(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】油圧テンショナ拡張可能なクリップロック
(51)【国際特許分類】
F16H 7/08 20060101AFI20240216BHJP
【FI】
F16H7/08 B
(21)【出願番号】P 2019126566
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-04-21
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】ポール・フリーマントル
(72)【発明者】
【氏名】セオンド・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ディー・アンドラス
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-251594(JP,A)
【文献】特開2002-005250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンテンショナの拡張可能なクリップを固定するためのクリップロックであって、
前記チェーンテンショナの外面と係合するように構成された第1の面、及び前記第1の面から離隔されている第2の面を有する細長部材を含み、前記第1の面が
油圧テンショナの外面と係合し、前記第2の面が前記拡張可能なクリップと係合しながら、前記拡張可能なクリップと係合し、前記拡張可能なクリップがチェーンテンショナ構成要素の環状溝(groove)と接触して維持され、前記チェーンテンショナ構成要素に対して前記拡張可能なクリップの半径方向外側への拡張及び軸方向の移動を防止するように構成される、クリップロック。
【請求項2】
前記チェーンテンショナ構成要素は、ハウジングに形成されたピストンボア内に受容されたピストンである、請求項1に記載のクリップロック。
【請求項3】
前記第2の面
は、前記クリップの外面に一致して前記ピストンに対して軸方向の移動を防止する溝を含む、請求項2に記載のクリップロック。
【請求項4】
前記細長部材は、実質的に円形の断面形状を有する、請求項1に記載のクリップロック。
【請求項5】
前記第1の面及び前記第2の面は、平面である、請求項1に記載のクリップロック。
【請求項6】
前記細長部材に連結されたハンドルをさらに含む、請求項1に記載のクリップロック。
【請求項8】
前記チェーンテンショナ構成要素は、ハウジングに形成されたピストンボア内に受容されるピストンである、請求項7に記載のクリップロック。
【請求項9】
前記第2の面
は、前記クリップの外面に一致して前記ピストンに対して軸方向の移動を防止する溝を含む、請求項8に記載のクリップロック。
【請求項10】
前記細長部材は、実質的に円形の断面形状を有する、請求項7に記載のクリップロック。
【請求項11】
前記第1の面及び前記第2の面は、平面である、請求項7に記載のクリップロック。
【請求項12】
前記細長部材は、前記拡張可能なクリップの第1の脚部と係合する、請求項7に記載のクリップロック。
【請求項13】
前記細長部材の断面積は、前記位置決め部分と連結される点から徐々に減少する、請求項7に記載のクリップロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はチェーンテンショナアセンブリ(chain tensioner assembly)に関し、より詳細には、チェーンテンショナアセンブリが車両に使用するために取り付けられていないときにチェーンテンショナアセンブリのピストンの軸方向の移動を防止することに関する。
【背景技術】
【0002】
チェーンは、ギア及び/またはスプロケット(sprocket)を使用してシャフト間の回転力を変換するのに使用され得る。例えば、車両の内燃機関(ICE)は、最終的には車両の1つ以上の車輪を駆動させる回転力を生成するのに使用されるクランクシャフトを含み得る。クランクシャフトは、空気-燃料混合物がICEの燃焼室に流入させることができるようにし、その後に点火されてエンジンのピストンを駆動させることができる、エンジンピストン作動時に使用される一連のバルブを作動させるカムシャフトと同期化され得る。クランクシャフト及びカムシャフトは、スプロケットと各々のシャフトを連結するタイミングチェーンまたはタイミングベルトを使用してタイミングを合わせることができる。しかしながら、タイミングチェーンは、使用するに応じて拡張または伸張され得る。タイミングチェーンが摩耗を通して長くなるにつれて、チェーンが1つ以上のスプロケットから固定解除される可能性があり、これはカムシャフトがクランクシャフトに対して動くことを可能にする。チェーンテンショナは、チェーンに力を加えて張力を与えるかまたはチェーンが摩耗されるにつれてチェーンが弛んでチェーンがスプロケット(複数)から分離されることを防止するために使用され得る。内燃機関(ICE)に取り付けられたチェーンテンショナは、受け取られた加圧流体に応答してチェーンテンショナから離れるようにチェーンに向かって移動するピストンを使用してチェーンに張力を与えることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一具現例において、チェーンテンショナの拡張可能なクリップ(expandable clip)を固定するためのクリップロックは、チェーンテンショナの外面と係合するように構成された第1の面、及び上記第1の面から離隔されている第2の面を有する細長部材(elongated member)を含み、上記第1の面が油圧テンショナの外面と係合し、上記第2の面が拡張可能なクリップと係合しながら、拡張可能なクリップと係合し、拡張可能なクリップがチェーンテンショナ構成要素の環状溝(groove)と接触して維持されてチェーンテンショナ構成要素に対して拡張可能なクリップの半径方向外側への拡張及び軸方向の移動を防止するように構成される。
【0004】
他の具現例において、チェーンテンショナの拡張可能なクリップを固定するためのクリップロックは、チェーンテンショナ構成要素と係合するように構成された受容面を有する位置決め部分(positioning portion);及び位置決め部分に取り付けられ、チェーンテンショナの外面と係合するように構成された第1の面、及び上記第1の面から離隔されている第2の面を有する細長部材を含み、上記第1の面が油圧テンショナの外面と係合し、上記第2の面が拡張可能なクリップと係合しながら、拡張可能なクリップと係合し、拡張可能なクリップがピストンの環状溝と接触して維持されてピストンに対して拡張可能なクリップの半径方向外側への拡張及び軸方向の移動を防止するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】チェーンテンショニングシステムの一具現例を示す側面図である。
【
図2】クリップロックを受容するチェーンテンショニングアセンブリの一部の一具現例を示す断面斜視図である。
【
図3】アセンブリと係合されたクリップロックを含むチェーンテンショニングアセンブリの一具現例を示す斜視図である。
【
図4】アセンブリと係合解除されたクリップロックを含むチェーンテンショニングアセンブリの一具現例を示す斜視図である。
【
図5】クリップロックを含むチェーンテンショニングアセンブリの一具現例の一部を示す斜視図である。
【
図6】クリップロックの他の具現例を含むチェーンテンショニングアセンブリの一具現例の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
チェーンテンショナとともに使用されるクリップロックは、内燃機関(ICE)に取り付けられる前に、テンショナのピストンに対して拡張可能なクリップの軸方向及び半径方向の移動を防止する。クリップロックは、クリップロックがチェーンテンショナの外面と当接する同時に拡張可能なクリップと当接して上記クリップがピストンから半径方向外側に拡張されることを防止するようにチェーンテンショナに対して取り外し可能に位置されるサイズであり得る。クリップロックの形状及びサイズは、クリップロックがクリップとチェーンテンショナの外面の少なくとも一部との両方に当接するときに、ピストンに対してクリップの半径方向外側への拡張が防止されるように寸法が設定され得る。拡張可能なクリップの半径方向の拡張を防止すると、ピストンに対するクリップの軸方向の移動も防止することができる。ピストンは、ピストンの長さに沿って軸方向に離隔され、その周りに円周方向に延びる複数の溝を含み得る。拡張可能なクリップは、これらの溝のうちのいずれかに収まり、ピストンがチェーンに係合してチェーンテンショナから離れるにつれて、半径方向外側に拡張してピストンに沿って軸方向に移動することを可能にする。チェーンの長さが増加することに応じてピストンがチェーンテンショナからさらに離れるにつれて、ピストンは、ピストン内の溝のうちの1つと係合し、クリップ移動領域で肩部と当接する拡張可能なクリップによってテンショナにより近接するように移動することが機械的に防止され得る。
【0007】
チェーンテンショナをICEとともに取り付ける前に、ピストンは、ピストンがテンショナに向かって移動し、チェーンテンショナがICEにしっかりと取り付けられた後まで、ピストンがその構成を保持するように収縮された位置に位置される。クリップロックは、拡張可能なクリップとクリップがピストンから半径方向外側へ拡張することを可能にするハウジングとの間に存在するクリアランススペース(clearance space)を占める弾性材料を含む細長部材を含み得る。このような拡張は、クリップがピストンに対して軸方向に摺動することを可能にしてピストンがチェーンテンショナから離れることを可能にする。
【0008】
図1を参照すると、クランクシャフト10、クランクシャフトスプロケット12、カムシャフト20、カムシャフトスプロケット22、タイミングチェーン30、テンショニングアーム40、及びカムシャフトチェーンテンショナ100を含むチェーンテンショニングシステム1が示されている。示されたように、タイミングチェーン30は、クランクシャフト10とカムシャフト20とのタイミングを同期化させるクランクシャフトスプロケット12及びカムシャフトスプロケット22を連結する。多くの実施形態において、カムシャフトチェーンテンショナ100は、油圧作動式のカムシャフトチェーンテンショナであり得る。
【0009】
クランクシャフト10は、複数のピストンに順番に連結される複数のコネックティングロッドに連結され得る。各々のピストンは、シリンダーヘッド内で摺動し、空気-燃料混合物が供給されて燃焼される燃焼室と連通することができる。燃焼は、シリンダー内でピストンを軸方向に力を付与することによってクランクシャフト10を回転させる。クランクシャフトスプロケット12は、クランクシャフト10に連結され、したがって、クランクシャフト10とともに回転する。クランクシャフト10からの回転力は、クランクシャフトスプロケット12、カムシャフトスプロケット22、及び上記クランクシャフトスプロケット12と上記カムシャフトスプロケット22とを回転可能に連結するタイミングチェーン30を使用してカムシャフト20を回転させるために使用され得る。
【0010】
カムシャフト20は、カムシャフトが回転するにつれて複数のバルブを開閉することができる。カムシャフト20を回転させるクランクシャフト10からの回転力は、空気-燃料混合物をエンジンの燃焼室内に導入することを可能にする流入口を開閉するだけでなく、燃焼後に排気ガスを排出することを可能にする排出口を開閉する複数のバルブを作動させるのに使用され得る線形駆動力(linear force)に変換され得る。
【0011】
タイミングチェーン30は、カムシャフト20に対してクランクシャフト10の回転を同期化させるのに使用され得るチェーンである。タイミングチェーン30は、経時的に摩耗及び/または伸張されることができ、ピストンのようなチェーンテンショナ構成要素は、摩耗によるチェーンの弛み(slack)を減少させる方式で(直接的にまたは間接的に)チェーン30と係合することができる。タイミングチェーン30は、スプロケット12または22のようなスプロケット上の1つ以上の歯とそれぞれ係合する複数のチェーンリンクを含む。
【0012】
図示の実施形態におけるテンショニングアーム40は、アーム40がタイミングチェーン30に当接する境界面に沿って湾曲される細長部材として示されている。テンショニングアーム40は、タイミングチェーン30での弛みの量を減少させるために、タイミングチェーン30に向かって移動され得る。テンショニングアーム40は、テンショニングアーム40をタイミングチェーン30に向かって移動させるのに使用され得るテンショニングピストン110(
図2に示す)を含むカムシャフトチェーンテンショナ100によって移動される。テンショニングアーム40は、
図1に示されたように、単一の枢動点(pivot point)42を含むことができ、テンショニングアーム-チェーン界面は様々な方式で湾曲及び/または形状化され得る。
【0013】
図2を参照すると、内部構成要素が例示され得るように切り取られたハウジング102の一部を有した内燃機関(ICE)(
図1に示されたものなど)に取り付けられることができるチェーンテンショニングアセンブリ100の断面斜視図が示されている。カムシャフトチェーンテンショナ100は、ハウジング102、ピストンボア120内に少なくとも部分的に保持されるピストン110、ばね130、流体チャネル140、及び拡張可能なクリップ150を含む。ハウジング102は、ピストン110を実質的に囲むことができ、拡張可能なクリップ150の突出端部がハウジング102及びピストンボア110に対して移動することを可能にする開口またはキャビティを含み得る。上述したように、カムシャフトチェーンテンショナ100は、ピストン110を介してテンショニングアーム40に力を印加することによってチェーン30の弛みの量を減少させるのに使用され得る。ピストン110は、ピストンボア120内に少なくとも部分的に保持され、ばね130は、テンショニングアーム40に向かう方向にピストン110上に力を印加してテンショニングアーム40が実際にタイミングチェーン30に当接するようになる。したがって、チェーン長さが増加するタイミングチェーンの摩耗を通してタイミングチェーン30内に弛みが導入されるとき、ピストン110がばね130によってテンショニングアーム40内に押し込まれることによって弛みが減少することができる。
【0014】
ばね130は、ピストンボア120の底部122に向かって位置され、ピストンボア120の底部に当接する第1の端部を含み得る。ばね130の第2の端部は、ピストンヘッド114の下側部のようなピストン110の端部、または他の構成要素と当接することによってピストン110がピストンボア120から外方へテンショニングアーム40に向かって押し出され得る。一実施形態において、ばね130は、低テンションばね(low-tension spring)であることができ、金属合金または同様の弾性材料から構成され得る。
【0015】
流体チャネル140は、オイルまたは他の油圧流体のような流体を、ピストンボア120の底部または底部近くに位置された流体チャンバ142に伝達するのに使用される経路を含み得る。また、流体保持構成要素は、ピストンボア120の底部とピストン110の本体との間に位置され得るので、流体チャンバ142は、ピストンボア120の底部及びピストン保持構成要素によって定義される。一実施形態において、流体保持構成要素144は、ピストンヘッド114の下部側のようなピストン110の一部であることができ、他の実施形態においては、流体保持構成要素144がばね130とピストン110との間に位置され得る。流体保持構成要素は、流体チャンバ142内に流体チャネル140から受容された流体を保持する役割をする。ピストン110がピストンボア120から外方へ延びるにつれて、流体チャンバ142の体積が増加してより多くの流体が流体チャネル140を通って流体チャンバ142に伝達される。また、いくつかの実施形態において、流体チャネル140は、ピストンが延びるときに流体が流体チャンバ142内に伝達することを可能にし、流体チャネル140を通って再び連通するのが防止されることによってピストンの収縮を防止するチェックバルブを含み得る。
【0016】
ピストン110は、複数の溝112及び1つのピストンヘッド114を含むように示されている。ピストンヘッド114は、ピストン-テンショニングアームインターフェースとして作用し、当接(abutment)及び/または機械的取り付けを介した方法のような様々な異なる方式でテンショニングアーム40に結合され得る。ピストン110は、ピストン110の外周面に溝112を含み、少なくとも1つの実施形態において、ピストン110は、ピストンの上部付近またはピストンの底部付近に位置され得る、例えば、ピストンボア120の開口123またはピストンボア120の底部122付近にまたはそれに向かってそれぞれ位置され得る単一の溝112を含み得る。ピストン110の溝112は、拡張可能なクリップ150の断面直径にほぼ対応する軸方向長さに延びるピストンの少径部分から形成され得る。溝112は、ピストン110の直径または円周が変化するように半径方向内側または半径方向外側に延びる表面を含むので、以下で詳細に説明されるように、拡張可能なクリップ150は、ピストン110の延長を許容することはできるがピストン110の収縮は許容しない。溝112は、様々な異なる方式に形成されることができ、一実施形態では、ピストンの外周面が傾斜している角度付き壁(angled wall)を含み得る。他の実施形態において、溝112は、円形または楕円形の断面のような湾曲した断面を含み得る拡張可能なクリップ150と係合するように形状化された滑らかな湾曲した湾入部(indentation)で形成され得る。また、多くの実施形態において、溝112は、ピストン110の外周面116に沿って拡張可能なクリップのラチェッティング作動(ratcheting operation)を容易にする非対称壁を含み得る。これらの非対称壁は、ピストン110の軸方向に対して異なる角度で位置され得る。
【0017】
ピストンボア120は、ピストン110を全体に収縮させるのに適した内径を含み得る。内径は、溝112を含むピストン110がピストンボア120内で軸方向に摺動することができるように、溝112の上部肩部でピストン110の直径に対応することができる。さらに、ピストンボア120はまた、拡張可能なクリップ150がピストン110に対して軸方向に移動することを可能にするクリップ移動領域124を含むこともできる。
【0018】
拡張可能なクリップ150は、ピストン110の外周面116と係合し、クリップ移動領域124内で軸方向に位置される。拡張可能なクリップ150は、金属または他の同様の弾性材料だけでなく、クリップ150が拡張直径に拡張され、静止直径(resting diameter)に戻ることができるように拡張可能なクリップ150の弾性拡張を許容する任意の適切な材料から構成され得る。静止直径は、クリップ150がピストン110と係合する領域で、例えば、溝112内でピストン110の外周面116の直径に対応することができる。このような方式により、拡張可能なクリップ150は、外周面116の周りに嵌合されるように構成されることができ、また溝112内に嵌合されるように設計されることもできる。拡張可能なクリップ150は、クリップ150の一端部に第1の脚部152及びクリップの他の端部に第2の脚部154を含み得る。拡張可能なクリップ150が半径方向外側に拡張するにつれて、第1の脚部152は、第2の脚部154に対して移動する。第2の脚部154に対する第1の脚部152の移動を制限して、拡張可能なクリップ150の半径方向の拡張を防止することができる。
【0019】
クリップ移動領域124は、軸pに沿ったクリップ150の軸方向移動が可能になるようにピストンボア120の他の軸方向部分の内径よりも大きい内径を含むピストンボア120の軸方向断面によって定義されるピストンボア120内のキャビティである。また、クリップ移動領域124は、下部肩部126及び上部肩部128を含み得る。上部肩部128は、ピストンボア120の軸方向軸と直交する表面を含むことができ、したがって、ピストン110がピストンボア120から外側に拡張されるとき、拡張可能なクリップ150は上部肩部128によってクリップ移動領域124内に保持される。ピストン110が延びるとき、拡張可能なクリップ150は第1の溝112によって押し込まれて上部肩部128に当接し、十分な軸方向の力が印加されるとき、拡張可能なクリップ150は拡張された直径まで拡張されることによってクリップ150が溝112及びピストン110に対して軸方向に移動することを可能にする。溝112に対して軸方向に移動した後、拡張可能なクリップ150は、第1の溝に隣接し、それから軸方向に離隔された他の溝内に位置されることができ、その静止直径に戻り得る。
【0020】
クリップ移動領域124の下部肩部126は、拡張可能なクリップ150が拡張された直径まで拡張することを可能にせず、したがって、拡張可能なクリップ150が溝112に対して軸方向に移動することを防止するだけでなく、ピストンボア120内でのピストン110の収縮を防止する傾斜するか角度付き壁を含む。ピストン110がタイミングチェーン30からピストンボア120内に押し込まれるとき、拡張可能なクリップ150は、下部肩部126の傾斜するがまたは角度付き壁と当接することによって拡張可能なクリップ150が傾斜した壁とピストン110の外周面116と間で圧縮され得る。拡張可能なクリップ150の圧縮は、ピストン110がピストンボア120内でさらに収縮されることができないように拡張可能なクリップ150の拡張を制限する。
【0021】
ハウジング102は、クリアランススペース115がピストン110に隣接したピストンボア120内に延びるようにクリップ移動領域124内に位置されたクリアランススペース115を含む。クリアランススペース115は、クリップロック300(
図3に示す)を摺動可能に受容し、クリップロック300の一面がチェーンテンショナ100の外面に当接し、クリップロック300の他面が拡張可能なクリップ150の外面に当接して係合される寸法を有する。クリアランススペース115は、クリップロックが上記ピストン110に対して軸方向に移動し、拡張可能なクリップ150から離れるように移動することを防止する第1の肩部117及び第2の肩部119を含む。いくつかの具現例において、第1の肩部117及び第2の肩部119は、ピストンの移動軸pに沿って測定したとき、第1の肩部117と第2の肩部119との間の距離がクリップ移動領域124の長さと同じになるように、クリップ移動領域124の各々の端部に位置される。クリップロック300がクリアランススペース115に挿入されるとき、ロック300は、クリップ移動領域124内でのクリップ150の軸方向位置に関係なく、拡張可能なクリップ150がピストン110から半径方向外側に拡張されることを防止することができる。クリアランススペース115は、クリアランススペース115がクリップロック300を受容し、クリップロック300の外面がスペース115の内側方向に対向する表面に当接する方式でクリップロック300の断面形状にぴったりと一致する断面形状を有することができる。ハウジング102は、鋳造工程の一部として生成される金属であり、クリアランススペース115は、ハウジング102を鋳造する金属の一部として生成されることが可能である。または他の具現例において、クリアランススペース115は、金属でハウジング102を形成させた後、例えば、1つ以上の様々な異なる金属切断技術を用いて予め形成されたハウジング102を切断することによって形成させることができる。
【0022】
図3~
図5にターニングして、チェーンテンショニングアセンブリ100は、ハウジング102及びクリアランススペース115内に位置された拡張可能なクリップ150(
図3及び
図5)と係合されるクリップロック300の具現例けでなく、クリアランススペース115から取り外され、ハウジング102(
図4)から係合解除されたクリップロック300とともに示される。このような具現例において、クリップロック300は、第1の面304及び第2の面306を有する細長部材302を含む。クリップロック300がクリアランススペース115内に挿入されるとき、第1の面304はハウジング102と当接し、第2の面306は拡張可能なクリップ150と当接して係合される。このような具現例において、クリップロック300の第1の面304及び第2の面306は平面である。しかしながら、クリップロック300の第1の面及び第2の面は、細長部材302の断面形状に応じて、様々な形状のうちのいずれか1つであり得ることを分かるべきである。例えば、細長部材が細長部材に沿って挿入軸xに対して垂直に測定したときに円形断面を有する場合、第1及び第2の面は平面ではなく、むしろ、それらのそれぞれは、細長部材がハウジング102または拡張可能なクリップ150にそれぞれ接触するラインとして存在する。細長部材は、様々な異なる断面形状のうちのいずれか1つを有することができる。他の例において、細長部材は、細長部材の第1の面及び/または第2の面が挿入軸xに対して0ではない角度で接合されるように三角形の断面形状を有することができる。第1の面及び/または第2の面の接合部は、拡張可能なクリップ150が環状溝112の一部内に向けられるようにピストン110に向かって半径方向内側に力を向けることができる。いくつかの具現例において、第2の面306は、拡張可能なクリップ150の外面にぴったりと一致してピストン110に対して軸方向の移動をさらに防止する溝を含み得る。
【0023】
ハンドル308は、細長部材302の端部に取り付けられて、チェーンテンショニングアセンブリ100に対するクリップロック300の挿入及び取り外しを容易にすることができる。ハンドル308は、クリップロック300が取り付けられるときに挿入軸xに沿って測定したときにチェーンテンショニングアセンブリ100の厚さを最小にする方式で形状化され得る。図に示されたハンドル308は、熔接のような機械的取り付けによって細長部材302の端部としっかりと結合される平面要素である。一具現例において、細長部材302及びハンドル308は、プラスチック射出成形工程を通して生成され得るような単一構造体として形成され得る。ハンドル308は、クリップロック300が取り付けられたときに、ハウジング302に近接または接して横わたることができる。このような配置は、アセンブリ100が組み立てられる位置からアセンブリ100が車両に取り付けられる位置に積み荷中に使用されるチェーンテンショニングアセンブリ100を囲む包装のサイズを減少させることができる。
【0024】
第1の面304がハウジング102と係合し、第2の面306が拡張可能なクリップ150と係合するようにクリップロック300がハウジング102内に挿入されながら、クリップ150は、ピストン110が溝112から離れるように半径方向外側に拡張することを防止する。拡張可能なクリップ150がピストン110に形成された溝と係合されながら、ピストン110は軸pに沿って移動することが禁止される。クリップロック300は、積み荷中及びICE上に取り付けられる前にチェーンテンショナ100と係合されたまま維持することができる。代替的に、クリップロック300は、タイミングチェーンの取り外し及び交換中にICEをサービスするのに使用され得る。チェーンテンショナ100がICE上に取り付けられた後、クリップロック300は、テンショナ100から取り外されて、拡張可能なクリップ150がピストン110に対して半径方向外側に拡張され得る。クリップ150がピストン100に対して軸方向に摺動するが、まだクリップ移動領域124内に拘束されたままで維持されながら、拡張可能なクリップ150の半径方向拡張は、ピストン100をチェーンテンショナ100からチェーンに向かって離れるようにする。
【0025】
クリップロック400の他の実施形態が
図6に示されている。クリップロック400は、細長部材402及び細長部材402の端部に取り付けられる位置決め部分404を含む。位置決め部分404は、拡張可能なクリップ150に対して軸方向に離隔された位置でピストン110と係合する受容面406を含む。細長部材402は、位置決め部分404から離れて延びて、チェーンテンショニングアセンブリ100及び第1の脚部152または第2の脚部154のハウジング102と係合する。細長部材402の断面積は、部材402が部材402の先端部まで延びる位置決め部分404と連結される点から徐々に減少することができる。位置決め部分404に対する細長部材402の配向は、ハウジング102と第1の脚部152/第2の脚部154との間に細長部材402を正確に位置決めするとともに、細長部材402をその位置で保持するように構成され得る。細長部材402の減少する断面積は、位置決め部分404とともに楔として作用して、チェーンテンショニングアセンブリに対してクリップロック400を保持することができる。
【0026】
以上が本発明の一つ以上の実施形態の説明であることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に開示された特定の実施形態(複数)に限定されず、むしろ以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。さらに、上記の説明に含まれる記述は、特定の実施形態に関するものであり、用語又は句が上記に明示的に定義される場合を除いては、本発明の範囲又は特許請求の範囲で使用される用語の定義を制限するものとして解釈されるものではない。様々な他の実施形態及び開示された実施形態(複数)に対する様々な変更及び修正は、当業者には明らかになるであろう。このような他の実施形態、変更、及び修正はすべて、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されているように、用語「e.g.,(例えば)」、「for example(例えば)」、「for instance(例えば)」、「such as(など)」、「like(のような)」及び「comprising(備える)」、「having(有する)」、「including(含む)」及びそれらの他の動詞形式は、一つ以上の構成部品又は他の品目のリストと併せて使用されるとき、それぞれがオープンエンドと解釈されるべきであり、そのことは他の追加の構成部品又は品目を除外するものと見なされないことを意味する。他の用語は、異なる解釈を必要とする文脈で使用されない限り、それらの最も広い合理的な意味を用いて解釈されるべきである。