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特許7437830吊り部材、及び吊り部材による蓋部材の開放方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】吊り部材、及び吊り部材による蓋部材の開放方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/04 20060101AFI20240216BHJP
   E03F 5/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
E03F5/04 A
E03F5/04 E
E03F5/04 D
E03F5/04 F
E03F5/06 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023090628
(22)【出願日】2023-06-01
(62)【分割の表示】P 2019163963の分割
【原出願日】2019-09-09
(65)【公開番号】P2023113769
(43)【公開日】2023-08-16
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】392027900
【氏名又は名称】株式会社イトーヨーギョー
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 浩
(72)【発明者】
【氏名】高岡 薫生
(72)【発明者】
【氏名】片井 寛
(72)【発明者】
【氏名】井上 了介
(72)【発明者】
【氏名】廣田 義和
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-081940(JP,A)
【文献】実開平06-053642(JP,U)
【文献】特開2001-115542(JP,A)
【文献】特開平05-213423(JP,A)
【文献】実開平07-031993(JP,U)
【文献】登録実用新案第3158293(JP,U)
【文献】登録実用新案第3132894(JP,U)
【文献】実開平06-027729(JP,U)
【文献】実開昭63-149138(JP,U)
【文献】特開2017-082510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/04
E03F 5/06
B66C 1/62
B65G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口に受け枠が設けられた側溝本体の、前記受け枠に内嵌めされ、重心点を通る幅方向線又は長手方向線よりも一端側に偏った位置に配置される1又は複数の吊り孔を有する蓋部材を開放するための吊り部材であって、
フレーム本体と、フレーム本体の下面側に取り付けられた連結部材と、フレーム本体の上面側に取り付けられた吊り掛け具とを有し、
前記フレーム本体は、前記連結部材を挿入するための挿通孔を有し、
前記連結部材は、前記挿通孔と前記吊り孔へ挿入され、前記フレーム本体の下面と前記蓋部材とを重ね合わせた状態で、前記蓋部材に前記吊り部材を連結し、
前記吊り掛け具は、前記蓋部材に連結された1つの前記吊り部材の吊り上げにより、連結後の前記蓋部材が水平状態を維持しつつ上昇するように配置されている、
吊り部材。
【請求項2】
前記吊り孔は、前記蓋部材の重心点を通る幅方向線よりも一端側に偏った位置に、複数配置されている、請求項1に記載の吊り部材。
【請求項3】
前記吊り孔は、ねじ孔を有し、
前記連結部材は、ねじ孔に対応するボルト部材である、
請求項1に記載の吊り部材。
【請求項4】
前記フレーム本体の下面と前記蓋部材とを重ね合わせた状態で連結した際、前記吊り掛け具が、前記蓋部材及び前記吊り部材の重心位置と一致する位置に配置されている、請求項1に記載の吊り部材。
【請求項5】
前記蓋部材に対する前記吊り部材の連結位置は、前記吊り部材が前記蓋部材の長手方向一端からはみ出さない位置である、請求項4に記載の吊り部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の吊り部材による、前記側溝本体の前記受け枠に内嵌めされている前記蓋部材の開放方法であって、
前記挿通孔を、前記吊り孔と対応する位置に合わせるステップと、
前記連結部材を、前記挿通孔と前記吊り孔へ挿入し、前記フレーム本体の下面と前記蓋部材とを重ね合わせた状態で連結するステップと、
前記吊り掛け具に玉掛けワイヤーを接続して前記吊り部材を吊り上げ、前記蓋部材及び前記吊り部材を、水平状態を維持しつつ上昇させるステップと、
を含む、前記蓋部材の開放方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り部材、及び吊り部材による蓋部材の開放方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路に埋設される電線共同構に使用される蓋部材には、悪戯や事故を防止するために何らかのセキュリティをかける必要がある。
側溝の蓋部材にセキュリティをかける方法としては、蓋部材を重量物として容易に持ち上がらないようにする方法、手掛かり部分が付いてない構造とする方法、蓋部材にシリンダ状などの錠前を設ける方法(例えば、特許文献1参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-162881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、蓋部材に錠前を設ける方法では、蓋部材がコスト高となるので、共同溝設備の施工コストが高騰するという欠点がある。また、多数の錠前の管理が煩雑となるので、蓋部材の開放作業に手間がかかるという欠点もある。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、蓋部材に錠前を設けなくても、セキュリティを担保できる側溝を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、蓋部材の開放を容易に行える方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 本発明の一態様は、上部開口に受け枠が設けられた側溝本体と、前記受け枠に内嵌め可能な蓋部材と、を備える側溝であって、前記蓋部材は、1又は複数の吊り孔を有し、前記吊り孔は、当該吊り孔を作用点として前記蓋部材を単体で吊り上げた場合に、当該蓋部材を自転させるモーメントが発生する位置に配置され、前記蓋部材の厚さ寸法は、前記モーメントにより傾斜しようとする前記蓋部材の端面が前記側溝本体又は隣接する他の蓋部材の端面と干渉を起こす寸法であることを特徴とする。
【0006】
本発明の側溝によれば、蓋部材の吊り孔が上記のモーメントが発生する位置に配置され、蓋部材の厚さ寸法が上記の干渉を起こす寸法であるから、管理者以外の第三者が、吊り孔を作用点として蓋部材を単体で吊り上げることができない。
従って、蓋部材に錠前を設けなくても、第三者による蓋部材の開放を防止することができ、セキュリティを担保することができる。よって、第1の目的が達成される。
【0007】
(2) 本発明の側溝において、前記側溝本体には、前記蓋部材が傾斜した場合に当該蓋部材の端面と干渉する金属製の間隔調整材を設けることが好ましい。
このようにすれば、傾斜した蓋部材が側溝本体と干渉し易くなり、第三者による蓋部材の開放をより確実に防止することができる。
【0008】
(3) 本発明の側溝において、前記受け枠に内嵌め可能な第2の蓋部材を更に備え、前記第2の蓋部材は、前記受け枠と対応する位置に形成された厚さ方向に貫通する貫通孔と、ねじ孔が前記貫通孔と同軸心に連通するナット部材と、を有することが好ましい。
第2の蓋部材は、貫通孔に挿通したボルト部材をナット部材にねじ込むことにより、専用の吊り部材を使用しなくても開放できる。従って、後述の吊り部材を用いた蓋部材(第1の蓋部材)の開放が困難な現場であっても、第2の蓋部材を先に開放してから、開いた隙間を利用して第1の蓋部材を開放できるようになる。
【0009】
(4) 本発明の別態様は、上述の側溝の蓋部材を開放する方法であって、前記吊り孔を用いて前記蓋部材の上面に吊り部材を連結するステップと、連結後の前記蓋部材及び前記吊り部材の重心位置と一致する位置に設けられた吊り掛け部を上方に吊り上げるステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の開放方法によれば、吊り孔を用いて蓋部材の上面に吊り部材を連結し、連結後の蓋部材及び吊り部材の重心位置と一致する位置に設けられた吊り掛け部を上方に吊り上げるので、蓋部材及び吊り部材が水平状態を維持しつつ上昇する。
従って、他の部材と干渉させることなく蓋部材を開放することができ、蓋部材の開放を容易に行える。よって、第2の目的が達成される。
【0011】
(5) 本発明の別態様は、上述の側溝の蓋部材を開放する方法であって、前記吊り孔を用いて前記蓋部材の上面に吊り部材を連結するステップと、前記吊り部材に設けられた一対の張り出し部をジャッキアップするステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の開放方法によれば、吊り孔を用いて蓋部材の上面に吊り部材を連結し、吊り部材に設けられた一対の張り出し部をジャッキアップするので、蓋部材及び吊り部材が水平状態を維持しつつ上昇する。
従って、他の部材と干渉させることなく蓋部材を開放することができ、蓋部材の開放を容易に行える。よって、第2の目的が達成される。
【0013】
(6) 本発明の別態様は、上述の側溝に用いられる蓋部材に関する。従って、本発明の蓋部材は、上述の側溝と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蓋部材に錠前を設けなくても、セキュリティを担保できる側溝を提供することができる。また、本発明によれば、蓋部材の開放を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】側溝を用いた共同溝設備の一例を示す斜視図である。
図2】複数の蓋部材及び間隔調整材の位置関係を示す側面図である。
図3】蓋部材の開放方法の一例を示す説明図である。
図4】連結部材の変形例を示す説明図である。
図5】吊り部材の変形例を示す説明図である。
図6】側溝の変形例を示す説明図である。
図7】第2の蓋部材を有する共同溝設備の一例を示す斜視図である。
図8】第2の蓋部材の開放方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
〔共同溝設備の全体構成〕
図1は、側溝1を用いた共同溝設備の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の共同溝設備は、長手方向Xに連続して接続される複数の側溝1と、側溝1の内部に収納されるケーブル2とを備える。
【0017】
複数の側溝1は、当該側溝1の長手方向Xが道路の縦断方向に沿うように、道路の幅方向の所定位置(例えば、幅方向端部又は幅方向中央部など)に埋設される。この場合、側溝1の幅方向Yは、道路の横断方向と一致することになる。
複数の側溝1は、当該側溝1の長手方向Xが道路の横断方向に沿うように、道路に埋設することにしてもよい。この場合、側溝1の幅方向Yは、道路の縦断方向と一致することになる。
【0018】
側溝1の内部には、複数種類のケーブル2が収容される。複数種類のケーブル2には、住居のライフラインとなる各種のケーブル(例えば、低圧又は高圧の電力線、電話線、及び光ファイバーなどの通信線)が含まれる。
図1の共同溝設備では、ケーブル2は、側溝1に収納された保護管3に挿通されているが、ケーブル2は保護管3なしで側溝1内に直に収納してもよい。なお、側溝1の収納空間に余裕がある場合は、上下水道配管やガス配管などを収納してもよい。
【0019】
〔側溝の構成〕
図1に示すように、本実施形態の側溝1は、側溝本体10と、側溝本体10の上方開口を閉塞する蓋部材20とを備える。
側溝本体10は、コンクリート製のU字溝11と、U字溝11の左右両側壁の上端面に固定されたL型鋼よりなる受け枠12とを有する。U字溝11は、プレキャストコンクリート及び現場打ちコンクリートのいずれであってもよい。受け枠12は、必ずしもL型鋼である必要はなく、U字溝11の側壁上部に形成された凹み部であってもよい。
【0020】
U字溝11の側壁の外側面には、ほぼ正方形状の窪み部13が形成されている。窪み部13は、側壁の長手方向中央部に配置されており、側壁の他の箇所よりも肉厚が薄い部分である。
従って、窪み部13をハンマーなどの工具で打ち付けると、U字溝11の側壁にケーブル2の通過窓を形成することができる。
【0021】
側溝本体10の上部開口には、間隔調整材14が設けられている。間隔調整材14は、例えばC型鋼などの金属製の部材よりなる。間隔調整材14の断面高さは、受け枠12の断面高さのほぼ半分程度である。
間隔調整材14は、その両端部を左右の受け枠12に固定することにより、左右の受け枠12を橋渡しする状態で架設されている。また、間隔調整材14は、側溝本体10の長手方向Xに所定間隔で並んだ状態となるように配列されている。間隔調整材14,14同士の所定間隔は、蓋部材20の長手方向寸法に合わせて適宜調整される。
【0022】
蓋部材20は、長方形状でかつプレキャストコンクリート製の蓋部材よりなる。蓋部材20の短辺寸法は、左右の受け枠12,12間の対向距離にほぼ等しい。従って、本実施形態の蓋部材20は、受け枠12の内側に嵌まり込む内嵌め式の蓋部材である。なお、本実施形態の蓋部材20の重量は、人力又は揚上機械で吊り上げ可能な重量であり、例えば35~150kgである。
蓋部材20の長手方向一端部には、間隔調整材14がちょうど嵌り込む断面形状の嵌合凹部21が形成されている。
【0023】
図2は、複数の蓋部材20及び間隔調整材14の位置関係を示す側面図である。
図2に示すように、蓋部材20の長手方向寸法をL1、嵌合凹部21の断面幅をW1、隣接する間隔調整材14間の長手方向距離をD1とすると、D1が(L1-W1)よりも若干大きい寸法(例えば3mm大きい寸法)となるように、間隔調整材14の配列間隔が設定されている。また、蓋部材20の厚さ寸法Tは、後述のA円及びB円の干渉が発生する寸法(例えば、60~120mm)に設定されている。
【0024】
図1に戻り、蓋部材20は、例えば貫通孔よりなる一対の吊り孔22を有する。一対の吊り孔22は、蓋部材20の重心点mを通る幅方向線23よりも一端側に偏った位置に配置されている。なお、吊り孔22の数は、1つでもよいし3つ以上でもよい。
このため、図2に仮想線で示すように、吊り孔22を作用点として蓋部材20を単体で吊り上げた場合には、蓋部材20を自転させるモーメント(力のモーメント)が発生し、当該蓋部材20が長手方向Xの水平線に対して傾斜しようとする。
【0025】
上記のモーメントにより蓋部材20が傾斜しようとすると、蓋部材20の長手方向一端面は、嵌合凹部21内の間隔調整材14に干渉し(図2のA円参照)、蓋部材20の長手方向他端面は、隣接する他の蓋部材20の一端面に干渉する(図2のB円参照)。
従って、共同溝設備の管理者以外の第三者が、吊り孔22を作用点として蓋部材20を単体で吊り上げることができない。よって、本実施形態の側溝1によれば、蓋部材20に錠前を設けなくても、第三者による蓋部材20の開放を防止することができる。
【0026】
上記の干渉に伴う蓋部材20の欠けや割れを防止するため、蓋部材20の長手方向端面には、何らかの補強対策を施すことが好ましい。
蓋部材20の長手方向端面の補強策としては、例えば、蓋部材20の長手方向端面を鋼製板でカバーする方法、蓋部材20の長手方向端面を樹脂でコーティングする方法、及び、蓋部材20の長手方向端面に高強度繊維よりなる織布を貼り付ける方法などを採用することができる。
【0027】
〔蓋部材の開放方法〕
図3は、蓋部材20の開放方法の一例を示す説明図である。
図3に示すように、本実施形態の蓋部材20を開放するには、専用の吊り部材30を用いる。吊り部材30は、複数のC型鋼を枠組みしてなるフレーム本体31と、フレーム本体31の下面側に取り付けられた連結部材32と、フレーム本体31の上面側に取り付けられた吊り掛け具33とを有する。連結部材32は、吊り孔22と対応する位置に吊り孔22と同じ数だけ設けられている。
【0028】
連結部材32は、フレーム本体31の下面から下方に突出する棒状材よりなる。棒状材は、蓋部材20の厚さ寸法Tよりも長く、先端部に掛止爪34を有する。
掛止爪34は、先端に向うに従って先細りとなる直角三角状の板辺よりなり、ロールピンによって棒状材の径方向に出退自在となっている。また、掛止爪34は、棒状材の内部に埋め込まれたバネ材により径外方向に付勢されている。
【0029】
従って、蓋部材20の吊り孔22に連結部材32を挿入しつつフレーム本体31を蓋部材20の上に載せると、連結部材32の先端部が吊り孔22を通過した時点で、掛止爪34が突出して蓋部材20の裏面を掛止する。これにより、吊り部材30と蓋部材20とを重ね合わせた状態で、両者を連結することができる。
【0030】
連結部材32の基端部はねじ部となっており、ねじ部には締め付けナット29を装着することができる。
締め付けナット29を締め付け方向に回動すれば、フレーム本体31が蓋部材20の上面に密着して両者が強固に一体化され、連結後の蓋部材20及び吊り部材30の吊り上げ作業が容易になる。
【0031】
吊り掛け具33は、玉掛けワイヤーなどを引っ掛けるための金属製のリング材又はフック材よりなる。吊り掛け具33は、連結後の蓋部材20及び吊り部材30の重心位置Mと一致する位置に配置されている。
このため、吊り掛け具33に玉掛けワイヤーを接続して吊り部材30を吊り上げると、蓋部材20及び吊り部材30が水平状態を維持しつつ上昇する。従って、図2のA円及びB円の干渉を発生させることなく、蓋部材20を開放することができる。
【0032】
なお、蓋部材20に対する吊り部材30の連結位置は、図3(a)に示すように、吊り部材30が蓋部材20の長手方向一端からはみ出す位置であってもよいし、図3(b)に示すように、吊り部材30が蓋部材20からはみ出さない位置であってもよい。
【0033】
〔連結部材の変形例〕
図4は、連結部材32の変形例を示す説明図である。
図4(a)の例では、蓋部材20の上面側に金属製のインサート部材24が埋設されている。インサート部材24は、重心点mを通る幅方向線23(図1参照)よりも一端側に偏った位置に配置されている。このように、蓋部材20の吊り孔22は、インサート部材24のねじ孔で構成されていてもよい。
【0034】
蓋部材20の吊り孔22がインサート部材24のねじ孔である場合、連結部材32は、ねじ孔に対応するボルト部材32Aを採用すればよい。なお、フレーム本体31のフランジ部には、ボルト部材32Aの挿通孔が形成されている。
この場合、フレーム本体31の挿通孔を蓋部材20のインサート部材24に位置合わせしてから、ボルト部材32Aを蓋部材20のインサート部材24にねじ込むことにより、吊り部材30を蓋部材20に連結することができる。
【0035】
図4(b)の例では、蓋部材20の吊り孔22が、断面が土星状に形成された土星孔22Aよりなる。このように、蓋部材20の吊り孔22は、断面丸形の貫通孔ではなく、土星孔22Aであってもよい。
【0036】
蓋部材20の吊り孔22が土星孔22Aである場合、連結部材32は、径方向外側に突出する一対の抜け止め片35を有する棒状材を採用すればよい。なお、フレーム本体31のフランジ部にも、土星孔が形成されている。
この場合、フレーム本体31の土星孔を蓋部材20の土星孔22Aに位置合わせしてから、連結部材32を蓋部材20の土星孔22Aに挿通して90度回転させることにより、吊り部材30を蓋部材20に連結することができる。
【0037】
〔吊り部材の変形例〕
図5は、吊り部材30の変形例を示す説明図である。
図5の例では、吊り部材30のフレーム本体31に、一対の張り出し部36,36が設けられている。一対の張り出し部36,36は、吊り部材30を連結後の蓋部材20とともにジャッキアップするための部材であり、蓋部材20の長手方向端部から更に外側に突出している。
【0038】
一対の張り出し部36,36を同時にジャッキアップすると、蓋部材20及び吊り部材30が水平状態を維持しつつ上昇する。従って、図2のA円及びB円の干渉を発生させることなく、蓋部材20を開放することができる。
一対の張り出し部36,36をジャッキアップするための部材は、例えば、図5(a)に示すパンタグラフ式ジャッキ37や、図5(b)に示すバール38などの梃子の原理を利用した工具を採用すればよい。
【0039】
図5(c)に示す例では、ねじ孔が上下方向を向くようにセットされたナット部材39が一対の張り出し部36,36に装着されている。
この場合、ナット部材39の上から比較的長尺のボルト部材39Aをねじ込み、ボルト部材39Aの先端が他の蓋部材20に到達した後もねじ込みを続けることにより、蓋部材20及び吊り部材30が水平状態を維持しつつ上昇する。
【0040】
なお、図5では、張り出し部36,36が側溝1の長手方向Xに張り出しているが、一対の張り出し部36,36は、側溝1の幅方向Yに張り出す部材であってもよい。
【0041】
〔蓋部材の変形例〕
図6は、側溝1の変形例を示す説明図である。具体的には、図6(a)は蓋部材20の平面図であり、図6(b)は側溝1の正面図である。
図6(a)に示すように、蓋部材20の吊り孔22は、蓋部材20の重心点mを通る長手方向線25よりも一端側に偏った位置に配置されている。なお、吊り孔22の数は、1つ又は2つでもよいし4つ以上でもよい。
【0042】
図6(b)に示すように、側溝本体10の上部開口には、一対の間隔調整材15,15が設けられている。間隔調整材15は、例えばC型鋼などの金属製の部材よりなる。間隔調整材15の断面高さは、受け枠12の断面高さのほぼ半分程度である。
一対の間隔調整材15,15は、左右の受け枠12のフランジ部の上面にそれぞれ固定されている。蓋部材20の幅方向両端部には、間隔調整材15がちょうど嵌り込む断面形状の嵌合凹部26が形成されている。
【0043】
蓋部材20の幅方向寸法をL2、嵌合凹部26の断面幅をW2、一対の間隔調整材15,15間の幅方向距離をD2とすると、D2が(L2-2×W2)よりも若干大きい寸法(例えば3mm大きい寸法)となるように、間隔調整材15が位置決めされている。また、蓋部材20の厚さ寸法Tは、後述の干渉が発生する寸法(例えば、60~120mm)に設定されている。
【0044】
上記の通り、吊り孔22は、長手方向線25よりも一端側(図例では左側)に偏った位置に配置されている。
このため、図6(b)に仮想線で示すように、吊り孔22を作用点として蓋部材20を単体で吊り上げた場合には、蓋部材20を自転させるモーメント(力のモーメント)が発生し、当該蓋部材20が幅方向Yの水平線に対して右下がりに傾斜しようとする。
【0045】
上記のモーメントにより蓋部材20が傾斜しようとすると、蓋部材20の幅方向左端面は、左側の嵌合凹部26内の間隔調整材15に干渉し、蓋部材20の幅方向右端面は、右側の受け枠12に干渉する。
従って、共同溝設備の管理者以外の第三者が、吊り孔22を作用点として蓋部材20を単体で吊り上げることができない。よって、変形例の側溝1の場合も、蓋部材20に錠前を設けなくても、第三者による蓋部材20の開放を防止することができる。
【0046】
上記の干渉に伴う蓋部材20の欠けや割れを防止するため、蓋部材20の幅方向端面には、何らかの補強対策を施すことが好ましい。
蓋部材20の幅方向端面の補強策としては、例えば、蓋部材20の幅方向端面を鋼製板でカバーする方法、蓋部材20の幅方向端面を樹脂でコーティングする方法、及び、蓋部材20の幅方向端面に高強度繊維よりなる織布を貼り付ける方法などを採用することができる。
【0047】
図6の蓋部材20を開放したい場合には、図3図5に示す専用の吊り部材30を用いた開放方法と概ね同様の方法を使用すればよい。
具体的には、蓋部材20に吊り部材30を連結し、両者の重心位置Mと一致する位置にある吊り掛け具33を介して両者を吊り上げるか、吊り部材30の張り出し部36をジャッキアップすればよい。
【0048】
〔開放を容易化するための蓋部材〕
図7は、第2の蓋部材40を有する共同溝設備の一例を示す斜視図である。
図7に示す共同溝設備は、上述の第1の蓋部材20の他に第2の蓋部材40を有する。第2の蓋部材40は、第1の蓋部材20の間の適所に設置される。
【0049】
第2の蓋部材40は、長手方向寸法が第1の蓋部材20よりも小さい蓋部材よりなり、幅方向両端部に厚さ方向に貫通する貫通孔41を有する。もっとも、第2の蓋部材40の長手方向寸法は、第1の蓋部材20と同寸とするなど特に限定されるものではない。
蓋部材40の貫通孔41は、受け枠12と対応する位置に配置されており、蓋部材40の内部の下面側にはナット部材42が埋設されている。ナット部材42のねじ孔は、貫通孔41と同軸心に連通している。
【0050】
図8は、第2の蓋部材40の開放方法の一例を示す説明図である。
図8に示すように、蓋部材40を開放するには、左右の貫通孔41に比較的長尺のボルト部材43を挿通してナット部材42にねじ込む。
そして、ボルト部材43の先端が受け枠12に到達した後もねじ込みを続けることにより、蓋部材40が水平状態を維持しつつ上昇する。従って、吊り部材30を使用しなくても、蓋部材40を開放することができる。
【0051】
第2の蓋部材40によれば、ボルト部材43のねじ込みによって上昇するので、受け枠12との間に砂利などが噛み込んでいても、蓋部材40を容易に開放することができる。
従って、吊り部材30を用いた第1の蓋部材20の開放が困難な現場であっても、第2の蓋部材40を先に開放してから、開いた隙間を利用して第1の蓋部材20を開放できるようになるという利点がある。
【0052】
第2の蓋部材40の幅方向両端面には、手掛かり凹部44を形成することが好ましい。この場合、手掛かり凹部44が露出した時点でボルト部材43のねじ込み作業を停止し、手掛かり凹部44に係止した工具などで蓋部材40を開放することができる。
このため、ボルト部材43のねじ込み作業を短縮化でき、蓋部材40をより簡便に開放できるようになる。なお、手掛かり凹部44の形成箇所は、蓋部材40の長手方向量端面であってもよい。
【0053】
上記のように、第2の蓋部材40を開放してから第1の蓋部材20を開放すれば、専用の吊り部材30を使用しようしなくても第1の蓋部材20を開放することができる。
従って、図7の共同溝設備において、第1の蓋部材20を吊り孔22なしの単純な板構造とし、第1の蓋部材20を当初から開放するのを不能な構造としてもよい。
【0054】
〔その他の変形例〕
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更可能である。
例えば、本発明の側溝1は、共同溝設備だけでなく、下水道などの水路設備に使用することもできる
【符号の説明】
【0055】
1 側溝
2 ケーブル
3 保護管
10 側溝本体
11 U字溝
12 受け枠
13 窪み部
14 間隔調整材
15 間隔調整材
20 蓋部材(第1の蓋部材)
21 嵌合凹部
22 吊り孔
22A 土星孔
23 幅方向線
24 インサート部材
25 長手方向線
26 嵌合凹部
29 締め付けナット
30 吊り部材
31 フレーム本体
32 連結部材
32A ボルト部材
33 吊り掛け具
34 掛止爪
35 抜け止め片
36 張り出し部
37 パンタグラフ式ジャッキ
38 バール
39 ナット部材
40 蓋部材(第2の蓋部材)
41 貫通孔
42 ナット部材
43 ボルト部材
44 手掛かり凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8