IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤倉ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液検知センサ 図1
  • 特許-液検知センサ 図2
  • 特許-液検知センサ 図3
  • 特許-液検知センサ 図4
  • 特許-液検知センサ 図5
  • 特許-液検知センサ 図6
  • 特許-液検知センサ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】液検知センサ
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20240216BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20240216BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20240216BHJP
【FI】
G01M3/16 Z
H01M12/06 A
H01M50/409
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020055490
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156670
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 真弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌樹
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092773(WO,A1)
【文献】特開2018-194486(JP,A)
【文献】米国特許第10119884(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
H01M 12/00-16/00
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、負極シートと、前記正極シートと前記負極シートの間に介在するセパレータと、を有し、
前記セパレータは、複数のセパレータシートを積層した構成であり、
前記負極シート及び前記セパレータは同形状で形成され、前記正極シートは、前記同形状から一部を切り欠いた形状であり、前記正極シートの切欠き側の外周端部よりも外側に前記セパレータが露出する液接触領域が形成される、ことを特徴とする液検知センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池を備えた液検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の作業現場等で、液漏れ検知システムが使用される。液漏れ検知システムでは、液漏れ箇所に、液検知センサを配置する。液検知センサでは、外部から液体が接触した際の電気的な変化を捉え、液漏れを検知する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の発明では、液検知センサの近傍に漏液があったときに、導液路を通して、液体が液検知センサに運ばれて、液体を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-133075号公報
【文献】国際公開第2012/020507号
【文献】特開2017-148332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献に記載の発明では、結露と漏水を適切に区別して検知することができない問題があった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、結露等の微量な液体は検知せず、誤検知を抑制することができる液検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における液検知センサは、正極シートと、負極シートと、前記正極シートと前記負極シートの間に介在するセパレータと、を有し、前記セパレータは、複数のセパレータシートを積層した構成であり、前記負極シート及び前記セパレータは同形状で形成され、前記正極シートは、前記同形状から一部を切り欠いた形状であり、前記正極シートの切欠き側の外周端部よりも外側に前記セパレータが露出する液接触領域が形成される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液検センサによれば、正極シートと負極シートとの間に、複数のセパレータシートを積層したセパレータを介在させたことで、結露程度の液量では、発電せず、結露と漏水を適切に区別した液検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、第1の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図1Bは、第1の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図1Cは、第1の実施の形態における液検知センサの断面図であり、図1Dは、第1の実施の形態の変形例を示す液検知センサの断面図である。
図2図2Aは、第2の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図2Bは、第2の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図2Cは、第2の実施の形態における液検知センサの断面図である。
図3図3Aは、第3の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図3Bは、第3の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図3Cは、第3の実施の形態における液検知センサの断面図である。
図4図4Aは、第4の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図4Bは、第4の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図4Cは、第4の実施の形態における液検知センサの断面図である。
図5図5Aは、第5の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図5Bは、第5の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図5Cは、第5の実施の形態における液検知センサの断面図である。
図6図6Aは、第6の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図6Bは、第6の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図6Cは、第6の実施の形態における液検知センサの断面図である。
図7】本実施の形態における液検知センサを備えた液検知装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本実施の形態における液検知センサ1は、金属空気電池2を有する。図7に示すように、液検知センサ1は、更に、送信部8を備えている。
【0013】
図1A図1Cに示すように、金属空気電池2は、例えば、円形状の負極シート(金属極シート)3と、円形状のセパレータ4と、円形状の正極シート(空気極シート)5とが、積層されたラミネート構造である。図1A及び図1Cに示すように、セパレータ4は、負極シート3と正極シート5との間に介在している。
【0014】
図1A及び図1Cに示すように、本実施の形態の金属空気電池2は、セパレータ4が、複数の円形状のセパレータシート6を積層した構造である。セパレータシート6の積層枚数に応じて、負極シート3と正極シート5の間の距離を適切に調整することができる。なお、本実施の形態では、セパレータシート6は複数であれば積層数を限定するものではない。
【0015】
限定するものではないが、各シート間を、粘着層を介して固定することができる。このとき、粘着層は、負極シート3及び正極シート5の縁部に部分的に設けられ、セパレータ4の検知領域4´´には設けられないことが好ましい。ここで、検知領域4´´とは、負極シート3と正極シート5とがセパレータ4を介して重なる部分の領域を指す。
【0016】
負極シート3を構成する金属は、マグネシウム(Mg)、Mg合金、亜鉛(Zn)、Zn合金、アルミニウム(Al)、或いは、Al合金のうちいずれかであることが好ましい。このうち、負極シート3を構成する金属は、Mg、或いは、Mg合金であることがより好ましい。
【0017】
セパレータ4を構成する各セパレータシート6は、電気的に絶縁性、イオン透過性、及び、液浸透性を有する材質で形成される。例えば、不織布、織布、多孔性薄膜等である。
【0018】
正極シート5は、集電体と触媒層(反応部)とを有して構成される。集電体に求められる特性は、負極シート3から放出される電子を、触媒層へ伝える導電性と、酸素を透過させる通気性である。集電体の構成を限定するものでないが、例えば、金網や発泡金属等、既存のものを用いることができる。また、触媒層に求められる特性は、液体を外部に放出しない疎水性及び、酸素を透過させる通気性である。触媒層には既存の材質を用いることができる。触媒層は、少なくとも集電体の一方の面に形成されており、触媒層は、セパレータ4に密接している。
【0019】
図1B及び図1Cに示すように、セパレータ4は、正極シート5と負極シート3が、セパレータ4を挟んで重なる面積より広く形成されている。すなわち、セパレータ4を構成する各セパレータシート6は、正極シート5及び負極シート3と重なる面積よりも大きい面積で形成されている。これにより、セパレータ4は、正極シート5及び負極シート3の少なくとも一方から露出する液接触領域4´を有する。
【0020】
図1B及び図1Cに示すように、各セパレータシート6は、負極シート3及び正極シート5の双方より大きく形成される。したがって、液接触領域4´は、正極シート5及び負極シート3の双方から露出する。
【0021】
図1B図1Cに示すように、セパレータ4の液接触領域4´は、負極シート3及び正極シート5の外周端部3a、5aの全域から外方に、はみ出して形成されている。このように、セパレータ4を、正極シート5と及び負極シート3より大きく形成することで、正極シート5と負極シート3を、図示上下方向において、セパレータ4内で適切に位置合わせすることができる。したがって、正極シート5と負極シート3の間の全域に、適切にセパレータ4を介在させることができる。
【0022】
上記のように、第1の実施の形態におけるセパレータ4は、負極シート3及び正極シート5の外周端部3a、5aから延出した液接触領域4´と、負極シート3と正極シート5との間に介在する検知領域4´´と、を有する。液接触領域4´と、検知領域4´´とは、一体的に形成されている。
【0023】
なお、限定されるものではないが、正極シート5の厚み(集電体を含む)は、0.4~2.0mm程度である。また、負極シート3の厚みは、0.05~2.0mm程度である。
【0024】
水を含有する液体が、セパレータ4の液接触領域4´に接触すると、液体は、液接触領域4´から検知領域4´´にまで浸透する。液体が、検知領域4´´に到達すると、例えば、負極シート3を構成する金属が、Mgであるとき、負極シート3側では、下記(1)で示す酸化反応が生じる。また、正極シート5においては、下記(2)で示す還元反応が生じる。したがって、金属空気電池2の全体としては、下記(3)に示す反応が起こり、発電(放電)が行われる。
(1)2Mg →2Mg2++4e
(2)O+2HO+4e →4OH
(3)2Mg+O+2HO →2Mg(OH)
【0025】
本実施の形態では、負極シート3と正極シート5との間に、複数のセパレータシート6を積層したセパレータ4を介在させている。このため、結露程度の微量な液体では、検知領域4´´が厚み方向全域に浸み込むほどの液量がなく、上記(3)の電池反応は生じず、発電しない。すなわち、結露が生じても、金属空気電池2は発電せず、液検知センサ1は液検知しない。これに対し、結露よりも液量の多い、例えば、漏水時には、液体が、検知領域4´´の厚み方向全域に浸み込み、金属空気電池2が発電し、液検知センサ1により漏水を検知することができる。このように、本実施の形態の液検知センサ1では、結露と漏水とを適切に区別した液検知が可能となる。これにより、結露の際に金属空気電池2が発電して誤検知することを防止することができる。
【0026】
図1B及び図1Cに示すように、負極シート3と正極シート5は、セパレータ4よりも小さい面積で形成されている。これにより、セパレータ4には、負極シート3及び正極シート5の外周端部3a、5aから露出する液接触領域4´を形成することができ、漏水を、液接触領域4´から浸み込ませて、適切に、金属空気電池2を発電させることができ、液検知を行うことができる。また、結露が液接触領域4´に付着しても、液接触領域4´から検知領域4´´まで浸み込む程度の液量はなく、金属空気電池2は発電せず、液検知することはない。本実施の形態では、負極シート3及び正極シート5が、セパレータ4と同程度の面積である形態を除外するものではないが、負極シート3及び正極シート5を、セパレータ4よりも小さい面積で形成して、セパレータ4に液接触領域4´を設けることが、結露を誤検知する不具合をより一層なくすことができる。
【0027】
本実施の形態では、負極シート3及び正極シート5の少なくとも一方を、セパレータ4より小さく形成することができる。このとき、正極シート5を、セパレータ4より小さく形成することが好ましい。正極シート5をセパレータ4と同程度の大きさとし、負極シート3を小さくして液接触領域4´を形成した場合は、負極シート3或いは、負極シート3近傍に液体が付着し、その際、液量が少量でも、検知領域4´´で、上記した(1)の反応が生じやすい。一方、正極シート5を小さく形成して、液接触領域4´を形成した場合は、液量が少量であれば、正極シート5近傍に液体が付着しても、上記した(1)の反応が生じず、結露に対する誤検知をより一層防止することができる。したがって、少なくとも、正極シート5を、セパレータ4より小さく形成することが誤検知の防止観点から好ましい。負極シート3及び正極シート5の両方を、セパレータ4より小さく形成することがより好ましい。本実施の形態では、セパレータ4のはみ出しにより、液体を検知領域4´´まで浸み込ませて液検知を可能とするとともに、結露程度の少量の液体に対してはショート防止効果もある。
【0028】
図1Cでは、負極シート3及び正極シート5の外周端部3a、5aから略一定幅の液接触領域4´が形成されていたが、図1Dでは、負極シート3及び正極シート5の外周端部3a、5aから一方向に長い液接触領域4´が形成されている。この液接触領域4´の長さに応じて、検知領域4´´から離れた箇所の漏水も適切に検知することができる。
【0029】
また、液接触領域4´を折り曲げて、負極シート3の外面3bや正極シート5の外面5bに重ねて配置することもできる。
【0030】
図2Aは、第2の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図2Bは、第2の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図2Cは、第2の実施の形態における液検知センサの断面図である。
【0031】
図2に示す金属空気電池12は、例えば、円形状の負極シート13と、円形状のセパレータ14と、円形状から一部を切り欠いた形状の正極シート15とが、積層されたラミネート構造である。したがって、正極シート15は、負極シート13及びセパレータ14より小さい面積で形成されている。なお、セパレータ14は、負極シート13より多少大きく形成されている(図2C参照)。この実施の形態では、図2A図2Cに示すように、セパレータ14は、複数のセパレータシート16を積層して構成されている。また、正極シート15の切欠き側の外周端部15aよりも外側に露出する液接触領域14´が形成されている。また、セパレータ14には、負極シート13と正極シート15とがセパレータ14を介して重なる部分としての検知領域14´´が設けられている。
【0032】
図2Cに示すように、矢印a1の方向から、液体が、セパレータ14の液接触領域14´に接触する。これにより、液体は、液接触領域14´から検知領域14´´にまで浸透し、上記(1)~(3)に示す反応が起こり、金属空気電池12が発電する。
【0033】
図2に示す第2の実施の形態においても、負極シート13と正極シート15との間に、複数のセパレータシート16を積層したセパレータ14を介在させている。このため、結露程度の微量な液体では、検知領域14´´が厚み方向全域に浸み込むほどの液量がなく、上記(3)の電池反応は生じないため、発電せず、液検知センサは液検知しない。これに対し、結露よりも液量の多い、例えば、漏水時には、液体が、検知領域4´´の厚み方向全域に浸み込み、金属空気電池12が発電し、液検知センサにより漏水を検知することができる。このように、本実施の形態の液検知センサでは、結露と漏水とを適切に区別した液検知が可能となる。これにより、結露の際に金属空気電池12が発電して誤検知することを防止することができる。
【0034】
図3Aは、第3の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図3Bは、第3の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図3Cは、第3の実施の形態における液検知センサの断面図である。図3に示す金属空気電池22は、例えば、円形状の負極シート23と、円形状のセパレータ24と、円形状の中心を切り抜いたリング形状の正極シート25とが、積層されたラミネート構造である。この実施の形態では、図3B図3Cに示すように、正極シート25には、セパレータ24まで通じる一つの穴25bが形成されており、穴25bを通じて露出するセパレータ24の部分が、液接触領域24´である。
【0035】
また、セパレータ24には、負極シート23と正極シート25とが、セパレータ24を介して重なる検知領域24´´が設けられている。
【0036】
図3Cに示すように、矢印a1の方向から、液体が、セパレータ24の液接触領域24´に接触する。これにより、液体は、液接触領域24´から検知領域24´´にまで浸透し、上記(1)~(3)に示す反応が起こり、放電が行われる。
【0037】
図3に示す第3の実施の形態においても、負極シート23と正極シート25との間に、複数のセパレータシート26を積層したセパレータ24を介在させている。このため、結露程度の微量な液体では、検知領域24´´が厚み方向全域に浸み込むほどの液量がなく、上記(3)の電池反応は生じないため、発電せず、液検知センサは液検知しない。これに対し、結露よりも液量の多い、例えば、漏水時には、液体が、検知領域24´´の厚み方向全域に浸み込み、金属空気電池22が発電し、液検知センサにより漏水を検知することができる。このように、本実施の形態の液検知センサでは、結露と漏水とを適切に区別した液検知が可能となる。これにより、結露の際に金属空気電池22が発電して誤検知することを防止することができる。
【0038】
図4Aは、第4の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図4Bは、第4の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図4Cは、第4の実施の形態における液検知センサの断面図である。図4に示す金属空気電池32は、例えば、円形状の正極シート35と、円形状のセパレータ34と、メッシュ形状の負極シート33とが、積層されたラミネート構造である。メッシュ形状の負極シート33には、多数の微細孔が形成されており、各微細孔を通じて露出するセパレータ34の部分が、液接触領域34´である。
【0039】
また、セパレータ34の液接触領域34´以外の部分が、検知領域34´´(負極シート33と正極シート35とがセパレータ34を介して重なる部分)である。
【0040】
なお、図4B図4Cでは、負極シート33が液体と接触する側であり、正極シート35は空気に触れる構造を確保されている。
【0041】
液体が、メッシュ形状の負極シート33を介してセパレータ34の液接触領域34´に接触すると、液接触領域34´から検知領域34´´にまで浸透し、上記(1)~(3)に示す反応が起こり、放電が行われる。
【0042】
図4に示す第4の実施の形態においても、負極シート33と正極シート35との間に、複数のセパレータシート36を積層したセパレータ34を介在させている。このため、結露程度の微量な液体では、検知領域34´´が厚み方向全域に浸み込むほどの液量がなく、上記(3)の電池反応は生じないため、発電せず、液検知センサは液検知しない。これに対し、結露よりも液量の多い、例えば、漏水時には、液体が、検知領域34´´の厚み方向全域に浸み込み、金属空気電池32が発電し、液検知センサにより漏水を検知することができる。このように、本実施の形態の液検知センサでは、結露と漏水とを適切に区別した液検知が可能となる。これにより、結露の際に金属空気電池32が発電して誤検知することを防止することができる。
【0043】
図5Aは、第5の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図5Bは、第5の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図5Cは、第5の実施の形態における液検知センサの断面図である。図5に示す金属空気電池42は、例えば、円形状の正極シート45と、円形状のセパレータ44と、複数の小穴43bが形成された負極シート43とが、積層されたラミネート構造である。限定されるものでないが、例えば、負極シート43には、パンチにより複数の小穴43bを形成することができる。各小穴43bを通じて露出するセパレータ44の部分が、液接触領域44´である。
【0044】
また、セパレータ44の液接触領域44´以外の部分が、検知領域44´´(負極シート43と正極シート45とがセパレータ44を介して重なる部分)である。
【0045】
図5A図5Cでは、小穴43bを、負極シート43に万遍なく、且つ規則的に形成しているが、負極シート43の一部の領域にのみ、小穴43bを形成することもでき、例えば、液体の接触量が多い場所に集中的に小穴43bを形成することができる。
【0046】
液体が、負極シート43の小穴43bを介して、セパレータ44の液接触領域44´に接触すると、液接触領域44´から検知領域44´´にまで浸透し、上記(1)~(3)に示す反応が起こり、放電が行われる。
【0047】
図5に示す第5の実施の形態においても、負極シート43と正極シート45との間に、複数のセパレータシート46を積層したセパレータ44を介在させている。このため、結露程度の微量な液体では、検知領域44´´が厚み方向全域に浸み込むほどの液量がなく、上記(3)の電池反応は生じないため、発電せず、液検知センサは液検知しない。これに対し、結露よりも液量の多い、例えば、漏水時には、液体が、検知領域44´´の厚み方向全域に浸み込み、金属空気電池42が発電し、液検知センサにより漏水を検知することができる。このように、本実施の形態の液検知センサでは、結露と漏水とを適切に区別した液検知が可能となる。これにより、結露の際に金属空気電池42が発電して誤検知することを防止することができる。
【0048】
図6Aは、第6の実施の形態における液検知センサの分解平面図であり、図6Bは、第6の実施の形態における液検知センサの平面図であり、図6Cは、第6の実施の形態における液検知センサの断面図である。
【0049】
図6に示す金属空気電池52は、負極シート53、セパレータ54及び正極シート55がいずれも、例えば、矩形形状であるが、正極シート55は、負極シート53、及びセパレータ54に比べて幅が狭い。このため、負極シート53、セパレータ54及び正極シート55を重ねたラミネート構造とすると、図6B及び図6Cに示すように、セパレータ54には、正極シート55の一辺の外周端部55aから外側に液接触領域54´が露出する。また、セパレータ54には、負極シート53と正極シート55とが、セパレータ54を介して重なる検知領域54´´が設けられている。
【0050】
図6Cに示すように、矢印a1の方向から、液体が、セパレータ54の液接触領域54´に接触すると、液体は、液接触領域54´から検知領域54´´にまで浸透し、上記(1)~(3)に示す反応が起こり、放電が行われる。
【0051】
図6に示す第5の実施の形態においても、負極シート53と正極シート55との間に、複数のセパレータシート56を積層したセパレータ54を介在させている。このため、結露程度の微量な液体では、検知領域54´´が厚み方向全域に浸み込むほどの液量がなく、上記(3)の電池反応は生じないため、発電せず、液検知センサは液検知しない。これに対し、結露よりも液量の多い、例えば、漏水時には、液体が、検知領域54´´の厚み方向全域に浸み込み、金属空気電池52が発電し、液検知センサにより漏水を検知することができる。このように、本実施の形態の液検知センサでは、結露と漏水とを適切に区別した液検知が可能となる。これにより、結露の際に金属空気電池52が発電して誤検知することを防止することができる。
【0052】
図2図6の各実施の形態においては、正極シート、及び、負極シートの一方の面積をセパレータよりも小さくしているが、図2図6の各実施の形態において、セパレータとほぼ同等の面積で形成したシート側を小さい面積で形成してもよいし、正極シート、及び、負極シートの両方の面積を、セパレータより小さく形成してもよい。
【0053】
本実施の形態では、液検知センサ1の金属空気電池2が液体と接触することで発電し、その電力で無線基板を起動させることができ、液体との接触を外部へ報知することができる。図7に示すように、本実施の形態における液検知センサ1は、金属空気電池2と、送信部8と、を有する。例えば、送信部8が無線基板である。本実施の形態では、無線報知を可能とするが、更に、その機能に付随して次のような機能を持たせることも可能である。すなわち、金属空気電池2では、液漏れに基づく電池反応により電圧値(抵抗値)が変化する。この電圧変化に基づく検知信号を、送信部8から無線で受信部7に送信する。受信部7では受信した検知信号に基づいて、液漏れが発生したことを検知し、自動的に装置等を停止させたり、人に、液漏れが生じたことを報知することができる。このとき、検知信号に対し閾値を用いて、検知信号のレベルが閾値を越えた場合に、液漏れが生じたと判別したり、液漏れのレベルを判断することもできる。一方、結露が生じても、金属空気電池2は電池反応せず、電圧変化は生じない。したがって、検知信号が、送信部8から受信部7に送信されることはなく、誤検知を防止することができる。
【0054】
本実施の形態では、液検知センサ1は、外部電源を必要とせず、無線で、金属空気電池で得られた検知信号を送信部8から受信部7に送ることができる。無線方式を限定するものでなく、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi等、既存の方式を用いることができる。
【0055】
なお、図7では、図1に示す金属空気電池2を代表的に示したが、図2図6に示す金属空気電池12~52にも同様に適用することができる。
【0056】
本実施の形態の液検知センサ1は、液体の接触により、自己発電するが、このように、自己発電させるには、必ずしも必要ではないが、液体内に塩が存在している方が望ましい。塩を限定するものではないが、例えば、塩化ナトリウムを挙げることができる。したがって、液体が塩を含まない成分である場合、セパレータ内に塩を含ませておくことが好ましい。
本実施の形態の液検知センサ1の使用用途を限定するものではないが、屋内での作業現場等に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の液検知センサによれば、漏水検知センサとして、有効に適用することが出来る。特に、本発明では、小型の液検知センサを実現でき、且つ液検知センサは、外部電源を必要としない。したがって、使い勝手に優れ、対象物や場所を問わず、簡単に使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 :液検知センサ
2、12、22、32、42、52 :金属空気電池
3、13、23、33、43、53 :負極シート
3a :外周端部
3b :外面
4、14、24、34、44、54 :セパレータ
4´、14´、24´、34´、44´、54´ :液接触領域
4´´、14´´、24´´、34´´、44´´、54´´ :検知領域
5、15、25、35、45、55 :正極シート
6、16、26、36、46、56 :セパレータシート
7 :受信部
25b :穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7