(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】アーク検出装置、パワーコンディショナ、屋内配線システム、ブレーカ、太陽光パネル、太陽光パネル付属モジュール及び接続箱
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20240216BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20240216BHJP
H02H 7/26 20060101ALI20240216BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/50
H02H7/26 C
H02H7/00 F
(21)【出願番号】P 2022505982
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2021008291
(87)【国際公開番号】W WO2021182259
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2020041701
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達雄
(72)【発明者】
【氏名】木寺 和憲
(72)【発明者】
【氏名】金森 圭太
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161240(JP,A)
【文献】特開2010-231456(JP,A)
【文献】国際公開第2011/065375(WO,A1)
【文献】特開2019-184480(JP,A)
【文献】特開2011-010991(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040325(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154274(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0191145(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/50
H02H 7/26
H02H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正極と複数の機器とを接続し、前記直流電源の正極から前記複数の機器のそれぞれへと分岐している第1配線上の第1ノードと、前記直流電源の負極と前記複数の機器とを接続し前記直流電源の負極から前記複数の機器のそれぞれへと分岐している第2配線上の第2ノードとの間に接続され、前記複数の機器のそれぞれよりもインピーダンスが低い低インピーダンス回路と、
前記低インピーダンス回路を流れる電流を検出する1つの電流検出部と、
前記電流検出部により検出された電流のみに基づいて、前記第1配線又は前記第2配線におけるアークの発生を判定するアーク判定部と、を備え
、
前記第1配線は、前記第1配線における前記直流電源の正極から前記複数の機器のそれぞれへの分岐点と前記複数の機器のそれぞれとを結ぶ複数の第1分岐後経路を有し、
前記第2配線は、前記第2配線における前記直流電源の負極から前記複数の機器のそれぞれへの分岐点と前記複数の機器のそれぞれとを結ぶ複数の第2分岐後経路を有し、
前記電流検出部は、前記複数の機器のそれぞれ毎に、対応する前記第1分岐後経路及び前記第2分岐後経路のうちの一方の経路が貫通する磁気コアを有し、前記磁気コアに発生する磁界に応じて、前記複数の機器のそれぞれ毎に対応する前記一方の経路を流れる電流を検出することにより、前記低インピーダンス回路を流れる電流を検出し、
前記複数の機器のそれぞれ毎に対応する前記一方の経路には、少なくとも1つの前記第1分岐後経路と、少なくとも1つの前記第2分岐後経路とが含まれる
アーク検出装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のアーク検出装置と、
前記直流電源の出力電力を変換する変換器と、を備える
パワーコンディショナ。
【請求項3】
請求項
1に記載のアーク検出装置と、
前記第1配線と、
前記第2配線と、
屋内に設置された前記複数の機器と、を備える
屋内配線システム。
【請求項4】
請求項
1に記載のアーク検出装置を備え、
アークが発生したと判定された場合に、前記第1配線及び前記第2配線に流れる電流を遮断する
ブレーカ。
【請求項5】
請求項
1に記載のアーク検出装置を備え、
太陽光により発電する
太陽光パネル。
【請求項6】
請求項
1に記載のアーク検出装置を備え、
太陽光パネルから出力される信号の変換を行う
太陽光パネル付属モジュール。
【請求項7】
請求項
1に記載のアーク検出装置を備え、
太陽光パネルとパワーコンディショナとを接続する
接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク検出装置、パワーコンディショナ、屋内配線システム、ブレーカ、太陽光パネル、太陽光パネル付属モジュール及び接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PV(Photo Voltaic)パネル(太陽光パネル)等から配線を介して供給される直流電力をインバータ等の機器で交流電力に変換するシステムが知られている。このような配線は、外的要因又は経年劣化等によって損傷又は破断を引き起こすことが報告されている。このような配線の損傷等に起因してアーク(つまりアーク放電)が発生する場合がある。そこで、アークを検出するためのアーク検出手段が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、1つのシステム内において複数の機器が設けられ、1つの直流電源から複数の機器のそれぞれへと分岐している配線(分岐配線と呼ぶ)を介して複数の機器に電力を供給することが想定される。このとき、分岐配線の分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれについてアークが発生する場合がある。分岐配線の分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれにアーク検出手段を設ければ、分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれについてアークを検出することができるが、システムが大型化し、また、高コスト化する。
【0005】
そこで、本発明は、分岐配線において発生するアークを容易に検出できるアーク検出装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアーク検出装置の一態様は、直流電源の正極と複数の機器とを接続し、前記直流電源の正極から前記複数の機器のそれぞれへと分岐している第1配線上の第1ノードと、前記直流電源の負極と前記複数の機器とを接続し前記直流電源の負極から前記複数の機器のそれぞれへと分岐している第2配線上の第2ノードとの間に接続され、前記複数の機器のそれぞれよりもインピーダンスが低い低インピーダンス回路と、前記低インピーダンス回路を流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された電流に基づいて、アークの発生を判定するアーク判定部と、を備える。
【0007】
本発明に係るパワーコンディショナの一態様は、上記のアーク検出装置と、前記直流電源の出力電力を変換する変換器と、を備える。
【0008】
本発明に係る屋内配線システムの一態様は、上記のアーク検出装置と、前記第1配線と、前記第2配線と、屋内に設置された前記複数の機器と、を備える。
【0009】
本発明に係るブレーカの一態様は、上記のアーク検出装置を備え、アークが発生したと判定された場合に、前記第1配線及び前記第2配線に流れる電流を遮断する。
【0010】
本発明に係る太陽光パネルの一態様は、上記のアーク検出装置を備え、太陽光により発電する。
【0011】
本発明に係る太陽光パネル付属モジュールの一態様は、上記のアーク検出装置を備え、太陽光パネルから出力される信号の変換を行う。
【0012】
本発明に係る接続箱の一態様は、上記のアーク検出装置を備え、太陽光パネルとパワーコンディショナとを接続する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、分岐配線において発生するアークを容易に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る太陽光発電システムの一例を示す構成図である。
【
図2A】
図2Aは、点A1でアークが発生したときの点A1を流れる電流の周波数スペクトルを示す図である。
【
図2B】
図2Bは、点A1でアークが発生したときの点A2を流れる電流の周波数スペクトルを示す図である。
【
図2C】
図2Cは、点A1でアークが発生したときの点A3及びA4を流れる電流の周波数スペクトルを示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1の変形例1に係る太陽光発電システムの一例を示す構成図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1の変形例2に係る太陽光発電システムの一例を示す構成図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係る屋内配線システムの一例を示す構成図である。
【
図6】
図6は、本発明に係るアーク検出装置の適用例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。
【0016】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る太陽光発電システム1aの一例を示す構成図である。
【0018】
太陽光発電システム1aは、太陽光パネル41、蓄電池54、55及び56、DC/DCコンバータ51、52及び53並びにパワーコンディショナ(パワコン)60aを備える。
【0019】
太陽光パネル41は、太陽光により発電し直流電力を発生する。太陽光パネル41で発生した直流電力はパワコン60aに供給される。
【0020】
蓄電池54はDC/DCコンバータ51からの直流電力を蓄電し、蓄電池55はDC/DCコンバータ52からの直流電力を蓄電し、蓄電池56はDC/DCコンバータ53からの直流電力を蓄電する。例えば、蓄電池54、55及び56は、電気自動車又は電動自転車等に搭載されてもよいし、家庭用電気機器等への電力供給のために用いられてもよい。
【0021】
DC/DCコンバータ51、52及び53は、供給された直流電力の直流電圧を昇圧又は降圧して出力する電圧変換器である。DC/DCコンバータ51は、パワコン60aから供給された直流電力を昇圧又は降圧して、蓄電池54に出力する。DC/DCコンバータ52は、パワコン60aから供給された直流電力を昇圧又は降圧して、蓄電池55に出力する。DC/DCコンバータ53は、パワコン60aから供給された直流電力を昇圧又は降圧して、蓄電池56に出力する。
【0022】
パワコン60aは、太陽光パネル41から供給される直流電力を交流電力に変換する機能を有する。また、パワコン60aは、太陽光パネル41から供給される直流電力を交流電力に変換せずに蓄電池等に供給する機能を有する。パワコン60aは、DC/DCコンバータ61、インバータ62及びアーク検出装置10aを備える。
【0023】
DC/DCコンバータ61は、太陽光パネル41から供給された直流電力を昇圧又は降圧して、DC/DCコンバータ51、52及び53並びにインバータ62へ出力する。DC/DCコンバータ61からは直流電力が出力されるため、DC/DCコンバータ61は直流電源とみなすことができる。すなわち、DC/DCコンバータ61は、直流電源の一例である。DC/DCコンバータ61は正極と負極を有し、正極には配線110が接続され、負極には配線120が接続される。
【0024】
配線110及び120は、DC/DCコンバータ61とDC/DCコンバータ51、52及び53とを接続する。配線110は、DC/DCコンバータ61の正極と複数の機器とを接続する第1配線の一例である。配線120は、DC/DCコンバータ61の負極と複数の機器とを接続する第2配線の一例である。DC/DCコンバータ51、52及び53は、配線110及び120を介してDC/DCコンバータ61に接続される複数の機器の一例である。
【0025】
配線110は、DC/DCコンバータ61の正極からDC/DCコンバータ51、52及び53のそれぞれへと分岐している配線である。配線110におけるDC/DCコンバータ61の正極からDC/DCコンバータ51、52及び53へ分岐する点を分岐点N3とする。
【0026】
配線110において、分岐点N3とDC/DCコンバータ61の正極とを結ぶ分岐前の経路である第1分岐前経路を経路110aとする。
【0027】
配線110は、分岐点N3とDC/DCコンバータ51、52及び53のそれぞれとを結ぶ複数の第1分岐後経路を有する。配線110において、分岐点N3とDC/DCコンバータ51とを結ぶ第1分岐後経路を経路110cとし、分岐点N3とDC/DCコンバータ52とを結ぶ第1分岐後経路を経路110dとし、分岐点N3とDC/DCコンバータ53とを結ぶ第1分岐後経路を経路110bとする。
【0028】
配線120は、DC/DCコンバータ61の負極からDC/DCコンバータ51、52及び53のそれぞれへと分岐している配線である。配線120におけるDC/DCコンバータ61の負極からDC/DCコンバータ51、52及び53へ分岐する点を分岐点N4とする。
【0029】
配線120において、分岐点N4とDC/DCコンバータ61の負極とを結ぶ分岐前の経路である第2分岐前経路を経路120aとする。
【0030】
配線120は、分岐点N4とDC/DCコンバータ51、52及び53のそれぞれとを結ぶ複数の第2分岐後経路を有する。配線120において、分岐点N4とDC/DCコンバータ51とを結ぶ第2分岐後経路を経路120cとし、分岐点N4とDC/DCコンバータ52とを結ぶ第2分岐後経路を経路120dとし、分岐点N4とDC/DCコンバータ53とを結ぶ第2分岐後経路を経路120bとする。
【0031】
インバータ62は、DC/DCコンバータ61から供給された直流電力を交流電力に変換して出力する。インバータ62は、例えばMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式を採用しており、DC/DCコンバータ61から供給される直流電力の電流及び電圧を、それぞれ電力が最大となる値に調整する。例えば、インバータ62は、直流電力を電圧100V、周波数50Hz又は60Hzの交流電力に変換する。当該交流電力は、家庭用電気機器等で使用される。
【0032】
配線110及び120は分岐配線であり、分岐配線の分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれについてアークが発生する場合がある。分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれにアーク検出手段を設ければ、分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれについてアークを検出することができるが、システムが大型化し、また、高コスト化する。
【0033】
そこで、分岐配線(ここでは配線110及び120)において発生するアークを容易に検出するために、アーク検出装置10aが用いられる。
【0034】
アーク検出装置10aは、低インピーダンス回路11、電流検出部20a及びアーク判定部30を備える。
【0035】
低インピーダンス回路11は、配線110上のノードN1と、配線120上のノードN2との間に接続される回路である。ノードN1は第1ノードの一例であり、ノードN2は第2ノードの一例である。低インピーダンス回路11は、例えばコンデンサである。コンデンサは、直流成分を遮断する機能を有するため、配線110及び120を流れる信号から高周波成分のみを抽出することができる。コンデンサのキャパシタンス値は、抽出したい高周波成分の周波数等に応じて適宜決定される。低インピーダンス回路11は、DC/DCコンバータ51、52、53のそれぞれよりもインピーダンスが低い。また、低インピーダンス回路11は、DC/DCコンバータ61よりもインピーダンスが低い。これにより、配線110及び120では、低インピーダンス回路11へ向けて高周波成分が流れやすくなっている。詳細については、
図2Aから
図2Cを用いて後述する。
【0036】
電流検出部20aは、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。例えば、電流検出部20aは、ノードN1とノードN2とを結ぶ経路に流れる電流を検出することにより、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。例えば、電流検出部20aは、ノードN1とノードN2とを結ぶ経路が貫通する磁気コア21を有し、磁気コア21に発生する磁界に応じて当該経路を流れる電流(すなわち低インピーダンス回路11を流れる電流)を検出する。
【0037】
磁気コア21は、配線が貫通可能な環状形状(ここでは円環形状)となっており、自身の孔を貫通する配線に流れる電流によって、当該電流に応じた磁界がコアに発生する。なお、磁気コア21は、円環形状に限らず、矩形状の環状形状等であってもよい。
【0038】
また、電流検出部20aは、例えば、磁気コア21に発生する磁界を検出して、磁気コア21に発生する磁界に応じた電圧を発生するホール素子(図示せず)を備える。ホール素子が発生する電圧は、磁気コア21に発生した磁界、つまり、磁気コア21を貫通する経路を流れる電流を示す信号としてアーク判定部30に入力される。
【0039】
アーク判定部30は、例えばマイコン(マイクロコントローラ)により実現される。マイコンは、プログラムが格納されたROM、RAM、プログラムを実行するプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)、タイマ、A/D変換器及びD/A変換器等を有する半導体集積回路等である。なお、アーク判定部30は、A/D変換器、論理回路、ゲートアレイ及びD/A変換器等で構成される専用の電子回路によってハードウェア的に実現されてもよい。
【0040】
アーク判定部30は、電流検出部20aにより検出された電流に基づいて、アークの発生を判定する。例えば、アーク判定部30は、電流検出部20aにより検出された電流を周波数分析することで配線110又は120におけるアークの発生を判定する。アークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流には、アークに起因する周波数成分が含まれており、当該周波数成分を検出することでアークの発生を判定することができる。アーク判定部30がアークが発生したと判定した場合、配線110及び120のどこかにアークが発生したことがわかる。つまり、1つの電流検出部20a(例えば磁気コア21)のみで、分岐配線(ここでは配線110及び120)におけるアークの発生を検出できる。
【0041】
例えば、配線110における点A1でアークが発生したときに、アークの発生により生じる高周波成分が低インピーダンス回路11へ向けて流れやすくなっていることを
図2Aから
図2Cを用いて説明する。
【0042】
図2Aは、点A1でアークが発生したときの点A1を流れる電流の周波数スペクトルを示す図である。点A1は、経路110c上の点である。具体的には、点A1は、経路110cにおけるパワコン60aとDC/DCコンバータ51とを結ぶ経路上の点である。
【0043】
図2Bは、点A1でアークが発生したときの点A2を流れる電流の周波数スペクトルを示す図である。点A2は、ノードN1とノードN2とを結ぶ経路上の点である。すなわち、点A2を流れる電流は、低インピーダンス回路11を流れる電流となる。
【0044】
図2Cは、点A1でアークが発生したときの点A3及びA4を流れる電流の周波数スペクトルを示す図である。点A3は、経路110d上の点であり、点A4は、経路110b上の点である。
【0045】
点A1においてアークが発生したため、点A1では、
図2Aに示されるようなアークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流の周波数スペクトルが計測される。
【0046】
図2Bに示されるように、点A2でも、
図2Aに示されるようなアークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流の周波数スペクトルと同じような周波数スペクトルが計測される。これは、点A1で発生したアークによる高周波成分が分岐点N3において経路110aへ向かい、ノードN1において低インピーダンス回路11へ向かうためである。
【0047】
一方で、
図2Cに示されるように、点A3及びA4では、
図2Aに示されるようなアークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流の周波数スペクトルが計測されない。これは、DC/DCコンバータ52及び53のインピーダンスが低インピーダンス回路11のインピーダンスよりも高く、分岐点N3において高周波成分が経路110d及び110bに流れにくくなっているためである。
【0048】
このように、点A1で発生したアークにより生じる高周波成分がインピーダンスの低い低インピーダンス回路11へ向けて流れ、インピーダンスの高いDC/DCコンバータ52、53及び61へは流れにくくなっていることがわかる。
【0049】
例えば、他の分岐後経路でアークが発生した場合であっても、アークの発生により生じる高周波成分は、インピーダンスの高いDC/DCコンバータへは流れにくく、インピーダンスの低い低インピーダンス回路11へ向けて流れやすくなっている。
【0050】
なお、ノードN1が経路110a上のノードであり、ノードN2が経路110b上のノードである例について説明したが、実施の形態1では、ノードN1は、経路110b、110c又は110d上のノードであってもよく、ノードN2は、経路120b、120c又は120d上のノードであってもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態に係るアーク検出装置10aは、直流電源(例えばDC/DCコンバータ61)の正極と複数の機器(例えばDC/DCコンバータ51、52及び53)とを接続し、直流電源の正極から複数の機器のそれぞれへと分岐している第1配線(例えば配線110)上の第1ノード(例えばノードN1)と、直流電源の負極と複数の機器とを接続し直流電源の負極から複数の機器のそれぞれへと分岐している第2配線(例えば配線120)上の第2ノード(例えばノードN2)との間に接続され、複数の機器のそれぞれよりもインピーダンスが低い低インピーダンス回路11と、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する電流検出部20aと、電流検出部20aにより検出された電流に基づいて、アークの発生を判定するアーク判定部30と、を備える。
【0052】
これによれば、第1配線及び第2配線の分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれ(例えば、経路110a、110b、110c、110d、120a、120b、120c及び120d)のどこでアークが発生したとしても、アークの発生により生じる高周波成分は、複数の機器のそれぞれよりもインピーダンスが低い低インピーダンス回路11へ向けて流れる。このため、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する電流検出部20aにより検出された電流に基づいてアークを検出できる。つまり、分岐配線の分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれにアーク検出手段を設けなくても、分岐配線において発生するアークを検出できる。すなわち、システムを大型化したり、高コスト化したりしなくてもよく、1つの電流検出部20aを用いて、分岐配線において発生するアークを容易に検出できる。例えば、アークの検出された場合、当該検出結果に基づいて、DC/DCコンバータ61及びインバータ62を停止したり、各配線に設けられたブレーカ等(図示せず)を操作したりして、各配線を流れる電流を遮断することができる。
【0053】
例えば、電流検出部20aは、第1ノードと第2ノードとを結ぶ経路に流れる電流を検出することにより、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出してもよい。
【0054】
これによれば、電流検出部20aは、第1ノードと第2ノードとを結ぶ経路に設けられた低インピーダンス回路11を流れる電流を検出しやすくなる。
【0055】
本実施の形態に係るパワコン60aは、アーク検出装置10aと、直流電源の出力電力を変換する変換器(例えばインバータ62)と、を備える。
【0056】
これによれば、分岐配線において発生するアークを容易に検出できるパワコン60aを提供できる。
【0057】
(実施の形態1の変形例1)
実施の形態1の変形例1では、電流検出部が分岐前経路である経路110a又は120aを流れる電流を検出する例について説明する。
【0058】
図3は、実施の形態1の変形例1に係る太陽光発電システム1bの一例を示す構成図である。
【0059】
太陽光発電システム1bは、パワコン60aの代わりにパワコン60bを備える点が、実施の形態1に係る太陽光発電システム1aと異なる。その他の点については、実施の形態1におけるものと同じであるため、説明は省略する。
【0060】
パワコン60bは、太陽光パネル41から供給される直流電力を交流電力に変換する機能を有する。また、パワコン60bは、太陽光パネル41から供給される直流電力を交流電力に変換せずに蓄電池等に供給する機能を有する。パワコン60bは、アーク検出装置10aの代わりにアーク検出装置10bを備える点が、実施の形態1に係るパワコン60aと異なる。その他の点については、実施の形態1におけるものと同じであるため、説明は省略する。
【0061】
アーク検出装置10bは、低インピーダンス回路11、電流検出部20b及びアーク判定部30を備える。低インピーダンス回路11及びアーク判定部30については、実施の形態1におけるものに対応しているため、説明は省略する。
【0062】
電流検出部20bは、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。例えば、電流検出部20bは、経路110a又は110bを流れる電流を検出することにより、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。具体的には、電流検出部20bは、経路110aにおけるノードN1と分岐点N3とを結ぶ経路又は経路110bにおけるノードN2と分岐点N4とを結ぶ経路を流れる電流を検出する。ここでは、例えば、電流検出部20bは、経路110a(具体的には、経路110aにおけるノードN1と分岐点N3とを結ぶ経路)が貫通する磁気コア21を有し、磁気コア21に発生する磁界に応じて当該経路を流れる電流(すなわち低インピーダンス回路11を流れる電流)を検出する。
【0063】
例えば、配線110における点B1でアークが発生したときに、アークの発生により生じる高周波成分が低インピーダンス回路11へ向けて流れやすくなっており、経路110aを流れる電流を検出することでアークを検出できることを
図2Aから
図2Cを用いて説明する。なお、
図2Aから
図2Cにおける点A1は点B1に、点A2は点B2に、点A3は点B3に、点A4は点B4に読み替えることができる。
【0064】
点B1は、経路110c上の点である。具体的には、点B1は、経路110cにおけるパワコン60bとDC/DCコンバータ51とを結ぶ経路上の点である。点B2は、経路110aにおけるノードN1と分岐点N3とを結ぶ経路上の点である。点B3は、経路110d上の点であり、点B4は、経路110b上の点である。
【0065】
点B1においてアークが発生したため、点B1では、
図2Aに示されるようなアークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流の周波数スペクトルが計測される。
【0066】
図2Bに示されるように、点B2でも、
図2Aに示されるようなアークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流の周波数スペクトルと同じような周波数スペクトルが計測される。これは、点B1で発生したアークによる高周波成分が分岐点N3において経路110aへ向かい、点B2を通過し、ノードN1において低インピーダンス回路11へ向かうためである。
【0067】
一方で、
図2Cに示されるように、点B3及びB4では、
図2Aに示されるようなアークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流の周波数スペクトルが計測されない。これは、DC/DCコンバータ52及び53のインピーダンスが低インピーダンス回路11のインピーダンスよりも高く、分岐点N3において高周波成分が経路110d及び110bに流れにくくなっているためである。
【0068】
このように、点B1で発生したアークにより生じる高周波成分がインピーダンスの低い低インピーダンス回路11へ向けて流れ、インピーダンスの高いDC/DCコンバータ52、53及び61へは流れにくくなっていることがわかる。また、経路110a(具体的には、経路110aにおけるノードN1と分岐点N3とを結ぶ経路)を流れる電流を検出することでアークを検出できることがわかる。
【0069】
例えば、他の分岐後経路でアークが発生した場合であっても、アークの発生により生じる高周波成分は、インピーダンスの高いDC/DCコンバータへは流れにくく、インピーダンスの低い低インピーダンス回路11へ向けて流れやすくなっている。
【0070】
実施の形態1の変形例1では、経路110aにおけるノードN1と分岐点N3とを結ぶ経路、経路110b、110c若しくは110d、又は、経路120aにおけるノードN2と分岐点N4とを結ぶ経路、経路120b、120c若しくは120dにおいて発生するアークを検出できる。
【0071】
実施の形態1では、ノードN1は、経路110b、110c又は110d上のノードであってもよく、ノードN2は、経路120b、120c又は120d上のノードであってもよいと説明したが、実施の形態1の変形例1では、ノードN1は、経路110a上のノードであり、ノードN2は、経路120a上のノードであることを要する。高周波成分が、電流検出部20bによる電流の検出が行われる経路110a又は経路120aを流れるようにするためである。
【0072】
以上説明したように、第1ノード(例えばノードN1)は、第1配線(例えば配線110)における直流電源(例えばDC/DCコンバータ61)の正極から複数の機器(例えばDC/DCコンバータ51、52及び53)のそれぞれへの分岐点N3と直流電源の正極とを結ぶ第1分岐前経路(例えば経路110a)上のノードである。第2ノード(例えばノードN2)は、第2配線(例えば配線120)における直流電源の負極から複数の機器のそれぞれへの分岐点N4と直流電源の負極とを結ぶ第2分岐前経路(例えば経路120a)上のノードである。電流検出部20bは、第1分岐前経路又は第2分岐前経路を流れる電流を検出することにより、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。
【0073】
このように、電流検出部20bは、第1分岐前経路又は第2分岐前経路を流れる電流を検出することにより、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出してもよい。
【0074】
(実施の形態1の変形例2)
実施の形態1の変形例2では、電流検出部が分岐後経路である経路110b、110c、110d、120b、120c又は120dを流れる電流を検出する例について説明する。
【0075】
図4は、実施の形態1の変形例2に係る太陽光発電システム1cの一例を示す構成図である。
【0076】
太陽光発電システム1bは、パワコン60aの代わりにパワコン60cを備える点が、実施の形態1に係る太陽光発電システム1aと異なる。その他の点については、実施の形態1におけるものと同じであるため、説明は省略する。
【0077】
パワコン60cは、太陽光パネル41から供給される直流電力を交流電力に変換する機能を有する。また、パワコン60cは、太陽光パネル41から供給される直流電力を交流電力に変換せずに蓄電池等に供給する機能を有する。パワコン60cは、アーク検出装置10aの代わりにアーク検出装置10cを備える点が、実施の形態1に係るパワコン60aと異なる。その他の点については、実施の形態1におけるものと同じであるため、説明は省略する。
【0078】
アーク検出装置10cは、低インピーダンス回路11、電流検出部20c及びアーク判定部30を備える。低インピーダンス回路11及びアーク判定部30については、実施の形態1におけるものに対応しているため、説明は省略する。
【0079】
電流検出部20cは、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。例えば、電流検出部20cは、DC/DCコンバータ51、52及び53のそれぞれ毎に、対応する第1分岐後経路及び第2分岐後経路のうちの一方の経路を流れる電流を検出することにより、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。具体的には、電流検出部20cは、DC/DCコンバータ51に対応する経路110c及び120cのうちの一方の経路を流れる電流を検出し、DC/DCコンバータ52に対応する経路110d及び120dのうちの一方の経路を流れる電流を検出し、DC/DCコンバータ53に対応する経路110b及び120bのうちの一方の経路を流れる電流を検出する。ここでは、例えば、電流検出部20cは、DC/DCコンバータ51、52及び53のそれぞれ毎に対応する第1分岐後経路及び第2分岐後経路のうちの一方の経路として経路110c、110d及び120bが貫通する磁気コア21を有し、磁気コア21に発生する磁界に応じて経路110c、110d及び120bを流れる電流(すなわち低インピーダンス回路11を流れる電流)を検出する。
【0080】
例えば、配線110における点C1でアークが発生したときに、アークの発生により生じる高周波成分が低インピーダンス回路11へ向けて流れやすくなっており、経路110c、110d及び120bを流れる電流を一括して検出することでアークを検出できることを
図2Aから
図2Cを用いて説明する。なお、
図2Aから
図2Cにおける点A1は点C1に、点A2は点C2に、点A3は点C3に、点A4は点C4に読み替えることができる。
【0081】
点C1は、経路110c上の点である。具体的には、点C1は、経路110cにおけるパワコン60cとDC/DCコンバータ51とを結ぶ経路上の点である。点C2は、経路110c(具体的にはパワコン60c内の経路110c)上の点である。点C3は、経路110d上の点であり、点C4は、経路110b上の点である。
【0082】
点C1においてアークが発生したため、点C1では、
図2Aに示されるようなアークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流の周波数スペクトルが計測される。
【0083】
図2Bに示されるように、点C2でも、
図2Aに示されるようなアークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流の周波数スペクトルと同じような周波数スペクトルが計測される。これは、点C1で発生したアークによる高周波成分が点C2を通過し、分岐点N3において経路110aへ向かい、ノードN1において低インピーダンス回路11へ向かうためである。
【0084】
一方で、
図2Cに示されるように、点C3及びC4では、
図2Aに示されるようなアークの発生により生じる高周波成分が重畳した電流の周波数スペクトルが計測されない。これは、DC/DCコンバータ52及び53のインピーダンスが低インピーダンス回路11のインピーダンスよりも高く、分岐点N3において高周波成分が経路110d及び110bに流れにくくなっているためである。
【0085】
このように、点C1で発生したアークにより生じる高周波成分がインピーダンスの低い低インピーダンス回路11へ向けて流れ、インピーダンスの高いDC/DCコンバータ52、53及び61へは流れにくくなっていることがわかる。また、経路110c、110d及び120bを流れる電流を一括して検出することでアークを検出できることがわかる。
【0086】
例えば、他の分岐後経路でアークが発生した場合であっても、アークの発生により生じる高周波成分は、インピーダンスの高いDC/DCコンバータへは流れにくく、インピーダンスの低い低インピーダンス回路11へ向けて流れやすくなっている。
【0087】
例えば、DC/DCコンバータ51、52及び53のそれぞれ毎に対応する上記一方の経路には、少なくとも1つの第1分岐後経路と、少なくとも1つの第2分岐後経路とが含まれる。ここでは、DC/DCコンバータ51、52及び53のそれぞれ毎に対応する上記一方の経路には、少なくとも1つの第1分岐後経路として、経路110c及び110dが含まれ、少なくとも1つの第2分岐後経路として、経路120bが含まれる。
【0088】
実施の形態1の変形例2では、経路110aにおけるノードN1と分岐点N3とを結ぶ経路、経路110b、110c若しくは110d、又は、経路120aにおけるノードN2と分岐点N4とを結ぶ経路、経路120b、120c若しくは120dにおいて発生するアークを検出できる。
【0089】
実施の形態1の変形例2では、実施の形態1と同じように、ノードN1は、経路110b、110c又は110d上のノードであってもよく、ノードN2は、経路120b、120c又は120d上のノードであってもよい。
【0090】
以上説明したように、第1配線(例えば配線110)は、第1配線における直流電源(例えばDC/DCコンバータ61)の正極から複数の機器(例えばDC/DCコンバータ51、52及び53)のそれぞれへの分岐点N3と複数の機器のそれぞれとを結ぶ複数の第1分岐後経路(例えば経路110b、110c及び110d)を有する。第2配線(例えば配線120)は、第2配線における直流電源の負極から複数の機器のそれぞれへの分岐点N4と複数の機器のそれぞれとを結ぶ複数の第2分岐後経路(例えば経路120b、120c及び120d)を有する。電流検出部20cは、複数の機器のそれぞれ毎に、対応する第1分岐後経路及び第2分岐後経路のうちの一方の経路が貫通する磁気コア21を有し、磁気コア21に発生する磁界に応じて、複数の機器のそれぞれ毎に対応する上記一方の経路を流れる電流を検出することにより、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。
【0091】
このように、電流検出部20cは、複数の機器のそれぞれ毎に対応する第1分岐後経路及び第2分岐後経路のうちの一方の経路を流れる電流を検出することにより、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出してもよい。
【0092】
例えば、複数の機器のそれぞれ毎に対応する上記一方の経路には、少なくとも1つの第1分岐後経路と、少なくとも1つの第2分岐後経路とが含まれていてもよい。
【0093】
例えば、第1分岐後経路及び第2分岐後経路には、大きな直流電流が流れているため、磁気コア21に磁気飽和が生じ得る。このため、アークが発生した場合、直流電流による磁気飽和によって、第1分岐後経路又は第2分岐後経路に流れる直流電流に重畳したアークによる電流(高周波成分)を正確に検出できないおそれがある。これに対して、磁気コア21を貫通する複数の機器のそれぞれ毎に対応する上記一方の経路には、流れる直流電流の向きが逆向きである第1分岐後経路及び第2分岐後経路が含まれるため、第1分岐後経路を流れる直流電流による磁界と第2分岐後経路を流れる直流電流による磁界とを相殺でき磁気飽和を防止できる。したがって、分岐配線において発生するアークを正確に検出できる。
【0094】
(実施の形態2)
実施の形態1では、アーク検出装置が太陽光発電システム(具体的にはパワコン)に備えられる例について説明したが、アーク検出装置は、屋内配線システムに備えられてもよい。これについて、
図5を用いて説明する。
【0095】
図5は、実施の形態2に係る屋内配線システム2の一例を示す構成図である。なお、
図5には、屋内配線システム2に接続された系統電源43も示している。
【0096】
系統電源43は、発電所等で生成された交流電力を供給する電源である。
【0097】
屋内配線システム2は、AC/DCコンバータ42、配線111及び121、照明器具57、58及び59並びにアーク検出装置10を備える。AC/DCコンバータ42、配線111及び121、照明器具57、58及び59並びにアーク検出装置10は、戸建て、集合住宅、ビル又は工場等の施設の屋内に設置される。
【0098】
AC/DCコンバータ42は、系統電源43から交流電力が供給され、供給された交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換器である。AC/DCコンバータ42からは直流電力が出力されるため、AC/DCコンバータ42を直流電源とみなすことができる。
【0099】
AC/DCコンバータ42は、系統電源43から供給された交流電力を直流電力に変換して、照明器具57、58及び59に出力する。AC/DCコンバータ42は正極と負極を有し、正極には配線111が接続され、負極には配線121が接続される。
【0100】
配線111及び121は、AC/DCコンバータ42と照明器具57、58及び59とを接続する。配線111は、AC/DCコンバータ42の正極と複数の機器とを接続する第1配線の一例である。配線121は、AC/DCコンバータ42の負極と複数の機器とを接続する第2配線の一例である。照明器具57、58及び59は、それぞれ、配線111及び121を介してAC/DCコンバータ42に接続される複数の機器の一例である。
【0101】
配線111は、実施の形態1における配線110と同じように、AC/DCコンバータ42の正極から照明器具57、58及び59のそれぞれへと分岐している配線である。配線121は、実施の形態1における配線120と同じように、AC/DCコンバータ42の負極から照明器具57、58及び59のそれぞれへと分岐している配線である。
【0102】
なお、複数の機器は照明器具に限らず、屋内に設置される機器であれば特に限定されない。例えば、複数の機器は、スピーカ又はマイク等であってもよい。
【0103】
配線111及び121は分岐配線であり、分岐配線の分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれについてアークが発生する場合がある。分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれにアーク検出手段を設ければ、分岐前の経路と分岐後の複数の経路のそれぞれについてアークを検出することができるが、システムが大型化し、また、高コスト化する。
【0104】
そこで、分岐配線(ここでは配線111及び121)において発生するアークを容易に検出するために、アーク検出装置10が用いられる。
【0105】
アーク検出装置10は、低インピーダンス回路11、電流検出部20及びアーク判定部30を備える。
【0106】
低インピーダンス回路11は、配線111上の第1ノードと、配線121上の第2ノードとの間に接続される回路である。低インピーダンス回路11は、実施の形態1におけるものと同じ機能を有するため説明は省略する。
【0107】
電流検出部20は、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。例えば、電流検出部20は、配線111上の第1ノードと配線121上の第2ノードとを結ぶ経路に流れる電流を検出することにより、低インピーダンス回路11を流れる電流を検出する。例えば、電流検出部20は、配線111上の第1ノードと配線121上の第2ノードとを結ぶ経路が貫通する磁気コア21を有し、磁気コア21に発生する磁界に応じて当該経路を流れる電流(すなわち低インピーダンス回路11を流れる電流)を検出する。なお、電流検出部20は、実施の形態1の変形例1のように分岐配線の分岐前の経路の電流を検出してもよいし、実施の形態1の変形例2のように分岐後の経路の電流を検出してもよい。
【0108】
アーク判定部30は、電流検出部20により検出された電流に基づいて、アークの発生を判定する。アーク判定部30は、実施の形態1におけるものと同じ機能を有するため説明は省略する。
【0109】
屋内配線システム2においても、配線111又は121において発生したアークにより生じる高周波成分は、低インピーダンス回路11に向けて流れやすくなっている。
【0110】
以上説明したように、本実施の形態に係る屋内配線システム2は、アーク検出装置10と、第1配線(例えば配線111)と、第2配線(例えば配線121)と、屋内に設置された複数の機器(例えば照明器具57、58及び59)と、を備える。
【0111】
このように、アーク検出装置10を屋内配線システム2に適用してもよく、分岐配線において発生するアークを容易に検出できる屋内配線システム2を提供できる。
【0112】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係るアーク検出装置等について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0113】
例えば、電流検出部の構成は、磁気コア21を有する構成に限らない。例えば、電流検出部は、微少な抵抗値を有する抵抗素子を有する構成であってもよい。電流が抵抗素子を流れることで抵抗素子に生じる電位差は、抵抗素子を流れる電流に相当する値となり、抵抗素子が電流センサとして機能するためである。
【0114】
例えば、上記実施の形態では、アーク検出装置が太陽光発電システム(具体的にはパワコン)及び屋内配線システムに適用される例について説明したが、適用例はこれらに限らない。本発明に係るアーク検出装置(つまり、分岐配線において発生するアークを容易に検出できるアーク検出装置)の他の適用例について
図6を用いて説明する。
【0115】
図6は、本発明に係るアーク検出装置の適用例を説明するための図である。
【0116】
本発明に係るアーク検出装置は、例えば、太陽光パネル310から配線を介して供給される直流電力を、パワコン500で交流電力に変換するシステムにおける各構成要素に適用される。ここでは、複数(例えば3つ)の太陽光パネル310が1つの配線600(ストリング)によって直列に接続されたものが複数(例えば3つ)並べられて、太陽電池アレイ300を形成している。複数の配線600は、接続箱400によってまとめられて、パワコン500へ接続される。直流電源は太陽光パネル310であり、第1配線は太陽光パネル310の正極に接続された配線600であり、第2配線は太陽光パネル310の負極に接続された配線600である。配線600は、パワコン500内において分岐している。
【0117】
例えば、配線600毎にブレーカ410が設けられており、ここでは、接続箱400内にブレーカ410が設けられている。なお、ブレーカ410は、接続箱400内に設けられなくてもよい。例えば、ブレーカ410は、接続箱400と太陽電池アレイ300との間に設けられていてもよいし、配線600毎に設けられず接続箱400とパワコン500との間に設けられていてもよい。
【0118】
太陽光パネル310は、例えば、太陽光パネル310から出力される信号の変換を行う太陽光パネル付属モジュール320を有する。太陽光パネル付属モジュール320は、例えば、太陽光パネル310毎の発電量を最適化するDC/DCコンバータである。なお、太陽光パネル310は、太陽光パネル付属モジュール320を有していなくてもよい。
【0119】
例えば、ブレーカ410がアーク検出装置を備えていてもよい。ブレーカ410は、異常が発生したと判定された場合に、配線600に流れる電流を遮断する。
【0120】
例えば、太陽光パネル310又は太陽光パネル付属モジュール320がアーク検出装置を備えていてもよい。太陽光パネル310又は太陽光パネル付属モジュール320は、アークが発生したと判定された場合に、配線600への出力を停止する。
【0121】
また、例えば、接続箱400がアーク検出装置を備えていてもよい。接続箱400は、アークが発生したと判定された場合に、例えばブレーカ410等を介して、配線600に流れる電流を遮断する。
【0122】
なお、本発明に係るアーク検出装置は、これらに限らず、アークの検出が必要なシステム全般に適用できる。
【0123】
このように、ブレーカ410は、アーク検出装置を備え、アークが発生したと判定された場合に、第1配線及び第2配線に流れる電流を遮断してもよい。また、太陽光パネル310は、アーク検出装置を備え、太陽光により発電してもよい。また、太陽光パネル付属モジュール320は、アーク検出装置を備え、太陽光パネル310から出力される信号の変換を行ってもよい。また、接続箱400は、アーク検出装置を備え、太陽光パネル310とパワコン500とを接続してもよい。
【0124】
例えば、アーク検出装置が備えるアーク判定部は、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータにおいてソフトウェア的に実現されてもよい。
【0125】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0126】
1a、1b、1c 太陽光発電システム
2 屋内配線システム
10、10a、10b、10c アーク検出装置
11 低インピーダンス回路
20、20a、20b、20c 電流検出部
21 磁気コア
30 アーク判定部
41、310 太陽光パネル
42 AC/DCコンバータ
43 系統電源
51、52、53、61 DC/DCコンバータ
54、55、56 蓄電池
57、58、59 照明器具
60a、60b、60c、500 パワコン
62 インバータ
110、111、120、121、600 配線
110a、110b、110c、110d、120a、120b、120c、120d 経路
300 太陽電池アレイ
320 太陽光パネル付属モジュール
400 接続箱
410 ブレーカ
A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、B4、C1、C2、C3、C4 点
N1、N2 ノード
N3、N4 分岐点