IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤倉ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液検知センサ 図1
  • 特許-液検知センサ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】液検知センサ
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20240216BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20240216BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20240216BHJP
【FI】
G01M3/16 Z
H01M12/06 A
H01M50/409
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020055492
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156672
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 真弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌樹
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092773(WO,A1)
【文献】特開2010-038740(JP,A)
【文献】特開2018-194486(JP,A)
【文献】国際公開第2011/064737(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
H01M 12/00-16/00
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと、負極シートとを有し、前記正極シートと前記負極シートとの間に液体が浸透することで発電する金属空気電池と、
前記金属空気電池を包むとともに、開口部を備えた可撓性部材と、を有し、
前記可撓性部材は、熱収縮体であり、
前記正極シートと、前記負極シートとの間には、セパレータが介在し、前記セパレータには、前記開口部から露出する液接触領域が設けられており、
前記開口部を広げて、前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートを、前記熱収縮体内に収容するとともに、前記熱収縮体が前記液接触領域を除いて前記金属空気電池に密着して前記金属空気電池が包まれた状態とされる、ことを特徴とする液検知センサ。
【請求項2】
正極シートと、負極シートとを有し、前記正極シートと前記負極シートとの間に液体が浸透することで発電する金属空気電池と、
前記金属空気電池を包むとともに、開口部を備えた可撓性部材と、を有し、
前記可撓性部材は、熱収縮体であり、
前記正極シートと、前記負極シートとの間には、セパレータが介在し、前記セパレータには、前記開口部から露出する液接触領域が設けられており、
前記正極シート及び、前記負極シートは、前記セパレータよりも小さく、且つ、前記正極シート及び前記負極シートの一方のシートは、他方のシートよりも小さく形成されており、
前記一方のシートは、前記他方のシートよりも、前記開口部から距離が離れて配置される、ことを特徴とする液検知センサ。
【請求項3】
前記セパレータは、複数のセパレータシートを積層した構成であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液検知センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池を備えた液検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の作業現場等で、液漏れ検知システムが使用される。液漏れ検知システムでは、液漏れ箇所に、液検知センサを配置する。液検知センサでは、外部から液体が接触した際の電気的な変化を捉え、液漏れを検知する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の発明では、液検知センサの近傍に漏液があったときに、導液路を通して、液体が液検知センサに運ばれて、液体を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-133075号公報
【文献】国際公開第2012/020507号
【文献】特開2017-148332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献に記載の発明では、結露と漏水を適切に区別することができない問題があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、結露等の微量な液体は検知せず、誤検知を抑制することができる液検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における液体検知センサは、正極シートと、負極シートとを有し、前記正極シートと前記負極シートとの間に液体が浸透することで発電する金属空気電池と、前記金属空気電池を包むとともに、開口部を備えた可撓性部材と、を有し、前記可撓性部材は、熱収縮体であり、前記正極シートと、前記負極シートとの間には、セパレータが介在し、前記セパレータには、前記開口部から露出する液接触領域が設けられており、前記開口部を広げて、前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートを、前記熱収縮体内に収容するとともに、前記熱収縮体が前記液接触領域を除いて前記金属空気電池に密着して前記金属空気電池が包まれた状態とされる、ことを特徴とする。
本発明における液体検知センサは、正極シートと、負極シートとを有し、前記正極シートと前記負極シートとの間に液体が浸透することで発電する金属空気電池と、前記金属空気電池を包むとともに、開口部を備えた可撓性部材と、を有し、前記可撓性部材は、熱収縮体であり、前記正極シートと、前記負極シートとの間には、セパレータが介在し、前記セパレータには、前記開口部から露出する液接触領域が設けられており、前記正極シート及び、前記負極シートは、前記セパレータよりも小さく、且つ、前記正極シート及び前記負極シートの一方のシートは、他方のシートよりも小さく形成されており、前記一方のシートは、前記他方のシートよりも、前記開口部から距離が離れて配置される、ことを特徴とする
【0009】
本発明では、前記セパレータは、複数のセパレータシートを積層した構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液検センサによれば、金属空気電池を可撓性部材で包み、可撓性部材に設けられた開口部を介して金属空気電池に液体が吸収されるようになっている。このため、結露程度の少量の液体では、金属空気電池にまで浸透しないように制御することができ、結露と漏水を適切に区別する液検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは、本実施の形態における液検知センサを構成する金属空気電池の分解平面図であり、図1Bは、本実施の形態における液検知センサの平面図であり、図1Cは、本実施の形態における液検知センサの断面図である。
図2図2は、本実施の形態における液検知センサを備えた液検知装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本実施の形態における液検知センサ1は、金属空気電池2と、金属空気電池2を包む可撓性部材9と、を具備する。図2に示すように、液検知センサ1は、更に、送信部8を備えている。
【0015】
図1Aに示すように、金属空気電池2は、例えば、円形状の負極シート(金属極シート)3と、円形状のセパレータ4と、円形状の正極シート(空気極シート)5とが、積層されたラミネート構造である。図1A及び図1Cに示すように、セパレータ4は、負極シート3と正極シート5との間に介在している。なお、負極シート3、セパレータ4、及び正極シート5の形状は、円形状に限定されるものでなく、楕円形状や矩形状等、使用用途等に応じて種々選択することができる。
【0016】
図1A及び図1Cに示すように、本実施の形態の金属空気電池2は、セパレータ4が、複数の円形状のセパレータシート6を積層した構造である。セパレータシート6の積層枚数に応じて、負極シート3と正極シート5の間の距離を適切に調整することができる。なお、本実施の形態では、セパレータシート6は、複数に限定されるものでなく、単数であってもよい。
【0017】
限定するものではないが、各シート間を、粘着層を介して固定することができる。このとき、粘着層は、負極シート3及び正極シート5の縁部に部分的に設けられ、セパレータ4の検知領域4´´には設けられないことが好ましい。ここで、検知領域4´´とは、負極シート3と正極シート5とがセパレータ4を介して重なる部分の領域を指す。
【0018】
負極シート3を構成する金属は、マグネシウム(Mg)、Mg合金、亜鉛(Zn)、Zn合金、アルミニウム(Al)、或いは、Al合金のうちいずれかであることが好ましい。このうち、負極シート3を構成する金属は、Mg、或いは、Mg合金であることがより好ましい。
【0019】
セパレータ4を構成する各セパレータシート6は、電気的に絶縁性、イオン透過性、及び、液浸透性を有する材質で形成される。例えば、不織布、織布、多孔性薄膜等である。
【0020】
正極シート5は、集電体と触媒層(反応部)とを有して構成される。集電体に求められる特性は、負極シート3から放出される電子を、触媒層へ伝える導電性と、酸素を透過させる通気性である。集電体の構成を限定するものでないが、例えば、金網や発泡金属等、既存のものを用いることができる。また、触媒層に求められる特性は、液体を外部に放出しない疎水性及び、酸素を透過させる通気性である。触媒層には既存の材質を用いることができる。触媒層は、少なくとも集電体の一方の面に形成されており、触媒層は、セパレータ4に密接している。
【0021】
なお、限定されるものではないが、正極シート5の厚み(集電体を含む)は、0.4~2.0mm程度である。また、負極シート3の厚みは、0.05~2.0mm程度である。
【0022】
図1A及び図1Cに示すように、セパレータ4は、正極シート5と負極シート3が、セパレータ4を挟んで重なる面積より広く形成されている。すなわち、セパレータ4を構成する各セパレータシート6は、正極シート5及び負極シート3と重なる面積よりも大きい面積で形成されている。
【0023】
図1A及び図1Cに示すように、正極シート5は、負極シート3よりも小さく形成されている。各セパレータシート6は、負極シート3よりも多少大きく形成されている。これにより、正極シート5の外周端部5aの外側に、セパレータ4がはみ出している。また、セパレータ4を、正極シート5及び負極シート3より大きく形成することで、正極シート5と負極シート3を、図示上下方向において、セパレータ4内で適切に位置合わせすることができる。したがって、正極シート5と負極シート3の間の全域に、適切にセパレータ4を介在させることができる。このようにセパレータ4のはみ出しにより、液体を検知領域4´´まで浸み込ませて液検知を可能とするとともに、結露程度の少量の液体に対してはショート防止効果もある。
【0024】
本実施の形態では、金属空気電池2が可撓性部材9に包まれている。電気的に絶縁性の可撓性材料であれば、適切に、金属空気電池2の周囲に密着して包むことができる。本実施の形態では、可撓性部材9の材質や形態を限定するものでないが、一例を示すと、ゴムチューブや絶縁フィルム、熱収縮体等である。また、可撓性部材9の材質の一例としては、ポリエステルやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等である。例えば、可撓性部材9としてゴムチューブを使用する場合、物理的にゴムチューブを広げて、各電極シート及びセパレータをゴムチューブの内部に配置することができる。また、可撓性部材9として、熱収縮体を好ましく使用することができる。このように、熱収縮体(特に、熱収縮チューブ)を使用することで、熱収縮体内にラミネート構造の金属空気電池2を収容して加熱すれば熱収縮体が収縮して、金属空気電池2が熱収縮体に密着して包まれた状態の液検知センサ1を完成させることができ、製造を容易化できる。
【0025】
図1B図1Cに示すように、可撓性部材9には、開口部9aが設けられており、この開口部9aからセパレータ4の一部が外部に露出している。開口部9aから露出するセパレータ4は、液接触領域4´である。
【0026】
水を含有する液体が、セパレータ4の液接触領域4´に接触すると、液体は、液接触領域4´から検知領域4´´にまで浸透する。液体が、検知領域4´´に到達すると、例えば、負極シート3を構成する金属が、Mgであるとき、負極シート3側では、下記(1)で示す酸化反応が生じる。また、正極シート5においては、下記(2)で示す還元反応が生じる。したがって、金属空気電池2の全体としては、下記(3)に示す反応が起こり、発電(放電)が行われる。
(1)2Mg →2Mg2++4e
(2)O+2HO+4e →4OH
(3)2Mg+O+2HO →2Mg(OH)
【0027】
本実施の形態では、金属空気電池2の周囲の大部分は、可撓性部材9に包まれているため、結露程度の微量な液体は、可撓性部材9の表面などに付着しやすい。また、可撓性部材9により、セパレータ4が縮められており、微量な液体は金属空気電池2内に吸収されにくくなっている。これにより、結露程度の微量な液体では、上記(3)の電池反応は生じず、発電しない。これに対し、結露よりも液量の多い、例えば、漏水時には、液体が、可撓性部材9の開口部9aから露出する液接触領域4´から検知領域4´´へ浸み込み、金属空気電池2が発電し、液検知センサ1により漏水を検知することができる。このように、本実施の形態の液検知センサ1では、結露と漏水とを適切に区別した液検知が可能となる。これにより、結露の際に金属空気電池2が発電して誤検知することを防止することができる。
【0028】
また、金属空気電池2の周囲を可撓性部材9で被覆することで、金属空気電池2を構成する負極シート3、セパレータ4及び正極シート5を適切に保持することができる。各シート間を接着剤で接合してもよいが接着剤で接合しなくても、可撓性部材9により、各シート間を密着させることができる。
【0029】
本実施の形態では、セパレータ4を、複数枚のセパレータシート6を積層した構成とすることが好ましい。これにより、結露程度の微量な液体が、液接触領域4´に接触しても、検知領域4´´まで浸透するのをより効果的に防止でき、より効果的に、結露と漏水とを区別した液検知が可能となる。
【0030】
また、図1A及び図1Cに示すように、正極シート5及び負極シート3を、セパレータ4よりも小さい面積で形成しており、これにより、可撓性部材9の開口部9aから露出するとともに外方に延出する液接触領域4´を設けることができる。これにより、漏水を、液接触領域4´から浸み込ませて、金属空気電池2を適切に発電させることができる。また、結露が液接触領域4´に付着しても、液接触領域4´から検知領域4´´まで距離が離れており、検知領域4´´まで浸み込む程度の液量はなく、したがって、金属空気電池2は発電せず、液検知することはない。
【0031】
本実施の形態では、正極シート5を、負極シート3よりも小さく形成したが、負極シート3を正極シート5より小さく形成してもよく、また、正極シート5及び負極シート3の双方を同程度に小さく形成してもよい。
【0032】
図1B及び図1Cでは、可撓性部材9の側部の一部に、開口部9aを設けたが、開口部9aの形成場所や数、形状等を限定するものではない。開口部9aを、可撓性部材9の上面や下面に配置してもよい。ただし、結露等の微量な液体を検知しないように、開口部9aを、セパレータ4の外周端部付近の一部に設け、開口部9aから露出するセパレータ4の外周端部を液接触領域4´とすることが好ましい。また、可撓性部材9は、メッシュ構造であってもよい。
【0033】
本実施の形態では、液検知センサ1の金属空気電池2が液体と接触することで発電し、その電力で無線基板を起動させることができ、液体との接触を外部へ報知することができる。図2に示すように、本実施の形態における液検知センサ1は、金属空気電池2と、送信部8と、を有する。例えば、送信部8が無線基板である。本実施の形態では、無線報知を可能とするが、更に、その機能に付随して次のような機能を持たせることも可能である。すなわち、金属空気電池2では、液漏れに基づく電池反応により電圧値(抵抗値)が変化する。この電圧変化に基づく検知信号を、送信部8から無線で受信部9に送信する。受信部9では受信した検知信号に基づいて、液漏れが発生したことを検知し、自動的に装置等を停止させたり、人に、液漏れが生じたことを報知することができる。このとき、検知信号に対し閾値を用いて、検知信号のレベルが閾値を越えた場合に、液漏れが生じたと判別したり、液漏れのレベルを判断することもできる。一方、結露が生じても、金属空気電池2は電池反応せず、電圧変化は生じない。したがって、検知信号が、送信部8から受信部9に送信されることはなく、誤検知を防止することができる。
【0034】
本実施の形態では、液検知センサ1は、外部電源を必要とせず、無線で、金属空気電池で得られた検知信号を送信部8から受信部7に送ることができる。無線方式を限定するものでなく、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi等、既存の方式を用いることができる。
【0035】
また、本実施の形態における金属空気電池2は、負極シート3及び正極シート5の間にセパレータ4を有する構成であるが、セパレータ4がない形態にも適用可能である。すなわち、セパレータ4を用いずに負極シート3及び正極シート5の間に液体を浸透可能な構成において、金属空気電池2を可撓性部材9で包むことができる。
【0036】
本実施の形態の液検知センサ1は、液体の接触により、自己発電するが、このように、自己発電させるには、必ずしも必要ではないが、液体内に塩が存在している方が望ましい。塩を限定するものではないが、例えば、塩化ナトリウムを挙げることができる。したがって、液体が塩を含まない成分である場合、セパレータ内に塩を含ませておくことが好ましい。
【0037】
本実施の形態の液検知センサ1の使用用途を限定するものではないが、屋内での作業現場等に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の液検知センサによれば、漏水検知センサとして、有効に適用することが出来る。特に、本発明では、外部電源を必要とすることなく、結露対策を実現できる。したがって、使い勝手に優れ、対象物や場所を問わず、簡単に使用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 :液検知センサ
2 :金属空気電池
3 :負極シート
4 :セパレータ
4´ :液接触領域
4´´ :検知領域
5 :正極シート
5a :外周端部
6 :セパレータシート
7 :受信部
8 :送信部
9 :可撓性部材
9a :開口部
図1
図2