(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】皮膚増強外科用縫合糸
(51)【国際特許分類】
A61L 17/10 20060101AFI20240216BHJP
A61L 17/00 20060101ALI20240216BHJP
A61L 17/04 20060101ALI20240216BHJP
A61L 17/06 20060101ALI20240216BHJP
A61L 17/12 20060101ALI20240216BHJP
A61L 17/14 20060101ALI20240216BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20240216BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20240216BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20240216BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
A61L17/10
A61L17/10 100
A61L17/00
A61L17/00 100
A61L17/04
A61L17/06
A61L17/12
A61L17/14 100
A61L27/02
A61L27/12
A61L27/16
A61L27/18
(21)【出願番号】P 2018553509
(86)(22)【出願日】2017-01-02
(86)【国際出願番号】 IL2017050006
(87)【国際公開番号】W WO2017118972
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-12-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-28
(32)【優先日】2016-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】515067033
【氏名又は名称】アミール,アブラハム
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アミール,アブラハム
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-125346(JP,A)
【文献】特開平8-229116(JP,A)
【文献】特開2008-255521(JP,A)
【文献】特表2014-525338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0022085(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0226500(US,A1)
【文献】国際公開第2017/039336(WO,A1)
【文献】特表2015-531644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L15/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)糸の形で配合された少なくとも1つの柔軟な固体マトリックスであって、前記糸は、ヒトの皮膚または皮下組織を通して前記糸を引っ張って、前記糸を前記皮膚または皮下組織内で一度操作するのに十分な最大抗張力を有し、そのため前記糸の完全性が実質的に損なわれず、(ii)と会合している、少なくとも1つの柔軟な固体マトリックスと、
(ii)少なくとも1つの皮膚充填剤であって、前記皮膚充填剤は、前記柔軟な固体マトリックスとは化学的に異なっており、かつ前記皮膚充填剤は、前記皮膚または前記皮下組織中にある間に、前記柔軟な固体マトリックスから徐々に分離する、少なくとも1つの皮膚充填剤と、
(iii)前記皮膚または前記皮下組織中にある間に、前記糸からの前記皮膚充填剤の分離を促進する薬剤と
を含み
、
前記柔軟な固体マトリックスが、グリコリド、ポリグリコリド、グリコール酸、
グリコール酸の塩、グリコール酸のエステル、ポリグリコール酸、ラクチド、L-ラクチド、乳酸、
乳酸の塩、乳酸のエステル、乳酸‐グリコール酸共重合体(PLGA)、グリコリド/ラクチド共重合体、カプロラクトン、グリコリド/イプシロン‐カプロラクトン共重合体、ジオキサノン、ポリジオキサノン、トリメチル炭酸塩、エチルグリコール、
エチルグリコールのエステル、それらの水和物、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された生分解性若しくは生体吸収性の材料、または、ナイロン、絹、ポリプロピレン、ポリエステル、ステンレス鋼、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された非生分解性または非生体吸収性の材料を含み、
前記皮膚充填剤が、アパタイト、
アパタイトの水和物、アパタイトの溶媒和化合物、カルシウムヒドロキシアパタイト、ヒアルロン酸、
ヒアルロン酸の塩、ヒアルロン酸のエステル、ヒアルロン酸の水和物、ヒアルロン酸の溶媒和化合物、ポリカプロラクトン、
ポリカプロラクトンの水和物、ポリカプロラクトンの溶媒和化合物、ポリメタクリル酸メチル、
ポリメタクリル酸メチルの水和物、ポリメタクリル酸メチルの溶媒和化合物、シリコーン、ポリ乳酸、
ポリ乳酸の水和物、ポリ乳酸の溶媒和化合物、コラーゲン、ゼラチン、真皮移植片、処理した真皮移植片、乾燥無細胞化粒子真皮マトリックス、脂肪細胞、幹細胞、軟骨細胞
、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択され、
前記薬剤が、
吸湿性薬剤である、外科用縫合糸。
【請求項2】
前記糸の少なくとも1つの部分が:
(i)完全な糸、前記皮膚充填剤によって少なくとも部分的に外面コーティングされている;
(ii)溝付き糸、前記溝が少なくとも部分的に前記皮膚充填剤で充填されている;
(iii)多孔質糸、少なくとも部分的に前記皮膚充填剤で充填されている;または
(iv)中空糸、少なくとも部分的に前記皮膚充填剤で充填されている;
の形で配合される、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項3】
前記皮膚充填剤が、前記糸の少なくとも1つの部分に沿って、実質的に均等かつ均質に分布される、請求項1または請求項2に記載の外科用縫合糸。
【請求項4】
前記糸の平均直径が180~4600μmである、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項5】
前記糸の前記平均直径が180~1500μmである、請求項4に記載の外科用縫合糸。
【請求項6】
前記皮膚充填剤が、ヒドロキシアパタイト、その塩、そのエステル、その水和物
、その溶媒和化合物、
またはそれらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項7】
前記糸が、生分解性または生体吸収性であり、かつ前記皮膚充填剤が、前記糸の少なくとも1つの部分に沿って均等に分布された、請求項6に記載の外科用縫合糸。
【請求項8】
さらに針を含む、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項9】
前記針の直径が、前記外科用縫合糸の前記直径と比べて、小さいか、同じか、または大きい、請求項8に記載の外科用縫合糸。
【請求項10】
化粧剤または生理活性薬剤をさらに含む、請求項1に記載の外科用縫合糸。
【請求項11】
前記化粧剤が、色素である、請求項10に記載の外科用縫合糸。
【請求項12】
前記生理活性薬剤が、酵素、薬物、およびそれらの組合せから成る群から選択される、請求項10に記載の外科用縫合糸。
【請求項13】
前記酵素が、コラゲナーゼまたはエラスターゼである、請求項12に記載の外科用縫合糸。
【請求項14】
前記薬物が、抗生物質製剤、レチノイン酸、グリコサミノグリカン(GAG)、ボツリヌス毒素、鎮痛剤、瘢痕化抑制剤、またはそれらの任意の組合せである、請求項12に記載の外科用縫合糸。
【請求項15】
前記瘢痕化抑制剤が、ステロイドである、請求項14に記載の外科用縫合糸。
【請求項16】
請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の少なくとも1つの外科用縫合糸を含む、キット。
【請求項17】
皮膚の望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみを充填する美容法または治療法での使用のための、請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の外科用縫合糸。
【請求項18】
前記使用は、患者の前記皮膚の望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみの
深さ、容積または視感度を減らすためである、請求項17に記載の外科用縫合糸。
【請求項19】
前記外科用縫合糸が、患者の表皮、真皮、前記皮下組織(hypodermis)または前記皮下組織(sub-cutis)に挿入される、請求項17に記載の外科用縫合糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚充填剤を含有する生体適合性外科用縫合糸、およびその使用方法に関する。詳細には、本発明の縫合糸および方法は、患者の皮膚の望ましくない線、皺、陥凹性瘢痕(depressed scar)およびたるみ(fold)の充填ならびに皮膚に対する若いふくよかさの回復を目的としている。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮と真皮から成る。これらの層の下には皮下組織があり、皮下組織は通常、皮膚層として分類されない。皮下組織は、一般に、皮下脂肪層、皮下組織
(sub-cutis)または皮下組織(subcutaneous tissue)とも呼ばれる。最も外側の表皮は、下層の基底膜とともに重層扁平上皮から構成されている。それは、血管を含んでおらず、真皮からの拡散によって栄養を与えられる。表皮は、主にケラチノサイトから成り、メラニン形成細胞およびランゲルハンス細胞も存在する。皮膚のこの層は、身体と外部環境との間のバリアとして機能して、水分を身体内に保ち、有害な化学物質および病原体の侵入を防ぐ。
【0003】
真皮は、表皮の下にあり、血管、神経、毛包、平滑筋、腺およびリンパ組織を含むいくつかの構造を含む。真皮(または真皮(corium))は、典型的には0.1~3mmの厚さで、ヒト皮膚の主要構成要素である。それは、結合組織の網状構造、主に支持を提供するコラーゲン細線維および柔軟性を提供するエラスチン繊維から成る。真皮を構成する主要な細胞タイプは、線維芽細胞、脂肪細胞(脂肪貯蔵)およびマクロファージである。
【0004】
皮下組織は、真皮の下にあり、皮膚を下層の骨および筋肉に結合するため、ならびにそれに血管および神経を供給するために重要である。皮下組織は、疎性結合組織およびエラスチンから構成されて、線維芽細胞、マクロファージおよび脂肪細胞を含む。脂肪細胞は、皮下組織の脂肪貯蔵機能において重要な役割を担う。脂肪は充填剤として、および外部環境からの身体の断熱材として機能する。
【0005】
顔面の老化は、いくつかの要因の結果として生じ、それらには、皮膚内での本質的な変化、重力の影響、動的な線の形成につながる顔面筋の活動、皮膚喪失または移行、骨量減少、組織弾性の喪失ならびに過酷な環境条件、特に太陽または紫外線照射および汚染物質への曝露がある。皮膚が老化すると、表皮は薄くなり始めて、真皮との接合部を平板化させる。人の加齢に応じてコラーゲンが減少して、皮膚に膨圧を与える、コラーゲンの束が緩くなって強度を失う。皮膚が弾性を失うと、伸縮に抵抗することができにくくなる。重力のために、筋肉引張力および組織が変化して、皮膚に皺が寄り始める。水分喪失および細胞間の結合の崩壊も皮膚のバリア機能を低下させ、それは、皮膚の毛穴サイズを増大させ得る。
【0006】
皺は、皮膚におけるたるみ、隆起またはひだ(crease)である。皮膚の皺は、典型的には、グリケーション、習慣的な睡眠時の姿勢、または体重減少などの、老化過程の結果として現れる。皮膚における年齢皺は、習慣的な顔の表情、加齢、日焼けによる損傷、喫煙、不十分な水分補給、および様々な他の要因によって促進される。
【0007】
皮膚、とりわけ顔面の皮膚の外見を改善するために、組成を開発して使用して、瘢痕および皺などの、皮膚の欠損を直すか、または患者の組織を増強しようとする努力がこれまで行われてきた。異なる原因および異なる重症度の皺が、慣例的に、トレチノイン(レチノイン酸)、グリコサミノグリカン、ボツリヌス毒素および/もしくは皮膚充填剤の局所注射によって、またはレーザー皮膚治療技術によって処置される。
【0008】
皮膚充填剤は通常、注射製剤であり、皮膚の皺および他の陥凹を直すために頻繁に使用される。それは、皮膚の外見の改善を目的として皮膚に注入できるように設計される。最も一般的な製品は、ヒアルロン酸およびカルシウムヒドロキシアパタイトに基づく。
【0009】
現在のところ、皮膚増強のための数十の既知の皮膚充填剤があり、自家移植材、同種製品(allogeneic product)、異種製品、および合成由来製品を含む。入手可能な皮膚充填剤は、生分解性天然物質(コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、デキストランおよび乾燥無細胞化粒子真皮マトリックスなど)、生分解性合成高分子(ポリL-乳酸、ポリエチレンオキシドおよびカルボキシメチルセルロースなど)、非生分解性合成高分子(ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアルキルイミドおよびシリコーンなど)およびそれらの組合せを含む。
【0010】
ヒドロキシアパタイトなどの、生体適合性セラミック皮膚増強剤は、それらの特質に起因して効果のある皮膚増強剤であることが知られており:ヒドロキシアパタイト(Ca5(PO4)3(OH))は、天然起源のリン酸カルシウムの鉱物形である。ヒドロキシアパタイトは、骨の鉱物成分を含有しており、従って、患者の身体内に導入されると、それを生体適合性で非免疫原性にする。特に、ヒドロキシアパタイトは、生分解性で、一般的な骨折によって生じる骨細片と同じ代謝経路を辿るが、患者の皮膚または皮下組織内に移植される場合、最大で3年持ちこたえるので、半永久的である。その上、小さい微粒子として注入される場合、ヒドロキシアパタイトは、その周辺環境に類似した新しい組織形成を促進する足場として機能する。真皮などの皮膚内部で、ヒドロキシアパタイトの沈着した粒子が、線維芽細胞の内殖および新しいコラーゲン生成をサポートする(Jacovella,P.F,Clin.Interv.Aging.,2008,3(1):161-174,Suchanek W.およびYoshimura M.,J.Mater.Res.,1997,13(1):94-117)。
【0011】
外科用縫合糸(一般に、ステッチと呼ばれる)は、外傷または手術の後に、身体組織を一緒にしておくために使用される医療機器である。適用には一般に、ある長さの糸が付属した針の使用を伴う。いくつかの異なる形状、サイズ、および糸材料がこれまでに開発されている。外科医、内科医、歯科医、足治療医、眼科医、公認看護師ならびに他の訓練を受けた看護職員、医者、および臨床薬剤師が、典型的には縫合に携わる。
【0012】
縫合糸は、身体が縫合糸材料を時間とともに自然に分解して吸収するかどうかに応じて、生体吸収性または非生体吸収性のいずれかとして分類され得る。吸収性縫合糸材料は、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、およびカプロラクトンを含み得る。それらは、加水分解(ポリグリコール酸)およびタンパク質酵素分解を含む様々なプロセスによって分解される。材料に応じて、そのプロセスは7日~8週間かかり得る。吸収性縫合糸は、あらゆる種類の患者、とりわけ、抜糸のために戻ってくることができない患者、非協力的な患者(子供のような)、身体内組織において使用される。全ての場合において、それらは、治癒を可能にするのに十分な期間、身体組織を一緒にしておくが、分解し、そのため、それらは異物を残さないか、またはさらなる処置を必要としない。
【0013】
国際公開第2010/028025号は、軟組織増強のための自己膨張性または自己拡張性糸に関する。米国特許出願公開第2008/0188416号は、要求に応じて変更または除去できる組織充填剤組成物に関する。米国特許第5,652,056号は、実質的に純粋なヒドロキシアパタイト繊維に関する。
【0014】
伝統的で従来型の皺取りアプローチの限界および欠点は、かかるシステムの、本出願の残りの部分で図面を参照して記載する本発明のいくつかの態様との比較を通して、当業者には明らかになるであろう。従って、対象とする持続性皮膚増強製品のための高度に効率的な手段を有することは望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、生体適合性縫合糸、好ましくは、患者の皮膚を増強するのに役立つ、生体適合性皮膚充填剤を含有する、外科用縫合糸に関する。具体的には、本発明の縫合糸は、患者の皮膚の望ましくない線、皺、陥凹性瘢痕およびたるみを充填するために有用である。本発明の原理によれば、本発明の縫合糸は、好都合に、皮膚充填剤の測定された用量のピンポイント投与およびターゲティングを可能にし、さらに、形成外科医などの、訓練を受けた担当者が、縫合糸、従って充填剤を、実質的に任意の空間的配置で投与できるようにする。充填剤の使用に対して最も頻繁に使用される現在の皺取り技術は、患者の皮膚上に顕著な膨隆を形成する注射用充填剤のボーラス投与に制限されているが、本発明によって提供される縫合糸および方法は、これらの制約がなく、充填剤が、液体、固体または半固体(ゲルのような)として均等に、かつ/または均質に投与できるようにして、例えば、形成外科医の要求どおりに、投与中および投与後に、実質的に任意の配置を得られるようにする。
【0016】
本発明の原理によれば、柔軟な中実糸と化学的に異なる皮膚充填剤の組合せの別の利点は、何らかの理由で、皮膚表面の貫通、皮膚中または皮膚下の移動、および皮膚のステッチに関与する力および/または圧力に抵抗できる糸として配合できない任意の皮膚充填剤が、今や、これらの制約にもかかわらず、皮膚に送達できることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、一態様では、外科用縫合糸を提供し、それは、(i)糸の形で配合された少なくとも1つの柔軟な固体マトリックスを含み、糸は、ヒトの皮膚または皮下組織を通してその糸を引っ張って、糸を皮膚または皮下組織内で一度操作するのに十分な最大抗張力を有し、そのため糸の完全性が実質的に損なわれず;少なくとも1つの柔軟な固体マトリックスは、(ii)少なくとも1つの皮膚充填剤と会合し、皮膚充填剤は、柔軟な固体マトリックスとは化学的に異なっており、皮膚充填剤は、皮膚または皮下組織中にある間に、柔軟な固体マトリックスから徐々に分離する。
【0018】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、生体適合性である。ある実施形態では、皮膚充填剤は、1~2年以内に吸収される。ある実施形態では、皮膚充填剤は、コラーゲン生成を促進する。ある実施形態では、皮膚充填剤は、最小の副作用を有する。ある実施形態では、皮膚充填剤は、粒体または塊を生じない。ある実施形態では、皮膚充填剤は、不活性である。ある実施形態では、皮膚充填剤は、様々なサイズで製造され得る。
【0019】
ある実施形態では、糸の少なくとも1つの部分は次の形、(i)完全な糸、皮膚充填剤によって少なくとも部分的に外面コーティングされている;(ii)溝付き糸、溝が少なくとも部分的に皮膚充填剤で充填されている;(iii)多孔質糸、少なくとも部分的に皮膚充填剤で充填されている;または(iv)中空糸、少なくとも部分的に皮膚充填剤で充填されている;で配合される。
【0020】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、糸の少なくとも1つの部分に沿って、実質的に均等に、かつ/または均質に分布される。
【0021】
ある実施形態では、糸の平均直径は180~4600ミクロン(μm)である。ある実施形態では、糸の平均直径は180~1500ミクロンである。
【0022】
ある実施形態では、糸は生分解性および/または吸収性である。ある実施形態では、糸は、グリコリド、ポリグリコリド、グリコール酸、ポリグリコール酸、ラクチド、L-ラクチド、乳酸、乳酸‐グリコール酸共重合体(PLGA)、グリコリド/ラクチド共重合体、カプロラクトン、グリコリド/イプシロン‐カプロラクトン共重合体、ジオキサノン、ポリジオキサノン、トリメチル炭酸塩、エチルグリコール、それらの塩、それらのエステル、それらの水和物、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された材料を含む。
【0023】
ある実施形態では、糸は、非生分解性または非生体吸収性である。ある実施形態では、糸は、ナイロン、絹、ポリプロピレン、ポリエステル、ステンレス鋼、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された材料を含む。
【0024】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、少なくとも1つの液体皮膚充填剤または少なくとも1つの半固体皮膚充填剤を含む。ある実施形態では、皮膚充填剤は、液体として配合されるか、または半固体として配合される。ある実施形態では、皮膚充填剤は、少なくとも1つの硬質皮膚充填剤を含むか、または固体として配合される。
【0025】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、少なくとも1つの硬質皮膚充填剤を含む。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、(i)最大で300Mpaの最大抗張力;(ii)最大で1000Mpaの圧縮強度;(iii)少なくとも80GPaの弾性率;(iv)最大で1MPa.m-1/2の破壊靱性;または(v)(i)~(iv)の任意の組合せを有する。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、(i)40~300Mpaの最大抗張力;(ii)500~1000Mpaの圧縮強度;(iii)80~120GPaの弾性率;(iv)0.6~1MPa.m-1/2の破壊靱性;または(v)(i)~(iv)の任意の組合せを有する。
【0026】
ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、セラミック、鉱物または準鉱物である。ある実施形態では、鉱物は、リン酸塩鉱物である。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、脆性、展性、延性または切削性である。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、脆性である。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、2~10のモース硬度スコアを有する。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、5~10のモース硬度スコアを有する。
【0027】
ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、複数の粒子の形で配合される。ある実施形態では、複数の粒子内の粒子の平均直径は、5~500ミクロンである。ある実施形態では、複数の粒子内の粒子の平均直径は、10~100ミクロンである。
【0028】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、アパタイト、ヒアルロン酸、ポリカプロラクトン、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン、ポリ乳酸、コラーゲン、ゼラチン、真皮移植片、処理した真皮移植片、乾燥無細胞化粒子真皮マトリックス、脂肪細胞、幹細胞、軟骨細胞、それらの塩、それらのエステル、それらの水和物、それらの誘導体、それらの溶媒和化合物、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある実施形態では、皮膚充填剤は、ヒドロキシアパタイト、その塩、そのエステル、その水和物、その誘導体、その溶媒和化合物、およびそれらの任意の組合せを含む。
【0029】
ある実施形態では、糸は、生分解性または生体吸収性であり、皮膚充填剤は、糸の少なくとも1つの部分に沿って均等に分布された、10~100ミクロンの平均直径を有する複数の粒子の形で配合される。
【0030】
ある実施形態では、本発明の外科用縫合糸は、皮膚または皮下組織中にある間に、糸からの皮膚充填剤の分離を促進する薬剤をさらに含む。ある実施形態では、薬剤は、吸湿性、拡散性または浸透圧性薬剤である。ある実施形態では、皮膚充填剤は、流体の皮膚充填剤への拡散または浸透を刺激し、従って、それを患者の皮膚または皮下組織内に放出する薬剤と混合されるか、または少なくとも部分的にその薬剤で覆われる。
【0031】
ある実施形態では、本発明の外科用縫合糸は、針をさらに含む。ある実施形態では、針の直径は、外科用縫合糸の直径と同じである。ある実施形態では、針の直径は、外科用縫合糸の直径よりも大きい。ある実施形態では、針の直径は、外科用縫合糸の直径よりも小さい。
【0032】
ある実施形態では、本発明の外科用縫合糸は、化粧剤または生理活性薬剤をさらに含む。ある実施形態では、化粧剤は、色素である。ある実施形態では、生理活性薬剤は、酵素、薬物、およびそれらの組合せから成る群から選択される。ある実施形態では、酵素は、コラゲナーゼまたはエラスターゼである。ある実施形態では、薬物は、抗生物質製剤、レチノイン酸、グリコサミノグリカン(GAG)、ボツリヌス毒素、鎮痛剤、瘢痕化抑制剤、またはそれらの任意の組合せである。ある実施形態では、瘢痕化抑制剤は、ステロイドである。
【0033】
本発明は、別の態様では、前述の外科用縫合糸の少なくとも1つを含む、キットをさらに提供する。
【0034】
本発明は、別の態様では、前述したような、複数の異なる外科用縫合糸を含む、キットをさらに提供する。
【0035】
ある実施形態では、キットは、針をさらに含む。
【0036】
本発明は、別の態様では、皮膚の望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕もしくはたるみを充填する美容法または治療法での使用のために、前述したような外科用縫合糸をさらに提供する。
【0037】
ある実施形態では、本方法は、患者の皮膚の望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみの深さ、容積または視感度を減らすためである。ある実施形態では、外科用縫合糸は、患者の表皮、真皮、皮下組織(hypodermis)、または皮下組織(sub-cutis)に挿入される。
【0038】
本発明は、別の態様では、それを必要としている患者の皮膚における望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕もしくはたるみの深さ、容積もしくは視感度を減らす美容法または治療法をさらに提供し、その方法は(i)前述したような外科用縫合糸を取得すること;(ii)任意選択として、針を(i)の外科用縫合糸に結び付けること;(iii)任意選択として、患者の皮膚における望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみに局所麻酔を実行すること;および(iv)患者の皮膚における望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕もしくはたるみを(i)または(ii)の外科用縫合糸でステッチすること;を行うステップを含む。
【0039】
ある実施形態では、ステッチステップは、望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみに沿って実行される。ある実施形態では、ステッチステップは、望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみが実質的に改善されるか、または目立たなくなるまで繰り返される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、非生分解性または非生体吸収性の糸から成る少なくとも1つのセグメントを含み、本方法は、患者の身体からそのセグメントを除去するステップをさらに含む。ある実施形態では、患者の身体からそのセグメントを除去するステップは、ステッチ後、数時間~数週間、影響を受ける。
【0040】
ある実施形態では、縫合糸の直径は、充填すべき線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみのサイズ、深さ、または容積に従って事前に決定される。ある実施形態では、縫合糸内の皮膚充填剤の含有量は、充填すべき線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみのサイズ、深さ、または容積に従って事前に決定される。
【0041】
本発明は、別の態様では、少なくとも1つの皮膚充填剤の繊維状構造を、それを必要としている患者の身体内に形成する美容法または治療法をさらに提供し、その方法は(i)前述したような外科用縫合糸を取得すること;(ii)任意選択として、針を(i)の外科用縫合糸に結び付けること;および(iii)患者の身体内に繊維状構造を形成するように(i)または(ii)の外科用縫合糸を患者の身体内に配置すること;を行うステップを含む。
【0042】
ある実施形態では、繊維状構造のその全長にわたる平均直径は0.1~10mmである。ある実施形態では、繊維状構造のその全長にわたる平均直径は1~5mmである。
【0043】
本発明は、別の態様では、移植片を、それを必要としている患者の身体内に導入する美容法または治療法をさらに提供し、その方法は(i)前述したような外科用縫合糸を取得すること;(ii)(i)の外科用縫合糸を移植片の形状に形成すること;(iii)任意選択として、針を移植片に結び付けて、移植片を患者の皮下または粘膜の下に固定できるようにすること;および(iv)移植片を必要に応じて患者の身体内に配置すること;を行うステップを含む。
【0044】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、コラーゲン、ゼラチン、真皮移植片、処理した真皮移植片、乾燥無細胞化粒子真皮マトリックス、脂肪細胞、幹細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択される。
【0045】
ある実施形態では、外科用縫合糸は、(i)糸の形状、(ii)糸の平均直径、(iii)糸の材料、(iv)皮膚充填剤の硬性、(v)皮膚充填剤、(vi)皮膚充填剤の形状、(vii)皮膚充填剤のサイズ、(viii)皮膚充填剤の量、および(ix)(i)~(viii)の組合せ、から成る群から選択された特徴によって異なる。各可能性は、本発明の別個の組合せを表す。
【発明の効果】
【0046】
本発明のさらなる実施形態および適用性の全範囲が、以下の詳細な記述から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の例は、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者には明らかになるので、本発明の好ましい実施形態を示しながら、実例として与えられているだけであることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明によって提供される縫合糸の3つの実施形態の略図である。これらの実施形態では、縫合糸は、皮膚充填剤によってコーティングされた、細長い糸1.1であり、皮膚充填剤は、連続した層もしくは相2.1(
図1A)として、または複数の粒子2.2(
図1B)として配合され得る。皮膚充填剤は、
図1Cに例示するように、細長い糸1.1に沿って1つ以上の溝1.3内にも含まれ得る。
【
図2】本発明によって提供される縫合糸の3つの実施形態の略図である。一実施形態では、縫合糸は、皮膚充填剤で充填された、内部空洞1.2を有する細長い多孔質糸であり、皮膚充填剤は、連続した層もしくは相2.1として、および/または複数の粒子2.2(
図2A)として配合され得る。他の実施形態では、縫合糸は、皮膚充填剤で充填された、内部空洞1.2を有する細長い糸であり、皮膚充填剤は、連続した層もしくは相2.1(
図2B)として、または複数の粒子2.2(
図2C)として配合され得る。
【
図3】針4に繋がれた、本発明によって提供される縫合糸3の略図である。
【
図4】本発明の方法によって処置されている、本明細書でおおまかに定義されているような、線、皺およびたるみのある皮膚の略図である。
図4Bは、本発明によって提供される縫合糸によってステッチされた後の、
図4Aの皮膚の断面図である。
図4Cは、本発明によって提供される縫合糸によってステッチされた後、数時間、数日、または数週間の、
図4Bの皮膚の断面図である。異なる量の充填剤2が、異なるサイズの灰色の球として表されている。
【
図5】互いに垂直な横距(longitude)5および直径6を有する(
図5A)、本発明によって提供される縫合糸の、本発明の縫合糸および方法によって得られる充填剤2のコイル状繊維状構造(
図5B)の、ならびに人間の患者の頬内に形成されたか、または頬に移植された、本発明の縫合糸および方法によって得られる充填剤2のメッシュ(
図5C)の、3次元略図である。
【
図6】本発明によって提供される縫合糸方法で使用される本発明によって提供される吸収性糸の略図である。
図6Aは、患者の鼻唇皮膚における線(皺)の拡大図を示す。
図6Bは、針4に結び付けられた、本発明によって提供される吸収性縫合糸3により、その長さに沿ってステッチされた後の線を示す。拡大図では、吸収性縫合糸3が、複数の皮膚充填剤粒子2.2によってコーティングされた細長い糸1.1で作られていることが分かる。
図6Cは、本発明によって提供される吸収性縫合糸3が吸収された後、皮膚の下の線の部位を示す。拡大図では、吸収性縫合糸3は吸収されたが、複数の皮膚充填剤粒子2.2は線の部位において皮膚内にとどまっていることが分かる。
図6Dは、処置後の線の部位の表面を示す。拡大図では、線が消えていることが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、中実縫合糸、好ましくは外科用縫合糸に関し、それは、ヒト組織、好ましくは皮膚、のステッチに使用され得、好都合に、真皮または皮膚充填剤として知られている、皮膚増強のために使用される材料を含む。より詳細には、本発明の中実縫合糸は、生体適合性であり、ヒトに移植された場合に著しい免疫原性応答を引き起こさないことを意味する。これらの縫合糸は、さらに「生分解性」であり、ヒトに移植された場合に、時間と共に分解されることを意味し、かつ/または、「生体吸収性」であり、縫合糸分解の産物が組織内に自然に吸収されることを意味する。生体適合性固体マトリックスと皮膚充填剤の組合せは、形成外科医などの、医療専門家に、改善された美容効果を達成するための新しいツールを提供し、それは、今までは、複雑で、厄介な外科的手法で達成されたか、または技術的な制約に起因して単に達成不可能であった。
【0049】
本発明の原理によれば、本発明の縫合糸は、好都合に、形成外科医などの、医療専門家が、実質的に任意の皮膚充填剤の所定の用量を、前例のない精度および分解能で、外科医の熟練度によってのみ制限される、実質的に任意の空間的配置で、投与するのを可能にする。例えば、これまで開示されたどの技術も、本発明で提供する縫合糸および技術のように、皮膚増強充填剤を、皮膚の線にわたって高度に均質に投与して拡散することができない。加えて、これまで開示されたどの技術も、かかる充填剤の繰返し注入に訴えることなく、硬質の、柔軟性のない皮膚増強充填剤を患者の皮膚に投与して均一に分布することに関していないか、またはそれが可能ではない。
【0050】
本発明は、一態様では、外科用縫合糸を提供し、それは、(i)糸の形で配合された少なくとも1つの柔軟な固体マトリックスを含み、糸は、ヒトの皮膚または皮下組織を通してその糸を引っ張って、糸を皮膚または皮下組織内で一度操作するのに十分な最大抗張力を有し、そのため糸の完全性が実質的に損なわれず;少なくとも1つの柔軟な固体マトリックスは、(ii)少なくとも1つの皮膚充填剤と会合し、皮膚充填剤は、柔軟な固体マトリックスとは化学的に異なっており、皮膚充填剤は、皮膚または皮下組織中にある間に、柔軟な固体マトリックスから徐々に分離する。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、用語「皮膚増強(skin augmentation)」は、処置した皮膚および/または皮下組織の容積の増加を指す。いくつかの実施形態によれば、用語「皮膚増強」は、処置した皮膚の見かけ容積の増加を指す。用語「外科用縫合糸」は、本明細書では、美容および/または治療的手術での使用に対して認可された任意の縫合糸を指す。本明細書では、用語「縫合糸」、「本発明の縫合糸」、「増強縫合糸(augmentation suture)」、「軟組織増強縫合糸」および「皮膚増強縫合糸」は、区別しないで使用されて、少なくとも1つの生体適合性皮膚増強剤を含有する縫合糸を指す。本発明に従った皮膚増強縫合糸は、皮膚および/または皮下組織の充填に適していることを理解されたい。用語「柔軟な」は本明細書では、固体マトリックスおよび/または外科用縫合糸が、手術または縫合中に、必要に応じて伸縮自在に変形される能力を指す。用語「糸」は本明細書では、任意の単一または複数のより糸、繊維または編み糸、単繊維または多繊維のいずれかを含むように非常に広い意味で使用される。用語「最大抗張力」は本明細書では、一般に、材料または構造が伸長する傾向がある負荷に耐える能力を指す。句「糸の完全性が実質的に損なわれない」は、本明細書では一般に、糸が、ヒトの皮膚または皮下組織内で引っ張られて操作されている間に、その構造的完全性を保つ、例えば、実質的に、引裂かれない、ちぎれない、機能する、変形しない、その最大抗張力を失わない、ことを意味する。用語「と会合した(in association with)」は本明細書では、皮膚充填剤と固体マトリックスとの間の直接的もしくは間接的な物理的接触または化学的付着を指す。本明細書では、用語「充填剤(filler)」および「皮膚充填剤(dermal filler)」は、例えば、皮膚の欠損を直すか、または最小限にするために、皮膚の増強に対して有用な薬剤および組成を指す。充填剤は一般に、構造機能を果たす。例えば、それは、組織内の欠損、孔、間隙または空洞を充填し得、かつ/または宿主細胞が充填剤に付着して成長して、新しい組織の成長に起因する他の因子(例えば、走化因子)を生じる環境を提供し得る。ある実施形態では、充填剤の間隙充填機能は一時的であって、宿主細胞がその部位に移動して新しい組織を形成するまでだけ持続する。真皮および皮下組織充填剤は、個人が直すことを欲し得るか、または直す必要があり得る、主に顔における、皺、表情線、リポジストロフィおよび他の形質を直すために、身体に、通常は皮膚に、導入すべき材料である。これらの化合物は、異なる原因のために皮膚組織内に生じた空洞または溝を充填するために使用される。世界中で最も使用されている充填剤には、アクリルアミド(ポリアクリルアミドおよびポリアルキルイミド化合物)、ヒアルロン酸化合物、ポリ乳酸、ポリメタクリル酸メチル化合物、カルシウムヒドロキシアパタイト、コラーゲン、ポリテトラフルオロエチレンおよびシリコーンオイルがある。
【0052】
注射可能な移植片としても知られる、軟組織充填剤、皮膚充填剤、または皺充填剤は、法令線、頬および唇を含む、顔においてより滑らかで、かつ/またはふっくらとした外観を作り出すのを促すのに使用するため、ならびに手の甲の容積を増やすための、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMEA)または他の任意の対応する機関によって認可された材料をさらに含む。最も軟性の組織充填剤は、身体によって時間と共に吸収される材料を含有するので、一時的効果を有する。ある実施形態では、軟組織充填剤で使用される材料は、吸収性(一時的)材料および非吸収性(永久的)材料から成る群から選択される。ある実施形態では、吸収性材料は、コラーゲン、ヒアルロン酸、カルシウムヒドロキシアパタイトおよびポリL-乳酸(PLLA)から成る群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある実施形態では、非吸収性材料は、ポリメタクリル酸メチルビーズである。
【0053】
用語「化学的に異なる」は本明細書では、固体マトリックスおよび皮膚充填剤の異なる材料(複数可)または組成(複数可)を指す。ある実施形態では、化学的相違は、サイズ、形状、配合、化学構造、化学的組成、硬性、柔軟性およびそれらの任意の組合せから成る群から選択される。この用語は、具体的には、ヒアルロン酸などの、皮膚充填剤の固形剤(複数可)から成る任意の外科用縫合糸を除外する。句「皮膚または皮下組織中にある間の漸次分離」は、皮膚充填剤と固体マトリックスとの間の物理的分離に関する、pH、水分含有量および/または温度などの、皮膚または皮下組織において見られる条件の影響を指す。
【0054】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、皮膚表面への浸透、皮膚中の移動、皮膚下の移動、または皮膚のステッチに伴う力または圧力に抵抗するように配合できない。各実施形態は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0055】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、皮膚表面の貫通、皮膚中の移動、皮膚下の移動、または皮膚のステッチに伴う力または圧力に抵抗できる糸として配合できない。各実施形態は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0056】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、生体適合性である。ある実施形態では、皮膚充填剤は、それが投与される身体または皮膚によって1~2年以内に吸収される。ある実施形態では、皮膚充填剤は、それが投与される身体または皮膚内でコラーゲン生成を促進する。ある実施形態では、皮膚充填剤は、それが投与される身体または皮膚内で最小の副作用を有する。ある実施形態では、皮膚充填剤は、それが投与される身体または皮膚内で粒体または塊を生じない。ある実施形態では、皮膚充填剤は、実質的に不活性である。ある実施形態では、皮膚充填剤は、身体または皮膚に同時投与された他の化合物と化学的に相互作用しない。ある実施形態では、皮膚充填剤は、様々なサイズ、形状または形態で製造され得る。ある実施形態では、皮膚充填剤のサイズ、形状または形態は事前に決定され得る。ある実施形態では、皮膚充填剤のサイズ、形状または形態は、患者の身体または皮膚における望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみの深さ、容積または視感度に応じて調整され得る。
【0057】
固体マトリックスは、多くの構成または配合において、皮膚充填剤を運搬し、皮膚充填剤に対する媒体として機能できる。ある実施形態では、糸の少なくとも1つの部分は次の形、(i)完全な糸、皮膚充填剤によって少なくとも部分的に外面コーティングされている;(ii)溝付き糸、溝が少なくとも部分的に皮膚充填剤で充填されている;(iii)多孔質糸、少なくとも部分的に皮膚充填剤で充填されている;または(iv)中空糸、少なくとも部分的に皮膚充填剤で充填されている;で配合される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0058】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、連続相の形で配合される。用語「連続相(continuous phase)」は本明細書では、任意の他の材料によって中断されないセグメント、シート、層または相を指す。ある実施形態では、皮膚充填剤および、皮膚または皮下組織中にある間に糸からの皮膚充填剤の分離を促進する薬剤は、連続相の形で一緒に配合される。ある実施形態では、皮膚充填剤および、皮膚または皮下組織中にある間に糸からの皮膚充填剤の分離を促進する薬剤は、別個の連続相の形で配合される。ある実施形態では、皮膚充填剤および、皮膚または皮下組織中にある間に糸からの皮膚充填剤の分離を促進する薬剤は、複数の粒子の形で一緒に配合される。
【0059】
皮膚充填剤の、固体マトリックス上への、その一部として、またはその内部への分布は、多くの構成を取り得る。ある実施形態では、皮膚充填剤は、糸の少なくとも1つの部分に沿って実質的に均等に、かつ/または均質に分布される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。用語「均等に分布される」は本明細書では、皮膚充填剤は、生分解性固体マトリックスと接触している場合、実質的に均質なシートまたは相を形成することを意味する。ある実施形態では、皮膚充填剤は、糸に沿って混合物として均等に分布された異なる形状である。
【0060】
ある実施形態では、糸は、皮膚充填剤によって少なくとも部分的にコーティングされる。句「少なくとも部分的にコーティングされた」は本明細書では、糸の外面または内側面の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の皮膚充填剤によるコーティングを指す。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある実施形態では、糸は、皮膚充填剤によって実質的に完全にコーティングされる。
【0061】
ある実施形態では、糸は、少なくとも部分的に皮膚充填剤によって充填される。句「少なくとも部分的に充填された」は本明細書では、糸の内部空洞の容積の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%を皮膚充填剤によって充填する皮膚充填剤の容積を指す。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある実施形態では、糸の内部空洞は、皮膚充填剤によって実質的に完全に充填される。
【0062】
ある実施形態では、糸の平均直径は180~4600ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は180~1500ミクロンである。用語「平均直径」は本明細書では、糸または粒子の、どちらか関連する断面における、最も長い軸を指す。例えば、糸の断面が実質的に円形である実施形態では、平均直径は円の直径である。同様に、糸の断面が実質的に矩形である実施形態では、平均直径は矩形の2つの対角間の距離である。糸の断面は、例えば、三角形、多角形、楕円形など、任意の形状であり得ることが理解されるべきである。
【0063】
ある実施形態では、糸の平均直径は20~5000ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は20~800ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は50~400ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は100~400ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は70~350ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は100~300ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は150~200ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は100ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は150ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は200ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は20~150ミクロンである。ある実施形態では、糸の平均直径は150~800ミクロンである。用語「ミクロン」は、マイクロメートル、1メートルの100万分の1を指す。
【0064】
ある実施形態では、糸は、少なくとも1cm、少なくとも10cmまたは少なくとも100cmの長さである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0065】
用語「生分解性固体マトリックス」は、生体内環境または、生存生物内の生体内環境のそれと実質的に同様の物理的、化学的、もしくは生物学的特性を有する生体外環境のいずれかに曝露される場合に、完全に、または実質的に分解、浸食、もしくは吸収可能な固体マトリックスを指す。材料は、生存生物内で、例えば、加水分解、酵素分解、酸化、代謝過程、バルクまたは表面浸食、および同様のものによって徐々に分解、再吸収、吸収および/または除去できる場合、分解または浸食可能である。用語「生存生物」は本明細書では、生きているヒトおよび動物を指す。生分解性材料は、生存生物内で無毒成分に分解し、その分解は、標的組織部位において実質的な組織の刺激または壊死を引き起こさない可能性がある。本明細書では、用語「生分解性」は、患者の体内にある場合に、例えば、酵素活性、化学溶解または他の方法で、自然に分解される材料を指す。本明細書では、用語「生体適合性」は、患者に投与された場合に、著しく望ましくなく、かつ/または有毒な局所もしくは全身作用を誘発しない材料を指す。ある実施形態では、糸は、生分解性および/または吸収性である。ある実施形態では、糸は、グリコリド、ポリグリコリド、グリコール酸、ポリグリコール酸、ラクチド、L-ラクチド、乳酸、乳酸‐グリコール酸共重合体(PLGA)、グリコリド/ラクチド共重合体、カプロラクトン、グリコリド/イプシロン‐カプロラクトン共重合体、ジオキサノン、ポリジオキサノン、トリメチル炭酸塩、エチルグリコール、それらの塩、それらのエステル、それらの水和物、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された材料を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある実施形態では、生分解性固体マトリックスは、生体由来である。ある実施形態では、生分解性固体マトリックスは、ウシまたはヒツジの腸で作られている。
【0066】
ある実施形態では、糸は、生理的条件下で、1~30週、1~20週、1~10週、1~30日、1~20日、または1~10日で実質的に分解される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0067】
ある実施形態では、糸は、非生分解性または非生体吸収性である。ある実施形態では、糸は、ナイロン、絹、ポリプロピレン、ポリエステル、ステンレス鋼、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択された材料を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある実施形態では、糸は、非生分解性または非生体吸収性であり、皮膚充填剤は、縫合糸内の溝、孔またはトンネルに含まれる。ある実施形態では、縫合糸は、皮膚増強充填剤が浸透または拡散によって皮膚または皮下組織内に移動した後、数日~数週間後に除去される。ある実施形態では、皮膚充填剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、またはそれらの組合せと混合される。
【0068】
本発明の組成に含まれ得る、「皮膚増強剤」とも呼ばれる、皮膚充填剤は、好ましくは米国食品医薬品局(FDA)および/または欧州の匹敵する機関(CHAMP)によって認可された、効果のある皮膚充填剤である。ヒトでの使用に対してまだ認可されていない他の皮膚増強剤も将来使用され得る。既に認可されている皮膚増強剤は、構造タンパク質、多糖または合成高分子を含有する充填剤を含むが、それらに制限されない。本発明で使用され得る皮膚増強剤の例示的な実施形態は、ヒドロキシアパタイト、再構成されたウシのコラーゲン製品などの、コラーゲン、例えば、ZYDERM I(登録商標)、ZYDERM II(登録商標)およびZYPLAST(登録商標)(Collagen Corporation);天然ヒトコラーゲンCOSMODERM(商標)およびCOSMOPLAST(商標)(INAMED);ならびに患者からの内在性コラーゲン、Collagenesisによって製造されたAUTOLOGEN(登録商標)を含むが、それらに限定されない。皮膚充填剤の追加の例は、INAMEDおよびGenzyme Corporationによって製造されたHYLAFORM(登録商標)ゲル、家禽の雄鶏の鶏冠由来;ならびにMedicisによって製造されたRESTYLANE(登録商標)、連鎖球菌性細菌発酵由来のヒアルロン酸誘導体などの製品を含むが、それらに制限されない。本発明に従ったヒアルロン酸は、当技術分野で周知のように、非架橋および/または架橋ヒアルロン酸誘導体の両方を含む。ヒアルロン酸およびその誘導体は、固体、半固体または液体であり得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明によるコラーゲンは、同種コラーゲン、異種コラーゲンおよびそれらの組合せから成る群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。他の実施形態によれば、皮膚増強剤は、死体から培養されたヒトの死体真皮であり、例えば、ブランド名Cymetra、Dermalogen、AllodermおよびFascianをもつ材料などであるが、それらに制限されない。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、生分解性天然充填剤は、例えば、ウシコラーゲン、ブタコラーゲン、組換えコラーゲン、ヒトコラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、ヒドロキシアパタイト、乾燥無細胞化粒子真皮マトリックス、同種脂肪およびそれらの組合せ:から成る群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、生分解性合成高分子は、例えば、ポリL-乳酸、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの組合せ:から成る群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、非生分解性合成高分子は、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートビーズ、シリコーン、シリコーンゴム、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキルイミドおよびそれらの組合せ:から成る群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0070】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、固体として配合される。ある実施形態では、皮膚充填剤は、半固体として配合される。ある実施形態では、皮膚充填剤は、液体として配合される。
【0071】
皮膚外観の増強を目的とした皮膚充填剤として使用される材料の分野は継続的に成長しているが、固体の、硬質で柔軟性のない皮膚充填剤の皮膚への投与における物理的および技術的な課題は、今も残っている。外科用縫合糸は、手術中に印加される力に耐えるように構成されるが、これは、硬質皮膚充填剤には当てはまらない。従って、本発明まで、硬質皮膚充填剤の投与は、処置された皮膚欠損に沿った、この充填剤の液体組成の複数のボーラス投与の繰返しなどの技術に制限されていた。しかし、これらの技術は、うんざりする仕事および増大する注射部位の有害作用を伴い、多くの場合、皮膚の魅力的でなく、不均質な「真珠の鎖」外見となる。これらの欠陥の全ては、本発明によって除去される。
【0072】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、少なくとも1つの液体皮膚充填剤を含む。ある実施形態では、皮膚充填剤は、少なくとも1つの半固体皮膚充填剤を含む。ある実施形態では、皮膚充填剤は、液体として配合される。ある実施形態では、皮膚充填剤は、半固体として配合される。ある実施形態では、皮膚充填剤は、少なくとも1つの硬質皮膚充填剤を含む。ある実施形態では、皮膚充填剤は、固体として配合される。用語「液体」、「半固体」および「固体」は、一般に、物質の状態を指す。ある実施形態では、用語「液体」、「半固体」および「固体」は、室温における物質の状態を指す。ある実施形態では、用語「液体」、「半固体」および「固体」は、10℃~25℃における物質の状態を指す。用語「液体」、「半固体」および「固体」は、成人の体温における物質の状態を指す。用語「液体」、「半固体」および「固体」は、36℃~37℃における物質の状態を指す。
【0073】
用語「硬質皮膚充填剤」は本明細書では、手術中に印加される力、例えば、患者の皮膚における望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみの深さ、容積または視感度を減らすための形成手術中に印加される力の下で、任意の種類の永続的な構造的損傷(insult)を被り得る任意の皮膚充填剤を指す。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は柔軟ではない。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、手術または縫合中に、要求に応じて弾性的に変形できない。
【0074】
ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、(i)最大で300Mpaの最大抗張力;(ii)最大で1000Mpaの圧縮強度;(iii)少なくとも80GPaの弾性率;(iv)最大で1MPa.m-1/2の破壊靱性;または(v)(i)~(iv)の任意の組合せを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0075】
ある実施形態では、硬質皮膚充填剤が、5mm以上の長さで、500ミクロンの直径の完全な円筒形の場合、硬質皮膚充填剤は、(i)最大で300Mpaの最大抗張力;(ii)最大で1000Mpaの圧縮強度;(iii)少なくとも80GPaの弾性率;(iv)最大で1MPa.m-1/2の破壊靱性;または(v)(i)~(iv)の任意の組合せを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0076】
ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、(i)40~300Mpaの最大抗張力;(ii)500~1000Mpaの圧縮強度;(iii)80~120GPaの弾性率;(iv)0.6~1MPa.m-1/2の破壊靱性;または(v)(i)~(iv)の任意の組合せを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0077】
ある実施形態では、硬質皮膚充填剤が、5mm以上の長さで、500ミクロンの直径の完全な円筒形の場合、硬質皮膚充填剤は、(i)40~300Mpaの最大抗張力;(ii)500~1000Mpaの圧縮強度;(iii)80~120GPaの弾性率;(iv)0.6~1MPa.m-1/2の破壊靱性;または(v)(i)~(iv)の任意の組合せを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0078】
鉱物は、通常、結晶形の、天然起源の化学物質であり、そのいくつかが、硬質皮膚充填剤として使用され得る。準鉱物は、結晶化度を示さない鉱物様物質であり、そのいくつかも硬質皮膚充填剤として使用され得る。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、セラミック、鉱物または準鉱物である。鉱物は、脆性、延性、展性、切削性、柔軟性、または弾性として記述できる。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、脆性、展性、延性または切削性である。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、脆性である。
【0079】
鉱物の硬度測定の最も一般的なスケールは、順序モース硬度スケールであり、タルクからダイアモンドまで及ぶ。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、2~10のモース硬度スコアを有する。ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、5~10のモース硬度スコアを有する。
【0080】
ある実施形態では、硬質皮膚充填剤は、複数の粒子の形で配合される。ある実施形態では、複数の粒子内の粒子の平均直径は、最大で500ミクロンである。ある実施形態では、複数の粒子内の粒子の平均直径は、最大で100ミクロンである。ある実施形態では、複数の粒子内の粒子の平均直径は、5~500ミクロンである。ある実施形態では、複数の粒子内の粒子の平均直径は、10~100ミクロンである。ある実施形態では、複数の粒子の平均直径は、10~50ミクロンである。ある実施形態では、複数の粒子の平均直径は、20~50ミクロンである。ある実施形態では、複数の粒子の平均直径は、25~45ミクロンである。用語「粒子」は本明細書では、球形粒子、棒状粒子、繊維状粒子、円盤状粒子、多角形粒子またはそれらの組合せとして参照される。ある実施形態では、粒子は、ナノ粒子、微小粒子、微小粒子またはそれらの組合せである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。本明細書では、用語「複数の(a plurality of)」および「複数の(a multiplicity of)」は、区別しないで使用されて、少なくとも2つを指す。本明細書では、用語「で作られた(made of)」および「から成る(composed of)」は、区別しないで使用される。
【0081】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、アパタイト、ヒアルロン酸、ポリカプロラクトン、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン、ポリ乳酸、コラーゲン、ゼラチン、真皮移植片、処理した真皮移植片、乾燥無細胞化粒子真皮マトリックス、脂肪細胞、幹細胞、軟骨細胞、それらの塩、それらのエステル、それらの水和物、それらの誘導体、それらの溶媒和化合物、およびそれらの任意の組合せから成る群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0082】
ある実施形態では、皮膚充填剤は、アパタイト、その塩、そのエステル、その水和物、その誘導体、その溶媒和化合物、およびそれらの任意の組合せを含む。アパタイトは、通常は、結晶内に、それぞれ、高濃度のOH-、F-および Cl-イオンをもつ、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイトおよび塩素リン灰石を指す、リン酸塩鉱物のグループである。4つの最も一般的な端成分の混合物の配合は、Ca10(PO4)6(OH,F,Cl)2と書かれる。ある実施形態では、用語「アパタイト」は、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイトおよび/または塩素リン灰石を、純粋な形で、またはその任意の組合せで指す。ある実施形態では、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイトおよび塩素リン灰石は、互いの誘導体である。ある実施形態では、皮膚充填剤は、ヒドロキシアパタイト、その塩、そのエステル、その水和物、その誘導体、その溶媒和化合物、およびそれらの任意の組合せを含む。
【0083】
ある実施形態では、糸は、生分解性または生体吸収性であり、ヒドロキシアパタイト皮膚充填剤は、糸の少なくとも1つの部分に沿って均等に分布された、10~100ミクロンの平均直径を有する複数の粒子の形で配合される。
【0084】
ある実施形態では、前述した外科用縫合糸は、皮膚または皮下組織中にある間に、糸からの皮膚充填剤の分離を促進する薬剤をさらに含む。ある実施形態では、薬剤は、吸湿性、拡散性または浸透圧性薬剤である。
【0085】
ある実施形態では、前述した外科用縫合糸は、針をさらに含む。ある実施形態では、針の直径は、外科用縫合糸の直径と比べて、小さいか、同じか、または大きい。ある実施形態では、針は、直針、1/4円形針、3/8円形針、1/2円形針、5/8円形針、複合湾曲針、半湾曲(スキーとしても知られている)針、および直線部分の両端で半分湾曲した(カヌーとしても知られている)針から成る群から選択される。針は、それらの先端形状によっても分類され得;例には、先細(針本体が丸く、だんだん細くなって先がとがっている);切削(針本体が三角形で、内側の湾曲上に尖った刃先を有する);逆切削(外側上の刃先);主切削針(prime cutting needle);トロカール(trocar)先端またはテーパーカット(針本体は丸くて先細であるが、小さい三角形の刃部で終わる);脆弱な組織を縫うための丸い先端;眼科手術用の側面切削またはヘラ先端(上部と下部が平らで、前部から一方の側面に沿って刃先をもつ)を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある実施形態では、針は皮膚を貫通するのに十分な硬性である。ある実施形態では、針は、セラミック、金属またはプラスチックで作られている。
【0086】
ある実施形態では、前述した外科用縫合糸は、化粧剤または生理活性薬剤をさらに含む。用語「生理活性薬剤」は本明細書では、患者の身体内に導入された場合に生物学的効果を与える任意の薬剤を指す。用語「化粧剤(cosmetic agent)」は本明細書では、患者の身体内に導入された場合に美容効果を与える任意の薬剤を指す。
【0087】
ある実施形態では、化粧剤は、色素である。ある実施形態では、生理活性薬剤は、酵素、薬物、およびそれらの組合せから成る群から選択される。ある実施形態では、酵素は、コラゲナーゼまたはエラスターゼである。ある実施形態では、薬物は、抗生物質製剤、レチノイン酸、グリコサミノグリカン(GAG)、ボツリヌス毒素、鎮痛剤、瘢痕化抑制剤、またはそれらの任意の組合せである。ある実施形態では、瘢痕化抑制剤は、ステロイドである。
【0088】
本発明は、別の態様では、前述したような本発明に従った少なくとも1つの外科用縫合糸を含む、キットをさらに提供する。
【0089】
本発明は、別の態様では、前述したような、複数の異なる外科用縫合糸を含む、キットをさらに提供する。
【0090】
本発明は、別の態様では、皮膚の望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみを充填する美容法または治療法での使用のために、前述したような本発明に従った外科用縫合糸をさらに提供する。
【0091】
ある実施形態では、本方法は、患者の皮膚の望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみの深さ、容積または視感度を減らすためである。ある実施形態では、外科用縫合糸は、患者の表皮、真皮、皮下組織(hypodermis)、または皮下組織(sub-cutis)に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚内に少なくとも0.01mm挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚または皮下組織内に最大で5mm挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚または皮下組織内に0.01mm~5mm挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚または皮下組織内に1mm~2mm挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、表皮内に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、真皮内に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮下組織内に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、表皮下に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、真皮下に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮下組織下に挿入される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0092】
本発明は、別の態様では、それを必要としている患者の皮膚における望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕もしくはたるみの深さ、容積もしくは視感度を減らす美容法または治療法をさらに提供し、その方法は(i)前述したような本発明に従った外科用縫合糸を取得すること;(ii)任意選択として、針を(i)の外科用縫合糸に結び付けること;(iii)任意選択として、患者の皮膚における望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみに局所麻酔を実行すること;および(iv)患者の皮膚における望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみを(i)または(ii)の外科用縫合糸でステッチすること;を行うステップを含む。
【0093】
ある実施形態では、本方法は、患者の皮膚における望ましくない線、皺、陥凹性瘢痕またはたるみの深さ、容積または視感度を減らす結果になる。ある実施形態では、ステッチステップは、望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみに沿って実行される。ある実施形態では、ステッチステップは、少なくとも1回、繰り返される。ある実施形態では、ステッチステップは、望ましくない線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみが実質的に改善されるか、または目立たなくなるまで繰り返される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、非生分解性または非生体吸収性の糸から成る少なくとも1つのセグメントを含み、本方法は、患者の身体からそのセグメントを除去するステップをさらに含む。ある実施形態では、患者の身体からそのセグメントを除去するステップは、ステッチ後、数時間~数週間、影響を受ける。ある実施形態では、縫合糸の直径は、充填すべき線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみのサイズ、深さ、または容積に従って事前に決定される。ある実施形態では、縫合糸内の皮膚充填剤の含有量は、充填すべき線、部位、皺、陥凹性瘢痕またはたるみのサイズ、深さ、または容積に従って事前に決定される。
【0094】
ある実施形態では、外科用縫合糸は、患者の表皮、真皮、または皮下組織内に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚内に少なくとも0.01mm挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚または皮下組織内に最大で5mm挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚または皮下組織内に0.01mm~5mm挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚または皮下組織内に1mm~2mm挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、表皮内に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、真皮内に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮下組織内に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、表皮下に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、真皮下に挿入される。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮下組織下に挿入される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0095】
本発明は、別の態様では、少なくとも1つの皮膚充填剤の繊維状構造を、それを必要としている患者の身体内に形成する美容法または治療法をさらに提供し、その方法は(i)前述したような本発明に従った外科用縫合糸を取得すること;(ii)任意選択として、針を(i)の外科用縫合糸に結び付けること;および(iii)患者の身体内に繊維状構造を形成するように(i)または(ii)の外科用縫合糸を患者の身体内に配置すること;を行うステップを含む。
【0096】
ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は1mm未満である。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は500ミクロン未満である。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は250ミクロン未満である。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は200ミクロン未満である。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は20~5000ミクロンである。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は50~400ミクロンである。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は70~350ミクロンである。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は100~300ミクロンである。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は150~200ミクロンである。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は100ミクロンである。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は150ミクロンである。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は200ミクロンである。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は20~150ミクロンである。ある実施形態では、繊維状構造の平均直径は150~800ミクロンである。用語「繊維状」は本明細書では、その最も一般的な意味において使用され、一般に、細長い構造を指す。用語「繊維状」はさらに、一般に、第1の内軸と垂直な第2の軸よりも少なくとも2、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも100、または少なくとも1000大きい、第1の軸を有する構造を指して含み、例えば、その長さはその直径よりも少なくとも2倍大きい。
【0097】
ある実施形態では、繊維状構造のその全長にわたる平均直径は0.1~10mmである。ある実施形態では、繊維状構造のその全長にわたる平均直径は1~5mmである。
【0098】
本発明の原理によれば、本発明の縫合糸、または本発明の縫合糸によって皮膚内に挿入される充填剤は、実質的に2次元(2D)および/または3次元(3D)の空間的構造を皮膚内で形成し得る。その構造は、全ての形状であり、これらの形状の輪郭は、本発明の縫合糸または本発明の縫合糸によって皮膚内に挿入される充填剤で作られる。
【0099】
本発明は、別の態様では、移植片を、それを必要としている患者の身体内に導入する美容法または治療法をさらに提供し、その方法は(i)前述したように本発明に従った外科用縫合糸を取得すること;(ii)(i)の外科用縫合糸を移植片の形状に形成すること;(iii)任意選択として、針を移植片に結び付けて、移植片を患者の皮下または粘膜の下に固定できるようにすること;および(iv)移植片を必要に応じて患者の身体内に配置すること;を行うステップを含む。
【0100】
いくつかの実施形態によれば、縫合糸は、生分解性担体を含む。いくつかの実施形態によれば、生分解性担体は、塩、生分解性高分子およびそれらの組合せ:から成る群から選択される。いくつかの実施形態によれば、生分解性高分子は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリグラクチン910、ポリグレカプロン25、ポリジオキサノン、ラクトマー9-1、グリコマー631、ポリグリコネートおよびそれらの組合せ:から成る群から選択された高分子である。いくつかの実施形態によれば、塩は、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、塩化マグネシウムおよびそれらの組合せ:から成る群から選択される。いくつかの実施形態によれば、生分解性担体は、硫酸マグネシウムおよびポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態によれば、縫合糸は、ヒドロキシアパタイト粒子、硫酸マグネシウム、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、またはそれらの組合せを含む。
【0101】
ある実施形態では、キット内の外科用縫合糸は、糸の形状によって異なる。ある実施形態では、外科用縫合糸は、糸の平均直径によって異なる。ある実施形態では、外科用縫合糸は、糸の材料によって異なる。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚充填剤の硬性によって異なる。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚充填剤によって異なる。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚充填剤の形状によって異なる。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚充填剤のサイズによって異なる。ある実施形態では、外科用縫合糸は、皮膚充填剤の量によって異なる。
【0102】
本発明は、ある実施形態を参照して説明されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ得、同等物が置換され得ることが当業者によって理解されるであろう。加えて、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、その範囲から逸脱することなく、多くの修正が行われ得る。従って、本発明は、開示する特定の実施形態に制限されるのではなく、本発明は、添付のクレームの範囲に含まれる全ての実施形態を含むことを意図する。
【0103】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をさらに十分に説明するために提示される。しかし、それらは、決して、本発明の広い範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0104】
実施例1.充填剤でコーティングされた縫合糸
本発明に従って充填剤でコーティングされた縫合糸(
図1A~
図1C)は、90%グリコリドおよび10%L-ラクチドで作られたポリグラクチン910(ETHICON)などの、縫合糸1.1、およびヒドロキシアパタイトなどの、皮膚充填剤を接触させることによって製造される。充填剤は、接触前および接触中、液体、半固体または固体であり、完成された製品中で液体、半固体または固体であり得る。最終製品中の充填剤は、連続したシート、層もしくは相2.1(
図1Aおよび
図1C)として、または実質的に別々の粒子2.2(
図1Bおよび
図1C)として配合され得る。
図1Cでは、充填剤は、縫合糸1.1の表面上に画定された溝内に含まれる。
【0105】
実施例2.充填剤含有縫合糸
本発明に従った充填剤含有縫合糸(
図2A~
図2C)は、内部空洞1.2を有する縫合糸と、ヒドロキシアパタイトなどの、皮膚充填剤とを接触させることによって製造される。充填剤は、接触前および接触中、液体、半固体または固体であり、完成された製品中で液体、半固体または固体であり得る。最終製品中の充填剤は、連続したシート、層もしくは相2.1(
図2Aおよび
図2B)として、または実質的に別々の粒子2.2(
図2Aおよび
図2C)として配合され得る。
図2Aでは、内部空洞1.2を有する縫合糸は多孔質である。
【0106】
実施例3.ステッチ
皮膚の線、皺またはたるみ(
図4A)の内容積を減少させるために、本発明によって提供される縫合糸3は、皮膚の陥凹の底および/または壁(
図4Aおよび
図4B)のステッチで採用され得る。この技術は、わずかな線および皺の充填において特に重要である。かかるステッチは、調整可能な量の充填剤を陥凹内に置き、従って、陥凹の容積を充填する。使用される充填剤の量2(
図4B、灰色の球)および各量に対する正確な位置は、有益な美容効果(
図4C)を得るために調整される。
【0107】
実施例4.2Dおよび3D構造
充填剤の定義された繊維状構造を患者の身体内(
図5A)に形成するために、互いに垂直な横距5および直径6を有する、本発明によって提供される縫合糸3は、身体内に挿入され得る(
図5A)。
図5Bは、本発明によって提供される縫合糸および方法の使用によって取得可能な、充填剤2の例示的な繊維状構造、コイルの図である。かかるコイルは、血管もしくは尿管が、膨張するのを防ぎ、かつ/または血管もしくは尿管を望ましくて有益な形状もしくは容積に限定するのに役立ち得る。
図5Cは、本発明によって提供される縫合糸および方法の使用によって取得可能な、充填剤2の例示的な繊維状構造、メッシュの図である。この構造は、頬または頬骨増強のために非常に有用であり得る。
【0108】
本発明によって提供される縫合糸および方法を使用すると、線、ループ、ウェブ、メッシュ、コイル、ノット、および任意の有益な高次構造を患者の身体内部に作ることができる。当分野で既知のどの技術もかかる繊細で複雑な2Dおよび3D構造を生体内で形成することができない。
【0109】
実施例5.処置
患者(
図6A)の皮膚における線(皺)を処置するために、美容外科医は、本発明によって提供される外科用縫合糸および/または本発明によって提供される方法を使用できる。
図6Bに示すように、線は、針4に結び付けられた吸収性縫合糸3により、その長さに沿ってステッチされ得る。吸収性縫合糸3は、複数の皮膚充填剤粒子2.2によってコーティングされた細長い糸1.1で作られており、従って、皮膚充填剤粒子2.2の線へのピンポイントターゲティングを可能にする。針4が除去された後、かつ吸収性縫合糸3が吸収された後、複数の皮膚充填剤粒子2.2は線の部位において皮膚内にとどまっており(
図6C)、線は実質的に消えている(
図6D)。