(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02D 19/02 20060101AFI20240216BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
F02D19/02 C
F02M21/02 K
F02M21/02 Z
(21)【出願番号】P 2019028518
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】片山 智史
(72)【発明者】
【氏名】佐古 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 良胤
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 新吾
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194294(JP,A)
【文献】特開2016-166611(JP,A)
【文献】特開2007-332891(JP,A)
【文献】特開2003-097306(JP,A)
【文献】特開2018-009528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/02
F02M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と燃焼用空気とを含む混合気の少なくとも一部を部分酸化反応させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備え、当該改質気筒とは別に通常気筒を備え、
前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部を備え、
前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記通常気筒へ導くように構成されているエンジンシステムにおいて、
少なくとも前記通常気筒へ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部と、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する前記第1燃料供給部とを各別に備え、
改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の行程容積の和である総行程容積が、すべての前記改質気筒の行程容積の和である前記総行程容積より大きい構成であり、
改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の前記総行程容積を前記改質気筒の前記総行程容積で除算した行程容積比に基づいて、前記通常気筒のストローク数を前記改質気筒のストローク数で除算した値であるストローク数比を1以上で変動制御するストローク数比制御を実行可能な制御装置を備え、
前記ストローク数比制御は、改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の前記総行程容積を前記改質気筒の前記総行程容積で除算した行程容積比が大きいほど、前記ストローク数比を大きく制御するものであり、
前記制御装置は、
前記第1燃料供給部による燃料供給量を調整して前記改質気筒における空気過剰率を、改質ガスを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、前記第1燃料供給部によるすべての前記改質気筒への総燃料供給量に対する前記第2燃料供給部によるすべての前記通常気筒への総燃料供給量の比である燃料比を0.0以上0.50以下に制御する燃料比低下制御と、
前記第1燃料供給部による燃料供給
量を調整して前記改質気筒における空気過剰率を、改質ガスを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、前記通常気筒へ燃料として改質ガスのみを導く改質ガス運転と
、
の何れか一方を実行するときに、前記ストローク
数比制御を実行するエンジンシステム。
【請求項2】
燃料と燃焼用空気とを含む混合気の少なくとも一部を部分酸化反応させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも1つ備えた改質エンジンを有すると共に、当該改質気筒とは別に通常気筒を備える外部出力エンジンを有し、
前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部を備え、
前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記通常気筒へ導くように構成されたエンジンシステムにおいて、
少なくとも前記通常気筒へ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部と、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する前記第1燃料供給部とを各別に備え、
改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の行程容積の和である総行程容積が、すべての前記改質気筒の行程容積の和である前記総行程容積より大きい構成であり、
改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の前記総行程容積を前記改質気筒の前記総行程容積で除算した行程容積比に基づいて、前記通常気筒のストローク数を前記改質気筒のストローク数で除算した値であるストローク数比を1以上で変動制御するストローク数比制御を実行可能な制御装置を備え、
前記ストローク数比制御は、改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の前記総行程容積を前記改質気筒の前記総行程容積で除算した行程容積比が大きいほど、前記ストローク数比を大きく制御するものであり、
前記制御装置は、
前記第1燃料供給部による燃料供給量を調整して前記改質気筒における空気過剰率を、改質ガスを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、前記第1燃料供給部によるすべての前記改質気筒への総燃料供給量に対する前記第2燃料供給部によるすべての前記通常気筒への総燃料供給量の比である燃料比を0.0以上0.50以下に制御する燃料比低下制御と、
前記第1燃料供給部による燃料供給
量を調整して前記改質気筒における空気過剰率を、改質ガスを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、前記通常気筒へ燃料として改質ガスのみを導く改質ガス運転と
、
の何れか一方を実行するときに、前記ストローク
数比制御を実行するエンジンシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、起動時に、前記改質ガス運転に先立って、前記改質気筒での出力を一時的に高くする改質気筒高出力運転を実行する請求項1又は2に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料と燃焼用空気とを含む混合気の少なくとも一部を部分酸化反応させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備え、当該改質気筒とは別に通常気筒を備え、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部を備え、前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記通常気筒へ導くように構成されているエンジンシステム、
及び燃料と燃焼用空気とを含む混合気の少なくとも一部を部分酸化反応させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも1つ備えた改質エンジンを有すると共に、当該改質気筒とは別に通常気筒を備える外部出力エンジンを有し、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部を備え、前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記通常気筒へ導くように構成されたエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンシステムとして、燃料と燃焼用空気とを含む混合気を燃焼する燃焼室を有する通常気筒を少なくとも1つ備えると共に、混合気の少なくとも一部を燃焼室にて部分酸化反応させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備え、改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも通常気筒へ導くものが知られている(特許文献1を参照)。
改質気筒では、例えば、メタンを主成分とする燃料を含む過濃混合気を部分酸化反応させることで、水素等の燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスを生成することができる。そして、当該改質ガスを通常気筒へ導くことで、例えば、通常気筒の燃焼室での火花伝播速度を上昇させ、失火や燃焼変動を低下し、燃焼の安定性を改善できる。
特許文献1に開示の技術では、通常気筒の出力に応じて改質気筒の回転速度を変更する点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで説明してきたエンジンシステムにあっては、通常気筒及び改質気筒への燃料供給状態や各気筒の行程容積が特定の条件を満たすときには、通常気筒又は改質気筒の行程容積に基づいて燃料供給量や燃焼用空気の供給量に制約が発生する場合があるが、上記特許文献1に開示の技術にあっては、この点につき検討がなされておらず、エンジンシステム(通常気筒)の更なる効率の向上及び出力上限の拡大(トルク上限の拡大)を図る上で、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、改質気筒からの改質ガスを通常気筒に導く構成において、通常気筒又は改質気筒の行程容積に基づく燃料供給量や燃焼用空気の供給量の制約を満たしながらも、更なる効率向上及びトルク上限の拡大(出力上限の拡大)を図り得るエンジンシステムを提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのエンジンシステムは、
燃料と燃焼用空気とを含む混合気の少なくとも一部を部分酸化反応させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも一つ備え、当該改質気筒とは別に通常気筒を備え、
前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部を備え、
前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記通常気筒へ導くように構成されているエンジンシステムであって、その特徴構成は、
少なくとも前記通常気筒へ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部と、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する前記第1燃料供給部とを各別に備え、
改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の行程容積の和である総行程容積が、すべての前記改質気筒の行程容積の和である前記総行程容積より大きい構成であり、
改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の前記総行程容積を前記改質気筒の前記総行程容積で除算した行程容積比に基づいて、前記通常気筒のストローク数を前記改質気筒のストローク数で除算した値であるストローク数比を1以上で変動制御するストローク数比制御を実行可能な制御装置を備え、
前記ストローク数比制御は、改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の前記総行程容積を前記改質気筒の前記総行程容積で除算した行程容積比が大きいほど、前記ストローク数比を大きく制御するものであり、
前記制御装置は、
前記第1燃料供給部による燃料供給量を調整して前記改質気筒における空気過剰率を、改質ガスを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、前記第1燃料供給部によるすべての前記改質気筒への総燃料供給量に対する前記第2燃料供給部によるすべての前記通常気筒への総燃料供給量の比である燃料比を0.0以上0.50以下に制御する燃料比低下制御と、
前記第1燃料供給部による燃料供給量を調整して前記改質気筒における空気過剰率を、改質ガスを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、前記通常気筒へ燃料として改質ガスのみを導く改質ガス運転と、
の何れか一方を実行するときに、前記ストローク数比制御を実行する点にある。
【0007】
上記目的を達成するためのエンジンシステムは、
燃料と燃焼用空気とを含む混合気の少なくとも一部を部分酸化反応させて燃料よりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスへ改質する改質気筒を少なくとも1つ備えた改質エンジンを有すると共に、当該改質気筒とは別に通常気筒を備える外部出力エンジンを有し、
前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部を備え、
前記改質気筒にて改質された改質ガスを、少なくとも前記通常気筒へ導くように構成されたエンジンシステムであって、その特徴構成は、
少なくとも前記通常気筒へ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部と、前記改質気筒へ導かれる燃料を供給する前記第1燃料供給部とを各別に備え、
改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の行程容積の和である総行程容積が、すべての前記改質気筒の行程容積の和である前記総行程容積より大きい構成であり、
改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の前記総行程容積を前記改質気筒の前記総行程容積で除算した行程容積比に基づいて、前記通常気筒のストローク数を前記改質気筒のストローク数で除算した値であるストローク数比を1以上で変動制御するストローク数比制御を実行可能な制御装置を備え、
前記ストローク数比制御は、改質ガスが導かれるすべての前記通常気筒の前記総行程容積を前記改質気筒の前記総行程容積で除算した行程容積比が大きいほど、前記ストローク数比を大きく制御するものであり、
前記制御装置は、
前記第1燃料供給部による燃料供給量を調整して前記改質気筒における空気過剰率を、改質ガスを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、前記第1燃料供給部によるすべての前記改質気筒への総燃料供給量に対する前記第2燃料供給部によるすべての前記通常気筒への総燃料供給量の比である燃料比を0.0以上0.50以下に制御する燃料比低下制御と、
前記第1燃料供給部による燃料供給量を調整して前記改質気筒における空気過剰率を、改質ガスを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、前記通常気筒へ燃料として改質ガスのみを導く改質ガス運転と、
の何れか一方を実行するときに、前記ストローク数比制御を実行する点にある。
【0008】
本発明の発明者らは、改質気筒への総燃料供給量に対する通常気筒への総燃料供給量の比である燃料比を低下して燃料比を零にする制御、又は燃料を改質気筒のみに供給する制御により、通常気筒に改質ガスのみを燃料として供給することで、エンジンの高効率化及び低NOx化を図ることができることを見出した。
しかしながら、上述の如く、通常気筒に改質ガスのみを燃料として供給する場合、構成によっては、通常気筒又は改質気筒の行程容積による燃料供給量や燃焼用空気の供給量に制約が発生してくる場合がある。
例えば、燃料をメタンを主とした都市ガス13Aとして改質気筒の空気過剰率を0.6に制御すると共に通常気筒の空気過剰率を1.0に制御している状態で、改質気筒への総燃料供給量に対する通常気筒への総燃料供給量の比である燃料比を低下して燃料比を零にする制御を実行する場合、改質気筒の気体の体積(NL)と通常気筒の気体の給気量(NL)との体積比を考える。ここで、体積としては、温度が0℃、圧力が大気圧、相対湿度が0%である学術的な標準状態にて換算したノルマルリットルを用いるものとする。
【0009】
【0010】
〔表1〕に示すように、改質気筒の空気過剰率を0.6とした場合、改質気筒への燃料供給量を1.0NLとすると、改質気筒への燃焼用空気の供給量は6.48NLとなり、その合計は7.48NLとなり、実験により当該7.48NLのおおよそ1.12倍が通常気筒に導かれる改質ガスとなるとわかっていることから、体積は8.38NLとなる。全気筒に供給した空気量を、全気筒に供給した燃料を完全燃焼するのに必要な空気量で除した空気比(以下、「通常気筒空気過剰率」または「総空気過剰率」という。以下の表中で改質ガスを燃焼する通常気筒の空気過剰率を示しているものも同様である)を1.0とすると、通常気筒への燃焼用空気の供給量は4.32NLとなり、改質気筒の給気量と通常気筒の給気量との体積比は、およそ、1.0:1.7となる。
このため、改質気筒を1気筒とし、通常気筒を2気筒とすると、改質気筒1気筒の給気量と通常気筒1気筒の給気量との比は、1.0:0.85となり、体積的にはほぼ均衡が取れた状態となり、通常気筒への燃焼用空気を供給するときにスロットルを開放できポンプ損失を抑制できる。
これに対し、行程容積が等しい(等排気量)4気筒の内燃機関において、1気筒を改質気筒とし、3気筒を通常気筒として、改質気筒への総燃料供給量に対する通常気筒への総燃料供給量の比である燃料比を低下して燃料比を零にする制御を実行すると、体積的な均衡が大きくそれてしまい、通常気筒に燃焼用空気を供給するスロットルを閉じ側へ制御する必要が生じ、通常気筒におけるポンプ損失が増大してしまう。
【0011】
一方で、トルク上限の低下(出力上限の低下)が生じる場合も存在する。
まず、行程容積が等しい4気筒の内燃機関において、4気筒を通常気筒とし、1気筒の行程容積を60NLとし、全気筒を空気過剰率1.5で運転する場合、〔表2〕に示すように、全気筒の夫々において、燃料の供給量を3.49NL、燃焼用空気の供給量を56.51NL、各気筒への気体充填率を100%となる。
【0012】
【0013】
これに対し、行程容積が等しい4気筒の内燃機関において、3気筒を通常気筒とし、1気筒を改質気筒とし、通常気筒の空気過剰率を1.0、改質気筒の空気過剰率を0.6として、改質気筒への総燃料供給量に対する通常気筒への総燃料供給量の比である燃料比を低下して燃料比を零にする制御を実行する場合、改質気筒へ投入可能な燃料量の上限は、改質気筒の空気過剰率の下限に依存する。当該改質気筒の空気過剰率の下限を、例えば、0.6とする場合、〔表3〕に示すように、改質気筒への燃料と燃焼用空気の合計供給量の体積である60NLを1.12倍した改質ガスを通常気筒へ導くことができ、それが3等分され通常気筒の夫々へ導かれる。当該通常気筒では、通常気筒空気過剰率を1.0にするべく、夫々の通常気筒に燃焼用空気が11.55NL供給され、夫々の通常気筒への燃料と燃焼用空気の合計供給量は、33.95NLとなり、通常気筒への気体充填率は56.6%となり、4気筒の気体充填率の平均は67.4%となり、上述の4気筒を通常気筒として空気過剰率を1.5で運転する場合の気体充填率100%に比べ低くなり、もし両者の正味熱効率が同等だとした場合に、充填可能な燃料量が57.5%(=8.02/13.96×100)となってしまうことから、トルク上限も低下することになる。
【0014】
【0015】
そこで、本発明にあっては、通常気筒と改質気筒の気体の体積的な均衡(改質気筒への気体充填率と通常気筒への気体充填率)を保ちつつ、トルクの上限を拡大(出力の上限を拡大)するべく、改質ガスが導かれるすべての通常気筒の行程容積の和である総行程容積が、すべての改質気筒の行程容積の和である総行程容積より大きい構成において、制御装置が、改質ガスが導かれるすべての通常気筒の総行程容積を改質気筒の総行程容積で除算した行程容積比に基づいて、通常気筒のストローク数を改質気筒のストローク数で除算した値であるストローク数比を1以上で変動制御するストローク数比制御を実行するのである。
上記特徴構成によれば、例えば、行程容積が等しい4気筒の内燃機関において、3気筒を通常気筒とし、1気筒を改質気筒とし、通常気筒空気過剰率を1.0、改質気筒の空気過剰率を0.6として、改質気筒への総燃料供給量に対する通常気筒への総燃料供給量の比である燃料比を低下して燃料比を零にする制御を実行する場合、制御装置が、行程容積比に基づいてストローク数比制御を実行して、例えば、改質気筒を2ストロークサイクルで燃焼させ、通常気筒を4ストロークサイクルで燃焼させることができる。これにより、〔表4〕に示すように、改質気筒での4ストローク分(通常気筒の1サイクル分)での気筒の行程容積が60NLの2倍となるため、4ストローク(通常気筒の1サイクル)で改質気筒へ投入できる燃料量が14.18NLまで増加でき、通常気筒へ供給できる改質ガス量が増加し、通常気筒の充填効率を約100%にでき、充填可能な燃料量が101.6%(=14.18/13.96×100)とななり、トルク上限も向上できる。
【0016】
【0017】
結果、改質気筒と通常気筒との体積的な均衡(改質気筒への気体充填率と通常気筒への気体充填率)を保つことができ、ポンプロスを低減して効率向上を図ることができつつ、通常気筒の充填効率を、上述の4気筒を通常気筒として空気過剰率を1.5で運転する場合の充填効率と同等にでき、トルク上限の拡大(出力上限の拡大)することができるエンジンシステムを提供できる。
【0020】
更に、上記特徴構成によれば、制御装置は、改質ガスが導かれるすべての通常気筒の総行程容積を改質気筒の総行程容積で除算した行程容積比が大きいほど、ストローク数比制御におけるストローク数比を大きく制御するから、例えば、通常気筒の数と改質気筒の数を変更して運転するときに、行程容積比に応じて、最適なストローク比に変更制御して、効率向上を図ると共にトルクの上限の拡大を図ることができる。
【0022】
更に、前記制御装置は、前記空気過剰率変動制御を実行している状態で、前記燃料比低下制御による前記燃料比を0.0以上0.50以下に制御することが好ましい。
【0023】
これまで説明してきたように、上記特徴構成の如く、燃料比低下制御をして、燃料比を零に近づけることで、熱効率の向上及び低NOx化を図ることができる。
ただし、上述したように、当該燃料比低下制御を実行すると、通常気筒と改質気筒との体積比の均衡が大きく崩れてポンプ損失が拡大する場合があると共に、通常気筒のトルク上限が大幅に制限される場合が発生する。
そこで、本発明におけるストローク数比制御と共に当該燃料比低下制御を実行することで、燃料比低下制御のメリットを享受しつつ、ポンプ損失の低減を図り更なる熱効率の向上を見込めると共に、トルク上限の拡大を良好に図ることができるエンジンシステムが達成される。
【0025】
更に、当該特徴構成についても、これまで説明してきたように、通常気筒へ燃料として改質ガスのみを導く改質ガス運転をして、燃料比を零に近づけることで、熱効率の向上及び低NOx化を図ることができる。
ただし、上述したように、当該改質ガス運転を実行すると、通常気筒と改質気筒との体積比の均衡が大きく崩れてポンプ損失が拡大する場合があると共に、通常気筒のトルク上限が大幅に制限される場合が発生する。
そこで、本発明におけるストローク数比制御と共に当該改質ガス運転を実行することで、改質ガス運転のメリットを享受しつつ、ポンプ損失の低減を図り更なる熱効率の向上を見込めると共に、トルク上限の拡大を良好に図ることができるエンジンシステムが達成される。
【0026】
エンジンシステムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、起動時に、前記改質ガス運転に先立って、前記改質気筒での出力を一時的に高くする改質気筒高出力運転を実行する点にある。
【0027】
上記特徴構成の如く、通常気筒へ直接燃料を供給しない構成にあっては、起動時は、セルモータによるアシスト運転をする構成が考えられるが、例えば、改質気筒へ導かれる新気の流量を増加することで、改質気筒の出力の一時的な増大を図ることで、起動時のエンジンシステムの安定性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図
【
図2】改質気筒及び通常気筒の
4ストロークサイクル運転を説明するための概念図
【
図3】改質気筒及び通常気筒の
2ストロークサイクル運転を説明するための概念図
【
図4】改質気筒及び通常気筒の6ストロークサイクル運転を説明するための概念図
【
図5】改質気筒及び通常気筒の8ストロークサイクル運転を説明するための概念図
【
図6】本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図
【
図7】本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図
【
図8】本発明の第4実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態に係るエンジンシステム100は、改質気筒からの改質ガスを通常気筒に導く構成において、通常気筒又は改質気筒の行程容積に基づく燃料供給量や燃焼用空気の供給量の制約を満たしながらも、更なる効率向上及びトルク上限の拡大(出力上限の拡大)を図り得るものに関する。
以下、図面に基づいて、当該エンジンシステム100の構成について説明する。
【0030】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係るエンジンシステム100は、
図1に示すように、エンジン本体40に、都市ガス13A等(燃料の一例)の燃料Fと燃焼用空気Aとを含む混合気Mを燃焼する通常気筒40a、40b、40cと、混合気Mの少なくとも一部を部分酸化反応させて燃料Fよりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスKへ改質する改質気筒40dとを備え、通常気筒40a、40b、40cへ導かれる燃料を供給する第2燃料供給部と、改質気筒40dへ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部とを各別に備え、改質気筒40dにて改質された改質ガスKを、少なくとも通常気筒40a、40b、40cへ導く(当該第1実施形態では通常気筒40a、40b、40cのみへ導く)ものである。
【0031】
当該第1実施形態のエンジンシステム100は、ターボ過給式エンジンとして構成されており、少なくとも1つ以上(当該第1実施形態では3つ)の通常気筒40a、40b、40cと、少なくとも1つ以上(当該第1実施形態では1つ)の改質気筒40dとを備えている。更には、エンジンの運転状態を検出するセンサ等の測定結果が入力され、その入力信号に基づいてターボ過給式エンジンの運転を制御するハードウェア群とソフトウェア群とから構成されているエンジンコントロールユニット(以下、制御装置50と呼ぶ)を備えている。
【0032】
この種のエンジンシステム100は、詳細な図示は省略するが、給気本管20から通常気筒40a、40b、40cの燃焼室(図示せず)へ給気弁(図示せず)を介して給気した新気を、ピストンの上昇により圧縮した状態で点火プラグ(図示せず)にて火花点火して燃焼・膨張させることで、ピストンを押し下げて回転軸(図示せず)から回転動力を出力すると共に、燃焼により発生した排ガスEは、通常気筒40a、40b、40cの燃焼室から排気弁(図示せず)を介して排気路27に押し出され、外部へ排出される。
尚、詳細については後述するが、給気本管20から供給される燃焼用空気Aは、改質気筒用給気支管20dを通じて改質気筒40dにも供給され、改質気筒40dでもピストンを押し下げて回転軸から回転動力を出力する。ただし、当該改質気筒40dにて排ガスとして生成される改質ガスKは、外部へ排出されることなく、そのすべてが改質ガス通流路28を介して給気本管20へ戻され、通常気筒40a、40b、40cへ導かれることとなる。
【0033】
給気本管20には、燃焼用空気Aを浄化するエアクリーナ21、燃焼用空気Aに燃料Fを適切な比率(空燃比)で混合するベンチュリー式のミキサ14、開度調整により通常気筒40a、40b、40cへの混合気Mの給気量を調整可能な通常気筒用スロットル弁23が、その上流側から記載の順に設けられている。
即ち、給気本管20において、ミキサ14で燃料Fと燃焼用空気Aとを混合して生成された混合気Mは、通常気筒用スロットル弁23を介して所定の流量に調整されて、通常気筒40a、40b、40cの燃焼室へ導入される。
【0034】
給気本管20からミキサ14の上流側で分岐する改質気筒用給気支管20dには、燃焼用空気Aを圧縮する過給機30としてのコンプレッサ31、当該コンプレッサ31の昇圧により昇温した燃焼用空気Aを冷却するインタークーラ22、開度調整により改質気筒40dへの混合気Mの給気量を調整可能な改質気筒用スロットル弁25、燃焼用空気Aに燃料Fを適切な比率(空燃比)で混合するベンチュリー式のミキサ16が、その上流側から記載の順に設けられている。
【0035】
ミキサ14に燃料Fを導く第2燃料供給路11には、ミキサ14の上流側の給気本管20における燃焼用空気Aの圧力と第2燃料供給路11における燃料Fの圧力差を一定に保つ差圧レギュレータ12、ミキサ14を介して通常気筒40a、40b、40cの燃焼室へ供給される燃料Fの供給量を調整する第2燃料流量制御弁13が設けられている。即ち、第2燃料供給路11、差圧レギュレータ12、ミキサ14、及び第2燃料流量制御弁13が、第2燃料供給部として機能する。
【0036】
過給機30は、通常気筒40a、40b、40cに接続される排気路27に設けられるタービン32に、通常気筒40a、40b、40cから排出される排ガスEを供給し、タービン32に連結される状態で改質気筒用給気支管20dに設けられるコンプレッサ31により、改質気筒40dの燃焼室に給気される混合気Mを圧縮するターボ式の過給機30として構成されている。即ち、当該過給機30は、排気路27を通流する排ガスEの運動エネルギによりタービン32を回転させ、当該タービン32の回転力により改質気筒用給気支管20dを通流する燃焼用空気Aを圧縮して、改質気筒40dの燃焼室へ供給する、所謂、過給を行う。
つまり、当該第1実施形態においては、過給機30は、改質気筒40dへ導かれる燃焼用空気Aのみを過給する。
【0037】
給気本管20は、エアクリーナ21の下流側において、通常気筒40a、40b、40cの夫々へ燃焼用空気A2を導く複数の通常気筒用給気支管20a、20b、20cに接続される給気本管20と、改質気筒40dへ燃焼用空気Aを導く改質気筒用給気支管20dに分岐されている。
改質気筒40dは、自身の燃焼室において、新気の一部を部分酸化反応させて、燃料F(例えば、メタン)よりも燃焼速度の速い水素等の燃焼促進性ガスを含む改質ガスKを生成するように構成されている。ここで、水素は、メタン及び空気を混合して燃焼する場合、空気過剰率が1より小さい燃料過濃領域に、その発生量のピークがあることが知られている。
そこで、当該第1実施形態にあっては、改質気筒40dの燃料室において燃料過濃状態で混合気を燃焼させるべく、改質気筒40dへ新気を供給する改質気筒用給気支管20dに、ベンチュリー式のミキサ16を介する形態で燃料Fを供給する第1燃料供給路29が接続されており、当該第1燃料供給路29には、燃料Fの流量を制御する第1燃料流量制御弁15が設けられている。第1燃料供給路29の第1燃料流量制御弁15の上流側には、燃料Fの供給圧を給気本管20のコンプレッサ31出口の過給圧まで昇圧するべく、圧縮機(図示せず)等が設けられている。
更に、改質気筒40dには、改質気筒40dにて改質された改質ガスKを通流する改質ガス通流路28が接続されており、当該改質ガス通流路28の下流端が、給気本管20の通常気筒用スロットル弁23の下流側に接続されている。即ち、当該第1実施形態にあっては、改質ガスKは、そのすべてが通常気筒40a、40b、40cに導かれるように構成されている。
制御装置50は、改質気筒40dへの新気の空気過剰率が1より小さくなるように、第1燃料流量制御弁15の開度を制御する。つまり、第1燃料供給路29、ミキサ16、及び第1燃料流量制御弁15が、第1燃料供給部として機能する。
【0038】
エンジン本体40の回転軸(図示せず)には、運転状態検出部41として、回転軸(図示せず)の回転数を計測する回転数センサが設けられている。
更に、エンジン本体40の回転軸(図示せず)には、運転状態検出部41として、当該回転軸のトルクを計測するトルク計測センサが設けられており、制御装置50は、例えば、回転数センサにて計測されるエンジン回転数と、トルク計測センサにて計測されるトルクに基づいて計算されるエンジン出力が、目標出力となるように、第2燃料流量制御弁13、第1燃料流量制御弁15、通常気筒用スロットル弁23、並びに改質気筒用スロットル弁25の開度を制御する。
すべての通常気筒40a、40b、40c、及び改質気筒40dには、運転状態検出部41として、筒内圧力を検出する筒内圧力センサ(図示せず)が設けられており、制御装置50は、当該筒内圧力センサの計測結果に基づいて、後述する各種制御を実行する。また、制御装置50は、給気温度を計測する給気温度センサ(図示せず)の計測結果を取得可能に構成されており、当該給気温度センサの計測結果に基づいて、後述する各種制御を実行する。
【0039】
さて、当該実施形態に係るエンジンシステム100は、通常気筒40a、40b、40cと改質気筒40dとを備えたエンジンシステムにおいて、熱効率を向上させると共に排ガス性状を改善させるべく、以下の制御を実行する。
制御装置50は、第1燃料供給部としての第1燃料流量制御弁15による燃料供給量を調整して改質気筒40dにおける空気過剰率を、改質ガスKを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、第1燃料供給部としての第1燃料流量制御弁15によるすべての改質気筒40d(当該第1実施形態では1気筒)への総燃料供給量に対する第2燃料供給部としての第2燃料流量制御弁13によるすべての通常気筒40a、40b、40c(当該第1実施形態では3気筒)への総燃料供給量の比である燃料比を低下する燃料比低下制御を実行する。
【0040】
尚、空気過剰率変動制御では、燃料としてメタンを主成分とする炭化水素ガスを用いる場合、通常気筒40a、40b、40cと改質気筒40dとの総空気過剰率を1.0以上1.5以下に調整すると共に、第1燃料供給部としての第1燃料流量制御弁15による燃料供給量又は改質気筒用スロットル弁25の開度或いはその両方を調整して改質気筒40dにおける空気過剰率を0.5以上0.9以下(より好ましくは、0.55以上0.8以下)の範囲で変動制御することが好ましい。
そして、燃料比低下制御にて制御される燃料比は、0.0以上0.50以下に制御されることが好ましい。
これにより、通常気筒40a、40b、40cから排出される排ガスEのNOx濃度を目標値(自主基準として定める目標値で例えば、150ppm)以下に維持すると共にシステム全体の効率の向上を図ることができる。
【0041】
更に、第1実施形態に係るエンジンシステム100にあっては、制御装置50は、改質ガスKが導かれるすべての通常気筒40a、40b、40cの総行程容積(総排気量)を改質気筒40dの総行程容積で除算した行程容積比に基づいて、通常気筒40a、40b、40cのストローク数を改質気筒40dのストローク数で除算した値であるストローク数比を1以上で変動制御するストローク数比制御を実行可能に構成されている。
【0042】
説明を追加すると、当該第1実施形態においては、特に、通常気筒40a、40b、40c及び改質気筒40dに対し、夫々の気筒に設けられる吸気弁(図示せず)と排気弁(図示せず)との開閉タイミングを設定するカムのカム軸(図示せず)とエンジン本体40の回転軸(図示せず)との間のギヤ比を変更可能な動弁機構を備えている。
即ち、制御装置50は、動弁機構を制御して、
図2に示すように、吸気行程と圧縮行程と膨張行程と排気行程との夫々を上死点(TDC)と下死点(BDC)との間の1ストロークで実行する4ストロークサイクルと、
図3に示すように、膨張、排気、吸気、圧縮を2ストロークで実行する2ストロークサイクルと、
図4、5に示すように、4ストロークサイクルに対して吸気行程と圧縮行程との間に燃焼を伴わないで吸気弁と排気弁との双方を閉じて、改質気筒40d、40b、40c及び改質気筒40dのピストンを往復運動させる一対の休止行程を少なくとも1つ以上追加するストロークサイクル(
図4は6ストロークサイクルを、
図5は8ストロークサイクルを、夫々例示)とを、各別に実行する形態で、ストローク数比制御を実行可能に構成されている。
ただし、通常気筒通常気筒40a、40b、40cでは、2ストロークサイクルは実行しないものとする。
上述した4ストロークサイクル、2ストロークサイクル、及び6、8ストロークサイクルの夫々につき、動弁機構による吸気弁と排気弁との開閉状態の一例について説明すると、4ストロークサイクルにおいて、動弁機構は、
図2に示すように、吸気弁をに開放状態とすると共に圧縮行程と膨張行程と排気行程とで閉状態とし、排気弁を排気行程に開放状態とすると共に吸気行程と圧縮行程と膨張行程とで閉状態とする。
6ストロークサイクルにおいて、動弁機構は、
図4に示すように、吸気弁を吸気行程に開放状態とすると共に一対の休止行程(密閉上昇行程と密閉下降行程)と圧縮行程と膨張行程と排気行程とで閉状態とし、排気弁を排気行程に開放状態とすると共に吸気行程と一対の休止行程(密閉上昇行程と密閉下降行程)と圧縮行程と膨張行程とで閉状態とする。
8ストロークサイクルにおいて、動弁機構は、
図5に示すように、吸気弁を吸気行程に開放状態とすると共に二対の休止行程(密閉上昇行程と密閉下降行程と密閉上昇行程と密閉下降行程)と圧縮行程と膨張行程と排気行程とで閉状態とし、排気弁を排気行程に開放状態とすると共に吸気行程と二対の休止行程(密閉上昇行程と密閉下降行程と密閉上昇行程と密閉下降行程)と圧縮行程と膨張行程とで閉状態とする。
2ストロークサイクルにおいて、動弁機構は、
図3に示すように、上死点を基準として、吸気弁を135°ATDC~270°ATDCで開放状態とし、0°ATDC~135°ATDCと270°ATDC~360°ATDCにおいて閉止状態とし、排気弁を90°ATDC~270°ATDCで開放状態とし、0°ATDC~90°ATDCと270°ATDC~360°ATDCで閉止状態とする。
【0043】
尚、当該第1実施形態にあっては、2ストロークサイクル、4ストロークサイクル、6ストロークサイクル、及び8ストロークサイクルの何れにあっても、制御装置50は、圧縮行程において60°BTDC~10°ATDCの間に改質気筒40dの点火時期を設定するように構成されている。
【0044】
上述の如くストローク数比制御を実行することで、〔課題を解決するための手段〕にて説明したように、改質気筒40dへの気体充填率と通常気筒40a、40b、40cへの気体充填率との均衡を保つことができ、ポンプ損失を低減して効率向上を図ることができつつ、通常気筒40a、40b、40cでのトルクの上限の拡大(出力の上限の拡大)を図ることができる。
【0045】
因みに、当該第1実施形態の如く、通常気筒40a、40b、40cを3気筒、改質気筒40dを1気筒備える構成において、改質気筒40dの空気過剰率を0.6とし通常気筒40a、40b、40cの総空気過剰率を1.0に制御すると共に、上述の燃料比低下制御にて燃料比を0.0に制御する場合、改質気筒40dを2ストロークサイクルで燃焼させると共に、通常気筒40a、40b、40cを4ストロークサイクルで燃焼させることで、上述の〔表4〕に示すように、改質気筒40dの気体充填率と通常気筒40a、40b、40cの気体充填率をほぼ均衡に保つことができる。このとき、改質気筒40dを2ストロークサイクルで燃焼すると、燃料Fの一部が改質気筒40dで燃焼されない状況となるが、当該未燃燃料は、改質ガスKと共に通常気筒40a、40b、40cで適切に燃焼される。
【0046】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態に係るエンジンシステム100にあっては、単一の多気筒エンジンにおいて、改質気筒40dにて改質された改質ガスKを通常気筒40a、40b、40cへ導く構成例を示した。
当該第2実施形態に係るエンジンシステム200は、
図6に示すように、混合気Mを改質して改質ガスKを生成するための改質気筒40dを有する改質エンジン200aに加えて、改質エンジン200aにて生成された改質ガスKが導かれる通常気筒80a、80b、80c、80dを有する外部出力エンジン200bを備えて構成されている。
【0047】
尚、当該エンジンシステム200は、外部出力エンジン200bの運転状態を検出するセンサ等の測定結果が入力され、その入力信号に基づいて外部出力エンジン200bの運転を制御するハードウェア群とソフトウェア群とから構成されているエンジンコントロールユニット(以下、制御装置50と呼ぶ)を備えている。即ち、当該第2実施形態に係るエンジンシステム200にあっては、改質エンジン200aではなく外部出力エンジン200bの運転状態を積極的に検出するように構成されている。
第2実施形態に係るエンジンシステム200における改質エンジン200aでは、第1実施形態に係るエンジンシステム100における通常気筒40a、40b、40cを、非改質気筒40d、40b、40cとし、通常気筒用給気支管20a、20b、20cを、非改質気筒用給気支管20a、20b、20cとする。
更に、当該第2実施形態に係るエンジンシステム200では、改質気筒40dにて生成された改質ガスKを、改質エンジン200aの給気本管20に戻さない構成、即ち、非改質気筒用給気支管20a、20b、20c、及びそれらが連結される非改質気筒40d、40b、40cには、改質ガスKが導かれない構成とする。
更に、当該第2実施形態に係るエンジンシステム200では、第2燃料供給路11、差圧レギュレータ12、ミキサ14、及び第2燃料流量制御弁13を介して供給される燃料Fは、非改質気筒40d、40b、40cに加え、改質気筒40dへも導く構成とする。尚、上記第1実施形態では、当該第2燃料供給路11、差圧レギュレータ12、ミキサ14、及び第2燃料流量制御弁13が、第2燃料供給部として働くとしたが、当該第2実施形態では、第2燃料供給部は、後述する別の構成にて実現されるものとする。
【0048】
当該第2実施形態に係るエンジンシステム200における改質エンジン200aは、以上の点を除き、上述した第1実施形態に係るエンジンシステム100と実質的に同一の構成をしており、同一の制御を実行する。
以下、上記第1実施形態に係るエンジンシステム200と異なる構成及び制御に重点をおいて説明することとし、同一の構成及び制御については、その詳細な説明を省略することがある。
【0049】
外部出力エンジン200bは、
図6に示すように、給気本管70から通常気筒80a、80b、80c、80dの燃焼室(図示せず)へ給気弁(図示せず)を介して給気した新気を、ピストンの上昇により圧縮した状態で点火プラグにて火花点火して燃焼・膨張させることで、ピストンを押し下げて回転軸(図示せず)から回転動力を出力すると共に、燃焼により発生した排ガスEは、通常気筒80a、80b、80c、80dの燃焼室から排気弁(図示せず)を介して排気路に押し出され、外部へ排出される。
【0050】
給気本管70には、燃焼用空気Aを浄化するエアクリーナ71、燃焼用空気Aに燃料Fを適切な比率(空燃比)で混合するベンチュリー式のミキサ64、開度調整により通常気筒80a、80b、80c、80dへの混合気Mの給気量を調整可能なスロットル弁73が、その上流側から記載の順に設けられている。
即ち、給気本管70において、ミキサ64で燃料Fと燃焼用空気Aとを混合して生成された混合気Mは、スロットル弁73を介して所定の流量に調整され、通常気筒80a、80b、80c、80dの燃焼室へ導入される。
【0051】
ミキサ64に燃料Fを導く第3燃料供給路61には、ミキサ64の上流側の給気本管70における燃焼用空気Aの圧力と第3燃料供給路61における燃料Fの圧力差を一定に保つ差圧レギュレータ62、ミキサ64を介して通常気筒80a、80b、80c、80dの燃焼室へ供給される燃料Fの供給量を調整する第3燃料流量制御弁63が設けられている。
つまり、第3燃料供給路61、ミキサ64、及び第3燃料流量制御弁63が、第2燃料供給部として機能する。
【0052】
外部出力エンジン200bのエンジン本体80の回転軸(図示せず)には、運転状態検出部81として、回転軸(図示せず)の回転数を計測する回転数センサが設けられており、制御装置50は、当該回転数センサにて計測されるエンジン回転数を目標回転数に維持するべく、当該回転数センサの計測結果に基づいてスロットル弁73の開度を制御する。
更に、外部出力エンジン200bのエンジン本体80の回転軸(図示せず)には、運転状態検出部81として、当該回転軸のトルクを計測するトルク計測センサが設けられており、制御装置50は、例えば、回転数センサにて計測されるエンジン回転数と、トルク計測センサにて計測されるトルクに基づいて計算されるエンジン出力が、目標出力となるように、第1燃料流量制御弁15、第3燃料流量制御弁63、通常気筒用スロットル弁23、及びスロットル弁73の開度を制御する。
すべての通常気筒80a、80b、80c、80dには、運転状態検出部81として、筒内圧力を検出する筒内圧力センサが設けられており、制御装置50は、当該筒内圧力センサの計測結果に基づいて、後述する各種制御を実行する。また、制御装置50は、給気温度(外部出力エンジン200bの給気温度、又は改質エンジン200aの給気温度)を計測する給気温度センサ(図示せず)の計測結果を取得可能に構成されており、当該給気温度センサの計測結果に基づいて、後述する各種制御を実行する。
【0053】
給気本管70は、スロットル弁73の下流側において、通常気筒80a、80b、80c、80dへ混合気Mを導く複数の給気支管70a、70b、70c、70dに接続されている。
当該給気本管70でスロットル弁73の下流側で、複数の給気支管70a、70b、70c、70dの上流側には、改質エンジン200aの改質気筒40dにて生成された改質ガスKを通流する改質ガス通流路28が連通接続されている。当該構成により、上述の給気支管70a、70b、70c、70dのすべてに対して、改質ガスKが大凡同一流量で通流することになる。
【0054】
以上の如く構成されたエンジンシステム200にあっては、熱効率を向上させると共に排ガス性状を改善させるべく、以下の制御を実行する。
制御装置50は、第1燃料供給部としての第1燃料流量制御弁15による燃料供給量を調整して改質気筒40dにおける空気過剰率を、改質ガスKを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、第1燃料供給部としての第1燃料流量制御弁15によるすべての改質気筒40d(当該第2実施形態では1気筒)への総燃料供給量に対する第2燃料供給部としての第3燃料流量制御弁63によるすべての通常気筒80a、80b、80c、80d(当該第2実施形態では4気筒)への総燃料供給量の比である燃料比を低下する燃料比低下制御を実行すると共に、改質ガスKが導かれるすべての通常気筒80a、80b、80c、80dの総行程容積(総排気量)を改質気筒40dの総行程容積で除算した行程容積比に基づいて、通常気筒80a、80b、80c、80dのストローク数を改質気筒40dのストローク数で除算した値であるストローク数比を1以上で変動制御するストローク数比制御を実行する。
尚、空気過剰率変動制御、燃料比低下制御、及びストローク数比制御の詳細については、上記第1実施形態に係るエンジンシステム100と同一であるので、ここではその詳細な説明は割愛する。
【0055】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係るエンジンシステム100は、
図7に示すように、エンジン本体40に、都市ガス13A等の燃料Fと燃焼用空気Aとを含む混合気Mの少なくとも一部を部分酸化反応させて燃料Fよりも燃焼速度の速い燃焼促進性ガスを含む改質ガスKへ改質する改質気筒40dを少なくとも1つ備え、当該改質気筒40dとは別に通常気筒40a、40b、40cを備え、改質気筒40dへ導かれる燃料を供給する第1燃料供給部を備え、改質気筒40dにて改質された改質ガスKを、少なくとも通常気筒40a、40b、40cへ導く(当該第3実施形態では通常気筒40a、40b、40cのみへ導く)ものである。
【0056】
以下、
図7に基づいて、第3実施形態に係るエンジンシステム100について説明する。
当該第3実施形態のエンジンシステム100は、ターボ過給式エンジンとして構成されており、少なくとも1つ以上(当該第3実施形態では3つ)の通常気筒40a、40b、40cと、少なくとも1つ以上(当該第3実施形態では1つ)の改質気筒40dとを備えている。更には、エンジンの運転状態を検出するセンサ等の測定結果が入力され、その入力信号に基づいてターボ過給式エンジンの運転を制御するハードウェア群とソフトウェア群とから構成されているエンジンコントロールユニット(以下、制御装置50と呼ぶ)を備えている。
【0057】
この種のエンジンシステム100は、詳細な図示は省略するが、給気本管20から通常気筒40a、40b、40cの燃焼室(図示せず)へ給気弁(図示せず)を介して給気した新気を、ピストンの上昇により圧縮した状態で点火プラグ(図示せず)にて火花点火して燃焼・膨張させることで、ピストンを押し下げて回転軸(図示せず)から回転動力を出力すると共に、燃焼により発生した排ガスEは、通常気筒40a、40b、40cの燃焼室から排気弁(図示せず)を介して排気路27に押し出され、外部へ排出される。
尚、詳細については後述するが、給気本管20から供給される燃焼用空気Aは、改質気筒用給気支管20dを通じて改質気筒40dにも供給され、改質気筒40dでもピストンを押し下げて回転軸から回転動力を出力する。ただし、当該改質気筒40dにて排ガスとして生成される改質ガスKは、外部へ排出されることなく、そのすべてが改質ガス通流路28を介して給気本管20へ戻され、通常気筒40a、40b、40cへ導かれることとなる。
【0058】
給気本管20には、燃焼用空気Aを浄化するエアクリーナ21が設けられている。
給気本管20は、エアクリーナ21の下流側において、通常気筒40a、40b、40cの夫々へ燃焼用空気A2を導く複数の通常気筒用給気支管20a、20b、20cに接続される給気本管20と、改質気筒40dへ燃焼用空気Aを導く改質気筒用給気支管20dに分岐されている。
給気本管20からエアクリーナ21の下流側で分岐する改質気筒用給気支管20dには、燃焼用空気Aを圧縮する過給機30としてのコンプレッサ31、当該コンプレッサ31の昇圧により昇温した燃焼用空気Aを冷却するインタークーラ22、開度調整により改質気筒40dへの混合気Mの給気量を調整可能な改質気筒用スロットル弁25、燃焼用空気Aに燃料Fを適切な比率(空燃比)で混合するベンチュリー式のミキサ16が、その上流側から記載の順に設けられている。
【0059】
過給機30は、通常気筒40a、40b、40cに接続される排気路27に設けられるタービン32に、通常気筒40a、40b、40cから排出される排ガスEを供給し、タービン32に連結される状態で改質気筒用給気支管20dに設けられるコンプレッサ31により、改質気筒40dの燃焼室に給気される混合気Mを圧縮するターボ式の過給機30として構成されている。即ち、当該過給機30は、排気路27を通流する排ガスEの運動エネルギによりタービン32を回転させ、当該タービン32の回転力により改質気筒用給気支管20dを通流する燃焼用空気Aを圧縮して、改質気筒40dの燃焼室へ供給する、所謂、過給を行う。
つまり、当該第3実施形態においては、過給機30は、改質気筒40dへ導かれる燃焼用空気Aのみを過給する。
【0060】
改質気筒40dは、自身の燃焼室において、新気の一部を部分酸化反応させて、燃料F(例えば、メタン)よりも燃焼速度の速い水素等の燃焼促進性ガスを含む改質ガスKを生成するように構成されている。ここで、水素は、メタン及び空気を混合して燃焼する場合、空気過剰率が1より小さい燃料過濃領域に、その発生量のピークがあることが知られている。
そこで、当該第3実施形態にあっては、改質気筒40dの燃料室において燃料過濃状態で混合気を燃焼させるべく、改質気筒40dへ新気を供給する改質気筒用給気支管20dに、ベンチュリー式のミキサ16を介する形態で燃料Fを供給する第1燃料供給路29が接続されており、当該第1燃料供給路29には、燃料Fの流量を制御する第1燃料流量制御弁15が設けられている。第1燃料供給路29の第1燃料流量制御弁15の上流側には、燃料Fの供給圧を給気本管20のコンプレッサ31出口の過給圧まで昇圧するべく、圧縮機(図示せず)等が設けられている。
更に、改質気筒40dには、改質気筒40dにて改質された改質ガスKを通流する改質ガス通流路28が接続されており、当該改質ガス通流路28の下流端が、給気本管20の通常気筒用スロットル弁23の下流側に接続されている。即ち、当該第3実施形態にあっては、改質ガスKは、そのすべてが通常気筒40a、40b、40cに導かれるように構成されている。
制御装置50は、改質気筒40dへの新気の空気過剰率が1より小さくなるように、第1燃料流量制御弁15の開度を制御する。つまり、第1燃料供給路29、ミキサ16、及び第1燃料流量制御弁15が、第1燃料供給部として機能する。
【0061】
エンジン本体40の回転軸(図示せず)には、運転状態検出部41として、回転軸(図示せず)の回転数を計測する回転数センサが設けられている。
更に、エンジン本体40の回転軸(図示せず)には、運転状態検出部41として、当該回転軸のトルクを計測するトルク計測センサが設けられており、制御装置50は、例えば、回転数センサにて計測されるエンジン回転数と、トルク計測センサにて計測されるトルクに基づいて計算されるエンジン出力が、目標出力となるように、第1燃料流量制御弁15、通常気筒用スロットル弁23、並びに改質気筒用スロットル弁25の開度を制御する。
すべての通常気筒40a、40b、40c、及び改質気筒40dには、運転状態検出部41として、筒内圧力を検出する筒内圧力センサ(図示せず)が設けられており、制御装置50は、当該筒内圧力センサの計測結果に基づいて、後述する各種制御を実行する。また、制御装置50は、給気温度を計測する給気温度センサ(図示せず)の計測結果を取得可能に構成されており、当該給気温度センサの計測結果に基づいて、後述する各種制御を実行する。
【0062】
さて、当該実施形態に係るエンジンシステム100は、通常気筒40a、40b、40cと改質気筒40dとを備えたエンジンシステムにおいて、熱効率を向上させると共に排ガス性状を改善させるべく、以下の制御を実行する。
制御装置50は、第1燃料供給部による燃料供給量を調整して改質気筒40dにおける空気過剰率を、改質ガスKを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、通常気筒40a、40b、40cへ燃料として改質ガスKのみを導く改質ガス運転を実行する。即ち、当該第3実施形態においては、第1燃料供給部としての第1燃料流量制御弁15によるすべての改質気筒40d(当該第1実施形態では1気筒)への総燃料供給量に対するすべての通常気筒40a、40b、40c(当該第3実施形態では3気筒)への総燃料供給量の比である燃料比が0.0に維持された状態で、改質ガス運転が実行されることになる。
ただし、起動時にあっては、エンジンの運転を安定させるため、セルモータによるアシストを行うと共に、制御装置50は、改質ガス運転に先立って、改質気筒40dでの出力を一時的に高くする改質気筒高出力運転を実行することが好ましい。
【0063】
尚、空気過剰率変動制御では、燃料としてメタンを主成分とする炭化水素ガスを用いる場合、通常気筒40a、40b、40cと改質気筒40dとの総空気過剰率を1.0以上1.5以下に調整すると共に、改質気筒40dにおける空気過剰率を0.50以上0.90以下(より好ましくは、0.55以上0.80以下)の範囲で変動制御することが好ましい。
これにより、通常気筒40a、40b、40cから排出される排ガスEのNOx濃度を目標値(自主基準として定める目標値で例えば、150ppm)以下に維持すると共にシステム全体の効率の最大化を図ることができる。
【0064】
更に、制御装置50は、改質ガスKが導かれるすべての通常気筒40a、40b、40cの総行程容積(総排気量)を改質気筒40dの総行程容積で除算した行程容積比に基づいて、通常気筒40a、40b、40cのストローク数を改質気筒40dのストローク数で除算した値であるストローク数比を1以上で変動制御するストローク数比制御を実行する。当該ストローク数比制御の詳細については、上記第1実施形態に係るエンジンシステム100と同一であるので、ここではその詳細な説明は割愛する。
【0065】
〔第4実施形態〕
上記第3実施形態に係るエンジンシステム100にあっては、単一の多気筒エンジンにおいて、改質気筒40dにて改質された改質ガスKを通常気筒40a、40b、40cへ導く構成例を示した。
当該第4実施形態に係るエンジンシステム200は、
図8に示すように、混合気Mを改質して改質ガスKを生成するための改質気筒40dを有する改質エンジン200aに加えて、改質エンジン200aにて生成された改質ガスKが導かれる通常気筒80a、80b、80c、80dを有する外部出力エンジン200bを備えて構成されている。
【0066】
尚、当該エンジンシステム200は、外部出力エンジン200bの運転状態を検出するセンサ等の測定結果が入力され、その入力信号に基づいて外部出力エンジン200bの運転を制御するハードウェア群とソフトウェア群とから構成されているエンジンコントロールユニット(以下、制御装置50と呼ぶ)を備えている。即ち、当該第4実施形態に係るエンジンシステム200にあっては、改質エンジン200aではなく外部出力エンジン200bの運転状態を積極的に検出するように構成されている。
第4実施形態に係るエンジンシステム200における改質エンジン200aでは、第3実施形態に係るエンジンシステム100における通常気筒40a、40b、40cを、非改質気筒40d、40b、40cとし、通常気筒用給気支管20a、20b、20cを、非改質気筒用給気支管20a、20b、20cとする。
更に、当該第4実施形態に係るエンジンシステム200では、改質気筒40dにて生成された改質ガスKを、改質エンジン200aの給気本管20に戻さない構成、即ち、非改質気筒用給気支管20a、20b、20c、及びそれらが連結される非改質気筒40d、40b、40cには、改質ガスKが導かれない構成とする。
更に、当該第4実施形態に係るエンジンシステム200では、第2燃料供給部にて供給される燃料Fは、非改質気筒40d、40b,40cに加え、改質気筒40dへも導く構成とする。
更に、当該第4実施形態に係るエンジンシステム200では、第2燃料供給路11、差圧レギュレータ12、ミキサ14、及び第2燃料流量制御弁13を介して供給される燃料Fは、非改質気筒40d、40b、40cに加え、改質気筒40dへも導く構成とする。
当該第4実施形態に係るエンジンシステム200における改質エンジン200aは、以上の点を除き、上述した第3実施形態に係るエンジンシステム100と実質的に同一の構成をしており、同一の制御を実行する。以下、上記第3実施形態に係るエンジンシステム200と異なる構成及び制御に重点をおいて説明することとし、同一の構成及び制御については、その詳細な説明を省略することがある。
【0067】
外部出力エンジン200bは、
図8に示すように、給気本管70から通常気筒80a、80b、80c、80dの燃焼室(図示せず)へ給気弁(図示せず)を介して給気した新気を、ピストンの上昇により圧縮した状態で点火プラグにて火花点火して燃焼・膨張させることで、ピストンを押し下げて回転軸(図示せず)から回転動力を出力すると共に、燃焼により発生した排ガスEは、通常気筒80a、80b、80c、80dの燃焼室から排気弁(図示せず)を介して排気路に押し出され、外部へ排出される。
【0068】
給気本管70には、燃焼用空気Aを浄化するエアクリーナ71が設けられている。
外部出力エンジン200bのエンジン本体80の回転軸(図示せず)には、運転状態検出部81として、回転軸(図示せず)の回転数を計測する回転数センサが設けられており、制御装置50は、当該回転数センサにて計測されるエンジン回転数を目標回転数に維持するべく、当該回転数センサの計測結果に基づいてスロットル弁73の開度を制御する。
更に、外部出力エンジン200bのエンジン本体80の回転軸(図示せず)には、運転状態検出部81として、当該回転軸のトルクを計測するトルク計測センサが設けられており、制御装置50は、例えば、回転数センサにて計測されるエンジン回転数と、トルク計測センサにて計測されるトルクに基づいて計算されるエンジン出力が、目標出力となるように、第1燃料流量制御弁15、通常気筒用スロットル弁23、及びスロットル弁73の開度を制御する。
すべての通常気筒80a、80b、80c、80dには、運転状態検出部81として、筒内圧力を検出する筒内圧力センサが設けられており、制御装置50は、当該筒内圧力センサの計測結果に基づいて、後述する各種制御を実行する。また、制御装置50は、給気温度(外部出力エンジン200bの給気温度、又は改質エンジン200aの給気温度)を計測する給気温度センサ(図示せず)の計測結果を取得可能に構成されており、当該給気温度センサの計測結果に基づいて、後述する各種制御を実行する。
【0069】
給気本管70は、スロットル弁73の下流側において、通常気筒80a、80b、80c、80dへ混合気Mを導く複数の給気支管70a、70b、70c、70dに接続されている。
当該給気本管70でスロットル弁73の下流側で、複数の給気支管70a、70b、70c、70dの上流側には、改質エンジン200aの改質気筒40dにて生成された改質ガスKを通流する改質ガス通流路28が連通接続されている。当該構成により、上述の給気支管70a、70b、70c、70dのすべてに対して、改質ガスKが大凡同一流量で通流することになる。
【0070】
以上の如く構成されたエンジンシステム200にあっては、熱効率を向上させると共に排ガス性状を改善させるべく、以下の制御を実行する。
制御装置50は、第1燃料供給部による燃料供給量を調整して改質気筒40dにおける空気過剰率を、改質ガスKを生成する所定の範囲で変動制御する空気過剰率変動制御を実行している状態で、通常気筒80a、80b、80c、80dへ燃料として改質ガスKのみを導く改質ガス運転を実行する制御装置50を備える。即ち、当該第4実施形態においては、上記第3実施形態にて説明した燃料比が0.0に維持された状態で、改質ガス運転が実行されると共に、改質ガスKが導かれるすべての通常気筒80a、80b、80c、80dの総行程容積(総排気量)を改質気筒40dの総行程容積で除算した行程容積比に基づいて、通常気筒80a、80b、80c、80dのストローク数を改質気筒40dのストローク数で除算した値であるストローク数比を1以上で変動制御するストローク数比制御を実行する。
尚、当該ストローク数比制御の詳細については、上記第1実施形態に係るエンジンシステム100と同一であるので、ここではその詳細な説明は割愛する。
また、上記実施形態において、制御装置50は、改質ガスKが導かれるすべての通常気筒40a、40b、40cの総行程容積を改質気筒40dの総行程容積で除算した行程容積比が大きいほど、ストローク数比制御におけるストローク数比を大きく制御するように構成しても構わない。
図示は省略するが、例えば、通常気筒用給気支管20a、20b、20cの夫々に、開閉弁(図示せず)を備え、当該開閉弁の開閉状態を要求出力等に基づいて切り換えることで、通常気筒40a、40b、40cの総行程容積を切り換える形態で、行程容積比を変更可能な構成において、行程容積比が大きいほど、ストローク数比制御におけるストローク数比を大きく制御しても構わない。
また、通常気筒40a、40b、40cの気筒数は、3より多く構成して上述の開閉弁の開閉制御により実質的な気筒数を制御しても構わない。
尚、通常気筒40a、40b、40c及び改質気筒40dの気筒容積は、同一であっても構わないし、異なっていても本発明の機能を良好に発揮する。
【0071】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態1、3において、空気過剰率変動制御及び燃料比低下制御を実行せず、ストローク数比制御を実行する構成であっても、運転状態によっては、通常気筒と改質気筒との体積の均衡を保つことができ、ポンプ損失を低減できる。
【0072】
(2)上記第1~4実施形態において、改質ガスが導かれるすべての通常気筒の行程容積の和である総行程容積が、すべての改質気筒の行程容積の和である総行程容積より大きい構成であれば、通常気筒の数は、1つ以上であればいくつであっても構わないし、改質気筒の数も、1つ以上であればいくつであっても、本発明の機能を良好に発揮できる。
ただし、第2、4実施形態に係るエンジンシステム200にあっては、改質エンジン200aは、改質ガスKの生成用のエンジンであるので、改質気筒40dの数は、多いほうが好ましい。ただし、改質エンジン200aは、その軸出力を取り出して発電等に用いる構成としても良い。
また、第4実施形態に係るエンジンシステム200にあっては、改質エンジン200aを改質気筒のみの構成としても構わない。当該構成を採用する場合、改質気筒40dへ新気を供給する改質気筒用給気支管20dには、ベンチュリー式のミキサ16、当該ベンチュリー式のミキサ16を介する形態で燃料Fを供給する第1燃料供給路29、当該第1燃料供給路29において燃料Fの流量を制御する第1燃料流量制御弁15の何れも、設ける必要がない。
改質気筒には、第2燃料供給路11、差圧レギュレータ12、ミキサ14、及び第2燃料流量制御弁13が適切に働くことにより、燃料が供給され、改質ガスKが生成されることになる。即ち、第2燃料供給路11、差圧レギュレータ12、ミキサ14、及び第2燃料流量制御弁13が、第1燃料供給部として機能する。
また、当該構成を採用する場合には、エンジン200aからの改質ガスKはすべて外部出力エンジン200bへ導かれるため、過給機30は設けない構成が採用される。
【0073】
(3)上記第3実施形態は、改質気筒40dの排気ポートに接続される改質ガス通流路28は、給気本管20に接続される構成を有すると共に、改質ガスKを、通常気筒40a、40b、40cのみに導く例を示した。
しかしながら、例えば、改質ガス通流路28は、通常気筒40a、40b、40cと改質気筒40dとの双方に新気を供給する通常気筒用給気支管20a、20b、20cの夫々に接続される構成を採用しても構わない。
また、例えば、改質ガス通流路28は、改質気筒40dの排気ポートと、通常気筒40a、40b、40cに新気を供給する通常気筒用給気支管20a、20b、20cの1つ以上に接続される構成を採用しても構わない。
【0074】
(4)上記第1~4実施形態では、エンジンシステム100、200が過給機30を備える例を示したが、別に、当該過給機30を備えない構成であっても、本発明の目的は良好に達成される。
尚、上述の如く、過給機30を設けない構成にあっては、改質気筒用給気支管20dは、過給圧まで昇圧されていないため、第1燃料供給部としてミキサ16に供給される燃料Fの圧力を昇圧する必要がなく、昇圧のための圧縮機等を備えない簡易でコンパクトな構成にすることができる。ちなみに、この場合、ミキサ16から改質気筒用給気支管20dへ供給される燃料Fの圧力は、通常の給気圧力に設定される。
更に、上記第1~4実施形態では、過給機30として、ターボ式のものを備える例を示したが、スーパーチャージャ式のものとしても構わない。
また、上記第1~4実施形態では、過給機30として、単一のコンプレッサ31と単一のタービン32とを備える、所謂、一段過給の例を示したが、別に、二段以上の多段過給としても構わない。
【0075】
(5)上記第2、4実施形態においては、単一の改質エンジン200aと単一の外部出力エンジン200bとを備える構成例を示したが、改質エンジン200aを複数備える構成や、外部出力エンジン200bを複数備える構成を採用することもできる。
【0076】
(6)上記第2、4実施形態において、制御装置50は、単一の制御装置として示しているが、改質エンジン200a用の制御装置と、外部出力エンジン200bの制御装置とを、各別に備えることも可能である。
【0077】
(7)上記第2実施形態においては、改質ガス通流路28が、給気本管70に接続される構成例を示した。しかしながら、当該改質ガス通流路28は、給気支管70a、70b、70c、70dの少なくとも1つ以上に接続される構成、即ち、通常気筒80a、80b、80c、80dの少なくとも1つ以上に改質ガスKが導かれる構成を採用しても構わない。
【0078】
(8)上記第1~4実施形態にあっては、エンジンの回転軸のトルクを直接測定する構成例を示したが、当該構成に替えて、例えば、スロットル開度やブースト圧などから回転軸のトルクを推定するトルク推定手段を備える構成を採用しても構わない。
【0079】
(9)上記第1~4実施形態にあっては、燃料Fは、都市ガス13Aとしたが、本発明の本質的意味からは、ガス燃料に限らずガソリン等の液体燃料であっても構わない。
【0083】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のエンジンシステムは、改質気筒からの改質ガスを通常気筒に導く構成において、通常気筒又は改質気筒の行程容積に基づく燃料供給量や燃焼用空気の供給量の制約を満たしながらも、エンジンシステムの更なる効率向上及びトルク上限の拡大(出力上限の拡大)を図り得るエンジンシステムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
11 :第1燃料供給路
12 :差圧レギュレータ
13 :第1燃料流量制御弁
13A :都市ガス
14 :ミキサ
15 :第2燃料流量制御弁
16 :ミキサ
20 :給気本管
40a、40b、40c:通常気筒
40d :改質気筒
50 :制御装置
80a、80b、80c、80d:通常気筒
100 :エンジンシステム
200 :エンジンシステム
200a :改質エンジン
200b :外部出力エンジン
A、A1 :燃焼用空気
F :燃料
K :改質ガス
M :混合気