(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】光硬化性3Dディスペンサ用インク及び三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20240216BHJP
B29C 67/00 20170101ALI20240216BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240216BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C67/00
B33Y70/00
C08F2/50
(21)【出願番号】P 2019137932
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-01-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】小原 一樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 沙由里
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518898(JP,A)
【文献】特開平05-077324(JP,A)
【文献】特開2019-119748(JP,A)
【文献】特開2012-025124(JP,A)
【文献】特開2007-237683(JP,A)
【文献】特開平03-015519(JP,A)
【文献】特表2019-519405(JP,A)
【文献】特表2017-533851(JP,A)
【文献】特開2017-052870(JP,A)
【文献】特開2018-192784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/112
B29C 67/00
B33Y 70/00
C08F 2/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアルキルフェノン系開始剤と、ホスフィンオキサイド系開始剤と、チオキサントン系増感剤と、ラジカル重合性化合物と、チキソ性を付与するフィラーと、を含有し、1回のインク吐出操作で厚みが0.1mm~2mmのインク層を形成するために用いられる、光硬化性3Dディスペンサ用インク。
【請求項2】
前記ラジカル重合性化合物は、
二官能アクリレートである請求項1に記載の光硬化性3Dディスペンサ用インク。
【請求項3】
前記
二官能アクリレートは、
ビスフェノールA EO変性(n=10)ジアクリレートである請求項2に記載の光硬化性3Dディスペンサ用インク。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性3Dディスペンサ用インクをディスペンサで吐出することによりインク層を形成するインク吐出工程と、
前記インク層に、波長405nm~420nmのいずれかの波長の光を照射することにより前記インク層を硬化させて硬化層を形成する硬化工程と、を含む、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
前記インク吐出工程の前記インク層の膜厚は0.1mm~2mmである、請求項4に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
前記硬化工程において、波長365nm又は波長385nmの光を更に照射する、請求項4又は5に記載の三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性3Dディスペンサ用インク及び三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3D(三次元)造形方式として、液状の硬化性インクを吐出してインク層を形成し、それを硬化させて硬化層を形成することを繰り返して三次元形状を作る造形法が知られている。
【0003】
インクを吐出する方式としては、インクジェットやディスペンサがある。
【0004】
インクジェットを用いた場合の硬化層の厚みはインクジェットの液滴に対応しており、通常10μm程度である。
【0005】
一方、ディスペンサは、特許文献1や特許文献2に記載されているような、制御に応じて一定の容量の液体を吐出する液体定量吐出装置であり、インクジェットに比べて高粘度のインクを大量に吐出することに適しており、インク層の厚みは、通常、数百μm未満である。
【0006】
ディスペンサは三次元造形法に適用できる。例えば、特許文献3は、ディスペンサを用いる立体物造形法を開示する。特許文献3では、特に高粘度の液体の吐出に適したディスペンサの構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-147241号公報
【文献】特開2016-147456号公報
【文献】特開2018-039213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
三次元造形物の製造において、ディスペンサを用いて粘度の高いインクを大量に吐出しインク層を厚くすると、三次元造形物の製造が容易になる。
【0009】
しかしながら、インク層を従来より厚くしようとすると、従来のディスペンサ用インクではインク層の内部が硬化しにくいという問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、本発明の課題は、内部硬化性に優れた光硬化性3Dディスペンサ用インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の第一の観点に係る光硬化性3Dディスペンサ用インクは、アミノアルキルフェノン系開始剤と、ホスフィンオキサイド系開始剤と、チオキサントン系増感剤と、ラジカル重合性化合物と、を含有する。
【0012】
上記構成の光硬化性3Dディスペンサ用インクは、内部硬化性に優れる。
【0013】
前記ラジカル重合性化合物は、アクリレートである、と好ましい。
【0014】
上記構成の光硬化性3Dディスペンサ用インクは、それを用いて製造した三次元造形物の耐久性の観点で好ましい。
【0015】
前記アクリレートは、二官能アクリレートである、と好ましい。
【0016】
上記構成の光硬化性3Dディスペンサ用インクは、それを用いて製造した三次元造形物の剛性の観点で好ましい。
【0017】
本発明の第二の観点に係る三次元造形物の製造方法は、前記硬化性3Dディスペンサ用インクをディスペンサで吐出することによりインク層を形成するインク吐出工程と、
前記インク層に、405nm~420nmのいずれかの波長の光を照射することにより前記インク層を硬化させて硬化層を形成する硬化工程と、を含む。
(なお、本明細書において、「a~b」との記載は、「a以上b以下」を意味する。)
【0018】
上記構成の三次元造形物の製造方法は、用いるインクが内部硬化性に優れるので、インク層の内部の硬化が良好である。
【0019】
前記インク吐出工程のインク層の膜厚は0.1mm~2mmである、と好ましい。
【0020】
上記構成の三次元造形物の製造方法は、積層する層の厚みが厚く、その内部の硬化が良好である。
【0021】
前記硬化工程において、波長365nm又は波長385nmの光を更に照射する、と好ましい。
【0022】
上記構成の三次元造形物の製造方法は、表面硬化の観点で好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光硬化性3Dディスペンサ用インクは、内部硬化性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態の光硬化性3Dディスペンサ用インクは、アミノアルキルフェノン系開始剤と、ホスフィンオキサイド系開始剤と、チオキサントン系増感剤と、ラジカル重合性化合物と、を含有する。
【0025】
3Dディスペンサは、三次元造形用に、制御に応じて一定の容量の液体を押し出して吐出する液体定量吐出装置である。
【0026】
液体定量吐出装置としては、例えば、特許文献3に記載の、1)大気圧よりも圧力の高い高圧液体を供給する高圧液体供給部と、2)前記高圧液体供給部から供給される前記高圧液体を吐出する吐出部と、3)前記吐出部を駆動させる駆動源と、を有し、前記吐出部は、外周面に少なくとも1つの前記高圧液体を収容する収容部が形成され、前記駆動源によって回転される回転ロータと、前記回転ロータを回転自在の状態で収容し、前記収容部と前記高圧液体供給部とを連通させる液体供給路と、前記収容部と前記吐出部の外部とを連通させる吐出ノズルと、が形成されたケーシングと、前記駆動源の回転を制御し、回転方向における前記収容部の位置を制御する制御部と、を備えるものが挙げられる。
【0027】
ディスペンサ用インクは、その粘度をオンデマンド型などのインクジェット用インクに比べて高くすることができ、具体的には、吐出する際の粘度が10mPa・s以上、好ましくは、100~1000mPa・sの範囲にある。インクの粘度が低いとインクの吐出が容易であり、インクの粘度が高いと、インクの着滴から光照射による硬化までの時間にインク層が変形することを抑えられ、積み上げ精度が上がる。
【0028】
(開始剤・増感剤)
開始剤は、光が照射されることによって、ラジカルを生じ、ラジカル重合性化合物を硬化する。増感剤は、開始剤に光感性を有さない波長領域に感光性を与えたり、開始剤の光感度を増大させる。本実施形態に係る光硬化性3Dディスペンサ用インクは、開始剤として、アミノアルキルフェノン系開始剤とホスフィンオキサイド系開始剤とを含有し、増感剤としてチオキサントン系増感剤とを含有する。
【0029】
アミノアルキルフェノン系開始剤とチオキサントン系増感剤のみを用いたり、ホスフィンオキサイド系開始剤とチオキサントン系増感剤のみを用いたりすると、それぞれの開始剤の溶解量に限界があり開始剤の量が不十分となり、インクの内部硬化が不十分であるところ、アミノアルキルフェノン系開始剤とホスフィンオキサイド系開始剤とチオキサントン系増感剤を組み合わせて用いると、インクに溶解している開始剤の総和量を増やすことができ、インクを透過しやすい波長の光(例えば波長405nmの光)で、硬化に十分な量のラジカルを発生させることでインクの内部硬化性を向上させることができる。
【0030】
本実施形態に係るアミノアルキルフェノン系開始剤は、下記式(1)で示されるアルキルフェノン骨格に置換基としてアミノ基を有するアミノアルキルフェノン化合物である。
【化1】
(式(1)中、Arは置換基を有する又は無置換のアリール基を表し、R
1は置換基を有する又は無置換の炭化水素基を表す。)
【0031】
具体的には、Arとしては、フェニル基、フェニレン基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基などが挙げられ、R1としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。アミノ基としては、ジメチルアミノ基、モルフォリノ基などが挙げられる。
【0032】
より具体的には、アミノアルキルフェノン系開始剤としては、下記式(2)で示される、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(2-methyl-1-[4-(methylthio)phenyl]-2-morpholinopropan-1-one)、
【化2】
【0033】
下記式(3)で示される、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン(2-benzyl-2-(dimethylamino)-4’-morpholinobutyrophenone)、
【化3】
【0034】
下式(4)で示される、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(2-dimethylamino-2-(4-methyl-benzyl)-1-(4-morpholin-4-yl-phenyl)-butan-1-one)、などが挙げられる。
【化4】
【0035】
アミノアルキルフェノン系開始剤の中でも、α-アミノアルキルフェノン系開始剤が好ましく、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノンがより好ましい。
【0036】
アミノアルキルフェノン系開始剤は、例えば、IGMレジンズ社製の、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad907(BASF社旧商品名:Irgacure907))、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン(商品名:Omnirad369(BASF社旧商品名:Irgacure369))、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(商品名:Omnirad379EG(BASF社旧商品名:Irgacure379EG))などを用いることができる。アミノアルキルフェノン系開始は、一種単独で、又は複数種を用いることができる。
【0037】
光硬化性3Dディスペンサ用インク中のアミノアルキルフェノン系開始剤の含有量は特に限定されないが、1~10質量%であると好ましく、4~6質量%であるとより好ましい。
【0038】
本実施形態に係るホスフィンオキサイド系開始剤は、下記式(5)で示されるホスフィンオキサイド化合物である。
【化5】
(式(5)中、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立に水素又は置換基を有する若しくは無置換の炭化水素基を表す。)
【0039】
具体的には、R2、R3、R4としては、それぞれ独立に、フェニル基、アシル基などが挙げられる。
【0040】
より具体的には、ホスフィンオキサイド系開始剤としては、下記式(6)で示される、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethylbenzoyl-diphenylphosphine oxide)、
【化6】
【0041】
下記式(7)で示されるビズ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(Bis(2,4,6-trimethylbenzoyl)phenylphosphine oxide)などが挙げられる。
【化7】
【0042】
ホスフィンオキサイド系開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤であると好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド及びビズ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシドがより好ましい。
【0043】
ホスフィンオキサイド系開始剤は、例えば、IGMレジンズ社製の、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(商品名:Omnirad TPO H(BASF社旧商品名:Irgacure TPO))、ビズ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(商品名:Omnirad819(BASF社旧商品名:Irgacure819))、を用いることができる。ホスフィンオキサイド系開始剤は、一種単独で、又は複数種を用いることができる。
【0044】
光硬化性3Dディスペンサ用インク中のホスフィンオキサイド系開始剤の含有量は特に限定されないが、1~10質量%であると好ましく、2~4質量%であるとより好ましい。
【0045】
本実施形態に係るチオキサントン系増感剤は、下記式(8)で示されるチオキサントン骨格を有する化合物である。
【化8】
チオキサントン系増感剤としては、無置換のチオキサントン、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭化水素基を置換基として有するチオキサントン化合物が挙げられる。中でも無置換のチオキサントンが好ましい。
【0046】
より具体的には、チオキサントン系増感剤としては、チオキサントン、2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0047】
チオキサントン系増感剤は、例えば、東京化成工業株式会社製のチオキサントン、和光純薬株式会社製の2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン、東京化成工業株式会社製の2-イソプロピルチオキサントンを用いることができる。チオキサントン系増感剤は、一種単独で、又は複数種を用いることができる。
【0048】
光硬化性3Dディスペンサ用インク中のチオキサントン系増感剤の含有量は特に限定されないが、0.1~10質量%であると好ましく、0.5~1.5質量%であるとより好ましい。
【0049】
本実施形態に係る光硬化性3Dディスペンサ用インクは、他の開始剤・増感剤を含有することができる。他の開始剤・増感剤としては、分子内水素引き抜き型光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤、電子移動型光重合開始剤などが挙げられる。
【0050】
具体的には、他の開始剤としては、例えば、アミン系開始剤の官能化アミン共同剤(DSM社製、商品名:AgiSyn008)を用いることができる。
【0051】
光硬化性3Dディスペンサ用インク中の開始剤と増感剤の総含有量は特に限定されないが、1質量%~25質量%が好ましく、5質量%~20質量%が好ましく、10質量%~15質量%が特に好ましい。硬化剤の含有率がこの範囲にあると、ラジカル重合性化合物の反応性の点で好ましい。
【0052】
光硬化性3Dディスペンサ用インク中の総開始剤中のアミノアルキルフェノン系開始剤、ホスフィンオキサイド系開始剤、チオキサントン系増感剤のそれぞれの含有割合は特に限定されないが、開始剤と増感剤の総量に対してアミノアルキルフェノン系開始剤が、20質量%~60質量%であると好ましく、30質量%~50質量%であるとより好ましく、35質量%~45質量%であると特に好ましい。
【0053】
また、開始剤と増感剤の総量に対してホスフィンオキサイド系開始剤が、20質量%~50質量%であると好ましく、25質量%~45質量%であるとより好ましく、30質量%~40質量%であると特に好ましい。
【0054】
また、開始剤と増感剤の総量に対してチオキサントン系増感剤が、5質量%~20質量%であると好ましく、5質量%~15質量%であるとより好ましく、5質量%~10質量%であると特に好ましい。それぞれの開始剤と増感剤の含有率がこの範囲にあると、ラジカル重合性化合物の反応性の点で好ましい。
【0055】
(ラジカル重合性化合物)
本実施形態に係るラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性を有する化合物であれば特に限定されないが、重合性、硬化物の耐久性、開始剤・増感剤の溶解性などの点でアクリレートが好ましい。
【0056】
アクリレートしては、フェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレートなどの単官能アクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールEO変性ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの二官能アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールEO変性テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能アクリレートが挙げられる。
【0057】
これらのラジカル重合性化合物は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0058】
これらの中でも、得られる造形物の耐久性、剛性などの機械的特性の点で、二官能アクリレートが好ましく、PO変性ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート及びビスフェノールA EO変性ジアクリレートの組合せがより好ましい。
【0059】
単官能アクリレートとしては、美源スペシャリティケミカル株式会社製の、フェノールEO変性(n=2)アクリレート(商品名:Miramer M142)、フェノールEO変性(n=4)アクリレート(商品名:Miramer M144)、ノニルフェノールEO変性(n=8)アクリレート(商品名:Miramer M166)、エトキシジエチレングリコールアクリレート(商品名:Miramer M170)などを用いることができる。
【0060】
二官能アクリレートとしては、美源スペシャリティケミカル株式会社製の、ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:Miramer M200)、ヘキサンジオールEO変性ジアクリレート(商品名:Miramer M202)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(商品名:Miramer M210)、ネオペンチルグリコールPO変性(n=2)ジアクリレート(商品名:Miramer M216)、トリプロピレングリコールジアクリレート(商品名:Miramer M220)、ジプロピレングリコールジアクリレート(商品名:Miramer M222)、ビスフェノールA EO変性(n=4)ジアクリレート(商品名:Mirmaer M240)、ビスフェノールA EO変性(n=10)ジアクリレート(商品名:Miramer M2100)、ポリエチレングリコール(分子量400)ジアクリレート(略式名:PEG400DA、商品名:Miramer M280)、ポリエチレングリコール(分子量300)ジアクリレート(略式名:PEG300DA、商品名:Miramer M284)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(商品名:Miramer M2040)などを用いることができる。
【0061】
多官能アクリレートとしては、美源スペシャリティケミカル株式会社製の、トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:Miramer M300)、トリメチロールプロパンEO変性(n=3)トリアクリレート(商品名:Miramer M3130)、トリメチロールプロパンEO変性(n=6)トリアクリレート(商品名:Miramer M3160)、トリメチロールプロパンEO変性(n=9)トリアクリレート(商品名:Miramer M3190)、トリメチロールプロパンPO変性(n=3)トリアクリレート(商品名:Miramer M360)、グリセリンプロポキシトリアクリレート(商品名:Miramer M320)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名:Miramer M340)、ペンタエリスリトールEO変性テトラアクリレート(商品名:Miramer M4004)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(商品名:Miramer M410)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:Miramer M600)などを用いることができる。
【0062】
光硬化性3Dディスペンサ用インク中のラジカル重合性化合物の含有量は特に限定されないが、70~99質量%であると好ましく、75~90質量%であるとより好ましく、80~85質量%であると特に好ましい。
【0063】
(他の成分)
本実施形態の光硬化性3Dディスペンサ用インクは、本発明を損なわない範囲で、他の成分を含有することができる。他の成分としては、フィラー、色材、分散剤、可塑剤、界面活性剤、表面調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、電荷付与剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、皮はり防止剤、香料、顔料誘導体、溶剤などが挙げられる。
【0064】
フィラーとしては、親水性ヒュームドシリカ、疎水性ヒュームドシリカなどのヒュームドシリカ、メソポーラスシリカなどのシリカ、アルミナなどが挙げられる。これらのフィラーの中でも、親水性ヒュームドシリカが好ましい。親水性ヒュームドシリカをインクに添加することでインクにチキソ性を付与することができる。親水性ヒュームドシリカとしては、アエロジル株式会社製のアエロジルA255、アエロジルA300、アエロジルA380などを用いることができる。
【0065】
色材としては、公知の染料及び顔料を用いることができる。顔料としては、無機顔料や有機顔料が挙げられる。
【0066】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカなどが挙げられる。
【0067】
有機顔料としては、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリン系、イソインドリノン系、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0068】
本実施形態の光硬化性3Dディスペンサ用インクをシアンインクとする場合には、色材として、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60などを配合することができる。
【0069】
本実施形態の光硬化性3Dディスペンサ用インクをマゼンタインクとする場合には、色材として、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112,122,123,168,184、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19などを配合することができる。
【0070】
本実施形態の光硬化性3Dディスペンサ用インクをイエローインクとする場合には、色材として、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14C、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、130、138、150、151、154、155、180、185などを配合することができる。
【0071】
本実施形態の光硬化性3Dディスペンサ用インクをブラックインクとする場合には、三菱化学社製のHCF、MCF、RCF、LFF、SCF、キャボット社製のモナーク、リーガル、デグサ・ヒュルス社製のカラーブラック、スペシャルブラック、プリンテックス、東海カーボン社製のトーカブラック、コロンビア社製のラヴェンなどを配合することができる。
【0072】
光硬化性3Dディスペンサ用インク中の色材の含有量は、特に限定されないが、色材を用いる場合には、光硬化性3Dディスペンサ用インク中1~20質量%であると好ましく、1~10質量%であるとより好ましい。
【0073】
色材として顔料を用いる場合には、顔料を分散させるため、光硬化性3Dディスペンサ用インクに分散剤を含有させることができる。
【0074】
分散剤としては、低分子系分散剤や高分子系分散剤が挙げられる。より具体的には、ノニオン系、カチオン系、アニオン系界面活性剤、ポリエステル系高分子分散剤、アクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤などが挙げられる。
【0075】
本実施形態の光硬化性3Dディスペンサ用インクは、その製造法によっては限定されないが、例えば、各種開始剤、ラジカル重合性化合物、必要により加えるその他の成分を混合し、攪拌することにより調製することができる。
【0076】
混合機としては、リードスクリュータイプのフィーダー、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパー、ホモジナイザー、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミルなどの容器駆動媒体ミル、サンドミルなどの高速回転ミル、攪拌槽型ミルなどの媒体攪拌ミル、ビーズミル、高圧噴射ミル、ディスパーなどが挙げられる。
【0077】
(三次元造形物の製造)
以下に本発明の光硬化性3Dディスペンサ用インクを用いた三次元造形物の製造の一態様について説明する。
【0078】
本発明の一実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、前述の光硬化性3Dディスペンサ用インクをディスペンサで吐出することによりインク層を形成するインク吐出工程と、前記インク層に、波長405nm~420nmのいずれかの波長の光を照射することにより前記インク層を硬化させて硬化層を形成する硬化工程と、を含む。このインク吐出工程と硬化工程とを複数回行うことによって複数の層で形成された三次元造形物が得られる。通常、インク吐出工程と硬化工程は交互に行うが、インク吐出工程を複数回行った後に、硬化工程を行うこともできる。
【0079】
各層のパターンの形成方法は従来の三次元造形法に類似するが、本発明に係る光硬化性3Dディスペンサ用インクは、内部硬化性に優れるので、ディスペンサからの吐出量を多くすることで形成するインク層の各層の厚みを厚くして積層する回数を減らすことができるので、生産性に優れる。また、インク吐出工程でインクを吐出した後の硬化するまでの時間が短いため、パターンの精度が高く、精度の高い三次元造形物を得ることができる。
【0080】
(インク吐出工程)
インク吐出工程では、前述の光硬化性3Dディスペンサ用インクをディスペンサで吐出することによりインク層を形成する。
【0081】
ノズルからのインクの吐出量は、特に限定されないが、例えば、着滴したインク層の厚みが0.1mm~2mmとなる量を吐出する。インク層の厚みとしては、1mm~2mmであると好ましい。本実施形態の光硬化性3Dディスペンサ用インクは、厚みのあるインク層を透過可能な波長405nm以上の光硬化性に優れており、層の厚みを1mm~2mm程度の厚さにしても、表面と内面を硬化させることができる。インクの厚みがこの範囲にあると、三次元造形物を構成する層数を少なくすることができるので、生産性が向上する。
【0082】
インク吐出工程を複数回行った後に、硬化工程を行う場合には、硬化するインク層の総厚みは、1mm~2mmであると好ましい。
【0083】
吐出するインクは、例えば、粘度が100mPa・s~1000mPa・sの範囲にあるものを吐出する。吐出するインクが粘度が1000mPa・s以下の場合は、そのまま吐出させることができる。
【0084】
また、静置したインクの粘度が1×104mPa・sを超える場合でインクがチクソ性を示すものであるときには、リードスクリュータイプのフィーダーで剪断して粘度を低下させたものをディスペンサーノズルから吐出させる。高剪断時にインクの粘度が低いと吐出が容易であり、着滴後のインクの粘度が高いほど、インクの着滴から光照射による硬化までの時間にインク層が変形することを抑えられ、積み上げ精度が上がる。
【0085】
(硬化工程)
硬化工程では、インク吐出工程で形成したインク層に、波長405nm~420nmのいずれかの波長の光を照射することにより前記インク層を硬化させて硬化層を形成する。
【0086】
照射光は波長405nm~420nmのいずれかの波長の光を含むものであれば特に限定されない。例えば、波長405nmのLED光源からの光を照射することができる。波長405nm~420nmの光は、インク層中を透過し内部に到達する。そして、本実施形態の光硬化性3Dディスペンサ用インクは、通常の紫外線硬化に用いられる波長365nm又は波長385nmに加えて、波長405nm以上の照射光に対しても優れた硬化性を示すため、インク層の外側と内側を硬化することができる。
【0087】
本実施形態に係るインクは、波長365nm、波長385nm等の紫外線波長の光の透過性が低いため、これらの波長の光源を用いると表面のみが硬化し、内部が硬化しにくいが、波長405nm~420nmの照射光に加えて、波長365nm又は波長385nmの光を照射することで、インク層の内部硬化に加えて表面硬化を促進することができる。
【0088】
(製造装置)
本実施形態の三次元造形物の製造に用いる製造装置は特に限定されないが、例えば、特許文献3に記載の立体物造形装置のように、ディスペンサユニットと、造形物を載置する載置台と、前記造形物に波長405nm~420nmのいずれかの波長の光を照射する光源(例えば波長405nmのLED)と、前記載置台と前記ディスペンサユニットとを相対移動させる駆動部と、前記立体物の前記形状情報に基づいて、前記駆動部の動作を制御する制御部と、を備える、立体物造形装置を用いることができる。
【0089】
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。各種インク試料の性能試験については、以下の方法で行った。
【0090】
(性能試験)
(1)チキソ性
(1-1)粘度/剪断速度
レオメータ(アントンパール(Anton Paar)社製、商品名:MCR302)を用いて、温度25℃で、剪断速度10-1(1/s)と剪断速度104(1/s)における十分に時間が経過して安定した後の粘度(mPa・s)を測定した。
(1-2)回復時間
レオメータ(アントンパール(Anton Paar)社製、商品名:MCR302)を用いて、粘度(mPa・s)を経時的に測定しながら温度25℃で、インクを10秒間低剪断速度(10-1(1/s))で剪断し、その後、急激に剪断速度を高剪断速度(104(1/s))まで上昇させて30秒間剪断し、その後、剪断速度を低剪断速度まで下げ、インクの粘度がこの後に最初の低剪断速度での粘度の80%に回復するまでの時間を測定した。
【0091】
(2)硬化性
所定の膜厚用のアプリケータを用いて平板上に塗工して、インク層試料を得る。得られたインク層試料を、所定の波長及び所定の出力の光源を1パス試験機にセットして、スキャン速度33.8cm/sでスキャンして露光量22811mJ/cm2で照射した。
照射後の塗膜の表面について、当該表面を指で撫でて、「乾いている」(〇)、「粘着する」(△)、「インクが付着し硬化していない」(×)の三段階評価を行った。また、光照射後の塗膜の内部について、塗膜を指で押して、「硬い」(〇)、「弾力がある」(△)、「凹む」(×)の三段階評価を行った。
【0092】
(3)皮膜性能
(3-1)硬度
JIS K7215に準じ、ショアAの条件で測定した。
【0093】
(3-2)耐衝撃性
JIS K5600-5-3に準じて、重り500g、激芯突端の直径1/2インチ、撃ち型と受け台50cmの条件で測定した。
【0094】
(3-3)曲げ
マンドレル屈曲試験機を用いて、膜厚0.5mmの条件で測定した。
【0095】
(実施例1)
アミノアルキルフェノン系開始剤として2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン(BASF社製、商品名:イルガキュア369)1.5部、ホスフィンオキサイド系開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(BASF社製、商品名:TPO)1.5部及びビズ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(IGMレジンズ社製、商品名:Omnirad819)2.5部、チオキサントン系増感剤として2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン(ラムソン(LAMBSON)社製、商品名:DETX)1.0部、アミン系開始剤として官能化アミン共同剤(DSM社製、商品名:AgiSyn008)2.0部、ラジカル重合性化合物として、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート(略式名:NPG(PO)2DA)(美源スペシャリティケミカル株式会社製、商品名:Miramer M216(略式名:PONPGDA M216)、粘度30mPa・s(25℃)、酸価0.3mgKOH/g、水酸基価20mgKOH/g、分子量328、屈折率1.447)52.93部及びビスフェノールA EO変性(n=10)ジアクリレート(略式名:BPA(EO)10DA)(美源スペシャリティケミカル株式会社製、商品名:Miramer M2100(略式名:BPE10A M2100)、粘度700mPa・s(25℃)、酸価0.2mgKOH/g、水酸基価20mgKOH/g、分子量770、屈折率1.516)30.0部、その他の添加剤として、ヒュームドシリカ(表面未処理シリカ、evonik社製、商品名:アエロジル A300)5.0部、シリコーン系表面調製剤の完全架橋型シリコーンポリエーテルアクリレート(エボニク リソース エフィシエンシイ社(Evonik Resource Efficiency GmbH)製、商品名:TEGO RAD2100、短鎖シロキサン骨格/長鎖有機変性高架橋型添加剤)0.07部、を添加、混合して、インクE1を得た。
【0096】
得られたインクE1の剪断速度1(1/s)及び1000(1/s)における粘度の測定結果を表1に示す。表1から、剪断速度が低い時は粘度が106mPa・s程度であったものが、剪断速度が上昇すると粘度が低下し、数百mPa・s程度まで低下しており、インクE1がチクソ性を示していることがわかる。
【0097】
得られたインクE1を、剪断速度1000(1/s)で剪断して粘度が676(mPa・s)の状態にする。この状態のインクE1を、膜厚0.5mm、1.0mm、1.5mm及び2.0mm用のアプリケータを用いて平板上に塗工し、インク層試料E1-1(膜厚0.5mm)、E1-2(1.0mm)、E1-3(1.5mm)、E1-4(2.0mm)を得た。
【0098】
インク層試料E1-1、E1-2、E1-3、E1-4を、光源(波長405nm、出力2500mW/cm2)を1パス試験機にセットしてスキャン速度33.8cm/sでスキャンして露光量22811mJ/cm2で照射し、硬化性を評価した。評価結果を表1に示す。いずれのインク層試料も硬化が良好であった。
【0099】
(実施例2)
ラジカル重合性化合物としての、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレートを67.93部に、ビスフェノールA EO変性(n=10)ジアクリレートを15.0部に代えた他は実施例1と同様にして、インクE2を得た。
【0100】
得られたインクE2を、膜厚0.5mm、1.0mm、1.5mm及び2.0mm用のアプリケータを用いて平板上に塗工し、インク層試料E2-1(膜厚0.5mm)、E2-2(1.0mm)、E2-3(1.5mm)、E2-4(2.0mm)を得た。
【0101】
インク層試料E2-1、E2-2、E2-3、E2-4を、光源(波長405nm、出力2500mW/cm2)を1パス試験機にセットしてスキャン速度33.8cm/sでスキャンして露光量22811mJ/cm2で照射し、硬化性を評価した。評価結果を表1に示す。膜厚1mm以下のインク層試料E2-1、E2-2は、表面及び内部の硬化が良好であった。
【0102】
(実施例3)
アミン系開始剤の官能化アミン共同剤(DSM社製、商品名:AgiSyn008)を用いず、ラジカル重合性化合物としてネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート84.95部のみを用い、シリコーン系表面調製剤のTEGO RAD2100を0.05部に代えた他は実施例1と同様にしてインクE3を得た。
【0103】
得られたインクE3を、膜厚0.5mm、1.0mm、1.5mm及び2.0mm用のアプリケータを用いて平板上に塗工し、インク層試料E3-1(膜厚0.5mm)、E3-2(1.0mm)、E3-3(1.5mm)、E3-4(2.0mm)を得た。
【0104】
インク層試料E3-1、E3-2、E3-3、E3-4を、光源(波長405nm、出力2500mW/cm2)を1パス試験機にセットしてスキャン速度33.8cm/sでスキャンして露光量22811mJ/cm2で照射し、硬化性を評価した。評価結果を表1に示す。膜厚1.5mmのインク層試料E3-3と膜厚2.0mmのインク層試料E3-4では、内部の硬化が不良であったが、膜厚1mm以下のインク層試料E3-1、E3-2は、表面及び内部の硬化が良好であった。
【0105】
(比較例1)
ホスフィンオキサイド系開始剤の2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド8.0部を用い、チオキサントン系増感剤として2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン2.0部のみを用い、
ラジカル重合性化合物としては、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート74.9部のみを用い、シリコーン系表面調製剤のTEGO RAD2100を0.07部用いた他は実施例1と同様にしてインクE4を得た。
【0106】
得られたインクE4を、膜厚0.5mm、1.0mm、1.5mm及び2.0mm用のアプリケータを用いて平板上に塗工し、インク層試料E4-1(膜厚0.5mm)、E4-2(1.0mm)、E4-3(1.5mm)、E4-4(2.0mm)を得た。
【0107】
インク層試料E4-1、E4-2、E4-3、E4-4を、光源(波長385nm、出力7900mW/cm2)を1パス試験機にセットしてスキャン速度33.8cm/sでスキャンして露光量2883mJ/cm2で照射し、硬化性を評価した。評価結果を表1に示す。E4-1のインク層試料では内部も硬化したが、E4-2、E4-3、E4-4のインク層試料では内部の硬化が不十分であった。E4-2、E4-3、E4-4のインク層は厚みが厚いため、光源の光がインク層内部に到達せず、ラジカルが発生しなかったと推定される。
【0108】
インク層試料E4-1、E4-2、E4-3、E4-4を、光源(波長405nm、出力2500mW/cm2)を1パス試験機にセットしてスキャン速度33.8cm/sでスキャンして露光量22811mJ/cm2で照射し、硬化性を評価した。評価結果を表1に示す。E4-1のインク層試料では内部も硬化したが、他の試料では内部の硬化が不十分であった。インク層の内部まで光が透過しているもののインク層内部でのラジカル発生量が不十分と推定される。
【0109】
【0110】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。