(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-15
(45)【発行日】2024-02-26
(54)【発明の名称】流体制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 7/00 20060101AFI20240216BHJP
G05D 16/10 20060101ALI20240216BHJP
F16K 17/04 20060101ALI20240216BHJP
【FI】
G05D7/00 Z
G05D16/10 Z
F16K17/04 C
(21)【出願番号】P 2019197538
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板原 光克
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-089007(JP,U)
【文献】米国特許第04133343(US,A)
【文献】西独国特許出願公開第01550150(DE,A)
【文献】特開2016-001455(JP,A)
【文献】特開2017-084061(JP,A)
【文献】特開2017-040502(JP,A)
【文献】特開平09-280078(JP,A)
【文献】特開2015-146163(JP,A)
【文献】特開2004-078347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00
G05D 16/10
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバルブを備えている流体制御装置であって、
複数のバルブのうちの少なくとも1個のバルブが、自身のハウジング内と外部空間を連通する第1連通路を有する第1バルブであり、
第1バルブ以外のバルブが、自身のハウジング内と外部空間を
直接連通する通路を有して
おらず、第1連通孔を介して間接的に外部空間と連通している第2バルブであり、
第1バルブのハウジング内と第2バルブのハウジング内が、第2連通路によって連通されており、
第1バルブは、有底筒状の弁体を含んで
おり、
前記弁体の側面に貫通孔が設けられており、
前記貫通孔によって、第2連通路、前記弁体の内部、及び外部空間を連通する流路が形成されている流体制御装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の流体制御装置であって、
前記弁体は、円筒状の外周面の円の一部を切り取った形状であり、前記外周面の切取り部分に
前記貫通孔が設けられてい
る流体制御装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の流体制御装置であって、
第1バルブのうちの少なくとも1個のバルブが、流体が移動する流体移動空間の圧力が上昇したときに流体移動空間と外部空間を連通して流体を外部空間に放出するリリーフバルブであり、
リリーフバルブは、流体移動空間とハウジング内を連通する流体導入孔と、ハウジング内と外部空間を連通する流体排出孔と、ハウジング内を移動して流体導入孔を開閉する弁体とを備えており、
第1連通路が流体排出孔を含んでおり、第2連通路が弁体が配置されている空間に開口している流体制御装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の流体制御装置であって、
第1バルブが全てリリーフバルブであり、
流体排出孔に配管が接続されている流体制御装置。
【請求項5】
請求項
3又は4に記載の流体制御装置であって、
弁体は、ハウジングの内面に接触して摺動面を形成する大径部と、ハウジングの内面と非接触の小径部を有しており、
小径部が、大径部よりも流体導入孔側に設けられており、
第2連通路が、小径部と対向する位置で第1バルブのハウジング内に開口している流体制御装置。
【請求項6】
請求項
3から5のいずれか一項に記載の流体制御装置であって、
リリーフバルブは、流体導入孔の周囲に設けられている弁座と、弁体の端部に設けられているとともに弁座と接触して流体導入孔をシールするシール部と、弁体を弁座に付勢する付勢部材と、を備えており、
付勢部材がシール部に接触している流体制御装置。
【請求項7】
燃料供給源と、燃料電池と、燃料供給源と燃料電池を接続している燃料供給路と、燃料供給路上に配置されている請求項
3から6のいずれか一項に記載の流体制御装置と、を備えており、
第2バルブのうちの少なくとも1個が、燃料供給路内の圧力を調整する減圧バルブであり、
リリーフバルブが、減圧バルブよりも燃料電池側に配置されている燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、流体制御装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数のバルブ(定流量機能部、可変制御機能部)を備えている流体制御装置(流量制御弁)が開示されている。特許文献1の各バルブは、ハウジング内と外部空間を連通する連通路(呼吸穴)を備えている。連通路を設けることにより、温度変化等に起因してハウジング内の圧力が変化することを抑制することができる。換言すると、連通孔を設けることにより、ハウジング内の圧力が一定に保たれ、バルブを精度よく開閉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、ハウジング内と外部空間を連通する連通路を設けることによって、ハウジング内の圧力変化を抑制することができる。しかしながら、連通路を設けることにより、外部空間からハウジング内に異物が侵入することが起こり得る。ハウジング内に異物が侵入すると、流体に異物が混入したり、バルブが劣化することが起こり得る。そのため、ハウジング内に異物が侵入することを抑制する技術が必要とされる。本明細書は、異物の侵入が抑制された新規な流体制御装置を実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、複数のバルブを備えている流体制御装置である。この流体制御装置では、複数のバルブのうちの少なくとも1個のバルブが、自身のハウジング内と外部空間を連通する第1連通路を有する第1バルブであり、第1バルブ以外のバルブが、自身のハウジング内と外部空間を連通する通路を有していない第2バルブであり、第1バルブのハウジング内と第2バルブのハウジング内が、第2連通路によって連通されていてよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、上記第1技術の流体制御装置であって、第1バルブのうちの少なくとも1個のバルブが、流体が移動する流体移動空間の圧力が上昇したときに流体移動空間と外部空間を連通して流体を外部空間に放出するリリーフバルブであってよい。リリーフバルブは、流体移動空間とハウジング内を連通する流体導入孔と、ハウジング内と外部空間を連通する流体排出孔と、ハウジング内を移動して流体導入孔を開閉する弁体を備えていてよい。また、第1連通路が流体排出孔を含んでおり、第2連通路が弁体が配置されている空間に開口していてよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、上記第2技術の流体制御装置であって、第1バルブが全てリリーフバルブであり、流体排出孔に配管が接続されていてよい。
【0008】
本明細書で開示する第4技術は、上記第2又は第3技術の流体制御装置であって、弁体は、ハウジングの内面に接触して摺動面を形成する大径部と、ハウジングの内面と非接触の小径部を有していてよい。また、小径部が、大径部よりも流体導入孔側に設けられおり、第2連通路が、小径部と対向する位置で第1バルブのハウジング内に開口していてよい。
【0009】
本明細書で開示する第5技術は、上記第2から第4技術のいずれかの流体制御装置であって、リリーフバルブは、流体導入孔の周囲に設けられている弁座と、弁体の端部に設けられているとともに弁座と接触して流体導入孔をシールするシール部と、弁体を弁座に付勢する付勢部材を備えており、付勢部材がシール部に接触していてよい。
【0010】
本明細書で開示する第6技術は、燃料電池システムである。この燃料電池システムは、燃料供給源と、燃料電池と、燃料供給源と燃料電池を接続している燃料供給路と、燃料供給路上に配置されている上記第2から第5技術のいずれかの流体制御装置を備えていてよい。また、この燃料電池システムでは、第2バルブのうちの少なくとも1個が燃料供給路内の圧力を調整する減圧バルブであり、リリーフバルブが減圧バルブよりも燃料電池側に配置されていてよい。
【発明の効果】
【0011】
第1技術によると、全てのバルブについて、ハウジング内の圧力を流体制御装置の外部空間の圧力(大気圧)に維持することができる。温度変化等に起因するハウジング内の圧力変動が抑制されるので、バルブが開閉する圧力が設定値からずれることが抑制される。また、第1技術によると、ハウジング内と外部空間を連通する通路(第1連通路)を全てのバルブが有している従来の流体制御装置と比較して、第1連通路の数を削減することができる。その結果、第1技術によると、従来の流体制御装置よりもバルブ内(ハウジング内)への異物の侵入を抑制することができる。
【0012】
第2技術によると、第1連通路を形成するためのコストを削減することができる。典型的に、リリーフバルブは、ハウジング内の流体を外部空間に排出するための流体排出孔を有している。そのため、第1バルブのうちの少なくとも1個のバルブがリリーフバルブであれば、流体排出孔を流体制御装置の第1連通路として利用することができる。
【0013】
第3技術によると、流体排出孔(第1連通路)の外部空間への実質的な開口位置を調整することができる。すなわち、流体制御装置の配置場所を変更することなく、流体排出孔の実質的な開口位置(配管の開口位置)を異物が侵入し難い位置に調整することができる。その結果、流体制御装置のハウジング内、あるいは、流体が移動する流体移動空間に異物が侵入することをさらに抑制することができる。
【0014】
第4技術によると、大径部によってハウジング内における弁体の動作を安定させることができ、小径部によって第2連通路とリリーフバルブのハウジング内を確実に常時連通させることができる。また、小径部を大径部よりも流体導入孔側に設けることにより、流体移動空間からハウジング内に流体がスムーズに移動することができる。
【0015】
第5技術によると、リリーフバルブの軸方向(弁体が移動する方向)の長さを短くすることができる。典型的に、リリーフバルブは、弁体の端部(弁座側)に流体を流通させるための貫通孔を有している。そして、付勢部材を貫通孔が設けられている位置(弁体の端部)を避けて弁体に接触させることが多い。すなわち、一般的なリリーフバルブでは、付勢部材を、弁体の軸方向中間部分に接触させる。付勢部材をシール部(弁体の端部)に接触させることにより、付勢部材のサイズ(付勢部材の付勢力)を変化させることなく、リリーフバルブのサイズを小さくすることができる。その結果、流体制御装置のサイズを小さくすることができる。
【0016】
第6技術によると、減圧バルブに異物が侵入することを抑制することができる。また、リリーフバルブを減圧バルブよりも下流(燃料電池側)に配置することにより、減圧バルブの状態に影響されることなく、流体移動空間(燃料供給路)の圧力に応じてリリーフバルブが作動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】第1実施例の流体制御装置において、流体を遮断している状態の断面図を示す。
【
図3】第1実施例の流体制御装置において、流体が流通している状態の断面図を示す。
【
図4】第1実施例の流体制御装置において、リリーフバルブが作動した状態の断面図を示す。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿った断面図を示す。
【
図8】
図7のVIII-VIII線に沿った断面図を示す。
【
図10】第5実施例の流体制御装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(燃料電池システム100)
図1を参照して、流体制御装置60を備えた燃料電池システム100について説明する。燃料電池システム100は、例えば車両に搭載され、車両に搭載されたモータ(図示省略)を駆動するための電力を発電する。燃料電池システム100は、水素と酸素の化学反応を利用して電力を発電する。燃料電池システム100は、燃料電池80と、燃料電池80に水素を供給する水素ガス供給路90と、燃料電池80から使用後の水素を排出する水素排出路86と、燃料電池80に空気(酸素)を供給する空気供給路82と、燃料電池80から使用後の空気(酸素)を排出する空気排出路84を備えている。水素ガス供給路90は、燃料供給路の一例であり、流体移動空間の一例でもある。
【0019】
水素ガス供給路90は、水素ボンベ92に接続される。水素ボンベ92は、燃料供給源の一例である。また、水素ガス供給路90には、流体制御装置60及び水素ガス供給器88が配置されている。水素ガス供給器88は、流体制御装置60より下流(燃料電池80側)に配置されている。流体制御装置60は、水素ボンベ92から排出された水素ガスの圧力を減圧するとともに、水素ガス供給路90の圧力が上昇することを抑制する。流体制御装置60は、減圧バルブ10とリリーフバルブ50を備えている。減圧バルブ10で水素ガス供給路90を流通する(水素ガス供給器88に送り出す)水素ガスの圧力を調圧(減圧)し、リリーフバルブ50は水素ガス供給路90の圧力が所定値を超えたときに作動して水素ガス供給路90内の圧力を低減する。なお、詳細は後述するが、リリーフバルブ50は、減圧バルブ10より下流(燃料電池80側)に配置されている。
【0020】
水素ガス供給器88は、燃料電池80に供給する水素ガスの圧力及び流量を調整する。水素ガス供給器88内には、インジェクタ(図示省略)が配置されている。水素排出路86には、第1バルブ87が設けられている。第1バルブ87を開弁することにより、燃料電池80で使用された後の水素ガス(水素オフガス)が排出される。
【0021】
空気供給路82には、ポンプ83が配置されている。ポンプ83は、燃料電池80に供給する空気の流量を調整する。空気排出路84には、第2バルブ85が設けられている。第2バルブ85を開弁することにより、燃料電池80で使用された後の空気(空気オフガス)が排出される。リリーフバルブ50から排出された水素ガス、水素オフガス及び空気オフガスは、希釈器(図示省略)に導入された後に流体制御装置60の外部(大気)に放出されることもある。なお、燃料電池80の構造は特に限定されず、公知のものを用いることができる。また、燃料電池80の発電メカニズムについても公知のため、説明を省略する。
【0022】
(第1実施例:流体制御装置60)
図2から
図4を参照し、流体制御装置60について説明する。なお、
図2は、燃料電池80が発電を行っていない(燃料電池80に水素ガスが供給されていない)ときの流体制御装置60を示している。
図3は、燃料電池80が発電を行っている(燃料電池80に水素ガスが供給されている)ときの流体制御装置60を示している。
図4は、水素ガス供給路90内の圧力が所定値を超えたときの流体制御装置60を示している。
【0023】
図2に示すように、流体制御装置60は、減圧バルブ10とリリーフバルブ50を備えている。減圧バルブ10は第2バルブの一例であり、リリーフバルブ50は第1バルブの一例である。減圧バルブ10は、ハウジング25と、弁体12と、ピストン20を備えている。弁体12及びピストン20は、ハウジング25内に配置されており、ハウジング25内を第1室4,第2室28,水素ガス流通路64に区画している。弁体12が第1室4内に配置されており、ピストン20が第2室28内に配置されている。詳細は後述するが、水素ガス流通路64は水素ガス供給路90(
図1も参照)に接続されており、燃料供給路の一例であるとともに流体移動空間の一例である。
【0024】
第1室4は、水素ガス流入孔2と水素ガス流出孔16を備えている。水素ガス流入孔2は、配管90a(水素ガス供給路90の一部)を介して、水素ボンベ92(
図1を参照)に接続されている。水素ガス流出孔16は、弁体12によって塞がれている。弁体12は、コイルばね6によって水素ガス流出孔16が設けられている壁面(弁座)に付勢されている。弁体12が水素ガス流出孔16を塞いでいるときは、燃料電池80に水素ガスが供給されない。水素ガス流出孔16が設けられている壁面(弁座)にはシール材(ゴムシート)14が配置されている。弁体12がシール材14を介して弁座に接することにより、水素ガス流出孔16が確実に塞がれる。なお、弁体12とハウジング25の間には隙間8が設けられている。水素ガス流入孔2から流入した水素ガスは、隙間8を通じて水素ガス流出孔16に移動する。
【0025】
第2室28は、ハウジング25とプレート26とピストン20によって画定されている。プレート26は、ハウジング25に固定されている。ピストン20は、ハウジング25内に配置されている。ピストン20は、ハウジング25に固定されておらず、コイルばね24によってプレート26に支持されている。すなわち、コイルばね24は、ハウジング25とピストン20に接続されている。ピストン20とハウジング25の間にはピストンシール(Oリング)18が配置されている。ピストン20は、第2室28と水素ガス流通路64を区画している。第2室28内は、大気圧に維持されている。但し、第2室28は、流体制御装置60の外部空間(大気)と直接連通する通路を有していない。詳細は後述するが、第2室28は、ハウジング連通路30を通じてリリーフバルブ50内の空間と連通しており、リリーフバルブ50を介して外部空間と連通している。ハウジング連通路30は、第2連通路の一例である。なお、ピストン20は、第2室28と水素ガス流通路64の圧力差に応じて、ハウジング25内で移動する(ハウジング25に対して摺動する)。具体的には、ピストン20は、ハウジング25内において、コイルばね24の圧縮又は伸張力と、第2室28と水素ガス流通路64の圧力差とがバランスする場所に位置する。
【0026】
水素ガス流通路64は、水素ガス供給孔62を備えている。水素ガス供給孔62は、配管90b(水素ガス供給路90の一部)を介して、水素ガス供給器88(
図1を参照)に接続されている。また、水素ガス流通路64には、リリーフバルブ50が接続されている。なお、水素ガス流通路64は、第1室4及び第2室28より水素ガス流路の下流側に位置している。すなわち、リリーフバルブ50は、第1室4及び第2室28(減圧バルブ10の主要部品である弁体12及びピストン20が配置されている空間)よりもガス流路の下流側(燃料電池80側)に配置されている。
【0027】
リリーフバルブ50は、ハウジング52と、プレート51と、コイルばね40と、弁体44を備えている。ハウジング52には、水素ガス流通路64と連通している水素ガス導入孔54と、外部空間(大気)と連通している水素ガス排出孔55が設けられている。水素ガス導入孔54は流体導入孔の一例であり、水素ガス排出孔55は流体排出孔の一例である。プレート51は、ハウジング52に固定されている。なお、プレート51は、開口を有しており、水素ガス排出孔55を塞いでいない。プレート51は、コイルばね40を位置決めしている。弁体44は、水素ガス導入孔54を塞いでいる。具体的には、弁体44は、コイルばね40によって水素ガス導入孔54が設けられている壁面(弁座56)に付勢されている。コイルばね40は、付勢部材の一例である。弁体44の端部にはシール材(ゴムシート)48が固定されている。シール材48が水素ガス導入孔54の周囲に設けられている弁座56に接することにより、水素ガス導入孔54が確実に塞がれる。
【0028】
弁体44は、大径部44aと小径部44bを有する有底筒状であり、小径部44bの端部が塞がれている。小径部44bは、大径部44aよりも水素ガス導入孔54側に設けられている。シール材48は、小径部44bの端部(底部の外面)に固定されている。小径部44bの端部及びシール材48が、水素ガス導入孔54を塞ぐ(シールする)シール部を構成している。大径部44aは、ハウジング52の内面と接触している。大径部44aの外面は、ハウジング52に対する摺動面として機能する。一方、小径部44bは、ハウジング52と非接触である。そのため、小径部44bとハウジング52の間には隙間が設けられている。小径部44bとハウジング52の隙間は、ハウジング連通路30を介して第2室28と連通している。すなわち、ハウジング連通路30の開口は、弁体44の小径部44bに対向している。また、小径部44bの側面(周面)には、貫通孔46が設けられている。貫通孔46によって、小径部44bの外側空間(小径部44bとハウジング52の隙間)と小径部44bの内側のハウジング内空間32が連通している。ハウジング内空間32は、貫通孔46及びハウジング連通路30を介して第2室28と連通している。
【0029】
水素ガス排出孔55には配管70が圧入されている。配管70の他端(図示省略)は、大気に開放されている。そのため、ハウジング内空間32は大気と連通しており、ハウジング内空間32は大気圧に維持される。水素ガス排出孔55及び配管70は、第1連通路の一例である。上記したように、ハウジング内空間32は、第2室28と連通している。その結果、流体制御装置60では、ハウジング内空間32及び第2室28が大気圧に維持される。なお、配管70を用いることにより、大気に対するリリーフバルブ50の開口の向きを変化させることができる。具体的には、配管70の形状を調整することにより、例えば水素ガス排出孔55の開口が重力方向下向きの場合であっても、配管70の他端の開口(実質的に、大気に対するリリーフバルブ50の開口)を重力方向上向き等に変化させることができる。あるいは、異物が混入する可能性が低い場所に配管70の他端の開口が位置するように、配管70を伸張させることもできる。
【0030】
(減圧バルブ10の動作)
図3を参照し、燃料電池80に水素ガスが供給されているときの減圧バルブ10の動作(流体制御装置60の状態)を説明する。水素ガス供給器88が燃料電池80に水素ガスの供給を開始すると、水素ガス流通路64内の圧力が低下する。水素ガス流通路64内の圧力が低下すると、ピストン20が、第2室28と水素ガス流通路64の圧力差に応じて、弁体12に向けて移動する。ピストン20が弁体12を弁座(シール材14)から離反させ、水素ガス流出孔16を介して第1室4と水素ガス流通路64が連通する。その結果、矢印3に示すように、水素ガスが水素ガス流通路64に流通する。
【0031】
なお、ピストン20は、第2室28と水素ガス流通路64の圧力差に応じて移動量が変化する。第2室28内の圧力は一定(大気圧)なので、燃料電池80に供給する水素ガス必要量が増加して水素ガス流通路64内の圧力が低下する程、ピストン20は、弁体12側に移動する。その結果、水素ガス流出孔16の開度が増大し、水素ガス流通路64に供給される水素ガス量が増加し、燃料電池80に必要量の水素ガスを供給することができる。一方、燃料電池80に供給する水素ガス必要量が減少すると、水素ガス流出孔16の開度が低下し、水素ガス流通路64に供給される水素ガス量が減少し、水素ガス流通路64内の圧力が過大に上昇することを防止することができる。減圧バルブ10(ピストン20及び弁体12)は、水素ガス流通路64内の圧力を適値に調整する圧力調整バルブと捉えることもできる。
【0032】
(リリーフバルブ50の動作)
図4を参照し、水素ガス流通路64内の圧力が所定値を超えたときのリリーフバルブ50の動作(流体制御装置60の状態)を説明する。水素ガス流通路64内の圧力が所定値を超えると、第2室28と水素ガス流通路64の圧力差に応じてピストン20が弁体12から離れる方向に移動する。その結果、水素ボンベ92から水素ガス流通路64内への水素ガスの供給が遮断される。また、ハウジング内空間32と水素ガス流通路64の圧力差によって、弁体44が弁座56から離れる方向に移動する。その結果、水素ガス導入孔54及び貫通孔46を通じて水素ガス流通路64とハウジング内空間32が連通する。水素ガス流通路64内の水素ガスは、水素ガス導入孔54.貫通孔46,ハウジング内空間32,水素ガス排出孔55,配管70を通じて大気に放出される。その結果、水素ガス流通路64内の圧力が低下する。なお、水素ガス流通路64内の圧力が所定値以下に低下すると、コイルばね40の付勢力によって、弁体44(シール材48)が弁座56に接する。すなわち、リリーフバルブ50が閉じて、水素ガス導入孔54が塞がれる。
【0033】
(流体制御装置60の利点)
上記したように、減圧バルブ10は、第2室28と水素ガス流通路64の圧力差に応じて水素ガス流通路64に供給する水素ガス量を調整する。また、リリーフバルブ50は、ハウジング内空間32と水素ガス流通路64の圧力差によって開閉する。流体制御装置60では、第2室28及びハウジング内空間32が大気と連通しており、内部圧力が一定(大気圧)に維持される。そのため、水素ガス流通路64内の圧力変化に応じて予め設定した圧力で駆動することができる。なお、例えば、第2室28、及び/又は、ハウジング内空間32が大気と連通しておらず、閉鎖空間である場合、温度変化等によって第2室28内、及び/又は、ハウジング内空間32内の圧力が変動する。第2室28内、及び/又は、ハウジング内空間32内の圧力が変動すると、減圧バルブ10、及び/又は、リリーフバルブ50が正確に駆動できなくなることがある。
【0034】
流体制御装置60では、減圧バルブ10(第2室28)は、直接大気と連通する通路(第1連通路)を有していない。第2室28は、リリーフバルブ50を介して大気と連通している。流体制御装置60は、各バルブ(減圧バルブ及びリリーフバルブ)に大気連通路(第1連通路)を設ける形態と比較して、大気連通路の数を少なくすることができる。その結果、大気連通路を通じてバルブ(減圧バルブ及びリリーフバルブ)内に異物が侵入する現象を起こり難くすることができる。
【0035】
また、流体制御装置60では、減圧バルブ10に第1連通路を設けず、リリーフバルブ50に第1連通路を設けている。一般的なリリーフバルブは、その機能より、第1連通路(直接大気と連通する通路)が標準的に設けられる。すなわち、流体制御装置60は、新たな通路を設けることなく、減圧バルブ10(第2室28)とリリーフバルブ50をバルブ連通孔(第2連通孔)30で接続するだけで、第2室28とハウジング内空間32の双方を一定(大気圧)に維持することができる。
【0036】
(第2~第5実施例)
図5から
図10を参照し、流体制御装置260,360,460,560について説明する。流体制御装置260~560は、流体制御装置60の変形例であり、何れも
図1に示す燃料電池システム100の流体制御装置60に代えて利用することができる。以下の説明において、流体制御装置260~560において流体制御装置60と実質的に同じ構成については、流体制御装置60と同一又は下二桁が同一の参照番号を付すことにより説明を省略することがある。
【0037】
(第2実施例:流体制御装置260)
図5に示すように、流体制御装置260は、減圧バルブ10とリリーフバルブ250を備えている。減圧バルブ10とリリーフバルブ250は、共通のハウジング225によって構成されている。リリーフバルブ250は、ハウジング225,プレート251,コイルばね40,弁体244によって構成されている。ハウジング225には、水素ガス流通路64と連通する連通孔(水素ガス導入孔)254と、外部空間(大気)と連通する水素ガス排出孔255が形成されている。プレート251は、ハウジング225に固定され、コイルばね40を位置決めしている。なお、プレート251には大気と連通する孔が設けられていない。
【0038】
弁体244は、コイルばね40に付勢され、弁座56に接触し、連通孔254を塞いでいる。弁体244は、大径部244aと小径部244bと底部245を有する有底筒状である。底部245は、小径部244bの端部を塞いでいる。底部245には、シール材248が固定されている。底部245とシール材248が、連通孔(水素ガス導入孔)254を塞ぐシール部として機能している。また、リリーフバルブ250では、コイルばね40は、底部245に接している。すなわち、コイルばね40は、シール部(小径部244bの端部)に接している。大径部244aの外面は、ハウジング225に対する摺動面として機能する。また、小径部244bはハウジング225と非接触であり、小径部244bとハウジング225の間には隙間233が設けられている。なお、リリーフバルブ250では、弁体244の周面に貫通孔が設けられていない(
図2を比較参照)。
【0039】
隙間233は、水素ガス排出孔255を通じて大気と連通している。流体制御装置260では、水素ガス排出孔255が第1連通孔の一例である。また、隙間233は、ハウジング連通路30を介して第2室28と連通している。第2室28は、ハウジング連通路30,隙間233及び水素ガス排出孔255を介して大気と連通している。リリーフバルブ250では、水素ガス流通路64内の圧力が所定値を超えると、弁体244が弁座256から離れる方向に移動し、水素ガス流通路64内の水素ガスが隙間233,水素ガス排出孔255を通じて大気に放出される。なお、水素ガス排出孔255に配管(
図2~
図4も参照)を接続してもよい。
【0040】
流体制御装置260では、コイルばね40が、弁体244の底部245に接している。そのため、流体制御装置260は、コイルばねが弁体の中間部分(例えば、流体制御装置60における弁体244の大径部244aと小径部244bの境界部分の段差面)に接する形態と比較して、リリーフバルブ250の軸方向サイズ(弁体244が移動する方向のサイズ)を小さくすることができる。その結果、流体制御装置260は、例えば流体制御装置60と比較して、流体制御装置全体のサイズを小さくすることができる。また、水素ガス排出孔255を小径部244bの周面に対向する位置に設けることにより、弁体244の周面に貫通孔を設ける必要がなく、弁体244の加工コストを低減することもできる。
【0041】
(第3実施例:流体制御装置360)
図6から
図8を参照し、流体制御装置360について説明する。
図6に示すように、流体制御装置360は、減圧バルブ10とリリーフバルブ350を備えている。減圧バルブ10とリリーフバルブ250は、共通のハウジング325によって構成されている。リリーフバルブ350は、ハウジング325,プレート351,コイルばね40,弁体344によって構成されている。ハウジング325には、水素ガス流通路64と連通する連通孔(水素ガス導入孔)354が形成されている。プレート351は、ハウジング225に固定され、コイルばね40を位置決めしている。プレート351には大気と連通する水素ガス排出孔355が設けられている。
【0042】
弁体344は、コイルばね40に付勢され、弁座56に接触し、連通孔354を塞いでいる。弁体344の底部345には、シール材348が固定されている。コイルばね40は、弁体344の底部345(シール部)に接している。
図7に示すように、弁体344の外周面は、円の一部(弁体344では4箇所)を切り取った形状であり、ハウジング325に接触する接触部344aと、ハウジング325に接触しない非接触部344bを有している。接触部344aは、ハウジング325に対する摺動面として機能する。非接触部344bとハウジング325の間には隙間333が形成される。また、非接触部344bには貫通孔344cが設けられている。貫通孔344cによって、隙間333とハウジング内空間332が連通している。
【0043】
図8に示すように、ハウジング連通路30は、非接触部344bに対向する位置で、ハウジング325内(隙間333)に開口している。そのため、第2室28は、ハウジング連通路30,隙間333,貫通孔344c,ハウジング内空間332及び水素ガス排出孔355を通じて大気と連通している。また、水素ガス流通路64内の圧力が所定値を超えると、弁体344が弁座56から離れる方向に移動し、水素ガス流通路64内の水素ガスが連通孔354,隙間333,貫通孔344c,ハウジング内空間332及び水素ガス排出孔355を通じて大気に放出される。なお、水素ガス排出孔355に配管(
図2~
図4も参照)を接続してもよい。
【0044】
流体制御装置360では、流体制御装置260(
図5を参照)と同様に、コイルばね40が、弁体344の底部345に接しているので、リリーフバルブ350の軸方向サイズ(弁体344が移動する方向のサイズ)を小さくすることができる。また、弁体344が移動する方向(軸方向)に直交する面内に、接触部344aと非接触部344bの双方が設けられている。例えば、軸方向に接触部(大径部44a)と非接触部(小径部44b)が並んでいる弁体44(
図2を参照)と比較して、弁体344の軸方向サイズをさらに小さくすることができる。
【0045】
(第4実施例:流体制御装置460)
図9に示すように、流体制御装置460は、減圧バルブ10とリリーフバルブ50を備えている。リリーフバルブ50は、実質的に流体制御装置60のリリーフバルブ50と同一である(
図2を参照)。但し、流体制御装置460は、流体制御装置60と比較して、水素ガス排出孔55に配管70が圧入されていない点が異なる。流体制御装置460では、水素ガス排出孔55にフィルタ470が取り付けられている。流体制御装置460では、水素ガス排出孔55にフィルタ470を取り付けることにより、リリーフバルブ50内に異物が侵入することを防止している。
【0046】
(第5実施例:流体制御装置560)
図10に示すように、流体制御装置560は、減圧バルブ510とリリーフバルブ550を備えている。減圧バルブ510は、減圧バルブ10(
図2を参照)と比較して、水素ガス排出孔555を有するプレート526がハウジング25に固定されている点が異なる。減圧バルブ510では、水素ガス排出孔555によって、第2室28が外部空間(大気)と連通している。リリーフバルブ550は、リリーフバルブ50と比較して、大気連通孔が設けられていないプレート570がハウジング52に固定されている点が異なる。すなわち、流体制御装置560は、減圧バルブ510が大気に直接連通する水素ガス排出孔555を有しており、リリーフバルブ550は大気に直接連通する通路を有していない。
【0047】
流体制御装置560では、リリーフバルブ550が作動すると(弁体44が弁座56から離れると)、水素ガス流通路64内の水素ガスは、水素ガス導入孔54.ハウジング連通路30,第2室28及び水素ガス排出孔555を通じて大気に放出される。なお、流体制御装置560は、第2室28及びハウジング内空間32内の圧力を一定(大気圧)に維持することができる。また、流体制御装置560は、各バルブに大気連通路を設ける形態と比較して、バルブ内に異物が侵入する現象を起こり難くすることができる。
【0048】
(他の実施形態)
上記実施例では、流体制御装置を車両に搭載される燃料電池システムで利用する例について説明した。しかしながら、本明細書で開示する流体制御装置は、車両以外に搭載される燃料電池システム(例えば定置型の燃料電池発電機)で利用することもできる。また、本明細書で開示する流体制御装置は、燃料電池システム以外の流体制御装置(例えば、内燃機関を有する車両の燃料供給路における燃料制御装置)として利用することもできる。
【0049】
また、上記実施例では、1個の減圧バルブと1個のリリーフバルブ(合計2個)を備えた流体制御装置について説明した。しかしながら、本明細書で開示する技術は、複数のバルブを備えた流体制御装置であれば、バルブの種類及び個数は任意である。重要なことは、流体制御装置を構成する複数のバルブのうちの少なくとも1個のバルブがハウジング内と外部空間を連通する通路(第1連通路)を有する第1バルブであって、他のバルブが第1連通路を有していいない第2バルブであって、第1バルブのハウジング内と第2バルブのハウジング内が、第2連通路によって連通されていればよい。異物がバルブ内に侵入する現象の抑制効果を十分に得るために、第1バルブの数よりも第2バルブの数が多い方が好ましいが、流路抵抗等を考慮し、第2バルブの数よりも第1バルブの数を多くしてもよい。例えば、2個の減圧バルブと1個のリリーフバルブを備えた流体制御装置において、1個の減圧バルブが第1バルブであり、他の2個のバルブが第2バルブであってもよい。
【0050】
実施例1~4では、リリーフバルブが第1バルブ(第1連通路を有するバルブ)である流体制御装置について説明した。実施例1~4のリリーフバルブは、弁体がハウジングに接触する部分(大径部,接触部)と弁体がハウジングに接触しない部分(小径部,非接触部)を有している。そして、第2連通路は、小径部又は非接触部に対向する位置で開口している。すなわち、第2連通路は、弁体とハウジングの間に隙間が設けられている部分で開口している。しかしながら、第2連通路は、弁体がハウジングに接触している部分以外であれば、例えば、弁体に対向しない位置で開口していてもよい。すなわち、第1バルブのハウジング内と第2バルブのハウジング内が連通する位置であれば、第2連通路の開口位置は任意に変更することができる。
【0051】
上記実施例では、大気連通孔に配管が圧入されている形態(第1実施例)、大気連通孔にフィルタが取り付けられている形態(第4実施例)、大気連通孔が直接大気に開口している形態(第2,第3及び第5実施例)について説明した。第1~第5実施例の何れの流体制御装置においても、配管を圧入してもよいし、フィルタを取り付けてもよいし、何も取り付けなくて(直接大気に開口していて)もよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
10:第2バルブ
25:第2バルブのハウジング
30:第2連通路
50:第1バルブ
52:第1バルブのハウジング
55,70:第1連通路
60:流体制御装置