(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】距離測定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20240216BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G01C3/06 120Q
A63B71/06 U
(21)【出願番号】P 2023572588
(86)(22)【出願日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2023022572
【審査請求日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2022162966
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397003747
【氏名又は名称】朝日ゴルフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 千尋
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英祐
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴紀
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0354858(US,A1)
【文献】特開2011-212419(JP,A)
【文献】特開2022-19709(JP,A)
【文献】国際公開第2022/190468(WO,A1)
【文献】特開2009-183556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0031030(US,A1)
【文献】特表2021-508034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/00-3/32
A63B 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフ場で使用される距離測定装置であって、
ゴルフコースのグリーン内の基準位置を記憶する記憶部と、
前記距離測定装置の現在位置を特定する現在位置特定部と、
前記現在位置から測定物までの距離と、前記現在位置に対する前記測定物の方向と、を測定する測定部と、
前記現在位置と、前記測定部が測定した前記距離及び前記方向とに基づいて、前記測定物の位置である測定物位置を特定する測定物位置特定部と、
前記測定部が前記測定物位置を特定していない場合、又は前記測定物位置が前記基準位置に対応する所定の範囲内でない場合に、前記基準位置と前記グリーンの輪郭線とを表示部に表示させ、前記測定物位置が前記基準位置に対応する所定の範囲内である場合に、前記測定物位置と前記グリーンの輪郭線とを前記表示部に表示させる表示処理部と、
を有する距離測定装置。
【請求項2】
前記表示処理部は、前記測定部が前記測定物位置を特定していない状態、又は前記測定物位置が前記基準位置に対応する所定の範囲内でない状態で前記測定物位置特定部が特定した前記測定物位置がグリーン内である場合に、前記測定物位置を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記表示処理部は、前記測定物位置が前記所定の範囲内でない場合に、前記基準位置をピン位置として前記表示部に表示させ、前記測定物位置が前記所定の範囲内である場合に、前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記表示処理部は、前記測定物位置が前記所定の範囲内である場合に、前記現在位置から前記測定物位置までの距離と、前記現在位置と前記測定物位置とを結ぶ直線と前記グリーンの輪郭線とが交差する位置までの距離と、を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記記憶部は、複数のホールのティーイングエリアの位置を示すティー位置情報をさらに記憶し、
前記表示処理部は、前記現在位置が前記ティーイングエリアの位置から所定の範囲内にあり、かつ前記測定部が前記測定物位置を特定していない場合に、前記基準位置をピン位置として前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記表示処理部は、前記測定物位置が前記所定の範囲内である場合に前記測定物位置を前記記憶部に記憶させ、前記測定物位置を前記記憶部に記憶させた後は、前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項7】
前記記憶部は、ホール番号に関連付けてホール内の位置を示すホール範囲データをさらに記憶し、
前記表示処理部は、前記ホール番号に関連付けて前記測定物位置を前記記憶部に記憶させ、前記測定物位置を前記記憶部に記憶させた後は、前記ホール範囲データを参照することにより、前記現在位置が含まれる前記ホール番号に対応する前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させる、
請求項
6に記載の距離測定装置。
【請求項8】
前記距離測定装置のユーザによる操作を受け付ける操作受付部をさらに有し、
前記表示処理部は、前記操作受付部が第1操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶された前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させ、前記操作受付部が第2操作を受け付けた場合に、前記測定部に測定させた後に前記測定物位置特定部が特定した前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させる、
請求項
6に記載の距離測定装置。
【請求項9】
前記表示処理部は、前記操作受付部が第2操作を受け付けた場合に前記測定物位置特定部が特定した前記測定物位置が前記基準位置から前記所定の範囲内である場合に、前記記憶部に記憶された前記測定物位置を更新する、
請求項
8に記載の距離測定装置。
【請求項10】
距離測定装置が有するプロセッサを、
前記距離測定装置の現在位置を特定する現在位置特定部と、
前記現在位置から測定物までの距離と、前記現在位置に対する前記測定物の方向と、を測定する測定部と、
前記現在位置と、前記測定部が測定した前記距離及び前記方向とに基づいて、前記測定物の位置である測定物位置を特定する測定物位置特定部と、
前記測定部が前記測定物位置を特定していない場合、又は前記測定物位置がゴルフコースのグリーン内の基準位置に対応する所定の範囲内でない場合に、前記基準位置と前記グリーンの輪郭線とを表示部に表示させ、前記測定物位置が前記基準位置に対応する所定の範囲内である場合に、前記測定物位置と前記グリーンの輪郭線とを前記表示部に表示させる表示処理部と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場で使用される距離測定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフ場のグリーン上のピンの位置を表示する装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルフ場において、ピンの位置は日によって異なる。特許文献1に記載された装置は、当日のピンの位置を示すデータをゴルフ場のコンピュータから受信することにより、ピンの位置を表示していた。しかしながら、ゴルフ場のコンピュータから当日のピンの位置を示すデータを取得できない場合、ピンの位置を表示できないという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ゴルフ場のコンピュータから当日のピンの位置を示すデータを取得できない場合にもピンの位置を表示できる距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の距離測定装置は、ゴルフ場で使用される距離測定装置であって、ゴルフコースのグリーン内の基準位置を記憶する記憶部と、前記距離測定装置の現在位置を特定する現在位置特定部と、前記現在位置から測定物までの距離と、前記現在位置に対する前記測定物の方向と、を測定する測定部と、前記現在位置と、前記測定部が測定した前記距離及び前記方向とに基づいて、前記測定物の位置である測定物位置を特定する測定物位置特定部と、前記測定部が前記測定物位置を特定していない場合、又は前記測定物位置が前記基準位置に対応する所定の範囲内でない場合に、前記基準位置と前記グリーンの輪郭線とを表示部に表示させ、前記測定物位置が前記基準位置に対応する所定の範囲内である場合に、前記測定物位置と前記グリーンの輪郭線とを前記表示部に表示させる表示処理部と、を有する。
【0007】
前記表示処理部は、前記測定物位置が前記所定の範囲内でない場合に、前記基準位置をピン位置として前記表示部に表示させ、前記測定物位置が前記所定の範囲内である場合に、前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させてもよい。
【0008】
前記表示処理部は、前記測定物位置が前記所定の範囲内である場合に、前記現在位置から前記測定物位置までの距離と、前記現在位置と前記測定物位置とを結ぶ直線と前記グリーンの輪郭線とが交差する位置までの距離と、を前記表示部に表示させてもよい。
【0009】
前記記憶部は、複数のホールのティーイングエリアの位置を示すティー位置情報をさらに記憶し、前記表示処理部は、前記現在位置が前記ティーイングエリアの位置から所定の範囲内にあり、かつ前記測定部が前記測定物位置を特定していない場合に、前記基準位置をピン位置として前記表示部に表示させてもよい。
【0010】
前記表示処理部は、前記測定物位置が前記所定の範囲内である場合に前記測定物位置を前記記憶部に記憶させ、前記測定物位置を前記記憶部に記憶させた後は、前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させてもよい。
【0011】
前記記憶部は、ホール番号に関連付けてホール内の位置を示すホール範囲データをさらに記憶し、前記表示処理部は、前記ホール番号に関連付けて前記測定物位置を前記記憶部に記憶させ、前記測定物位置を前記記憶部に記憶させた後は、前記ホール範囲データを参照することにより、前記現在位置が含まれる前記ホール番号に対応する前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させてもよい。
【0012】
前記距離測定装置のユーザによる操作を受け付ける操作受付部をさらに有し、前記表示処理部は、前記操作受付部が第1操作を受け付けた場合に、前記記憶部に記憶された前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させ、前記操作受付部が第2操作を受け付けた場合に、前記測定部に測定させた後に前記測定物位置特定部が特定した前記測定物位置をピン位置として前記表示部に表示させてもよい。
【0013】
前記表示処理部は、前記操作受付部が第2操作を受け付けた場合に前記測定物位置特定部が特定した前記測定物位置が前記基準位置から前記所定の範囲内である場合に、前記記憶部に記憶された前記測定物位置を更新してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様のプログラムは、距離測定装置が有するプロセッサを、前記距離測定装置の現在位置を特定する現在位置特定部と、前記現在位置から測定物までの距離と、前記現在位置に対する前記測定物の方向と、を測定する測定部と、前記現在位置と、前記測定部が測定した前記距離及び前記方向とに基づいて、前記測定物の位置である測定物位置を特定する測定物位置特定部と、前記測定部が前記測定物位置を特定していない場合、又は前記測定物位置がゴルフコースのグリーン内の基準位置に対応する所定の範囲内でない場合に、前記基準位置と前記グリーンの輪郭線とを表示部に表示させ、前記測定物位置が前記基準位置に対応する所定の範囲内である場合に、前記測定物位置と前記グリーンの輪郭線とを前記表示部に表示させる表示処理部と、として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゴルフ場のコンピュータから当日のピンの位置を示すデータを取得できない場合にもピンの位置を表示できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】距離測定装置1の概要を説明するための図である。
【
図2】距離測定装置1が有するディスプレイに表示される画面の例を示す図である。
【
図6】測定物位置特定部163が測定物位置を特定する方法を説明するための図である。
【
図7】情報作成部164が作成したピンエッジ間距離情報の一例を示す図である。
【
図8】情報作成部164がピンエッジ間距離情報を作成する方法を説明するための図である。
【
図9】測定物位置とグリーンGとの関係を示す図である。
【
図10】測定物位置とグリーンGとの関係の他の例を示す図である。
【
図12】他のホールのピン位置を測定した場合に表示される画面の例を示す図である。
【
図13】距離測定装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】測定処理(S8)のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[距離測定装置1の概要]
図1は、距離測定装置1の概要を説明するための図である。距離測定装置1は、ゴルフ場で距離を測定するための装置である。距離測定装置1は、例えばゴルフをプレイする距離測定装置1のユーザUがグリーンG上のピンPまでの距離を測定するための装置である。
【0018】
図1は、グリーンG上にピンフラッグPが設置されており、ユーザUがピンフラッグPまでの距離を測定している様子を示している。ユーザUが距離を測定するための操作を行うと、距離測定装置1はレーザ光Lを発射し、発射したレーザ光LがピンPにおいて反射した反射光を検出する。距離測定装置1は、レーザ光Lを発射してから反射光を検出するまでの時間又は位相の変化量の少なくともいずれかに基づいて、ピンPまでの距離を測定する。
【0019】
図2は、距離測定装置1が有するディスプレイに表示される画面の例を示す図である。ユーザUは、距離測定が終了すると
図2に示すような画面を見ることができる。
図2(a)は、レーザ光LがピンPに当たり、ユーザUの位置からピンPまでの距離が150ヤードであることが表示された画面の例である。画面の左上には、グリーンGとピンPの位置との関係を示す図が表示されている。
【0020】
また、画面の左上には、ユーザUの現在位置からグリーンGの奥側までの距離(B170)、ユーザUの現在位置からピンPまでの距離(P150)、ユーザUの現在位置からグリーンGの手前までの距離(F140)も表示されている。さらに、ピンPの位置からグリーンGの左のエッジまでの距離が9ヤードであり、右のエッジまでの距離が7ヤードであることも表示されている。これらの表示内容から、ユーザUは、ピンPまでの距離、及びグリーンGにおけるピンPの位置を把握することができる。
【0021】
ところで、ユーザUが距離測定装置1を用いてピンPまでの距離を測定する際に、ピンPの方向に近い位置にある木や人工構造物にレーザ光が当たってしまうことがある。この場合に、ユーザUの位置から樹木や人工構造物までの距離が表示されると、ユーザUはピンPまでの距離を誤認識してしまう。そこで、距離測定装置1は、グリーンGの範囲外の物体までの距離が測定された場合に、グリーンGの範囲内の物体までの距離が測定された場合と異なる画面を表示することを特徴としている。具体的には、距離測定装置1は、グリーンG内の基準位置とレーザ光が当たった物体の位置である測定物位置とを結ぶ直線とグリーンGの輪郭線とが交わるエッジ位置が、基準位置と測定物位置との間にあるか否かによって異なる態様で測定結果を表示する。
【0022】
図2(b)は、ピンPの後方にある木にレーザ光が当たった状態の画面の例である。この画面においては、測定した距離が180ヤードであり、距離が測定された物体がピンではないことを示す警告が表示されている。また、画面の左上には、ピンPの位置ではなく、予め記憶された基準位置の一例であるグリーンGのセンター位置までの距離(C155)が表示されている。ユーザUは、このような表示を見ることで、ピンPまでの距離が測定されていないことを認識し、再測定をすることができる。
【0023】
基準位置は、グリーンGの内側であれば任意の位置であってもよいが、例えばセンター位置であることが望ましい。センター位置は、例えば、グリーンGの第1方向(例えば南北方向)の第1直線がグリーンGの輪郭線と交わる2点の中央位置を通り、かつ第1方向と直交する第2直線が、グリーンGの輪郭線と交わる2点間の中央位置である。基準位置がグリーンGの内側に設定されていることで、基準位置とグリーンGの輪郭線との間にピンP以外の物体が存在する確率が低くなる。したがって、従来の距離測定装置のようにレーザ光が当たった位置がグリーンGの最も手前の位置と最も奥の位置との間に含まれているか否かに基づいてレーザ光がピンPに当たったかどうかを判定する場合よりも精度が向上する。
【0024】
なお、基準位置を通る直線が、グリーンGの輪郭線と2点のみで交わる位置になるように基準位置が設定されていることが望ましい。基準位置がこのように設定されていることで、距離測定装置1は、グリーンG上のエッジ位置が基準位置と測定物位置との間にある場合にはグリーンGの外の物体にレーザ光が当たったと確実に判定することができる。以下、距離測定装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0025】
[距離測定装置1の構成]
図3は、距離測定装置1の構成を示す図である。距離測定装置1は、電波受信部10と、レーザ部11と、センサ部12と、操作受付部13と、表示部14と、記憶部15と、制御部16と、を有する。制御部16は、現在位置特定部161と、測定部162と、測定物位置特定部163と、情報作成部164と、表示処理部165と、を有する。
【0026】
電波受信部10は、GPS(Global Positioning System)又は準天頂衛星システム等の測位衛星から電波を受信する。電波受信部10は、受信した電波に含まれているデータを現在位置特定部161に入力する。
【0027】
レーザ部11は、測定部162の制御によりレーザ光を発する。また、レーザ部11は、発したレーザ光が物体で反射した反射レーザ光を受ける。レーザ部11は、例えば、発したレーザ光の位相と受けた反射レーザの位相との差に基づいて、レーザ光を発してから反射レーザ光を受けるまでの遅延時間を算出する。レーザ部11は、算出した遅延時間を測定部162に入力する。
【0028】
センサ部12は、距離測定装置1の姿勢を検出するための方位センサを有する。センサ部12は、例えば3軸方向の加速度センサを方位センサとして有する。センサ部12は、水平面における方向を検出するための地磁気センサを方位センサとして有していてもよい。センサ部12は、方位センサが検出した方位を示す方位データを測定部162に入力する。
【0029】
操作受付部13は、ユーザUの操作を受けるためのデバイスを有する。操作受付部13は、例えば、操作ボタン又はタッチパネルを有する。操作受付部13は、入力された操作の内容を示す操作データを現在位置特定部161、測定部162及び表示処理部165に入力する。
【0030】
表示部14は、各種の情報を表示するディスプレイである。表示部14は、例えば
図2に示したように、レーザ光が当たった物体までの距離、及びグリーンGまでの距離を示す情報を表示する。
【0031】
記憶部15は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を有する。記憶部15は、制御部16が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部15は、制御部16が、ピンPまでの距離を算出したり、ピンPまでの距離を正しく測定できたか否かを判定したりするために用いる各種の情報を記憶している。これらの情報は、例えば、距離測定装置1の製造時に記憶された情報であってもよく、通信インターフェース(不図示)を介して外部装置から送信された情報であってもよい。
【0032】
一例として、記憶部15は、ゴルフコースの各グリーンGの基準位置(例えばセンター位置)を示す基準位置情報を記憶する。
図4は、基準位置情報の一例を示す図である。
図4に示す基準位置情報においては、グリーンGを識別するためのグリーン識別情報の一例であるホール番号と、基準位置を示す緯度・経度情報とが関連付けられている。
【0033】
また、記憶部15は、ゴルフコースのグリーンG内の基準位置及びグリーンGのエッジ上の複数のエッジ位置を示す基準情報を記憶する。基準情報は、例えば、ゴルフコースのグリーンG内の基準位置からグリーンGのエッジ上の複数のエッジ位置までの複数の基準距離と、基準位置と複数のエッジ位置それぞれを結ぶ方向と基準向きとの角度である複数の基準角度と、が関連付けられた情報である。基準情報は、基準位置の緯度・経度と、グリーンGのエッジ上の複数のエッジ位置の緯度・経度と、を含む情報であってもよい。
図5は、基準情報の一例を示す図である。
【0034】
図5(a)は、基準情報の概念を示す図である。
図5(a)においては、基準向き(例えば北向き)に対して30度ごとに、黒い四角形で示すグリーンGの基準位置CからグリーンGのエッジまでの距離(以下、「基準距離」という場合がある)が示されている。
図5(b)は、記憶部15が記憶している基準情報の一例を示しており、当該基準情報においては基準角度と基準距離とが関連付けられている。
図5においては、基準角度が30度ごとに定められているが、基準角度の間隔は細かいほど好ましく、例えば1度ごとに定められている。
【0035】
記憶部15は、複数のグリーンGに対応する複数の基準情報を記憶してもよい。記憶部15は、これらの複数の基準情報と、複数のグリーンGに対応するティーイングエリアの位置を示すティー位置情報と、をホール番号に関連付けて記憶してもよい。記憶部15は、ホール番号に関連付けてホール内の位置を示すホール範囲データを記憶してもよい。
【0036】
また、記憶部15は、制御部16が特定したピンPの位置を記憶する。記憶部15は、例えばホール番号に関連付けてピンPの位置を記憶する。記憶部15は、制御部16の制御により、ピンPの位置を更新することができる。
【0037】
制御部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む。制御部16は、記憶部15に記憶されたプログラムを実行することにより、現在位置特定部161、測定部162、測定物位置特定部163、情報作成部164及び表示処理部165として機能する。
【0038】
現在位置特定部161は、電波受信部10から取得したデータに基づいて距離測定装置1の現在位置を特定する。現在位置特定部161は、例えば操作受付部13が距離を測定するための操作を受け付けた時点で電波受信部10から取得したデータに基づいて、距離測定装置1の現在位置の緯度・経度を特定する。現在位置特定部161は、特定した現在位置を測定部162に通知する。現在位置特定部161は、ホール範囲データが示す各ホールに対応する緯度・経度と現在位置の緯度・経度とを比較して現在位置が含まれているホールを特定することにより、ユーザUがプレイをしているホールの番号を特定してもよい。
【0039】
測定部162は、操作受付部13が距離を測定するための操作を受け付けた場合に、距離測定装置1の現在位置から測定物までの距離と、現在位置に対する測定物の方向と、を測定する。測定物は、レーザ部11が発したレーザ光が当たった物体である。測定部162は、レーザ部11から入力された遅延時間に基づいて、距離測定装置1の現在位置から測定物までの距離を算出する。
【0040】
測定部162は、センサ部12から入力された方位データに基づいて、距離測定装置1が向いている方位、すなわち距離測定装置1がレーザ光を発した方向を特定することにより、測定物の方向を測定する。測定物の方向は、例えば北の向きに対する角度(0°~259°)により表される。測定部162は、測定した距離及び方向を測定物位置特定部163に通知する。
【0041】
測定物位置特定部163は、現在位置と、測定部162が測定した距離及び方向とに基づいて、測定物の位置である測定物位置を特定する。
図6は、測定物位置特定部163が測定物位置を特定する方法を説明するための図である。
【0042】
測定部162が測定したピンPまでの距離がDであり、現在位置からピンPへの向きが北向きに対して40°である場合、南北方向における距離測定装置1とピンPとの距離はD1であり、東西方向における距離測定装置1とピンPとの距離はD2である。測定物位置特定部163は、距離測定装置1の現在位置の緯度・経度に対して、南北方向にD1、東西方向にD2だけシフトさせた位置の緯度・経度を測定物位置として特定する。測定物位置特定部163は、特定した測定物位置を情報作成部164及び表示処理部165に通知する。
【0043】
情報作成部164は、ピンPの位置を示す測定物位置とグリーンGの輪郭線までの距離との関係を示すグリーン情報を作成する。具体的には、情報作成部164は、基準情報と測定物位置とに基づいて、ピンエッジ間距離情報を含むグリーン情報を作成する。ピンエッジ間距離情報は、測定物位置から複数のエッジ位置までの複数のエッジ距離と、測定物位置と複数のエッジ位置それぞれとを結ぶ方向と基準向きとの角度差である複数のエッジ角度と、が関連付けられた情報である。詳細については後述するが、情報作成部164は、基準位置と測定物位置との位置関係、基準距離及び基準角度を用いてエッジ距離及びエッジ角度を算出して、ピンエッジ間距離情報を作成する。
【0044】
情報作成部164は、作成したピンエッジ間距離情報を表示処理部165に通知する。情報作成部164は、ピンエッジ間距離情報を記憶部15に記憶させることにより、表示処理部165がピンエッジ間距離情報を記憶部15から読み出せるようにしてもよい。
【0045】
図7は、情報作成部164が作成したピンエッジ間距離情報の一例を示す図である。
図7に示すピンエッジ間距離情報は、
図5に示した基準情報と、測定物位置特定部163が特定した測定物位置であるピン位置とに基づいて情報作成部164が作成した情報である。
【0046】
図7(a)は、基準向きに対して30度ごとに、黒丸で示すグリーンGのピン位置PからグリーンGのエッジまでの距離を示している。
図7(a)に示す黒い四角形は、
図5(a)に示した基準位置Cを示している。
図7(b)は、情報作成部164が作成したピンエッジ間距離情報の一例を示しており、当該ピンエッジ間距離情報においてはエッジ角度とエッジ距離とが関連付けられている。
図7においては、基準角度が30度ごとに定められているが、エッジ角度の間隔は細かいほど好ましく、例えば1度ごとに定められている。
【0047】
図8は、情報作成部164がピンエッジ間距離情報を作成する方法を説明するための図である。
図8における黒い四角形は基準位置Cを示しており、黒い丸はピン位置Pを示しており、黒い三角形はエッジ位置Eの一例を示している。
図8における基準位置Cとエッジ位置Eとの距離はd1である。
【0048】
情報作成部164は、基準位置Cの緯度・経度とピン位置Pの緯度・経度との関係に基づいて、基準位置Cとピン位置Pとの間の距離Δdを算出する。また、情報作成部164は、基準位置Cの緯度・経度とエッジ位置Eの緯度・経度との関係、及びピン位置Pの緯度・経度とエッジ位置Eの緯度・経度との関係に基づいて、基準位置Cとエッジ位置Eとを結ぶ直線の方向とピン位置Pとエッジ位置Eとを結ぶ直線の方向との角度θを算出する。
【0049】
基準位置Cとピン位置Pを結ぶ直線の延長線と、当該延長線と直交しエッジ位置Eを通る直線との交点をTとすると、CT間の距離Δd+xは、d1×cosθにより算出される。情報作成部164は、Δd+xからΔdを減算することによりPT間の距離xを算出する。また、情報作成部164は、TE間の距離yをd1×sinθにより算出する。そして、情報作成部164は、d2=√(x2+y2)により、ピン位置とエッジ位置との距離を算出する。
【0050】
また、情報作成部164は、PTとPEとの角度φをArctan(y/x)により算出する。角度φは、基準角度θに対応するエッジ位置Eのエッジ角度である。
【0051】
情報作成部164は、基準情報に含まれる全ての基準角度に対して上記の演算を実行することにより、全てのエッジ角度に対応するエッジ距離を算出し、
図7(b)に示したようなピンエッジ間距離情報を作成する。情報作成部164は、作成したピンエッジ間距離情報を記憶部15に記憶させる。
【0052】
なお、基準角度θとエッジ角度φとは異なるので、基準角度θが1度ずつ変化するとしても、基準角度θに対応するエッジ角度φは1度ずつ変化しない。そこで、基準角度の間隔がエッジ角度の間隔(例えば1度)よりも小さくなっていてもよい。また、情報作成部164が、複数の基準角度それぞれに対応する複数のエッジ位置の間の位置を補間することにより、ピン位置を中心として所定の間隔のエッジ角度に対応するエッジ位置を算出し、算出したエッジ位置とピン位置との距離を算出してもよい。
【0053】
情報作成部164は、レーザ光が当たった物体がピンPであることを条件として、測定物位置に基づいてピンエッジ間距離情報を作成してもよい。情報作成部164は、例えば、基準位置からピン位置までの距離が、基準位置から複数のエッジ位置までの距離よりも小さいピン位置情報に基づいてピンエッジ間距離情報を作成する。基準位置からピン位置までの距離が基準位置から複数のエッジ位置までの距離よりも大きい場合、ピン位置がグリーンGの外にあることになるので、情報作成部164はピンエッジ間距離情報を作成しない。情報作成部164がこのように動作することで、ピンPの位置と異なる測定物位置に基づいて不適切なピンエッジ間距離情報を作成してしまうことを防げる。
【0054】
表示処理部165は、各種の情報を表示部14に表示させる。表示処理部165は、例えば、
図2に示したように、レーザ部11が発したレーザ光が当たった物体までの距離、及びグリーンGにおけるピンPの位置を示す画像の少なくともいずれかを表示部14に表示させる。表示処理部165は、測定物位置が基準位置に対応する所定の範囲内である場合(例えば、測定物位置がグリーンGの輪郭線の内側である場合)、
図2(a)に示したように、測定物位置とグリーンGの輪郭線とを表示部14に表示させる。この場合、表示処理部165は、測定物位置をピンPの位置として表示部14に表示させる。所定の範囲は、グリーンGの範囲よりも少し広い範囲であってもよく、少し狭い範囲であってもよい。
【0055】
具体的には、
図2(a)に示したように、表示処理部165は、複数のエッジ位置とともに、グリーンGにおけるピン位置として測定物位置を表示部14に表示させる。表示処理部165は、複数のエッジ位置を結ぶ曲線により複数のエッジ位置を表示してもよい。また、表示処理部165は、現在位置から測定物位置までの距離と、現在位置と測定物位置とを結ぶ直線とグリーンGの輪郭線とが交差するエッジ位置までの距離と、を表示部14に表示させてもよい。
【0056】
表示処理部165は、測定物位置が基準位置に対応する所定の範囲内でない場合に、
図2(b)に示したように、基準位置(例えばセンター位置)とグリーンGの輪郭線とを表示部14に表示させる。表示処理部165は、測定物位置が所定の範囲内でない場合に、基準位置をピン位置として表示部14に表示させてもよい。この際、表示処理部165は、基準位置をピン位置として表示していることを示すテキスト(例えば「センター位置を表示しています」)を表示部14に表示させてもよい。
【0057】
表示処理部165は、測定物位置特定部163が測定物位置を特定していない場合に、基準位置とグリーンGの輪郭線とを表示部14に表示させてもよい。この場合、表示処理部165は、基準位置をピン位置として表示部14に表示させてもよい。なお、測定部162が測定物位置を特定していない場合とは、例えば、ユーザUがプレイしているホールにおいて、まだ距離を測定する操作が行われておらず、測定物位置が表示部14に記憶されていない場合である。
【0058】
表示処理部165は、現在位置がティーイングエリアの位置から所定の範囲内にあり、かつ測定部162が測定物位置を特定していない場合に、基準位置をピン位置として表示部14に表示させてもよい。また、表示処理部165は、現在位置から基準位置までの距離を表示部14に表示させてもよい。表示処理部165は、現在位置が、ピンPを見ることができないティーイングエリア、又はピンPの位置までの距離が所定の距離以上(例えば300ヤード以上)のティーイングエリアである場合に、基準位置をピン位置として表示部14に表示させてもよい。表示処理部165がこのように動作することで、ピンPまでの距離を測定できないティーイングエリアにおいても、ユーザUがグリーンGの形状やグリーンGまでの距離を把握することができる。
【0059】
表示処理部165は、基準情報により特定される複数のエッジ位置で囲まれる領域内に測定物位置がない場合に、当該領域内に測定物位置がある場合と異なる態様の情報(例えば警告情報)を表示部14に表示させる。具体的には、表示処理部165は、測定物位置がグリーンG内のピンPであるか否かによって異なる態様の情報を表示部14に表示させる。
【0060】
図9は、測定物位置とグリーンGとの関係を示す図である。
図9(a)は、測定物位置M1がグリーンG内のピンPの位置である場合を示している。
図9(b)は、測定物位置M2がグリーンGの外の物体(例えばグリーンGの奥側の木)である場合を示している。表示処理部165は、これらのそれぞれの場合によって異なる態様の情報を表示部14に表示させる。
【0061】
レーザ部11が発したレーザ光がグリーンG内のピンPに当たった場合、
図9(a)に示すように、測定物位置M1は、基準位置Cと、基準位置Cと測定物位置M1とを結ぶ直線上のエッジ位置E1又はエッジ位置E2との間にあるはずである。そこで、表示処理部165は、基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の少なくとも1つのエッジ位置(
図9においてはエッジ位置E2)と基準位置との間に測定物位置がある場合に、レーザ部11が発したレーザ光がピンPに当たったと判定し、複数のエッジ位置とともに、測定物位置をグリーンGにおけるピン位置として表示部14に表示させる。
【0062】
一方、レーザ部11が発したレーザ光がグリーンGの外にある物体に当たった場合、
図9(b)に示すように、測定部162が測定した測定物位置M2は、基準位置Cと、基準位置Cと測定物位置M2とを結ぶ直線上のエッジ位置E1又はエッジ位置E2との間にない。このような場合、測定物位置特定部163が特定した距離測定装置1から測定物までの距離は距離測定装置1からピンPまでの距離ではない。そこで、表示処理部165は、測定物位置がグリーンGの外側にある場合に、測定物位置がグリーンGの内側にある場合と異なる態様で測定結果を表示部14に表示させる。
【0063】
具体的には、表示処理部165は、基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の少なくとも1つのエッジ位置が、基準位置と測定物位置との間にあるか否かによって異なる態様の測定結果を表示部14に表示させる。言い換えると、表示処理部165は、基準位置と測定物位置との距離が、基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の複数のエッジ位置に対応する基準距離よりも大きいか否かによって異なる態様の測定結果を表示部14に表示させる。
【0064】
図9(a)に示す例においては、基準位置Cと測定物位置M1とを結ぶ直線上にエッジ位置E1、E2が存在する。基準位置CがグリーンGのセンター位置である場合、表示処理部165は、基準位置Cと測定物位置M1との距離が、基準位置Cとエッジ位置E1との距離以下であり、かつ基準位置Cとエッジ位置E2との距離以下であるときに、測定物位置M1がグリーンGの内側にあると判定する。
図9(b)に示す例においては、基準位置Cと測定物位置M2との距離が、少なくとも基準位置Cとエッジ位置E1との距離よりも大きいので、表示処理部165は測定物位置M2がグリーンGの外側にあると判定する。そして、表示処理部165は、測定物位置がグリーンGの内側にある場合と外側にある場合とで、異なる態様の測定結果を表示部14に表示させる。
【0065】
異なる態様の測定結果の表示例として、表示処理部165は、測定物位置がグリーンGの外側にあると判定した場合、
図2(b)に示したように、ピンの位置を正しく測定できていないことを示す警告を表示部14に表示させる。表示処理部165は、基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の全てのエッジ位置が基準位置と測定物位置との間になく、測定物位置がグリーンGの内側にあると判定した場合、測定物位置までの距離を緑色で表示し、測定物位置がグリーンGの外側にあると判定した場合に、測定物位置までの距離を赤色で表示してもよい。
【0066】
図10は、測定物位置とグリーンGとの関係の他の例を示す図である。グリーンGの輪郭線に凹部が存在する場合、測定物位置がグリーンGの外であるにもかかわらず、基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の少なくとも1つのエッジ位置と基準位置との間に測定物位置があるという場合がある。そこで、表示処理部165は、基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上に3以上のエッジ位置がある場合に、基準位置から奇数番目の第1エッジ位置から、第1エッジ位置よりも基準位置から遠い偶数番目の第2エッジ位置までの間に測定物位置があるか否かによって異なる態様の測定結果を表示部に表示させてもよい。
【0067】
図10(a)に示す例において、基準位置Cと測定物位置M1とを結ぶ直線上にはエッジ位置E1、E2、E3、E4があり、基準位置Cから1番目のエッジ位置E3から2番目のエッジ位置E4までの間に測定物位置がない。そして、測定物位置M1は、基準位置Cとエッジ位置E2との間にある。このような場合、表示処理部165は、測定物位置M1がグリーンG内にあるので、測定物位置M1の位置がピンPの位置であると判定する。
【0068】
一方、
図10(b)に示す例においては、基準位置Cから1番目のエッジ位置E3から2番目のエッジ位置E4までの間に測定物位置M2がある。このような場合、表示処理部165は、測定物位置M2がグリーンGの外にあるので、測定物位置M2の位置がピンPの位置でないと判定する。このようにして、表示処理部165は、グリーンGの形状によらず、レーザ部11が発したレーザ光がピンPに当たっているか否かを正しく判定することができる。
【0069】
なお、
図10に示すようにグリーンGの輪郭線に凹部が存在する場合、基準位置を通る直線が、グリーンGの輪郭線と2点のみで交わる位置になるように基準位置が設定されていることが望ましい。すなわち、凹部を跨ぐ直線が通らない位置に基準位置が設定されていることが望ましい。
図11は、このような基準位置Cの例を示す図である。基準位置がこのように設定されていることで、表示処理部165は、グリーンGの輪郭線に凹部があるとしても、グリーンG上のエッジ位置が基準位置と測定物位置との間にある場合にグリーンGの外の物体にレーザ光が当たったと判定することができる。
【0070】
表示処理部165は、測定物位置が所定の範囲内(例えばグリーンGの内側)である場合に測定物位置を記憶部15に記憶させ、測定物位置を記憶部15に記憶させた後は、測定物位置をピン位置として表示部14に表示させる。表示処理部165は、ホール番号に関連付けて測定物位置を記憶部15に記憶させてもよい。この場合、表示処理部165は、測定物位置を記憶部15に記憶させた後は、ホール範囲データを参照することにより、現在位置が含まれるホールの番号に対応する測定物位置をピン位置として表示部14に表示させてもよい。
【0071】
具体的には、表示処理部165は、操作受付部13が、測定済の距離を表示させるための第1操作を受け付けた場合に、記憶部15に記憶された測定物位置をピン位置として表示部14に表示させる。表示処理部165がこのように動作することで、ユーザUがホールにおいてピンPの位置を一度測定すると、それ以降は、ユーザUがピンPの位置を測定し直す必要がない。
【0072】
操作受付部13が、新たに距離を測定するための第2操作を受け付けた場合、表示処理部165は、測定部162が新たに測定した測定物までの距離に基づいて特定された測定物位置をピン位置として表示部14に表示させる。測定物位置特定部163は、操作受付部13が第2操作を受け付けた時点の距離測定装置1の現在位置と、距離測定装置1の向きと、測定部162が特定した距離(すなわちレーザ光が当たった物体までの距離)とに基づいて、測定物位置を特定する。測定物位置特定部163及び表示処理部165がこのように動作することで、ユーザUがグリーンGに近づいた時点で、より高い精度でピンPまでの距離を把握することができる。
【0073】
表示処理部165は、測定物位置特定部163が特定した測定物位置が、表示部14に記憶されている測定物位置と異なる場合、表示部14に記憶されている測定物位置を更新してもよい。表示処理部165は、操作受付部13が第2操作を受け付けた場合に測定物位置特定部163が特定した測定物位置が基準位置から所定の範囲内(例えばグリーンGの範囲内)であることを条件として、記憶部15に記憶された測定物位置を更新してもよい。このように表示処理部165が動作することで、ピンPではない物体にレーザ光が当たった場合に、当該物体の位置がピンPの位置として記憶部15に記憶されることを防げる。
【0074】
表示処理部165は、基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の少なくとも1つのエッジ位置が、基準位置と測定物位置との間にある場合、すなわちレーザ光がグリーンGの外にある物体に当たった場合に、測定物位置をピン位置と異なる態様で表示部14に表示させるとともに、測定物位置から最も近いエッジ位置までの距離を表示部14に表示させてもよい。一例として、測定物位置がグリーンGの奥にある木である場合、表示処理部165は、木からグリーンGの最も奥側のエッジ位置までの距離を表示部14に表示させる。表示処理部165がこのような距離を表示させることで、ユーザUは、グリーンGをどれぐらいオーバーすると木の位置に達するのかを把握することができる。
【0075】
ところで、ゴルフコースには複数のホールがあるので、記憶部15には、複数のホールそれぞれに対応する基準情報が記憶されている。表示処理部165は、レーザ光がピンPに当たったか否かを判定するために、ユーザUがプレイをしているホールに対応する基準情報に含まれているエッジ位置を用いる必要がある。
【0076】
そこで、表示処理部165は、現在位置がティーイングエリアの位置から所定の範囲内にある場合に、当該ティーイングエリアに対応するホール番号を、ユーザUがプレイ中のホールの番号である現在ホール番号として特定する。表示処理部165は、例えば記憶部15に記憶された複数のティーイングエリアの位置のうち、現在位置に最も近いティーイングエリアの位置に対応するホールを、ユーザUがプレイしているホールであるとする。表示処理部165は、記憶部15に記憶された各ホールの領域の位置を示すデータを参照することにより、ユーザUがプレイしているホールを特定してもよい。
【0077】
表示処理部165は、ユーザUがプレイ中のホールのグリーンG内に測定物位置がなく、他のホールのグリーンG内にあると判定した場合、他のホールのピンを測定していることを示す所定の情報を表示部14に表示させてもよい。所定の情報は、例えば、他のホールのピン位置を測定していることを示す警告情報であるが、プレイ中のホールのピン位置を正しく測定できている場合と異なる色の情報であってもよい。
【0078】
図12は、他のホールのピン位置を測定した場合に表示される画面の例を示す図である。
図12に示すように、表示処理部165は、例えば、現在ホール番号に対応する基準情報により特定される複数のエッジ位置で囲まれる領域内に測定物位置がない場合に、プレイ中のホールと異なる他のホールのピン位置を測定していることを示す情報を表示部14に表示させる。表示処理部165は、複数のホールに対応する複数の基準情報に対応する複数の基準位置のうち、測定物位置から最も近い基準位置に対応する基準情報により特定される複数のエッジ位置で囲まれる領域内に測定物位置がない場合に、表示部14に所定の情報を表示させてもよい。
【0079】
表示処理部165は、記憶部15に記憶された各ホール番号に対応する基準情報を参照し、測定物位置から最も近い基準位置が、現在ホール番号に対応する基準位置でない場合に、表示部14に所定の情報を表示させてもよい。表示処理部165がこのように動作することで、例えば隣接するホールのグリーンG上のピンPにレーザ光が当たったにもかかわらず、適切にピンPまでの距離が測定されたとユーザUが誤解することを防げる。
【0080】
ところで、電波受信部10が受信する電波にノイズが重畳されてしまったような場合に、現在位置特定部161が特定した現在位置に誤差が生じてしまい、ユーザUがプレイ中のホールが誤認識されるケースが想定される。また、ユーザUがプレイ中のホールを移動中に、隣接するホールのティーイングエリアとの距離が近くなることにより、ユーザUがプレイ中のホールが誤認識されるケースも想定される。そこで、表示処理部165は、ティーイングエリアの位置に基づいてユーザUがプレイするホールを特定した後に、ユーザUが当該ホールのグリーンGから所定の距離内に到達する前に、現在位置が他のホールにあると判定した場合、警告を表示部14に表示させてもよい。表示処理部165は、警告を表示するとともに、ホール番号を入力する操作を受け付ける画面を表示部14に表示させてもよい。
【0081】
[2グリーンへの対応]
ゴルフ場によっては、各ホールに複数のグリーン(例えば2つのグリーン)がある。このようなゴルフ場に対して、記憶部15は、ホール番号に関連付けて複数のグリーンそれぞれの基準情報を記憶する。表示処理部165は、複数のグリーンそれぞれに対して、基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の少なくとも1つのエッジ位置が、基準位置と測定物位置との間にあるか否かを判定する。表示処理部165は、複数のグリーンのうち1つのグリーンにおいて、基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の全てのエッジ位置が、基準位置と測定物位置との間にないか否かによって異なる態様の測定結果を表示部14に表示させる。
【0082】
具体的には、表示処理部165は、複数のグリーンのうち1つのグリーンの基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の全てのエッジ位置が、基準位置と測定物位置との間にないという条件を満たす場合、測定物位置が、当該条件を満たすグリーンのピン位置であると判定する。表示処理部165は、2つのグリーンそれぞれの基準位置と測定物位置とを結ぶ複数の直線それぞれの上の少なくとも1つのエッジ位置が、それぞれのグリーンの基準位置と測定物位置との間にある場合、測定物位置がピン位置ではないと判定して、例えば警告を表示する。表示処理部165がこのように動作することで、2つのグリーンがあるホールにおいても、ユーザUがピン位置を正しく測定できたかどうかを確認することができる。
【0083】
なお、制御部16は、不図示の通信部を介して、ゴルフ場のコンピュータから当日の使用グリーンに関する情報を取得し、表示処理部165は、使用グリーンの基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の少なくとも1つのエッジ位置が、基準位置と測定物位置との間にあるか否かを判定してもよい。制御部16は、操作受付部13を介して当日の使用グリーンに関する情報を取得してもよい。
【0084】
[距離測定装置1における処理の流れ]
図13は、距離測定装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
図13のフローチャートは、距離測定装置1の電源が入っているスタンバイ状態から開始している。
【0085】
スタンバイ状態において、制御部16は、操作受付部13がユーザUの操作を受け付けたか否かを監視する(S1)。ユーザUが距離を測定する操作をした場合(S1においてYES)、現在位置特定部161は、距離測定装置1の現在位置及び距離測定装置1の向きを特定する(S2)。また、現在位置特定部161は、ホール範囲データを参照することにより、特定した現在位置に対応するホール番号を特定する(S3)。
【0086】
表示処理部165は、特定されたホール番号に関連付けてピン位置の測定履歴が記憶されているか否かを判定する(S4)。測定履歴が記憶されている場合(S4においてYES)、表示処理部165は、ホール番号に関連付けて記憶されたピン位置と現在位置との距離を算出する(S5)。表示処理部165は、算出したピンPまでの距離とグリーンGにおけるピンPの位置を表示部14に表示させる(S6)。
【0087】
操作受付部13がピン位置を再度測定するための操作を受け付けた場合(S7においてYES)、又は測定履歴が記憶されていない場合(S4においてNO)、測定部162はレーザ部11にレーザ光を発射させて物体までの距離を測定する(S8)。測定処理の詳細については、
図14を参照しながら後述する。
【0088】
続いて、表示処理部165は、距離が測定された物体がピンPであるか否かを判定する(S9)。表示処理部165は、測定物位置がグリーンG内にあり、距離が測定された物体がピンPであると判定した場合(S9においてYES)、測定された距離とピンPの位置を含む測定結果を表示部14に表示させる(S10)。
【0089】
表示処理部165は、測定物位置がグリーンGの外にあり、距離が測定された物体がピンPではないと判定した場合(S9においてNO)、ピンが測定されていないことを示す警告を表示部14に表示させる(S11)。ここで再度の測定をするための操作を操作受付部13が受け付けた場合(S12においてYES)、測定部162は再度の測定を実行する(S8)。
【0090】
制御部16は、距離測定装置1の電源がオフになるまでの間(S13においてNO)、S1からS12までの処理を繰り返す。表示処理部165は、操作が行われてから所定の時間(例えば30秒)が経過した場合に、消費電力を削減するために表示部14の表示をオフにしてもよい。
【0091】
図14は、測定処理(S8)のフローチャートである。測定部162は、レーザ部11にレーザ光を発射させることにより測定物までの距離を測定する(S81)。測定物位置特定部163は、測定された距離と、距離測定装置1の現在位置と、距離測定装置1の向きとに基づいて、測定物位置を特定する(S82)。
【0092】
続いて、表示処理部165は、ユーザUがプレイしているホールの基準位置と測定物位置を通る直線を特定し(S83)、直線上の少なくとも1つのエッジ位置が基準位置と測定物位置との間にないという条件を満たすか否かを判定する(S84)。表示処理部165は、エッジ位置が基準位置と測定物位置との間にないと判定した場合(S84においてYES)、ピンPの位置が正常に測定されたと判定する(S85)。表示処理部165は、エッジ位置が基準位置と測定物位置との間にあると判定した場合(S84においてNO)、ピンPの位置が正常に測定されていないと判定する(S86)。
【0093】
[変形例]
以上の説明においては、表示処理部165が各種の情報を表示部14に表示させるという構成を例示したが、表示処理部165は、表示部14のディスプレイに各種の情報を表示させてもよい。一例として、距離測定装置がBluetooth(登録商標)のような近距離無線通信を介して情報端末(例えばスマートフォン)との間でデータを送受信し、表示処理部165が、
図2に示したような画面をユーザUの情報端末に表示させてもよい。
【0094】
また、
図2に示した例においては、測定物までの距離とともに、グリーンGにおけるピンPの位置を示す画像が表示部14に表示されたが、グリーンGにおけるピンPの位置を示す画像を表示するかどうかは任意である。表示処理部165は、測定した物体までの距離だけを表示部14に表示してもよい。この場合、表示処理部165は、グリーンGにおけるピンPの位置を示す画像をユーザUの情報端末に表示させてもよい。
【0095】
[距離測定装置1による効果]
以上説明したように、測定物位置特定部163は、現在位置と、測定した物体までの距離及び方向とに基づいて、測定物の位置である測定物位置を特定する。そして、表示処理部165は、測定物位置がグリーンG内である場合に測定物位置がピン位置であると判定し、ピン位置とグリーンGの輪郭線とを表示部14に表示させる。距離測定装置1がこのように構成されていることで、ゴルフ場のコンピュータから当日のピンの位置を示すデータを取得できない場合にも距離測定装置1はピンの位置を表示できるので、ユーザUがプレイ中にピンPの位置を把握することができる。
【0096】
また、表示処理部165は、グリーンG上の基準位置と測定物位置とを結ぶ直線上の少なくとも1つのエッジ位置が、基準位置と測定物位置との間にあるか否かによって異なる態様の測定結果を表示部14に表示させる。表示処理部165がこのように動作することで、測定した位置がグリーンG内の位置かどうかを距離測定装置1が判定する精度が向上し、ユーザUがピンPまでの距離を正しく測定できたかどうかを把握することができる。
【0097】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0098】
1 距離測定装置
10 電波受信部
11 レーザ部
12 センサ部
13 操作受付部
14 表示部
15 記憶部
16 制御部
161 現在位置特定部
162 測定部
163 測定物位置特定部
164 情報作成部
165 表示処理部
【要約】
距離測定装置1は、ゴルフコースのグリーン内の基準位置を記憶する記憶部15と、距離測定装置の現在位置を特定する現在位置特定部161と、現在位置から測定物までの距離と、現在位置に対する測定物の方向と、を測定する測定部162と、現在位置と、測定部が測定した距離及び方向とに基づいて、測定物の位置である測定物位置を特定する測定物位置特定部163と、測定部162が測定物位置を特定していない場合、又は測定物位置が基準位置に対応する所定の範囲内でない場合に、基準位置とグリーンの輪郭線とを表示部14に表示させ、測定物位置が基準位置に対応する所定の範囲内である場合に、測定物位置とグリーンの輪郭線とを表示部14に表示させる表示処理部165と、を有する。