(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
G01N27/409 100
(21)【出願番号】P 2021018337
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将之
(72)【発明者】
【氏名】大場 健弘
(72)【発明者】
【氏名】増田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】河合 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】島崎 雄次
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134069(JP,A)
【文献】特表2007-502424(JP,A)
【文献】特開2017-223621(JP,A)
【文献】特開2016-142683(JP,A)
【文献】特開2015-135252(JP,A)
【文献】特開2014-206479(JP,A)
【文献】特開2000-304719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/313780(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0174177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる筒状をなし、先端側から後端側に延びる貫通孔を有する主体金具と、
前記軸線方向に延びる棒状をなし、先端側に検出部を有し、前記主体金具の前記貫通孔内に挿入されたセンサ素子と、
前記主体金具の先端側に固定された筒状のプロテクタと、
前記主体金具のうち先端面を含む筒状の先端側壁部を、前記プロテクタと共に覆う主体金具保護部材と、を備える
ガスセンサにおいて、
前記主体金具の前記先端側壁部は、前記貫通孔を構成する前記主体金具の内周面のうち先端側から後端側に真っ直ぐ延びる先端側内周面を有し、
前記主体金具保護部材は、
前記先端側内周面の先端と同等の前記軸線方向にかかる位置から後端側に延びる筒状のテーパ壁部であって、後端側に向かうにしたがって内周面が縮径するテーパ壁部を有し、
前記テーパ壁部は、前記主体金具の前記先端側内周面から離間しつつ前記先端側内周面の少なくとも一部を覆う
ガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサであって、
前記センサ素子の前記検出部は、前記テーパ壁部の軸線が通る位置に配置され、測定対象ガス中の特定ガス成分を検出し、
前記プロテクタは、前記検出部が配置される測定室を構成する第1プロテクタを含み、
前記第1プロテクタは、前記測定対象ガスを前記測定室内に取り入れるガス取入部を有し、
前記ガス取入部は、
前記テーパ壁部よりも先端側に位置し、
当該ガス取入部を通じて前記測定室内に取り入れる前記測定対象ガスを後端側に流す形態を有する
ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気管等に取り付けられて使用され、測定対象ガス(排気ガス)中の特定ガス成分(例えば、酸素やNOxなど)を検出するガスセンサが知られている。このようなガスセンサとして、特許文献1には、軸線方向に延びる筒状をなし、先端側から後端側に延びる貫通孔を有する主体金具と、軸線方向に延びる棒状をなし、先端側に検出部を有し、主体金具の貫通孔内に挿入されたセンサ素子と、主体金具の先端側に固定された筒状のプロテクタと、主体金具のうち先端面を含む筒状の先端側壁部を、プロテクタと共に覆う主体金具保護部材とを備えるガスセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
主体金具の先端側壁部は、貫通孔を構成する主体金具の内周面のうち先端側から後端側に真っ直ぐ延びる先端側内周面を有する。また、主体金具保護部材は、主体金具の先端側内周面に接触しつつ先端側内周面を覆う筒状壁部を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のガスセンサは、当該ガスセンサの先端側部位を排気管内に挿入する態様で使用される。このため、プロテクタ及び主体金具保護部材が、高温の測定対象ガス(排気ガス)に晒される。このようなガスセンサでは、高温の測定対象ガスが主体金具保護部材に接触して、主体金具保護部材が高温になることがある。さらに、高温になった主体金具保護部材の熱が、主体金具を通じてガスセンサの後端側へ伝わることがあった。
【0006】
特に、上述のガスセンサでは、主体金具保護部材の筒状壁部が主体金具の先端側内周面に接触しているため、高温になった主体金具保護部材の熱が、主体金具を通じてガスセンサの後端側へ伝わり易くなっていた。ガスセンサの後端側には、例えば、ゴムまたは樹脂からなるグロメットが設けられている。このグロメットは、ガスセンサを構成する他のセラミック部材や金属部材に比べて、耐熱性に劣る。このため、主体金具保護部材から主体金具を通じたガスセンサの後端側への伝熱を低減させることが求められていた。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、主体金具保護部材から主体金具を通じたガスセンサの後端側への伝熱が低減されたガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、軸線方向に延びる筒状をなし、先端側から後端側に延びる貫通孔を有する主体金具と、前記軸線方向に延びる棒状をなし、先端側に検出部を有し、前記主体金具の前記貫通孔内に挿入されたセンサ素子と、前記主体金具の先端側に固定された筒状のプロテクタと、前記主体金具のうち先端面を含む筒状の先端側壁部を、前記プロテクタと共に覆う主体金具保護部材と、を備えるガスセンサにおいて、前記主体金具の前記先端側壁部は、前記貫通孔を構成する前記主体金具の内周面のうち先端側から後端側に真っ直ぐ延びる先端側内周面を有し、前記主体金具保護部材は、前記先端側内周面の先端と同等の前記軸線方向にかかる位置から後端側に延びる筒状のテーパ壁部であって、後端側に向かうにしたがって内周面が縮径するテーパ壁部を有し、前記テーパ壁部は、前記主体金具の前記先端側内周面から離間しつつ前記先端側内周面の少なくとも一部を覆うガスセンサである。
【0009】
上述のガスセンサでは、主体金具保護部材がテーパ壁部を有する。テーパ壁部は、主体金具の先端側内周面の先端と同等の軸線方向にかかる位置から後端側に延びる筒状(テーパ筒状)をなし、後端側に向かうにしたがって内周面が縮径する形態を有する。このテーパ壁部は、主体金具の先端側内周面から離間しつつ、先端側内周面の少なくとも一部(詳細には、先端側内周面のうち少なくとも先端側に位置する面)を覆っている。なお、主体金具の先端側内周面とは、主体金具の先端側壁部の内周面(主体金具の貫通孔を構成する主体金具の内周面の一部)のうち先端側から後端側に真っ直ぐ延びる筒状の面である。
【0010】
従って、従来(例えば、特許文献1)のように、主体金具保護部材の筒状壁部が、主体金具の先端側内周面に接触しつつ先端側内周面の少なくとも一部を覆う態様と比較して、主体金具保護部材から先端側内周面への伝熱を減少させることができる。すなわち、上述のガスセンサでは、主体金具保護部材のテーパ壁部が、主体金具の先端側内周面から離間しているので、主体金具保護部材のテーパ壁部から主体金具の先端側内周面へ熱が伝わり難くなる。従って、上述のガスセンサでは、主体金具保護部材から主体金具を通じたガスセンサの後端側への伝熱を減少させることができる。
【0011】
ところで、従来(例えば、特許文献1)のガスセンサでは、主体金具が、Fe元素を含む金属によって形成されている。さらに、従来のガスセンサは、先端側を下方に向けた状態で使用され、測定対象ガス中の特定成分(例えば、NOxや酸素)を検出する。さらには、センサ素子の検出部が、筒状壁部よりも先端側(下方)に配置される。
【0012】
このようなガスセンサにおいて、主体金具の内周面に結露水が発生した場合には、結露水によって主体金具の内周面が腐食して、Fe元素を含む化合物(Fe化合物とする)が生じることがあった。そして、このFe化合物を含む結露水が、主体金具保護部材の筒状壁部の内周面を伝って先端側(下方)に流れた後、径方向中心側に位置するセンサ素子に近づくように空中を流れ落ち、センサ素子の検出部に付着することがあった。そして、センサ素子の検出部に付着したFe化合物の影響によって、測定対象ガス中の特定成分を適切に検出することができなくなることがあった。
【0013】
これに対し、上述のガスセンサでは、主体金具保護部材のうち主体金具の先端側内周面を覆う筒状の壁部を、後端側に向かうにしたがって内周面が縮径するテーパ壁部としている。従って、テーパ壁部の内周面は、先端側に向かうにしたがって拡径する(径方向外側へ拡がる)。このため、Fe化合物を含む結露水が主体金具保護部材のテーパ壁部の内周面を伝って先端側(下方)に流れるとき、当該結露水は、径方向外側へ、すなわち、センサ素子の検出部から遠ざかる方向へ流れてゆく。これにより、上述のガスセンサでは、Fe化合物を含む結露水がセンサ素子の検出部に付着し難くなるので、「センサ素子の検出部に付着したFe化合物の影響によって、測定対象ガス中の特定成分を適切に検出することができなくなること」を低減することができる。
【0014】
さらに、前記のガスセンサであって、前記センサ素子の前記検出部は、前記テーパ壁部の軸線が通る位置に配置され、測定対象ガス中の特定ガス成分を検出し、前記プロテクタは、前記検出部が配置される測定室を構成する第1プロテクタを含み、前記第1プロテクタは、前記測定対象ガスを前記測定室内に取り入れるガス取入部を有し、前記ガス取入部は、前記テーパ壁部よりも先端側に位置し、当該ガス取入部を通じて前記測定室内に取り入れる前記測定対象ガスを後端側に流す形態を有するガスセンサとすると良い。
【0015】
上述のガスセンサでは、センサ素子の検出部が、テーパ壁部の軸線が通る位置に配置されている。さらに、第1プロテクタのガス取入部が、主体金具保護部材のテーパ壁部よりも先端側に位置している。このガス取入部は、当該ガス取入部を通じて測定室内(第1プロテクタの内部)に取り入れる測定対象ガスを後端側に流す形態を有する。従って、測定対象ガスは、第1プロテクタのガス取入部を通じて測定室内(第1プロテクタの内部)に導入されると、測定室内を後端側に流れてゆく。
【0016】
これに対し、上述のガスセンサでは、前述のように、主体金具保護部材が、主体金具の先端側内周面を覆うテーパ壁部を有している。このテーパ壁部は、後端側に向かうにしたがって内周面が縮径する形態を有する。従って、第1プロテクタのガス取入部を通過して測定室内を後端側に流れてゆく測定対象ガスの一部は、テーパ壁部に接触(衝突)して、テーパ壁部の軸線側(径方向中心側)へ流れてゆく。これにより、当該測定対象ガスを、センサ素子の検出部に近づけることができる。従って、上述のガスセンサは、従来のガスセンサ(主体金具の先端側内周面を覆う壁部が軸線方向に真っ直ぐ延びる筒状壁部であるガスセンサ)に比べて、応答性が向上する。
【0017】
例えば、センサ素子の検出部が、主体金具保護部材のテーパ壁部よりも先端側に配置されている場合は、テーパ壁部に接触(衝突)してテーパ壁部の軸線側(径方向中心側)へ流れた測定対象ガスは、その後、テーパ壁部の径方向中心付近を先端側へ流れてゆくことで、センサ素子の検出部に向かうようになる。これにより、ガスセンサの応答性が向上する。また、センサ素子の検出部が、主体金具保護部材のテーパ壁部の径方向内側、または、テーパ壁部よりも後端側に配置されている場合は、第1プロテクタの内部を後端側に流れてゆく測定対象ガスが、テーパ壁部に接触(衝突)してテーパ壁部の軸線(径方向中心)に近づくように流れることで、センサ素子の検出部に向かうことになる。これにより、ガスセンサの応答性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態にかかるガスセンサの縦断面図である。
【
図2】実施形態にかかる主体金具保護部材の半断面図である。
【
図5】変形形態にかかるガスセンサの縦断面図である。
【
図6】変形形態にかかる内側プロテクタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態のガスセンサ1の縦断面図である。なお、
図1において、下側がガスセンサ1の先端側であり、上側がガスセンサ1の後端側である。ガスセンサ1は、先端側部位が図示しない自動車等の排気管内に挿入される態様で排気管に取り付けられ、先端側を下方に向けた状態で使用される。具体的には、ガスセンサ1は、排気ガス(測定対象ガス)中の特定ガス成分(例えば、酸素やNOxなど)を検出する。
【0020】
このガスセンサ1は、
図1に示すように、主体金具3とセンサ素子5とプロテクタ9と主体金具保護部材10とを備える。このうち、主体金具3は、軸線方向D1(ガスセンサ1の軸線AX1に沿う方向、
図1において上下方向)に延びる筒状をなし、先端側から後端側に延びる貫通孔3fを有する。また、センサ素子5は、軸線方向D1に延びる棒状をなし、先端側に検出部5bを有する。このセンサ素子5は、主体金具3の貫通孔3f内に挿入されている。プロテクタ9は、筒状をなし、主体金具3の先端側の部位に固定されている。主体金具保護部材10は、筒状をなし、主体金具3のうち先端面3dを含む筒状の先端側壁部3cを、プロテクタ9と共に覆っている。
【0021】
さらに、ガスセンサ1は、外筒11とセパレータ13とグロメット15とを備える。このうち、外筒11は、筒状をなし、主体金具3の後端側に取り付けられて、センサ素子5の後端側の部位を包囲している。セパレータ13は、セラミックからなり、筒状をなしている。このセパレータ13は、外筒11の内部に配置されており、センサ素子5の後端部(
図1において上端部)を収容している。グロメット15は、外筒11の後端側の開口を閉塞している。
【0022】
センサ素子5は、矩形棒状(直方体形状)をなし(
図4参照)、測定対象ガス(排気ガス)に晒される先端側に、保護層に覆われた検出部5bを有する。この検出部5bは、排気ガス(測定対象ガス)中の特定ガス成分(例えば、酸素やNOxなど)を検出する。また、センサ素子5の後端部には、電極端子部(第1~第5電極端子部)5f、5g、5h、5j、5kが形成されている。このセンサ素子5は、先端側に位置する検出部5bが、主体金具3の先端面3dから先端側に突出すると共に、後端側に位置する電極端子部5f~5kが、主体金具3の後端から後端側に突出した状態で、主体金具3に固定されている。
【0023】
電極端子部5f~5kには、それぞれ、金属端子である接続端子(第1~第5接続端子)41、42、43、44、45が接続されている(
図1参照)。詳細には、接続端子41~45は、セパレータ13の内部において、センサ素子5の電極端子部5f~5kにそれぞれ電気的に接続される。接続端子41~45は、弾性を有する耐熱性金属(例えばステンレス鋼など)を用いて構成される。さらに、接続端子41~45は、外部からセンサの内部に配設される(5本の)各リード線37(詳細には、リード線37中の金属芯線37b)に電気的に接続されており、リード線37が接続される外部機器と電極端子部5f~5kとの間に流れる電流の経路を形成する。なお、
図1では、3本のリード線37のみを示している。
【0024】
主体金具3は、その外表面に自身を排気管に固定するためのネジ部3mを備えるとともに、自身を軸線方向D1に貫通する貫通孔3fを有する筒状の部材である。なお、貫通孔3fには、径方向内側に突出する棚部3kが形成されている。主体金具3は、金属材料(例えば、ステンレスなど)によって形成されている。さらに、主体金具3は、先端面3dを含む円筒状の先端側壁部3cを有する。この先端側壁部3cは、貫通孔3fを構成する主体金具3の内周面3gのうち先端側から後端側に真っ直ぐ延びる(詳細には、軸線方向D1に真っ直ぐ延びる)円筒状の先端側内周面3hを有する。
【0025】
主体金具3の貫通孔3fの内部には、絶縁性材料(例えばアルミナなど)からなる環状のホルダ61と、環状の滑石リング63、65と、絶縁性材料(例えばアルミナなど)からなる環状のスリーブ67とが、センサ素子5の径方向周囲を取り囲む状態で配置されている(
図1参照)。スリーブ67と主体金具3の後端部との間には、加締パッキン69が配置されている。また、ホルダ61と主体金具3の棚部3kとの間には、滑石リング63やホルダ61を保持するための筒状の金属ホルダ71が配置されている。なお、主体金具3の後端部は、加締パッキン69を介してスリーブ67を先端側に押し付けるようにして、加締められている(
図1参照)。
【0026】
プロテクタ9は、センサ素子5の先端側の部位(主体金具3の先端面3dから先端側に突出する部位)を包囲する態様で、主体金具3の先端側壁部3cの外周面に溶接等(図示せず)によって固定されている。このプロテクタ9は、耐熱性材料(例えばNCF601など)によって形成されている。プロテクタ9は、センサ素子5の検出部5bが配置される測定室Sを構成する筒状の第1プロテクタ9b(内側プロテクタ)と、第1プロテクタ9bの外周を取り囲む筒状の第2プロテクタ9d(外側プロテクタ)とを備える二重筒構造を有している。第1プロテクタ9bには、測定対象ガスの通過が可能な複数の通気孔9cが形成されている。第2プロテクタ9dには、測定対象ガスの通過が可能な複数の通気孔9fが形成されている(
図1参照)。
【0027】
また、セパレータ13は、絶縁性材料(例えばアルミナなど)によって形成された筒状の部材であり、外筒11の後端側の内部に配置された筒状の保持金具73によって、外筒11の後端側の内部に保持されている。このセパレータ13は、その外表面に外向きに突出する環状の鍔部13bを有する。この鍔部13bが保持金具73に支えられることにより、セパレータ13が外筒11に保持されている。さらに、セパレータ13は、自身を軸線方向D1に貫通する貫通孔13cを有する。この貫通孔13cには、センサ素子5の後端部(電極端子部5f~5k)が収容されるとともに、電極端子部5f~5kに電気的に接続する接続端子41~45が収容されている。
【0028】
グロメット15は、可撓性材料(例えばフッ素樹脂)からなり、セパレータ13の後端に接触するようにして外筒11の後端部の内側に配置されている。このグロメット15は、外筒11の後端部を径方向内側に加締めることによって、外筒11に固定されている。
また、各リード線37は、接続端子41~45の後端部に(加締めによって)接続されるとともに、グロメット15の貫通孔15bを挿通して、外部に延設されている。
【0029】
また、主体金具保護部材10は、筒状をなし、耐熱性金属材料(NCF601またはSUS310)によって構成されている。この主体金具保護部材10は、
図1及び
図2に示すように、先端側に位置する平板環状の鍔部10b(先端側環状部)と、後端側に位置する平板環状で鍔部10bよりも径小の天井部10d(後端側環状部)と、鍔部10bと天井部10dとの間に位置する筒状(テーパ筒状)のテーパ壁部10c(テーパ筒状壁部)とを備える。主体金具保護部材10の平面視(軸線方向D1に沿った平面視)で、鍔部10bはテーパ壁部10cよりも径方向外側に位置し、天井部10dはテーパ壁部10cよりも径方向内側に位置する。主体金具保護部材10は、センサ素子5が挿通される挿通孔10fを有する。
【0030】
この主体金具保護部材10は、テーパ壁部10cの軸線AX2がガスセンサ1の軸線AX1と重なる(一致する)ようにして配置される。詳細には、主体金具保護部材10は、鍔部10bが主体金具3の先端面3dに接触すると共に、テーパ壁部10c及び天井部10dが主体金具3の貫通孔3f内に挿入される態様で設けられている(
図1及び
図3参照)。この主体金具保護部材10は、鍔部10bが、主体金具3の先端面3dとプロテクタ9(詳細には、第1プロテクタ9b)の内面との間に挟まれる態様で、主体金具3に固定されている。主体金具保護部材10は、主体金具3の先端側壁部3cを、プロテクタ9と共に覆っている。
【0031】
なお、本実施形態のガスセンサ1では、センサ素子5の検出部5bが、ガスセンサ1の軸線AX1が通る位置(すなわち、ガスセンサ1の径方向中心部)で、且つ、主体金具保護部材10のテーパ壁部10cよりも先端側(下方)に配置されている(
図1参照)。従って、センサ素子5の検出部5bは、テーパ壁部10cの軸線AX2(
図2参照)が通る位置で、且つ、テーパ壁部10cよりも先端側(下方)に配置される(
図1及び
図3参照)。
【0032】
ところで、主体金具3は、変形を伴う加工(加締め加工など)が可能な材料で形成する必要があり、本実施形態では、SUS430で形成されている。SUS430で形成された主体金具3は、自身の後端部が加締め加工されることで、加締パッキン69を介してスリーブ67を先端側に押し付けている。これに対し、主体金具保護部材10及びプロテクタ9を構成する材料(NCF601またはSUS310)は、主体金具3を構成する材料(SUS430)に比べて、耐熱性及び耐食性に優れている。このため、主体金具3の先端側壁部3cを、主体金具保護部材10とプロテクタ9とによって覆うことで、「高温の排気ガスが主体金具3の先端側壁部3cに接触することによる先端側壁部3cの腐食」を低減することができる。
【0033】
また、本実施形態では、主体金具保護部材10のテーパ壁部10cは、主体金具3の先端側内周面3hの先端3jと同等の軸線方向D1にかかる位置から後端側(
図1~
図3において上側)に延びる円筒状をなし、後端側に向かうにしたがって内周面10gが縮径する(内径及び外径が縮小する)形態を有している(
図1~
図3参照)。このテーパ壁部10cは、主体金具3の先端側内周面3hから離間しつつ先端側内周面3hを覆っている(
図1及び
図3参照)。
【0034】
従って、従来(例えば、特許文献1)のように、主体金具保護部材の筒状壁部が、主体金具の先端側内周面に接触しつつ先端側内周面の少なくとも一部を覆う態様と比較して、主体金具保護部材から先端側内周面への伝熱を減少させることができる。すなわち、本実施形態のガスセンサ1では、主体金具保護部材10のテーパ壁部10cが、主体金具3の先端側内周面3hから離間しているので、主体金具保護部材10のテーパ壁部10cから主体金具3の先端側内周面3hへ熱が伝わり難くなる。従って、本実施形態のガスセンサ1では、従来(例えば、特許文献1)のガスセンサに比べて、主体金具保護部材10から主体金具3を通じたガスセンサ1の後端側への伝熱を低減させることができる。
【0035】
ところで、従来(例えば、特許文献1)のガスセンサでは、主体金具が、Fe元素を含む金属(例えば、SUS430)によって形成されている。さらに、従来のガスセンサは、本実施形態のガスセンサ1と同様に、先端側を下方に向けた状態で使用され、測定対象ガス中の特定成分(例えば、NOxや酸素)を検出する。さらには、センサ素子の検出部が、筒状壁部よりも先端側(下方)に配置される。
【0036】
このようなガスセンサにおいて、主体金具の内周面に結露水が発生した場合には、結露水によって主体金具の内周面が腐食して、Fe元素を含む化合物(Fe化合物とする)が生じることがあった。そして、このFe化合物を含む結露水が、主体金具保護部材の筒状壁部の内周面を伝って先端側(下方)に流れた後、径方向中心側に位置するセンサ素子に近づくように空中を流れ落ち、センサ素子の検出部に付着することがあった。そして、センサ素子の検出部に付着したFe化合物の影響によって、測定対象ガス中の特定成分を適切に検出することができなくなることがあった。
【0037】
これに対し、本実施形態のガスセンサ1では、主体金具保護部材10のうち主体金具3の先端側内周面3hを覆う筒状の壁部を、後端側(すなわち、上方)に向かうにしたがって内周面10gが縮径する(内径が縮小する)テーパ壁部10cとしている(
図1~
図3参照)。従って、テーパ壁部10cの内周面10gは、先端側(すなわち、下方)に向かうにしたがって拡径する(径方向外側へ拡がる)。このため、Fe化合物を含む結露水が主体金具保護部材10のテーパ壁部10cの内周面10gを伝って先端側(下方)に流れるとき、当該結露水は、径方向外側へ、すなわち、センサ素子5の検出部5bから遠ざかる方向へ流れてゆく。これにより、本実施形態のガスセンサ1では、Fe化合物を含む結露水がセンサ素子5の検出部5bに付着し難くなるので、「センサ素子の検出部に付着したFe化合物の影響によって、測定対象ガス中の特定成分を適切に検出することができなくなること」を低減することができる。
【0038】
さらに、本実施形態のガスセンサ1では、主体金具保護部材10の縦断面(軸線AX2を通る位置で軸線AX2に沿って切断した断面、
図2に示す断面)において、テーパ壁部10cの内周面10gと鍔部10bの先端側面10j(下面)との境界に位置する角部を、円弧状の角部10hとし、当該角部10hの曲率半径を0.6mmとしている(
図1~
図3参照)。テーパ壁部10cの内周面10gの先端に繋がる円弧状の角部10hの曲率半径を0.3mm以上(より好ましくは0.6mm以上)とすることで、テーパ壁部10cの内周面10gを伝って内周面10gの先端(下端)まで流れた結露水が、角部10hを伝ってさらに径方向外側へ(すなわち、センサ素子5の検出部5bから遠ざかる方向へ)流れ易くなる。これにより、本実施形態のガスセンサ1では、Fe化合物を含む結露水が、より一層、センサ素子5の検出部5bに付着し難くなる。
【0039】
<変形形態>
次に、変形形態にかかるガスセンサ101について説明する。本変形形態のガスセンサ101は、実施形態のガスセンサ1と比較して、プロテクタ109を構成する第1プロテクタ109b(内側プロテクタ)が異なり、その他は同等である(
図5参照)。
【0040】
本変形形態のガスセンサ101では、実施形態のガスセンサ1と同様に、センサ素子5の検出部5bが、ガスセンサ1の軸線AX1が通る位置(すなわち、ガスセンサ1の径方向中心部)で、且つ、主体金具保護部材10のテーパ壁部10cよりも先端側(下方)に配置されている(
図5参照)。従って、センサ素子5の検出部5bは、テーパ壁部10cの軸線AX2が通る位置で、且つ、テーパ壁部10cよりも先端側(下方)に配置される(
図5及び
図8参照)。
【0041】
第1プロテクタ109bは、筒状をなし、測定室S内に測定対象ガス(排気ガス)を取り入れるガス取入部109cを有する(
図5~
図8参照)。なお、測定室Sは、センサ素子5の検出部5bが配置されている室であり、第1プロテクタ109bや主体金具保護部材10などによって囲まれた室である。
【0042】
第1プロテクタ109bのガス取入部109cは、主体金具保護部材10のテーパ壁部10cよりも先端側(
図5~
図8において下方)に位置している。このガス取入部109cは、当該ガス取入部109cを通じて測定室S内(第1プロテクタ109bの内部)に取り入れた測定対象ガス(排気ガス)を後端側(
図5~
図8において上方)に流す形態を有する。従って、測定対象ガスは、第1プロテクタ109bのガス取入部109cを通じて測定室S内(第1プロテクタ109bの内部)に導入されると、測定室S内を後端側に流れてゆく。
【0043】
詳細には、ガス取入部109cは、測定対象ガスが流通可能なガス取入口109gと、ガイド部109hとを有する(
図5~
図8参照)。ガイド部109hは、ガス取入口109gを通じて第1プロテクタ109bの内部(測定室S内)に取り入れられる測定対象ガス(排気ガス)を、後端側に導く形態を有する。具体的には、第1プロテクタ109bのうち円筒形状をなす側壁部109jの一部について、軸線方向D1(
図5~
図8において上下方向)に延びる2つの切れ目とこの2つの切れ目を連結する周方向に延びる切れ目とからなるコの字形状の切れ目を入れて、切れ目に囲まれた部位(ガイド部109hとなる部位)を第1プロテクタ109bの径方向内側に折り曲げることで、ガイド部109hを形成すると共に、ガス取入口109gを形成している(
図5~
図8参照)。
【0044】
ガイド部109hは、ガス取入口109gの先端部から後端側(及び径方向内側)に延びる形態をなしている。従って、ガス取入口109gを通じて第1プロテクタ109bの内部(測定室S内)に取り入れられる測定対象ガス(排気ガス)は、ガイド部109hに沿って後端側に流れるようになる。従って、測定対象ガスは、第1プロテクタ109bのガス取入部109cを通じて測定室S内に導入されると、測定室S内を後端側に流れてゆく。
【0045】
これに対し、本変形形態のガスセンサ101では、実施形態のガスセンサ1と同様に、主体金具保護部材10が、主体金具3の先端側内周面3hを覆うテーパ壁部10cを有している。このテーパ壁部10cは、後端側に向かうにしたがって内周面10gが縮径する形態を有する。従って、第1プロテクタ109bのガス取入部109cを通過して測定室S内を後端側に流れてゆく測定対象ガスの一部は、テーパ壁部10cの内周面10gに接触(衝突)して、テーパ壁部10cの軸線AX2側(径方向中心側)へ流れてゆく。これにより、当該測定対象ガスを、センサ素子5の検出部5bに近づけることができる。
【0046】
詳細には、テーパ壁部10cの内周面10gに接触(衝突)してテーパ壁部10cの軸線AX2側(径方向中心側)へ流れた測定対象ガス(排気ガス)は、その後、テーパ壁部10cの径方向中心付近を先端側へ流れてゆくことで、センサ素子5の検出部5bに向かうようになる。これにより、本変形形態のガスセンサ101は、従来のガスセンサ(主体金具の先端側内周面を覆う壁部が軸線方向に真っ直ぐ延びる筒状壁部であるガスセンサ)に比べて、応答性が良好になる。
【0047】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0048】
例えば、実施形態及び変形形態では、主体金具保護部材として、鍔部10bと天井部10dとテーパ壁部10cとを備える主体金具保護部材10を示したが、本発明の主体金具保護部材は、このような主体金具保護部材に限定されるものではない。本発明の主体金具保護部材は、「主体金具3の先端側内周面3hの先端3jと同等の軸線方向D1にかかる位置から後端側に延びる筒状をなし、後端側に向かうにしたがって内周面が縮径する形態を有するテーパ壁部」を有し、当該テーパ壁部が主体金具3の先端側内周面3hから離間しつつ先端側内周面3hの少なくとも一部を覆うものであれば、いずれの形態であっても良い。
【0049】
また、実施形態及び変形形態では、センサ素子5の検出部5bが、主体金具保護部材10のテーパ壁部10cよりも先端側(下方)に配置されたガスセンサ1,101を示した(
図1及び
図5参照)。しかしながら、本発明は、センサ素子5の検出部5bが、主体金具保護部材10のテーパ壁部10cの径方向内側(すなわち、テーパ壁部10cに包囲された位置)、または、テーパ壁部10cよりも後端側に配置されたガスセンサにも適用することができる。
【0050】
例えば、変形形態のガスセンサ101において、センサ素子5の検出部5bを、主体金具保護部材10のテーパ壁部10cの径方向内側、または、テーパ壁部10cよりも後端側に配置した場合は、第1プロテクタ109bの内部(測定室S内)を後端側に流れてゆく測定対象ガスが、テーパ壁部10cの内周面10gに接触(衝突)してテーパ壁部10cの軸線AX2(径方向中心)に近づくように流れることで、センサ素子5の検出部5bに向かうことになる。これにより、ガスセンサの応答性が良好になる。
【符号の説明】
【0051】
1,101 ガスセンサ
3 主体金具
3c 先端側壁部
3d 先端面
3f 貫通孔
3g 内周面
3h 先端側内周面
3j 先端側内周面の先端
5 センサ素子
5b 検出部
9,109 プロテクタ
9b,109b 第1プロテクタ(内側プロテクタ)
9d 第2プロテクタ(外側プロテクタ)
10 主体金具保護部材
10c テーパ壁部
10g テーパ壁部の内周面
109c ガス取入部
109g ガス取入口
109h ガイド部
AX1,AX2 軸線
D1 軸線方向
S 測定室