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特許7437836特性情報収集方法および特性情報収集装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】特性情報収集方法および特性情報収集装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240216BHJP
   A61B 5/12 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61B10/00 V
A61B5/12
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023194109
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2023-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320012738
【氏名又は名称】株式会社薫化舎
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】向井 義
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-168856(JP,A)
【文献】ARANEDA Rodrigo et al.,"Altered Inhibitory Control and Increased Sensitivity to Cross-Modal Interference in Tinnitus during Auditory and Visual Tasks",PLOS ONE,2015年03月12日,pp. 1-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境において所定可聴音を含む音刺激を前記被検者に提供する第一音刺激提供工程と、
前記白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が前記被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する所定光環境作出工程と、
前記所定光環境において前記音刺激を前記被検者に再度提供する第二音刺激提供工程と、
前記第一音刺激提供工程と前記第二音刺激提供工程における前記音刺激の聞こえ方に関する特性情報を前記被検者から受け付ける情報受付工程と、
前記被検者から受け付けた前記特性情報を収集する収集工程と、
を有する、特性情報収集方法。
【請求項2】
前記収集工程で得られた情報を集計する集計工程を有する、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項3】
前記集計工程で得られた情報に基づいて分析表を作成する分析工程を有する、請求項2に記載の特性情報収集方法。
【請求項4】
前記情報受付工程および前記収集工程において、多段階選択肢回答法におけるリッカート尺度を用いて、前記特性情報を数値化する、請求項2に記載の特性情報収集方法。
【請求項5】
前記多段階選択肢回答法において、心理統計学的手法におけるSD法を用いる、請求項4に記載の特性情報収集方法。
【請求項6】
前記所定光は、主波長570nm~590nmを有する黄色光である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項7】
前記所定光は、補色主波長500nm~570nmを有するマゼンタ色光である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項8】
前記所定光は、主波長470nm~530nmを有するシアン色光である、請求項1
に記載の特性情報収集方法。
【請求項9】
前記所定光は、主波長500nm~570nmを有する緑色光である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項10】
前記所定光は、輝度0.001~5cd/mである、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項11】
前記所定光は、輝度0.001cd/m以下である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項12】
前記所定可聴音は、音声、会話音または噪音、あるいはこれらを組み合わせた音である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項13】
前記所定光の分光分布および輝度の少なくとも一方を変更して、前記所定光環境作出工程から前記収集工程を再び行う、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項14】
白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境を作出する第一光学部と、
前記白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が前記被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する第二光学部と、
前記白色光環境において所定可聴音を含む音刺激を前記被検者に提供した後に、前記所定光環境において前記音刺激を前記被検者に再度提供する音刺激提供部と、
前記白色光環境と前記所定光環境における前記音刺激の聞こえ方に関する特性情報を前記被検者から受け付ける情報受付部と、
前記情報受付部が受け付けた前記特性情報を収集する収集部と、
を備える、特性情報収集装置。
【請求項15】
前記収集部から得た収集情報に基づいて各種演算処理を行う集計分析部を備える、請求項14に記載の特性情報収集装置。
【請求項16】
前記音刺激提供部は、ヘッドフォンまたはスピーカである、請求項14に記載の特性情報収集装置。
【請求項17】
前記音刺激提供部は、前記音刺激の定位を付与または変更する、請求項14に記載の特性情報収集装置。
【請求項18】
前記第一光学部または前記第二光学部は、ディスプレイ、眼鏡、ゴーグル、ライトまたは照明装置である、請求項14に記載の特性情報収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性情報を収集する特性情報収集方法および特性情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
学習障害(限局性学習症:Learning Disorders)は、全般的知能が正常範囲にあり、視覚(視力)や聴覚(聴力)には障害がなく、学習環境や本人の意欲にも問題がないにもかかわらず、特定分野の課題習得が苦手・困難な状態をいう。学習障害には、読字障害(Dyslexia)、書字表出障害(Dysgraphia)、算数障害(Dyscalculia)など、さまざまなタイプがある。また、視空間認知(物体の位置や形状・方向・大きさなどの形態や位置関係を正確に認識する能力)が苦手・困難な者もいる。
【0003】
学習障害のある者の中に、「文字が揺れて見える」や「文章が波打って見える」、または「紙面が光って見える」等と訴える人がいる。このような症状(見え方:Vision)は、アーレンシンドローム(Irlen syndrome)、ミアーズ・アーレンシンドローム(Meares-Irlen syndrome)あるいは視覚ストレス(Visual Stress)と呼ばれる。そして、このような症状は、有色フィルムやレンズを使用することで改善が見られる場合があることが知られている。特にアーレンシンドロームには、カラーレンズやカラーフィルムの使用が有効とされている(非特許文献1,2参照)。
このため、アーレンシンドローム等は、視知覚に関連した障害(視覚認知機能の偏り)、特に光感受性に偏りを有する可能性があると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Sandra Irlen et al., “A controlled field study of the use of coloured overlays on reading achievement”, Australian Journal of Learning Disabilities, Volume 9, 2004 - Issue 2, Pages 14-22
【文献】Keiko Kumagai et al., “The Research of Visual Characteristics of the Clients with Irlen Syndrome”, Japanese Journal of Learning Disabilities, 2021 Volume 30 Issue 2, Pages 126-137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、視覚認知機能(光感受性)に偏りがある者は、健常者とは異なる「見え方」を有している場合がある。しかし、その「見え方(視覚認知機能特性)」は、生まれつきであるため、健常でないことを本人が自覚することは難しい。このため、健常者と呼ばれる者であっても、視覚認知機能に偏りがある者は少なくない。
それにもかかわらず、視覚認知機能の偏りは病院では対応できず、一部の限られた研究施設においてアセスメントがされているに過ぎない。また、視覚認知機能の偏りは、症状が様々であり、個人差も大きい。このため、専門的な知識や経験を有する者でなければ、視覚認知機能の偏りのアセスメントを行うことができない。
【0006】
また、視覚認知機能に偏りがある者は、聴覚認知機能(音感受性)にも偏りがあり、健常者とは異なる「聞こえ方」を有している場合がある。このような症状(聴覚認知特性)は、聴覚過敏や聴覚鈍麻とも言われ、大きな音(特に突然の音)が苦手だったり、時計やエアコンなどの小さな生活音も気になって集中できなかったりする。騒がしい状況や多くの人が雑談をしている中でも、興味のある会話や必要な音だけを取捨選択して聞き取る(音声の選択的聴取)ことが苦手な者もいる。音声の選択的聴取は、カクテルパーティー効果と呼ばれる。このため、聞き取り困難症(LiD : Listening difficulties)や聴覚情報処理障害(APD : Auditory Processing Disorder)とも言われている。
【0007】
視覚と聴覚のような異なる感覚の情報は、相互に強く影響しあっている。多感覚情報の補完機能によって、ある感覚における知覚が変化する現象(感覚間相互作用:Cross-modal interaction)が知られている。
聴覚過敏や聴覚鈍麻は、視覚認知機能の偏りが聴覚(聴覚認知)に悪影響を与えていることにより生じているおそれがある。視覚認知機能の偏りが、視覚と聴覚等の感覚統合や多感覚知覚(統合的認知)を乱していると推測される。
このため、被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性情報に基づいて、視覚認知機能や聴覚認知機能の偏りのアセスメントを行うことができる可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性情報を収集できる特性情報収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様に係る特性情報収集方法の第一態様は、白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境において所定可聴音を含む音刺激を前記被検者に提供する第一音刺激提供工程と、前記白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が前記被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する所定光環境作出工程と、前記所定光環境において前記音刺激を前記被検者に再度提供する第二音刺激提供工程と、前記第一音刺激提供工程と前記第二音刺激提供工程における前記音刺激の聞こえ方に関する特性情報を前記被検者から受け付ける情報受付工程と、前記被検者から受け付けた前記特性情報を収集する収集工程と、を有する。
【0010】
特性情報収集方法の第二態様は、第一態様において、前記収集工程で得られた情報を集計する集計工程を有する。
特性情報収集方法の第三態様は、第二態様において、前記集計工程で得られた情報に基づいて分析表を作成する分析工程を有する。
特性情報収集方法の第四態様は、第二態様において、前記情報受付工程および前記収集工程において、多段階選択肢回答法におけるリッカート尺度を用いて、前記特性情報を数値化する。
特性情報収集方法の第五態様は、第四態様において、前記多段階選択肢回答法において、心理統計学的手法におけるSD法を用いる。
【0011】
特性情報収集方法の第六態様は、第一から第五態様において、前記所定光は、主波長570nm~590nmを有する黄色光である。
特性情報収集方法の第七態様は、第一から第六態様において、前記所定光は、補色主波長500nm~570nmを有するマゼンタ色光である。
特性情報収集方法の第八態様は、第一から第七態様において、前記所定光は、主波長470nm~530nmを有するシアン色光である。
特性情報収集方法の第九態様は、第一から第八態様において、前記所定光は、主波長500nm~570nmを有する緑色光である。
特性情報収集方法の第十態様は、第一から第九態様において、前記所定光は、輝度0.001~5cd/mである。
特性情報収集方法の第十一態様は、第一から第十態様において、前記所定光は、輝度0.001cd/m以下である。
【0012】
特性情報収集方法の第十二態様は、第一から第十一態様において、前記所定可聴音は、音声、会話音または噪音、あるいはこれらを組み合わせた音である。
特性情報収集方法の第十三態様は、第一から第十二態様において、前記所定光の分光分布および輝度の少なくとも一方を変更して、前記所定光環境作出工程から前記収集工程を再び行う。
【0013】
本発明の実施態様に係る特性情報収集装置の第一態様は、白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境を作出する第一光学部と、前記白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が前記被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する第二光学部と、前記白色光環境において所定可聴音を含む音刺激を前記被検者に提供した後に、前記所定光環境において前記音刺激を前記被検者に再度提供する音刺激提供部と、前記白色光環境と前記所定光環境における前記音刺激の聞こえ方に関する特性情報を前記被検者から受け付ける情報受付部と、前記情報受付部が受け付けた前記特性情報を収集する収集部と、を備える。
【0014】
特性情報収集装置の第二態様は、第一態様において、前記収集部から得た収集情報に基づいて各種演算処理を行う集計分析部を備える。
特性情報収集装置の第三態様は、第一または第二態様において、前記音刺激提供部は、ヘッドフォンまたはスピーカである。
特性情報収集装置の第四態様は、第一から第三態様において、前記音刺激提供部は、前記音刺激の定位を付与または変更する。
特性情報収集装置の第五態様は、第一から第四態様において、前記第一光学部または前記第二光学部は、ディスプレイ、眼鏡、ゴーグル、ライトまたは照明装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の特性情報収集方法は、被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性情報を収集できる。また、被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性情報を集計、分析することができる。さらに、視覚認知機能・聴覚認知機能の診断も行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る特性情報収集装置1を示す図である。
図2】特性情報収集装置1の概略構成を示すシステムブロック図である。
図3】人の目の構造を示す縦断面図であって、(a)白色光環境、(b)所定光環境を示す。
図4】(a)人の視細胞を示す模式図、(b)人の視細胞の分光感度曲線である。
図5】色空間のxy色度図である。
図6】実施形態に係る特性情報収集方法を示すフローチャート図である。
図7】回答フォームQを示す図である。
図8】SDチャート分析表Dを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る特性情報収集方法および特性情報収集装置について、図面を参照しつつ説明する。
特性情報収集装置1および特性情報収集方法は、視覚認知機能や聴覚認知機能に偏りがある者(被検者)の視覚と聴覚の統合に関する特性情報を収集するものである。
特性情報収集方法は、まず、白色光環境下において所定可聴音を含む音刺激(聴覚刺激)を被検者に聴かせる。
次に、視覚認知機能に偏りがある者にとって「見え方」が変化しやすい所定光環境を作出し、この所定光環境下において所定可聴音を被検者に再度聴かせる。
そして、被検者から、白色光環境下と所定光環境下における所定可聴音に対する聴覚の変化の態様・程度に関する情報を収集する。すなわち、被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性情報を収集する。
【0018】
〔特性情報収集装置1〕
図1は、実施形態に係る特性情報収集装置1を示す図である。
図2は、特性情報収集装置1の概略構成を示すシステムブロック図である。
【0019】
特性情報収集装置1は、パソコン10とカラーライト20、室内照明装置30を備える。
パソコン10は、演算処理部11、記憶部12、ディスプレイ13、キーボード14a、I/O15等を備える。さらに、ヘッドフォン19を備える。
【0020】
演算処理部(収集部、集計分析部)11は、CPU等であり、パソコン10における各種処理を実行する。演算処理部11は、後述する特性情報収集方法を主導する。
記憶部12は、ROMやRAM、HDD、SSD等であり、各種プログラムやデータベースが格納される。具体的には、特性情報収集プログラム17と音源データベース18が記憶部12に格納される。音源データベース18には、各種音源が収録される。
【0021】
ディスプレイ(出力部)13は、演算処理部11からの指令に応じて、文字や画像等を表示する。ディスプレイ13は、後述する特性情報受付・収集工程S5の回答フォームQや集計・分析工程S6の結果(集計情報、分析情報)も表示する。
ディスプレイ13は、複数の画素を有し、その画素密度は150ppi以上、特に200ppi以上が好ましい。
ディスプレイ13は、演算処理部11からの指令に応じて、輝度(照度)、発光の色(波長)等が制御される。ディスプレイ13は、可視光を輝度0.001~1000000cd/mで照射(発光)する。特に、輝度5cd/m以上での発光と輝度5cd/m未満での発光を切り替えできる。
【0022】
キーボード(情報受付部)14aは、文字や数値等の情報をパソコン10に入力する操作入力部である。キーボード14aに加えて、またはキーボード14aに代えて、マウス(情報受付部)14bやポインティングデバイス、タッチパネル(ディスプレイ13)等を用いてもよい。
【0023】
I/O15は、パソコン10に接続された外部機器との情報の入出力を行うインタフェースである。このI/O15には、カラーライト20と室内照明装置30が接続される。I/O15に印刷プリンタ16等を接続してもよい。
【0024】
ヘッドフォン(音刺激提供部)19は、音源データベース18に収録された音源データを再生して、被検者に向けて可聴音を提供する。
ヘッドフォン19は、両耳タイプが好ましい。左右いずれかの片耳にだけ可聴音を提供する片耳タイプであってもよい。また、ヘッドフォン19は、密閉型、開放型、セミオープン型のいずれであってもよい。有線タイプから無線(ワイヤレス)タイプのいずれであってもよい。また、骨伝導方式のヘッドフォンであってもよい。
【0025】
ヘッドフォン19は、1つの可聴音を再生することはもちろん、複数の可聴音を同時または異時に多重再生することができる。
また、ヘッドフォン19は、音源定位を付与または変更させることができる。つまり、ヘッドフォン19は、被検者の前後左右上下の任意の方向から可聴音が聞こえるように、出力(再生)を制御できる。具体的には、被検者の左右の耳に到達する音の強度差や時間差を発生させて、任意の方向から音が聞こえるようする。
【0026】
ヘッドフォン19から出力される可聴音の種類は、純音、楽音、噪音等である。
純音は、一つの周波数のみで構成される音であり、例えば時報音である。楽音は、主に基音と倍音で構成される調和した音(音程を感じる音)であり、例えば楽器や人間の歌声である。噪音は、振動が不規則で高さや調子の明瞭でない音(音程を感じない音)であり、例えば自動車等の走行音、家電の動作音である。
【0027】
(カラーライト20)
カラーライト(第二光学部)20は、所定光L1を照射する照明器具である。カラーライト20は、電球、蛍光灯、LED、OLED等のランプを有する照明器具であり、例えばデスクライト、ハンディライト等である。
カラーライト20は、パソコン10の演算処理部11からの指令に応じて、点灯、消灯、輝度(照度)、照明光の色(波長)、照射方向等が制御される。
カラーライト20は、可視光を輝度0.001~1000000cd/mで照射する。特に、輝度5cd/m以上での発光と輝度5cd/m未満での発光を切り替えできる。
【0028】
カラーライト20は、パソコン10の正面にいる被検者の顔面に向けて、所定光L1を照射する。これにより、被検者の網膜Rに所定光L1が入射する。
被検者の網膜Rに所定光L1が入射する環境を所定光環境と呼ぶ。カラーライト20は、後述する所定光環境作出工程S3の光源として機能する。所定光環境では、被検者がディスプレイ13に表示された画像等を支障なく注視できる。また、被検者がヘッドフォン19から出力される可聴音を支障なく聞き取れる。
【0029】
カラーライト20は、ディスプレイ13から離れた位置に配置することが好ましい。所定光L1を網膜Rの周辺視野領域R2に入射させるためである。被検者がディスプレイ13に表示された画像等を注視するときに、所定光L1がその注視の支障にならないことが好ましい。例えば、網膜Rの中心視野領域R1にはディスプレイ13に表示された画像等の光が入射し、網膜Rの周辺視野領域R2には所定光L1が入射するようにする。
なお、カラーライト20に代えて、後述する装着型光学機器40を用いてもよい。
【0030】
(室内照明装置30)
室内照明装置(第一光学部)30は、被験者の網膜Rに白色光L0を入射させる光学機器である。室内照明装置30は、太陽光等の白色光がほぼ遮断された室内Hの天井に設置され、室内照明装置30を点灯させることにより白色光L0が室内Hの全域に照射される。
室内照明装置30は、ランプ(電球、蛍光灯、LED、OLED)等の照明具であって、白色光環境を作出する光源として機能する(白色光環境作出工程S1)。室内照明装置30は、白色光L0を輝度5~1000000cd/m2で照射する。被検者の網膜R(中心視野領域および周辺視野領域)に白色光L0が入射する。
室内照明装置30は、パソコン10の演算処理部11からの指令に応じて、点灯、消灯、輝度(照度)等が制御される。室内照明装置30とパソコン10の接続は、有線接続に限らず、無線接続でもよい。
室内照明装置30は、白色光L0を輝度0.001~1000000cd/mで照射する。特に、輝度5cd/m以上での発光と輝度5cd/m未満での発光を切り替えできる。
【0031】
被検者がパソコン10の正面に座ると、被検者の網膜R(中心視野領域R1および周辺視野領域R2)に白色光L0が入射する。被検者の網膜Rに白色光L0が入射する環境を白色光環境と呼ぶ。室内照明装置30は、白色光環境作出工程S1の光源として機能する。
白色光環境では、被検者がディスプレイ13に表示された画像等を支障なく注視できる。また、被検者がヘッドフォン19から出力される可聴音を支障なく聞き取れる。
【0032】
特性情報収集装置1は、演算処理部11が記憶部12に格納されているプログラムを実行し、必要に応じて記憶部12に記憶されている各種データを読み取って、パソコン10を動作させる。具体的には、演算処理部11は、特性情報収集プログラム17を実行し、音源データベース18から音刺激Aのデータを読み取って、ヘッドフォン19から音刺激Aを出力(鳴動、再生)させる。このとき、演算処理部11は、室内照明装置30やカラーライト20を点灯・消灯させて、白色光L0や所定光L1を被検者の網膜Rに入射させる。
そして、演算処理部11は、被検者からの回答の受け付けるために、ディスプレイ13に音刺激Aの聞こえ方の変化に関する回答フォームQを表示する。演算処理部11は、キーボード14a等から入力された情報(視覚と聴覚の統合に関する特性情報の生データ)を記憶部12に記憶保存(収集)させる。さらに、演算処理部11は、この収集情報を各種演算処理(集計・分析)して、その結果(視覚と聴覚の統合に関する特性情報の集計情報や分析情報)をディスプレイ13や印刷プリンタ16に表示・出力する。
【0033】
〔視細胞〕
図3(a)は、人の目の構造を示す縦断面図である。図3(b)は、人の視細胞を示す模式図である。
図4は、人の視細胞の分光感度曲線を示す図である。
図5は、国際照明委員会の色空間のxy色度図(Chromaticity diagram)を示す図である(CIE1931)。
【0034】
人の網膜Rに存在する視細胞には、錐体細胞(Cone cell)と桿体細胞(Rod cell)がある。錐体細胞は、網膜Rの中心窩付近に存在し、色を検知する円錐型の視細胞である。錐体細胞は明所で機能する。桿体細胞は、中心窩の周辺部に存在し、明かりを検知する棒状型の視細胞である。桿体細胞は、主に暗所で機能する。
【0035】
錐体細胞が働く状況(光量が充分にある状況)の視覚を明所視(Photopic vision)という。明所視は、輝度5~1000000cd/m(照度10~100000lx)の光量下で生じる。
桿体細胞が働く状況(光量が小さい状況)の視覚を暗所視(Scotopic vision)という。暗所視は、輝度0.01~0.0000041Cd/m(照度0.001~0.01lx)の光量下で生じる。
錐体細胞と桿体細胞がともに働く状況(光量が少ないが完全な暗黒ではない状況)の視覚を薄明視(Mesopic vision)という。薄明視は、明所視と暗所視が重なる視覚である。薄明視は、輝度0.001~5cd/m(照度0.01~10lx)の光量下で生じる。国際照明委員会(CIE)は輝度0.005~5cd/mを、北米照明学会(IES)は輝度0.001~3cd/mを薄明視と定めている。
【0036】
錐体細胞は、光の三原色に対応して三種類に分類される。具体的には、長波長域の光(黄色周辺)に反応するLong錐体細胞、中波長域の光(黄緑色周辺)に反応するMiddle錐体細胞、短波長域の光(青色周辺)に反応するShort錐体細胞がある。
Long錐体細胞は、赤錐体細胞とも呼ばれる。Middle錐体細胞は、緑錐体細胞とも呼ばれる。Short錐体細胞は、青錐体細胞とも呼ばれる。
この三種類の錐体細胞のそれぞれが受けた刺激の強さの組み合わせ(三種類の錐体細胞の興奮の相対比)によって、特定の色が知感(知覚)される。
【0037】
以下、Long錐体細胞をL視細胞VL、Middle錐体細胞をM視細胞VM、Short錐体細胞をS視細胞VS、桿体細胞をR視細胞VRともいう。
【0038】
〔可視光〕
可視光は、波長380~780nmの光である。可視光の波長と色との関係(分光スペクトル)は、概ね以下の通りである。波長380~430nm:青紫、430~460nm:青、460~500nm:青緑、500~570nm:緑、570~590nm:黄、590~610nm:橙、610~780nm:赤
【0039】
可視光に対する視細胞の感受性には波長依存性がある。具体的には、L視細胞VLの吸収極大波長は558nm付近、M視細胞VMの吸収極大波長は531nm付近、S視細胞VSの吸収極大波長は419nm付近、R視細胞VRの吸収極大波長は500nm付近である。
【0040】
可視光の発光強度が最大になるピーク波長と、実際に目で感じる波長とは異なる。目で感じる色の波長を主波長またはドミナント波長(dominant wavelength)という。
青紫色に感じる光は、主波長400nm付近(380nm~430nm)である。
青色に感じる光は、主波長450nm付近(430nm~470nm)である。
シアン色に感じる光は、主波長490nm付近(470nm~530nm)である。
緑色に感じる光は、主波長550nm付近(530nm~570nm)である。
黄色に感じる光は、主波長580nm付近(570nm~590nm)である。
赤色に感じる光は、主波長610nm付近(590nm~780nm)である。
マゼンタ色に感じる光は、補色主波長(complementary dominant wavelength)550nm付近(530nm~570nm)である。
【0041】
(白色光L0)
白色光L0は、可視光線のすべての波長の光(色)がほぼ均等に混ざった光で、色合いの感覚を与えない光をいう。白色光L0は、平均昼光の色として定義されることもある。
白色光L0は、輝度5~1000000cd/mの光であり、被検者の網膜Rに入射することにより明所視を実現させる。白色光L0は、網膜Rに存在する三種類の錐体細胞(S視細胞VS、M視細胞VM、L視細胞VL)の全てが反応(興奮)する光である。
白色光L0には、電球色、温白色、昼白色、昼光色と呼ばれる色味がかった光(照明光)もあるが、いずれも色空間のxy色度図において黒体軌跡に沿う位置にある光である。白色光L0は、色温度[K]で表される明るさ有する。
被検者の網膜Rに白色光L0が入射する環境を白色光環境と呼ぶ。
【0042】
(所定光L1)
所定光L1は、白色光L0とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる可視光である。所定光L1には、白色光L0とは分光分布が異なる光(有色光LA)、輝度が異なる光(グレイ光LB、微光LD)、分光分布と輝度がそれぞれ異なる光(グレイ有色光LBA)がある。
分光分布が異なるとは、所定光L1(有色光LA、グレイ有色光LBA)が有色光であることを意味する。輝度が異なるとは、所定光L1が輝度0.001~5cd/mの光(グレイ光LB、グレイ有色光LBA)、または、輝度0.001cd/m以下の光(微光LD)であることを意味する。
被検者の網膜Rに所定光L1(LA,LB,LBA,LD)が入射する環境を所定光環境と呼ぶ。
【0043】
〈有色光LA〉
光LAは、可視光線の一部の波長の光(色)を有する、輝度5~1000000cd/mの光(有色光)である。
有色光LAは、色空間のxy色度図において、スペクトル軌跡または純紫軌跡に沿う位置にある光である。有色光は、主波長(ドミナント波長)または補色主波長(補色ドミナント波長)で表される色を有する。
【0044】
光LAは、三種類の錐体細胞のうちの一種類または二種類が主に反応する光である。LAは、主波長570nm~590nmの黄色光LAY、補色主波長500nm~570nmのマゼンタ色光LAM、主波長470nm~530nmのシアン色光LAC、主波長500nm~570nmの緑色光LAGのいずれかである。
【0045】
黄色光LAYは、L視細胞VLとM視細胞VMを興奮させ、S視細胞VSを抑制(鎮静)させる可視光である。
黄色光LAYには、波長580nm付近にピーク波長を有する光の他、波長450nm付近にボトム波長を有する光(青の補色)、波長550nm付近と波長610nm付近にピーク波長を有する光(緑と赤の混色)も含まれる。
黄色光LAYは、網膜Rに入射すると、L視細胞VLとM視細胞VMを興奮させ、S視細胞VSを抑制させる。
【0046】
マゼンタ色光LAMは、L視細胞VLとS視細胞VSを興奮させ、M視細胞VMを抑制させる可視光である。
マゼンタ色光LAMには、波長550nm付近にボトム波長を有する光(緑の補色)の他、波長450nm付近と波長610nm付近にピーク波長を有する光(青と赤の混色)も含まれる。
【0047】
シアン色光LACは、M視細胞VMとS視細胞VSを興奮させ、L視細胞VLを抑制させる可視光である。
シアン色光LACには、波長490nm付近にピーク波長を有する光の他、波長610nm付近にボトム波長を有する光(赤の補色)、波長450nm付近と波長550nm付近にピーク波長を有する光(青と緑の混色)も含まれる。
【0048】
緑色光LAGは、M視細胞VMを興奮させ、L視細胞VLとS視細胞VSを抑制させる可視光である。
緑色光LAGには、波長550nm付近にピーク波長を有する光の他、波長450nm付近と波長610nm付近にボトム波長を有する光(黄とシアン色の混色)も含まれる。
【0049】
〈グレイ光LB〉
光LBは、可視光線のすべての波長の光(色)がほぼ均等に混ざった、輝度0.001~5cd/mの光(グレイ光)である。グレイ光LBは、白色光L0の輝度を低下させた光であり、色味が感じづらい光である。
グレイ光LBは、被検者の網膜Rに入射することにより薄明視を実現させる。つまり、グレイ光LBは、網膜Rに存在する桿体細胞が反応し始める光である。
桿体細胞は、光の強弱に対応する明暗を高感度に検知する。桿体細胞は、色の検知には関与しない。輝度5cd/m以下の光は、網膜Rに入射したときに、桿体細胞を興奮させて、明暗を知感させる。
グレイ光LBは、錐体細胞(L視細胞VL、M視細胞VM、S視細胞VS)と桿体細胞(R視細胞VR)の両方を興奮させる(薄明視)。
グレイ光LBには、主波長または補色主波長であらわされる色は存在しない。主波長または補色主波長は、有色光LAのみを対象とする尺度であり、グレイ光LBには適用されない(感じづらい)。つまり、グレイ光LBは、色空間のxy色度図において黒体軌跡に沿う位置にある光であり、色温度[K]で表される明るさ有する。
【0050】
〈グレイ有色光LBA〉
光LBAは、可視光線の一部の波長の光(色)を有する、輝度0.001~5cd/mの光(グレイ有色光)である。光LBAには、グレイ黄色光LBY、グレイマゼンタ色光LBM、グレイシアン色光LBC、グレイ緑色光LBGがある。
グレイ黄色光LBYは、黄色光LAYの輝度を低下させた光である。グレイマゼンタ色光LBMは、マゼンタ色光LAMの輝度を低下させた光である。グレイシアン色光LBCは、シアン色光LACの輝度を低下させた光である。グレイ緑色光LBGは、緑色光LAGの輝度を低下させた光である。
グレイ有色光LBAは、有色光LAとグレイ光LBを合わせた光であり、色温度[K]で表される明るさ有しつつ、主波長または補色主波長であらわされる色も存在する。
【0051】
〈微光LD〉
光LDは、輝度0.001Cd/m以下の光(微光)である。微光LDは、色味を感じない光である。微光LDは、被検者の網膜Rに入射することにより暗所視を実現させる。つまり、微光LDは、網膜Rに存在する桿体細胞のみが反応する光である。
室内照明装置30を消灯し、カラーライト20を点灯することにより、被検者の網膜Rに微光LDを入射させる。被検者にゴーグル型のサングラス等を装着させて、網膜Rに微光LDが入射する暗所視を実現してもよい。これにより、微光LDは、桿体細胞(R視細胞VR)のみを興奮させる(暗所視)。
【0052】
〔装着型光学機器40〕
装着型光学機器(第二光学部)40は、カラーライト20に代わって(または重ねて)、被験者の網膜Rに所定光L1(光LA,LB,LBA,LD)を入射させる光学機器である。装着型光学機器40は、光学機器41、光学機器42、光学機器43の三種類であり、これらを単独または複合的に使用する。
光学機器41、光学機器42、光学機器43は、所定光環境を作出する光源(手段)として機能する(所定光環境作出工程S3)。
【0053】
(光学機器41)
光学機器41は、錐体細胞が反応する光LA(有色光)を網膜Rに入射させる光学機器である。光学機器41は、輝度5~1000000cd/m2の光LAを網膜Rに入射させて、明所視を実現させる。光学機器41は、三種類の錐体細胞(S視細胞VS、M視細胞VM、L視細胞VL)のうちの二種類が反応する光LAを網膜Rに入射させる。
光LAは、主波長570nm~590nmの黄色光LAY、補色主波長500nm~570nmのマゼンタ色光LAM、主波長470nm~530nmのシアン色光LAC、主波長500nm~570nmの緑色光LAGのいずれかである。
【0054】
光学機器41は、光学機器41Y、光学機器41M、光学機器41C、光学機器41Gを備える。
光学機器41Yは、L視細胞VLとM視細胞VMを興奮させ、S視細胞VSを抑制させる黄色光LAYを網膜Rに入射させる。つまり、光学機器41Yは、黄色に感じる黄色光LAY(主波長580nm付近)を網膜Rに入射させる。
光学機器41Mは、L視細胞VLとS視細胞VSを興奮させ、M視細胞VMを抑制させるマゼンタ色光LAMを網膜Rに入射させる。つまり、光学機器41Mは、マゼンタ色に感じるマゼンタ色光LAM(補色主波長550nm付近)を網膜Rに入射させる。
光学機器41Cは、M視細胞VMとS視細胞VSを興奮させ、L視細胞VLを抑制させるシアン色光LACを網膜Rに入射させる。つまり、光学機器41Cは、シアン色に感じるシアン色光LAC(主波長490nm付近)を網膜Rに入射させる。
光学機器41Gは、M視細胞VMを興奮させ、L視細胞VLとS視細胞VSを抑制させる緑色光LAGを網膜Rに入射させる。つまり、光学機器41Gは、緑色に感じる緑色光LAG(主波長550nm付近)を網膜Rに入射させる。
【0055】
(光学機器42)
光学機器42は、桿体細胞(R視細胞VR)と三種類の錐体細胞の全てが反応するグレイ光LBを網膜Rに入射させる光学機器である。
光学機器42は、グレイ光LBを網膜Rに入射させて、薄明視を実現させる。グレイ光LBは、輝度0.001~5cd/m2の色味が感じられない光である。
【0056】
(光学機器43)
光学機器43は、桿体細胞(R視細胞VR)のみが反応する微光LDを網膜Rに入射させる光学機器である。
光学機器43は、微光LDを網膜Rに入射させて、暗所視を実現させる。微光LDは、輝度0.001以下の色味が感じられない光である。
【0057】
光学機器41(光学機器41Y、光学機器41M、光学機器41C、光学機器41G)、光学機器42および光学機器43は、視界の大部分の範囲(方向)から網膜Rに光を入射させる。光学機器41,42,43は、少なくとも視界の50%以上、好ましくは視界の80%以上の範囲から網膜Rに光を入射させる。
【0058】
光学機器41,42,43は、例えば眼鏡(カラーレンズ)である。光学機器41,42,43は、コンタクトレンズ、ゴーグル等であってもよい。
例えば、光学機器41Yとしてイエローレンズ、光学機器41Yとしてピンク(マゼンタ)レンズ、光学機器41Cとしてスカイブルー(シアン)レンズ、光学機器41Gとしてグリーンレンズを用いることができる。光学機器42としてグレイレンズ、光学機器43としてブラックレンズ(サングラス)を用いることができる。
白色光L0がカラーレンズを透過して所定光L1(光LA,LB,LBA,LD)になり、被検者の網膜Rに入射する。
【0059】
各カラーレンズの色濃度(視感透過率の逆数)は、被検者に対する刺激を抑えるために、5%から60%(視感透過率95~40%)が好ましい。特に、色濃度10%から50%(視感透過率90~50%)が好ましい。被検者の反応が悪い場合は、各カラーレンズの濃度が60%から85%(視感透過率40~15%)のものを用いてもよい。
[JIST7331、JIST7333、ISO14889、ISO8980-3参照]
【0060】
被験者が眼鏡、コンタクトレンズ、ゴーグル等の装着型光学機器を装着すると、被験者の視界の少なくとも50%以上の範囲(方向)から網膜Rに所定光L1(光LA,LB,LBA,LD)が入射する。
【0061】
光学機器41と光学機器42を組み合わせることもできる。桿体細胞(R視細胞VR)と、三種類の錐体細胞(S視細胞VS、M視細胞VM、L視細胞VL)のうちの二種類が反応するグレイ有色光LBAを網膜Rに入射させる。
光学機器41Yと光学機器42を重ねることにより、薄明視で黄色に感じるグレイ黄色光LBYを網膜Rに入射させることができる。
光学機器41Mと光学機器42を重ねことにより、薄明視でのマゼンタ色に感じるグレイマゼンタ色光LBMを網膜Rに入射させることができる。
光学機器41Cと光学機器42を重ねことにより、薄明視でシアン色に感じるグレイシアン色光LBCを網膜Rに入射させることができる。
光学機器41Gと光学機器42を重ねことにより、薄明視で緑色に感じるグレイ緑色光LBGを網膜Rに入射させることができる。
【0062】
〔音刺激A〕
音刺激Aは、被検者に聞かせる音(音響)である。音源データベース18には、複数の音源データが収録、格納される。この音源データには、音刺激Aの音源データも含まれる。これらの音源データは、個別にまたは同時にヘッドフォン19から出力(鳴動、再生)される。
音刺激Aは、所定可聴音a1等を含んだ音(音響)である。所定可聴音a1等とは、例えば、各種の聴力検査や聴覚心理検査、聴覚認知検査等で用いられる音(音響)である。特に、所定可聴音a1等は、聴覚認知機能(または視覚認知機能)に偏りを有する者が聴覚認知しづらかったり難しかったりする音または不快に感じやすい音を含む。
【0063】
所定可聴音a1は、純音である。この純音は、例えば純音聴力検査等で用いられる音である。
所定可聴音a1には、高音、中音、低音、大音(大音量)、中音(中音量)、小音(小音量)が含まれる。所定可聴音a1は、複数の純音を組み合わせたものも含む。
所定可聴音a1のうち、特に高音や大音は、聴覚認知機能(または視覚認知機能)に偏りを有する者が聴覚認知しづらかったり不快に感じたりする。
【0064】
所定可聴音a2は、音声である。この音声は、例えば語音明瞭度検査(発話聞き取り検査)等で用いられる音である。
所定可聴音a2には、男性の声(低音)、子供や幼児、女性の声(高音)が含まれる。所定可聴音a2は、単音節(単語)や文を読み上げた音を含む。また、所定可聴音a2は、複数(複数人)の音声を組み合わせた会話音等を含む。さらに、所定可聴音a2は、再生速度を変更した早口音声等も含む。
所定可聴音a2のうち、特に幼児等の高い音声(泣き声)や女性の会話音は、聴覚認知機能(または視覚認知機能)に偏りを有する者が聴覚認知しづらかったり不快に感じたりする。
【0065】
所定可聴音a3は、噪音である。この噪音は、例えば不快閾値検査(UCL : uncomfortable loudness levels)等で用いられる音である。
所定可聴音a3には、自動車や電車等や掃除機等の機械・機器が発する音、人混みの音(雑踏音)が含まれる。いわゆる騒音(大音)である。所定可聴音a3には、食器や皿が触れ合ったり、物と物がぶつかったりしたときの音(高音)も含まれる。所定可聴音a3には、冷蔵庫やエアコン、時計(秒針)、蛍光灯などの家電・電子機器の動作音(小音)も含まれる。所定可聴音a3は、様々な周波数の音が同じ強さで混ざったホワイトノイズでもよい。
所定可聴音a3は、聴覚認知機能(または視覚認知機能)に偏りを有する者が特に耳障りで不快と感じることが多い。
【0066】
所定可聴音a4は、噪音と音声を組み合わせた音である。この音は、例えば雑音下語音聴力検査(HINT : Hearing In Noise Test)等で用いられる音である。所定可聴音a4における音声は所定可聴音a2であり、雑音は所定可聴音a3である。
所定可聴音a4は、聴覚認知機能(または視覚認知機能)に偏りを有する者が聴覚認知しづらい。つまり、雑音下における会話(語音)を聞き取ることができないことが多い。
【0067】
音刺激Aは、所定可聴音a1等を組み合わせたり、音の大きさや高さ、方向を変化させたりした音でもよい。例えば、方向感機能検査や両耳分離聴検査、時間分解能検査等、各種聴覚検査で用いられる音を含む。
【0068】
〔特性情報収集方法〕
図11は、実施形態に係る特性情報収集方法を示すフローチャート図である。
特性情報収集方法は、白色光環境作出工程S1、第一音刺激提供工程S2、所定光環境作出工程S3、第二音刺激提供工程S4、特性情報受付・収集工程S5、集計・分析工程S6および出力工程S7を有する。また、再実施判断工程S8、所定光変更工程S9を有する。
【0069】
(白色光環境作出工程S1)
特性情報収集方法は、被検者(視覚認知機能や聴覚認知機能の偏りがある者)がパソコン10の正面に座って、ヘッドフォン19から出力される可聴音(音刺激A)を支障なく聞き取れる状況で行われる。
パソコン10は、被検者の網膜Rに白色光L0が入射する白色光環境に置かれる。パソコン10が置かれた室内Hの天井に配置された室内照明装置30を点灯させることで、白色光環境が作出される。
特性情報収集プログラム17を実行して、特性情報収集方法を開始する。室内照明装置30の点灯(白色光環境作出)は、特性情報収集プログラム17の実行により行う。室内照明装置30を予め点灯した状態で、特性情報収集プログラム17を実行してもよい。
パソコン10の操作は、被検者が行ってもよいし、補助者(施験者)等が行ってもよい。被検者は、ディスプレイ13を注視する必要はない。
【0070】
被検者が白色光環境に順応(明順応)するように、室内照明装置30が点灯する室内Hに被検者を約1分以上滞在させる(明順応時間経過後)。
白色光L0は、室内Hの壁や床、ディスプレイ13等で吸収・反射(乱反射)・透過し、その反射光または透過光が被検者の網膜Rに入射する。白色光L0は、室内照明装置30から直接、被検者の網膜Rに入射してもよい。
【0071】
(第一音刺激提供工程S2)
第一音刺激提供工程S2では、白色光環境下において、被検者に所定可聴音a1等を含む音刺激Aを提供する。つまり、ヘッドフォン19から音刺激Aを出力して、被検者に所定可聴音a1等を聞かせる。「聞く」には、被検者が可聴音を能動的に聴く(listen)場合と受動的に聞く(hear)場合の両方が含まれる。
音刺激Aの聞こえ方の変化を被検者が忘れないように、3~5種類程度の音刺激Aを提示するのが好ましい。被検者が音刺激Aをリラックスして聞き取れるように、それぞれの音刺激Aを短くても10秒間程度、ヘッドフォン19から出力することが好ましい。
【0072】
(所定光環境作出工程S3)
所定光環境作出工程S3では、被検者の網膜に所定光L1が入射する所定光環境を作出する。室内照明装置30を消灯し、カラーライト20を点灯して、所定光L1を被検者の網膜Rに入射させる。
カラーライト20から照射される所定光L1は、最初は有色光である光LAが選択される。つまり、黄色光LAY、マゼンタ色光LAM、シアン色光LAC、緑色光LAGのいずれか一つである。所定光L1(光LA)は、黄色光LAYが最も好ましい。
被検者の網膜Rに所定光L1(光LA)が入射すると、三種類の錐体細胞(L視細胞VL、M視細胞VM、S視細胞VS)のうちの二種類または一種類が主に反応する。
【0073】
所定光L1は、カラーライト20から直接、被検者の網膜Rに入射する。所定光L1は、反射光や透過光として被検者の網膜Rに入射してもよい。
カラーライト20を点灯したときに、室内照明装置30を点灯したままにしてもよい。
白色光環境作出工程S1(白色光環境)と所定光環境作出工程S3(所定光環境)は、網膜Rに入射する光の輝度(照度)がほぼ同一同になるように設定される。例えば、読書や作業等をするのに適した輝度200~3000cd/m2(照度100~1000lx)が好ましい。
被検者が所定光環境に順応(明順応)するように、カラーライト20が点灯するパソコン10の正面に被検者を約1分以上滞在させる(明順応時間経過)。
【0074】
所定光環境作出工程S3において、カラーライト20に代えて、装着型光学機器40を用いてもよい。室内照明装置30が点灯している状態で、被検者が各種カラーレンズ眼鏡(光学機器41,42,43)を装着すると、所定光L1が被検者の網膜Rに入射する。
被検者が光学機器41等を装着している状態で、カラーライト20(同色、異色)を重ねて点灯してもよい。
【0075】
(第二音刺激提供工程S4)
次いで、所定光環境下において、再び音刺激Aの提供を行う。この第二音刺激提供工程S4では、第一音刺激提供工程S2において提供した音刺激A(所定可聴音a1等)を変更することなく、被検者に再度提供する。音刺激Aの高さや大きさ、再生順序、再生時間を変えずに再出力する。
【0076】
(特性情報受付・収集工程S5)
特性情報受付・収集工程S5では、白色光環境(第一音刺激提供工程S2)と所定光環境(第二音刺激提供工程S4)における音刺激Aの聞こえ方に変化(差異)が生じたか否かを被検者に回答させて(回答を受け付けて)、この情報を収集する。聞こえ方の変化の程度・態様を被検者に回答させる。すなわち、被検者から、視覚と聴覚の統合に関する特性情報を収集する。
【0077】
特性情報受付・収集工程S5は、白色光環境と所定光環境のいずれで行ってもよい。白色光環境に戻す場合は、カラーライト20を消灯し、室内照明装置30は点灯する。
装着型光学機器40を用いた場合には、被検者は、カラーレンズ眼鏡(光学機器41,42,43)を装着したままの状態でも、カラーレンズ眼鏡を取り外した状態でもよい。被検者は、カラーレンズ眼鏡を装着したり取り外したりして、音刺激Aの聞こえ方を再確認しながら回答してもよい。
【0078】
視覚認知機能や聴覚認知機能に偏りを有する者は、網膜Rに所定光L1(黄色光LAY等)が入射されると、音刺激Aの聞こえ方が白色光環境とは異なるように感じることがある。つまり、被検者の視覚と聴覚の統合(感覚統合や多感覚知覚)が変化することがある。具体的には、視覚認知機能または聴覚認知機能に偏りを有する者は、特定の音刺激A(所定可聴音a1等)が変化したと感じることがある。
音の変化とは、音の強弱や高低が変わる場合の他、聞き取れなかった音が聞き取れるようになったり、不快だった音が気にならなくなったりする場合等がある。逆に、聞き取れた音が聞き取れなくなったり、気にならなかった音が不快になったりする場合もある。
音刺激Aの聞こえ方の変化は、視覚認知機能や聴覚認知機能に偏りを有する者によってそれぞれ異なる。
【0079】
図7は、回答フォームQを示す図である。
まず、音刺激Aの聞こえ方に変化に関する回答フォームQをディスプレイ13に表示する(特性情報受付工程S5a)。
回答フォームQとして、多段階選択肢を用いる(多段階選択肢回答法)。多段階選択肢の各評価尺度段階を得点とするリッカート尺度(Likert scale)を用いて、被検者からの回答が数値化される。例えば5段階選択肢の場合は、「非常に良い」は5点、「やや良い」は4点、「変化なし」は3点、「やや悪い」は2点、「非常に悪い」は1点に設定される。
【0080】
多段階選択肢の評価尺度は、心理統計学的手法(心理学的測定法)におけるSD法(Semantic Differential Method)に基づいて設定される。
音刺激A対して、下記に示す質問項目が設定され、ディスプレイ13に表示される。各質問項目の内容(形容詞対、評価尺度点数等)は、予め記憶部12に記憶されている。
【0081】
例えば、音刺激A(所定可聴音a1~a6等)に対して、以下の質問項目、形容詞対が設定される。
質問項目1:全体的な聞こえ方の変化、形容詞対:「聞こえ方がよくなった」-「聞こえ方が悪くなった」
質問項目1は、所定可聴音a1~a6等を認識できたか否か、に関わる質問である。
【0082】
また、以下の質問項目、形容詞対も設定される。
質問項目2:音量の変化、形容詞対:「音が大きくなった」-「音が小さくなった」
質問項目3:音程の変化、形容詞対:「音程が分かりやすくなった」-「音程が分かりづらくなった」
質問項目4:心理的な変化、形容詞対:「心地よくなった(不快な音がなくなった)」-「不快になった(不快な音が増えた)」
質問項目5:聞き取れる方向の変化、形容詞対:「音のする方向が分かりやすくなった」-「音のする方向が分かりづらくなった」
【0083】
所定可聴音a2,a4に対しては、さらに以下の質問項目、形容詞対も設定される。
質問項目6:聞き取りの変化1、形容詞対:「音声・会話が聞き取れる」‐「音声・会話が聞き取れない」
質問項目7:聞き取りの変化2、形容詞対:「音声・会話に集中できる(雑音が気にならない)」‐「音声・会話に集中できない(雑音が気になる)」
質問項目8:聞き取りの変化3、形容詞対:「音声・会話の内容を理解できる」‐「音声・会話の内容を理解できない」
【0084】
次いで、被検者等は、キーボード14aまたはマウス14bを操作して、音刺激Aの聞こえ方の変化に関する回答を行う。具体的には、各質問項目について、キーボード14aで数値を入力したり、マウス14bでチェックボタンをクリックしたりして、5段階選択肢から最も当てはまる肢を一つ選択する(単数回答法:Single Answer)。
【0085】
例えば、被検者は、所定光環境においてヘッドフォン19から出力された音刺激A(所定可聴音a1等)を聞いた際の聞こえ方の変化について回答(数値入力)する。
質問項目1の「全体的な聞こえ方の変化」について、変化がなかったと感じたときは、「3」を入力する。
一方、「全体的な聞こえ方の変化」が変化したと感じたときは、以下のように入力する。すなわち、聞こえ方が非常に良よくなったときは「5」、聞こえ方がやや良くなったときは「4」を入力する。聞こえ方がやや悪くなったときは「2」、聞こえ方が非常に悪くなったときは「1」をそれぞれ入力する。
つまり、数値「3」を基準にして、数値が大きい場合は聞こえ方が良好になり、数字が小さい場合は聞こえ方が劣悪になったことを意味する。
【0086】
被検者等は、それぞれの音刺激Aに対して、複数の5~8つの回答(数値)を行う。これにより、音刺激A(複数の所定可聴音a1等)に対する複数の回答が得られる(特性情報収集工程S5b)。
所定可聴音a1等のそれぞれに対する回答(視覚と聴覚の統合に関する特性情報の生データ)は、記憶部12に記憶保存(収集)される。
【0087】
(集計・分析工程S6)
集計・分析工程S6では、まず、特性情報受付・収集工程S5で得られた回答情報を集計して、被検者の聞こえ方の変化の有無や程度(視覚と聴覚の統合に関する特性情報の集計情報)を求める(集計工程S6a)。
具体的には、演算処理部11が記憶部12に記憶された回答(数値)を演算処理し、例えば平均値、最頻値、最大値、最小値、分散値、偏差等の集計情報を算出する。また、各数値が入力(回答)された頻度を算出する。「3」以外の数値が入力(回答)された頻度や、「1」か「2」が入力された頻度、「4」か「5」が入力された頻度を算出する。
【0088】
図8は、SDチャート分析表Dを示す図である。図8は、黄色光LAYを用いた際の音刺激Aの聞こえ方(視覚と聴覚の統合)の特性情報をチャート表示した一例である。
次いで、演算処理部11は、質問項目や回答(数値)をグラフ化・チャート化した分析表(視覚と聴覚の統合に関する特性情報の分析情報)を作成する(分析工程S6b)。具体的には、演算処理部11が集計情報を演算処理し、SDチャート分析表D等の分析情報(アウトプットイメージ)を作成する。
演算処理部11は、SDチャート分析表Dに加えて、円グラフ、レーザチャート、マトリックス等の分析表を作成してもよい。
なお、集計工程S6aで得られた情報や分析工程S6bで作成した分析表に基づいて、被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性を分析する分析工程や診断工程を行ってもよい。
【0089】
(出力工程S7)
最後に、出力工程S7では、集計・分析工程S6で得られた集計情報や分析情報(各種演算処理の結果)を外部出力する。演算処理部11は、被検者の聞こえ方の変化の程度(視覚と聴覚の統合に関する特性情報)として、集計情報や分析情報をディスプレイ13に表示する。集計情報や分析情報を印刷プリンタ16で印刷出力してもよい。
具体的には、集計情報として、例えば平均値、最頻値、分散値等を出力する。また、分析情報として、SDチャート等の分析表を出力する。
【0090】
(再実施判断工程S8)
再実施判断工程S8では、上述した特性情報収集方法を再実施するか否かを判断する。
例えば、被検者の音刺激Aに対する聞こえ方が殆ど変わらなかった場合は、特性情報収集方法を再び実施する。つまり、集計・分析工程S6で求めた集計情報に基づいて、特性情報収集方法を再び実施するか否かを判断する。
具体的には、集計情報のうち、「3」以外の数値が入力された頻度に基づいて判断する。上記頻度が閾値(例えば10%)未満の場合は、特性情報収集方法を再び実施する。一方、上記頻度が閾値(例えば10%)以上の場合は、特性情報収集方法を終了する。この閾値は、任意に設定できる。
【0091】
例えば、所定光環境作出工程S3で使用された所定光L1の種類数に基づいて、特性情報収集方法を再び実施するか否かを判断する。
カラーライト20から照射可能な所定光L1の種類数を予め記憶し、所定光環境作出工程S3の実施回数が所定光L1の種類数と一致するまで、特性情報収集方法を再実施する。
具体的には、カラーライト20から照射可能な所定光L1が例えば5種類の場合は、所定光環境作出工程S3の実施回数が5回未満では、特性情報収集方法を再び実施する。一方、所定光環境作出工程S3の実施回数が5回になると、特性情報収集方法を終了する。カラーライト20から照射可能な所定光L1の種類数は、任意に設定できる。
【0092】
(所定光変更工程S9)
特性情報収集方法を再実施すると判断したときは、所定光変更工程S9において、カラーライト20の照射光(所定光L1、光LA)を黄色光LAYから例えばマゼンタ色光LAMに変更する。
そして、所定光環境作出工程S3において、カラーライト20から被検者に向けてマゼンタ色光LAM等を照射する。所定光環境作出工程S3において、被検者が変更後の所定光L1(新たな所定光環境)に順応するように、カラーライト20が点灯するパソコン10の正面に被検者を約1分以上滞在させる(明順応時間経過後)。
続けて、第二音刺激提供工程S4~出力工程S7を行う。
特性情報収集方法の再実施において、白色光環境作出工程S1と第一音刺激提供工程S2は省略してもよいし、再実施してもよい。
【0093】
所定光変更工程S9において、光LAを黄色光LAYからシアン色光LACや緑色光LAG等に変更してもよい。4つの光LA(黄色光LAY、マゼンタ色光LAM、シアン色光LAC、緑色光LAG)の順序(優先順位)は、任意に設定できる。
【0094】
被検者の障害の特性等に応じて、カラーライト20(または装着型光学機器40)から照射される所定光L1として、有色光(光LA)に加えて、または有色光(光LA)に代えて、グレイ光(光LB)やグレイ有色光(光LBA)、微光LDを用いてもよい。
光LB,LBAを用いるときは、所定光環境作出工程S3において、室内Hでカラーライト20のみを輝度0.001~5cd/mで点灯させる。ディスプレイ13の輝度も0.001~5cd/mに変更する。
微光LDを用いるときは、カラーライト20、室内照明装置30およびディスプレイ13を消灯して、室内Hの輝度を0.001以下にする。
光LB,LBA,LDを用いるときは、被検者が所定光環境に順応(暗順応)するように、パソコン10の正面に被検者を約10~30分程度滞在させる(暗順応時間経過)。
【0095】
視覚認知機能や聴覚認知機に偏りを有する者は、網膜Rにグレイ光(光LB)やグレイ有色光(光LBA)が入射されると、音刺激Aの聞こえ方が白色光環境とは異なるように感じることがある。また、特定の音刺激Aの聞こえ方が変化したと感じることも多い。つまり、被検者の視覚と口腔感覚の統合(感覚統合や多感覚知覚)が変化することがある。
【0096】
以上の工程を経ることにより、専門的な知識等を有する者によらずに、また被検者の主観をできるだけ排除して、被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性情報を収集することができる。また、被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性情報を集計し、分析することもできる。さらに、視覚認知機能や聴覚認知機能の診断や治療等を行うこともできる。
【0097】
音刺激Aの聞こえ方は、被検者の光感受性が強く影響している。光感受性に偏り(光や色に対する感覚の過敏・鈍麻の有無・強弱・ばらつき等)があると、視覚と聴覚等の感覚統合や多感覚知覚(統合的認知)が乱れやすい。
もっとも、聞こえ方そのものは、本人の自覚がない場合が多い。しかし、聞こえ方が変化すれば、被検者はそれを自覚(顕在化)することができる。
【0098】
そこで、本発明の実施形態に係る特性情報収集方法および特性情報収集装置1は、視覚認知機能(光感受性)や聴覚認知機に偏りがある者の「聞こえ方」が変化しやすい環境を作出し、「聞こえ方」が変化しやすい音刺激A(所定可聴音a1等)を提供する。
そして、被検者から「聞こえ方」の変化の態様・程度に係る「視覚と聴覚の統合に関する特性情報」を収集する。このとき、聞こえ方の変化の程度・態様を、心理統計学的手法(SD法等)を用いて数値化して収集する。
したがって、被検者の「視覚と聴覚の統合に関する特性情報」を客観的・定量的に収集できる。
【0099】
また、被検者の「視覚と聴覚の統合に関する特性情報」を集計・分析・出力する。これにより、被検者の視覚認知機能や聴覚認知機の偏りを早期発見等するための基礎資料を提供できる。したがって、被検者の視覚認知機能や聴覚認知機の偏りを効果的に改善・矯正するトレーニング方法の作成・実施、各種診断や治療も可能になる。
よって、特性情報収集装置1およびこれを用いた特性情報収集方法は、各種産業や教育、交通安全などの幅広い分野において、安価で簡単に供給される。
【0100】
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0101】
本発明の特性情報収集方法および特性情報収集方法は、特性情報収集装置1を用いる場合に限らない。所定可聴音a1等を含む音刺激Aを被検者提供し、白色光環境と所定光環境における音刺激Aの聞こえ方の変化の程度を収集等できればよい。
【0102】
特性情報収集装置1は、デスクトップ型のパソコン10に限らず、ラップトップパソコンやノートパソコンを用いてもよい。特性情報収集装置1は、タブレット端末やスマートフォン、携帯端末を用いてもよい。カラーライト20は、タブレット端末やスマートフォン等のフラッシュライト(カメラ撮影用ライト)であってもよい。
【0103】
音刺激提供部は、ヘッドフォン19に限らず、スピーカでもよい。スピーカは、1つに限らず、複数でもよい。スピーカが1つの場合は、被検者の前方(正面側)に配置する。スピーカが複数の場合は、被検者の周囲を取り囲むように配置する。
【0104】
室内照明装置(第一光学部)30は、シーリングライトに限らない。フロアライトやデスクライト、ハンディライト等であってもよい。
自然光が遮断された室内Hにおいて、カラーライト20から白色光L0を照射してもよい。つまり、室内照明装置30に代えて、カラーライト20を第一光学部(白色光環境作出工程S1の光源)としても機能させてもよい。
白色光L0は、各種照明器具から照射される人工光に限らず、自然光(太陽光)であってもよい。例えば、室内照明装置30等を用いずに、窓から室内に自然光が入射する環境にパソコン10を配置してもよい。つまり、特性情報収集装置1は、室内照明装置(第一光学部)30を備えないこともありえる。
白色光環境は、被検者が眩しさを感じない環境であればよい。野外の自然光(太陽光)は輝度が高く、被検者にとって刺激が強すぎる場合が多いので、避けるのが好ましい。
【0105】
カラーライト20(第二光学部)は、デスクライトに限らない。シーリングライトやフロアライト等であってもよい。
室内照明装置30の点灯色を白色(白色光L0)から黄色等(所定光L1)に変化させて、白色光環境と所定光環境をそれぞれ作出してもよい。つまり、室内照明装置30を、第二光学部(所定光環境作出工程S3の光源)として機能させてもよい。
所定光L1は、各種照明器具から照射される人工光に限らず、自然光(太陽光)を利用してもよい。例えば、室内の窓ガラスを着色したり、窓ガラスにカラーフィルターを貼り付けたりして、室内Hを所定光環境にしてもよい。
【0106】
所定光L1(光LA)は、黄色光LAY、マゼンタ色光LAM、シアン色光LAC、緑色光LAGに加えて、例えば赤色光や青色光を用いてもよい。
グレイ光LBやグレイ有色光LBAに加えて、500nm以下の波長光をカットした光や400nm以下の波長光をカットした光(遮光メガネ:Anti-glare eyeglasses)を用いてもよい。
【0107】
被検者の網膜Rの周辺視野領域R2のみに所定光L1を入射させる場合に限らない。網膜Rの全域(中心視野領域R1、周辺視野領域R2)に所定光L1を入射させたり、中心視野領域R1のみに所定光L1を入射させたりしてもよい。
【0108】
所定光環境作出工程S3の後に、再び音刺激Aの提供を行う(第二音刺激提供工程S4)場合について説明したが、これに限らない。第一音刺激提供工程S2の工程中に、白色光環境から所定光環境に変化させてもよい。例えば、被検者に音刺激Aを提供している最中に、カラーライト20を点灯して、白色光環境から所定光環境に移行してもよい。
【0109】
出力工程S7は、集計・分析工程S6の後に必ず行う必要はない。複数の所定光L1を使用した特性情報収集方法においては、集計・分析工程S6を複数回行い、最後に出力工程S7を1回だけ行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 特性情報収集装置
10 パソコン
11 演算処理部(収集部、集計分析部)
12 記憶部
13 ディスプレイ(出力部)
14a キーボード(情報受付部)
14b マウス(情報受付部)
16 印刷プリンタ
17 特性情報収集プログラム
18 音源データベース
19 ヘッドフォン(音刺激提供部)
20 カラーライト(第二光学部)
30 室内照明装置(第一光学部)
40 装着型光学機器(第二光学部)
41 光学機器(有色光レンズ眼鏡)
41Y 光学機器(イエローレンズ眼鏡)
41M 光学機器(マゼンダレンズ眼鏡)
41C 光学機器(シアンレンズ眼鏡)
41G 光学機器(グリーンレンズ眼鏡)
42 光学機器(グレイレンズ眼鏡)
43 光学機器(ブラックレンズ眼鏡)
H 室内
A 音刺激
a1,a2,a3,a4 所定可聴音
Q 回答フォーム
D SDチャート分析表
L 光
L0 白色光
L1 所定光
LA 有色光(所定光)
LAY 黄色光(所定光)
LAM マゼンタ色光(所定光)
LAC シアン色光(所定光)
LAG 緑色光(所定光)
LB グレイ光(所定光)
LBA グレイ有色光(所定光)
LBY グレイ黄色光(所定光)
LBM グレイマゼンタ色光(所定光)
LBC グレイシアン色光(所定光)
LBG グレイ緑色光(所定光)
LD 微光(所定光)
R 網膜
R1 中心視野領域
R2 周辺視野領域
VL L視細胞(Long錐体細胞)
VM M視細胞(Middle錐体細胞)
VS S視細胞(Short錐体細胞)
VR R視細胞(桿体細胞)
【要約】
【課題】被検者の視覚と聴覚の統合に関する特性情報を収集できる特性情報収集方法を提供する。
【解決手段】特性情報収集方法は、白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境において所定可聴音を含む音刺激を被検者に提供する第一音刺激提供工程と、白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する所定光環境作出工程と、所定光環境において音刺激を被検者に再度提供する第二音刺激提供工程と、第一音刺激提供工程と第二音刺激提供工程における音刺激の聞こえ方に関する特性情報を被検者から受け付ける情報受付工程と、被検者から受け付けた特性情報を収集する収集工程と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8