(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】バッテリ用配線部材及びバッテリ装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/519 20210101AFI20240216BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20240216BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20240216BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
H01M50/519
H01M50/569
H01M50/284
H01B7/08
(21)【出願番号】P 2019135363
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】冨田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 司
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-073486(JP,U)
【文献】特開2012-226969(JP,A)
【文献】実公昭58-021305(JP,Y2)
【文献】特表2019-511810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/20
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ装置に用いられるバッテリ用配線部材であって、
可撓性を有する配線基板と、
前記配線基板に固定して設けられる複数の第一係着部を備え
、
複数の前記第一係着部は、前記配線基板の表面に設けられている一対の前記第一係着部である表面側第一係着部と、前記配線基板の裏面に設けられている一対の前記第一係着部である裏面側第一係着部と、を含み、
一対の前記表面側第一係着部は、前記配線基板の長さ方向と交差している第一直線に沿って折り曲げられた状態で互いに係着可能であり、
一対の前記裏面側第一係着部は、前記配線基板の長さ方向と交差している第二直線に沿って折り曲げられた状態で互いに係着可能であり、
平面視において、一対の前記表面側第一係着部のうちの一方の前記表面側第一係着部は、一対の前記裏面側第一係着部のうちの一方の前記裏面側第一係着部と重なる位置に配置されている一方で、一対の前記表面側第一係着部のうちの他方の前記表面側第一係着部は、一対の前記裏面側第一係着部の各々を避けた位置に配置されているバッテリ用配線部材。
【請求項2】
前記第一直線は、前記長さ方向に対して斜めに交差しており、
前記第二直線は、前記長さ方向に対して直交している請求項1に記載のバッテリ用配線部材。
【請求項3】
平面視において、一対の前記裏面側第一係着部のうち、一方の前記裏面側第一係着部は三角形形状となっており、他方の前記裏面側第一係着部は矩形形状となっている請求項1又は2に記載のバッテリ用配線部材。
【請求項4】
複数の前記第一係着部の各々は、第一係着面を備え、
一対の前記表面側第一係着部の各々の前記第一係着面は、互いに着脱自在に係着可能であり、
一対の前記裏面側第一係着部の各々の前記第一係着面は、互いに着脱自在に係着可能であり、
前記第一係着面は、環状部分を有するループ部材、当該ループ部材の前記環状部分に係り合うフック部材の少なくとも一方を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のバッテリ用配線部材。
【請求項5】
前記第一係着面は前記ループ部材と前記フック部材の両方を備える、請求項4に記載のバッテリ用配線部材。
【請求項6】
一対の前記表面側第一係着部又は一対の前記裏面側第一係着部同士の間に間隙があって、
前記第一直線又は前記第二直線は、前記間隙を通る直線である、請求項1から5のいずれか一項に記載のバッテリ用配線部材。
【請求項7】
一対の前記表面側第一係着部又は一対の前記裏面側第一係着部が互いに一体に形成されており、
前記第一直線又は前記第二直線は、前記表面側第一係着部又は前記裏面側第一係着部の前記第一係着面を通る直線である、請求項
4又は5のいずれか一項に記載のバッテリ用配線部材。
【請求項8】
前記第一係着部は、前記配線基板よりも厚い緩衝材を挟んで前記配線基板に固定されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のバッテリ用配線部材。
【請求項9】
前記第一係着部
の前記第一係着面と係着可能な第二係着面と、当該第二係着面に対する裏面にあって粘着性を有する粘着面と、を備える第二係着部をさらに備える、請求項
4、5又は7のいずれか一項に記載のバッテリ用配線部材。
【請求項10】
ケース体と、
前記ケース体の内部に収容された回路基板と、
前記回路基板に形成された回路と電気的に接続する配線が形成された可撓性を有する配線基板と、
前記配線基板に固定して設けられる複数の第一係着部と、
前記ケース体に固定して設けられる第二係着部と、を備え
、
複数の前記第一係着部は、前記配線基板の表面に設けられている一対の前記第一係着部である表面側第一係着部と、前記配線基板の裏面に設けられている一対の前記第一係着部である裏面側第一係着部と、を含み、
一対の前記表面側第一係着部は、前記配線基板の長さ方向と交差している第一直線に沿って折り曲げられた状態で互いに係着可能であり、
一対の前記裏面側第一係着部は、前記配線基板の長さ方向と交差している第二直線に沿って折り曲げられた状態で互いに係着可能であり、
平面視において、一対の前記表面側第一係着部のうちの一方の前記表面側第一係着部は、一対の前記裏面側第一係着部のうちの一方の前記裏面側第一係着部と重なる位置に配置されている一方で、一対の前記表面側第一係着部のうちの他方の前記表面側第一係着部は、一対の前記裏面側第一係着部の各々を避けた位置に配置されているバッテリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ用配線部材及びバッテリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に使用されるバッテリ装置(以下、単に「バッテリ装置」とも記す)には、走行やエンジン等により広範囲の周波数の振動が加わる。バッテリに加わった振動は、バッテリに組み込まれている基板や配線に電気的、機械的に接続される配線にも伝播する。配線に加わる振動は、基板や配線に応力を与えて損傷させる一因になる。このため、バッテリの配線を固定して保持することがなされている。また、車両用のバッテリ装置では、比較的狭いエンジンルーム内で配線を引き回す必要がある。このため、配線の引き回しに不要な部分をまとめて保持し、配線を最小長さにして固定することがなされている。配線を好適な状態に引き回して固定する持具は、例えば、特許文献1に記載されている。また、ヒューズが形成された電力ケーブルをラジエターサポート部材に粘着テープ、あるいは両面テープを使って固定することが特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の折り曲げ保持具は、基板の表面側と裏面側の保持片が、両者の間にフラットケーブルを挟持する挟持板として設けられており、間にフラットケーブルを挿入し得る隙間を開けて片持支持されている。このような構成により、折り曲げ保持具は、フラットケーブルを折り曲げた状態で保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-109497号公報
【文献】特開2018-86878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリに接続される配線としては、上記の特許文献1に記載のフラットケーブルばかりでなく、例えばフレキシブルプリント回路(Flexible printed circuits:FPC)基板がある。しかしながら、FPC基板は、バッテリ装置のケース体の内部に配置される部分(以下、本明細書では「回路基板部」と記す)と、ケース体から引き出される部分(以下、本明細書では「配線基板部」と記す)とを有している。このような配線基板部は、表裏面が平滑な薄板であるから、特許文献1に記載のように隙間を空けた基板により挟持して支持することは困難である。
【0006】
また、バッテリ装置は、基板が組みつけられた状態で出荷され、出荷先で車両等の機器に取付けられる。バッテリ装置の出荷時には配線をコンパクトにまとめておいて、機器への取付け時にはレイアウトに応じて配線を固定することが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の折り曲げ保持具は、ケーブルを平面視においてL字形状に固定するものであるから、ケーブルを有する装置を機器において配置する際に使用されるものであり、出荷時にケーブルをまとめることを目的にしたものではない。このため、特許文献1に記載の折り曲げ保持具を使って機器に取付けられた配線を固定すると、出荷時には他の保持具が必要になる。
また、粘着テープや両面テープは、いったん使用された後に剥離すると粘着力が低下する。このため、出荷時に粘着テープ等を使って配線を固定すると、バッテリ装置を配置する際には不要になった粘着テープ等を回収、廃棄する手間を要することになる。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、バッテリ装置の出荷時及び組付け時の両方の使用に好適なバッテリ用配線部材、このバッテリ用配線部材を備えたバッテリ装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバッテリ用配線部材は、バッテリ装置に用いられるバッテリ用配線部材であって、可撓性を有する配線基板と、前記配線基板に固定して設けられる複数の第一係着部を備え、前記第一係着部の少なくとも一部同士は、他方と係着する第一係着面を備えて互いに着脱自在に構成されている。
【0008】
本発明のバッテリ装置は、ケース体と、前記ケース体の内部に収容された回路基板と、前記回路基板に形成された回路と電気的に接続する配線が形成された可撓性を有する配線基板と、前記配線基板に固定して設けられる複数の第一係着部と、前記ケース体に固定して設けられる第二係着部と、を備え、前記第一係着部の少なくとも一部同士が着脱自在に係着可能であり、前記第一係着部の他の一部が前記第二係着部と着脱自在に係着可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、バッテリ装置の出荷時及び組付け時の両方の使用に好適なバッテリ用配線部材、このバッテリ用配線部材を備えたバッテリ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態のバッテリ装置を説明するための斜視図である。
【
図2】(a)は係着部を説明するための図である。(b)は他の係着部を説明するための図である。
【
図3】(a)、(b)、(c)、(d)は
図1に示すバッテリ用配線部材の係着の手順を説明する図である。
【
図4】(a)、(b)、(c)は、使用の態様に応じて第一係着部が係着する他方の係着部が変更される例を示す図である。
【
図5】(a)は配線基板の表面に設けられた第一係着部を示す図、(b)は裏面に設けられた第一係着部を示す図である。
【
図6】(a)、(b)、(c)は、
図5(a)、
図5(b)に示す配線基板を折り曲げる手順を説明するための図である。
【
図7】(a)、(b)は、第二実施形態のバッテリ用配線部材を説明するための図である。
【
図8】(a)、(b)は、第二実施形態の第二係着部と係着する第一係着部を説明するための図である。
【
図9】(a)、(b)は、第三実施形態のバッテリ配線用基板を説明するための図である。
【
図10】(a)、(b)は、係着部のフック部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第一実施形態から第三実施形態を説明する。なお、第一実施形態から第三実施形態では、同様の部材には同様の符号を付して示し、その図示及び説明を一部略すものとする。また、図面は、本発明の構成を例示するものであり、いずれも第一実施形態から第三実施形態の具体的な構成を例示するものではない。
【0012】
[第一実施形態]
(バッテリ装置)
図1は、第一実施形態のバッテリ用配線部材を備えたバッテリ装置1を説明するための斜視図である。なお、バッテリ用配線部材とは、配線基板11と、配線基板11に固定された第一係着部とを合わせたものをいう。
バッテリ装置1は、ケース体5と、ケース体5の内部に収容された回路基板10と、回路基板10に形成された配線13aと電気的に接続する配線13bが形成された可撓性を有する配線基板11と、を備えている。第一実施形態では、回路基板10及び配線基板11を単に基板100とも記す。回路基板10及び配線基板11は、いずれも可撓性を有する薄板の樹脂により形成されるフレキシブルプリント回路(FPC)基板である。FPC基板のベース材やカバー材にはポリイミドが用いられる。また、配線13a、配線13bは、銅箔をエッチングにより成形する、あるいは導電性のペーストを印刷成形することによって形成される。ケース体5は蓋51により密封されていて、
図1においては、基板100を説明するために破線で図示している。蓋51は、ケース体5内で発生するガスが外部に漏れることを防ぐと共に、外部から水分がケース体5の内部に浸入することを防いでいる。
【0013】
ケース体5は、複数のバッテリ3を収容する筐体であり、バッテリ3はケース体5の内部で一列に配置されている。回路基板10上の配線13aは、複数のバッテリ3の端子15同士を電気的に接続している。端子15からはバッテリ3の電圧に係る信号が出力されて、配線13aから配線13bを通じて外部に取り出される。配線13bは、配線基板11の先端に設けられたコネクタ12に接続されて、バッテリ装置1はコネクタ12により他のバッテリ装置等の機器と接続される。なお、バッテリ装置1は、以上の構成の他、ケース体5内の温度を検出する温度センサ等を備えるものであってもよい。
【0014】
また、
図1に示すように、配線基板11は、ケース体5の外部に引き出されている。配線基板11の引き出し位置は任意であり、
図1のようにケース体5の上面から引き出すようにしてもよい。配線基板11をケース体5に固定する場合、配線基板11の引き出し位置は、配線基板11の固定スペースや固定後の配線基板11の角度に応じて好適な位置に定められる。また、配線基板11を引き出すためケース体5に形成された開口部には、ケース体5の気密性を保つための栓体を取付けるようにしてもよい。
【0015】
図1に示すバッテリ装置1では、ケース体5から引き出されている配線基板11が搬送時に他の部材と接触して傷つくことが懸念される。また、配線基板11は、バッテリ装置1が例えばエンジンルームに取付けられた後、エンジンや走行による振動によって捩れることなく適度な余裕を持って固定されることが好ましい。搬送時の損傷を防ぐ目的で行われる固定と、バッテリ装置1の取り付け後の固定とでは、配線基板11の好ましい固定状態が相違する。第一実施形態は、搬送時、バッテリ装置1の取り付け後の固定時のいずれにも配線基板11を好適に保持、固定して配線基板11の損傷や捩れを防ぐものである。
【0016】
第一実施形態のバッテリ装置1は、配線基板11の表面11aに固定して設けられる第一係着部21aa、21ab、21bを備えている。また、バッテリ装置1は、ケース体5に固定して設けられた第二係着部21hを備えている。そして、第一係着部21aaと第一係着部21bとが着脱自在に係着され、他の第一係着部21abと第二係着部21hとが着脱自在に係着されている。配線基板11への第一係着部21aa等の固定は、粘着剤や接着剤を使って行うものであってもよいし、縫いつけるものであってもよい。
図1に示すバッテリ装置1では、蓋51に図示しない開口を形成し、開口から配線基板11が引き出されている。開口からケース体5の内部と外部との間でガスや水分が流通することを防ぐため、開口及び配線基板11の一部はカバー110によって覆われている。
【0017】
上記において、「係着」とは、二つの係着部が互いに係り合う部位を有し、係着部が固定された面の背面から押圧されることによって係着部同士が互いに固定される状態になることをいう。「着脱自在」とは、係着されている係着部同士を引き離し、再び先に行われた係着と同様の方法で互いを係着可能なことをいう。
【0018】
図2(a)は、第一係着部21abと第二係着部21hとの係着を例にして係着について説明するための図である。
図2(b)は、
図2(a)に示す係着部と異なる係着部を説明するための図である。ただし、第一係着部21aaは第一係着部21bとの係着も、第一係着部21abと第二係着部21hとの係着と同様に行われる。
図2(a)に示すように、第一係着部21abは、第一係着面210を有している。第二係着部21hは、第二係着面211と、この第二係着面211に対する裏面にあって粘着性を有する粘着面212を備えている。粘着面212は、第二係着部21hがケース体5に貼り付けられる面である。第二係着部21hは、第二係着面211がケース体5の側と反対方向(以下、「外側」とも記す)に向かうように貼り付けられる。
【0019】
第一実施形態では、第一係着面210が環状部分を有するループ部材213、このループ部材213の環状部分213aに係り合うフック部材214の少なくとも一方を備えるように構成されている。
図2(a)は、第一係着部21abがループ部材213のみを備えていて、第二係着部21hの第二係着面211にフック部材214が設けられている例を示している。互いに係着する第一係着部は、一方がループ部材213を備えるものであれば、他方がフック部材214を備えるものとする。
【0020】
図2(a)に示す第一係着部21ab、第二係着部21hは、いずれも面ファスナー、ベルクロテープ等の工業テープである。このような工業テープは、例えば、第一係着面210、第二係着面211、ループ部材213及びフック部材214がポリエステル等の樹脂製であって、粘着面212にはアクリル系、ウレタン系、シリコーン系等の粘着材が塗布されている。
【0021】
このような第一係着部21abは、第二係着部21hに第一係着面210を向けて背面210rを押圧することによってループ部材213の環状部分213aにフック部材214を掛止することができる。ループ部材213やフック部材214が面状の第一係着面210、第二係着面211に形成されていることにより、第一係着部21ab及び第二係着部21hは、必要な粘着力が得られる面積が重なる範囲において位置ずれが許容できる。ただし、第一実施形態の係着部は、面内に微細なループ部材213やフック部材214を複数備えるものに限定されず、比較的大径のスナップボタン等を備えるものであってもよい。
【0022】
図2(b)は、第一係着部21ab、第二係着部21hの両方がループ部材213とフック部材214の両方を備えている例を示している。このような構成によれば、第一係着部21ab、第二係着部21hを同様に構成することができ、第一係着部21ab、第二係着部21hの製造側における在庫管理が容易になる。
【0023】
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)及び
図3(d)は、第一実施形態のバッテリ用配線部材を説明するための図であって、
図1に示すバッテリ用配線部材の係着の手順を説明している。
図3(a)から
図3(c)に示すように、配線基板11は、第一係着部21aa、21bが形成されている側の表面11aに対する裏面11bにも第一係着部21f、第一係着部21gが設けられている。
【0024】
図3(a)は、配線基板11の係着前の状態を示す図である。配線基板11は、図(a)に示す状態から順次折りたたまれた上に折り曲げ箇所を固定され、バッテリ装置1の出荷、使用のいずれの場面にあっても好ましい形状に保持される。
バッテリ装置1の出荷、搬送時、配線基板11は、
図3(b)のように第一係着部21bと第一係着部21aaとが係着するように折り曲げられる。次に、配線基板11は、
図3(c)のように第二係着部21hと第一係着部21abとが係着するように折り曲げられる。このような処理により、配線基板11はケース体5に固定される。
図3(c)に示す状態のバッテリ装置1は、箱詰め時において配線基板11が箱の縁や隙間に引っ掛ることがなく、また、搬送時に加わる振動の影響を受け難くなる。
【0025】
次に、配線基板11は、第一係着部21fが第一係着部21gと係着するように折り曲げられる。このとき、表面11aに形成されているコネクタ12が再び外面に向かい、バッテリ装置1と接続される機器や電源等に接続される。
図3(d)に示す状態の配線基板11は、バッテリ装置1の配置時にケース体5に固定されて引き回しに係るスペースを小さくすることができる。また、特に車載のバッテリ装置1では、配線基板11が走行時の振動の影響を受け難くなって振動による断線等の損傷が起こり難くなる。
【0026】
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)は、使用の態様に応じて第一係着部が係着する他方の係着部が変更される例を示す図である。配線基板11は、一つの面に第一係着部21i、21jを備え、第一係着部21iと第一係着部21jとを係着すると共に、使用の態様に応じて第一係着部21jをケース体5に固定された21hと係着させている。
図4(a)は、裏面11b同士が対向するように折り曲げて第一係着部21iと第一係着部21jとを係着させた状態を示している。配線基板11がこのような状態のバッテリ装置1は、長さが短くなると共に厚くなり、出荷、搬送時に振動の影響を受け難くなる。
図4(b)は、第一係着部21iと第一係着部21jとの係着を解除した状態を示す。
図4(c)は、第一係着部21jを第二係着部21hに係着した状態を示す。配線基板11が
図4(c)に示す状態のバッテリ装置1は、配線基板11の一部が固定されているために車両の走行中の振動の影響を受け難くなる。
【0027】
このように、第一実施形態は、バッテリ装置1の状態に応じて第一係着部21jを第一係着部21iから第二係着部21hに貼り替えることができる。ただし、第一実施形態は、第一係着部の側を貼り替えることに限定されるものではない。
第一実施形態は、第二係着部21hを、第二係着面211(
図2(a)、
図2(b)と、第二係着面211に対する裏面にあって粘着性を有する粘着面と、を備えるように第二係着部21hを構成し、これを第一係着部21i、21jを備える配線基板11と共に提供し、ユーザが第二係着部21hを任意の位置に貼り付けて第一係着部21i、21jのいずれかと係着させるものであってもよい。
【0028】
(バッテリ用配線部材)
次に、第一実施形態のバッテリ用配線部材を説明する。なお、バッテリ用配線部材の配線基板11は、コネクタ等により回路基板10に接続されるものであってもよいし、回路基板10と一体となっているものであってもよい。
図5(a)は、配線基板11の表面11aに設けられた第一係着部21a、第一係着部21bを示す図である。
図5(b)は、配線基板11の裏面11bに設けられた第一係着部21d、第一係着部21eを示す図である。第一係着部21a、21bは、各々
図2に示す第一係着面210、第二係着面を有し、各々がループ部材213またはフック部材214の一方、または両方を備えている。第一係着部21aは表面11aに例えば粘着材により固定されていて、表面11aに向かう側の反対の面が第一係着面になっている。また、第一係着部21bは、裏面11bに固定されていて、裏面11bに向かう側の反対の面が第二係着面になっている。
【0029】
図2において説明したように、バッテリ用配線部材は、バッテリ装置1に用いられるバッテリ用配線部材であって、可撓性を有する配線基板11と、配線基板11に固定して設けられる複数の第一係着部21a、21b、21d、21eを備え、第一係着部21aから21eの少なくとも一部同士は、他方と係着する第一係着面を備えて互いに着脱自在に構成されている。
【0030】
上記のように、第一実施形態は、第一係着部21a、21dと第一係着部21b、21eとが配線基板11の表面11a及び裏面11bにそれぞれ設けている。このようにすることにより、第一実施形態は、配線基板11を一方の面を折り曲げた後、さらに他方の面を折り曲げることができる。このような第一実施形態は、配線基板11同士を複数個所で固定して配線基板11をコンパクトかつ振動し難くすることができる。また、配線基板11を複数回折り曲げることにより、配線基板11の引き回しの自由度を高めることができる。
【0031】
互いに係着する第一係着部21a、21b、第一係着部21d、21eの間には、いずれもそれぞれ間隙がある。換言すると、第一係着部21a、21b、第一係着部21d、21eはそれぞれ別体として構成されている。
図5(a)に示すように、第一係着部21a、21bとの間隙を通る直線を境界線b1とし、第一係着部21d、21eとの間隙を通る直線を境界線b2とする。境界線b1、b2は、いずれも配線基板11の長さ方向Lと交差する。
配線基板11は、境界線b1、b2に沿って谷折される。このとき、境界線b1、b2に第一係着部21a等が存在しないことにより第一係着部21a等の折り曲げに対する反発力が作用せず、第一係着部21aと第一係着部21b、あるいは第一係着部21dと第一係着部21eとを係着し易くすることができる。
【0032】
図5(a)に示す第一係着部21a、21bは、いずれも三角形形状を有していて、境界線b1が長さ方向Lと斜めに交差している。このような第一係着部21a、21bによれば、配線基板11を長さ方向Lから斜めに引き回すことができる。また、
図5(b)に示す第一係着部21dは三角形形状を有し、第一係着部21eは矩形形状を有している。このような構成は、第一係着部21d、第一係着部21eの位置ずれの許容範囲を大きくすると共に、第一係着部21d、第一係着部21eの両方を矩形にするよりも係着力を低減することができる。このため、第一係着部21d、21e同士の係着力が大きすぎて両者が離し難くなることを防ぐことができる。
なお、第一係着部21d、第一係着部21eの形状や互いが係着する面積は、配線基板11を折り曲げる際の状態や着脱に適する係着力によって任意に決定される。
【0033】
また、第一係着部21dと第一係着部21eとの境界線b2は、長さ方向Lと直交している。このような第一係着部21d、21eによれば、互いに係着することによって配線基板11を90度折り返し、配線基板11を長さ方向に沿って折り畳み、配線基板11の長さを短くすることができる。
【0034】
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)は、
図5(a)、
図5(b)に示す配線基板11を折り曲げる手順を説明するための図である。
図6(a)に示すように、配線基板11は、第一係着部21dが第一係着部21eに係着されるように折り曲げられる。このように折り曲げることにより、第一係着部21a、第一係着部21bが上面に向かうように配置される。このような状態の配線基板11は、長さが短くなって他の部位に引っ掛り難くなると共に出荷、搬送時の振動の影響を受け難くなる。
次に、配線基板11は、
図6(b)に示すように、第一係着部21aが第一係着部21bに係着するように折り曲げられる。このようにすることにより、配線基板11は、
図6(c)に示すように、短くなって、かつ側方にある他の機器のコネクタ121と接続した状態で固定される。
【0035】
以上説明したように、第一実施形態は、配線基板に固定して設けられる複数の第一係着部を備え、第一係着部を互いに着脱自在に構成しているので、バッテリの出荷や搬送時、バッテリ組付け後の使用時のいずれにあっても第一係着部を自在に着脱して配線基板11を好適な状態で保持することができる。このような第一実施形態は、バッテリ装置の出荷時及び組付け時の両方の使用に好適なバッテリ用配線部材、このバッテリ用配線部材を備えたバッテリ装置を提供することができる。
【0036】
また、上記において、第一実施形態は、第一係着部をループ部材213、フック部材214の一方または両方を備えるようにしているため、第一係着面210を保護するリリース紙等が不要になって作業時にゴミが発生することをなくしている。また、第一係着面210同士、あるいは第一係着面210と第二係着面211とを面接触させているので、位置ずれに対する許容範囲を大きくすることができる。また、互いに係着される第一係着部の間に間隙があって、この間隙を通る境界線に沿って配線基板11を折り曲げるので、配線基板11を折り曲げやすくすることができる。
【0037】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
図7(a)、
図7(b)は、第二実施形態のバッテリ用配線部材を説明するための図であって、
図7(a)は第一係着部22a、22bの係着前、
図7(b)は係着後の状態を示している。第二実施形態では、互いに係着する第一係着部22a、22bが一体であって、第一係着面221を通る直線b3に沿って折り曲げられる。つまり、第一実施形態では、第一係着部21aと第一係着部21bとが各々離間した別体であって、両者が第一係着面210同士を合わせて係着しているのに対し、第二実施形態の第一係着部22a、22bは一体に構成されて折り曲げられることにより係着可能である。このような構成は、第一係着部22a、22bが、第一係着面221にループ部材213とフック部材214の両方を備えることによって実現することができる。
【0038】
第二実施形態にあっても、第一実施形態と同様に、互いに係着する第一係着部の他、第二係着部21hと係着する第一係着部を備えるようにしてもよい。
図8(a)、
図8(b)は、このようなバッテリ用配線部材を説明するための図であって、
図8(a)は第一係着部22a、22bの係着前、
図8(b)は係着後の状態を示している。第二実施形態では、配線基板11の引き回しのレイアウトに応じてケース体5またはバッテリ装置1の設置位置の周囲に第二係着部21hを貼り付けておく。そして、
図8(a)、
図8(b)に示すように、第二実施形態では、配線基板11に第一係着部23をさらに設け、第一係着部22a、22bを折り曲げて係着した後に第一係着部23と第二係着部21hとを係着する。
【0039】
このような構成によれば、第一係着部を配線基板11に取り付ける作業を行う回数が半減するので、バッテリ用配線部材の製造工程を簡易化することができる。また、第二実施形態によれば、配線基板11の折り曲げ個所の曲率半径が第一実施形態よりも大きくなるので、折り曲げられることによって配線基板11に与えるダメージを低減することができる。
【0040】
次に、本発明の第三実施形態を説明する。
図9(a)、
図9(b)は、第三実施形態のバッテリ配線用基板を説明するための図である。
図9(a)、
図9(b)に示すバッテリ用配線部材は、配線基板11の裏面に第一係着面が矩形の第一係着部21eと第一係着面が三角形の第一係着部21dとが設けられている。そして、第一係着部21d、21eの下に緩衝材31を設けている。このため、第一係着部21d、21eは、第一係着部21d、21eよりも厚い緩衝材31を挟んで配線基板11に貼り付けられる。
緩衝材31としては、例えば、スポンジ等の柔軟な部材であって、配線基板11を保護する機能を有するものが好ましい。緩衝材31としては、他に、例えば布材や紙等が考えられる。このような構成は、配線基板11の折り曲げ部分の曲率半径を任意の大きさに調整し、配線基板11の折り曲げ部分を保護することに好適である。
【0041】
なお、本発明の実施形態は、上記の第一実施形態から第三実施形態に限定されるものではない。例えば、第一実施形態から第三実施形態の第一係着部、第二係着部は、
図2(a)、
図2(b)に示すループ部材213、フック部材214を備える構成に限定されるものではない。例えば、
図10(a)に示すように、ループ部材213に掛かる突端部を有するフック部215を備えるものであってもよいし、可撓性を有する材料で略球体216aと、この略球体を支持する支持軸216bとを係着し合う第一係着面210の両方に設けて互いに噛み合うように嵌め込むものであってもよい。
【0042】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)バッテリ装置に用いられるバッテリ用配線部材であって、可撓性を有する配線基板と、前記配線基板に固定して設けられる複数の第一係着部を備え、前記第一係着部の少なくとも一部同士は、他方と係着する第一係着面を備えて互いに着脱自在に構成されている、バッテリ用配線部材。
(2)前記第一係着面は、環状部分を有するループ部材、当該ループ部材の前記環状部分に係り合うフック部材の少なくとも一方を備える、(1)のバッテリ用配線部材。
(3)前記第一係着面は前記ループ部材と前記フック部材の両方を備える、(2)のバッテリ用配線部材。
(4)互いに係着する前記第一係着部同士の間に間隙があって、前記間隙を通る前記第一係着部の間の境界線が前記配線基板の長さ方向と交差している、(1)から(3)のいずれか一つのバッテリ用配線部材。
(5)前記境界線が前記長さ方向と斜めに交差している、(4)のバッテリ用配線部材。
(6)互いに係着する複数の前記第一係着部が一体に形成されており、前記第一係着面を通る直線に沿って折り曲げられて互いに係着可能である、(1)から(5)のいずれか一つのバッテリ用配線部材。
(7)前記第一係着部が前記配線基板の表面及び裏面にそれぞれ複数設けられている、(1)から(6)のいずれか一つのバッテリ用配線部材。
(8)前記第一係着部は、前記配線基板よりも厚い緩衝材を挟んで前記配線基板に固定されている、(1)から(7)のいずれか一つのバッテリ用配線部材。
(9)前記第一係着部と係着可能な第二係着面と、当該第二係着面に対する裏面にあって粘着性を有する粘着面と、を備える第二係着部をさらに備える、(1)から(8)のいずれか一つのバッテリ用配線部材。
(10)ケース体と、前記ケース体の内部に収容された回路基板と、前記回路基板に形成された回路と電気的に接続する配線が形成された可撓性を有する配線基板と、前記配線基板に固定して設けられる複数の第一係着部と、前記ケース体に固定して設けられる第二係着部と、を備え、前記第一係着部の少なくとも一部同士が着脱自在に係着可能であり、前記第一係着部の他の一部が前記第二係着部と着脱自在に係着可能である、バッテリ装置。
【符号の説明】
【0043】
1・・・バッテリ装置
3・・・バッテリ
5・・・ケース体
10・・・回路基板
11・・・配線基板
11a・・・表面
11b・・・裏面
12、121・・・コネクタ
13a、13b・・・配線
15・・・端子
21a、21aa、21ab、21b、21d、21e、21f、21g、21i、21j、22a、22b、23・・・第一係着部
31・・・緩衝材
51・・・蓋
100・・・基板
110・・・カバー
210、221・・・第一係着面
210r・・・背面
211・・・第二係着面
212・・・粘着面
213・・・ループ部材
213a・・・環状部分
214、215・・・フック部
216a・・・略球体
216b・・・支持軸
L・・・長さ方向
b1、b2・・・境界線
b3・・・直線