前記基板支持部に対して移動可能であり、前記基板支持部に向かう方向に配向され、前記基板支持部上の前記基板の第2の画像を撮像する第2の撮像装置を備え、
前記制御部は、
前記第2の画像から、前記基板上の複数の第2のマークを検出するステップと、
検出された前記第2のマークに基づいて、前記基板の印刷領域の位置を、前記印刷システムの基準フレームにマッピングするステップと、
前記ノズルのそれぞれの位置を前記印刷システムの前記基準フレームにマッピングするステップと、
前記マッピングされた前記ノズルの位置と前記印刷領域とに基づいて、前記ノズルからの前記印刷材の吐出を制御するステップとを有する、請求項14の印刷システム。
【請求項16】
前記制御部は、前記画像から、
前記マークと、
前記複数の吐出ノズルの中のノズルを検出するステップと、
前記プリントヘッドアセンブリにおける前記ノズルの位置を、
前記検出されたマークと、
前記検出されたノズルとに基づいて、決定するステップとを有する、請求項14記載の印刷システム。
【請求項17】
前記複数のマークは、複数の第1のマークであり、
前記プリントヘッドアセンブリは、前記複数の吐出ノズルに対して所定の位置を有する複数の第3のマークをさらに有し、
前記撮像装置によって取得された前記画像は前記第3のマークを含み、
前記制御部は、前記撮像装置によって取得された前記画像から、
前記第1のマークと、
前記第3のマークとを検出するステップと、
前記プリントヘッドアセンブリにおける前記ノズルのそれぞれの位置を、
前記検出された第1のマークと、
前記検出された第3のマークと、
前記第3のマークの前記所定位置とに基づいて、決定するステップとを有する、請求項14に記載の印刷システム。
【請求項18】
前記撮像装置は、前記基板支持部に対して静止している、請求項14に記載の印刷システム。
【請求項19】
前記第1の撮像装置の前記複数の画像センサは、前記走査方向に沿って、前記ノズルの全てが配置された領域の全幅にわたって配置され、
前記基板支持部は、前記基板を前記第2の撮像装置に対して前記走査方向に移動し、前記基板が前記第2の撮像装置に対して移動している間に前記第2の撮像装置が前記第2の画像を取得することを可能にする、請求項15に記載の印刷システム。
【請求項20】
前記撮像装置は、前記基板支持部に対して枢動可能に動作する、請求項14に記載の印刷システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年12月6日出願の米国仮特許出願第62/775,955号の利益を主張し、その内容の全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
本願の実施形態は、概して、インクジェット印刷システムに関する。具体的には、インクジェット印刷システムにおいて吐出を制御するための方法、システム、および/または装置について記載される。
【0003】
インクジェット印刷は、オフィス用プリンタや家庭用プリンタだけでなく、ディスプレイの製造、文書の大量印刷、プリント基板(PCB)等の製造品に対する材料の付着、組織等の生物学的物品の構築等に使用される産業規模のプリンタにおいても一般に使用されている。多くの業務用および産業用インクジェットプリンタ、また消費者プリンタの一部では、圧電ディスペンサを用いて印刷材を基材に付着させる。印刷材貯蔵部に隣接して圧電体が配置され、この圧電体に電圧が印加されると、圧電体が変形して印刷材貯蔵部に圧縮力が加わる。印刷材貯蔵部は、圧縮力を受けると印刷材を吐出するように構成されている。
【0004】
インクジェット印刷の用途によっては、吐出ノズルおよび/または印刷基材の位置決めに高い精度が求められることがある。この観点から、インクジェットプリンタにおいて印刷材の吐出を制御するための方法、システム、および/または装置が提案される。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、印刷システムは、基板支持部と、基板支持部に対向して配置されたプリントヘッドアセンブリと、撮像装置とを備える。プリントヘッドアセンブリは、基板支持部へ向かう吐出方向に延びる複数の吐出ノズルと、複数のマークとを備える。撮像装置は、プリントヘッドアセンブリに対して移動可能であり、プリントヘッドアセンブリの複数の吐出ノズルの位置を示す複数のマークを含む少なくとも1つの画像を取得するように、吐出方向とは反対方向の向きに配置される。
【0006】
一実施形態に係る印刷方法では、撮像装置が、プリントヘッドアセンブリの複数のマークのうちの少なくとも1つの画像を取得する。撮像装置によって取得した少なくとも1つの画像において、複数のマークが検出される。検出した複数のマークに基づいて、プリントヘッドアセンブリの複数の吐出ノズルの位置が求められる。基板をプリントヘッドアセンブリに対して移動させる間に、複数の吐出ノズルの求められた位置に基づいて、複数の吐出ノズルから基板上に印刷材が吐出される。
【0007】
一実施形態では、印刷システムは、基板支持部と、基板支持部に対向して配置されたプリントヘッドアセンブリと、第1の撮像装置と、第2の撮像装置と、制御部とを備える。プリントヘッドアセンブリは、基板支持部へ向かう吐出方向に延びる複数の吐出ノズルと、複数の第1のマークとを備える。第1の撮像装置は、プリントヘッドアセンブリに対して移動可能であり、プリントヘッドアセンブリの複数の吐出ノズルの位置を示す複数の第1のマークを含む少なくとも1つの第1の画像を取得するように、吐出方向とは反対方向の向きに配置される。第2の撮像装置は、基板支持部に対して移動可能であり、基板支持部上の基板の少なくとも1つの第2の画像を取得するように、基板支持部の方向の向きに配置される。制御部は、少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像に基づいて、複数の吐出ノズルから基板への印刷材の吐出を制御するように構成される。
【0008】
一実施形態では、フラットパネルディスプレイが、撮像装置によってプリントヘッドアセンブリの複数のマークのうちの少なくとも1つの画像を取得する印刷方法によって作成される。複数のマークが、ライン走査撮像装置によって取得した少なくとも1つの画像において検出される。検出した複数のマークに基づいて、プリントヘッドアセンブリの複数の吐出ノズルの位置が求められる。基板をプリントヘッドアセンブリに対して移動させる間に、複数の吐出ノズルの求められた位置に基づいて、複数の吐出ノズルから基板上に印刷材が吐出される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の詳細な説明を添付の図面と合わせて読めば、本開示の態様が最もよく理解されるであろう。なお、本業界の標準的な慣行にならい、各特徴部は一定の縮尺で記載されてはいない。実際には、説明の便宜上、各特徴部の寸法が任意に拡大または縮小されている場合がある。
【0010】
図1】一実施形態に係る印刷システムの上面等角図である。
【0011】
図2A】ある位置におけるプリントヘッドアセンブリを示す、一実施形態に係る印刷システムの概略側面図である。
図2B】別の位置におけるプリントヘッドアセンブリを示す、一実施形態に係る印刷システムの概略側面図である。
図2C】他の実施形態に係る印刷システムの概略上面図である。
【0012】
図3A】一実施形態に係る撮像装置およびプリントヘッドアセンブリの概略平面図である。
図3B】別の実施形態に係る撮像装置およびプリントヘッドアセンブリの概略平面図である。
【0013】
図4】一実施形態に係る印刷方法のフローチャートである。
【0014】
図5A】一実施形態に係る印刷システムの概略側面図である。
【0015】
図5B】一実施形態に係る撮像装置および基板の概略平面図である。
【0016】
図6】一実施形態に係る印刷方法のフローチャートである。
【0017】
図7】一実施形態に係る制御部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の開示において、本主題の種々の特徴の多数の実施形態または実施例を示す。本開示の理解が容易となるように、構成要素、数値、動作、材料、配置等の具体例について以下に説明する。当然ながら、これらの具体例は単なる例示にすぎず、限定を意図するものではない。他の構成要素、数値、動作、材料、配置等も企図される。例えば、本開示では、各実施例において参照番号および/または参照符号を繰り返すことがあるが、この繰返しは、簡略化および明確化のためであり、本明細書に記載の種々の実施形態および/または構成間の関係を指示するものではない。さらに、本明細書では、説明の便宜上、「の下方」「の下」「下側」「の上方」「上側」等の空間的な相対用語を用いて各図に示す一要素または一特徴部と他の要素または他の特徴部との関係を説明する場合がある。これらの空間的な相対用語は、図示された向きに加えて、使用中または操作中のデバイスの様々な向きを包含するものとする。装置は他の向きに配置することも可能であり(90度回転または他の向きに配置)、本明細書で使用する空間的に相対的な記述も同様にその向きに応じて解釈することができる。
【0019】
インクジェット印刷の用途によっては、所期の高品質印刷製品を得るために、吐出ノズルおよび/または基板の位置決めに高い精度が求められることがある。吐出ノズルを正確に位置決めするために、ノズルマッピングを実施して吐出ノズルの位置をインクジェット印刷システムの基準フレーム内の対応する位置にマッピングする。吐出ノズルのマッピング位置を用いて精度の高い印刷が行われる。吐出ノズルのマッピング位置は、画像センサが縦一列に配置されたライン走査撮像装置によって取得した画像データから取得される。画像センサが縦横の複数の列に配置されたアレイを用いて画像データを取得する他の手法に比べると、ライン走査撮像装置の使用により、画像データの取得にかかる時間や複雑さが大幅に軽減され、その結果印刷プロセスが高速になる。
【0020】
図1は、一実施形態に係る印刷システムの上面等角図である。
【0021】
印刷システム100は、基板支持部102と、印刷アセンブリ104と、印刷時に基板を操作するためのホルダアセンブリ106とを有する。印刷システム100は、基部108上に設置されている。基部108は、印刷システム100の動作部分への振動伝達を最小限に抑えるように、一実施形態では大型の部材である。一例では、基部108は花崗岩のブロック体である。基板支持部102は基部108上に配置され、支持面110と、支持面110を略無摩擦の状態にするデバイスとを備える。一例では、支持面110は、基板を浮動させるガスクッションを形成するエアテーブルである。支持面110には複数の孔112が設けられ、そこからガスが噴出することで、基板を支持面110上方の所望の高さに維持する押上げ力を付与することを特徴とする。いくつかの孔はまた、基板を浮動させるガスクッションからガスを吸引するように制御可能に構成されている。これにより、基板の高さの局所的な精密制御が可能である。
【0022】
印刷アセンブリ104は、印刷支持部116に配設された吐出アセンブリ114を備える。印刷支持部116は基板支持部102に対して配設され、吐出アセンブリ114が基板支持部102上の基板に対して印刷材を正確に付着させる位置に構造上アクセス可能としている。印刷支持部116は、基板支持部102を横断するレールまたはビーム117を含み、したがって吐出アセンブリ114が基板支持部102を横断し、印刷支持部116の一方側から他方側までの間の、基板上の任意の位置に印刷材を堆積させることが可能である。一実施形態では、印刷支持部116は基部108に取り付けられ、基部108から延在して、吐出アセンブリ114を安定して支持している。基板支持部102の両側には、2台のスタンド120が基部108からレール117まで延在している。レール117は、基板支持部102を横断して延在している。一実施形態では、スタンド120およびレール117はいずれも基部108と同じ材料でできている。一例では、スタンド120、レール117、基部108は、一塊の花崗岩から一体形成される。
【0023】
吐出アセンブリ114は、少なくとも1つのプリントヘッドアセンブリ119と印刷アセンブリ制御部118とを含む。印刷アセンブリ制御部118は、印刷支持部116に沿ったプリントヘッドアセンブリ119の位置、タイミング、継続時間、印刷材の種類、吐出プロファイル等、プリントヘッドアセンブリ119の機能パラメータを制御する電子機器および/またはセンサを含む。プリントヘッドアセンブリ119は、印刷キャリッジ122の動作により印刷支持部116のレール117に沿って移動可能である。印刷キャリッジ122は印刷支持部116に結合され、プリントヘッドアセンブリ119をレール117の一端部から他端部までレール117に沿って並進させる。一例では、印刷キャリッジ122は、モータまたはサーボモータによって駆動される。図を簡略にするために、電源線や信号線は図示されていない。
【0024】
基板(図1には図示せず)は、ホルダアセンブリ106によって印刷アセンブリ104の下方に配置される。基板載置時に基板をホルダアセンブリ106に確実に接触させ、ホルダアセンブリ106によって基板を基板支持部102に沿って移動させて、印刷材が基板上に正確に吐出されるように基板を印刷アセンブリ104に対して配置する。ホルダアセンブリ106は、基板支持部102の片側に位置し、基板支持部102に沿って第1の方向に延在して、印刷中に基板を第1の方向に並進させる。第1の方向を図1の矢印124で示す。第1の方向124を「Y方向」または「走査方向」と称する。プリントヘッドアセンブリ119は、レール117に案内されて第1の方向に略直交する第2の方向に移動する。レール117は、図1の矢印126で示す略第2の方向に延在する。第2の方向126を「X方向」または「走査交差方向」と称し、レール117を「Xビーム」と称する。第1および第2の方向に略直交する第3の方向を図1の矢印125で示す。第3の方向125を「Z方向」と称する。X、Y、Z方向は、矢印124、125、126で示すように、印刷システム100の基準フレームとなる座標系の各軸方向である。少なくとも一実施形態では、この座標系の原点は、例えば、基部108に基づいた固定点である。
【0025】
ホルダアセンブリ106はホルダアセンブリ支持部128上に配設され、一実施形態では、基板支持部102の縁部130に沿ってその略全長にわたって第1の方向に延在するレールである。一実施形態では、ホルダアセンブリ支持部128は基部108に取り付けられ、ホルダアセンブリ106を安定して支持する。一実施形態では、ホルダアセンブリ支持部128は、基部108と同じ材料でできている。一例では、ホルダアセンブリ支持部128、基部108、および印刷支持部116は、一塊の花崗岩から一体形成される。ホルダアセンブリ支持部128を「Yビーム」と称する。ホルダアセンブリ106は、動作中にホルダアセンブリ支持部128に沿って移動して、確実に保持された基板を基板支持部102上の任意の位置に配置する。印刷アセンブリ104は、例えば印刷アセンブリ制御部118の動作により、基板上の印刷材を吐出する位置への正確なアクセスが可能となるようにプリントヘッドアセンブリ119を位置決めする。
【0026】
システム制御部129は、印刷システム100全体にわたり配備された各種センサから信号を受信し、印刷システム100の各構成要素に信号を送信して印刷を制御する。システム制御部129は、例えば、ネットワークを介して印刷アセンブリ制御部118およびホルダアセンブリ制御部131と動作可能に結合される。ホルダアセンブリ制御部131は、ホルダアセンブリ106の動作を制御する。基板支持部102、印刷アセンブリ104、ホルダアセンブリ106、および環境制御システムや材料管理システム等の他の補助システムの1つ以上は、システム制御部129に動作可能に結合されたセンサを有し、印刷動作中に各構成要素の状態に関する信号をシステム制御部129に送信する。システム制御部129は、制御対象である印刷システム100の各構成要素に送信する制御信号を決定するためのデータおよび命令を含む。一実施形態では、システム制御部129、印刷アセンブリ制御部118、およびホルダアセンブリ制御部131のうち、2つ以上が単一の制御部に統合されている。一実施形態では、システム制御部129、印刷アセンブリ制御部118、およびホルダアセンブリ制御部131の少なくとも1つは、印刷システム100内に分散配置され、ネットワークを介して互いに接続された複数の制御部として実装される。一実施形態に係る制御部の構成例を図7に関して説明する。簡略化のために、以下の説明では、「制御部」とは、印刷システム100の制御部のいずれか1つ以上を指す。
【0027】
インクジェット印刷を精密に行うために、印刷材の微小液滴を基板上の対応する小領域に付着させる。例えば、直径が10~30μmの印刷材液滴を、寸法が25~200μmの基板領域に付着させる。この付着は、印刷時間を最小限に抑えるように、基板がY方向(走査方向)に移動している間に行われることが多い。このような高精度の印刷は、印刷システム100の各部品の寸法および/または位置の微細な不備、温度によるこれら寸法の変動、基板上に既に形成された構造体の位置ずれ等の基板不備、基板と、吐出アセンブリ114と、ホルダアセンブリ106との並進速度のばらつき、プリントヘッドアセンブリ119から基板までの距離のばらつき等、多くの要因によって複雑になる。例えば、プリントヘッドアセンブリ119の吐出ノズルの位置が印刷システム100の基準フレーム内において正確に把握または制御されていない場合、基板が適切な位置にあっても、プリントヘッドアセンブリ119の吐出ノズルから印刷材液滴が目標位置に到達するように制御することは困難となる。この観点から、ノズルマッピングを実施して、印刷システム100の基準フレーム内における吐出ノズルの位置を把握または制御する。他の観点において、基板にずれが生じた場合に補正するように、基板の特徴部を印刷システム100の基準フレームにマッピングする。
【0028】
図2Aおよび図2Bは、各位置におけるプリントヘッドアセンブリを示す、一実施形態に係る印刷システム200の概略側面図である。一実施形態では、印刷システム200は、本明細書に記載の印刷システム100の1つ以上の特徴を含む。
【0029】
図2Aおよび図2Bに示すように、印刷システム200は、基板支持部102と撮像装置202とを備え、プリントヘッドアセンブリ119は基板支持部102に対向して配置されている。本明細書では、撮像装置202はライン走査撮像装置であるが、他の撮像装置を使用することもできる。プリントヘッドアセンブリ119は、基板支持部102へ向かう吐出方向225に延びる複数の吐出ノズル206を備える。プリントヘッドアセンブリ119は、図3Aおよび図3Bに関して本明細書に記載のように、複数のマーク(「ハウジングマーク」とも称する)を含む。ライン走査撮像装置202は、プリントヘッドアセンブリ119に対して移動可能である。例えば、図2Aおよび図2Bに、ライン走査撮像装置202とプリントヘッドアセンブリ119との異なる相対位置を示す。本例では、プリントヘッドアセンブリ119は、空気軸受アセンブリまたは他の低摩擦結合手段(図示せず)によってレール117に結合される。プリントヘッドアセンブリ119とスタンド120の一方または両方との間に結合されたリニアアクチュエータによって、プリントヘッドアセンブリ119は走査交差方向に移動する。ライン走査撮像装置202は吐出方向225とは反対方向の向きに配置され、プリントヘッドアセンブリの吐出ノズル206の位置を求めるために、複数のマークを含む少なくとも1つの画像を取得する。図2Aおよび図2Bの構成例では、吐出方向225はZ方向とは反対であり、ライン走査撮像装置202は吐出方向225とは反対のZ方向の向きに配置されている。
【0030】
一実施形態では、ライン走査撮像装置202は、基板支持部102に対して静止している。例えば、本例では、ライン走査撮像装置202は、印刷システム100のスタンド120と同様の2台のスタンド120A、120Bのうちスタンド120Aに固定されている。スタンド120A、120Bは、基板支持部102の両側で基部108から延在する。プリントヘッドアセンブリ119は、ライン走査撮像装置202および基板支持部102に対して走査交差方向(X方向)に移動可能である。例えば、図2Aに示すレール117の中央位置から、図2Bに示すように、スタンド120Aに隣接し、ライン走査撮像装置202に対向する位置まで移動可能である。プリントヘッドアセンブリ119が図2Bに示す位置付近においてライン走査撮像装置202を通過する間、プリントヘッドアセンブリ119は、ライン走査撮像装置202の撮像視野内に位置することが可能となる。ライン走査撮像装置202は、対向する吐出ノズル206のうちの少なくとも1つの画像を取得する。取得画像は、図2Aおよび図2Bに示す、ライン走査撮像装置202に結合された制御部118または印刷システム100の別の制御部に転送される。
【0031】
上記のライン走査撮像装置202の配置は一構成例であり、他の構成も種々の実施形態の範囲に含まれる。一例では、別の撮像装置204(本例では同じくライン走査撮像装置)が、基板支持部102の反対側のスタンド120Bに固定され、プリントヘッドアセンブリ119を基板支持部102のいずれか片側に移動させることによって、吐出ノズル206の撮像が可能である。一実施形態では、ライン走査撮像装置204が省略され、または2台以上のライン走査撮像装置が印刷システム200に含まれる。別の例として、少なくとも一実施形態では、ライン走査撮像装置202、またはライン走査撮像装置204は、基板支持部102に対して例えばモータによって移動可能であり、これらの撮像装置は、吐出ノズル206の画像を取得するために、図2Bに示す位置等の所定の画像取得位置に配置される。例えば、図2Bに示すように、画像の取得後、ライン走査撮像装置204は、印刷プロセスを妨げないように、例えば矢印251で示すように後退したり、矢印252で示すように揺動したりすることによって画像取得位置から離れる。さらに別の例では、図2Bに関して説明したように、プリントヘッドアセンブリ119を静止したライン走査撮像装置202の上方で移動させて画像を取得するのではなく、ライン走査撮像装置202をプリントヘッドアセンブリ119に対して物理的に移動させる、またはライン走査撮像装置202とプリントヘッドアセンブリ119との両方を互いに対して物理的に移動させて画像を取得する。例えば、ライン走査撮像装置202をリニアポジショナによってレール117に結合し、ライン走査撮像装置202をプリントヘッドアセンブリ119に対してプリントヘッドアセンブリ119に対向する位置にまで移動させて、吐出ノズル206の画像を取得することができる。
【0032】
図2Cは、他の実施形態に係る印刷システム200の概略上面図である。簡略化のために、図2Cでは、基板支持部102や基部108等のいくつかの構成要素を省略している。図2Cの構成例では、ライン走査撮像装置202および/またはライン走査撮像装置204は、例えばモータによりY方向に沿って移動可能であり、吐出ノズル206を走査してそれらの画像を取得することができる。例えば、ライン走査撮像装置202は、電動キャリッジ(図2Cには図示せず)を介してレール274に結合される。レール274は、スタンド120Aの内縁に沿って支持されている。レール274は、接続部材272によってスタンド120Aに取り付けられる。ライン走査撮像装置202は、矢印276で示すように、位置202Aと位置202Bとの間でレール274に沿って直線移動可能である。他の例として、ライン走査撮像装置204は、旋回マウント282を介して枢軸284に結合される。枢軸284はスタンド120Bに支持されている。ライン走査撮像装置204は、矢印286で示すように、枢軸284を中心として位置204Aと位置204Bとの間で枢動可能である。複数のカメラを使用する場合、各カメラは上述のいずれの方法で印刷システム200に結合させてもよく、カメラに応じて様々な種類の結合を使用することができる。
【0033】
図3Aは、一実施形態に係るライン走査撮像装置202およびプリントヘッドアセンブリ119の概略平面図である。図3Aは、ライン走査撮像装置202の上平面図(図2Aの吐出方向225に見下ろした図)とプリントヘッドアセンブリ119の下平面図(図2AのZ方向に見上げた図)とを並べて示した組合せ図である。プリントヘッドアセンブリ119のハウジングまたは本体330のノズル面321が示されている。各吐出ノズル206の吐出端がノズル面321に配設されている。
【0034】
ライン走査撮像装置202は、複数の画像センサ332を備える。図3Aおよび図3Bに示す一実施形態では、ライン走査撮像装置202の全画像センサ332が走査方向(Y方向)に沿って縦一列(例:ライン331)に配置されている。別の実施形態(図示せず)では、ライン走査撮像装置202の画像センサ332は、縦2列以上に配置される。例えば、第1列目の画像センサ332は、ノズルマッピング用の画像データを取得する一次画像センサとして構成され、第2列目の画像センサ332は、1つ以上の一次画像センサが故障した場合に画像データを提供する冗長センサすなわち二次センサとして構成される。画像センサ332は、プリントヘッドアセンブリ119のノズル面321からライン走査撮像装置202の方に反射した光を取り込み、取り込んだ光に応じた電気信号を記録する光電素子である。画像センサ332は、プリントヘッドアセンブリ119がライン走査撮像装置202の上方を走査交差方向(X方向)に相対移動する間に、プリントヘッドアセンブリ119の画像を取得する。この点において、ライン走査撮像装置202による画像取得は、同様のリニアフォトセンサ構成を用いた複写機やスキャナが行う画像取得と同様である。例えば5~10μm等、特徴部の寸法が数μmの範囲である画像を取得するには、画像センサ332は、例えば約0.1μmの高解像度を実現するように構成される。画像センサの例としては、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサや電荷結合素子(CCD)センサ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
一実施形態では、周囲光が、ライン走査撮像装置202によって画像取得する際の照明となる。しかし、少なくとも一実施形態では、ライン走査撮像装置202が動作する環境の光学的特性によっては、少なくとも1つの光源(図示せず)を設けて、画像取得中にプリントヘッドアセンブリ119のノズル面321を照明する。光源が発する光の波長、強度、波動、および/または入射角等の各種パラメータは、ノズル面321の反射性、吐出ノズル206およびノズル面321上の複数のマークの色および/またはその他の光学的特性、ならびにライン走査撮像装置202の周囲雰囲気(例:不活性環境)等、これらに限定されるものではないが、1つ以上の考慮事項に応じて選択および/または変動する。一実施形態では、画像取得中に可視光を用いてプリントヘッドアセンブリ119のノズル面321を照明するが、他の実施形態では、非可視光(すなわち、可視スペクトル外の電磁放射線)を使用する。光源は、例えば、白色LED光源としてライン走査撮像装置202に組み込むことができ、プリントヘッドアセンブリ119のノズル面321に対向するライン走査撮像装置202のセンサ面に設けられる。
【0036】
吐出ノズル206は、プリントヘッドアセンブリ119のノズル面321に見えている。図3Aおよび図3Bの構成例では、吐出ノズル206は、X方向に延びる1つ以上の横列として配置されている。例えば、図3Aおよび図3Bには、横4列の吐出ノズル206が、4つのプリントヘッド320、322、324、326に対応するものとして示されている。図3Aに示すプリントヘッドアセンブリ119の吐出ノズル206の横列の数および/または各列内の吐出ノズル206の数は一例であり、印刷システムおよび/またはプリントヘッドアセンブリごとに異なる。吐出ノズルが特定のパターンで配置されていないプリントヘッドアセンブリもある。高精度印刷システムでは、各プリントヘッドアセンブリに数千個の吐出ノズルが設けられている場合もある。一実施形態では、図3Aから分かるように、ライン走査撮像装置202の画像センサ332のライン331は、Y方向においてプリントヘッドアセンブリ119の吐出ノズル206の全横列に完全にわたる十分な長さで延在する。あるいは、吐出ノズルが特定のパターンで配置されていないプリントヘッドアセンブリの場合、ライン走査撮像装置202の画像センサ332の一列のライン331は、全吐出ノズルが配置されているノズル面の領域の全幅(Y方向)に完全にわたる十分な長さで延在する。したがって、この構成では、プリントヘッドアセンブリ119がライン走査撮像装置202をX方向に1回通過するだけで、プリントヘッドアセンブリ119の全吐出ノズル206を含めた、すなわち包含した画像を取得することが可能となる。
【0037】
しかし、ライン331の長さが、1回の通過で全吐出ノズル206を含めることできるほど長くない(すなわち、図2Cに示すように、ライン走査カメラがノズル面321の幅よりも短い)場合、複数のライン走査撮像装置202/204を使用すること、および/または少なくとも1つのライン走査撮像装置202/204を複数回通過させることにより、それぞれがノズル面321の対応する部分を含めた複数の画像を取得することができる。例えば、図2Cに関して説明した構成を用いて、ライン走査撮像装置202/204を次の位置に移動させて、ノズル面321の各部分の画像を取得することができる。あるいは、2台以上のカメラ202を図2CのY方向に沿って配置して、1回の通過でノズル面321全体を走査することもできる。次いで、例えば制御部118によってこれら複数の画像を継ぎ合わせて、プリントヘッドアセンブリ119の全吐出ノズル206を含めたより大きな画像を形成し、この画像をノズルマッピングに使用する。
【0038】
一般的に、ライン走査撮像装置202(または204)は通常、第1の方向に沿って縦一列に配置された複数の画像センサを含み、ライン走査撮像装置とノズル面321とが、互いに対して第1の方向に垂直な第2の方向に移動する。したがって、画像センサ列によって、ノズル面321が全体にわたって走査される。ノズル面321上の走査領域がライン走査撮像装置の第1の方向における長さよりも長い第1の方向における寸法を有する場合、縦一列のライン走査撮像装置では、1回の走査後、1回目の走査で到達できなかった領域が2回目で走査されるようにノズル面321を再配置する必要があり、走査完了までの時間が増大する。このような場合、2台以上のライン走査撮像装置を用いて、1台のライン走査撮像装置が1回の走査でアクセスできる範囲よりも広い領域を同時に走査することができる。2台以上のライン走査撮像装置は、隣接していても隣接していなくてもよく、また、2台以上のライン走査撮像装置によって取得した画像を組み合わせて合成画像としてから処理しても、個別に処理してもよい。例えば、ノズル面321上の1つ以上のマークを撮像する際、1つ以上のマークが1台のライン走査撮像装置によって1回の走査では撮像できない領域にわたって設けられている場合には、2台以上のライン走査撮像装置を用いて、1台のライン走査撮像装置の視野よりも広いマーク領域、またはその一部を撮像することができる。複数のライン走査撮像装置によってマーク領域の隣接する複数の部分を撮像し、それらの画像を組み合わせてマーク領域全体の合成画像とすることができる。あるいは、1台のライン走査撮像装置では1回の走査でアクセスできない距離にあるマーク領域の部分を、2台以上のライン走査撮像装置で撮像してもよい。さらに、吐出ノズルを撮像する際、撮像領域が1台のライン走査撮像装置の視野よりも広い場合には、上述のように2台以上のライン走査撮像装置を使用することができる。
【0039】
図3Aの構成例では、複数のプリントヘッドに横4列の吐出ノズル206があり、各列はプリントヘッド320、322、324、326に属する。プリントヘッド320、322、324、326はそれぞれ、プリントヘッドアセンブリ119のノズル面321の中央領域327内部の対応するスロットまたは領域に取り外し可能に配設されたカートリッジまたはカードとして実装される。プリントヘッド320、322、324、326は、中央領域327内部の対応するスロットまたは領域に装着されると、印刷材と制御信号とを受け取るように結合される。制御信号に応じて、プリントヘッド320、322、324、326の吐出ノズル206により印刷材が基板支持部102上に支持された基板上に吐出される。一実施形態では、プリントヘッド320、322、324、326は、吐出ノズル206に対応した圧電体またはトランスデューサ(図示せず)を有する。制御信号を受信すると、圧電体またはトランスデューサが変形し、対応する吐出ノズル206から印刷材が基板上に吐出される。その他の構成(例:他のタイプのトランスデューサおよび/または吐出ノズルの配置)も使用することができる。プリントヘッド320、322、324、326は、点検、保守、および/または交換のためにプリントヘッドアセンブリ119から取り外し、その後プリントヘッドアセンブリ119に再度装着することができる。プリントヘッド320、322、324、326の着脱の繰返し、およびそれに伴う機械的不具合および/または装着不備により、プリントヘッドアセンブリ119の吐出ノズル206の位置または向きが変わることがあり、その結果、吐出ノズルと基板上の意図した印刷領域との間に位置ずれが生じ、印刷不良品を生じる可能性がある。この問題に対処するために、本明細書に記載の方法および装置を用いてノズルの位置をマッピングすることができる。
【0040】
ハウジングまたは本体330のノズル面321上またはノズル面321内においてノズルマッピングを行うために、プリントヘッドアセンブリ119は、プリントヘッドアセンブリ119の吐出ノズル206の位置を求めるための複数のハウジングマーク、本例では4つのハウジングマーク310、312、314、316を有する。図3Aの構成例では、ハウジングマーク310、312、314、316は、吐出ノズル206が位置する中央領域327の周囲に配置される。ただし、ハウジングマーク310、312、314、316は、ノズル面321上またはノズル面321内の他の位置および/または吐出ノズル206に対する他の相対位置に配置してもよい。一実施形態では、ハウジングマーク310、312、314、316を「基準マーク」と称する。これらのマークは、プリントヘッドアセンブリ119のノズル面321上のパターン、向き、寸法、および位置等の1つ以上の既知の特性を有する。ハウジングマーク310、312、314、316は、プリントヘッドアセンブリ119のノズル面321に(例:接着剤によって)取り付けられ、エッチングもしくは機械加工され、または印刷もしくは塗装される。その他の方法を用いてプリントヘッドアセンブリに基準マークを設けることもできる。図3Aの構成例におけるハウジングマーク310、312、314、316の数および/または形状は一例である。ハウジングマーク310、312、314、316は、任意の数および/または形状および/または材料および/または向きが可能である。一例として、ハウジングマーク310、312、314、316のいずれにも、文字、バーコード、会社名、および/またはロゴを含めることができる。基準マークの数が多いほど、および/またはマークの形状が複雑になるほど、ハウジングマーク310、312、314、316を用いて求められる吐出ノズル206の位置の精度が上がる。
【0041】
ハウジングマーク310、312、314、316を用いてプリントヘッドアセンブリ119の吐出ノズル206の位置を求めるには、プリントヘッドアセンブリ119がライン走査撮像装置202を通過する間に、プリントヘッドアセンブリ119のノズル面321の画像を取得するように、制御部118によってライン走査撮像装置202を制御する。取得画像は、ライン走査撮像装置202から制御部118に送信され、制御部118は、取得画像からハウジングマーク310、312、314、316、および少なくとも1つの吐出ノズル206を検出する。パターン、位置、サイズ、および/または向き等の既知の特性に基づいて対象を認識するための画像処理アルゴリズムおよび/またはソフトウェアおよび/またはプログラムが画像処理の技術分野で周知であり、本明細書では詳述しない。一実施形態では、制御部118は、このような周知のアルゴリズムおよび/またはソフトウェアおよび/またはプログラムに依存して取得画像からハウジングマーク310、312、314、316、および少なくとも1つの吐出ノズル206を認識する。
【0042】
少なくとも一実施形態では、制御部118は、ハウジングマーク310、312、314、316の既知の特性(例:パターン、向き、寸法、位置の1つ以上)、各吐出ノズル206の既知の形状(例:円形)およびサイズ、ならびに各吐出ノズル206のハウジングマーク310、312、314、316に対する予想位置を使用する。例えば、ハウジングマーク310、312、314、316の既知の特性は、制御部118に記憶され、および/または制御部118がアクセス可能なプリントヘッドアセンブリ構成データに含まれる。プリントヘッドアセンブリ構成データは、吐出ノズル206に関する他のデータをさらに含んでもよい。このデータには、吐出ノズルの横列の数、横一列あたりの吐出ノズルの数、吐出ノズルの横列または縦列内の隣接する吐出ノズル同士の間隔、隣接する横列および/または縦列同士の間隔、吐出ノズルの各横列とハウジングマークとの空間的関係等の少なくとも1つが含まれるが、これらに限定されるものではない。一態様では、プリントヘッドアセンブリ構成データは、ハウジングマークおよび吐出ノズルを表す座標マップであり、例えば、ハウジングマークおよび吐出ノズル上またはハウジングマークおよび吐出ノズル内の一連のx-y位置である。プリントヘッドアセンブリ構成データから、制御部118によりハウジングマーク310、312、314、316に対する各吐出ノズル206の予想位置を求めることが可能となる。制御部118が取得画像からハウジングマーク310、312、314、316、および少なくとも1つの吐出ノズル206を認識すると、取得画像から認識したそれらの位置を、プリントヘッドアセンブリ構成データから既知の位置/予想される位置と比較する。この比較から、制御部118は、取得画像から認識した位置と、プリントヘッドアセンブリ構成データから既知の位置/予想される位置とを変換する関係を導出する。制御部118は、導出した関係および他の全吐出ノズル206の予想位置を用いて、例えば、並進、回転、剪断(skew)、拡大縮小(scaling)等の1つまたは複数の補間操作を含むバイリニア補間を用いて、プリントヘッドアセンブリ119の他の全吐出ノズル206の位置を補間する。その結果、プリントヘッドアセンブリ119の全吐出ノズル206の位置が求められる。
【0043】
次に、制御部118は、プリントヘッドアセンブリ119の全吐出ノズル206について求めた位置を印刷システムの基準フレーム(例:本明細書で述べたX、Y、Z方向の軸を有する座標系)内の対応する位置にマッピングする。このマッピングが可能となるのは、プリントヘッドアセンブリ119が、制御部118による制御下で印刷システムの基準フレーム内に少なくとも1つの既知の位置を有するからである。一実施形態では、全吐出ノズル206について求めた位置の、印刷システムの基準フレーム内の対応する位置へのマッピングは、並進、回転、剪断、拡大縮小等の1つ以上の補間操作を含むバイリニア補間を用いる。
【0044】
制御部118は、印刷システムの基準フレーム内における吐出ノズル206のマッピング位置に基づいて、吐出ノズル206から基板支持部102に支持された基板上への印刷材の吐出を制御する。吐出ノズル206のマッピング位置は、吐出ノズル206の実際の検出位置を高精度で反映しているため、印刷精度が上がる。
【0045】
図3Bは、一実施形態に係るライン走査撮像装置202およびプリントヘッドアセンブリ319の概略平面図である。一実施形態では、プリントヘッドアセンブリ319は、本明細書に記載のプリントヘッドアセンブリ119の1つ以上の特徴を含む。図3Bは、ライン走査撮像装置202の上平面図(図2Aの吐出方向225に見下ろした図)、およびプリントヘッドアセンブリ319の下平面図(図2AのZ方向に見上げた図)を示す。
【0046】
プリントヘッドアセンブリ119と比較して、プリントヘッドアセンブリ319は、吐出ノズル206に対して所定の(または既知の)位置にある複数のプリントヘッドマークをさらに備える。ハウジングマーク310、312、314、316と同様に、プリントヘッドマークは、任意の数および/または形状および/または材料および/または向きが適用可能である。例えば、プリントヘッド320は、プリントヘッド320の吐出ノズル206に対して所定の位置にあるプリントヘッドマーク340、342を含む。他のプリントヘッド322、324、326もそれぞれ、プリントヘッド322、324、326の吐出ノズル206に対して所定の位置にある同様のプリントヘッドマークを含む。プリントヘッド320に関する以下の説明は、他のプリントヘッド322、324、326にもあてはまる。
【0047】
少なくとも一実施形態では、プリントヘッドマーク340、342は、プリントヘッド320の吐出ノズル206に対して所定の位置関係となるように、プリントヘッド320の下面上または下面内に形成される。図3Aに関する記載と同様に、プリントヘッドアセンブリ319がライン走査撮像装置202を通過する間に、プリントヘッドアセンブリ319のノズル面321の画像を取得するように、制御部118によってライン走査撮像装置202を制御する。取得画像は、ライン走査撮像装置202から制御部118に送信され、制御部118は、取得画像からハウジングマーク310、312、314、316、およびプリントヘッドマーク340、342を検出する。プリントヘッドアセンブリ構成データから、制御部118によりハウジングマーク310、312、314、316に対するプリントヘッドマーク340、342の予想位置を求めることが可能となる。制御部118は、ハウジングマーク310、312、314、316、およびプリントヘッドマーク340、342を認識すると、取得画像から認識された位置および向きと、プリントヘッドアセンブリ構成データから既知の位置/予想される位置および向きとを変換する関係を導出する。制御部118は、導出した関係およびプリントヘッドマーク340、342の予想位置および向きを用いて、プリントヘッドアセンブリ319におけるそれらのマークの位置および向きを補間し、次いで、プリントヘッドアセンブリ319のプリントヘッド320の吐出ノズル206の位置を補間する。上述のプロセスは、他のプリントヘッド322、324、326にも適用可能である。その結果、プリントヘッドアセンブリ319の全吐出ノズル206の位置が正確に求められる。次いで、制御部118は、図3Aに関して説明したように、吐出ノズル206に関して求めた位置に基づいてノズルマッピングおよび印刷材の吐出制御を行う。
【0048】
少なくとも一実施形態では、プリントヘッドマーク340、342がプリントヘッド320に固定されているので、プリントヘッドアセンブリ319に対するプリントヘッド320の着脱は、プリントヘッドマーク340、342とプリントヘッド320の吐出ノズル206との位置関係に影響を及ぼさない。したがって、図3Aに関して説明したプリントヘッドアセンブリ119のように少なくとも1つの吐出ノズル206を直接検出するのではなく、プリントヘッドマーク340、342を検出することによって、プリントヘッド320の吐出ノズル206の位置を求めることが可能である。一実施形態では、プリントヘッドマーク340、342は、高密度に配置された小型(直径数μm)の円形吐出ノズル206よりも大きく、より特徴的な(すなわち、認識しやすい)形状を有する。その結果、吐出ノズル206を検出するよりもプリントヘッドマーク340、342を検出する方が制御部118には容易となり、したがってノズルマッピング処理の速度または精度の少なくとも一方が向上する。この効果は、プリントヘッドアセンブリ内に数千もの小型吐出ノズルが狭い間隔で配置されたインクジェット印刷の用途で顕著となる。このようなプリントヘッドアセンブリでは、特に吐出ノズルが前回の印刷動作時の印刷材によって隠れて見えにくい場合、取得画像から1つ以上の吐出ノズルを認識することが困難となるためである。一実施形態では、画像取得前に吐出ノズルをクリーニングするクリーニング機構(図示せず)が設けられるが、吐出ノズルに対して所定の位置関係にあるプリントヘッドマークをノズルマッピング用に設けることはなおも有利である。
【0049】
図4は、一実施形態に係る印刷方法400のフローチャートである。印刷方法400は、本明細書に記載のように、少なくとも1つの制御部によって、またはその制御下で、印刷システム200において実施することができる。以下の説明では、印刷方法400は、制御部118によって、またはその制御下で実施される。
【0050】
動作405において、制御部は、プリントヘッドアセンブリの複数のマークのうちの少なくとも1つの画像を撮像装置に取得させる。例えば、図2Bに関して説明したように、制御部118によりプリントヘッドアセンブリ119を移動して、画像取得位置付近でライン走査撮像装置202に通過させる。制御部118はさらに、プリントヘッドアセンブリ119がライン走査撮像装置202を通過する間に、プリントヘッドアセンブリ119のノズル面321の画像をライン走査撮像装置202によって取得させる。取得画像は、プリントヘッドアセンブリ119の少なくとも複数のマーク310、312、314、316を含む。
【0051】
動作415において、制御部は、撮像装置によって取得した少なくとも1つの画像において、複数のマークを検出する。例えば、制御部118は、本明細書に記載の1つ以上の周知の画像処理アルゴリズムおよび/またはソフトウェアおよび/またはプログラムを用いて、ライン走査撮像装置202によって取得した画像内の複数のマーク310、312、314、316を検出または認識する。
【0052】
動作425において、制御部は、検出した複数のマークに基づいて、プリントヘッドアセンブリの複数の吐出ノズルの位置を検出する。一例では、制御部118は、少なくとも1つの吐出ノズル206を検出または認識し、少なくとも1つの吐出ノズル206およびハウジングマーク310、312、314、316の検出位置を用いて、図3Aに関して説明したように、プリントヘッドアセンブリ119の他の全吐出ノズル206の位置を求める。別の例では、制御部118は、プリントヘッド320の吐出ノズル206に対して所定の位置にあるプリントヘッドマーク340、342を検出または認識し、ハウジングマーク310、312、314、316およびプリントヘッドマーク340、342の検出位置を用いて、図3Bに関して説明したように、プリントヘッドアセンブリ319の全吐出ノズル206の位置を求める。したがって、プリントヘッドアセンブリの全吐出ノズルを直接撮像し認識することは不可能または現実的ではないものの、プリントヘッドアセンブリのハウジングマーク、またはノズルもしくは吐出ノズルに関連付けられたプリントヘッドマークのいずれかを撮像し認識することにより、プリントヘッドアセンブリ内の全吐出ノズルの位置を求めることができる。
【0053】
動作435において、制御部は、複数の吐出ノズルの検出位置に基づいて、複数の吐出ノズルから基板上への印刷材の吐出を制御する。例えば、制御部118は、本明細書に記載のように、印刷システムの基準フレーム内におけるプリントヘッドアセンブリの既知の位置に基づいて、プリントヘッドアセンブリ119または319の吐出ノズル206について求めた位置を印刷システムの基準フレーム内の対応する位置にマッピングする。次に、制御部118は、印刷システムの基準フレーム内における吐出ノズル206のマッピング位置を用いて、印刷データまたは印刷システムの基準フレーム内の座標を含むレシピに従って、吐出ノズルが印刷材を吐出する時機および/または使用する吐出ノズルの選択について制御する。その結果、高い印刷精度の印刷製品を得ることが可能となる。例えば、印刷ノズルが予想位置とは距離dだけ異なる位置にあることが分かった場合、既存の印刷計画に従って吐出された液滴は、その目標位置tとは距離dだけ異なる位置に到達することになる。距離dにx成分dがある場合、プリントヘッドアセンブリを-dで調整して補正することができる。プリントノズルが予想位置からx方向に平均距離(avg_d)だけずれている場合、印刷アセンブリを-(avg_d)で調整して補正することができる。距離dにy成分dがある場合、d/vの噴射遅延を用いて印刷計画を全体的に調整することができる。式中、vは基板のy方向の並進速度である。平均距離(avg_d)のy成分についても同様である。
【0054】
一実施形態では、上述の印刷方法で製造される印刷製品には、ソーラーパネル、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
一実施形態では、本明細書に記載のノズルマッピングは、印刷システムの初期化時および/または印刷動作の合間に実施される。少なくとも一実施形態では、本明細書に記載のノズルマッピングは、印刷動作中に実施される。例えば、プリントヘッドアセンブリ119を、図2Aに示す印刷位置から図2Bに関して説明した画像取得およびノズルマッピング用の画像取得位置に移動させ、その後プリントヘッドアセンブリ119を印刷位置に戻して、ノズルマッピングの結果に基づいて印刷動作を継続する。
【0056】
一実施形態では、プリントヘッドアセンブリの吐出ノズルの範囲と少なくとも同じ長さの縦一列のフォトセンサを有するライン走査撮像装置を使用する。したがって、プリントヘッドアセンブリをライン走査撮像装置に1回通過させるだけで、全吐出ノズルを含めた高解像度画像を得ることが可能であり、プリンタの初期化時間の節約および/または印刷中断の低減が可能となる。
【0057】
画像センサが縦横の複数の列に配置されたアレイを用いて画像データを取得する他の手法に比べると、一実施形態では、ライン走査撮像装置の使用により、画像データの取得にかかる時間や複雑さが大幅に軽減され、その結果ノズルマッピング、プリンタの初期化、および/または印刷プロセスが高速になる。状況によっては、フォトセンサのアレイを有する通常のカメラでは、ノズルマッピングに適した十分な品質の画像を取得するのに15~20分かかるのに対し、同じ状況でも、一実施形態に係るライン走査撮像装置では、ノズルマッピングに適した高解像度画像を取得するのに数分しかかからない。その理由は、高密度に配置された千個もの吐出ノズルの許容可能な画像を通常のカメラで取得するには、通常のカメラをプリントヘッドアセンブリと適切に位置合せしなければならならず、このようなカメラの位置合せには時間がかかるからである。このような撮像装置を本明細書に記載の方法および装置に使用することもできるが、画像取得にライン走査撮像装置を使用すると、多くの場合カメラの位置合せが不要になり、その代わりに、プリントヘッドアセンブリをライン走査撮像装置に1回通過させるだけで十分に高品質かつ高解像度の画像を取得することができる。先に述べたように、ノズル面の全体を撮像するために数回通過させる必要がある場合でも、撮像速度はなおも通常のカメラを使用する他の手法よりも改善される。したがって撮像速度が高速になり、スループットの向上に加えて、測定間の間隔を短くすることが可能となる。その結果、印刷動作時に測定および/または補正をより頻繁に行うことが可能となり、その結果印刷精度が上がる。
【0058】
図5Aは、一実施形態に係る印刷システム500の概略側面図である。一実施形態では、印刷システム500は、本明細書に記載の印刷システム100および/または印刷システム200の1つ以上の特徴を含む。
【0059】
印刷システム200と比較して、印刷システム500は、基板支持部102に対して移動可能であり、基板支持部102上の基板508の少なくとも1つの第2の画像を取得するように、基板支持部の方向の向きに配置された第2の撮像装置502をさらに含む。一例では、基板508は、ガラス基板である。他の基板材料も種々の実施形態の範囲に含まれる。図5Aの構成例では、撮像装置502は、基板508に対してプリントヘッドアセンブリ119とともに移動可能なように印刷キャリッジ122に取り付けられている。別の構成例(図示せず)では、撮像装置502は、プリントヘッドアセンブリ119とは独立して(例:駆動軸またはモータによって)移動可能である。例えば、撮像装置502は、独立して作動可能な、レール117に対する作動連結部を有してもよい。
【0060】
図5Bは、一実施形態に係る撮像装置502および基板508の概略平面図である。図5Bは、基板508の上平面図(図5Aの吐出方向225に見下ろした図)、および撮像装置502の下平面図(図5AのZ方向に見上げた図)を示す。
【0061】
基板508は、吐出ノズルから吐出された印刷材の液滴が付着する少なくとも1つの印刷領域を含む。この領域は、後に処理されて印刷製品の恒久部分となる。図5Bの構成例では、基板508は、例えば製造するディスプレイパネルにそれぞれ対応する7つの印刷領域sp1~sp7を含む。印刷領域の位置を識別するために、基板508は、印刷領域ごとに複数の基板マークを含む。図5Bの構成例では、各印刷領域は、角部に4つの基板マークを含む。図5Bでは、簡略化のために、印刷領域sp1識別用の基板マーク510、512、514、516と、印刷領域sp3識別用の基板マーク520、522、524、526のみを示している。一実施形態では、基板マークを「基準マーク」と称し、これらの基板マークは、プリント基板508上のパターン、向き、寸法、および位置等の1つ以上の既知の特性を有する。基板マークは、基板508に(例:接着剤によって)取り付けられ、エッチングもしくは機械加工され、または印刷もしくは塗装される。その他の方法を用いて基板に基板マークを設けることもできる。図5Bの構成例における基板マークの数および/または形状は一例である。基板マークは、任意の数および/または形状および/または材料および/または向きが可能である。基板マークのいずれにも、文字、バーコード、社名、ロゴ等を含めることができる。基板マークの数が多いほど、および/またはマークの形状が複雑になるほど、基板マークを用いて求められる印刷領域の位置の精度が上がる。
【0062】
基板マーク510、512、514、516を用いて印刷領域sp1の位置を求めるには、基板508が撮像装置502の下方を例えばY方向に通過する間に、基板508の少なくとも1つの画像を取得するように、制御部118によって撮像装置502を制御する。1つまたは複数の取得画像は、撮像装置502(ライン走査撮像装置可)から制御部118に送信され、制御部118は、1つまたは複数の取得画像から基板マーク510、512、514、516を検出する。一例では、基板マーク510、512、514、516が全て単一の画像内に取得される。他の例では、基板マーク510、512が単一の画像内に取得され、他の基板マーク514、516が別の画像内に取得される。さらに別の例では、基板マーク510、512、514、516がそれぞれ別個の画像内に取得される。パターン、位置、サイズ、および/または向き等の既知の特性に基づいて対象を認識するための画像処理アルゴリズムおよび/またはソフトウェアおよび/またはプログラムが、画像処理の技術分野で周知であり、本明細書では詳述しない。一実施形態では、図3Aおよび図3Bに関して説明したハウジングマーク310、312、314、316を認識する方法と同様に、制御部118は、このような周知のアルゴリズムおよび/またはソフトウェアおよび/またはプログラムに依存して1つまたは複数の取得画像から基板マーク510、512、514、516を認識する。
【0063】
次に、制御部118は、図3Aおよび図3Bに関して説明した、吐出ノズル206について求めた位置を印刷システムの基準フレーム内の対応する位置にマッピングする方法と同様に、検出した基板マーク510、512、514、516によって示される印刷領域sp1の位置を印刷システムの基準フレーム内の対応する位置にマッピングする。なお、異なるマッピングアルゴリズムを用いて、異なるマークまたはマークの組をマッピングすることもできる。例えば、第1のアルゴリズムを用いてハウジングマーク310、312、314、316をマッピングし、第1のアルゴリズムとは異なる第2のアルゴリズムを用いて基板マーク510、512、514、516をマッピングすることもできる。
【0064】
制御部118は、図3Aおよび図3Bに関して説明した印刷システムの基準フレーム内における吐出ノズル206のマッピング位置と、図5Bに関して説明した印刷システムの基準フレーム内における印刷領域sp1のマッピング位置とに基づいて、吐出ノズル206から基板508の印刷領域sp1への印刷材の吐出を制御する。一実施形態では、この印刷材の吐出制御には、基板508および/またはプリントヘッドアセンブリ119の物理的調整、および/または吐出ノズル206用の制御信号の生成に使用される印刷データの論理的修正が含まれる。吐出ノズル206および印刷領域sp1のマッピング位置は、吐出ノズル206および印刷領域sp1の実際の位置を高精度で反映しているため、印刷精度が上がる。
【0065】
少なくとも一実施形態では、基板の一印刷領域を印刷する間に、同じ基板上の別の印刷領域を識別するための基板マークが撮像され、認識される。例えば、基板508の印刷領域sp1を、基板508をY方向に往復移動させることによって印刷する間に、別の印刷領域sp3を識別するための基板マーク520、522、524、526が、基板508のY方向への同じ往復移動中に撮像される。したがって、印刷領域sp1の印刷動作が終了すると、基板マーク520、522、524、526が既に検出され、対応する印刷領域sp3の位置が印刷システムの基準フレームに既にマッピングされているので、印刷領域sp3は直ちに印刷動作可能な状態にある。したがって、少なくとも一実施形態では、基板508全体の印刷プロセスを高速化することが可能となる。
【0066】
図6は、一実施形態に係る印刷方法600のフローチャートである。一実施形態では、印刷方法600は、本明細書に記載のように、少なくとも1つの制御部によって、またはその制御下で、印刷システム500において実施することができる。以下の説明では、印刷方法600は、制御部118によって、またはその制御下で実施される。
【0067】
動作605において、制御部は、プリントヘッドアセンブリの複数の吐出ノズルの位置を求めるために、複数の第1のマークを含む少なくとも1つの第1の画像を第1の撮像装置に取得させる。例えば、図2Bに関して説明したように、制御部118によりプリントヘッドアセンブリ119を移動して、画像取得位置付近でライン走査撮像装置202に通過させる。制御部118はさらに、プリントヘッドアセンブリ119がライン走査撮像装置202をX方向に通過する間に、プリントヘッドアセンブリ119のノズル面321の第1の画像をライン走査撮像装置202に取得させる。第1の取得画像は、プリントヘッドアセンブリ119の少なくとも複数のマーク310、312、314、316を含む。
【0068】
動作615において、制御部は、基板上の印刷領域の位置を求めるために、複数の第2のマークを含む少なくとも1つの第2の画像を第2の撮像装置に取得させる。例えば、制御部118は、基板508が撮像装置502の下方をY方向に通過する間に、印刷領域sp1を識別する基板マーク510、512、514、516(または印刷領域sp3を識別する基板マーク520、522、524、526)が含まれることが予想される基板508の少なくとも1つの第2の画像を撮像装置502に取得させる。基板508の印刷動作前に(例:印刷領域sp1の識別)、または基板508の印刷動作中に(例:印刷領域sp1印刷中の印刷領域sp3の識別)、基板508を、撮像装置502の下方をY方向に通過させる。
【0069】
動作625において、制御部は、少なくとも1つの第1の画像および少なくとも1つの第2の画像に基づいて、複数の吐出ノズルから基板の印刷領域への印刷材の吐出を制御する。例えば、制御部118は、プリントヘッドアセンブリ119の第1の取得画像から複数のマーク310、312、314、316を検出または認識して吐出ノズル206の位置を求め、基板508の第2の取得画像から複数の基板マーク510、512、514、516を検出または認識して印刷領域sp1の位置を求める。次いで、制御部118は、吐出ノズル206および印刷領域sp1について求めた位置を印刷システムの基準フレーム内の対応する位置にマッピングする。次に、制御部118は、印刷システムの基準フレーム内の吐出ノズル206および印刷領域sp1のマッピング位置を用いて、印刷データまたは印刷システムの基準フレーム内の座標を含むレシピに従って、吐出ノズルが印刷材を吐出する時機および/または使用する吐出ノズルの選択について制御する。その結果、高い印刷精度の印刷製品を得ることが可能となる。
【0070】
上述の方法には動作例が含まれるが、必ずしも記載の順に実施する必要はない。本開示の実施形態の趣旨および範囲に従って、必要に応じて動作を追加、置換、順序変更、および/または削除してもよい。異なる特徴および/または異なる実施形態を組み合わせた実施形態も本開示の範囲内に含まれるものであり、本開示を検討した当業者には明白である。
【0071】
図7は、一実施形態に係る制御部のブロック図である。図1から図6に関して説明したユニットおよび/またはシステムおよび/または動作の1つ以上は、一実施形態では、図7の1つ以上の制御部700によって実現される。
【0072】
制御部700は、ハードウェアプロセッサ702、少なくとも1つの非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む記憶装置704、バス708、I/O(入出力)インターフェイス710、およびネットワークインターフェイス712を備える。プロセッサ702は、バス708を介して、記憶装置704、I/Oインターフェイス710、およびネットワークインターフェイス712と結合されている。ネットワークインターフェイス712は、ネットワーク714に接続可能であり、したがってプロセッサ702および記憶装置704は、ネットワーク714を介して他のデバイスと通信可能である。プロセッサ702は、記憶装置704にエンコードされたコンピュータプログラム命令を実行し、および/または記憶装置704に記憶されたデータにアクセスして、制御部700に、図1から図6に関して説明した1つ以上の機能および/または動作を実施させるように構成される。
【0073】
プロセッサ702は、中央演算処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、分散処理システム、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/または適切なハードウェア処理ユニットの1つ以上を含む。
【0074】
記憶装置704は、命令および/またはデータを非一時的に記憶するための電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、および/または半導体システム(または装置もしくはデバイス)の1つ以上を含む。例えば、記憶装置704には、半導体またはソリッドステートメモリ、磁気テープ、リムーバブルコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、リジッド磁気ディスク、および/または光ディスクが含まれる。光ディスクの例として、記憶装置704は、コンパクトディスクROM(CD-ROM)、書き換え可能コンパクトディスクR/W(CD-R/W))、および/またはデジタルビデオディスク(DVD)が含まれる。
【0075】
I/Oインターフェイス710は、外部回路と接続可能な回路である。例えば、I/Oインターフェイス710は、プロセッサ702との間で情報を通信するためのキーボード、キーパッド、マウス、トラックボール、トラックパッド、カーソル方向キー、カードリーダ、通信ポート、ディスプレイ、信号灯、プリンタ、および/またはオーディオデバイスの1つ以上を含む。一例では、I/Oインターフェイス710は省略される。
【0076】
ネットワークインターフェイス712は、制御部700をネットワーク714と通信可能にする回路であり、ネットワーク714には、1つ以上の他の制御部および/または画像取得/処理装置が接続される。例えば、ネットワークインターフェイス712は、BLUETOOTH(登録商標)、WIFI(登録商標)、WIMAX(登録商標)、GPRS、WCDMA(登録商標)等の無線ネットワークインターフェイス、またはETHERNET(登録商標)、USB、IEEE-1394等の有線ネットワークインターフェイスの1つ以上を含む。一例では、ネットワークインターフェイス712は省略される。
【0077】
制御部700は、図1から図6に関して説明した機能および/または動作の一部または全部を実行するように構成され、したがって図1から図6に関して説明した1つ以上の利点および/または効果を実現することが可能である。
【0078】
以上、当業者が本開示の態様をよりよく理解できるように、いくつかの実施形態の特徴について概説した。本明細書に記載の実施形態と同じ目的を遂行および/または同じ利点を実現するための他のプロセスおよび構造を設計または改変する基礎として、本開示を容易に使用できることを、当業者であれば理解するであろう。また、このような均等構造が本開示の趣旨および範囲から逸脱するものではなく、本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書に種々の変更、置換、改変を加えることができることを、当業者であれば理解するであろう。

図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7