IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20240216BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 C
B60C11/12 B
B60C11/12 C
B60C11/03 300A
B60C11/03 300B
B60C11/03 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019194639
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021066387
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-10-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】赤司 篤政
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-101204(JP,A)
【文献】特開2010-215075(JP,A)
【文献】特開2018-203113(JP,A)
【文献】特開2001-063321(JP,A)
【文献】特開2012-171513(JP,A)
【文献】特開2003-205710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0224828(US,A1)
【文献】特開2020-196372(JP,A)
【文献】特開2012-32644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接する陸部を備え、
前記陸部は、タイヤ周方向に延びる周方向溝と、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝とによって区画されたブロックを複数含み、
前記ブロックには、複数のサイプが形成され、
前記複数のサイプは、トレッド面視において、前記ブロックの全域に亘って形成され、
前記複数のサイプは、トレッド面視において、前記ブロックの半分以上の領域に亘って延在し、
タイヤ回転に伴って前記路面に先に接する先着側に位置する前記複数のサイプの端部である第1端部は、前記陸部内において終端し、
タイヤ回転に伴って前記路面に後に接する後着側に位置する前記複数のサイプの端部である第2端部は、前記陸部の側壁に開口し、
前記ブロックの少なくとも一部では、トレッド面視において、前記第1端部と先着側の前記ブロックの側壁との間には、サイプが形成されておらず、
前記複数のサイプは、第1サイプと第2サイプとを含み、
前記第1サイプと前記第2サイプとは、タイヤ周方向に対して同一の向きに傾斜し、
前記第1サイプは、第1側壁に開口し、
前記第2サイプは、前記第1側壁と異なる第2側壁に開口するタイヤ。
【請求項2】
記幅方向溝は、タイヤ幅方向に対して傾斜する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記複数のサイプは、前記先着側に戻る部分を有すことなく、前記先着側から前記後着側に向けて延びる請求項1または2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷雪路の走行に対応したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
氷雪路の走行に対応したタイヤ、いわゆるスタッドレスタイヤ(ウインタータイヤなどとも呼ばれる)では、滑りの原因となるトレッドと路面との間に入り込んだ水膜を速やかに除去することが重要である。
【0003】
トレッドと路面との間に入り込んだ水膜を除去するため、内部に多くの気泡を有する発泡ゴムでトレッドを形成する方法が広く用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-223816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述ししたような氷雪路の走行に対応したタイヤの氷上性能をさらに向上するには、発泡ゴム以外の方法によっても、トレッドと路面との間に入り込んだ水膜を除去できることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、トレッドと路面との間に入り込んだ水膜をさらに効果的に除去し得るタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、タイヤ(空気入りタイヤ10)であって、路面と接するリブ状またはブロック状の陸部(例えば、陸部100)を備え、前記陸部は、複数のサイプ(サイプ101)を含み、タイヤ回転に伴って前記路面に先に接する先着側に位置する前記複数のサイプの端部である第1端部(端部102)は、前記陸部内において終端し、タイヤ回転に伴って前記路面に後に接する後着側に位置する前記複数のサイプの端部である第2端部(端部103)は、前記陸部の側壁に開口する。
【発明の効果】
【0008】
上述したタイヤによれば、トレッドと路面との間に入り込んだ水膜をさらに効果的に除去し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、空気入りタイヤ10のトレッドの一部平面展開図である。
図2図2は、トレッド20の一部拡大平面図である。
図3図3は、陸部100A及び陸部200Aを含むトレッド20の一部拡大平面図である。
図4A図4Aは、トレッド20に設けられる陸部110Aの単体平面図である。
図4B図4Bは、トレッド20に設けられる陸部110Bの単体平面図である。
図4C図4Cは、トレッド20に設けられる陸部110Cの単体平面図である。
図5A図5Aは、トレッド20に設けられる陸部120Aの単体平面図である。
図5B図5Bは、トレッド20に設けられる陸部120Bの単体平面図である。
図6A図6Aは、トレッド20に設けられる陸部130Aの単体平面図である。
図6B図6Bは、トレッド20に設けられる陸部130Bの単体平面図である。
図7A図7Aは、トレッド20に設けられる陸部140Aの単体平面図である。
図7B図7Bは、トレッド20に設けられる陸部140Bの単体平面図である。
図8A図8Aは、トレッド20に設けられる陸部150Aの単体平面図である。
図8B図8Bは、トレッド20に設けられる陸部150Bの単体平面図である。
図8C図8Cは、トレッド20に設けられる陸部150Cの単体平面図である。
図8D図8Dは、トレッド20に設けられる陸部150Dの単体平面図である。
図9A図9Aは、トレッド20に設けられる陸部160Aの単体平面図である。
図9B図9Bは、トレッド20に設けられる陸部160Bの単体平面図である。
図10A図10Aは、トレッド20に設けられる陸部170Aの単体平面図である。
図10B図10Bは、トレッド20に設けられる陸部170Cの単体平面図である。
図11A図11Aは、トレッド20に設けられる陸部180Aの単体平面図である。
図11B図11Bは、トレッド20に設けられる陸部180Bの単体平面図である。
図11C図11Cは、トレッド20に設けられる陸部180Cの単体平面図である。
図12A図12Aは、トレッド20に設けられる陸部190Aの単体平面図である。
図12B図12Bは、トレッド20に設けられる陸部190Bの単体平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0011】
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10のトレッドの一部平面展開図である。図1に示すように、空気入りタイヤ10は、路面と接する部分であるトレッド20を有する。トレッド20には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝とが形成される。
【0012】
以下、周方向溝とは、タイヤ周方向に対して±45度以内の角度で延びる直線状、曲線状またはジグザク状などの溝を意味し、幅方向溝とは、タイヤ幅方向に対して±45度以内の角度で延びる直線状、曲線状またはジグザク状などの溝を意味する。
【0013】
空気入りタイヤ10は、後述するように、複数のサイプを有し、氷雪路の走行に対応したタイヤである。このようなタイヤは、スタッドレスタイヤと呼ばれている。なお、スタッドレスタイヤに代えて、ウインタータイヤ或いはスノータイヤなどと呼ばれてもよい。
【0014】
本実施形態では、空気入りタイヤ10は、乗用自動車(SUV: Sport Utility Vehicleを含む)向けのスタッドレスタイヤであることを前提として説明するが、装着対象の車両は、特に、乗用自動車に限定されない。
【0015】
また、後述するように、空気入りタイヤ10は、車両への装着時に回転方向R(図1において不図示、図2参照)が指定される。但し、このような回転方向Rの指定は、必須ではない。
【0016】
また、サイプとは、路面に接地する陸部の接地面内では閉じる細溝であり、非接地時におけるサイプの開口幅は、一般的には、0.1mm~1.5mmである。
【0017】
図1に示すように、トレッド20には、周方向溝30、周方向溝40及び周方向溝50が形成される。周方向溝30と周方向溝50との間には、複数の陸部100が設けられる。タイヤ周方向において隣接する陸部100の間には、幅方向溝60が形成される。つまり、陸部100は、周方向溝30、周方向溝50及び幅方向溝60によって区画されたブロック状の陸部である。
【0018】
周方向溝30と周方向溝40との間には、複数の陸部200が設けられる。タイヤ周方向において隣接する陸部200の間には、幅方向溝70が形成される。つまり、陸部200は、周方向溝30、周方向溝40及び幅方向溝70とによって区画された陸部である。陸部200は、タイヤ赤道線CLを含む位置に設けられる。
【0019】
(2)陸部の構成
図2は、トレッド20の一部拡大平面図である。具体的には、図2は、周方向溝30を基準として、タイヤ周方向に沿って設けられる複数の陸部100と、複数の陸部200とを示す。
【0020】
図2に示すように、陸部100及び陸部200は、複数のサイプを含む。具体的には、陸部100は、複数のサイプ101を含む。また、陸部200は、複数のサイプ201を含む。
【0021】
本実施形態では、サイプ101及びサイプ201は、直線状である。但し、サイプ101及びサイプ201は、必ずしも直線状でなくてもよく、例えば、ジグザク状或いは波線状であってもよい。
【0022】
サイプ101は、タイヤ周方向に対して傾斜する。サイプ101は、端部102及び端部103を有する。同様に、サイプ201も、タイヤ周方向に対して傾斜する。サイプ201は、端部202及び端部203を有する。
【0023】
上述したように、空気入りタイヤ10は、回転方向Rに向かって回転する。このため、周方向溝30、幅方向溝60及び幅方向溝70に入り込んだ氷上の水分または融解により発生した水は、水流WFとなって、周方向溝30、幅方向溝60及び幅方向溝70内を流れる。
【0024】
ここで、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置するサイプ101の端部102(第1端部)は、陸部100内において終端する。つまり、端部102は、陸部100内に位置し、陸部100の側壁に開口していない。言い換えると、サイプ101の端部102は、ブロック状の陸部100を貫通していない。
【0025】
一方、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置するサイプ101の端部である端部103(第2端部)は、陸部100の側壁に開口する。つまり、端部103は、周方向溝30または幅方向溝60の何れかに連通する。言い換えると、サイプ101の端部103は、ブロック状の陸部100を貫通している。
【0026】
陸部200も同様の構成を有する。具体的には、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置するサイプ201の端部202(第1端部)は、陸部200内において終端する。つまり、端部202は、陸部200内に位置し、陸部200の側壁に開口していない。言い換えると、サイプ101の端部102は、ブロック状の陸部100を貫通していない。
【0027】
一方、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置するサイプ201の端部である端部203(第2端部)は、陸部200の側壁に開口する。つまり、端部203は、周方向溝30または幅方向溝70の何れかに連通する。言い換えると、サイプ101の端部103は、ブロック状の陸部100を貫通している。
【0028】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ101及びサイプ201は、次にように表現できる。サイプ101の端部102は、タイヤ回転に伴って陸部100に隣接する溝部、具体的には、周方向溝30及び幅方向溝60を流れる水の流れ(水流WF)に逆らう側に位置する。
【0029】
一方、サイプ101の端部103は、タイヤ回転に伴って陸部100に隣接する溝部(周方向溝30及び幅方向溝60)を流れる水の流れ(水流WF)に沿う側に位置する。
【0030】
ここで、「水の流れ(水流WF)に逆らう側」とは、水流WFと成す角度が鋭角になる側を意味する。また、「水の流れ(水流WF)に沿う側」とは、水流WFと成す角度が鈍角になる側を意味する。なお、「水の流れ(水流WF)に逆らう側」と、「水の流れ(水流WF)に沿う側」とは、両者の相対的な関係で定められてもよい。
【0031】
また、「水の流れ(水流WF)に逆らう側」と、「水の流れ(水流WF)に沿う側」とを判断する場合、何れかの周方向溝、つまり、所定の周方向溝を基準としてもよい。
【0032】
上述したように、本実施形態では、サイプ101及びサイプ201は直線状であるが、ジグザク状或いは波線状であってもよい。但し、サイプ101及びサイプ201は、先着側(つまり、回転方向R側)に戻る部分を有すことなく、先着側から後着側(つまり、回転方向Rの逆側)に向けて延びることが好ましい。
【0033】
また、上述したように、陸部100はブロック状である。本実施形態では、複数のサイプ101の端部103は、陸部100を形成する複数(4つ)の側壁のうち、半分(2つ)以下の側壁にのみ開口する。
【0034】
同様に、本実施形態では、複数のサイプ201の端部203は、陸部200を形成する複数(4つ)の側壁のうち、半分(2つ)以下の側壁にのみ開口する。
【0035】
(3)パターン例
次に、本実施形態に係る陸部のパターン例について説明する。以下説明する陸部のパターンは、上述した陸部100(または陸部200)に代えて、トレッド20のパターンの一部として適用し得る。以下、上述した陸部100(または陸部200)との異なる部分について主に説明し、同様の部分については、説明を適宜省略する。
【0036】
(3.1)例1
図3は、陸部100A及び陸部200Aを含むトレッド20の一部拡大平面図である。図3に示すように、陸部100A及び陸部200Aは、リブ状である。具体的には、陸部100A及び陸部200Aは、幅方向溝によって区画されておらず、タイヤ周方向において連続している。なお、陸部100A及び陸部200Aは、タイヤ周方向の全周に亘って連続していなくてもよく、タイヤ幅方向に延びる細溝が形成されていたり、タイヤ周方向における一部の領域では、図2に示したようなブロック状の陸部が形成されていたりしてもよい。
【0037】
陸部100Aは、複数のサイプ101Aを含む。また、陸部200Aは、複数のサイプ201Aを含む。サイプ101A及びサイプ201Aは、タイヤ周方向に対して傾斜する。なお、サイプ101A及びサイプ201Aは、タイヤ幅方向に対して傾斜すると表現してもよい。
【0038】
サイプ101Aの端部102は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部100A内において終端する。つまり、端部102は、陸部100A内に位置し、陸部100Aの側壁に開口していない。
【0039】
サイプ101Aの端部103は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部100Aの側壁に開口する。
【0040】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ101Aの端部102は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ101Aの端部103は、水流WFに沿う側に位置する。
【0041】
同様に、サイプ201Aの端部202は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部200A内において終端する。つまり、端部202は、陸部200A内に位置し、陸部200Aの側壁に開口していない。
【0042】
サイプ201Aの端部203は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部200Aの側壁に開口する。
【0043】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ201Aの端部202は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ201Aの端部203は、水流WFに沿う側に位置する。
【0044】
(3.2)例2
図4A図4Cは、トレッド20に設けられる陸部110A~陸部110Cの単体平面図である。陸部110A~陸部110Cは、四角形(平行四辺形)状のブロックである。
【0045】
図4Aに示すように、陸部110Aに形成されるサイプ111の端部112は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部110A内において終端する。
【0046】
サイプ111の端部113は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部110Aの側壁に開口する。
【0047】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ111の端部112は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ111の端部113は、水流WFに沿う側に位置する。
【0048】
なお、このような特徴は、サイプ111の延びる方向、つまり、タイヤ周方向(またはタイヤ幅方向)に対する角度が異なるものの、陸部110B及び陸部110Cに形成されるサイプ111も同様である。
【0049】
(3.3)例3
図5A及び図5Bは、トレッド20に設けられる陸部120A及び陸部120Bの単体平面図である。陸部120A及び陸部120Bは、三角形状のブロックである。
【0050】
図5Aに示すように、陸部120Aに形成されるサイプ121の端部122は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部120A内において終端する。
【0051】
サイプ121の端部123は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部120Aの側壁に開口する。
【0052】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ121の端部122は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ121の端部123は、水流WFに沿う側に位置する。
【0053】
なお、このような特徴は、サイプ121の延びる方向、つまり、タイヤ周方向(またはタイヤ幅方向)に対する角度が異なるものの、陸部120Bに形成されるサイプ121も同様である。
【0054】
(3.4)例4
図6A及び図6Bは、トレッド20に設けられる陸部130A及び陸部130Bの単体平面図である。陸部130A及び陸部130Bは、四角形(台形)状のブロックである。
【0055】
図6Aに示すように、陸部130Aに形成されるサイプ131の端部132は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部130A内において終端する。
【0056】
サイプ131の端部133は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部130Aの側壁に開口する。
【0057】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ131の端部132は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ121の端部133は、水流WFに沿う側に位置する。
【0058】
なお、このような特徴は、サイプ131の延びる方向、つまり、タイヤ周方向(またはタイヤ幅方向)に対する角度が異なるものの、陸部130Bに形成されるサイプ131も同様である。
【0059】
(3.5)例5
図7A及び図7Bは、トレッド20に設けられる陸部140A及び陸部140Bの単体平面図である。陸部140A及び陸部140Bは、五角形状のブロックである。
【0060】
図7Aに示すように、陸部140Aに形成されるサイプ141の端部142は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部140A内において終端する。
【0061】
サイプ141の端部143は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部140Aの側壁に開口する。
【0062】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ141の端部142は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ141の端部143は、水流WFに沿う側に位置する。
【0063】
なお、このような特徴は、サイプ141の延びる方向、つまり、タイヤ周方向(またはタイヤ幅方向)に対する角度が異なるものの、陸部140Bに形成されるサイプ141も同様である。
【0064】
(3.6)例6
図8A図8Dは、トレッド20に設けられる陸部150A~陸部150Dの単体平面図である。陸部150A~陸部150Dは、六角形状のブロックである。
【0065】
図8Aに示すように、陸部150Aに形成されるサイプ151の端部152は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部150A内において終端する。
【0066】
サイプ151の端部153は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部150Aの側壁に開口する。
【0067】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ151の端部152は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ151の端部153は、水流WFに沿う側に位置する。
【0068】
なお、このような特徴は、サイプ151の延びる方向、つまり、タイヤ周方向(またはタイヤ幅方向)に対する角度が異なるものの、陸部150B~陸部150Dに形成されるサイプ151も同様である。
【0069】
(3.7)例7
図9A及び図9Bは、トレッド20に設けられる陸部160A及び陸部160Bの単体平面図である。陸部160A及び陸部160Bは、八角形状のブロックである。
【0070】
図9Aに示すように、陸部160Aに形成されるサイプ161の端部162は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部160A内において終端する。
【0071】
サイプ161の端部163は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部160Aの側壁に開口する。
【0072】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ161の端部162は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ161の端部143は、水流WFに沿う側に位置する。
【0073】
なお、このような特徴は、端部163の延びる方向、つまり、タイヤ周方向(またはタイヤ幅方向)に対する角度が異なるものの、陸部160Bに形成されるサイプ161も同様である。
【0074】
(3.8)例8
図10A及び図10Bは、トレッド20に設けられる陸部170A及び陸部170Cの単体平面図である。陸部170A及び陸部170Cは、いわゆる矢羽状のブロックである。具体的には、陸部170A及び陸部170Cは、タイヤ周方向の一方に凸となる凸部と、タイヤ周方向の一方に凹となる凹部とを有する。
【0075】
図10Aに示すように、陸部170Aに形成されるサイプ171の端部172は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部170A内において終端する。
【0076】
サイプ171の端部173は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部170Aの側壁に開口する。
【0077】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ171の端部172は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ171の端部173は、水流WFに沿う側に位置する。
【0078】
なお、このような特徴は、サイプ171の延びる方向、つまり、タイヤ周方向(またはタイヤ幅方向)に対する角度が異なるものの、陸部170Cに形成されるサイプ171も同様である。
【0079】
(3.9)例9
図11A図11Cは、トレッド20に設けられる陸部180A~陸部180Cの単体平面図である。陸部180A~陸部180Cは、楔状のブロックである。
【0080】
図11Aに示すように、陸部180Aに形成されるサイプ181の端部182は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部180A内において終端する。
【0081】
サイプ181の端部183は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部180Aの側壁に開口する。
【0082】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ181の端部182は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ181の端部183は、水流WFに沿う側に位置する。
【0083】
なお、このような特徴は、サイプ181の延びる方向、つまり、タイヤ周方向(またはタイヤ幅方向)に対する角度が異なるものの、陸部180B及び陸部180Cに形成されるサイプ181も同様である。なお、陸部180Cでは、陸部180A及び陸部180Bとは、回転方向R(水流WF)が逆であることに留意されたい。
【0084】
(3.10)例10
図12A及び図12Bは、トレッド20に設けられる陸部190A及び陸部190Bの単体平面図である。陸部190A及び陸部190Bは、2つの四角形状のブロックがタイヤ周方向においてオフセットした状態で設けられたブロックである。
【0085】
図12Aに示すように、陸部190Aに形成されるサイプ191の端部192は、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置し、陸部190A内において終端する。
【0086】
サイプ191の端部193は、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置し、陸部190Aの側壁に開口する。
【0087】
また、水流WFとの関係を考慮すると、サイプ191の端部192は、水流WFに逆らう側に位置し、サイプ191の端部193は、水流WFに沿う側に位置する。
【0088】
なお、このような特徴は、サイプ191の延びる方向、つまり、タイヤ周方向(またはタイヤ幅方向)に対する角度が異なるものの、陸部190Bに形成されるサイプ191も同様である。
【0089】
(4)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、空気入りタイヤ10によれば、タイヤ回転に伴って路面に先に接する先着側に位置する複数のサイプの端部(第1端部)は、陸部内において終端する。一方、タイヤ回転に伴って路面に後に接する後着側に位置する複数のサイプの端部(第2端部)は、陸部の側壁に開口する。
【0090】
言い換えると、タイヤ回転に伴って陸部に隣接する溝部を流れる水の流れ(水流WF)に逆らう側に位置する複数のサイプの端部(第1端部)は、陸部内において終端する。一方、タイヤ回転に伴って陸部に隣接する溝部を流れる水の流れ(水流WF)に沿う側に位置する複数のサイプの端部(第2端部)は、陸部の側壁に開口する。
【0091】
このため、水流WFに逆らう側に位置するサイプの端部は、クローズしており、陸部への水の浸入を効果的に抑制する。一方、水流WFに沿う側に位置するサイプの端部は、陸部に隣接する周方向溝または幅方向溝にオープンとなっており、陸部と路面との間に入り込んだ水を効果的に排出する(逃がす)ことができる。
【0092】
つまり、水流WFの関係から、水が入りやすい水流WFに逆らう側(つまり、先着側)は、クローズドサイプにすることによって、陸部への水の浸入を抑制する。一方、水が浸入してこない水流WFに沿う側(つまり、後着側)は、オープンサイプとすることによって、陸部からの水の逃げ場を確保する。
【0093】
これにより、陸部と路面との間に水が介在する状態を大幅に低減できる。すなわち、空気入りタイヤ10によれば、陸部に発泡ゴムを用いなくても、トレッド20と路面との間に入り込んだ水膜をさらに効果的に除去し得る。これにより、特に、氷上路面での駆動性能(トラクション)を向上し得る。
【0094】
また、陸部に形成されるサイプの全ての端部を陸部内で終端、つまり、クローズドサイプにすると、陸部の剛性が高くなり過ぎる場合があるが、空気入りタイヤ10によれば、サイプの一方の端部がオープンとなることによって、陸部に適切な剛性を付与することができ、このような状態も回避できる。
【0095】
上述したように、複数のサイプは、タイヤ周方向に対して傾斜していてもよい。この場合、水流WFに対する陸部への水の浸入抑制と、陸部からの水の排出促進とを、バランス良く達成し得る。
【0096】
また、本実施形態では、複数のサイプは、先着側に戻る部分を有すことなく、先着側から後着側に向けて延びる。このため、サイプに入り込んだ水を効果的に排出できる。
【0097】
さらに、本実施形態では、陸部は、周方向溝と幅方向溝とによって区画されたブロック状である。また、水流WFに沿う側(後着側)のサイプの端部(第2端部)は、ブロック状の陸部を形成する複数の側壁のうち、半分以下の側壁にのみ開口する。
【0098】
このため、陸部の必要な剛性を確保しつつ、トレッド20と路面との間に入り込んだ水膜を効果的に除去し得る。
【0099】
(5)その他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0100】
例えば、上述した実施形態では、基本的に、陸部に形成される全てのサイプが、先着側の端部クローズ、後着側の端部オープンの構成を有していたが、陸部に形成される一部のサイプは、必ずしもこのような構成を有していなくても構わない。例えば、両端部がオープンまたはクローズになっていてもよい。
【0101】
上述した実施形態では、例1~10を用いて陸部のパターン例について説明したが、トレッド20には、複数パターン例が混在していてもよい。例えば、トレッド20は、四角形状のブロック(例2)と、三角形状のブロック(例3)とが混在していてもよい。
【0102】
上述した実施形態では、陸部に発泡ゴムを用いなくても、トレッド20と路面との間に入り込んだ水膜をさらに効果的に除去し得る旨説明したが、トレッド20を構成する陸部に発泡ゴムを用いることを除外するものではない。
【0103】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0104】
10 空気入りタイヤ
20 トレッド
30, 40, 50 周方向溝
60, 70 幅方向溝
100,100A, 110A~110C, 120A, 120B, 130A, 130B, 140A, 140B150A~150D, 160A, 160B, 170A, 170C, 180A~180C, 190A, 190B, 200, 200A 陸部
101, 101A, 111, 121, 131, 141, 151, 161, 171, 181, 191, 201, 201A サイプ
102, 103, 112, 113, 122, 123, 132, 133, 142, 143, 152, 153, 162, 163, 172, 173, 182, 183, 192, 193, 202, 203 端部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B