(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ペットフード
(51)【国際特許分類】
A23K 10/30 20160101AFI20240216BHJP
A23L 33/105 20160101ALN20240216BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20240216BHJP
【FI】
A23K10/30
A23L33/105
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2019183064
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-09-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年10月3日 藤本大道が発明した腎臓病・尿道結石・肝臓病・心臓病(特に血流障害に係るもの)といった病気・疾患の予防や治療の助けに効果を有する食品及びペットフードを一般消費者に販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】307029098
【氏名又は名称】藤本 大道
(74)【代理人】
【識別番号】100126815
【氏名又は名称】神谷 岳
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大道
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103749869(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0020626(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A23K 10/00-50/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルーベリーの茎又はその抽出物、及び、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物を含む
ことを特徴とする、
ペットフード。
【請求項2】
前記担子菌類とは、冬虫夏草である
ことを特徴とする、
請求項1に記載の
ペットフード。
【請求項3】
前記冬虫夏草とは、サナギタケである
ことを特徴とする、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の
ペットフード。
【請求項4】
前記
ブルーベリーの茎又はその抽出物と、前記担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物の割合が1:10から10:1とされている
ことを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の
ペットフード。
【請求項5】
前記
ブルーベリーの茎又はその抽出物と、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物の割合が1:4から4:1とされている
ことを特徴とする、
請求項1乃至請求項3に記載の
ペットフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフードに関するものである。より具体的には、特定の植物及び担子菌類の子実体や菌糸体を特定の割合で含有し、これを摂取することで腎臓病、尿道結石、肝臓病、心臓病(特に血流障害に係るもの)の症状を改善する効果を有する若しくは期待されるペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな植物や担子菌類(特にきのことして知られる生物)の病気の予防や治療の助けとなる働きに着目し、これらからなる又はこれらを含有する食品が多く開発され市場に供されている。このような食品の多くは人を対象としたものであるが、愛玩動物を対象としたいわゆるペットフードも多く開発され、日常的に利用されている。
【0003】
これらペットフードに期待される働きは、これらが含有する植物や担子菌類の種類によって異なり、従来からさまざまな病気の予防や治療の助けとなることを期待してさまざまな植物や担子菌類からなる又はこれらを含有するペットフードが提案されてきた。しかし、ペットフード期待される働きはさまざまであり、また、原料である植物や担子菌類の種類は膨大である。また、植物や担子菌類に含まれる機能性成分が解明されていないことも多いことから、特定の病気の予防や治療の助けに適した植物や担子菌類が何であるかは必ずしも明確ではない。特に、特定の植物や担子菌類を組み合わせることによって、単独の植物や担子菌類単体で得られる効果を超えた大きな効果が得られるケースについての研究はいまだ不十分であり、さらなる研究が期待されている。
【0004】
本願発明者は、二以上の植物や担子菌類を特定の割合で含有してなるペットフードについて鋭意研究を重ね、特に、肝臓病・尿道結石・肝臓病・心臓病(特に血流障害に係るもの)といった病気・疾患の予防や治療の助けに大きな効果を有する植物と担子菌類の組み合わせを発見し、本発明に係るペットフードを完成したものである。
【0005】
なお、複数の植物や担子菌類を含有する食品やペットフードであって、健康の増進やさまざまな病気・疾患の予防や治療の助けになることが期待されるとされた発明は数多くなされている。たとえば、特開2018-203628号公報(特許文献1)には、極めて多くの種類の植物や担子菌類が列挙され、これら又はこれらの抽出物またはその代謝物を含有する飲食品組成物が開示されている(例えば[0023]段落)。しかしながら、列挙されたおびただしい数の種類の植物や担子菌類のどのような組み合わせによって大きな効果が得られるかは明らかにされておらず、また、その効果も、皮膚や頭髪に張りやツヤを与えるものとされており(例えば[0002]段落)、本発明の企図する腎臓病・尿道結石、肝臓病、心臓病に係るものではない。
【0006】
また、特開2011-184349号公報(特許文献2)には、担子菌類の菌糸体培養物又は子実体からの抽出物を含む頻尿改善組成物及び血流改善組成物が開示されており、特に、ハリタケ科の菌やエノキ茸からなる群より選ばれる一種である担子菌類からの抽出物が血流改善組成物となることが開示されている(例えば[0012]段落)。しかしながら、この発明は二以上の植物や担子菌類の組み合わせによってより大きな効果を実現するものではない。
【0007】
さらに、特開2017-085948号公報(特許文献3)には、「ワカメ昆布等の海藻類や魚介類、桑葉或いは、ニンニク、ショウガ、セロリ等の香味野菜・薬草、椎茸などのキノコ類、ブルーベリーや柑橘果樹を加熱殺菌して添加調味した」健康増進用即席食品が開示されている([0029]段落)。しかしながら、この発明は人体に必要とされる栄養素を一度で摂取可能であることを通じて生活習慣病を予防して健康な体を保つことを企図したもの([0057]段落)であって、本発明の企図する腎臓病・尿道結石、肝臓病、心臓病に係るものではなく、また、二以上の植物や担子菌類の組み合わせによってより大きな効果を実現するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-203628号公報
【文献】特開2011-184349号公報
【文献】特開2017-085948号公報
【0009】
以上説明したとおり、従来技術では肝臓病・尿道結石・肝臓病・心臓病(特に血流障害に係るもの)といった病気・疾患の予防や治療の助けに効果を有するペットフードであって、二以上の植物や担子菌類の組み合わせによって単独では得られないより大きな効果を奏するものは知られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上記の通り、肝臓病・尿道結石・肝臓病・心臓病(特に血流障害に係るもの)といった病気・疾患に対して、二以上の植物や担子菌類を組み合わせることによって単独では得られないより大きな効果を有するペットフードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明においては、
ブルーベリーの茎又はその抽出物、及び、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物を含む
ことを特徴とする、ペットフードとしている。
【0012】
一般にはブルーベリーは主に果実が食用に供せられるが、近年では果実以上に高い抗酸化作用を備えることなどを理由に果実以外の部位を利用することも行われている。本発明においても、ブルーベリーの茎又はその抽出物を含むペットフードとすることが特に好ましい。本願発明者の研究によって、他の部位を利用した場合よりも、茎を利用した場合に本発明の作用がより大きく上昇することが見出されたからである。これらは、単体でも毛細血管の老化を緩和する、尿pH値を正常化する、といった作用を奏する機能性成分を含んでいるとされており、本発明においてはブルーベリーの茎をそのまま利用することも、これからの抽出物を利用することも可能である。
【0013】
担子菌類の子実体・菌糸体とは、いわゆるきのことその菌糸であるが、さまざまなきのこ類にさまざまな効用が認められることは漢方薬の例を挙げるまでもなく広く知られている通りである。例えば、セミタケ、サナギタケ等は抗腫瘍、鎮静、鎮痛、鎮痙、消炎、結核菌などの生育抑制、血糖降下、心筋収縮抑制、血小板凝集阻害など、多くの薬理作用を示すことが報告されている。本発明においては、担子菌類の子実体・菌糸体をそのまま利用することも、これらからの抽出物を利用することも可能である。
【0014】
さて、本発明においては前記ブルーベリーの茎又はその抽出物と、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物をそれぞれ単体ではなく、その両方を含有するペットフードとした点が最も重要な特徴である。本願発明者の研究によって、これらを単体で使用した場合と比較して、これら両方を含んだペットフードとすると、肝臓病・尿道結石・肝臓病・心臓病(特に血流障害に係るもの)といった病気・疾患の予防や治療の助けといった本発明の作用が有意に上昇することが見出されたからである。
【0015】
(2)上記課題を解決するため、本発明においては、
前記担子菌類とは、冬虫夏草である
ことを特徴とする、(1)に記載のペットフードとしている。
【0016】
冬虫夏草とは、フユムシナツクサタケ、セミタケ、ノムシタケ、サナギタケ、ハナサナギタケなど土中の昆虫類に寄生した菌糸が地上に子実体を作るきのこの総称であり、古くから漢方の生薬や中華料理の薬膳食材として珍重されてきたフユムシナツクサタケも含まれる。これらは心筋収縮抑制、血小板凝集阻害などの薬理作用を示すことが報告されているのだが、本願発明者の研究からこれをブルーベリーの茎と同時に投与することで、肝臓病・尿道結石・肝臓病・心臓病(特に血流障害に係るもの)といった病気・疾患の予防や治療の助けといった作用が有意に上昇することが見出されている。したがって、担子菌類のなかでも冬虫夏草は特に好ましい選択である。なお、本願発明者の研究によれば、冬虫夏草をブルーベリーの茎と同時に投与することでさらに大きな効果が得られることが判明している。
【0017】
(3)上記課題を解決するため、本発明においては、
前記冬虫夏草とは、サナギタケである
ことを特徴とする、(1)または(2)のいずれかに記載のペットフードとしている。
【0018】
ブルーベリーの茎と同時に冬虫夏草を同時に投与することで、本発明の効果が有意に上昇することはすでに説明したとおりであるが、冬虫夏草のなかでも特にサナギタケを選択することで最大の効果が得られることが判明しており、本発明にとって好ましい選択である。なお、左記と同じく、サナギタケをブルーベリーの茎と同時に投与することで効果が最大化することが判明している。
【0019】
(4)上記課題を解決するため、本発明においては、
前記ブルーベリーの茎又はその抽出物と、前記担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物の割合が1:10から10:1とされている
ことを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載のペットフードとしている。
【0020】
ブルーベリーの茎又はその抽出物と、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物の両方を同時に投与することで、これらを単体で投与するよりも、肝臓病・尿道結石・肝臓病・心臓病(特に血流障害に係るもの)といった病気・疾患の予防や治療の助けといった作用が有意に大きくなることはすでに説明したとおりであるが、これらの配合の割合については、1:10から10:1の間とすることが好ましい。これの範囲外、つまり、一方が他方に対してごくわずかのみ添加されている場合であっても単体投与の場合と比較して効果が大きくなる傾向はあるのであるが、この範囲内とするとこれが顕著になるからである。
【0021】
(5)上記課題を解決するため、本発明においては、
前記ブルーベリーの茎又はその抽出物と、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物の割合が1:4から4:1とされている
ことを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載のペットフードとしている。
【0022】
ブルーベリーの茎又はその抽出物と、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物のこれらの配合の割合を1:10から10:1の間とするべきことはすでに説明したとおりであるが、これを1:4から4:1の間とすることがさらに好ましい。このようにすることで、本発明の作用が最大化するからである。
【発明の効果】
【0023】
(1)ブルーベリーの茎又はその抽出物と、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物を含むペットフードとしたので、肝臓病・尿道結石・肝臓病・心臓病(特に血流障害に係るもの)といった病気・疾患の予防や治療の助けに対して、これら単体または別の従来例では得られなかったより大きい作用効果を得ることができるという効果を奏する。
【0024】
(2)担子菌類を冬虫夏草としたので、本発明の効果がさらに大きくなるという効果を奏する。
【0025】
(3)担子菌類をサナギタケとしたので、本発明の効果がさらに大きくなるという効果を奏する。
【0026】
(4)ブルーベリーの茎又はその抽出物と、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物の割合を1:10から10:1としたので、二つの材料を同時に投与することによって得られる効果を確実なものとすることができるという効果を奏する。
【0027】
(5)ブルーベリーの茎又はその抽出物と、担子菌類の子実体・菌糸体の少なくともいずれか一つ又はその抽出物の割合を1:4から4:1としたので、二つの材料を同時に投与することによって得られる効果を最大化することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るペットフードの実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
ブルーベリーの茎とサナギタケを混合して本発明に係るペットフードを得た。ブルーベリーの茎とサナギタケの混合割合はさまざまなものを調整し、これらの効果を動物実験によって確認した。また、比較のため、ブルーベリーの茎単体、サナギタケ単体、ノコギリヤシ、L-シトルリン、ウコン、クルクミンについても、これらの効果を動物実験によって確認した。
【0030】
前記ペットフードを腎不全の犬に投与し、その血液検査を実施したところ、「尿素窒素(BUN)」「クレアチニン(CRE)」の両項目において顕著な改善が見られた。この効果は、腎臓によいことで知られるノコギリヤシやL-シルトリンと比較しても有用性が高く、また、ブルーベリーの茎単体やサナギタケ単体を投与した場合よりもその効果が大きかった。また、ブルーベリーの茎とサナギタケの割合はどのような割合であっても効果が見られたが、1:10乃至10:1の範囲で大きな効果が見られ、特に1:4乃至4:1の割合で極めて大きな効果が見られた。
【0031】
同様に尿路結石について、前記ペットフードを「尿pH」がアルカリ性に偏っているストルバイト結石の犬に投与したところ、尿路結石が再発しにくい条件である「尿pH」が弱酸性の状態で安定させる効果が見られた。詳細は割愛するが、ストルバルト結石以外の尿路結石についても有効性を確認した。
【0032】
同様に肝臓病について、前記ペットフードを「GPT(ALT)」が高値を示す犬に投与したところ、これが有意に改善する効果が見られた。この効果は、肝臓によいことで知られるウコンやクルクミンと比較しても有用性が高く、また、ブルーベリーの茎単体やサナギタケ単体を投与した場合よりもその効果が大きかった。
【0033】
同様に心臓病について、前記ペットフードを心不全の犬に投与したところ、「ANP」「BNP」に改善が見られた。
【0034】
なお、上記実施例ではサナギタケを使用したが、きのこ類で同様な効果を備えるペットフードが得られることを確認している。ただし、本願発明者の研究によれば、きのこ類の中でも冬虫夏草と呼ばれるものが効果が高く、さらにこの中でもサナギタケがもっとも高い効果が得られることが明らかになっており、上記実施例ではサナギタケを使用することとしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したとおり、本発明は肝臓病・尿道結石・肝臓病・心臓病(特に血流障害に係るもの)といった病気・疾患の予防や治療の助けとなる効果を有するペットフードを提供するものであり、産業上の利用価値はすこぶる高い。