(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】化学蒸気および化学ガスの混合物を用いて集積回路基板を湿式処理する方法および装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
H01L21/304 651H
H01L21/304 642D
H01L21/304 642E
H01L21/304 645B
H01L21/304 651B
H01L21/304 651D
(21)【出願番号】P 2022529816
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 CN2020072396
(87)【国際公開番号】W WO2021098038
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-07
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522200937
【氏名又は名称】シャンハイ エスエヌエー エレクトロニック インフォメーション テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニ ダンシェン
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101924031(CN,A)
【文献】特開2006-026549(JP,A)
【文献】米国特許第6946399(US,B1)
【文献】米国特許第5063609(US,A)
【文献】特開平08-148464(JP,A)
【文献】特開2009-141021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0159100(US,A1)
【文献】特開2013-051356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノスケールトレンチを有する基板を湿式化学処理する方法であって、
前記基板をプロセスチャンバ内に配置することと、
対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と、高温化学ガスとの混合物で前記基板を処理することと、を含
み、
前記プロセスチャンバは、上側セクションと、中間セクションと、下側セクションとを備え、
前記上側セクションは、湿式処理中に前記中間セクションにシールされ、
前記下側セクションは、湿式処理中に前記中間セクションにシールされ、
少なくとも1つの磁気浮上回転ロッドが、前記プロセスチャンバの前記下側セクションに配置され、
前記上側セクションと少なくとも1つの蒸気入口弁とが接続され、前記蒸気入口弁は、加圧された蒸気混合物が前記プロセスチャンバに入ることを可能にし、前記蒸気混合物は、加熱温度が対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と、加熱温度が対応する液体化学物質の沸点近くの温度の高温化学ガスとを混合して成る、方法。
【請求項2】
前記対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と高温化学ガスとの混合物を生成することは、
液体化学物質をその沸点を超えて加熱して前記対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気を生成することと、
化学ガスを対応する液体化学物質の沸点近くに加熱して前記高温化学ガスを生成することと、
前記対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と
前記高温化学ガスとを混合することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と前記高温化学ガス
との混合物は、順次、前記プロセスチャンバ内に運ばれ、凝縮されて前記基板のナノスケールトレンチ表面上に所望の新鮮な湿式化学生成薄膜を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記中間セクションは、時計回りおよび反時計回りの両方に90度回転が可能である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのメガソニックトランスデューサが、前記基板の径方向に沿って前記中間セクションの外面に取り付けられる、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのメガソニックトランスデューサが、調整可能な調和周波数で変調され、異なる波で変調され、異なる電力で変調されるエネルギーを放出する、
請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセスチャンバに入る前に、前記対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と高温化学ガスとを混合すること、および、前記混合した蒸気とガスとをネブライザに通すこと、をさらに備え、
前記ネブライザは、ベンチュリ効果に基づいて設計される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
基板を湿式化学処理するためのシステムであって、
前記システムは、
プロセスチャンバを備え、
前記プロセスチャンバは、
中間セクションと、
前記中間セクションに取り外し可能にシールされる上側セクションと、
前記中間セクションに取り外し可能にシールされる下側セクションと、
前記プロセスチャンバの前記下側セクションに配置される少なくとも1つの磁気浮上回転ロッドと、
少なくとも1つの基板を保持するように設計された基板保持溝と、
前記基板の径方向に沿って前記中間セクションに取り付けられる少なくとも1つのメガソニックトランスデューサと、
前記上側セクションに接続される少なくとも1つの蒸気入口弁であって、加圧された蒸気混合物が前記プロセスチャンバに入ることを可能にする蒸気入口弁と、
前記少なくとも1つの蒸気入口弁に操作可能に取り付けられるネブライザであって、化学ガスと化学蒸気とを混合して噴霧して前記加圧された蒸気混合物を生成するように設計された前記ネブライザ
と、を備え、
前記蒸気混合物は、加熱温度が対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と、加熱温度が対応する液体化学物質の沸点近くの温度の高温化学ガスとを混合して成る、システム。
【請求項9】
対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と高温化学ガスとの混合物を使用する湿式処理およびナノスケールトレンチを有する集積回路(IC)基板のための方法であって、前記方法は、
前記基板を、上側セクション、中間セクション及び下側セクションを有するプロセスチャンバ内へ取り付けることであって、前記中間セクションは、基板の取り付け及び取り外しのため、時計回り及び半時計回りの両方に90度回転可能であ
り少なくとも1つの磁気浮上回転ロッドが、前記プロセスチャンバの前記下側セクションに配置され、前記上側セクションと少なくとも1つの蒸気入口弁とが接続され、前記蒸気入口弁は、加圧された蒸気混合物が前記プロセスチャンバに入ることを可能にし、前記蒸気混合物は、加熱温度が対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と、加熱温度が対応する液体化学物質の沸点近くの温度の高温化学ガスとを混合して成り、
前記プロセスチャンバをシールすること
であって、前記プロセスチャンバの上側セクションと中間セクションとを密封接続し、且つ前記下側セクションと中間セクションとを密封接続し、
前記プロセスチャンバを高温の窒素ガスでコンディショニングすること、
対応する液体化学物質の沸点を超える温度の化学蒸気と
高温化学ガスとの混合物を順次前記プロセスチャンバ内へ注入することであって、前記混合物がナノスケール粒子を含み、垂直に配置された前記基板上のナノスケールトレンチ構造の表面に入り、凝縮されて湿式プロセス化学薄膜を形成することと、
化学蒸気の前記混合物を循環させ、前記プロセスチャンバ内で磁気浮上ロッドを回転させて前記基板を回転させ、前記基板を均一に処理すること、
変調されたメガソニックエネルギーを用いて前記基板の脱イオン水リンスを実施すること、
溶媒イソプロピルアルコール蒸気を前記プロセスチャンバに注入し、前記基板を乾燥すること、
高温の窒素ガスにより前記プロセスチャンバ内の前記基板を乾燥させること、及び、
処理された前記基板を取り出すこと、を
含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される実施形態は、概して、ナノスケール集積回路(IC)ウェハ基板の湿式化学プロセス処理に関し、より詳細には、IC製造産業における単一のウェハ洗浄システムを、湿式化学物質および脱イオン(DI)水の消費がはるかに少なくなる、より柔軟なウェハ湿式プロセス処理で置き換え、同時に、単一のプロセスチャンバにおいてウェハ湿式プロセスのスループットを倍増させるための方法およびデバイスに関する。
【0002】
湿式化学プロセスのステップは、前世紀中半から始まるIC製造の開始以来、重要な半導体処理技術であった。これらのステップは、所定のICウェハ材料のエッチング除去をし、あらゆる前工程ステップによって導入される非金属および金属粒子の汚染物質を除去し、次のIC製造プロセスステップのための最適な表面状態を準備する役割を果たす。従来の湿式化学プロセスは、IC製造ステップ全体の30%超を占める。さらに、不適切な湿式プロセスは、基板表面の損傷、回路故障、プロセス化学物質およびDI水の大量の廃棄を引き起こす可能性があり、これはIC製品の製造歩留まりに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
物理化学理論によれば、分子は、すべての材料の最小単位である。液体態様および蒸気態様の両方において全ての材料の分子サイズは同じであるが、液体態様の分子間の距離は、蒸気態様の分子間の距離よりも小さい。言い換えれば、液体での化学物質は、蒸気での化学物質と比較して、比較的大きい分子結合力によって大きな表面張力を備える。
【0004】
現在、さらに小型化されたナノスケールの複雑なICのトポロジーにより、伝統的な純粋な液体化学の湿式プロセス方法は課題に面している。液体の湿式プロセスの化学物質の流体の表面張力に起因して、湿式化学物質は、効果的な湿式プロセス処理のためにナノスケールICのICトレンチ構造に入ることが非常に困難であり不可能でもある。蒸気化学物質は、密閉された加圧処理チャンバをさらに用いることで、これらのナノスケールのトレンチに入り得る。
【背景技術】
【0005】
熱力学の原理によれば、蒸気発生容器は、1つの重要な変数である内部温度を有しており、この変数は容器圧に影響を及ぼし得る。具体的には、容器内の液体化学物質が加熱されると、容器圧が徐々に上昇する。温度が液体化学物質の沸点より高い場合、内部の容器圧は劇的に上昇し、化学蒸気の遊離分子がより多く生成される。一定の容器容量の下では、急激に増加した容器圧はまた、内側の蒸気分子を圧縮し、液体化学物質の少量の液滴を動的に形成する。これは、特に、マランゴニ乾燥法を使用するIPAで広く行われる湿式プロセスの最後の乾燥ステップにおいて、ICウェハのナノ構造に浸透するのには、やはり適していない。その結果、大量の深刻な水跡がウェハ表面に残され、ICウェハ製造の次のステップに深刻な影響を及ぼす異なる形状の粒状群が形成される。
【0006】
大型化されたICウェハまたはフォトマスク基板の湿式プロセスのバッチ中の相互汚染を排除および最小化する能力に基づいて、単一ウェハの洗浄システムが開発された。この洗浄方法は、プロセスチャンバ内において単一の水平回転ウェハ基板(真空吸引によって中心に固定される、または、ウェハの外周の周りでチャックピンに固定される)の上方のスイングアームに取り付けられたノズルから異なる液体化学物質を噴霧することを含む。この方法およびシステムの主な欠点は、スループットが低すぎることであり、この理由のために、より多くのハードウェアコストをかけてスループットを高めるために、通常、複数のプロセスチャンバが1つのシステム内に一体となって統合される。別の欠点は、真空吸引またはチャックピンの保持構造により、ウェハ基板の裏面の洗浄を同時に完全に行うことができないことである。さらに、マランゴニ乾燥の理論的な要求水準が満たされるように基板を垂直に置くことができず、また、相当量の化学溶液およびDIリンス水を消費するので、IPAマランゴニ乾燥を効率的に行うことができない。
【0007】
したがって、求められているものは、高温の化学ガスと高温の化学蒸気との混合物を使用するIC基板の湿式プロセス処理のための方法およびデバイスである。この方法及びデバイスでは、蒸気混合物が、容易に1桁ナノメートルスケール未満のサイズに達し、ウェハ基板のナノスケールICトレンチ構造に充分に順次進入し、トレンチ表面上に有効な湿式生成化学薄膜を形成し、エッチングおよび洗浄などの湿式プロセス処理を効果的に行うことを可能にする。この方法およびデバイスでは、単一のプロセスチャンバにおけるウェハプロセスのスループットを倍増することができ、既存の湿式プロセス方法よりも消費される化学物質およびDI水の使用をはるかに少なくすることができる。結果として生じる湿式生成化学薄膜は、後に起こり得る純粋な液体化学湿式プロセスが、連続的にICトレンチ表面上において反応性化学物質を浸透させて動的に置換することを支援し得る。さらに、複数のウェハを同時に効果的に処理するための方法および装置も必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態は、化学蒸気および化学ガスの混合物を使用して、集積回路(IC)基板を湿式処理するためのデバイスおよび方法を含む。本方法は、基板をプロセスチャンバ中央部に取り付けることと、プロセスチャンバの中間セクションをその上側セクションおよび下側セクションにより閉じることと、プロセスチャンバを予め設定された温度の窒素ガスでコンディショニングすることと、化学ガスと化学蒸気との混合物をプロセスチャンバ内に順次注入することと、化学物質と化学蒸気との混合物を循環させ、プロセスチャンバ内で磁性ロッドを回転させて基板を均一に処理することと、変調され得るメガソニックエネルギーで基板の脱イオン水リンスを実行することと、溶媒イソプロピルアルコール蒸気をマランゴニIPAの乾燥に用いるプロセスチャンバに注入することと、プロセスチャンバ内の基板を加熱された窒素ガスで完全に乾燥させることと、プロセスチャンバを開き、その後湿式処理された基板を取り外すことと、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下では、本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明は、添付の図面を参照して行われ、同様の数字は、図の対応する部分を表す。
【0010】
【
図1A】
図1Aは、バッチウェハおよびダブルウェハの両者の湿式化学プロセスを示す、本開示の実施形態を示す概略図である。
【
図1B】
図1Bは、化学蒸気と化学ガスとの混合物の発生のマニホールド原理を示す、本開示の一実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、ベンチュリ効果に基づくネブライザ設計を示す、本開示の一実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態を説明するフロー図である。
【
図4】
図4は、ダブルウェハの湿式化学処理のためのプロセスチャンバの設計を示す、本開示の一実施形態の分解図である。
【
図5】
図5は、バッチウェハの湿式化学処理のためのプロセスチャンバの設計を示す、本開示の一実施形態の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の本発明の詳細な説明では、本発明の多数の詳細、実施例、および実施形態が説明される。しかしながら、本発明が記載される実施形態に限定されず、本発明がいくつかの用途のいずれかに適合され得ることは、当業者にとっては明らかかつ当然であろう。
【0012】
本開示のデバイスは、集積回路(IC)基板の湿式化学処理のための方法およびデバイスとして使用され得、以下の要素を備え得る。存在し得る構成要素のこのリストは、例示的なものにすぎないことが意図されており、本願のデバイスをこれらの要素のみに限定するために、このリストが用いられることは意図されない。本開示に関連する当業者は、本デバイスの本質的な機能または動作を変更することなく、本開示内で置換され得る同等の要素が存在することを理解できるであろう。
【0013】
本開示の様々な要素は、以下の例示的な態様において関連し得る。様々な要素の間の関係の範囲または性質を限定することは意図されておらず、以下の実施例は例示的な実施例としてのみ提示されている。
【0014】
例として
図1A-
図5を参照すると、本発明のいくつかの実施形態は、化学蒸気と化学ガスとの混合物を使用して集積回路(IC)基板を湿式処理するための方法およびデバイスを含む。例えば、
図3で説明されるように、全体のプロセスは、基板(ウェハまたはFPD(フラットパネルディスプレイ))をプロセスチャンバ内へ取り付けること(401)、プロセスチャンバを閉じること(402)、プロセスチャンバを高温の窒素ガス(N
2)によりコンディショニングすること(403)、化学ガスおよび化学蒸気の混合物をプロセスチャンバ内へ注入すること(404)、化学蒸気の混合物を循環させ、チャンバ内で磁気ロッドを回転させ、基板を均一に処理すること(405)、変調され得るメガソニックエネルギーを用いて基板を脱イオン水でリンスすること(406)、全ての追加的な必要なプロセスステップを完了すること(407)、必要に応じて403~406のステップを繰り返すこと、マランゴニIPA乾燥を行うために、溶媒イソプロピルアルコール(IPA)蒸気を処理チャンバ内に注入すること(408)、高温の窒素ガス(N
2)でプロセスチャンバ内の基板を完全に乾燥させること(409)、及び、湿式処理された基板を取り外すこと(410)、を含んでもよい。
【0015】
図1Aに示すように、本開示のシステムは、湿式化学処理のために少なくとも1つのウェハ基板110を保持するように設計されたウェハ保持溝112を有するプロセスチャンバ111を含み得る。少なくとも1つのウェハ基板110は、処理中に基板が互いに接触するのを防止するために、櫛状の保持ウェハ溝112のセットによって保持され得る。少なくとも1つのまたは複数のメガソニックトランスデューサ120が、処理チャンバ111に操作可能に取り付けられ得る。少なくとも1つの蒸気入口弁117は、プロセスチャンバ111に接続されてもよく、加圧された蒸気は、少なくとも1つの蒸気入口弁117を通してプロセスチャンバ111に進入してもよい。少なくとも1つの三方弁118は、少なくとも1つの蒸気入口弁117への接続と直列に操作可能に接続されてもよく、各三方弁118は、その対応する化学蒸気及び化学ガスの混合マニホールド200に操作可能に接続される。三方弁118は、コンピュータ化されたシステムコントローラによって制御されてもよい。ウェハ基板110の湿式プロセスに適用される化学蒸気及び化学ガスの異なる種類の数に応じて、化学蒸気及び化学ガスのマニホールド200の数は変化し得る。また、プロセスチャンバ111は、それに取り付けられるドレインを有してもよく、このドレインは、イソプロピルアルコール(IPA)乾燥ドレイン弁115および廃棄化学薬品ドレイン弁114と操作可能に接続されてもよい。IPA乾燥ドレイン弁115は、IPA乾燥計量ポンプ116に動作可能に接続されてもよい。IPAドレイン計量ポンプ116およびIPA乾燥ドレイン弁115は、IPAマランゴニ乾燥プロセス中に制御され、プロセスチャンバ111内のプロセス圧力も制御し得る。
【0016】
実施形態では、プロセスチャンバ圧力トランスデューサ113もまた、プロセスチャンバ111に操作可能に接続されてもよく、圧力トランスデューサ113は、プロセスチャンバ圧力の監視、及び、電気アナログ信号を介して、当技術分野で公知かつ不図示のコンピュータ化されたシステムコントローラへのフィードバックの提供をするために使用されてもよい。システムの構成要素は一体になって、例えば
図1Aに示すように、化学蒸気の混合物をプロセスチャンバ111に入れてウェハ基板110に塗布する。化学物質が蒸気状態でプロセスチャンバ111に入るので、化学物質はウェハ基板110上のナノスケールトレンチ構造に充分に入ることが可能となる。
【0017】
弁117は、蒸気がプロセスチャンバ111に入れるためのものとして上記で説明されているが、これらの弁117は、DIリンス水の注入やプロセス窒素のパージのために使用されてもよい。
【0018】
図1Bは、化学蒸気/ガスのマニホールド200を示す例示的な図を示す。
図1Bに示すように、液体化学物質(複数可)、プロセス窒素、および化学ガス(複数可)の混合物は、それらのそれぞれの供給源からマニホールドに入ってもよく、化学ガスおよび化学蒸気の混合物は、プロセスチャンバ111内で使用されるためにマニホールド200から出てもよい。具体的には、化学ガス(複数可)及び化学蒸気は、化学蒸気の更なるネブライザ237内で組み合わされて混合され得る。
図2に示すように、化学蒸気ネブライザ237は、ベンチュリ効果に基づく構造を有してもよい。したがって、化学ガス(複数可)は、化学ガス入口ポート301を介してネブライザ237に入ってもよく、化学蒸気(複数可)は、化学蒸気入口ポート300を介してネブライザ237に入ってもよい。化学ガス(複数可)及び化学蒸気(複数可)は、化学蒸気混合物交差部302で混合されてもよく、ネブライザの中間の小さめの分岐浴部内に真空を生成し、化学蒸気をネブライザ内に吸い込み、高流速で共振壁241に向かって高速で一緒に流し、ナノスケールのネブライズされた蒸気粒子となるように粉砕する。そして、蒸気粒子は、O字形混合物出口フィッティング303を通ってネブライザ237を出て、垂直管路242に入る。プロセスチャンバ111内で使用される所望の化学蒸気混合物は、化学蒸気混合物出口制御弁243を通って出る。過剰に圧力が加わった蒸気は、化学蒸気マニホルドパージベント弁244を通って排出され、凝縮化学物質は、凝縮化学物質収集制御弁250を通って凝縮化学物質回収容器249に入り、凝縮化学物質回収制御弁245を通って化学物質回収器に排出される。このネブライザの設計により、少量の液滴を破壊/遮断して、ナノスケール化学蒸気混合物のみがプロセスチャンバ111に入り、その結果、ウェハ基板110のナノスケールICトレンチ構造への浸透、および、湿式プロセスレシピで定められる湿式化学形成薄膜の形成が可能となることを保証できる。化学蒸気および化学ガスの圧力制御および流量制御により、化学蒸気混合物の流量が制御される。
【0019】
化学ガス(複数可)及び化学蒸気(複数可)は、ネブライザ237に入る前に、ネブライザ237のためにそれらを準備するプロセスを経る。
図1Bに示すように、液状化学物質は、液状化学物質供給部から液状化学物質流量計量ポンプ229および液状化学物質充填制御弁228を通って化学蒸気発生容器227に流入する。本開示のシステムの特定の実施形態に含まれる化学蒸気生成容器227の数は、必要とされる湿式プロセスのレシピに依存し得る。例えば、1つだけ(水蒸気DI蒸気およびオゾン(O
3)ガス)であってもよく、2つ(H
2O
2蒸気+NH
4OH蒸気+N
2ガスプロセス)であってもよく、またはそれ以上であってもよい。しかしながら、化学蒸気生成容器227の数にかかわらず、それらは全て同様の様式で機能し、同様の構造を有してもよい。
【0020】
化学蒸気生成容器は、液体化学物質を加熱して液体化学物質を蒸気に変化させるための液体化学物質プロセスヒータ230を含んでもよい。化学蒸気生成容器はまた、その中の温度および圧力をそれぞれ監視および制御するために、化学容器温度センサ231(例えば、熱電対またはRTD)および化学容器圧力センサ234を含む。プロセス窒素は、また、プロセス窒素供給源236から、プロセス窒素圧力調整器232およびプロセス窒素制御弁233を通り、化学蒸気発生チャンバ227に入ってもよい。化学蒸気生成チャンバ227は、容器圧力が高すぎる場合およびそのときに必要に応じて容器を充分にベントするための通気弁235をさらに含む。生成された蒸気は、蒸気出口制御弁238を通って化学水蒸気生成容器227を出て、次いで、ネブライザ237を通ってプロセスチャンバに入る前に蒸気出口フィルタ239を通過する。
【0021】
図1Bにも示すように、プロセス窒素は、供給源からプロセス窒素レギュレータ247およびプロセス窒素制御弁248を通って流れ、化学ガス供給源246からの化学ガス(複数可)と化学ガス流量コントローラ223にて混合される。化学ガス供給源246は、化学ガスの圧力を調整する化学ガス圧力調整器222に操作可能に取り付けられる。次に、化学ガスは、化学ガス温度センサ226を有する化学ガスヒータ224に入る。次に、加熱された化学ガスは、ネブライザ237を通ってプロセスチャンバに入る前に、あらゆる存在し得るナノスケール粒子を対応する化学ガスから遮断し得る化学ガスフィルタ225を通り、そして、化学ガス流制御弁240を通って進む。
【0022】
上述のように、ネブライザ237を出た後、化学蒸気混合物はプロセスチャンバ111に入る。
図4および
図5に示すように、プロセスチャンバ111は、中間セクション502に操作可能に接続された上側セクション501と、基板の取り付け/取り外しのために90度回転可能な中間セクション502と、中間セクション502に操作可能に接続された下側セクション503とを備える。実施形態では、プロセスチャンバのセクション501、502、503は、空気駆動式または電気駆動式のシリンダにより構成され得るプロセスチャンバシーリング機構504を介して、使用中に一体的にシールされてもよい。実際には、上側セクション501は、最底面においてその全周に取り付けられた上側セクションOリング505を含んでもよく、その結果、上側セクション501および中間セクション502が、一体的にシールされたときに、その間に挟まれる上側セクションOリング505を備える。同様に、下側セクション503は、最上面においてその全周に取り付けられた下側セクションOリング506を含んでもよく、その結果、下側セクション503および中間セクション502は、一体的にシールされたときに、その間に挟まれる下側セクションOリング506を備える。図示されるように、上側セクション501は、それに取り付けられる少なくとも1つの蒸気入口弁117を備えてもよく、化学蒸気は、蒸気入口弁117(複数可)を介してネブライザを通ってプロセスチャンバ111に流れるように設計される。
【0023】
図4および
図5に示すように、ウェハ保持溝112は、一体化された中間セクション502のノッチ部分によって定められ得る。ノッチ部分は、実質的にアーチ形状であってもよい。プロセスチャンバの下側セクション503は、その中に配置された少なくとも1つの磁気浮上回転ロッド121を含んでもよい。ロッド121は、ほぼすべての典型的な化学液体およびガスに耐えることができる材料(例えば、PFA、PTFEなど)によってコーティングされてもよく、ロッド121は、基板を、それらの湿式プロセス中、シールされたプロセスチャンバ内で回転させることができる。さらに、中間セクション502は、
図4および
図5に示すように、基板の取り付け/取り外しのために90度時計回りまたは反時計回りに回転可能であってもよい。これらの図に示されるように、中間セクション502は、その両側から延在する回転ロッド507を含んでもよく、その関連機構を伴う回転ロッド507は、中間セクション502全体の回転を提供してもよい。プロセスチャンバの中間セクションを90度時計回りまたは反時計回りに回転させる能力が開示されているため、業界標準の典型的なロボット構成を使用して、業界標準のウェハの前部開口統合ポッド(FOUP:フープ)への/からの、ウェハ110を中間セクション502の取り付け/取り外しをすることができる。これにより、処理済みのウェハを湿式プロセスのために容易にピックアップし、処理済みのウェハを送り返し、次のICウェハ製造プロセスの準備ができる。
【0024】
加えて、中間セクション502は、その外側表面上に取り付けられる複数のメガソニックトランスデューサバー120を有してもよい。シングルウェハまたはダブルウェハの場合、メガソニックトランスデューサバー120は、
図4に示すように、径方向に沿ってチャンバ端部に取り付けることができ、バッチウェハの場合、メガソニックトランスデューサバー120は、
図5に示すように、チャンバの中間セクションに沿ってその前部および後部に沿って取り付けることができる。メガソニックトランスデューサ120は、必要に応じて、より良好なナノスケール粒子除去のために、湿式プロセスのリンス時間中に、発明に係る調波周波数での変調、異なる波での変調、または、異なる電力での変調がなされたメガソニックエネルギーを放出するように励起されてもよい。
【0025】
プロセスチャンバ111の底側セクション503は、顧客毎に異なる廃化学物質ドレイン設備のためのマニホールド弁に操作可能に接続され得るプロセスチャンバドレイン弁114に、そしてさらに、IPA乾燥プロセス速度の制御の目的のために計量ポンプ116に操作可能に接続され得るIPA乾燥ドレイン弁115に、操作可能に取り付けられるドレインを含んでもよい。
【0026】
本開示の装置および方法は、特定の化学蒸気混合物に限定されない。それどころか、この装置および方法は、シールされたプロセスチャンバ内でIC基板の湿式プロセスのために異なる液体化学蒸気と混合するために、化学ガスのあらゆる異なる組み合わせを使用することができ、これは湿式プロセスの柔軟性を劇的に増加させる。さらに、この装置および方法は、既存のシステムおよび方法よりもはるかに少ないプロセス化学物質およびDIリンス水を利用するとともに、異なるIC湿式化学プロセス処理においてより多くのプロセス柔軟性も与える。
【0027】
例示的な化学蒸気混合物は、100度(摂氏)近くに加熱されたオゾン(O3)ガスを用いて、沸騰したDI水蒸気をさらに噴霧して、基板の一般的な有機粒子除去およびフォトレジスト剥離を行うこと、158度(摂氏)近くに加熱されたフッ化水素(HF)ガスを使用して、過酸化水素蒸気をさらに噴霧し、基板への粒子付着を防止すること、158度(摂氏)近くに加熱されたHFガスを使用して、DI水蒸気をさらに噴霧して、金属および自然酸化物シリコンエッチングおよび粒子除去を行うこと、対応する混合めっき(platting)化学物質の沸点に近くに加熱された窒素(N2)ガスを用いて、負に帯電した基板をめっきするために正に帯電しためっき化学蒸気を噴霧すること、そして、対応する混合フォトコーティング化学沸点の近くに加熱された窒素ガスを用いて、基板フォトコーティングプロセスのために加熱されたフォトレジスタ蒸気を噴霧すること、を有する。いずれの場合も、高温の蒸気化学混合物は、対応する化学蒸気と対応する化学ガスとを混合することによって生成される。これらの化学蒸気と対応する化学ガスは、化学液体を温度がその沸点を超えるまで加熱し、化学ガスをその対応する混合化学物質の沸点の近くまで加熱することによって生成され、これにより、シールされたプロセスチャンバに入る前に、対応する化学蒸気が凝縮されることを回避できる。
【0028】
本開示の方法は、化学ガスと新鮮な化学蒸気との混合物を使用しており、この混合物は、それらを再利用した液体化学物質の同等物よりも分子間の距離が大きいので、混合物は、小さなナノスケールICトレンチ構造に浸透することができる。次に、混合物は、その対応する化学湿式プロセス処理を行うために、逐次的に凝縮して湿式生成の化学薄膜を形成してもよい。上述したように、蒸気混合物は純粋な化学物質(例えば、フッ化水素(HF)ガスおよび脱イオン水蒸気)であってもよく、又、蒸気は様々な化学蒸気であってもよい。現在最も普及している湿式処理化学物質は、RCA標準洗浄レシピに基づく過酸化水素(H2O2)であり、これはSC-1(水酸化アンモニウム(NH4OH)+過酸化水素(H2O2)+DI水(H2O)の混合物)およびSC-2(塩酸HCl+過酸化水素H2O2、DI水(H2O)の混合物)からなる。SC-1は軽有機粒子除去に用いられ、SC-2は軽金属粒子除去に用いられる。他の一般的な湿式処理化学物質は、SPM(硫酸H2SO4+過酸化水素(H2O2)およびSOM(硫酸(H2SO4)+オゾン(O3)ガス)である。SPMおよびSOMの両方は、重有機汚染物質を除去するために主に使用される。さらに、従来使用されている処理化学物質は、シリコン表面への銅の付着を防止するために、液体フッ化水素(HF)を備える液体過酸化水素(H2O2)を含む。さらに、オゾン水(O3+H2O)がSPMまたはSOMを代替することで、環境のためにより良い、対応する化学廃棄物処理コストを節約し得る。例示的な化学蒸気混合物が上述されているが、他の処理化学物質の使用が考えられる。
【0029】
化学蒸気の混合物の場合、これらは、窒素ガス(N2)とともにプロセスチャンバに順次導入され、次いで、順次凝縮させ、その後、混合させて、ナノスケールICトレンチ構造の表面上に所望の化学生成の湿式プロセス化学薄膜を形成して、対応する湿式プロセス処理を効果的に行ってもよい。本発明の方法および装置は、ベンチプロセスのような現在行われている従来の湿式プロセスで液体化学物質の再利用により起こり得る相互汚染を排除するために、毎回、湿式プロセスのために新鮮な化学物質を使用している。それぞれに対応する湿式化学蒸気プロセスタイムの終了後、迅速に短時間のDI水のダウンフローリンスが続いて行われてもよく、この処理では、必要に応じて、発明に係る変調がなされたメガソニックエネルギーが適用されてもよい。プロセスチャンバの端面の中間セクションの外側で径方向を横切って取り付けられたメガソニックトランスデューサが長方形の形状であるので、両者のウェハの全ての表面は、ウェハを回転させる磁気浮上回転ロッドで死角領域なしにカバーされる。
【0030】
従来のマランゴニ乾燥法の間の少量の液滴によるデッド水マーカの形成を回避するために、本開示の装置は、新たに設計されたネブライザを含む。ネブライザは、化学蒸気混合物が湿式プロセスチャンバに入る前に配置されてもよい。
図2に示すように、ネブライザは、ベンチュリ効果に基づいて設計され得る。本開示のネブライザは、少量で存在し得るより小さい液滴を防止/破壊し、全てのプロセスレシピベースのナノスケール化学蒸気混合物が液滴なくプロセスチャンバに入ることを確実にする。その結果、化学蒸気混合物がウェハ基板上のナノスケールICトレンチ構造に浸透し、それらの表面上に湿式化学薄膜を形成し、そして、効果的に湿式化学プロセスを完了させることができる。このように、ナノスケールガスフィルタは、化学蒸気混合物の効果的な通過に影響を及ぼすことなく、同時に、存在し得るナノスケール汚染粒子を遮断および低減しながら、インラインで使用可能であり得る。ナノスケール汚染粒子は、ウェハ基板上のナノメートルICを損傷する可能性がある。
【0031】
このデバイスの構造、および、この方法のステップに起因して、本開示の方法およびデバイスは、従来のシングルウェハの洗浄方法と比較して、はるかに少ない化学物質およびDI水の消費量で、単一のプロセスチャンバにおけるプロセスのスループットを少なくとも倍増し得る。加えて、それは、デッドスポット領域(複数可)を作り出すことなく、裏面を含む基板の両面を徹底的に洗浄することができる。さらに、それは、蒸気混合物または最初に液体化学物質を伴う蒸気を用いており、全ての現在のシングルウェハ純液体化学湿式プロセス洗浄システムと比較して、はるかに良好なナノスケールICウェハ湿式プロセス結果をもたらし得る。上述のように、この方法及び装置はまた、マルチ波、マルチ調和周波数、及びマルチエネルギーの電力の変調がなされるメガソニックが付加された洗浄エネルギー技術の開示を含んでもよく、この技術は、ウェハの径方向に沿って調整可能な変調メガ‐エネルギーを放出してもよく、IC基板がプロセスチャンバ内で回転可能であることにより、全てのウェハ基板の表面領域が完全な洗浄メガソニックエネルギーで覆われることをもたらす。本方法および装置はまた、IPAマランゴニ乾燥法を利用してマランゴニ力を最大化し、いかなる水滴および粒子をウェハ基板表面から効果的に除去することも完全に可能であり得る。現在、IC製造産業において、このようなことは、全ての単一ウェハ洗浄システムに対して行うことは不可能である。
【0032】
本発明の上記の実施形態は、限定ではなく例示を目的として提示される。本発明のこれらの実施形態は、多数の特定の詳細を参照して説明されているが、当業者は、本発明が、本発明の精神から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得ることを認識するであろう。したがって、当業者は、本発明が前述の例示的な詳細によって限定されるべきではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって定義されるべきであることを理解するであろう。