(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】蓄電デバイスパックの保存方法及び蓄電デバイスパックの保存装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20240216BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240216BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/264
H01M50/244 A
H01M50/209
H01M10/42 Z
(21)【出願番号】P 2022022106
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中山 正人
(72)【発明者】
【氏名】森下 大樹
(72)【発明者】
【氏名】城山 祐樹
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092724(JP,A)
【文献】特開2017-117636(JP,A)
【文献】特開2010-009978(JP,A)
【文献】特開2012-252848(JP,A)
【文献】特開2007-165698(JP,A)
【文献】特開2006-080045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 10/42
H01M 10/44
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスパックは、
複数の電極板が積層された電極積層部を包含する積層部包含電極体を有する複数の蓄電デバイスと、
上記複数の蓄電デバイスを内部に収容する収容外装体と、を備えており、
上記収容外装体は、
上記蓄電デバイスパックを使用機器に繰り返し着脱可能な着脱可能構造を有しており、かつ、
上記収容外装体及び上記複数の蓄電デバイスは、
上記蓄電デバイスパックの外部から外部力を掛けて、上記複数の蓄電デバイスの上記電極積層部に掛かる電極板積層方向の圧縮荷重をそれぞれ増加させる外部圧縮を、繰り返し施工可能な圧縮可能構造を有する
上記蓄電デバイスパックを、上記使用機器から取り外した状態で保存する保存方法であって、
上記蓄電デバイスパックに上記外部力を掛けて、上記複数の蓄電デバイスの上記電極積層部に掛かる上記圧縮荷重をそれぞれ増加させる上記外部圧縮を行う外部圧縮ステップと、
上記外部圧縮ステップにより上記圧縮荷重を増加させた状態で、上記蓄電デバイスパックを保存する保存ステップと、を備える
蓄電デバイスパックの保存方法。
【請求項2】
蓄電デバイスパックは、
複数の電極板が積層された電極積層部を包含する積層部包含電極体を有する複数の蓄電デバイスと、
上記複数の蓄電デバイスを内部に収容する収容外装体と、を備えており、
上記収容外装体は、
上記蓄電デバイスパックを使用機器に繰り返し着脱可能な着脱可能構造を有しており、かつ、
上記収容外装体及び上記複数の蓄電デバイスは、
上記蓄電デバイスパックの外部から外部力を掛けて、上記複数の蓄電デバイスの上記電極積層部に掛かる電極板積層方向の圧縮荷重をそれぞれ増加させる外部圧縮を、繰り返し施工可能な圧縮可能構造を有する
上記蓄電デバイスパックを、上記使用機器から取り外した状態で保存する保存装置であって、
上記蓄電デバイスパックに上記外部力を掛けて、上記複数の蓄電デバイスの上記電極積層部に掛かる上記圧縮荷重をそれぞれ増加させる上記外部圧縮を行う外部圧縮機構部を備える
蓄電デバイスパックの保存装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電デバイスと、これらを内部に収容する収容外装体とを備える蓄電デバイスパックの保存方法、及び、蓄電デバイスパックの保存装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスパックとして、二次電池やキャパシタなどの蓄電デバイスが、収容外装体内に収容された蓄電デバイスパックが知られている。更にこれに含まれる蓄電デバイスとして、複数の電極板が積層された電極積層部を包含する積層部包含電極体(以下、単に電極体ともいう)を有する蓄電デバイスがある。例えば、複数の矩形状の電極板をセパレータや固体電解質層を介して交互に複数層積層した直方体状で積層型の電極体や、帯状の電極板を帯状のセパレータを介して扁平状に捲回した扁平状で捲回型の電極体などである。例えば特許文献1に、このような蓄電デバイスパックが開示されている(特許文献1の
図1~
図3等参照)。
更にこのような蓄電デバイスパックの中には、使用の際に使用機器に搭載する一方、充電や保存の際には使用機器から取り外す、繰り返し着脱可能なものがある。例えば電動工具やドローンなどでは、このような着脱可能な蓄電デバイスパックを用いることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電デバイスパックを使用機器に搭載して使用する際と、使用機器から取り外して保存する際とで、蓄電デバイスパックが備える各蓄電デバイスの電極体の電極積層部に掛かる電極板積層方向の圧縮荷重の大きさを変更したい場合がある。具体的には、保存の際に、この圧縮荷重を増加させたい場合がある。
例えば蓄電デバイスが、電解液を含むリチウムイオン二次電池の場合には、充電を繰り返し行うに連れて、充電の際に電極体内で電解液が分解して発生したガスが、電極体内に溜まっていき、これに起因して電池抵抗が増加していく。これに対し、保存の際に、この電池の電極体の電極積層部に掛かる電極板積層方向の圧縮荷重を増加させると、電極体内に溜まったガスが圧縮により電極体外に放出されるため、ガスにより電池抵抗が増加するのを抑制できる。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、使用機器に着脱可能な蓄電デバイスパックにおいて、保存の際に蓄電デバイスの積層部包含電極体の電極積層部に掛かる電極板積層方向の圧縮荷重を増加させることができる蓄電デバイスパックの保存方法、及び、この蓄電デバイスパックの保存装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、蓄電デバイスパックは、複数の電極板が積層された電極積層部を包含する積層部包含電極体を有する複数の蓄電デバイスと、上記複数の蓄電デバイスを内部に収容する収容外装体と、を備えており、上記収容外装体は、上記蓄電デバイスパックを使用機器に繰り返し着脱可能な着脱可能構造を有しており、かつ、上記収容外装体及び上記複数の蓄電デバイスは、上記蓄電デバイスパックの外部から外部力を掛けて、上記複数の蓄電デバイスの上記電極積層部に掛かる電極板積層方向の圧縮荷重をそれぞれ増加させる外部圧縮を、繰り返し施工可能な圧縮可能構造を有する上記蓄電デバイスパックを、上記使用機器から取り外した状態で保存する保存方法であって、上記蓄電デバイスパックに上記外部力を掛けて、上記複数の蓄電デバイスの上記電極積層部に掛かる上記圧縮荷重をそれぞれ増加させる上記外部圧縮を行う外部圧縮ステップと、上記外部圧縮ステップにより上記圧縮荷重を増加させた状態で、上記蓄電デバイスパックを保存する保存ステップと、を備える蓄電デバイスパックの保存方法である。
【0007】
上述の蓄電デバイスパックの保存方法は、上述の外部圧縮ステップ及び保存ステップを備えるため、蓄電デバイスパックを使用機器から取り外し、そのまま或いは充電した後に、外部圧縮により各蓄電デバイスの電極積層部に掛かる圧縮荷重を増加させた状態で、蓄電デバイスパックを保存することができる。
【0008】
なお、収容外装体に設けた「着脱可能構造」は、使用機器で使用するために蓄電デバイスパックを使用機器に装着するのと、充電や保存のために蓄電デバイスパックを使用機器から取り外すのとを、繰り返すことを可能とするべく収容外装体に設けた構造である。例えば、収容外装体に、使用機器の蓄電デバイス搭載部に予め形成された係合穴や係合凹部に係合して、蓄電デバイスパックを蓄電デバイス搭載部に装着する係合爪を設けた構造などが挙げられる。
【0009】
収容外装体及び複数の蓄電デバイスが有する「圧縮可能構造」は、外部圧縮を繰り返し施工可能とするべく採用した、収容外装体が有する形態や構造、複数の蓄電デバイスがそれぞれ有する形態や収容外装体内おける各蓄電デバイスの配置をいう。この「圧縮可能構造」には、収容外装体に所定の外部力を掛けることにより、この収容外装体を介して間接に、各蓄電デバイスの電極積層部に掛かる圧縮荷重を増加させる構造のほか、収容外装体を介さず、各々の蓄電デバイスに或いは蓄電デバイスを積層した積層体に直接、外部力を掛けることにより、各蓄電デバイスの電極積層部に掛かる圧縮荷重を増加させる構造も含まれる。
「蓄電デバイスパック」には、所定の外部力が掛けられていない状態では、蓄電デバイスの電極積層部に電極板積層方向の圧縮荷重が掛からない蓄電デバイスパックのほか、外部力が掛けられていない状態でも、蓄電デバイスの電極積層部に電極板積層方向の予備圧縮荷重が掛かっている蓄電デバイスパックも含まれる。
【0010】
また他の態様は、蓄電デバイスパックは、複数の電極板が積層された電極積層部を包含する積層部包含電極体を有する複数の蓄電デバイスと、上記複数の蓄電デバイスを内部に収容する収容外装体と、を備えており、上記収容外装体は、上記蓄電デバイスパックを使用機器に繰り返し着脱可能な着脱可能構造を有しており、かつ、上記収容外装体及び上記複数の蓄電デバイスは、上記蓄電デバイスパックの外部から外部力を掛けて、上記複数の蓄電デバイスの上記電極積層部に掛かる電極板積層方向の圧縮荷重をそれぞれ増加させる外部圧縮を、繰り返し施工可能な圧縮可能構造を有する上記蓄電デバイスパックを、上記使用機器から取り外した状態で保存する保存装置であって、上記蓄電デバイスパックに上記外部力を掛けて、上記複数の蓄電デバイスの上記電極積層部に掛かる上記圧縮荷重をそれぞれ増加させる上記外部圧縮を行う外部圧縮機構部を備える蓄電デバイスパックの保存装置である。
【0011】
上述の蓄電デバイスパックの保存装置では、上述の外部圧縮機構部を備えるため、蓄電デバイスパックを使用機器から取り外し、そのまま或いは充電した後に、外部圧縮により各蓄電デバイスの電極積層部に掛かる圧縮荷重を増加させた状態で、蓄電デバイスパックを保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施形態に係る電池パックのパック横方向及びパック高さ方向に沿う部分破断断面図である。
【
図4】実施形態に係る電池パック保存装置の上方から見た説明図である。
【
図5】実施形態に係る電池パック保存装置の側方から見た説明図である。
【
図6】実施形態に係る電池パックの保存方法のフローチャートである。
【
図7】拘束圧力を異ならせた各電池について、拘束時間と抵抗増加率Rzとの関係を示すグラフである。
【
図8】拘束圧力を異ならせた各電池について、拘束時間と電極体内ガス含有率Gaとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施形態に係る電池パック(蓄電デバイスパック)1の上面図を、
図2に電池パック1の部分破断断面図を示す。また
図3に、電池パック1が備える電池(蓄電デバイス)10の斜視図を示す。この電池パック1は、ドローンなどの使用機器(不図示)に搭載される電池パックである。なお以下では、電池パック1のパック縦方向AH、パック横方向BH及びパック高さ方向CHを、
図1及び
図2に示す方向と定めて説明する。
【0014】
電池パック1は、複数の電池10からなる電池集合体40と、この電池集合体40を内部に収容するパックケース(収容外装体)50とを備える。
このうち電池10は、リチウムイオン二次電池である。電池10は、積層部包含電極体(以下、単に電極体ともいう)11と、この電極体11を内部に収容する電池ケース21と、この電池ケース21に支持された正極端子31及び負極端子32等から構成されている。また電池ケース21内には、電解液25が収容されており、その一部は電極体11内に含浸され、一部は電池ケース21の底部に溜まっている。
【0015】
電極体11は、扁平な直方体状であり、矩形状の正極板(電極板)12と矩形状の負極板(電極板)15とを、樹脂製の多孔質膜からなる矩形状のセパレータ18を介して、交互に積層した積層型の電極体である。この電極体11は、正極板12及び負極板15がセパレータ18を介して電極板積層方向SHに積層された電極積層部11aからなる。電極積層部11aのうち、電極体幅方向DHの一方側DH1(
図3において左下方向)の部位は、正極板12の後述する正極露出部12dが電極板積層方向SHに重なった正極積層集電部11bであり、電極体幅方向DHの他方側DH2(
図3において右上方向)の部位は、負極板15の後述する負極露出部15dが電極板積層方向SHに重なった負極積層集電部11cである。この電極体11は、電極体幅方向DHが電池幅方向EHに一致すると共に、電極板積層方向SHが電池厚み方向FHに一致するように、横倒しの状態で電池ケース21内に収容されている。そして、電極体11の正極積層集電部11bに正極端子31が電気的に接続され、電極体11の負極積層集電部11cに負極端子32が電気的に接続されている。
【0016】
正極板12は、矩形状のアルミニウム箔からなる正極集電箔13を有する。この正極集電箔13の両主面上には、それぞれリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質粒子を含む正極活物質層14が形成されている。正極板12のうち電極体幅方向DHの一方側DH1の端部は、厚み方向に正極活物質層14が存在せず、正極集電箔13が厚み方向に露出した正極露出部12dとなっている。各々の正極板12の正極露出部12dは、前述のように電極板積層方向SHに重なって正極積層集電部11bを形成している。
【0017】
負極板15は、矩形状の銅箔からなる負極集電箔16を有する。この負極集電箔16の両主面上には、それぞれリチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質粒子を含む負極活物質層17が形成されている。負極板15のうち、電極体幅方向DHの他方側DH2の端部は、厚み方向に負極活物質層17が存在せず、負極集電箔16が厚み方向に露出した負極露出部15dとなっている。各々の負極板15の負極露出部15dは、前述のように電極板積層方向SHに重なって負極積層集電部11cを形成している。
【0018】
電池ケース21は、アルミニウムからなる扁平な直方体箱状であり、上方に開口22cを有する有底角筒状のケース本体部材22と、このケース本体部材22の開口22cを閉塞する形態で溶接された矩形板状のケース蓋部材23とから構成されている。このうちケース蓋部材23には、複数のアルミニウムの部材から構成される正極端子31が、ケース蓋部材23と絶縁された状態で固設されている。この正極端子31は、電池ケース21の内部で電極体11の正極積層集電部11bに接続し導通する一方、ケース蓋部材23を貫通して電池外部まで延びている。またケース蓋部材23には、複数の銅の部材から構成される負極端子32が、ケース蓋部材23と絶縁された状態で固設されている。この負極端子32は、電池ケース21の内部で電極体11の負極積層集電部11cに接続し導通する一方、ケース蓋部材23を貫通して電池外部まで延びている。
【0019】
電池集合体40は、上述の電池10が複数、電池厚み方向FH(電極積層部11aの電極板積層方向SH)に積層されている。電池集合体40を構成する各電池10は、矩形板状のバスバ45を介して直列に接続されている。そして、この電池集合体40の総正極端子41は、電池パック1のパック正極端子71に電気的に接続され、電池集合体40の総負極端子42は、電池パック1のパック負極端子72に電気的に接続されている。
【0020】
パックケース50は、各々アルミニウムからなる第1収容部51及び第2収容部61とを有し、伸縮可能な構造を有する。具体的には、第1収容部51は、パックケース50が伸縮する伸縮方向IH(パック横方向BHと同じ方向)の一方側IH1に開口する第1開口部51cを有する有底角筒状であり、矩形板状の第1底部52と、この第1底部52の周縁から垂直に立ち上がる4つの矩形板状の第1側部53,54,55,56とを有する。
一方、第2収容部61は、伸縮方向IHの他方側IH2に開口する第2開口部61cを有する有底角筒状であり、矩形板状の第2底部62と、この第2底部62の周縁から垂直に立ち上がる4つの矩形板状の第2側部63,64,65,66とを有する。この第2収容部61の第2開口部61cは、第1収容部51の第1開口部51cの内側に配置されて、第2収容部61が伸縮方向IHに移動可能に第1収容部51に嵌合している。
【0021】
前述の電池集合体40は、これら第1収容部51及び第2収容部61の内部に収容されている。具体的には、電池集合体40は、各電池10の電池幅方向EH(電極体幅方向DH)がパック縦方向AHと一致し、各電池10の電池厚み方向FH(電極板積層方向SH)がパック横方向BH(伸縮方向IH)と一致するようにして、第1収容部51の第1底部52と第2収容部61の第2底部62との間に配置されている。これにより、各電池10の電極積層部11aの電極板積層方向SHと、パックケース50の伸縮方向IHとが一致している。
【0022】
またパックケース50には、パック正極端子71及びパック負極端子72が固設されている。パック正極端子71は、パックケース50の内部で電池集合体40の総正極端子41に電気的に接続する一方、パックケース50を貫通してパック外部まで延びている。またパック負極端子72は、パックケース50の内部で電池集合体40の総負極端子42に電気的に接続する一方、パックケース50を貫通してパック外部まで延びている。
【0023】
またパックケース50は、使用機器に繰り返し着脱可能な着脱可能構造を有する。具体的には、パックケース50の第1収容部51の第1側部55,56には、それぞれ係合爪57が設けられており、これらの係合爪57を、使用機器の電池搭載部(不図示)に形成された係合凹部(不図示)に係合させることにより、電池パック1を使用機器に搭載して固定することができる。一方、係合爪57を使用機器の係合凹部から外すことにより、電池パック1を使用機器から取り外すことができる。従って、使用機器を利用する際に充電済みの電池パック1を使用機器に搭載する一方、電池パック1を充電する際や保存する際には、電池パック1を使用機器から取り外して、電池パック1単体に対して充電等を行うことができる。
【0024】
また電池パック1は、外部圧縮を繰り返し施工可能な圧縮可能構造を有する。即ち、電池パック1は、外部圧縮を行っていない状態では、電池集合体40に拘束荷重が掛かっていないため、各電池10の電極体11の電極積層部11aには、電極板積層方向SHの圧縮荷重Fcが掛かっていない。
一方、この電池パック1に、後述するように所定の外部力Fgを掛けて外部圧縮を行うと(
図4及び
図5参照)、具体的には、パックケース50のうち第1収容部51の第1底部52と第2収容部61の第2底部62とに、伸縮方向IHの内側IH3に向かう所定の外部力Fgを掛けると、パックケース50が伸縮方向IHに縮まり、第1底部52及び第2底部62を介して間接に、これらの間に挟まれた電池集合体40も伸縮方向IHに圧縮することができる。これにより、電池集合体40を構成する各電池10が電池厚み方向FH(電極板積層方向SH)に圧縮され、各電池10の電極体11の電極積層部11aに電極板積層方向SHの圧縮荷重Fcがそれぞれ掛かる(圧縮荷重Fcが零から増加する)。
【0025】
なお、この外部力Fgを解除すると、各電池10の電極積層部11aに掛かる圧縮荷重Fcはそれぞれ零に戻る。
このように電池パック1は、パックケース50に外部力Fgを掛けて各電池10の電極積層部11aに掛かる圧縮荷重Fcをそれぞれ増加させる外部圧縮を、繰り返し施工可能となっている。
【0026】
次いで、使用機器から取り外した上述の電池パック1の保存方法について説明する(
図4~
図6参照)。まず電池パック1の保存に用いる電池パック保存装置(蓄電デバイスパックの保存装置、以下、単に保存装置ともいう)100について説明する。保存装置100は、電池パック1が備える各電池10に外部圧縮を行う外部圧縮機構部110を備える。この外部圧縮機構部110は、電池パック1を載置する載置部111と、この載置部111から上方に延びる第1固定壁部112と、載置部111から上方に延び、第1固定壁部112に対向する第2固定壁部113と、第1固定壁部112と第2固定壁部113との間に配置され、これらに対向し、第1固定壁部112に向けて移動可能な移動壁部115と、移動壁部115を移動させるボルト116とを有する。
【0027】
第1固定壁部112は、載置部111に載置された電池パック1の伸縮方向IH(パック横方向BH)の一方側IH1(
図4,
図5において左方)に位置しており、パックケース50のうち第1収容部51の第1底部52を当接させる部位である。
一方、移動壁部115は、載置部111に載置された電池パック1の伸縮方向IH(パック横方向BH)の他方側IH2(
図4,
図5において右方)に位置している。またボルト116は、第2固定壁部113に穿設された雌ねじ部113aに螺合しつつ第2固定壁部113を貫通しており、ボルト116の先端部116sが移動壁部115に当接する。このボルト116の頭部116tを回転させて、ボルト116及びこれに当接する移動壁部115を第1固定壁部112に向けて(
図4,
図5において左方に向けて)移動させると、移動壁部115がパックケース50のうち第2収容部61の第2底部62に当接し、第1固定壁部112と移動壁部115でパックケース50を伸縮方向IH(パック横方向BH)に挟圧することができる。
【0028】
電池パック1の保存に当たっては、まず電池パック1を使用機器から取り外し、この電池パック1を外部圧縮機構部110の載置部111上に載置する。なお、電池パック1を使用機器から取り外した後、電池パック1に充電を行ってから、電池パック1を外部圧縮機構部110の載置部111上に載置してもよい。
そして「外部圧縮ステップ」S1において、外部圧縮機構部110のボルト116の頭部116tを回転させて、ボルト116及び移動壁部115を第1固定壁部112に向けて移動させ、第1固定壁部112と移動壁部115との間に電池パック1のパックケース50を伸縮方向IH(パック横方向BH)に挟む。更にボルト116及び移動壁部115を第1固定壁部112に向けて移動させて、パックケース50に伸縮方向IHの内側IH3に向かう所定の外部力Fgを掛けると、パックケース50の第1収容部51と第2収容部61が摺動してパックケース50が伸縮方向IHに縮まり、パックケース50に内蔵された電池集合体40を構成する各電池10が電池厚み方向FH(電極板積層方向SH)に圧縮されて、各電池10の電極体11の電極積層部11aに電極板積層方向SHの圧縮荷重Fcがそれぞれ掛かる(圧縮荷重Fcが零から増加する)。
【0029】
次に「保存ステップ」S2において、外部圧縮ステップS1により圧縮荷重Fcを増加させた状態で、蓄電デバイスパック1を保存する。本実施形態では、蓄電デバイスが電解液25を含むリチウムイオン二次電池10であるため、充電の際に電極体11内で電解液25が分解してガスが発生し、このガスが電極体11内に溜まり易い。しかし、この保存ステップS2は、電池10の電極積層部11aに掛かる圧縮荷重Fcを増加させた状態で行っているため、電極体11内に溜まったガスは圧縮により電極体11外に放出され易い。このため、電極体11内に溜まったガスに起因して電池抵抗が増加するのを抑制できる。
【0030】
この電池パック1を使用機器に搭載するに当たっては、「圧縮解除ステップ」S3において、前述の外部圧縮を解除する。即ち、外部圧縮機構部110のボルト116の頭部116tを逆回転させて、ボルト116及び移動壁部115を第1固定壁部112から遠ざかる方向(
図4,
図5において右方)に移動させ、移動壁部115をパックケース50の第2収容部61の第2底部62から離間させる。これにより、パックケース50が伸縮方向IHに伸びると共に、各電池10の電極積層部11aに掛かる圧縮荷重Fcが零になる。その後、電池パック1を保存装置100から取り外す。
【0031】
(試験結果)
次いで、本発明の効果を検証するために行った試験結果について説明する。まず電池10を複数用意し、初期の電池抵抗Rをそれぞれ測定した。具体的には、電池10をSOC50%(電池電圧3.7V)に調整した後、2Cの定電流Iで10秒間放電を行い、放電前後の電池電圧Vを測定して電圧変化量ΔVを求め、R=ΔV/Iにより電池抵抗(IV抵抗)Rを求めた。
次に、これらの電池10に充放電サイクル試験を行って、電池10をある程度劣化させた。具体的には、無拘束状態(電極体11の電極積層部11aに圧縮荷重Fcが掛かっていない状態)の電池10に充放電装置(不図示)を接続し、1Cの定電流でSOC100%(電池電圧4.2V)まで充電し、その後、2Cの定電流でSOC0%(電池電圧3.0V)まで放電させる充放電を1サイクルとして、この充放電を300回繰り返し行った。
その後、各電池10について、充放電サイクル試験後の電池抵抗Rを、初期の電池抵抗Rの測定と同様にしてそれぞれ測定した。更に、各電池10について、初期の電池抵抗Rに対する抵抗増加率Rz(%)を、抵抗増加率Rz=((充放電サイクル試験後の電池抵抗R)/(初期の電池抵抗R)-1)×100によりそれぞれ算出した。
【0032】
次に充放電サイクル試験後の各電池10について、SOC50%に調整した後、拘束圧力の大きさを電池10毎に0kpa(拘束なし)、50kpa、180kpaまたは1100kpaに変えて、電池厚み方向FH(電極板積層方向SH)に圧縮し、この圧縮状態で各電池10をそれぞれ保存した。
また拘束開始から12時間経過した後と48時間経過した後に、各電池10について、前述の測定と同様にして電池抵抗Rを測定し、初期の電池抵抗Rに対する抵抗増加率Rzをそれぞれ算出した。その結果を
図7に示す。
【0033】
また試験に用いた各電池10について、前述の充放電サイクル試験後(拘束前)と、拘束開始から12時間経過した後と、48時間経過した後に、それぞれ電極体11内に溜まっているガスの量を調査した。具体的には、超音波測定により電池10の電極体11内にガスが存在している部分を調べ、電極体内ガス含有率Ga=((ガスが存在している部分の面積)/(電極体の面積))×100により、電極体内ガス含有率Ga(%)を算出した。その結果を
図8に示す。
【0034】
図7及び
図8のグラフから明らかなように、電池10を電池厚み方向FH(電極板積層方向SH)に圧縮した状態で保存すると、電池10を圧縮しないで保存する場合(0kpa、拘束なし)に比べて、初期の電池抵抗Rに対する抵抗増加率Rzが低下すると共に、電極体内ガス含有率Gaが低下する。具体的には、拘束圧力を高くするほど、また拘束時間を長くするほど、抵抗増加率Rzが低下する共に、電極体内ガス含有率Gaが低下する。即ち、充放電サイクル試験により電極体11内に溜まったガスが少なくなって、充放電サイクル試験により劣化(電池抵抗Rが増加)した電池10の劣化状態が改善することが判る。
【0035】
このような結果が生じた理由は、以下であると考えられる。即ち、電池10を充電すると、電極体11内で電解液25が分解してガスが発生するため、無拘束状態の電池10に充電を繰り返し行うに連れて、電極体11内にガスが溜まっていく。このため、充放電サイクル試験後の電池10では、電極体11内に多くのガスが溜まっている。そして、このように電極体11内に多くのガスが溜まっていると、電池反応が阻害されるため、電池抵抗Rが高くなる。このため、充放電サイクル試験後(拘束前)の各電池10では、電極体内ガス含有率Gaが95%程度まで上がり、抵抗増加率Rzが35%程度となった。
一方、電池10の保存に当たり、電池10の拘束圧力を高くするほど、また拘束時間を長くするほど、充放電サイクル試験で電極体11内に溜まったガスが、電極体11外に放出されるため、電池抵抗Rが低くなる。このため、電池10の拘束圧力を高くするほど、また拘束時間を長くするほど、電極体内ガス含有率Gaが低下し、抵抗増加率Rzが低くなったと考えられる。
【0036】
以上で説明したように、電池パック1の保存方法は、外部圧縮ステップS1及び保存ステップS2を備えるため、電池パック1を使用機器から取り外し、そのまま或いは充電した後に、外部圧縮により各電池10の電極積層部11aに掛かる圧縮荷重Fcを増加させた状態で、電池パック1を保存することができる。
また電池パック保存装置100は、外部圧縮機構部110を備えるため、外部圧縮により各電池10の電極積層部11aに掛かる圧縮荷重Fcを増加させた状態で、電池パック1を保存することができる。
【0037】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば実施形態では、蓄電デバイスを備える蓄電デバイスパックとして、リチウムイオン二次電池からなる電池10を備える電池パック1を例示したが、これに限られない。例えば、全固体電池を備える全固体電池パックや、リチウムイオンキャパシタを備えるキャパシタパックに、本発明を適用してもよい。
また実施形態では、電池10の電池ケースとして、金属からなる直方体箱状の電池ケース21を用いたが、これに限られない。例えばラミネートフィルムからなるケースを用いてもよい。
【0038】
また実施形態の保存装置100では、ボルト116により移動壁部115を電池パック1に向けて移動させる構成の外部圧縮機構部110を例示したが、これに限られない。外部圧縮機構部は、例えば、回動軸材に偏心カムを固設すると共に、この回動軸材を回動させるレバーを設けた偏心カム付きクランプレバーの機構により、移動壁部を移動させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 電池パック(蓄電デバイスパック)
10 電池(リチウムイオン二次電池、蓄電デバイス)
11 積層部包含電極体(電極体)
11a 電極積層部
12 正極板(電極板)
15 負極板(電極板)
50 パックケース(収容外装体)
100 電池パック保存装置(蓄電デバイスパックの保存装置、保存装置)
110 外部圧縮機構部
IH 伸縮方向
IH1 (伸縮方向の)一方側
IH2 (伸縮方向の)他方側
IH3 (伸縮方向の)内側
SH 電極板積層方向
Fg 外部力
Fc 圧縮荷重
S1 外部圧縮ステップ
S2 充電ステップ
S3 圧縮解除ステップ